説明

たて管更新方法

【課題】 防火区画を貫通する既設たて管を、騒音や振動等の問題を生じることなく効率よく安全な作業により新規の管に更新して、前記防火区画を維持する。
【解決手段】 既存の貫通孔に対し拡径処理をすることなく、該貫通孔に既設たて管7と略同等の外径からなる新規の合成樹脂管4を挿通するとともに、床スラブ1の上面側に露出する合成樹脂管4の外周面に熱膨張性耐火材51を外装する。床スラブ1の上面には、熱膨張性耐火材51の周囲を取り囲むように型枠6を設置する。この型枠6内には、硬化性の不燃材料52を充填する。不燃材料52の硬化後、型枠6を除去し、防火区画の一部をなす防火処置部5を床スラブ1の上面に形成する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たて管更新方法に係る。特に、本発明は、防火区画に該当する床スラブを貫通して設けられているたて管の更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複層からなる建築物において、給排水管や配電管等の配管設備は、床埋め込み配管、天井内配管、又はパイプシャフト等のたて穴配管により設けられることが多いが、床スラブや壁などの構造躯体に貫通させて設けられることもある。
【0003】
例えば、床スラブに貫通させて設けるたて管の場合、予めコンクリートの床スラブに形成された貫通孔にたて管が挿通され、たて管と貫通孔との間隙がモルタルで埋められて配管固定されている。
【0004】
また、集合住宅や高層ホテル等における排水設備配管の場合には、上階と下階との間のコンクリートスラブに貫通して排水継手が設置される。排水継手は、例えば特許文献1に開示されるように、排水たて管と横枝管との合流継手であり、各設備機器からの排水を合流させて下階の排水たて管に流入させる。かかる排水継手も、コンクリートスラブの貫通孔に通され、支持架台等により支持されて固定されている。コンクリートスラブの貫通孔には、排水継手の胴部が通された後、ロックウールが充填され、そのロックウールの上からモルタルが充填されている。
【0005】
このような床スラブを貫通する配管設備を更新する際には、既設のたて管等を撤去して新規の管に取り替えることが行われる。例えば前記特許文献1では、排水継手に接続する排水たて管を上方へ移動させ、かつ傾斜させて排水継手から取り外し、新たな排水たて管を接続して更新する方法が開示されている。
【0006】
また、床スラブに直接固定されているたて管部分の更新は、特許文献2に開示されるように、床スラブの上下で既設のたて管を切断し、ダイヤモンドカッター等を用いてコンクリートスラブやモルタル等を部分的に破壊し、既設のたて管及びたて管周囲の床スラブをともに除去する方法によりなされている。また、特許文献3に開示されるように、下階からジャッキを使用して、床スラブに固定されているたて管部分を上階へ押し上げて除去する方法もある。
【0007】
床スラブからたて管を除去した後には、床スラブに露出した貫通孔の周囲のコンクリート又はモルタルを、ノミ及びハンマー等の工具を使用して破壊し、新規の管を取り付けるための拡径処理を行う。次いで、貫通孔に新規の管を配設し、管周囲と貫通孔との間隙にモルタルを埋め戻して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−174306号公報
【特許文献2】特開2007−138428号公報
【特許文献3】特開2010−203508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の更新方法では、たて管が固定されている床スラブの下階側と上階側とを行き来しながらの作業又は上階と下階の双方への作業者の配置が必要となり、作業効率が悪くコストを要するものであった。
【0010】
加えて、複層からなる建築物においては、火災時に延焼の拡大を防ぎ、火災を局部的なものに抑えて避難を容易にするため、一定面積以内ごとに防火区画を設けなければならない(建築基準法施行令第112条第15項等)。給排水管、配電管その他の管が、前記防火区画の床等を貫通する場合には、当該管と防火区画の床等との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならず、図10に例示するような貫通部構造により更新することとなっていた。
【0011】
つまり、コストや重量の面から従来の鋼管からなるたて管に代えて、合成樹脂製の管を新管91として用い、床スラブ93に貫通する新管91の外周部を熱膨張材92で被覆している。これにより、火炎による熱が作用した場合、熱膨張材92が膨張して管路を閉じ、防火区画を維持する構造とされている。
