説明

せん断補強構造

【課題】施工の手間を軽減し、工期の短縮を図ることができ、さらに、せん断補強効果の低減を防止することができるせん断補強構造を提供することを目的としている。
【解決手段】鉄筋コンクリート体2にせん断補強部3を形成して鉄筋コンクリート体2をせん断補強するせん断補強構造であって、せん断補強部3は、鉄筋コンクリート体2に形成された溝30の内側に、鉄筋コンクリート体2をせん断補強する強度を有する波形補強板材31が挿入されているとともに波形補強板材31を固定する充填材32が充填された構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート体をせん断補強するせん断補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばカルバート構造物の側壁部等の鉄筋コンクリート体をせん断補強する技術として、鉄筋コンクリート体内に鉄筋等の棒状のせん断補強用鋼材(鋼棒)を埋設するせん断補強構造が知られている。このせん断補強構造では、鉄筋コンクリート体に長孔があけられ、その長孔の中に鋼棒が挿入され、さらに、モルタル等の充填材料が長孔内に充填されて前記鋼棒が固定されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
また、近年、鉄筋コンクリート体をせん断補強する技術として、鉄筋コンクリート体内に鋼板等の平板状のせん断補強用鋼材(平鋼板)を埋設するせん断補強構造も提案されている。このせん断補強構造では、鉄筋コンクリート体に溝が形成され、その溝の中に平鋼板が挿入され、さらに、モルタル等の充填材料が溝内に充填されて前記平鋼板が固定されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【特許文献1】特許第3932094号公報
【特許文献2】特開2002−275927号公報
【特許文献3】特開2002−213193号公報
【特許文献4】特開2005−23657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した鋼棒を用いる従来のせん断補強構造では、施工本数が多く、施工に手間がかかるため、工期が長くなるという問題がある。
【0005】
また、上記した平鋼板を用いる従来のせん断補強構造では、せん断補強部におけるせん断ひび割れ発生後に、平鋼板と充填材との付着が低減し、せん断補強部によるせん断補強効果が低減するという問題がある。また、平鋼板はせん断座屈耐力が低く、十分なせん断補強効果が発揮できない場合がある。例えば、平鋼板を用いて地中壁をせん断補強する際、その地中壁に作用する土圧に平鋼板が抵抗できなくなる場合があり、この場合、平鋼板の上部が土圧によって押し出されるように倒れ、せん断補強部によるせん断補強効果が低減する。また、せん断補強部にひび割れが発生した際、そのひび割れは平鋼板の表面に沿って進展し、せん断補強部によるせん断補強効果が低減する。例えば、平鋼板を用いて地中壁をせん断補強する際、せん断補強部には、溝の下端側の隅角部分(地山側の角部分)からひび割れが発生し、このひび割れは平鋼板の表面に沿って斜め上方に進展する。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、施工の手間を軽減し、工期の短縮を図ることができ、さらに、せん断補強効果の低減を防止することができるせん断補強構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るせん断補強構造は、鉄筋コンクリート体にせん断補強部を形成して前記鉄筋コンクリート体をせん断補強するせん断補強構造であって、前記せん断補強部は、前記鉄筋コンクリート体に形成された溝の内側に、前記鉄筋コンクリート体をせん断補強する強度を有する波形補強板材が挿入されているとともに該波形補強板材を固定する充填材が充填された構成になっていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、鉄筋コンクリート体に溝を形成し、この溝の中に波形補強板材を挿入するとともに充填材を充填することによってせん断補強部が形成され、このせん断補強部によって鉄筋コンクリート体がせん断補強される。上記した波形補強板材は、充填材に対する接触面が凹凸になっているため、充填材に対する付着力が高く、波形補強板材が充填材から分離しにくい。また、上記した波形補強板材は、平板状のせん断補強板と比べて、波形によりせん断座屈耐力が高いため、せん断補強部によるせん断補強効果が向上する。また、せん断補強部にひび割れが発生し、そのひび割れが波形補強板材の表面に沿って進展しても、そのひび割れは波形補強板材の表面の波形の凸部を越えて進展することになるので、ひび割れが進展しにくくなる。
