説明

ちらつき検知装置

【課題】放電灯の明滅に対応するちらつき量を示した相関データなどを予め用意していなくても、放電灯のちらつきを定量的に検知可能なちらつき検知装置を提供する。
【解決手段】光センサ22が交流電源10からの電力により発光する放電管14の輝度の変化を検知して、輝度の変化に応じた出力信号をちらつき検知部20に出力する。ちらつき検知部20は、予め定められた周波数以下の周波数成分の出力信号と光センサ22から出力された出力信号の平均出力信号との差分信号に基づいて、放電管14のちらつきを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電管のちらつきを検知するちらつき検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源等の交流電源からの電力によって放電灯を点灯させる場合、電源電圧の低下や放電灯の劣化などによりちらつきが発生することがある。
【0003】
放電灯のちらつきはユーザに不快感などを与えることもあるため、早急に放電灯のちらつきを検知して、その原因を解消することが望ましい。
【0004】
かかる放電等のちらつきを簡単に検知する方法として、人間の目視による方法が広く行われているが、このように、放電灯のちらつきの有無を人間の目視により判断する場合、判断する人によってちらつきの認識にばらつきが生じる場合がある。同一人物による判断でも、体調等の変化によりちらつきの認識にばらつきが生じる場合もある。
【0005】
特許文献1には、照明器具の輝度を輝度計で測定して40Hz以下の出力のみを取り出し、ローパスフィルタを通してグラフ化する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、受光部から出力された光出力信号を一定期間サンプリングして周波数成分に分解し、周波数毎の相対光出力を演算し、予め算出された、ちらつき認識率と相対光出力との相関データに基づいて、演算された相対光出力のうち10Hzの相対光出力に対するちらつき認識率を算出し、算出したちらつき認識率を表示する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−317450号公報
【特許文献2】特開平9−96563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術では、輝度計で測定した照明器具の輝度をローパスフィルタを通してグラフ化しているだけであることから、そのグラフにより定性的にちらつきの有無を把握しようとしたもので、定量的に判断することは難しく、普遍的に把握することができる方法が必ずしも具体的に示唆するものではない。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、ちらつき認識率と相対光出力との相関データを予め準備しておく必要がある。ちらつき認識率は、予め特定の人間の目視によって認識されたちらつき具合を測定しグラフ化したものに過ぎず、相関データを汎用的なデータとして使用するには多くの被験者により多くの測定を行う必要がある。
【0009】
本発明は、放電灯の明滅に対応するちらつき量を示した相関データなどを予め用意していなくても、放電灯のちらつきを定量的に検知可能なちらつき検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るちらつき検知装置は、交流電源からの電力により発光する放電管の輝度の変化を検知して、当該輝度の変化に応じた出力信号を出力するセンサと、前記出力信号から予め定められた周波数以下の周波数成分を抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタにより抽出された出力信号と前記センサから出力された出力信号の平均出力信号との差分信号に基づいて、前記放電管のちらつきを検知するちらつき判定部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るちらつき検知装置によれば、予め定められた周波数以下の周波数成分の出力信号とセンサから出力された出力信号の平均出力信号との差分信号に基づいて、放電管のちらつきが検知される。よって、放電灯の明滅に対応するちらつき量を示した相関データなどを予め用意していなくても、放電灯のちらつきを定量的に検知することができ、普遍的に放電灯のちらつきを把握することができる。
【0012】
