説明

たばこ用巻紙

【課題】十分な通気性と強度を有し、しかも、副流煙由来有害物質(特に悪臭物質)の除去性能に優れるたばこ用巻紙を提供する。
【解決手段】ゼオライト−パルプ複合体とパルプとを固形分重量比70:30〜30:70の割合で含む紙原料を抄紙して得られた、ゼオライトを15〜35重量%含有してなるたばこ用巻紙。「ゼオライト−パルプ複合体」とは、パルプの実体内にゼオライトを有するパルプとゼオライトの複合体であり、「パルプの実体内」とは、パルプを構成している高分子物質の内部を意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なたばこ用巻紙に関し、特に、十分な通気性と強度を有し、かつ、副流煙由来有害物質の除去性に優れるたばこ用巻紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ等の喫煙物品からは、喫煙物品本体を通じて喫煙者により吸引される主流煙と、自然燃焼時の喫煙物品の着火先端部から立ち昇る副流煙が発生する。一般に、主流煙よりも副流煙の方が人体に対する悪影響が大きいと言われている。
【0003】
従って、従来から紙巻きタバコでは副流煙発生量を減少させるためにその巻紙に微粉炭素を含有させる提案がある。しかし、微粉炭素を巻紙に含有させるためにはバインダーが必要であり、また、バインダーを添加しても巻紙から剥落するおそれがあり、その効果は十分とはいえない。そこで、近時においては、炭素繊維を5g/m以上の割合で含有する巻紙を内側に、炭素材料を含有しない巻紙を外側にして二重に巻装された喫煙物品(特許文献1)等も提案されているが、巻紙を二重巻きにすることから、紙巻タバコの生産性の低下やコストの上昇をまねき、また、巻紙にとって重要な要求性能の一つである燃焼性が低下する傾向となる。なお、これらの提案は副流煙自体の減少を目的としているが、副流煙中の有害物質を減少させる(副流煙中の有害物質を除去する)シガレットペーパーも提案されており、例えば、特許文献2には、塩基性リン酸カルシウム粉末を混合もしくは表面に吸着させた巻紙が副流煙中のタール分やカドミウムや鉛の重金属量を減少させ得ることを謳っている。しかし、副流煙が及ぼす人体への悪影響のなかでも、悪臭被害は最も身近な問題であり、特許文献2の提案は、副流煙中の悪臭物質(成分)の除去という課題については対策が図られていない。
【0004】
ところで、シガレットペーパー等のタバコ用巻紙の原料としては、亜麻が主流であり、その他の非木材パルプとしては大麻が使用される。しかし、非木材パルプは非常に高価であるため、木材パルプとの混抄を行うのが一般的である。なお、亜麻パルプは高純度のものが得られやすく、燃焼性が良好で、喫味が優れており、比較的強度が高く、高不透明度の紙が得られるという優れた性質を有する。しかし、タール量減少に有効な高気孔性シガレットペーパー用としての性質は十分でない。
【0005】
また、シガレットペーパーは、非常に軽量な紙(通常、坪量が21〜22g/m(日本)、25〜26g/m(アメリカ)、15〜55g/m(ヨーロッパ))であるが、たばこの巻き上げ機は、通常、8000〜14000本/分の高速でシガレットペーパーによってタバコを巻き上げていくため、シガレットペーパーは極薄の厚みでありながら、高速機械適性(引張強度等の機械的強度)も要求される。
【0006】
シガレットペーパーの一般的な要求性能としては、(1)燃焼性や(2)高速機械適性(強度)以外に、(3)自己消火性、(4)地合いが均一であること、(5)ウォーターマーキングおよびプレスマーキングが均一であること、(6)不透明性が高いこと、(7)紙が純白であること、(8)灰が純白であること等が挙げられる。なお、シガレットペーパーの燃焼性は燃焼速度が速すぎても問題であり、喫煙の際に火が消えずに適度な速度で燃焼するように、通常、助燃剤(例えば、酒石酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、硝石等)が抄紙工程で塗工される。
【0007】
前述したように、シガレットペーパーは気孔度が高いほど低タールタバコに適すると言われている。すなわち、シガレットペーパーの気孔度が高いとタバコを吸っているときにシガレットペーパーを通して側面から空気が入るので、これによって煙を薄くし、発生するタール分(やに)が少なくなる。しかしながら、一般に紙の強度を低下させずに、タール分(やに)の減少に有効な高い気孔度(通常、通気度が180ml/min以上といわれている)のシガレットペーパーを抄紙のみの工程によって得ることは困難であり、近年、抄紙して得られた紙を板状あるいはロール状のアースの上に並べられた多数の電極の間に通して、放電させて開孔を形成する方法が行われている。しかし、工程数が増加することや、開孔装置を必要とすることから、生産性、コスト高の問題を避けることができない。なお、開孔の方法は、放電以外に機械で行う方法、レーザーで行う方法等も開発されているが、同様の問題点を有する。
【特許文献1】特開2003−189840号公報
【特許文献2】特開2000−287667号公報
【特許文献3】特表2004−508470号公報
【特許文献4】特表2005−523389号公報
【特許文献5】特開平11−315492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、抄紙工程後の開孔処理を行うことなく、十分な通気性と強度を有し、しかも、副流煙由来有害物質(特に悪臭物質)の除去性能に優れる、たばこ用巻紙を提供することである。