なお、本発明における「溝」は、線状に延在する断面形状凹状の窪みの他に、線状に延在するとともに溝深さ方向に貫通した「スリット開口」も含む概念とする。
【0009】
また、本発明に係るせん断補強構造は、前記波形補強板材の波形が前記溝の長さ方向に沿って連続的に形成され、前記波形補強板材の波形の稜線が前記溝の深さ方向に延在されていることが好ましい。
【0010】
これにより、波形補強板材がそのアコーディオン効果(蛇腹状に伸縮する動作)によって溝長さ方向へ収縮容易になるので、鉄筋コンクリート体に溝長さ方向への圧縮力が作用し、鉄筋コンクリート体や充填材が溝長さ方向に収縮しても、波形補強板材は座屈せずに溝長さ方向へ収縮変形して充填材の収縮に追随し、波形補強板材と充填材との付着性が低下しにくい。
【0011】
また、本発明に係るせん断補強構造は、前記鉄筋コンクリート体の内側に、該鉄筋コンクリート体にプレストレスを付与するPC鋼材が前記溝の長さ方向に沿って延設されていることが好ましい。
【0012】
これにより、鉄筋コンクリート体にプレストレス(予圧縮力)が作用し、鉄筋コンクリート体の耐力が向上する。このとき、プレストレスによって鉄筋コンクリート体及び充填材が溝長さ方向に収縮しても、上述したように波形補強板材が充填材の収縮に追随するので、波形補強板材と充填材との付着性が低下しにくい。
【0013】
また、本発明に係るせん断補強構造は、前記充填材に補強繊維が混合されていることが好ましい。
【0014】
これにより、せん断補強部の靭性が補強繊維によって向上し、せん断補強部によるせん断補強効果が増大する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るせん断補強構造によれば、せん断補強部の数量を削減して、施工の手間を軽減することができ、工期の短縮を図ることができる。また、波形補強板材は充填材に対する付着力が高く、波形補強板材が充填材から分離しにくくなっているため、波形補強板材の付着力の低下によるせん断補強効果の低減を防止することができる。また、波形補強板材はせん断座屈耐力が高いため、せん断補強効果を向上させることができる。さらに、波形補強板材の表面の波形の凸部によってせん断補強部のひび割れが進展しにくくなっているため、ひび割れによるせん断補強効果の低減を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るせん断補強構造の第1、第2の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
まず、図1、図2に基いて第1の実施の形態について説明する。図1は鉄筋コンクリート造のカルバート構造物1の側壁部2(本発明の鉄筋コンクリート体に相当する。)を表した斜視図であり、図2は側壁部2の水平方向の断面図である。
なお、本実施の形態では、側壁部2の厚さ方向、つまり後述する溝30の深さ方向(図1に示すX方向)を幅方向とし、側壁部2の長さ方向、つまり後述する溝30の幅方向(図1に示すY方向)を横方向とし、側壁部2の高さ方向、後述する溝30の長さ方向(図1に示すZ方向)を縦方向とする。
【0018】
本実施の形態におけるせん断補強構造は、カルバート構造物1の側壁部2にせん断補強部3を形成して側壁部2をせん断補強する構造である。なお、本実施の形態における側壁部2は、コンクリート体20内に壁鉄筋21,22が埋設された構成からなり、壁鉄筋21,22は、縦方向に延在する縦鉄筋21(主筋)と横方向に延在する横鉄筋22(配力筋)とが格子状に配筋されている。
【0019】
せん断補強部3は、側壁部2をせん断補強するための板状部であり、縦方向に延設されているとともに、横方向に間隔をあけて複数平行に並設されている。このせん断補強部3は、側壁部2に形成された溝30の内側に、波形鋼板31(本発明における波形補強板材に相当する。)が挿入されているとともに充填材32が充填された構成になっている
【0020】
溝30は、側壁部2の表面に対して略垂直に切削された断面視凹状の窪みである。この溝30は、側壁部2の隣り合う主筋(縦鉄筋21)間の位置に、主筋方向に沿って延設されており、側壁部2の配力筋(横鉄筋22)を切断して形成されている。具体的に説明すると、溝30は、縦方向に直線的に延設されており、側壁部2の内側面から側壁部2の外側の壁鉄筋21A,22Aの位置まで幅方向に延在しており、その縦方向が、側壁部2の上端から下端まで延在している。
【0021】