本発明に係るちらつき検知装置の一つの態様では、前記ちらつき判定部は、前記差分信号を前記平均出力信号で除算して得られた信号の振幅の大きさが予め定められた閾値を超えた場合に、前記放電管のちらつきを検知することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るちらつき検知装置の一つの態様によれば、差分信号を前記平均出力信号で除算して得られた信号の振幅の大きさが予め定められた閾値を超えた場合に、放電管のちらつきが検知されるので、放電管の輝度環境に応じたちらつき検知を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予め定められた周波数以下の周波数成分の出力信号とセンサから出力された出力信号の平均出力信号との差分信号に基づいて、放電管のちらつきが検知されるので、放電灯の明滅に対応するちらつき量を示した相関データなどを予め用意していなくても、放電灯のちらつきを定量的に検知することができ、普遍的に放電灯のちらつきを把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と称す)について、以下図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係るちらつき検知システムの全体構成を示す図である。
【0017】
図1において、放電管14は、交流電源である商用電源10からの電力が安定器12を介して供給されて、発光する。
【0018】
ちらつき検知装置100は、放電管14の近傍に設けられ、放電管14から照射される光の光量を検知して、検知した光量に基づいて放電管14の輝度の変化を示す輝度出力信号を出力する光センサ22と、光センサ22からの輝度出力信号に基づいて放電管14のちらつきを検知するちらつき検知部20と、ちらつき検知部20の検知結果に基づく情報を表示する表示部24と前記検知結果に基づいた所定の処理を行う外部装置26とを備える。
【0019】
図2は、ちらつき検知部20の構成をより詳細に示す機能ブロック図である。
【0020】
図2において、光センサ22からの輝度出力信号30aは、増幅回路202において予め定められたゲインで増幅され、図3Aに示すような以下の周波数成分のみを抽出して、図3Bに示すような出力波形の輝度出力信号30cを出力する。
【0021】
移動平均回路206は、増幅回路202から出力される輝度出力信号30bの移動平均をとる回路であり、例えば予め定められた期間(例えば1秒間)に出力された輝度出力信号30bを積分し、その積分値を当該期間で除算することで平均値を算出し、平均輝度信号32として出力する。
【0022】
減算器208は、LPF204から出力された輝度出力信号30cから、平均輝度信号32を減算することで得られる差分信号34を出力する。ここで、減算器208から出力される差分信号34は、平均輝度信号32から輝度出力信号30cがどれだけ振幅しているか、つまり、どれだけちらつきが発生しているかを示し、差分信号34の振幅の大きさが小さいほど放電管14のちらつきが少ないことを示す。
【0023】
判定信号算出回路210は、差分信号34と平均輝度信号32とに基づいて放電管14のちらつきの有無を判定する際の判定信号を算出する。具体的には、判定信号算出回路210は、差分信号34を平均輝度信号32で除算することで、判定信号36を算出する。判定信号36は、表示部24およびちらつき判定回路212に入力される。
【0024】
表示部24は、入力された判定信号36に基づく数値やグラフなどを放電管14のちらつき量として画面表示する。
【0025】
ちらつき判定回路212は、予め定められた閾値と、入力された判定信号36の判定時における振幅の大きさとを比較して、判定信号36の振幅の大きさが閾値を超えた場合には、ちらつきが発生していることを示すちらつき発生信号38を外部装置26に対して出力する。外部装置26は、放電管14のちらつきの検知に応じて、所定の処理を実行する任意の装置であり、例えば、放電管14に入力する電流を調整する装置である。また、外部装置26の他の例としては、放電管14のちらつきの発生を通知するLED等のランプであり、ちらつき発生信号38が入力されたことに対応して、ランプを点灯する装置である。なお、ちらつきが単発的に発生する場合、ちらつき発生信号38が入力されている間だけランプの点灯を行うような制御では、ランプの点灯の期間が短すぎで、ユーザがちらつきを検知できない場合がある。そこで、ちらつき発生信号38が入力されてから所定期間ランプの点灯を継続し、所定期間内に新たにちらつき発生信号38の入力がなかった場合にランプを消灯するように制御してもよい。
【0026】
また、ちらつき判定の基準となる閾値の大きさを調整することで、放電管14のちらつきの検知感度を調整することができる。
【0027】
第1の実施形態において、差分信号34に対して平均輝度信号32で除算して得られた信号の振幅の大きさを判定値として用いる理由は、以下の通りである。すなわち、差分信号34は、上記の通り、平均輝度信号32を基準として輝度出力信号30cがどれだけ振幅しているかを示し、その振幅の大きさが大きければ放電管14のちらつきが大きいことを表す。しかし、差分信号34の振幅の大きさが同一値でもあっても、光センサ22で検知された光量に基づく放電管14の平均輝度(放電管14により照射されるエリアの輝度)が異なれば、そのちらつきの与える影響は異なる。例えば、差分信号の振幅が同一の大きさでもあっても、放電管14により照射されるエリアの照度が日射や周囲の外乱光により異なれば、ちらつきによる影響は異なる。すなわち、周囲が比較的明るいエリアにおける差分信号と、比較的暗いエリアにおける差分信号が同一の振幅の大きさであったとしても、人間が感じるちらつき度合いは周囲が暗いエリアの場合の方が大きい。よって、差分信号の振幅の大きさ自体をちらつきの指標として用いるよりも、放電管14の周囲の輝度との相対的な値をちらつきの指標として用いる方が好ましい。輝度出力信号30bは、ローパスフィルタ(LPF)204及び移動平均回路206に入力される。