また、かかる十分な通気性及び強度と、優れた副流煙由来有害物質の除去性能を有するだけでなく、燃焼コントロール剤を配合せずに適度な燃焼性を示すたばこ用巻紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、原料パルプにゼオライト−パルプ複合体を特定量混合することにより、シガレットペーパーに要求される基本的物性(坪量、燃焼性、自己消火性、紙および灰の純白性等)を満たしつつ、十分な通気性と強度が得られ、しかも、優れた副流煙由来有害物質(特に悪臭物質)の除去機能を備えた、シガレットペーパーに特に好適なたばこ用巻紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)ゼオライト−パルプ複合体とパルプとを固形分重量比70:30〜30:70の割合で含む紙原料を抄紙して得られた、ゼオライトを15〜35重量%含有してなるたばこ用巻紙、
(2)ゼオライト−パルプ複合体のパルプが麻パルプであることを特徴とする上記(1)記載のたばこ用巻紙、
(3)ゼオライト−パルプ複合体が、銀、銅及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属を担持した金属担持ゼオライト−パルプ複合体である、上記(1)又は(2)記載のたばこ用巻紙、
(4)ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22重量%以上含むゼオライト−パルプ複合体である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のたばこ用巻紙、
(5)ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22〜55重量%含むゼオライト−パルプ複合体である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のたばこ用巻紙、
(6)通気度が80ml/min以上、400ml/min以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のたばこ用巻紙。
(7)ゼオライト−パルプ複合体とパルプとを、少なくともゼオライト−パルプ複合体を叩解した後、両者を固形分重量比が70:30〜30:70となるように混合し、該混合パルプを抄紙して坪量15〜55g/mの紙に仕上げることを特徴とする、たばこ用巻紙の製造方法、
(8)ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22重量%以上含むゼオライト−パルプ複合体である、上記(7)記載のたばこ用巻紙の製造方法、及び
(9)ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22〜55重量%含むゼオライト−パルプ複合体である、上記(7)記載のたばこ用巻紙の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タール量減少に有効な通気性と高速機械適性(十分な引張強度)を併せ持ち、しかも、タバコの副流煙による非喫煙者への悪影響の軽減に有効な、特にシガレットペーパーに有用なたばこ用巻紙を得ることができる。
また、本発明のたばこ用巻紙は、タール量減少に有効な通気性を有し、しかも、燃焼コントロール剤を配合することなく、適度な燃焼性を示すことから、これを使用することで、喫煙感のマイルドなタバコを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明のたばこ用巻紙は、ゼオライト−パルプ複合体とパルプとを固形分重量比70:30〜30:70の割合で含む紙原料を抄紙して得られ、かつ、ゼオライトを15〜35重量%含有してなることが主たる特徴である。
【0013】
本発明でいう、「たばこ用巻紙」は、タバコの刻み部分を包む「シガレットペーパー」、タバコのフィルター部分を包む「プラグ巻取り紙」及びシガレットペーパーとプラグ巻取り紙をつなぐ「チップペーパー」を包含する概念である。
【0014】
本発明における「ゼオライト−パルプ複合体」とは、本出願人が、特開平11−315492号公報(特許文献5)で提案した「親水性高分子基材の実体内に無機多孔結晶を有する無機多孔結晶−親水性高分子複合体」であって、無機多孔結晶がゼオライトで、親水性高分子基材がパルプからなるものである。すなわち、「パルプの実体内にゼオライトを有するゼオライト−パルプ複合体」である。ここでいう「パルプの実体内」とは、パルプを構成している高分子物質の内部を意味し、例えばセルロース繊維の細胞壁表面、細胞壁内に存在する細孔および細胞内腔(ルーメン)は含まれない。また、「パルプの実体内にゼオライトを有する」とは、ゼオライトの一部または全部がパルプの実体内に存在することを意味する。
【0015】
当該ゼオライト−パルプ複合体は、膨潤しているパルプの存在下で、ケイ素化合物及びアルミニウム化合物と、塩基性物質とをパルプの実体内で反応させることにより製造される。製造方法は、特許文献6に記載の通りであり、詳述すれば、以下の通りである。
【0016】