波形鋼板31は、側壁部2をせん断補強する強度を有する補強板材であり、鋼板の表面に山(凸条部)と谷(凹条部)とが交互に形成されるように鋼板を波形に折り曲げ変形させた構成からなる。この波形鋼板31は、その波形が溝30の長さ方向(縦方向)に連続的に形成されて波形鋼板31の波形稜線31aが溝30の深さ方向(幅方向)に延在されるようなに配置されている。すなわち、波形鋼板31は、溝30の開放端側(カルバート構造物1の内部側)からみて波形に形成されている。この波形鋼板31の幅方向の長さは、溝30の深さ方向の略全体に亘って延びており、また、波形鋼板31の縦方向の長さは、溝30の長さ方向の略全体に亘って延びている。
【0022】
充填材32は、波形鋼板31を固定するための材料であり、溝30の内側に満遍なく充填されている。充填材32は、充填時においては充填性に優れた流動体であり、この充填材32が凝固することにより波形鋼板31が固定される。充填材32としては、一般に例えばグラウトやモルタル等のセメント系材料を用いるが、エポキシ樹脂等の樹脂材料を用いることも可能である。
【0023】
上記した充填材32には、せん断補強部3を補強する補強繊維が混合されていることが好ましい。補強繊維としては、例えば、スチールファイバー等の金属繊維や、炭素繊維、ポリ塩化ビニル等からなる合成繊維を用いることができる。なお、補強繊維の混合率としては、容積百分率で0.5(%)以上、2.0(%)以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0024】
続いて、上記した構成からなるせん断補強構造の施工方法について説明する。
【0025】
まず、側壁部2に溝30を形成する工程を行う。具体的に説明すると、ウォールソー等の切削機械を用いて側壁部2の表面にスリット状の溝30を縦方向に切削する。このとき、側壁部2の縦鉄筋21を切断しないように、隣り合う縦鉄筋21,21間の位置に溝30を形成する。また、側壁部2の横鉄筋22を切断しないように上下に配筋された横鉄筋22,22間の部分のみを切削して破線状に溝を形成することも可能であるが、施工性が悪くなるため、横鉄筋22を切断しながら直線状に溝30を形成する。
【0026】
次に、上記した溝30の中に充填材32を充填する工程を行う。充填材32の充填方法としては、公知の充填方法を採用することができ、例えば、ピストン状の注入器を用いて溝30内に充填材32を注入していく方法や、或いは、圧送機を用いて溝30内に充填材32を打設する方法等がある。また、必要に応じて溝30の開放口を型枠で塞ぎ、溝30内に注入された充填材32が流出しないようにする。
【0027】
次に、上記した充填材32が硬化する前に、溝30(充填材32)の内側に波形鋼板31を挿入する工程を行う。具体的に説明すると、波形鋼板31の波形方向を縦方向にして波形鋼板31を溝30内に差し込む。その後、溝30内に充填された充填材32が凝固することで上記した波形鋼板31が溝30内で固定され、せん断補強部3が形成される。
【0028】
上記したせん断補強部3によって側壁部2がせん断補強される。すなわち、側壁部2に作用するせん断力に対して波形鋼板31が抵抗する。このとき、波形鋼板31は、充填材32に対する接触面が凹凸になっているため、充填材32に対する付着力が高く、波形鋼板31が充填材32から分離しにくい。また、波形鋼板31は、平板状の鋼板と比べて、その波形によりせん断座屈耐力が高くなっているため、せん断補強部3に幅方向の外力(例えば地山からの土圧)が作用しても、その外力に対して波形鋼板31が十分な抵抗力を発揮する。また、せん断補強部3の充填材32の部分にひび割れが発生し、そのひび割れが波形鋼板31の表面に沿って進展しても、そのひび割れは波形鋼板31の表面の波形の凸部を越えて進展することになるので、ひび割れが進展しにくい。
【0029】
また、波形鋼板31は、その波形が溝30の長さ方向に沿って連続的に形成されるとともに波形の稜線31aが溝30の深さ方向に延在されるように配置されているので、波形鋼板31は、そのアコーディオン効果によって縦方向への収縮が容易になる。したがって、側壁部2に縦方向の圧縮力(例えば載荷土圧等)が作用して側壁部2や充填材30が縦方向に収縮したり、コンクリートの乾燥収縮によって側壁部2や充填材30が縦方向に収縮したりしても、波形鋼板31は座屈せずに縦方向へ収縮変形して充填材32の収縮に追随する。これにより、波形鋼板31と充填材32との付着性が低下しにくく、波形鋼板31と充填材32との分離が防止される。
【0030】
なお、平板状の鋼板の弾性係数(=2.0×105 N/mm2程度)はセメント系部材(コンクリートやモルタル)の弾性係数(=2.0〜4.0×104 N/mm2程度)の10分の1程度であり、平板状の鋼板の圧縮時の変位量(縮み量)はセメント系部材の10分の1程度になるため、仮に、充填材32内に平板状の鋼板が埋設されていると、コンクリート製の側壁部2に圧縮力が作用したときにモルタル製の充填材32と鋼板との間で相対変位が生じて鋼板と充填材32との付着力が低下する問題が生じる。
【0031】
