説明

たばこ臭防臭剤

【課題】たばこ臭等の不快な臭気に対する防臭・消臭効果を有し、更にその防臭・消臭効果が衣類着用時にも持続可能なたばこ臭防臭剤及びそれを含む繊維製品処理剤組成物の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるケイ酸エステルからなるたばこ臭防臭剤、当該たばこ臭防臭剤を含有する繊維製品処理剤組成物、及び繊維製品を当該繊維製品処理剤組成物で処理する繊維製品のたばこ臭防臭方法。


〔4個のRは同一の若しくは相異なる香料残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であって、少なくとも1つのRは4-メチル-3-デセン-5-オールから水酸基を除いた残基を示し、残りのRはそれぞれアルコール系香料若しくはフェノール系香料から水酸基1個を除いた残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこの不快な臭気に対して長期にわたって防臭・消臭効果を有するたばこ臭防臭剤、及びこれを含有する繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用の繊維製品処理剤組成物には、衣類を柔らかくする、静電気を防ぐ、衣類のしわを取るなどの基本性能に加えて、抗菌効果、香りの持続性等の性能をも併せ持たせることが一般的になりつつある。一般に、繊維製品に香りを付与する方法として、香料を含有する組成物を用いて、水又は有機溶媒を介して繊維製品に処理する方法が挙げられる。しかしながら、通常、繊維製品に付与された香料は、乾燥時に溶媒と共に揮散したり、乾燥後から経時で揮散するため、繊維製品から発する香りは経時的に弱くなっていく。このため、繊維製品に付与された香気を長期間持続させることが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、香気性アルコール由来の炭化水素基を有するケイ素化合物を配合した繊維製品処理剤組成物で繊維製品を処理した後、再び水と接触することで香りが増加することが開示されている。また、特許文献2には、アルコール系香料残基又はフェノール系香料残基を有するケイ酸エステルと残香性香料を配合した柔軟剤組成物で処理した繊維製品は、経時的な香りの強度差が少ないことが開示されている。
【0004】
また、香りの持続性に加えて、衣類に防臭機能を付与することができる製品も上市されており、特に、たばこ臭などの不快な臭気に対する防臭・消臭機能へのニーズが高くなっている。例えば、特許文献3には、残香によるたばこ臭の防臭・消臭が可能な柔軟剤用香料組成物が開示されている。この文献では、残香性の異なる2群の香料成分を一定比率で配合することにより、柔軟剤処理した直後の衣類の香りはもとより、処理した衣類を着用した際のたばこ臭などの不快な付着臭の防臭・消臭効果が優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-133073号公報
【特許文献2】特開2011-63674号公報
【特許文献3】特開2006-124884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載の発明においては、たばこ臭等の付着臭の防臭・消臭に関する検討はされていない。また、特許文献3のたばこ臭防臭技術では、乾燥衣類に対し付与した防臭効果を長期間にわたり維持するという点においては必ずしも十分ではない場合があった。
【0007】
本発明の課題は、たばこ臭等の不快な臭気に対する防臭・消臭効果を有し、更にその防臭・消臭効果が衣類着用時にも持続可能なたばこ臭防臭剤及びそれを含む繊維製品処理剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、4-メチル-3-デセン-5-オールのケイ酸エステル型誘導体をたばこ臭防臭剤として用いることにより、前記課題を解決できることを見出した。4-メチル-3-デセン-5-オールは香り立ちのトップノートに特徴的な青臭さを与えるグリーンな香調を有する香料素材であり、アクセント素材として比較的少量用いられるものであった。また、その特異なグリーン感ゆえに香調のバランスを取るのが難しく、配合量を増やすことが難しいものであった。そこで、たばこ臭のようにニオイが吸着した表面から比較的長時間持続的に発せられる臭気をマスキングするために、香料の配合量を増やして、香りの持続性を向上させようとしても、4-メチル-3-デセン-5-オールを増量することが困難であった。そのため、4-メチル-3-デセン-5-オールのたばこ臭のマスキング効果は従来知られていなかった。
【0009】
ここにおいて本発明者は、4-メチル-3-デセン-5-オールがたばこ臭マスキング効果を有することを見出したが、それは当該化合物を比較的高濃度に配合した場合に発現するものであった。そこで更に鋭意検討を進めた結果、4-メチル-3-デセン-5-オールをケイ酸エステル化したところ、4-メチル-3-デセン-5-オールそのものを用いる場合より少ない配合量であっても、たばこ臭のマスキング効果を発現できること、及びその効果が長時間にわたることを見出した。そして、アクセント素材として残香に好ましい特徴的な印象を、4-メチル-3-デセン-5-オールそのものを配合した場合よりも、より長時間に渡ってバランスよく与え続けられることも見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、一般式(1)で表されるケイ酸エステルからなるたばこ臭防臭剤を提供するものである。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、4個のRは同一の若しくは相異なる香料残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であって、少なくとも1つのRは4-メチル-3-デセン-5-オールから水酸基を除いた残基を示し、残りのRはそれぞれアルコール系香料若しくはフェノール系香料から水酸基1個を除いた残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
【0013】
また本発明は、上記たばこ臭防臭剤を含有する繊維製品処理剤組成物を提供するものである。
【0014】
更に本発明は、繊維製品を上記の繊維製品処理剤組成物で処理する繊維製品のたばこ臭防臭方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のたばこ臭防臭剤及びこれを含有する繊維製品処理剤組成物は、処理した衣類を着用した際のたばこ臭などの不快な付着臭の防臭・消臭効果に優れ、これを持続的に発揮することができる。また、本発明のたばこ臭防臭剤は湿気や水分との存在下でより強くたばこ臭防臭効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔たばこ臭防臭剤〕
一般式(1)で表されるケイ酸エステルにおいて、4個のRのうち、少なくとも1つは4-メチル-3-デセン-5-オールから水酸基を除いた残基である。徐放性とたばこ臭消臭性性能の観点から、一般式(1)で表されるケイ酸エステル中、2〜4個のRが4-メチル-3-デセン-5-オールから水酸基を除いた残基であることが好ましく、4個のRの全てが4-メチル-3-デセン-5-オールから水酸基を除いた残基であることがより好ましい。