第1方法(方法1)としては、まず、ケイ素化合物の水溶液をパルプに含浸させる。含浸方法は特に制限はなく、例えば、パルプを水溶液に浸漬する、水溶液をパルプにスプレーする、または各種コーターで塗布する等の方法を用いることができる。ケイ素化合物としては、水に溶解するものであれば特に制限はないが、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、オルトケイ酸カリウム、水ガラス、シリカゾル等が挙げられるが、水に対する溶解度が高く、結晶性の高いゼオライトが得られる点からメタケイ酸ナトリウムが好ましい。ケイ素化合物の水溶液の濃度は特に制限はないが、好ましくは1.0〜100mmol/l、さらに好ましくは10〜50mmol/lである。
【0017】
ケイ素化合物の水溶液を含浸させたパルプは、含浸された溶液の量を調節することが好ましく、ブレードで掻き取る、ロール間で絞る、またはプレスで絞る方法等で行う。調節後の含浸溶液の量に特に制限はないが、パルプの乾燥重量に対して1.0〜20倍の範囲に調節することが好ましい。ケイ素化合物の水溶液を含浸させたパルプは、溶液が十分浸透するように溶液の量を調節する前または後に含浸(浸透)時間をおいてもよく、含浸時間は10分〜2時間から適宜選択できる。
【0018】
次に溶液の量を調節したパルプを、アルミニウム化合物および塩基性物質の混合水溶液に浸漬させる。アルミニウム化合物としては、例えばアルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられるが、水に対する溶解度が高く、結晶性の高いゼオライトが得られる点からアルミン酸ナトリウムが好ましい。アルミン酸塩の水溶液の濃度は特に制限はないが、好ましくは1.0〜1000mmol/l、さらに好ましくは10〜500mmol/lである。塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが、水に対する溶解度が高く、結晶性の高いゼオライトが得られる点から水酸化ナトリウムが好ましい。塩基性物質の濃度は、ゼオライトを結晶化させるために、かなり高いアルカリ濃度が必要であることから10〜5000mmol/l、好ましくは100〜2500mmol/lである。浸漬する温度は20〜90℃であり、好ましくは40〜60℃である。浸漬する時間は2時間〜20日間であり、好ましくは12時間〜2日間である。
【0019】
膨潤しているパルプの存在下での、ケイ素化合物、アルミニウム化合物および塩基性物質の混合比(モル比)は1:1〜10:10〜50が好ましく、より好ましくは1:3〜5:12〜30である。塩基性物質をケイ素化合物およびアルミニウム化合物に対して過剰に加えているが、これは、特に4Aゼオライトの場合、ゼオライト結晶自体が準安定相であるために、過剰のアルカリ条件下以外では合成できないためである。
【0020】
浸漬する温度が20〜90℃の範囲であり、浸漬する時間が2時間〜20日間で、ケイ素化合物、アルミニウム化合物および塩基性物質の混合比(モル比)が1:1〜10:10〜50であれば、パルプの実体内にゼオライトを効率よく生成することができる。
【0021】
なお、上記第1方法(方法1)以外のゼオライト−パルプ複合体を製造する別の方法としては、アルミニウム化合物の水溶液を先にパルプに含浸させ、次いでケイ素化合物および塩基性物質の混合水溶液を浸漬させてもよい。さらにケイ素化合物或いはアルミニウム化合物のどちらか一方と塩基性物質の混合水溶液を先にパルプに含浸させ、次いで残りのもう一つの水溶液に浸漬させてもよい。即ち、ケイ素化合物およびアルミニウム化合物の水溶液は、両者を混合した時点でゲルが生成するために、同時にパルプに含浸はできないが、その他の順序ならば特に制限はない。例えば、塩基性物質の水溶液をパルプに含浸させて、次いでケイ素化合物の水溶液に含浸させ、最後にアルミニウム化合物の水溶液に浸漬するような3工程を経ても良い。但し、これらの方法で製造されるゼオライト−パルプ複合体のゼオライト担持率は、前記の第1方法(方法1)で製造されるゼオライト−パルプ複合体のそれと比べてやや劣ることから、好ましくは第1方法(方法1)で製造するのがよい。第1方法(方法1)は一般的なゼオライトの合成条件に比べ、非常に緩やかな合成条件であるので、パルプにダメージを与えることなくゼオライトを担持することができる。
【0022】
以上記載の方法により、パルプに木材パルプを使用した場合はゼオライト−木材パルプ複合体が得られ、パルプに麻パルプを使用した場合はゼオライト−麻パルプ複合体が得られる。本発明では、かかるゼオライト−パルプ複合体を麻パルプや木材パルプなどのパルプとともに抄紙工程に供することで、目的の優れた副流煙由来有害物質(特に悪臭物質)の除去機能を備えたたばこ用巻紙、特にシガレットペーパーに好適なたばこ用巻紙を得ることができる。なお、本発明において「麻パルプ」とは、亜麻、大麻、青麻、インド麻、黄麻、苧麻、ケナフ、サイザル麻、マニラ麻、ザイル麻、ニュージーランド麻、マザー麻等を含む概念であり、中でも、亜麻、大麻が好ましく使用される。
【0023】