【0012】
既設たて管と同等の管径を確保して配管するには、床スラブ93の既存の貫通孔97に対して、熱膨張材92の被覆厚さ分だけ拡径処理を行わなければならず、その際、貫通孔97の周囲のコンクリート又はモルタル等の破壊作業が必要であった。また、新管91及び熱膨張材92と、拡径した貫通孔94との間に生じた隙間を、モルタル95で埋め戻さなければならず、床スラブ93の下面側にモルタル注入時の押さえ型枠96を設置しなければならなかった。そのため、床スラブ93の下階側と上階側とを行き来しながらの作業となって、作業効率が非常に悪く、下階では天井付近での脚立作業及び上向き作業となるため、作業が困難であり危険性も伴うという問題点があった。
【0013】
また、前記のとおり、既設たて管の除去時や、貫通孔の拡径処理時には、コンクリートやモルタルを破壊するため、粉塵が飛散し、大きな騒音や振動を発生させてしまうといった問題点もあった。
【0014】
本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、防火区画を貫通する既設たて管を、騒音や振動等の問題を生じることなく効率よく安全な作業により新規の管に更新することを可能にし、かつ所定の耐火性能を満足させることのできるたて管更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、防火区画の床スラブを貫通する既設たて管を除去し、前記たて管除去後の貫通孔に新規の合成樹脂管を配設するたて管更新方法を前提とする。そして、このたて管更新方法において、前記貫通孔に対し拡径処理をすることなく、該貫通孔に前記たて管と略同等の外径からなる合成樹脂管を挿通するとともに、床スラブの上面側に露出する前記合成樹脂管の外周面に熱膨張性耐火材を外装する工程と、前記床スラブの上面に、前記熱膨張性耐火材の周囲を取り囲むように型枠を設置する工程と、前記型枠内に硬化性の不燃材料を充填する工程と、前記不燃材料の硬化後、前記型枠を除去する工程とを含み、防火区画の一部をなす防火処置部を前記床スラブの上面に形成する構成としている。
【0016】
この特定事項により、熱膨張性耐火材は、加熱によって膨張して貫通孔を閉塞するので、火災時の火炎の侵入を防ぎ、防火区画を維持するものとなる。また、たて管更新のための前記一連の工程は、すべて床スラブの上面側である上階において行うことができる。よって、作業者は上階と下階とを行き来する必要がなく、また上階と下階の双方に作業者を配置する必要がなく、効率よく迅速に更新作業を進めることができる。さらに、前記たて管除去後の貫通孔に対して拡径処理を行わないので、床スラブのコンクリートやモルタルを破壊する作業が不要であり、粉塵の飛散、騒音、及び振動のいずれの問題も回避することが可能となる。
【0017】
前記たて管更新方法のより具体的な構成として次のものが挙げられる。つまり、前記熱膨張性耐火材を、前記貫通孔の内径よりも大きい外形となるように外装する構成とすることである。
【0018】
これにより、前記熱膨張性耐火材が、新規に配設した合成樹脂管と貫通孔との間隙を、床スラブの上面側で完全に塞ぐものとなる。また、不燃材料の充填時には、合成樹脂管に外装した熱膨張性耐火材が、不燃材料の貫通孔への流入を防ぐので、不燃材料の使用量を抑え、コストの増加を防ぐことができる。
【0019】
また、前記防火処置部を、床スラブの上面に、前記合成樹脂管の外径に相当する高さで設ける構成とすることが好ましい。
【0020】
これにより、前記防火処置部に、新規の管に対する十分な固定強度と、熱膨張性耐火材の閉塞作用とを備えさせつつ、他の設備機器や配管類、又は壁面等との干渉をも回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、既存の貫通孔に対し拡径処理をすることなく、該貫通孔に既設たて管と略同等の外径からなる新規の合成樹脂管を挿通するとともに、床スラブの上面側に露出する前記合成樹脂管の外周面に熱膨張性耐火材を外装する工程と、床スラブの上面に、熱膨張性耐火材の周囲を取り囲むように型枠を設置する工程と、型枠内に硬化性の不燃材料を充填する工程と、不燃材料の硬化後、前記型枠を除去する工程とを備えさせ、防火区画のための防火処置部を床スラブの上面に形成する構成としている。このため、粉塵の飛散、騒音、及び振動等の問題を生じることなく、かつ効率よく安全な作業によって、防火区画を貫通する既設たて管を、新規の合成樹脂管に更新することができ、所定の耐火性能を満足する防火区画を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るたて管更新方法の一工程を説明する断面図である。