【0017】
ケイ酸エステルとしては、4個のRのうち香料残基が全て同一である「単独型」と、4個のRのうち香料残基が複数の香料種である「ハイブリッド型」があるが、いずれを使用することもできる。単独型の場合、4-メチル-3-デセン-5-オールが少なくとも1つ付加し、残りのRは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。ハイブリッド型の場合、4-メチル-3-デセン-5-オールが少なくとも1つ、及びアルコール系香料又はフェノール系香料が少なくとも1つ付加し、いずれの香料も付加していない場合、残りのRは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。ハイブリッド型である場合、香料残基Rに用いる4-メチル-3-デセン-5-オール以外の香料素材としては、アルコール系香料としての炭素数6以上の1級若しくは2級の、脂肪族アルコール、テルペン系アルコール若しくは芳香族アルコール、又はフェノール系香料としてのフェノール若しくはその誘導体が使用される。適度な香りの持続性を有する観点から、官能基として水酸基のみを有し、更にエーテル結合を有してもよい香料素材が好ましい。かかる香料素材として、シス-3-ヘキセノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、9-デセノール、ファルネソール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、2-フェノキシエチルアルコール、4-(n-ブトキシ)フェノール、カルベオール、シンナミックアルコール、2-メチル-4-フェニル-1-ペンタノールが挙げられる。
【0018】
一般式(1)のような構造のケイ酸エステルは、衣類等の繊維製品への吸着性が高く、香料の徐放性に優れた香料前駆体であり、香料の揮発量をより低い濃度にしつつ防臭・消臭効果及び持続性を発揮することができる。そして、4-メチル-3-デセン-5-オールを上記ケイ酸エステルの形とすることにより、たばこ臭防臭効果が発現されると共に、当該香料単独の場合よりもより好ましい印象の残香を長時間持続できる。
【0019】
〔繊維製品処理剤組成物〕
〈成分(A):ケイ酸エステル香料前駆体〉
本発明の繊維製品処理剤組成物は、上に述べた本発明のたばこ臭防臭剤(以下、「成分(A1)」という)を含有するものである。本発明のたばこ臭防臭剤又は繊維製品処理剤組成物を、たばこ臭付着前又はたばこ臭付着後に繊維製品に適用することにより、たばこ臭を効果的に防臭又は消臭することができる。繊維製品処理剤の例としては、衣類用の仕上剤(柔軟剤、しわ取り剤等)、消臭剤、帯電防止剤、撥水剤などが挙げられる。
【0020】
本発明の繊維製品処理剤組成物における成分(A1)の含有量は、繊維製品処理剤組成物が洗い流す(リンスオフ)タイプである場合、不快臭に対するマスキング性及び香りの質の観点から、繊維製品処理剤組成物中の0.0001〜0.5質量%が好ましく、0.0005〜0.1質量%がより好ましく、中でもより好ましくは0.002〜0.1質量%であり、更に0.005〜0.05質量%がより好ましい。
【0021】
また、繊維製品処理剤が洗い流さない(リーブオン)タイプである場合には、不快臭に対するマスキング性及び香りの質の観点から、繊維製品処理剤組成物中の0.00001〜0.1質量%が好ましく、より好ましくは0.00002〜0.05質量%であり、更に0.00002〜0.03質量%がより好ましい。
【0022】
本発明の繊維製品処理剤組成物にには、香りのバランスの取れた残香を得る観点及びたばこ臭防臭効果向上の観点から、成分(A1)のたばこ臭防臭剤とは異なるアルコール系香料又はフェノール系香料のケイ酸エステル香料前駆体(以下、「成分(A2)」という)を含有させることができる。
【0023】
かかる成分(A2)のケイ酸エステル香料前駆体は、一般式(2)で表すことができる。
【0024】
【化2】

【0025】
〔式中、4個のR'は同一の若しくは相異なる香料残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であって、少なくとも1つのR'は4-メチル-3-デセン-5-オールを除くアルコール系香料又はフェノール系香料から水酸基を除いた残基を示す。〕
【0026】
香料残基R'に用いる香料素材としては、4-メチル-3-デセン-5-オール以外の香料であって、アルコール系香料としての炭素数6以上の1級若しくは2級の、脂肪族アルコール、テルペン系アルコール、セスキテルペン系アルコール、脂環式アルコール若しくは芳香族アルコール、又はフェノール系香料としてのフェノール若しくはその誘導体が使用される。適度な香りの持続性を有する観点から、官能基として水酸基のみを有し、更にエーテル結合を有してもよい香料素材が好ましい。かかる香料素材としては、以下のものが挙げられる。1級の脂肪族アルコールとしては、トランス-2-ヘキセノール、9-デセノール、10-ウンデセノール、シス-3-ヘキセノールが挙げられる。1級のテルペン系アルコール及びセスキテルペン系アルコールとしては、3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール、ネロール、シトロネロール、2-イソプロペニル-5-メチル-4-ヘキセン-1-オール、テトラヒドロゲラニオール、ヒドロキシシトロネロール、6,6-ジメチル−ビシクロ[3.1.1]-2-ヘプテン-2−エタノール、3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン-1-オール、6-メタノアズレン-3-メタノール、2-メチル-5-(2,3-ジメチルトリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプト-3-イル-2-ペンテン-1-オールが挙げられる。1級の脂環式アルコールとしては、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-メタノール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタン-1-オールが挙げられる。1級の芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、3-メチル-5-フェニルペンタノール、3-フェニルプロピルアルコール、2-メチル-4-フェニル-1-ペンタノール、4-メトキシベンジルアルコール、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)-プロパノールが挙げられる。2級の脂肪族アルコールとしては、3-オクタノール、1-オクテン-3-オールが挙げられる。2級のテルペン系アルコール及びセスキテルペン系アルコールとしては、1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オール、1-メチル-4-イソプロペニルシクロヘキサン-3-オール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール、l-メントールが挙げられる。