本発明において、ゼオライト−パルプ複合体は、得られるたばこ用巻紙に、タバコ燃焼時に発生する副流煙由来物質を十分に除去し得る機能を付与する観点から、ゼオライト含有率が22〜55重量%の範囲にあるものが好ましく、30〜50重量%の範囲にあるものがより好ましい。すなわち、ゼオライト含有率が55重量%を超えると、繊維自体の強度が低くなり、紙の強度向上に欠かせない叩解処理(特にシガレットペーパーの強度向上には欠くことができない。)に耐えられない傾向となり、22重量%未満では、通気度、難燃性を満足できなくなる傾向となる。なお、ゼオライト−パルプ複合体におけるゼオライト含有率はゼオライト−パルプ複合体を製造する際のゼオライトを生成させる原料濃度を適宜変更することによって容易に調整することができる。
【0024】
本発明のたばこ用巻紙では、上記のゼオライト−パルプ複合体を原料パルプ全体に対して特定量含有させることが重要である。すなわち、本発明のたばこ用巻紙は、原料パルプとして、通常のパルプとともにゼオライト−パルプ複合体を特定量使用して抄紙をすることによって得ることができる。製造工程は、JIS P 8221−2「パルプ−こう解方法」に従って、少なくともゼオライト−パルプ複合体を叩解し(好ましくはパルプとゼオライト−パルプ複合体の両方に叩解処理を施し)、叩解後の原料パルプをJIS P 8222「パルプ−試験用手すき紙の調整方法」に従って抄紙すればよい。また、従来からのたばこ用巻紙の一般的製造方法と同様に、抄紙工程後に延伸工程(高密度化工程)等を施すことができる。
【0025】
下記表1は日本の主要なシガレットペーパーの規格である。前述の背景技術の欄にも記載したように、シガレットペーパーには坪量、引張強度、伸び、不透明度、白色度、気孔度、燃焼速度、自己消火性等の種々の要求物性がある。なお、坪量は、背景技術の欄でも述べたように、日本では21〜22g/m程度であり、アメリカでは25〜26g/m程度、ヨーロッパでは15〜55g/m程度である。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明者は、ゼオライト−パルプ複合体(固形分)を原料パルプ(固形分)全体に対して30〜70重量%含有させることによって、上記のシガレットペーパーにおける一般的な要求物性を満たしつつ、優れた副流煙由来有害物質除去機能が発現し得る、シガレットペーパーに特に好適なたばこ用巻紙が得られることを見出した。すなわち、ゼオライト−パルプ複合体のゼオライト含有率によっても異なるが、一般にゼオライト−パルプ複合体(固形分)を原料パルプ(固形分)全体当たり30〜70重量%となるように使用する(すなわち、ゼオライト−パルプ複合体とパルプを両者の固形分重量比が70:30〜30:70となる範囲で併用する)ことで、副流煙中の有害物質除去に有効な量のゼオライトを含有しつつ、十分な通気性と強度を有する、シガレットペーパーに特に好適なたばこ用巻紙を実現できることを見出したものであり、原料パルプ(固形分)全体当たりのゼオライト−パルプ複合体(固形分)の含有量は好ましくは40〜60重量%、より好ましくは45〜50重量%である(ゼオライト−パルプ複合体とパルプの両者の固形分重量比は好ましくは60:40〜40:60、とりわけ好ましくは55:45〜45:55である。)。原料パルプ(固形分)全体当たりのゼオライト−パルプ複合体の含有量が30重量%未満の場合、得られるペーパーは十分な強度を示すが、高密度化するために、通気性が損なわれてしまい、反対にゼオライト−パルプ複合体の含有量が70重量%を超える場合、十分な副流煙由来有害物質除去機能と通気性が得られるが、強度が低下してしまう。
【0028】
本発明で使用する「ゼオライト−パルプ複合体」は、前述の方法により、パルプの実体内(パルプを構成している高分子物質の内部)にゼオライトの一部または全部を存在せしめたものであり、ペーパー製造の際の原料パルプに単にゼオライトを混合して抄紙したり、抄紙工程でゼオライトを配合したり、塗工したりする方法では、得ることができない。なお、シガレットペーパーを開示する特許文献3、4にはゼオライトを気孔率低下剤として含有させることが開示されている。また、ゼオライトはよく知られた吸着剤であり、ゼオライトをシガレットペーパーに含有させることで何等かの吸着性能を示すことはある程度予測できる。しかしながら、特許文献4及び特許文献5に記載されているように、ゼオライトを配合すると紙の気孔率(通気度)は低下するため、十分に高い気孔度の紙を得ることは困難である。また、比重が約1のパルプと比重が約2.4のゼオライトは良好な混合状態を形成しにくく、紙に安定にゼオライトを担持させるためには、ゼオライトを二次凝集させて配合したり、ポリビニルアルコール等のバインダーを使用する必要がある。しかし、ゼオライトを二次凝集させて配合すると、凝集剤によって細孔が塞がれてしまう傾向となり、更に抄紙ワイヤーを目詰まりさせやすい傾向となる。また、バインダーを使用するとバインダーによって通気度が低下し、また、後述の比較例に示されるように、ゼオライトの細孔が塞がれてしまうことから、有害物質(特に、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒド等の悪臭物質)の吸着作用が効果的に発揮されにくくなる。
【0029】