【0028】
LPF204は、入力される輝度出力信号30bのうち、一般に人間がちらつきを認識できるとされている周波数を考慮して予め定められた特定の周波数(例えば、60Hz)放電管14の輝度環境に応じたちらつきの検知を行うことができる。そこで、第1の実施形態では、ちらつきの判定信号として、ちらつき信号34を平均輝度信号32で除算して得られた信号を用いる。
【0029】
以上、第1の実施形態によれば、光センサ22から出力された放電管14の輝度の変化を示す輝度出力信号のうち特定の周波数以下の周波数成分の輝度出力信号と、当該輝度出力信号の平均値を示す平均輝度信号との差分信号に基づいて、放電管14のちらつきを検知することができる。よって、例えば放電管14の明滅に対応するちらつき量を示した相関データなどを予め用意しておかなくても、放電管14のちらつきを定量的に検知することができる。
【0030】
続いて、第2の実施形態に係るちらつき検知システムについて、以下図面を用いて説明する。
【0031】
第2の実施形態では、放電管14のちらつきが放電管14に入力される電流の変動に依存する点に着目して、放電管の輝度の変化を検知するセンサとして、放電管に入力される電流を検知する電流センサを用いる。
【0032】
図4は、第2の実施形態に係るちらつき検知システムの全体構成を示し、図5は、第2の実施形態に係るちらつき検知部20の構成をより詳細に示す機能ブロック図である。
【0033】
第2の実施形態では、上記の通り、放電管の輝度の変化を検知するセンサとして、放電管14に入力される電流を検知する電流センサ23を備える点、及び増幅回路202の前段に絶対値回路201が設けられている点で、第1の実施形態と異なる。
【0034】
ここで、絶対値回路201を設ける理由は、光センサと電流センサの出力波形の違いによるものである。すなわち、光センサの場合には、輝度出力信号の出力波形は、輝度の値が負となることはないため、図3Aに示すように、正側のみの波形であった。しかし、電流センサ23から出力される信号の出力波形は、交流電流を示す波形であるため、図6に示すように半周期ごとに正負が切り替わる正弦波形である。そこで、第2の実施形態では、絶対値回路201を挿入することで、出力波形を正側のみの波形となるように調整している。
【0035】
図5において、電流センサ23から出力された電流出力信号31aは、絶対値回路201において絶対値が取られ、増幅回路202に入力される。増幅回路202は、入力された電流出力信号31bを増幅して電流出力信号31cとしてLPF204及び移動平均回路206に出力する。
【0036】
LPF204は第1の実施形態と同様に、特定の周波数(例えば、60Hz)以下の周波数成分のみを抽出して、電流出力信号31dを出力し、移動平均回路206は、増幅回路202から出力される電流出力信号31cを所定期間積分し、その積分値を当該所定期間で除算することで平均値を算出し、平均電流信号33として出力する。
【0037】
減算器208は、LPF204から出力された電流出力信号31dら、平均電流信号33を減算することで得られた信号を差分信号35として出力する。ここで、減算器208から出力される差分信号35は、第1の実施形態と同様に、平均電流信号33から電流出力信号31dがどれだけ振幅しているかを示し、差分信号35の振幅の大きさが小さいほど放電管14のちらつきが少ないことを示す。
【0038】
判定信号算出回路210は、差分信号35を平均電流信号33で除算することで、判定信号37を算出する。判定信号37は、表示部24およびちらつき判定回路212に入力される。
【0039】
表示部24は、第1の実施形態と同様に、入力された判定信号37に基づく数値やグラフなどを放電管14のちらつき量として画面表示する。
【0040】
また、ちらつき判定回路212は、第1の実施形態と同様に、予め定められた閾値と、判定信号37の判定時点における振幅の大きさとを比較して、判定信号37の振幅の大きさが閾値を超えた場合には、ちらつきが発生していることを示すちらつき発生信号39を外部装置26に対して出力する。
【0041】
以上、第2の実施形態に係るちらつき検知システムによれば、電流センサ23から出力された放電管14の輝度の変化を示す電流出力信号のうち特定の周波数以下の周波数成分の電流出力信号と、当該電流出力信号の平均値を示す平均電流信号との差分信号に基づいて、放電管14のちらつきを検知することができる。よって、例えば放電管14の明滅に対応するちらつき量を示した相関データなどを予め用意しておかなくても、放電管14のちらつきを定量的に検知することができる。