2級の脂環式アルコールとしては、4-イソプロピルシクロヘキサノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-エタノール、p-tert-ブチルシクロヘキサノール、o-tert-ブチルシクロヘキサノール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)-3-ヘキサノール、α,β,2,2,6-ペンタメチルシクロヘキシルプロパノールが挙げられる。2級の芳香族アルコールとしては、1-フェニルエチルアルコールが挙げられる。フェノール系香料としては、チモール、2-メチル-5-イソプロピルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノールが好ましいものとして挙げられる。香りのバランスの取れた残香を付与し、かつたばこ臭防臭効果を向上させる観点から、特に、3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オールが好ましい。また、一般式(2)で表されるケイ酸エステル香料前駆体は単独型、ハイブリッド型のいずれの形態をとることもできるが、残香の質の向上、及びトップノートへの爽快感の付与の観点からハイブリッド型の方が好ましい。
【0027】
本発明の繊維製品処理剤組成物中における成分(A2)の含有量は、繊維製品処理剤組成物が洗い流す(リンスオフ)タイプである場合、残香の質の向上、及びトップノートへの爽快感の付与の観点から、0.001〜0.15質量%が好ましく、0.01〜0.1質量%が特に好ましい。また、香りのバランスの取れた残香の観点から、繊維製品処理剤組成物中に含まれる成分(A1)と成分(A2)の含有質量比は、1:400〜50:1が好ましく、1:100〜10:1がより好ましい。
【0028】
また、繊維製品処理剤が洗い流さない(リーブオン)タイプである場合には、残香の質の向上、及びトップノートへの爽快感の付与の観点から、繊維製品処理剤組成物中の0.0001〜0.1質量%が好ましく、より好ましくは0.0002〜0.05質量%であり、更に0.0002〜0.03質量%がより好ましい。また、香りのバランスの取れた残香の観点から、繊維製品処理剤組成物中に含まれる成分(A1)と成分(A2)の含有質量比は、1:400〜50:1が好ましく、1:100〜10:1がより好ましい。
【0029】
〈成分(B):他の香料素材〉
本発明の繊維製品処理剤組成物には、香りのバランスの取れた残香を得る観点から、更に成分(A1)、成分(A2)以外の香料素材を含有させることもできる。
【0030】
そのような香料素材としては、本発明の効果を損なわない範囲で、「パーフューム アンド フレーバー ケミカルズ」(ステフェン・アークテンダー著)、「香料の化学」(赤星亮一著、日本化学会編,産業化学シリーズ)、「合成香料 化学と商品知識」(印藤 元一著、化学工業日報社)、「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書株式会社)に記載のものを用いることができる。
【0031】
これらの香料のうち、特に好ましい香料素材の例として残香性香料(以下、成分(B)という)が挙げられる。成分(B)としては、例えば以下の成分(b1)〜(b3)が挙げられる。
【0032】
(b1):低閾値残香性香料
ジヒドロキシジメチル安息香酸メチル、アントラニル酸メチル、デカハイドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン
【0033】
(b2):中閾値残香性香料
シクロヘキサデセノン、3-メチル-4(5)-シクロペンタデセン-1-オン、δ-デカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、クマリン、γ-ウンデカラクトン、γ-デカラクトン、2-(2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル)シクロペンタノン、ヘリオトロピン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン
【0034】
(b3):高閾値残香性香料
ガラクソライド、トナライド、シクロペンタデカノリド、4(5)-シクロペンタデセノライド、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、リリアール、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-アセトナフトン、α-ヘキシルシンナミックアルデハイド、α-アミルシンナミックアルデハイド、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール
【0035】
本発明の繊維製品処理剤組成物中における成分(B)の含有量は、繊維製品処理剤組成物が洗い流す(リンスオフ)タイプである場合、残香の質の向上、及びトップノートへの爽快感の付与の観点から、0.1〜2.0質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%が特に好ましい。
【0036】
本発明の繊維製品処理剤組成物中における成分(B)の含有量は、繊維製品処理剤組成物が洗い流さない(リーブオン)タイプである場合である場合、残香の質の向上、及びトップノートへの爽快感の付与の観点から、0.001〜0.03質量%が好ましく、0.01〜0.05質量%が特に好ましい。
【0037】
香りのバランスの取れた残香を得る観点から、成分(A1)と成分(A2)の合計量と成分(B)との比率は、以下の質量比であることが好ましい。
【0038】
成分(B)として、成分(b1)を用いる場合、成分(A)と成分(b1)の質量比は、500:1〜10:1が好ましく、更には450:1〜30:1、特に400:1〜150:1が好ましい。
【0039】
成分(B)として、成分(b2)を用いる場合、成分(A)と成分(b2)の質量比は、100:1〜2:1が好ましく、更には90:1〜3:1、特に80:1〜30:1が好ましい。
【0040】
成分(B)として、成分(b3)を用いる場合、成分(A)と成分(b3)の質量比は、10:1〜1:2が好ましく、更には9:1〜1:1、特に8:1〜2:1が好ましい。
【0041】
〈成分(C):非イオン界面活性剤〉
本発明の繊維製品処理剤組成物は、組成物中における成分(A)の溶解性及び分散安定性の観点から、非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。非イオン界面活性剤としては下記一般式(3)で表される化合物が特に好ましい。
【0042】
c1−Z−[(EO)a/(PO)b]−Rc2 (3)
〔式中、Rc1は、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、Rc2は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、Zは−O−又は−COO−を示し、EO及びPOは前記と同じ意味を示し、(EO)と(PO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(EO)と(PO)の付加順序は問わない。a及びbはそれぞれ平均付加モル数であって、a+bの合計は5〜50の数、bは0〜2の数を示す。〕