これに対し、本発明は、ゼオライト−パルプ複合体を使用することでバインダー等を使用することなく、副流煙中の有害物質除去に有効な充分量のゼオライトを担持させることができ、しかも、比較的高い強度を確保しながら、高い通気度を有する、シガレットペーパーに特に好適なたばこ用巻紙が得られることを見出したものである。ペーパー全体当たりのゼオライト含有量は特に限定はされないが、15〜35重量%程度が好ましく、20〜30重量%程度がより好ましい。ゼオライト含有量15重量%未満では、副流煙中の有害物質の除去性能が低下する傾向となり、ゼオライト含有量35重量%を超える場合は、ゼオライト−パルプ複合体の配合量が増えることによって、ペーパーの強度が低下するため、好ましくない。なお、通気度は、一般に、70ml/min以上、好適には80ml/min以上、さらに好適にはタール量減少に有効な180ml/min以上を達成し得る。そして、このような高い通気度を有しながらも、引張強度は8.0N/15mm以上を示し、好適には180ml/min以上の通気度において、10.0N/15mm以上の引張強度を達成し得る。なお、通気度が高過ぎると、吸気した際、シガレットペーパー側面からの空気流入量が多くなり過ぎ、タバコの刻みが自己消火してしまう恐れがあることから、通気度の上限は400ml/min以下であるのが好ましい。
【0030】
本発明のように、原料パルプに特定量のゼオライト−パルプ複合体を使用することによって、抄紙工程後に孔開け処理を行うことなく、高気孔度でかつ十分な強度のペーパーを得ることができる理由は明らかではないが、通常のパルプはプレスにより扁平状を呈するのに対し、ゼオライト−パルプ複合体の断面を電子顕微鏡で観察すると略円形であり、かかるゼオライト−パルプ複合体の特異な形状が通気性確保に作用すると考えられる。
【0031】
一般に、シガレットペーパーの最適強度は8〜15N/15mmと言われている。本発明で使用するゼオライト−パルプ複合体は叩解処理により繊維がほぐれ、水素結合が高まることにより強度が増す。従って、製造工程での、叩解処理の度合いによって、得られるペーパーの強度を調整することができ、例えば、上記の8〜15N/15mmというシガレットペーパーとしての最適強度を容易に実現できる。なお、叩解処理をしても、ゼオライトのパルプからの脱離は軽微であり、副流煙由来有害物質除去機能が低下することもない。なお、ゼオライト−パルプ複合体とともに使用する通常のパルプ(麻パルプ、木材パルプ)も叩解処理をして用いるのが好ましい。ゼオライト−パルプ複合体の叩解処理の程度は、通常、JIS P 8221−2「パルプ−こう解方法」に基づき、PFIミル(熊谷理機工業(株)製)によって、150〜750ml程度に叩解するのが好ましく、また、パルプ(麻パルプ、木材パルプ)の叩解処理の程度は、通常、JIS P 8221−2「パルプ−こう解方法」に基づき、PFIミル(熊谷理機工業(株)製)によって、350〜750ml程度に叩解するのが好ましい。
【0032】
従来からの一般的なシガレットペーパーには、通常、燃焼コントロール剤としてクエン酸ナトリウムが1〜3%添加されている。しかし、後述する実施例から明らかなように、本発明のたばこ用巻紙では、燃焼コントロール剤を加えなくても適度な燃焼性を示す。なお、従来一般のシガレットペーパーにおけるクエン酸ナトリウムの添加量は3%以下であり、少量であるため、大きな問題ではないが、クエン酸ナトリウムはタバコの喫味に少なからず影響するため、クエン酸ナトリウムの添加を必要としない本発明のたばこ用巻紙はタバコの喫味をよりマイルドにする利点があり、シガレットペーパーとして使用することで、かかる利点がより顕著に発揮される。
【0033】
本発明のたばこ用巻紙は、優れた副流煙由来有害物質除去性能を有し、例えば、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒド、一酸化炭素、窒素化合物等の有害物質に対して除去機能を有し、中でも、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒド等の悪臭物質に対して特に優れた除去性能を示す。すなわち、後述の実施例と比較例の対比から分かるように、本発明のたばこ用巻紙は原料パルプにゼオライトを混合して抄紙して得られる紙に比べて、副流煙由来有害物質に対する吸着性が顕著に発現して、優れた副流煙由来有害物質除去性能(特に、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒド等悪臭物質に対する除去性能)を示す。これは、ゼオライト−パルプ複合体では、ゼオライトがその機能を損なわずにパルプと一体化しているためであり、ゼオライトの非常に大きい比表面積が有効に作用するためと考えられる。
【0034】
本発明のたばこ用巻紙において、ゼオライト−パルプ複合体はパルプが麻パルプであるのが好ましい。すなわち、ゼオライト−パルプ複合体として、少なくともゼオライト−麻パルプ複合体を使用するのが好ましい。ゼオライト−麻パルプ複合体を使用することで、ペーパーの強度(特に引張強度)向上により好適に作用する。
【0035】
また、ゼオライト−パルプ複合体におけるゼオライトの骨格構造は特に限定されず、X型、A型、Y型、ZSM−5のいずれでもよいが、副流塩中に多く含まれるアンモニアの吸着能力に優れる点から、X型及び/又はA型が好ましい。
【0036】
また、ゼオライト−パルプ複合体は、ゼオライト中の陽イオン交換可能なサイトに銀、銅及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種類の金属が含有された、金属担持ゼオライト−パルプ複合体であるのが好ましい。かかる金属担持ゼオライト−パルプ複合体を使用することで、得られるペーパーは金属を含有することによる化学吸着作用が発現して、副流煙由来有害物質に対してより優れた除去性能を示すものとなる。