上記した構成からなるせん断補強構造によれば、波形鋼板31が埋設されたせん断補強部3は、棒状の鋼材が埋設されたせん断補強部に比べてせん断補強効果が大きいため、せん断補強部3の間隔を広くしてせん断補強部3の数量を削減することができる。これにより、施工の手間を軽減することができ、せん断補強工事の工期の短縮を図ることができる。
【0032】
また、波形鋼板31は充填材32に対する付着力が高く、波形鋼板31が充填材32から分離しにくくなっているため、波形鋼板31の付着力の低下によるせん断補強効果の低減を防止することができる。
また、波形鋼板31はせん断座屈耐力が高く、せん断補強部3に作用する幅方向の外力に対して高い抵抗力を発揮するため、せん断補強効果を向上させることができる。これにより、せん断補強部3の間隔をさらに広くしてせん断補強部3の数量を削減することができる。
さらに、波形鋼板31の表面の波形の凸部によってせん断補強部3のひび割れが進展しにくくなっているため、ひび割れによるせん断補強効果の低減を抑えることができる。
【0033】
また、波形鋼板31は、その波形が溝30の長さ方向に沿って連続的に形成されるとともに波形の稜線31aが溝30の深さ方向に延在されるように配置されており、波形鋼板31のアコーディオン効果によって、波形鋼板31が縦方向へ収縮する充填材32に追随し、波形鋼板31と充填材32との付着性が低下しにくいため、波形鋼板31の付着力の低下によるせん断補強効果の低減を防止することができる。
【0034】
また、充填材32に補強繊維を混合することにより、補強繊維によってせん断補強部3の靭性が向上し、せん断補強部3によるせん断補強効果がさらに増大する。これにより、せん断補強部3の間隔をさらに広くしてせん断補強部3の数量を削減することができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
次に、図3に基いて第2の実施の形態について説明する。図3は本実施の形態における側壁部2を表した斜視図である。なお、上述した第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
図3に示すように、側壁部2の内側には、側壁部2にプレストレスを付与するPC鋼材4が溝30の長さ方向(縦方向)に沿って延設されている。すなわち、PC鋼材4は、波形鋼板31の波形方向に沿って延設されている。PC鋼材4の両端には、側壁部2に定着させるための定着具40,41がそれぞれ設けられており、PC鋼材4は引張力が導入された状態で側壁部2内に埋設されている。なお、PC鋼材4としては、鋼棒や鋼線、鋼より線等を用いることができる。また、定着具40,41としては、ボルトナット式の定着具やクサビ式の定着具等の種々の定着具を用いることができる。
なお、本実施の形態では、コンクリートを形成した後にプレストレスを付与するポストテンション方式のPC鋼材4になっているが、本発明は、コンクリート打設前にPC鋼材に引張力を導入するプレテンション方式のPC鋼材であってもよい。
【0037】
これにより、側壁部2に縦方向のプレストレス(予圧縮力)が作用し、側壁部2の耐力が向上する。このとき、プレストレスによって側壁部2及び充填材32が縦方向に収縮するが、上述したように波形鋼板1が充填材32の収縮に追随するので、波形鋼板1と充填材32との付着性が低下しにくく、波形鋼板31の付着力の低下によるせん断補強効果の低減を防止することができる。すなわち、プレストレスによって側壁部2の耐力向上を図りつつ、せん断補強効果の低減を防止することができる。
【0038】
以上、本発明に係るせん断補強構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、溝30の深さが側壁部2の外側の壁鉄筋21A,22Aの位置まで達しているが、本発明は、溝30の深さは適宜変更可能である。例えば、溝30の深さが側壁部2の外側の壁鉄筋21A,22Aの手前の位置で止められていてもよい。これにより、外側の壁鉄筋21A,22Aを切断せずに、せん断補強部3を形成することができる。
さらに、上記した実施の形態では、側壁部2に非貫通の溝30が形成され、その溝30の内側に充填材32が充填されるとともに波形鋼板31が配設されているが、本発明は、溝が貫通していてもよい。例えば、図4に示すように、カルバート構造物1の中間隔壁102(本発明における鉄筋コンクリート体に相当する。)をせん断補強する場合、中間隔壁102に、貫通した溝130を切削し、この溝130内に充填材32を充填するとともに波形鋼板31を配設して形成されるせん断補強部103にすることも可能である。
【0039】