【0043】
一般式(3)中のRc1は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、Rc2は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
【0044】
また、一般式(3)中のaは、好ましくは5〜50の数、より好ましくは5〜40、更に好ましくは5〜30であり、bは好ましくは0である。特に繊維製品処理剤組成物が洗い流すタイプである場合にはaは10〜50が好ましい。繊維製品処理剤組成物が洗い流さないタイプである場合にはaは特に5〜15が好ましく、具体的にはポリオキシエチレン(n=6〜12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシチレン(n=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。ここで、nはオキシエチレン基の平均付加モル数である。
【0045】
本発明の繊維製品処理剤組成物中における成分(C)の含有量は、本発明の効果を増強させる観点から、通常0.01質量%以上、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%である。特に繊維製品処理剤組成物が洗い流すタイプの場合は、0.1〜8質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましい。また、繊維製品処理剤組成物が洗い流さないタイプの場合は、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.02〜3質量%、更に好ましくは0.02〜2質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%である。また、繊維製品処理剤組成物が洗い流さないタイプである場合には成分(C)/〔成分(A1)+成分(A2)〕=100/1〜1/100、より好ましくは、50/1〜1/100、更により好ましくは50/1〜1/50、特に好ましくは10/1〜1/50である。
【0046】
〈成分(D):イオン性界面活性剤〉
本発明の繊維製品処理剤組成物は、組成物中における成分(A)の配合安定性及び繊維製品への成分(A)の保留性の観点から、イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。イオン性界面活性剤にはカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤があるが、本発明の効果を増強する観点から、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0047】
カチオン界面活性剤としては、第3級アミン、下記一般式(4)で表される第3級アミンの酸塩又はその4級化物から選ばれるカチオン界面活性剤(以下、「成分(d1)」という)が好ましい。
【0048】
【化3】

【0049】
〔式中、Rd1は、式(4-1)
【0050】
【化4】

【0051】
〔(R1はメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基を示し、R2は炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Xは‐NR3(R3は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基)又は酸素原子を示す)で表される基を示し、Rd2及びRd3はそれぞれ独立に、Rd1で定義される基、炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を示す。〕
【0052】
成分(d1)は、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、アルカノールアミン、アミノアルキルアミン等のアミンとを、エステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応させることにより得ることができる。上記の好ましい炭化水素組成を有する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルが、通常油脂便覧等で知られているような脂肪酸を用いるだけでは得られない場合、不飽和結合への水素添加反応、不飽和結合の異性化反応、又は蒸留操作、ボトムカット、トップカットによるアルキル鎖長の調整、あるいは複数の脂肪酸の混合により得ることが出来る。
【0053】
上記アミノアルキルアミンの具体的な例として、ジアルキルモノアルカノールアミン(例えば、ジメチルモノエタノールアミン、ジメチルモノプロパノールアミン)、モノアルキルジアルカノールアミン(例えば、メチルジエタノールアミン、メチルジプロパノールアミン)、トリアルカノールアミン(例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン)、ジ(アミノアルキル)アルキルアミン(例えば、N-メチル-N,N-ジ(3-アミノプロピル)アミン)、ジアルキルアミノアルキルアミン(例えば、N,N-ジメチル-N-(3-アミノプロピル)アミン)、アルキルアミノプロピルモノアルキルアルカノールアミン(例えば、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-アミノプロピル)アミン)が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-アミノプロピル)アミン、N,N-ジメチル-N-(3-アミノプロピル)アミン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンが好ましい。
【0054】
エステル化反応、アミド化反応又はエステル交換反応において、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、前記アミンのヒドロキシ基及び1級〜2級アミノ基の合計モル数とのモル比は、0.5:1〜2:1が好ましく、0.6:1〜2:1がより好ましく、0.7:1〜0.98:1が特に好ましく、最も好ましくは、0.8:1〜0.98:1である。
【0055】