【0037】
なお、かかる金属担持ゼオライト−パルプ複合体は、前述した方法でゼオライト−パルプ複合体を作製後、脱液、水洗した後、ゼオライト−パルプ複合体を触媒機能を有する金属塩(金属が銀、銅又は亜鉛である金属塩)の水溶液に浸漬することにより得ることができる。金属塩の水溶液の濃度に特に制限はないが、好ましくは1.0〜100mmol/lであり、浸漬する温度や時間にも特に制限はない。この時、パルプは水溶液を浸透させ得るので、パルプの実体内のゼオライト全体に無駄なく金属を担持させることができる。また、当該金属担持複合体における金属の担持量は、0.01〜100mg/g程度が好ましく、0.1〜50mg/g程度がより好ましい。
【0038】
本発明のたばこ用巻紙において、抄紙用の原料には、パルプ及びゼオライト−パルプ複合体以外に、例えば、通気性のコントロールを目的として炭酸カルシウム剤を適量配合したり、喫味の改善等を目的としてメンソールやユーカリ等の香料を適量配合してもよい。
【0039】
本発明において、たばこ用巻紙の坪量は特に限定されない。例えば、日本の規格に合わせる場合21〜22g/m程度であり、アメリカの規格に合わせる場合は25〜26g/m程度、ヨーロッパの規格に合わせる場合は15〜55g/m程度である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例と比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0041】
1.ゼオライト−パルプ複合体の製造
[製造例1]
チリ産のラハパルプ(針葉樹クラフトパルプ:NBKP)を乾燥重量(105℃)で36.8g秤量し、ポリプロピレン容器に入れ、これに苛性ソーダ150g、ケイ酸ソーダ80g、アルミン酸ソーダ57gを加え、水を1リットル加えて、撹拌した。
この容器を密封し、90℃に設定した電気乾燥機に18時間静置した。反応終了後、5リットルの水で洗浄し、小型遠心分離機で脱水した。
この操作により、乾燥重量でゼオライト−NBKP複合体65gを得た。この複合体を電気炉で灰化することにより、この複合体には48重量%のX型ゼオライトを含有していることがわかった。
【0042】
[製造例2]
チリ産のラハパルプ(針葉樹クラフトパルプ:NBKP)を乾燥重量(105℃)で36.8g秤量し、ポリプロピレン容器に入れ、これに苛性ソーダ150g、ケイ酸ソーダ40g、アルミン酸ソーダ57gを加え、水を0.8リットル加えて、撹拌した。
この容器を密封し、90℃に設定した電気乾燥機に18時間静置した。反応終了後、5リットルの水で洗浄し、小型遠心分離機で脱水した。
この操作により、乾燥重量でゼオライト−NBKP複合体64gを得た。この複合体を電気炉で灰化することにより、この複合体には41重量%のA型ゼオライトを含有していることがわかった。
【0043】
[製造例3]
エクアドル産の麻パルプを乾燥重量(105℃)で36.8g秤量し、ポリプロピレン容器に入れ、これに苛性ソーダ150g、ケイ酸ソーダ80g、アルミン酸ソーダ57gを加え、水を1リットル加えて、撹拌した。
この容器を密封し、90℃に設定した電気乾燥機に18時間静置した。反応終了後、5リットルの水で洗浄し、小型遠心分離機で脱水した。
この操作により、乾燥重量でゼオライト−麻パルプ複合体65gを得た。この複合体を電気炉で灰化することにより、この複合体には52重量%のX型ゼオライトを含有していることがわかった。
【0044】
[製造例4]
エクアドル産の麻パルプを乾燥重量(105℃)で36.8g秤量し、ポリプロピレン容器に入れ、これに苛性ソーダ150g、ケイ酸ソーダ40g、アルミン酸ソーダ57gを加え、水を0.8リットル加えて、撹拌した。
この容器を密封し、90℃に設定した電気乾燥機に18時間静置した。反応終了後、5リットルの水で洗浄し、小型遠心分離機で脱水した。
この操作により、乾燥重量でゼオライト−麻パルプ複合体64gを得た。この複合体を電気炉で灰化することにより、この複合体には45重量%のA型ゼオライトを含有していることがわかった。
【0045】
[製造例5]
製造例1で製造したゼオライト−NBKP複合体を10g秤量し、500ppmに調製した硫酸銅・5水和物水溶液300ミリリットルが入った容器に入れ、陽イオン交換反応を行うために室温条件下で60分間撹拌した。反応終了後、小型遠心分離機で脱水した。
この操作により、乾燥重量で銅含有X型ゼオライト−NBKP複合体10gを得た。この複合体1gを1Nの硝酸に浸漬することで銅含有X型ゼオライトを溶解し、原子吸光分析装置で分析した結果、この複合体は45mg/gの銅を含有していることがわかった。
【0046】
[製造例6]
製造例4で製造したゼオライト−麻パルプ複合体を10g秤量し、500ppmに調製した硫酸亜鉛・7水和物水溶液300ミリリットルが入った容器に入れ、陽イオン交換反応を行うために室温条件下で60分間撹拌した。反応終了後、小型遠心分離機で脱水した。
この操作により、乾燥重量で亜鉛含有A型ゼオライト−NBKP複合体10gを得た。この複合体1gを1Nの硝酸に浸漬することで亜鉛含有A型ゼオライトを溶解し、原子吸光分析装置で分析した結果、この複合体は40mg/gの亜鉛を含有していることがわかった。
【0047】
2.実施例と比較例
[実施例1]