【図2】図1の次工程を示す断面図である。
【図3】図2の次工程を示す断面図である。
【図4】図3の次工程を示す断面図である。
【図5】図4の次工程を示す断面図である。
【図6】新規の合成樹脂管に更新された状態を示す断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は型枠の一形態を示し、図7(a)は上面図、図7(b)は側面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は型枠の他の形態を示し、図8(a)は上面図、図8(b)は側面図である。
【図9】他の実施形態に係るたて管更新方法の一工程を示す断面図である。
【図10】従来のたて管更新方法による貫通部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係るたて管更新方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係るたて管更新方法の各工程をそれぞれ示す断面図である。
【0025】
図1は、防火区画に該当する床スラブ1を貫通して設けられている既設管7を示す断面図である。既設管7は、例えば屋内配管とされた排水たて管であり、複層建築物の階床を構成するコンクリートの床スラブ1に設けられた貫通部11に挿通されている。また、床スラブ1の貫通部11と既設管7との隙間は、モルタル3で埋められており、既設管7が床スラブ1に固着されている。
【0026】
この床スラブ1のように防火区画に該当する床は、主要構造部における耐火構造の種類や階数等に応じて、特定防火設備で区画しなければならないことが規定されており、特に、給水管、排水管その他の配管設備が当該防火区画の床を貫通する場合には、床との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならないとされている。
【0027】
このような防火区画を貫通する既設管7を更新する際には、周知の配管抜き取り工具等を用いることで、コンクリートやモルタルのハツリ作業を行うことなく床スラブ1から既設管7を引き抜くことができる。配管抜き取り工具は、既設管7の外周面を保持するコマと、既設管7とコマとを保持する管ホルダと、管ホルダに連結されたシリンダ用シャフトと、油圧によりシリンダ用シャフトを上方向に持ち上げるシリンダと、シリンダを保持するシリンダホルダとを備えて構成されている(図示省略)。
【0028】
本実施形態では、かかる配管抜き取り工具を用いて、先ず、床スラブ1の上面側(上階)から既設管7を引き抜き、振動や騒音を発生させることなく除去する。これにより、床スラブ1には、既設管7が取り除かれた状態の貫通孔2が露出する。図2に示すように、既設管7の除去後の貫通孔2は、床スラブ1の貫通部11の内周に既設モルタル3が付着したままの状態となっている。
【0029】
次に、前記貫通孔2に新規の合成樹脂管4を挿通する。本実施形態に係るたて管更新方法においては、既設管7に代わる新たな合成樹脂管4の配管作業を、貫通孔2の拡径処理をすることなく、すなわち、既設モルタル3を破壊したり砕いたりすることなく行う。
【0030】
つまり、図2に示すように、合成樹脂管4を、床スラブ1の上面側から貫通孔2に挿通する。新規の合成樹脂管4には、既設管7と略同等の外径からなるものを用いて、更新前と同等の流量を確保する。貫通孔2は、既設管7の外径と同等若しくは僅かに大きい内径となっている。合成樹脂管4は、既設管7と略同等の外径からなることから、貫通孔2の拡径処理を行うことなく挿通することができる。
【0031】
合成樹脂管4には、硬質塩化ビニル管、架橋ポリエチレン管等を用いることができ、また、断熱被覆がなされた合成樹脂管を用いることもできる。
【0032】
次に、図3に示すように、合成樹脂管4の外周面に熱膨張性耐火材51を外装する。熱膨張性耐火材51を外装する箇所は、合成樹脂管4における床スラブ1の上面側に露出している部分であって、床スラブ1の直上部分だけでよい。
【0033】
熱膨張性耐火材51は、これを例えば約30分間加熱して膨張が飽和したとき、この飽和時の体積膨張倍率が前記5〜20倍であれば要求性能を満たす。すなわち、例えば、熱膨張性耐火材51には、JIS A1304に規定される2時間耐火の性能基準を満たし、加熱時の体積膨張倍率(初期厚みに対する膨張後の厚みの比)が5〜20倍であり、かつ粘着性を有する熱膨張性材料からなるテープ状成形体を用いることができる。また、熱膨張性耐火材51には、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、熱膨張性黒鉛等の熱膨張性無機化合物、及び無機充填剤を含有させて構成することが好ましい。