一般式(4)で表される第3級アミンの酸塩としては、無機酸又は有機酸で中和された酸塩が挙げられる。好ましい無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸が挙げられ、好ましい有機酸としては、炭素数1〜10の1価又は多価のカルボン酸、炭素数1〜20の1価又は多価のスルホン酸、炭素数6〜36のアルキル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数6〜36)硫酸エステルが挙げられる。より好ましくはメチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、炭素数12〜36のアルキル硫酸エステル、又はポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数12〜36)硫酸エステルである。一般式(4)で表される第3級アミンの4級化物としては、一般式(4)で表される第3級アミンを、アルキルハライド、ジアルキル硫酸、アルキレンオキシド等のアルキル化剤で4級化した化合物が挙げられる。アルキルハライドとしてはメチルクロリドが好ましく、ジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸が好ましく、アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシドが好ましい。また、アルキル化剤を用いた4級化反応は、溶媒存在下(例えば、エタノール)でも行うことができるが、合成物の臭いを抑制する観点、保存安定性を維持する観点及び/又は不純物の生成を抑える観点から、無溶媒下で行うことも出来る。
【0056】
両性界面活性剤としては、スルホベタイン、カルボベタイン及びアミンオキシドから選ばれる両性界面活性剤(以下、「成分(d2)」という)を挙げることができる。これらの中でも、炭素数8〜22、特に炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を1つ有するアミンオキシド型界面活性剤が好ましい。
【0057】
本発明の繊維製品処理剤組成物中の成分(D)の含有量は、本発明の効果を増強させる観点から、繊維製品処理剤が洗い流すタイプである場合には3〜30質量%が好ましく、8〜28質量%がより好ましく、10〜25質量%が更に好ましい。また、繊維製品処理剤が洗い流さないタイプである場合には0.02質量%以上が好ましく、0.02〜10質量%がより好ましく、更に0.02〜5質量%であることが好ましく、特に0.02〜1質量%であることが好ましい。また成分(A1)及び成分(A2)の合計量と成分(D)との質量比は、本発明の効果を増強させる観点から、繊維製品処理剤が洗い流すタイプである場合には成分(D)/〔成分(A1)+成分(A2)〕=1/2〜150/1が好ましく、1/1〜140/1がより好ましく、1/1〜120/1が更に好ましい。
【0058】
〈成分(E):脂肪酸、エステル、アルコール〉
本発明の繊維製品処理剤組成物は、成分(A)の溶解性の観点から、溶剤を含有していても良い。エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる溶剤が好ましく、特にエタノールが匂いの観点から好ましい。
【0059】
本発明の繊維製品処理剤組成物中の(E)成分の含有量は、本発明の効果を増強させる観点から、繊維製品処理剤が洗い流すタイプである場合には0〜25質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.8〜2質量%が更に好ましい。また、繊維製品処理剤が洗い流さないタイプである場合には0.01〜10質量%が好ましい。
【0060】
繊維製品処理剤が洗い流すタイプである場合には、成分(A1)及び成分(A2)成分の合計量と成分(E)との質量比は、〔成分(A1)+成分(A2)/成分(E)〕=1/15〜12/1が好ましく、1/15〜4/1がより好ましく、1/10〜3/1が更に好ましい。そして、繊維製品処理剤が洗い流さないタイプである場合には、〔成分(A1)及び+成分(A2)/成分(E)〕=1/10000〜1/10が好ましい。
【0061】
〈成分(F):シリコーン化合物〉
本発明の繊維製品処理剤組成物が洗い流すタイプ、特に柔軟剤として用いられる場合は、シリコーン化合物を含有させることができる(以下、「成分(F)」という)。好ましいシリコーン化合物は、20℃のイオン交換水1リットルに溶解する量が1g以下である水不溶性のシリコーン化合物である。具体的にはジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられ、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。
【0062】
本発明の繊維製品処理剤組成物中の成分(F)の含有量は、0.2〜15質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が更に好ましい。
【0063】
〈成分(G):ポリヒドロキシアミン化合物〉
本発明の繊維製品処理剤組成物が洗い流さないタイプである場合には、カルボン酸臭及びアルデヒド臭を消臭する効果を付与する目的で、一般式(5)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(以下、「成分(G)」という)を含有することができる。
【0064】
【化5】

【0065】
〔式中、Rg1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、Rg2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、Rg3及びRg4は、独立して、メチレン基又は炭素数2〜5のアルキレン基を示す。〕
【0066】
一般式(5)において、Rg1としては、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0067】
一般式(5)において、Rg2としては、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0068】
一般式(5)において、Rge及びRg4としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0069】
成分(G)の具体例としては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-4-ヒドロキシプロピル-1,7-ヘプタンジオール、2-(N-エチル)アミノ-1,3-プロパンジオール、2-(N-エチル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-1,3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等との塩が挙げられる。
【0070】
これらのうち、消臭性能等の観点から、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール及びそれらと塩酸等の酸との塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0071】
本発明の繊維製品処理剤組成物中における成分(G)の含有量は、十分な消臭効果と塗布後の繊維の良好な風合いを維持する観点から、通常0.02質量%以上、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは0.02〜8質量%、更に好ましくは0.02〜5質量%、更に好ましくは0.02〜3質量%、更に好ましくは0.02〜2質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%である。
【0072】
〈成分(H):特定のポリオキシアルキレン系化合物〉