製造例1〜6で得られた複合体を、JIS P 8221−2「パルプ−こう解方法」に基づき、熊谷理機工業製のPFIミルを用いて、カナディアンフリーネスで195mlまで叩解した。またラハパルプを655mlまで同様に叩解した。
叩解処理後の複合体を固形分24.7%、同じく叩解処理後のラハパルプを固形分18.5%になるように脱水し、複合体:ラハパルプの重量比が60:40および40:60になるように秤量した。この原料を坪量40g/mの紙(25×25cm)を得るために実施したJIS P 8222「パルプ−試験用手すき紙の調整方法」での紙にする際の各処方を表2に示す。表中の「配合比」は、主原料と副原料の固形分重量比(主原料:副原料)であり、「主原料(g)」及び「副原料(g)」は脱水前の重量である。
【0048】
【表2】

【0049】
[比較例1]
エクアドル産麻パルプをJIS P 8221−2「パルプ−こう解方法」に基づき、熊谷理機工業製のPFIミルを用いて、カナディアンフリーネスで195mlまで叩解した。また、ラハパルプを655mlまで同様に叩解した。
これらの原料(乾燥重量でそれぞれ1g)に粉末状の市販X型ゼオライト、市販A型ゼオライト、市販銅含有X型ゼオライトを0.5g加え、40g/mの紙(25×25cm)を得るためにJIS P 8222「パルプ−試験用手すき紙の調整方法」に基づいて抄紙した。
【0050】
[比較例2]
エクアドル産麻パルプをJIS P 8221−2「パルプ−こう解方法」に基づき、熊谷理機工業製のPFIミルを用いて、カナディアンフリーネスで195mlまで叩解した。また、ラハパルプを655mlまで同様に叩解した。
これらの原料を用いてJIS P 8222「パルプ−試験用手すき紙の調整方法」に基づいて抄紙し、25g/mの紙を得た。この紙にポリビニルアルコール系バインダーを用いて、15g/mの含有量となるように粉末状の市販X型ゼオライト、市販A型ゼオライト、市販亜鉛含有A型ゼオライトを塗工した。
【0051】
[比較例3]
製造例1で得られた複合体を、JIS P 8221−2「パルプ−こう解方法」に基づき、熊谷理機工業製のPFIミルを用いて、カナディアンフリーネスで195mlまで叩解した。またラハパルプを655mlまで同様に叩解した。
叩解処理後の複合体を固形分24.7%、同じく叩解処理後のラハパルプを固形分18.5%になるように脱水し、複合体:ラハパルプの重量比が80:20および20:80になるように秤量した。この原料を40g/mの紙(25×25cm)を得るために実施したJIS P 8222「パルプ−試験用手すき紙の調整方法」の紙にする際の各処方を表3に示す。表中の「配合比」は、主原料と副原料の固形分重量比(主原料:副原料)であり、「主原料(g)」及び「副原料(g)」は脱水前の重量である。
【0052】
【表3】

【0053】
[比較例4]
φ150mmのNo.5の濾紙122g/mを試料No.19とし、これに1%クエン酸ナトリウム水溶液を滴下し、クエン酸ナトリウムを3%配合したシートにしたものを試料No.20とした。
【0054】
3.実験
実験例1(ゼオライト含有率)
実施例1及び比較例1、2で得られた各たばこ用巻紙を電気炉で灰化し、ゼオライト含有率を求めた。その結果を表4に示す。表中の「配合比」は、主原料と副原料の固形分重量比(主原料:副原料)である。
【0055】
【表4】

【0056】
実施例1で製造したたばこ用巻紙の坪量はほぼ40g/mであった。各サンプル中のゼオライトの歩留り率は95〜97%であり、ゼオライト−パルプ複合体が叩解処理後もゼオライトを脱落させることなく、たばこ用巻紙に含有されていることがわかった。
【0057】
比較例1では、坪量は37.5g/mとなり、理論値より低かった。また理論上のゼオライト含有率は20%となるが、実際にNo.11、No.12、No.13とも14%台となり、歩留り率は約70%であった。これは、手漉き抄紙の際にゼオライトの網抜けがあったものと考えられた。
【0058】
比較例2ではバインダーを用いた影響で、実施例1とほぼ同じ90〜95%の歩留り率であった。比較例3においても操作自体は実施例1と同じなので各サンプル中のゼオライトの歩留り率は約96%となった。
【0059】
実験例2(引張強度)
実施例1及び比較例1、2および3で得られた各たばこ用巻紙をJIS P 8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に基づき、巾15mmの引張強度を求めた。その結果を表5に示す。表中の「配合比」は、主原料と副原料の固形分重量比(主原料:副原料)である。
【0060】
【表5】

【0061】
実施例1で製造したたばこ用巻紙は全て8N/15mm以上であった。主原料となるパルプを麻パルプにすることで引張強度はより高い値となった。
比較例1のたばこ用巻紙では、十分な引張強度を有することがわかった。また引張強度測定では、紙が千切れるときの強度を測るのであるが、ゼオライトと思われる粉末が空中を漂うことがわかった。
比較例2のたばこ用巻紙では、紙自体の坪量が25g/mしかないため、引張強度としては低い値であった。
比較例3では複合体:NBKPの割合が80:20のものは、生産に耐えられないほど強度が低いことがわかった。また複合体:NBKPの割合が20:80のものはかなり高い強度を示すことがわかった。
【0062】
実験例3(悪臭吸着)