【0034】
この場合、テープ状成形体の熱膨張性耐火材51を、その粘着性を利用して合成樹脂管4の外周面に巻き付ける。熱膨張性耐火材51の巻き付け厚みは、使用する熱膨張性耐火材の体積膨張倍率により設定され、例えば合成樹脂管4の管径の2〜10%とすることが好ましい。
【0035】
また、熱膨張性耐火材51を、貫通孔2の内径よりも大きい外形となるように合成樹脂管4の外周面に巻き付けることが好ましい。加えて、熱膨張性耐火材51を、床面からの高さが合成樹脂管4の管径に相当する高さとなるように巻き付ける。これにより、火災時には合成樹脂管4の外周部に十分な膨張断熱層を形成することができる。
【0036】
熱膨張性耐火材51は、前記テープ状成形体であるに限らず、シート体、パテ状体、又は粘性体等のどのような形態からなるものであってもよい。例えば、シート体では、積水化学工業社製フィブロック(商品名。エポキシ樹脂若しくは合成ゴム系樹脂成分を含有し、熱膨張性黒鉛、無機充填材等を混合した熱膨張性樹脂組成物からなるシート状成形物。)等を使用することが可能である。これらの形態からなる熱膨張性耐火材51においても、JIS A1304に規定される2時間耐火の性能基準を満たし、加熱時の体積膨張倍率が5〜20倍であることが好ましく、前記と同様の厚み及び高さで合成樹脂管4に外装する。
【0037】
このように設けた熱膨張性耐火材51の外側には、後述するモルタルを被覆して、防火区画の一部をなす防火処置部5を床スラブ1の上面側において形成する。
【0038】
そこで、図4に示すように、床スラブ1の上面に、型枠6を立設する。型枠6は、熱膨張性耐火材51の周囲を取り囲み、防火処置部5が構築される外縁部を形成するように設置する。型枠6には、鋼板又は木板等を用いることができる。
【0039】
具体的には、床スラブ1の上面に、合成樹脂管4、熱硬化性耐火材51、及び貫通部11よりも外側位置となるように型枠6を配置する。型枠6の形状は、どのような形状であってもよい。好ましくは、図7(a)及び図7(b)に示すように上面視円形状の円筒状としたり、図8(a)及び図8(b)に示すように上面視正方形状の角筒状としたりすることである。
【0040】
図7(a)及び(b)は型枠6の一形態を示し、図7(a)は上面図、図7(b)は側面図である。図8(a)及び(b)は型枠6の他の形態を示し、図8(a)は上面図、図8(b)は側面図である。なお、これらの図では型枠6内に熱硬化性耐火材51及びモルタル52を配設した状態を示しており、また、図面を見やすくするため合成樹脂管4を省略して示している。
【0041】
図7(a)に示す円筒形の型枠6の場合、合成樹脂管4の外径dに対して、型枠6の内径が2d〜3dに相当する寸法を有するように形成されている。この型枠6は、合成樹脂管4と同心状に配置される。
【0042】
図8(a)に示す角筒形の型枠6の場合、上面視が正方形状とされ、一辺の内法長さが、合成樹脂管4の外径dに対して2d〜3dに相当する長さ寸法となるように形成されている。どちらの型枠6も、高さは、合成樹脂管4の外径dに相当する寸法とほぼ同等程度に形成されている。型枠6は、合成樹脂管4が中心位置となるように配置される。
【0043】
型枠6の大きさ、すなわち、形成する防火処置部5の大きさは、大きいほど防耐火性能が高まるものであるが、材料コストが増加し、設置スペースを要することとなる。そのため、合成樹脂管4の外径dを基準とした前記寸法により型枠6を形成し、これにより、所定の防耐火性能及び閉塞性能を満たしつつも、材料コストを抑え、他の配管類や設備機器と干渉させないように防火処置部5を設けることが可能となる。
【0044】
前記型枠6を設置後、図5に示すように、型枠6内に硬化性の不燃材料を充填する。不燃材料には、セメントモルタル、無収縮モルタル等(以下、単にモルタル52という)を用いることができる。また、市販の常温硬化性の耐火パテ等の不燃材料を用いてもよい。
【0045】
型枠6内のモルタル52を硬化させた後、型枠6を床スラブ1の上面から取り除き脱型する。脱型後の床スラブ1には、図6に示すように、熱膨張性耐火材51とモルタル硬化体53からなる防火処置部5が形成される。
【0046】