本発明の繊維製品処理剤組成物が洗い流さないタイプである場合には、成分(H)として下記一般式(6)で表され、20℃の水に対する溶解度が1質量%以下であるポリオキシアルキレン系化合物を含有することができる。ここで成分(C)と成分(H)は、類似した構造を有する場合もあるが、成分(H)は水に不溶の物質であり、成分(C)は水と油の双方に可溶な物質である点で異なる。本発明では、20℃の水に対する溶解度が1質量%以下の化合物を成分(H)とし、これを超えて水に溶解する物質を成分(C)として定義する
【0073】
h1−Y−[(PO)m/(EO)n]−H (6)
【0074】
〔式中、Rh1は炭素数10〜22の炭化水素基を示し、POはC36Oを示し、EOはC24Oを示し、m及びnはそれぞれ平均付加モル数であって、mは3〜100、nは1〜10の数を示し、(PO)と(EO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(PO)と(EO)の付加順序は問わない。Yは、−O−、−COO−、−CONH−又は−NHCO−を示す。〕
【0075】
一般式(6)において、Rh1としては、炭素数12〜20、特に12〜18のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、mとしては、3〜60、特に10〜60が好ましく、nとしては、1〜9、特に1〜8の数が好ましく、m/nが、3〜12、特に4〜10であるのが好ましく、Yとしては、−O−及び−COO−、特に−O−が好ましく、(PO)と(EO)はブロック付加が好ましい。成分(H)としては、下記一般式(6-1)で表される化合物がより好ましい。
【0076】
h1O−(PO)m−(EO)n−H (6-1)
【0077】
〔式中、Rh1、PO、EO、m及びnは前記と同じ意味を示す。〕
【0078】
本発明の繊維製品処理剤組成物中における成分(H)の含有量は、消臭性能を助長し、繊維の良好な風合いを維持する観点から、通常0.01質量%以上、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.02〜3質量%、更に好ましくは0.02〜2質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%である。
【0079】
〈その他の成分、pH〉
また、本発明の繊維製品処理剤組成物は、本発明のたばこ臭消臭効果を阻害しない範囲で、金属封鎖剤、pH調整剤、粘度調整剤、溶剤、酸化防止剤、防腐剤、色素を含有することができる。
【0080】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、好ましくは水を含有する。通常、水は、組成物の残部である。
【0081】
本発明の繊維製品処理剤組成物のpHは、成分(A1)のたばこ臭消臭剤が組成物中で急速に加水分解するのを防止する観点から、20℃で2〜8が好ましく、2〜7がより好ましい。
【0082】
〔繊維製品の処理方法〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、水や有機溶剤等を媒体として繊維製品に接触させる方法で処理することが好ましい。本発明の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に接触させる工程としては、繊維製品処理剤組成物が洗い流すタイプである場合、一般家庭の洗濯工程の濯ぎの段階で、濯ぎ水に添加して処理することが好ましい。洗い流すタイプの繊維製品処理剤組成物の場合、本発明のたばこ臭防臭剤とケイ酸エステル香料前駆体の合計量が、繊維製品1kgに対して0.007〜0.5gとなる量で処理することが好ましく、より好ましくは0.008〜0.4gであり、更に好ましくは0.01〜0.3gである。一般に本発明のたばこ臭消臭剤単独で処理した繊維製品よりも、本発明のたばこ臭消臭剤を成分(C)及び/又は成分(D)と共存させた組成物で処理した繊維製品の方が、乾燥後、再度湿気や水分に接触した時のたばこ臭防臭効果が向上する点で好ましい。
【0083】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物が洗い流さないタイプである場合には、本発明の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に接触させる工程としては、本発明の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に直接噴霧する方法、ローラー等で塗布する方法等が挙げられる。洗い流さないタイプの繊維製品処理剤を直接噴霧する場合、ミストタイプのスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mLに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。本発明のたばこ臭防臭剤とケイ酸エステル香料前駆体の合計量が、繊維製品1kgに対して0.007〜0.5gとなる量で処理することが好ましく、より好ましくは0.008〜0.4gであり、更に好ましくは0.01〜0.3gである。一般に本発明のたばこ臭消臭剤単独で処理した繊維製品よりも、本発明のたばこ臭消臭剤を成分(C)及び/又は成分(D)と共存させた組成物で処理した繊維製品の方が、乾燥後、再度湿気や水分に接触した時のたばこ臭防臭効果が向上する点で好ましい。
【0084】
本発明のたばこ臭防臭剤及び繊維製品処理剤組成物で処理した繊維製品は、湿気や水分を含むことで、たばこ臭防臭効果が向上する。湿気や水分の含ませる方法としては例えば、洗顔後、手洗い後、又は入浴後の身体に付着した水を拭き取る行為、運動後の発汗で生成した汗と衣料が接触する際、水を霧状に噴霧するなどの方法が挙げられる。
【0085】
本発明のたばこ臭防臭剤及び繊維製品処理剤組成物を例えば、雑巾や水着などに処理しても、使用時に雑巾をバケツに入った多量の水に浸漬した場合や、水泳時など繊維製品に対して多量の水が接触した場合には本発明の効果は発現し難い。このため、本発明の繊維製品処理剤組成物で処理した繊維製品に接触させる水の量としては、繊維製品に対して0.01〜200質量%が好ましく、0.1〜100質量%がより好ましい。
【実施例】
【0086】
合成例1 4-メチル-3-デセン-5-オールのケイ酸エステルの合成
500mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン62.50g(0.30mol)、4-メチル-3-デセン-5-オール214.57g(1.26mol)、5質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.90gを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら123〜150℃で約2時間攪拌を行った。その後、槽内の圧力を徐々に18kPaまで下げ、エタノールを留出させながら150℃で1時間撹拌を行った。次いで、エタノールを留出させながら、槽内温度150℃で、8kPaで1時間、4kPaで2時間、2.7kPaで4時間撹拌を行った。その後、0.4kPaのもと槽内温度を170℃に昇温し、系内に残存する4-メチル-3-デセン-5-オールの除去を30分掛けて行った。反応溶液の冷却を行い、淡黄色油状物208.27gを得た。メンブレンフィルター(ADVANTEC PTFE T100A090C)により減圧濾過を行い、4-メチル-3-デセン-5-オールのケイ酸エステル香料前駆体を含む206.50gの淡黄色油状物1(理論収量:221.79g)を得た。得られた油状物1のプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル及び赤外線吸収(IR)スペクトルの観測値を以下に示す。以上により一般式(1)中のRが4-メチル-3-デセン-5-オールの残基であるケイ酸エステルが得られたことが確認できた。