【0042】
なお、第2の実施形態では、電流センサ23を、放電管14に入力される電流を検知する位置に設ける例について説明した。しかし、電流センサ23を、安定器12の不具合により放電管がちらつく場合についてはそのちらつきを検知することはできないものの、簡易的にちらつきを検知するのであれば、安定器12に入力される電流を検知する位置に設けてもよい。
【0043】
また、上記の各実施形態におけるちらつき検知部20を構成する各回路は、それぞれハードウェアで構成してもよいし、少なくとも一部をソフトウェアで構成してもよい。
【0044】
ちらつき検知部20をソフトウェアで構成する場合には、例えば、ちらつき検知部20は、図7に示すような構成のコンピュータにより具現化することができる。
【0045】
すなわち、コンピュータは、通信バス9を介して接続されたCPU1、ROM2、RAM3、記憶装置4、及び外部インタフェース5を備える。外部インタフェース5には、図示しないが、光センサ或いは電流センサ、表示部、外部装置などが接続されている。CPU1は、ROM2に記憶されたBIOSプログラムなどの基本的な制御プログラムをRAM3に展開して、通信バス9を介して各部を制御する。記憶装置4は、ちらつき検知部20を構成する各回路を具現化する各種プログラムを記憶する。CPU1は、記憶装置4に記憶された各種プログラムをRAM3に展開し、外部インタフェース5を介して光センサ或いは電流センサから放電管の輝度の変化に応じた出力信号の入力を受け付け、その出力信号に基づいて、RAM3に展開された各種プログラムを実行して、放電管のちらつきの検知を行う。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、放電灯の明滅に対応するちらつき量を示した相関データなどを予め用意していなくても、放電灯のちらつきを定量的に検知することができ、普遍的に放電灯のちらつきを把握することができるので、放電管のちらつきを検知するちらつき検知装置等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態に係るちらつき検知システムの全体構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るちらつき検知部の機能ブロックを示す図である。
【図3A】光センサからの輝度出力信号の入力を受けて増幅回路が増幅して出力した輝度出力信号の出力波形の一例を示す図である。
【図3B】ローパスフィルタから出力される出力信号の出力波形の一例を示す図である。
【図3C】移動平均回路から出力される平均輝度出力信号の出力波形の一例を示す図である。
【図3D】減算器から出力される差分信号の出力波形の一例を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係るちらつき検知システムの全体構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係るちらつき検知部の機能ブロックを示す図である。
【図6】電流センサから出力される電流出力信号の出力波形の一例を示す図である。
【図7】ちらつき検知部をソフトウェアで具現化する場合に採用するコンピュータの構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 商用電源
12 安定器
14 放電管
20 検知部
22 光センサ
23 電流センサ
24 表示部
26 外部装置
100 ちらつき検知装置
201 絶対値回路
202 増幅回路
204 ローパスフィルタ
206 移動平均回路
208 減算器
210 判定信号算出回路
212 ちらつき判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの電力により発光する放電管の輝度の変化を検知して、当該輝度の変化に応じた出力信号を出力するセンサと、
前記出力信号から予め定められた周波数以下の周波数成分を抽出するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタにより抽出された出力信号と前記センサから出力された出力信号の平均出力信号との差分信号に基づいて、前記放電管のちらつきを検知するちらつき判定部と、
を備えるちらつき検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載のちらつき検知装置において、
前記ちらつき判定部は、前記差分信号を前記平均出力信号で除算して得られた信号の振幅の大きさが予め定められた閾値を超えた場合に、前記放電管のちらつきを検知することを特徴とするちらつき検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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