かかる防火処置部5において、熱膨張性耐火材51を外装した合成樹脂管4は、火災時の熱や火炎によって変形したり消失したりして隙間を生じても、熱膨張性耐火材51が膨張して膨張断熱層を形成し、閉塞される。さらに、熱膨張性耐火材51が貫通孔2をも閉塞する。よって、防火処置部5が防火区画を好適に維持して、延焼を防止するものとなる。
【0047】
なお、既設管7を、図9に示す形態により更新することもできる。例えば、既設管7が、鋳鉄管や鉛管からなり、外周面に防食テープが巻かれて防食処置がなされているたて管であると、既設管7の外径と同等の外径からなる合成樹脂管4では、既設管7を除去後の貫通孔2が新規の合成樹脂管4の外径よりも大きい孔となっている場合がある。
【0048】
すなわち、合成樹脂管4を貫通孔2に容易に挿通することができるが、合成樹脂管4を挿通した貫通孔2には、既設モルタル3との間に隙間を生じる。このような場合も、前記と同様に、熱膨張性耐火材51を、貫通孔2の内径よりも大きい外形となるように合成樹脂管4の外周面に外装し、かつ、その厚みが、合成樹脂管4の管径の2〜10%となるように外装することが好ましい。
【0049】
図9に示すように、熱膨張性耐火材51としてパテ状体からなるものを用い、床スラブ1の貫通部11の内径よりも大きい外径となるように、合成樹脂管4に外装してもよい。型枠6の大きさは、図5に示した形態と同様であってよい。型枠6内には、モルタル52を充填し、硬化させる。
【0050】
このように、合成樹脂管4の外周面に熱膨張性耐火材51を外装することにより、貫通孔2の隙間を、熱膨張性耐火材51が床スラブ1の上面から塞ぐ。モルタル52を型枠6内に注入する際には、モルタル52が貫通孔2の隙間へ流入するのを防ぐことができる。また、貫通孔2の隙間が熱膨張性耐火材51で塞がれるので、この隙間が空気の流通路になることを防止し、床スラブ1の防火区画を維持することができる。
【0051】
また、たて管更新のための上記一連の工程は、すべて床スラブ1の上面側である上階において行うことができる。よって、作業者が上階と下階とを行き来する必要はなく、また上階と下階の双方に作業者を配置する必要もない。したがって、たて管の更新作業を、効率よく迅速に進めることができる。さらに、貫通孔2に対する拡径処理を一切行わないので、床スラブ1のコンクリートやモルタルを破壊する作業が不要であり、粉塵の飛散、騒音、及び振動のいずれの問題も回避することが可能となる。
【0052】
なお、本発明に係るたて管更新方法は、上記排水たて管のほか、給水管、ケーブル管、配電管、電線管、冷媒管等の防火区画を貫通して屋内に設けられる多様な配管類に適用可能であり、どのような既設たて管も防火区画を維持しつつ好適に新規の合成樹脂管4に更新することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、防火区画を貫通して設けられたたて管の更新に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 床スラブ
11 貫通部
2 貫通孔
3 既設モルタル
4 合成樹脂管
5 防火処置部
51 熱膨張性耐火材
52 モルタル
53 モルタル硬化体
6 型枠
7 既設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火区画の床スラブを貫通する既設たて管を除去し、前記たて管除去後の貫通孔に新規の合成樹脂管を配設するたて管更新方法であって、
前記貫通孔に対し拡径処理をすることなく、該貫通孔に前記たて管と略同等の外径からなる合成樹脂管を挿通するとともに、床スラブの上面側に露出する前記合成樹脂管の外周面に熱膨張性耐火材を外装する工程と、
前記床スラブの上面に、前記熱膨張性耐火材の周囲を取り囲むように型枠を設置する工程と、
前記型枠内に硬化性の不燃材料を充填する工程と、
前記不燃材料の硬化後、前記型枠を除去する工程とを含み、
防火区画の一部をなす防火処置部を前記床スラブの上面に形成することを特徴とするたて管更新方法。
【請求項2】
請求項1に記載のたて管更新方法において、
前記熱膨張性耐火材を前記貫通孔の内径よりも大きい外形となるように外装することを特徴とするたて管更新方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のたて管更新方法において、
前記防火処置部を、床スラブの上面に、前記合成樹脂管の外径に相当する高さで設けることを特徴とするたて管更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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