【0087】
<淡黄色油状物1の1H-NMR:400MHz;CDCl3溶媒中>
δ[ppm]=0.89(12H, t, J=7.2Hz, -CH3),0.94(12H, t, J=7.2Hz, -C=C-C-CH3),1.14(8H, -C-C-CH2-Me),1.18-1.35(16H, -CH2-CH2-C-Me),1.42(8H, Si-O-C-CH2-),1.51(12H, J=2Hz(アリル位カップリング),-C=C-CH3),1.99(8H, dq, J=7.2Hz, Me-CH3-C=C-),4.12(4H, t, J=6.8Hz, Si-O-CH<),5.22(4H, -C-CH=C<)
<淡黄色油状物1のIR:KBr薄膜セル>
ν[cm-1]=2958(-CH3asCH),2931(-CH2-,νasCH2),2858(-CH2-,νsCH2),1672(-CH=C<,δCH),1460(-CH2-,δsCH2),1061(Si-O-C,νSi-O),1043(Si-O-C,νSi-O)
【0088】
合成例2 エステルアミドアミンの合成
N-メチルエタノールアミンのシアノエチル化物(アクリロニトリル付加物)より、公知の方法〔J.Org.Chem.,26,3409,(1960)〕で合成したN-ヒドロキシエチル-N-メチル-1,3-プロパンジアミン(133.5g)と、脂肪酸〔ルナックS-50V(花王(株)製)〕(499.2g)を攪拌機と冷却機を備えた1Lフラスコに仕込み、180℃まで昇温した。その温度で約10時間、脱水反応することにより、カチオン界面活性剤(d1)の前駆体(未中和物)であるエステルアミドアミン(全アミン価 94mgKOH/g)を得た。
【0089】
実施例1〜23,比較例1〜15
<柔軟剤の調製方法>
300mLビーカーに、柔軟剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで65〜70℃に昇温した。一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌した(300r/min)。そこに、合成例2で合成したエステルアミドアミン27gとポリオキシエチレンラウリルエーテル10gを予め混合させ、75℃で加熱溶融させた。次に、合成例1で得られたケイ酸エステル(油状物1)、並びに3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール若しくは2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール又はそのケイ酸エステル(単独型及びハイブリッド型)を表1〜3に記載の量となるよう配合した。更に組成物のpHを2〜3にするのに必要な0.1N塩酸、或いは0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加した。続いて必要に応じて塩化カルシウムの10質量%水溶液を添加した。10分攪拌後、攪拌しながら5℃のウォーターバスで20℃まで冷却した。5分攪拌後にpHを再度2〜3(目標値:2.5)に調整した後、出来あがり質量を200gにするのに必要な量の20℃のイオン交換水を添加して柔軟剤組成物を得た。
【0090】
<評価用布帛の調製>
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王社製,アタック)を用いて、木綿タオル24枚を日立自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄、脱水及びすすぎを繰り返し、室内乾燥することによって、評価用布帛とした(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回)。
【0091】
<柔軟剤組成物による処理方法>
National電気洗濯機NA-35に、22Lの水道水を注水し、ここに上述の方法で調製した柔軟剤組成物を上記評価用布帛1.1Kg(11枚に相当)に対し7.3gとなるように量り取った後、柔軟剤組成物を溶解させ、1分後、上記評価用布帛1.1Kg(11枚に相当)を5分間浸漬処理した。その後、3分間脱水処理を行い、約20℃の室内に放置して1晩乾燥させた。これを処理布とした。この処理は、実施例及び比較例に記載された柔軟剤組成物毎にそれぞれ行った。
【0092】
<処理布へのたばこ臭の付着方法>
1晩乾燥後の上記処理布について、1.5m四方、高さ2mのステンレス製の密閉型ボックス内にハンガーで吊した。ボックスを密閉後、喫煙者にマイルドセブン1本を5分程度掛けて喫煙してもらった。その後5分程度燻煙し、たばこ臭を付着させた処理布を調製した。
【0093】
<たばこ臭防臭効果の評価>
たばこ臭を付着させた直後の処理布と、たばこ臭付着後1時間経過した処理布について、香り強度専門パネラー5人により、たばこ臭の強さを以下の基準で評価し、平均値を算出することでたばこ臭のマスキング効果を数値化した。数値が大きい程、たばこ臭のマスキング効果が高いことを示す。更に、残香の印象についても評価を行った。数値が大きい程、残香の印象が好ましいことを示す。そして、たばこ臭のマスキング効果及び残香の印象の観点から総合評価も行った。数値が大きい程、数値が高いことを示す。評価はパネラーの協議によって決めた。
【0094】
<処理布への含水率の違いによる防臭効果の評価>
たばこ臭を付着させた処理布を、ホットプレートで加温可能な大きさ(10cm四方)となるよう処理布を裁断した。裁断したたばこ臭を付着させた直後の処理布と、裁断後、室温、相対湿度60%RH下で1時間保管した処理布について、着用時の衣類の水分及び湿度を再現する目的で、37℃(人の平均的体温)に加温したホットプレート(iuchi ホットプレートスターラー 731-1(iuchi社製))上で水分添加を行い、水分添加後のたばこ臭の強さ、たばこ臭のマスキング効果及び残香の印象の観点から総合評価を以下の基準により行った。水分添加は蒸留水を入れたトリガー容器(リセッシュ(花王(株)製品)に用いられる)を30cmほど離して3〜6プッシュ(水重量0.4〜0.8g)することで、繊維上含水率を40%owfないしは80%owfとした(owf はon the weight of fabric)。また、評価は専門パネラー5名により行い、平均値を算出した。
【0095】
たばこ臭消臭のスコア
5:たばこ臭が気にならない
4:たばこ臭が少し気になる
3:たばこ臭が気になる
2:たばこ臭が強い
1:たばこ臭がかなり強い
0:たばこ臭しか匂わない
【0096】
残香の印象のスコア
5:非常に好ましい
4:好ましい
3:やや好ましい
2:やや好ましくない
1:好ましくない
0:非常に好ましくない
【0097】
総合評価のスコア
5:非常に良い
4:良い