実施例1で得られたサンプルのうちNo.3、No.4、No.9およびNo.10、比較例1のNo.11、No.13、比較例2のNo.14、No.16を10×10cmの小片とし、室温条件下でアンモニアガス、酢酸ガスおよびアセトアルデヒドガス1.5lのガス吸着能について検知管法を用いて調べた。
【0063】
【表6】

【0064】
実施例1から選抜したNo.3、No4、No.9およびNo.10はアンモニア、酢酸、アセトアルデヒドに対して、比較例1および2のサンプルに比べて優れた除去性能を示した。特に銅または亜鉛を含有したNo.9およびNo.10はアンモニアの除去性能が優れていた。また比較例2ではゼオライト含有量が多いにもかかわらず、また亜鉛を含有させたサンプルにおいても効果的な悪臭吸着能は発現しなかった。これはポリビニルアルコール系バインダーによりゼオライトの細孔が塞がれていることが原因と考えられた。
【0065】
実験例4(高気孔度(通気度))
実施例1で得られたサンプルのうちNo.6およびNo.8、比較例1のNo.12、比較例2のNo.15、比較例3のNo.17、No.18を10×10cmの小片とし、23℃−50%RH条件下で平均細孔径および最大細孔径、通気度をPMI社製細孔分布測定器(パームポロメーター)で測定した。
結果を表7に示す。
【0066】
【表7】

【0067】
実験例5(燃焼性)
実施例1で得られたサンプルのうちNo.1およびNo.5、比較例1のNo.11、比較例2のNo.14、比較例3のNo.17およびNo.18、比較例4のNo.19およびNo.20を15mm×150mmの短冊とし、無風下、セラミック板上でライターを用いて端に炎を1秒つけ、全体が燃焼する燃焼速度を記録する方法で燃焼試験を行った。結果を表7に示す。
【0068】
【表8】

【0069】
実施例1のサンプルであるNo.1およびNo.5は燃焼自体がゆっくりであり、炎も立たなかった。
比較例1のサンプルであるNo.11も燃焼自体がゆっくりであり、炎も立たなかった。
比較例2のサンプルであるNo.14も燃焼自体がゆっくりであり、炎も立たなかった。灰の色は少し黒みがかっていた。
比較例3のサンプルであるNo.17も燃焼が非常にゆっくりであり、炎も立たなかった。
No.18は炎を出して燃え、燃焼時間が短かった。
比較例4のサンプルであるNo.19は炎を出して燃え、燃焼時間も短かった。
No.20は燃焼自体がゆっくりであったが、灰が黒色であった。
【0070】
従来、シガレットペーパーにおいては引張強度などの機械強度を上げると、通気性が阻害され、通気性を確保しようとすれば機械強度が低下するというトレードオフの関係にあった。しかし、上記の実施例と試験結果から分かるように、本発明のたばこ用巻紙は、副流煙中の悪臭物質を除去剤として機能するゼオライトを十分量含有する状態で、十分な強度と通気性(好適には低タールタバコに有効な180ml/min以上の通気度)を有することができ、しかも、燃焼性についても従来添加されていた燃焼コントロール剤を使用することなく、燃焼性をコントロールできるという、優れた機能を有しており、シガレットペーパーとして特に有用であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト−パルプ複合体とパルプとを固形分重量比70:30〜30:70の割合で含む紙原料を抄紙して得られた、ゼオライトを15〜35重量%含有してなるたばこ用巻紙。
【請求項2】
ゼオライト−パルプ複合体のパルプが麻パルプであることを特徴とする請求項1記載のたばこ用巻紙。
【請求項3】
ゼオライト−パルプ複合体が、銀、銅及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属を担持した金属担持ゼオライト−パルプ複合体である、請求項1又は2記載のたばこ用巻紙。
【請求項4】
ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22重量%以上含むゼオライト−パルプ複合体である、請求項1〜3のいずれか1項記載のたばこ用巻紙。
【請求項5】
ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22〜55重量%含むゼオライト−パルプ複合体である、請求項1〜3のいずれか1項記載のたばこ用巻紙。
【請求項6】
通気度が80ml/min以上、400ml/min以下である請求項1〜5のいずれか1項記載のたばこ用巻紙。
【請求項7】
ゼオライト−パルプ複合体とパルプとを、少なくともゼオライト−パルプ複合体を叩解した後、両者を固形分重量比が70:30〜30:70となるように混合し、該混合パルプを抄紙して坪量15〜55g/mの紙に仕上げることを特徴とする、たばこ用巻紙の製造方法。
【請求項8】
ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22重量%以上含むゼオライト−パルプ複合体である、請求項7記載のたばこ用巻紙の製造方法。
【請求項9】
ゼオライト−パルプ複合体が、ゼオライトを22〜55重量%含むゼオライト−パルプ複合体である、請求項7記載のたばこ用巻紙の製造方法。

【公開番号】特開2009−191393(P2009−191393A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32063(P2008−32063)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】