また、上記した実施の形態では、側壁部2の高さ方向(Z方向)に延在する複数の溝30が間隔をあけて平行に形成されており、側壁部2の高さ方向に延設した複数のせん断補強部3(103)が平行に形成されているが、本発明は、せん断補強部の延在方向は適宜変更可能であり、例えば、せん断補強部を側壁部2の長さ方向(Y方向)に延設させた構成であってもよい。また、本発明は、複数のせん断補強部が異なる方向に延設されていてもよく、例えば、側壁部2の高さ方向に延設されたせん断補強部と側壁部2の長さ方向に延設されたせん断補強部とがそれぞれ形成されていてもよい。
【0040】
また、上記した実施の形態では、波形補強板材として波形鋼板31が用いられているが、本発明は、波形補強板材は鋼板に限定されるものではなく、少なくともコンクリートよりも圧縮強度が高い材質のものであれば、その材質は適宜変更可能である。例えば、繊維強化プラスチック(FRP)からなる波形補強板材であってもよい。これにより、波形補強板材が軽量化され、施工性を向上させることができるとともに、塩害防止(防錆)を図ることができ、さらに、磁化による問題が生じる構造物であっても適用することができる。
【0041】
また、上記した実施の形態では、カルバート構造物1の側壁部2をせん断補強する構成について説明しているが、本発明は、構造物の壁以外をせん断補強する構成であってもよい。例えば、構造物の柱や梁、スラブ、基礎等をせん断補強する場合にも適用可能である。
【0042】
また、上記した実施の形態では、溝30の中に充填材32を充填した後に波形鋼板31を溝30の中に挿入させているが、本発明は、波形鋼板31を溝30の中に挿入させた後、溝30の中に充填材32を充填してもよい。この場合、充填材32は、溝30の内面と波形鋼板31の表面との間に注入する。
【0043】
また、上記した実施の形態では、波形鋼板31が、その波形が溝30の長さ方向に沿って連続的に形成されるとともに波形の稜線31aが溝30の深さ方向に延在されるように配置されているが、本発明は、波形鋼板31の向きを変更することも可能である。例えば、波形鋼板31を、波形が溝30の深さ方向に沿って連続的に形成されるとともに波形の稜線31aが溝30の長さ方向に延在されるように配置することも可能である。
【0044】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した各実施の形態や各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するためのせん断補強構造を表す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明するためのせん断補強構造を表す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を説明するためのせん断補強構造を表す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を説明するためのせん断補強構造を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
2 側壁部(鉄筋コンクリート体)
3、103 せん断補強部
4 PC鋼材
30、130 溝
31 波形鋼板(波形補強板材)
32 充填材
102 中間隔壁(鉄筋コンクリート体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート体にせん断補強部を形成して前記鉄筋コンクリート体をせん断補強するせん断補強構造であって、
前記せん断補強部は、前記鉄筋コンクリート体に形成された溝の内側に、前記鉄筋コンクリート体をせん断補強する強度を有する波形補強板材が挿入されているとともに該波形補強板材を固定する充填材が充填された構成になっていることを特徴とするせん断補強構造。
【請求項2】
請求項1記載のせん断補強構造において、
前記波形補強板材の波形が前記溝の長さ方向に沿って連続的に形成され、前記波形補強板材の波形の稜線が前記溝の深さ方向に延在されていることを特徴とするせん断補強構造。
【請求項3】
請求項2記載のせん断補強構造において、
前記鉄筋コンクリート体の内側には、該鉄筋コンクリート体にプレストレスを付与するPC鋼材が前記溝の長さ方向に沿って延設されていることを特徴とするせん断補強構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載のせん断補強構造において、
前記充填材に補強繊維が混合されていることを特徴とするせん断補強構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−209606(P2009−209606A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54845(P2008−54845)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】