3:やや良い
2:やや良くない
1:良くない
0:全く良くない
【0098】
<評価結果>
(1) 柔軟剤組成物が、4-メチル-3-デセン-5-オールのケイ酸エステル香料前駆体、4-メチル-3-デセン-5-オールのいずれか一方を含有する場合の官能評価の結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
ケイ酸エステル香料前駆体としてではなく4-メチル-3-デセン-5-オールそのものを配合した比較例においては、付着直後も付着後1時間後も全てのパネルの評価スコアが低く、ケイ酸エステル香料前駆体を配合した実施例よりたばこ臭が強いことが明らかとなった。これにより、4-メチル-3-デセン-5-オールのケイ酸エステル香料前駆体は、たばこ臭マスキング効果があることが示された。
【0101】
(2) 実施例2〜4の処方の柔軟剤組成物で処理した繊維製品について、繊維製品湿潤時において、処理布への水分添加量(%owf)とケイ酸エステルの添加率を変えた場合の官能評価の結果を表2に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
繊維製品を湿潤させた場合は、たばこ臭の官能評価結果のスコアが高くなることが明らかとなった。このことから、繊維製品を湿潤させることでたばこ臭消臭効果が高まることが示された。
【0104】
(3) 4-メチル-3-デセン-5-オール、3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オールのケイ酸エステル香料前駆体を含有した場合と、ケイ酸エステル香料前駆体化していない4-メチル-3-デセン-5-オール、3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オールを配合した場合のたばこ臭マスキング効果の評価結果を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
ケイ酸エステル香料前駆体を配合していない比較例においては、付着直後も付着後1時間後も全てのパネルの評価スコアは低く、4-メチル-3-デセン-5-オールのケイ酸エステル香料前駆体並びに3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オールのケイ酸エステル香料前駆体を配合した実施例よりたばこ臭が強いことが明らかとなった。これにより、4-メチル-3-デセン-5-オールのケイ酸エステル香料前駆体はたばこ臭マスキング効果があり、更に3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール及び/又は2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オールのケイ酸エステル香料前駆体を配合することでたばこ臭マスキング効果が高まることが示された。
【0107】
処方例1及び2 <しわ取り消臭剤組成物>
表4に示す配合処方のしわ取り消臭剤組成物を調製した。得られた組成物は、1規定の塩酸又は1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH8(25℃)に調整した。
【0108】
【表4】

【0109】
化合物c-1:ポリオキシエチレン(平均付加モル数=8)ラウリルエーテル
化合物d-1:ラウロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド(ソフタゾリンLAO、川研ファインケミカル社製)
化合物e-1:エタノール
化合物g-1:トロメタミン
化合物h-1:ポリオキシエチレン(平均付加モル数=8)ポリオキシプロピレン(平均付加モル数=38)セトステアリルエーテル(C16/18=12.5/87.5 重量比)
ケイ酸エステル香料前駆体1:一般式(2)中のR'が3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール残基であるもの(単独型)
ケイ酸エステル香料前駆体2:一般式(2)中のR'が3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール残基と2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール残基(比率は3:1)であるもの(ハイブリッド型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるケイ酸エステルからなるたばこ臭防臭剤。
【化1】

〔式中、4個のRは同一の若しくは相異なる香料残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であって、少なくとも1つのRは4-メチル-3-デセン-5-オールから水酸基を除いた残基を示し、残りのRはそれぞれアルコール系香料若しくはフェノール系香料から水酸基1個を除いた残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。〕
【請求項2】
一般式(1)中の4個のRが全て4-メチル-3-デセン-5-オールから水酸基を除いた残基である請求項1に記載のたばこ防臭剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のたばこ臭防臭剤を含有する繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のたばこ臭防臭剤を0.00001〜0.5質量%含有する請求項3に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
更に一般式(2)で表されるケイ酸エステルを含有する請求項3又は4に記載の繊維製品処理剤組成物。
【化2】

〔式中、4個のR'は同一の若しくは相異なる香料残基、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基でであって、少なくとも1つのRは4-メチル-3-デセン-5-オールを除くアルコール系香料から水酸基を除いた残基を示す。〕
【請求項6】
一般式(2)中の少なくとも1つのR'が、3,7-ジメチル-トランス-2,6-オクタジエン-1-オール又は2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オールから水酸基を除いた残基である請求項3〜5のいずれか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
一般式(2)で表されるケイ酸エステルを0.001〜0.15質量%含有する請求項3〜6のいずれか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項8】
繊維製品を、請求項3〜7のいずれか1項に記載の繊維製品処理剤組成物で処理する繊維製品のたばこ臭防臭方法。

【公開番号】特開2013−36139(P2013−36139A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173337(P2011−173337)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】