説明

てんかんの治療におけるフィトカンナビノイドの1つ又は組合せの使用

本発明は、てんかんの治療における1つ又は複数のカンナビノイドの使用に、より具体的には全般発作又は部分発作の治療におけるカンナビノイドの1つ又は組合せの使用に関する。一実施形態では、本発明は、純粋な若しくは単離された化合物としての、又は天然に存在する相当量のいずれかのTHCが選択的に除去された植物抽出物としてのカンナビノイドTHCVの使用に関する。別の実施形態では、フィトカンナビノイドはCBDである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、てんかんの治療におけるフィトカンナビノイドの1つ又は組合せの使用、より具体的には全般発作の治療におけるテトラヒドロカンナビバリン(THCV)の使用、並びに/又は全般発作及び/若しくは部分発作(側頭葉発作と対照的に)におけるカンナビジオール(CBD)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、世界中でおよそ5千万人の人々が罹患している、広い疾患領域を示す慢性的な神経障害である(非特許文献1)。体内の「内在性カンナビノイド」系に関する理解の進歩により、幾つかの大麻ベースの医薬が、中枢神経系におけるこの過剰興奮性の障害を治療する可能性を有し得るという示唆がもたらされた(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0003】
大麻は、痙攣促進(pro-convulsant)効果(非特許文献5)及び抗痙攣効果の両方を有するとされている。したがって、カンナビノイドがまだ明らかな(unmasked)治療上の抗痙攣薬であるか、又は逆に、大麻の娯楽としての及び医薬としての使用者に対する潜在的なリスク因子であるかは、依然として決定されていない(非特許文献6)。
【0004】
1975年に非特許文献7により、標準的な治療(フェノバルビタール及びフェニトイン)ではその発作が制御されない若年男性の症例が記載された。この男性が付き合い程度に大麻を吸い始めると、その発作がなくなった。しかしながら、この男性が大麻のみを摂取すると、発作が再発した。非特許文献7は、「マリファナがヒトのてんかんにおける抗痙攣効果を有し得る」と結論付けた。
【0005】
非特許文献8による研究は、最初の発作の後に入院した308人のてんかん患者の大集団に関するものであった。この患者を、発作を起こしたことがない294人の患者からなる対照集団と比較し、大麻の使用により発作を有する可能性が低減すると考えられることが見出された。しかしながら、この研究には入院前の健康状態の尺度が含まれておらず、逆に患者の健康状態の差異が薬剤の使用に影響を及ぼした可能性があるため、この研究では「弱い」と主張する非特許文献9において、批判された。
【0006】
特許文献1において、カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)の抗てんかん効果に言及が為されている。
【0007】
特許文献2は、広範な疾患の中でもてんかんを治療するためのTHCVの使用の可能性に言及している。
【0008】
特許文献3は、THCV及びCBDを含有する配合物を開示している。
【0009】
3つの対照臨床試験により、カンナビジオールの抗てんかん能が調査された。各試験において、大発作(全般性強直間代発作)又は部分発作の患者に対して、カンナビジオールが経口形態で投与された。
【0010】
非特許文献10は、従来の薬物療法では回復しない16人の大発作患者に対する研究について報告した。この患者は、各自の通常の薬物療法、及び200mg〜300mgのカンナビジオール又はプラセボの投与を受けた。CBDの投与を受けた患者のうち、3人は完全な改善、2人は部分的な改善、2人は僅かな改善を示したが、1人は変化しないままであった。唯一の望ましくない効果は軽度の鎮静であった。プラセボの投与を受けた患者のうち、1人は改善したが7人は変化しないままであった。
【0011】
非特許文献11は上手くいかなかった研究について報告したが、この研究では12人のてんかん患者が、標準的な抗てんかん剤に加えて1日当たり200mg〜300mgのカンナビジオールの投与を受けた。発作頻度の有意な改善は存在しないようであった。
【0012】
非特許文献12は、1日当たり900mg〜1200mgのカンナビジオールの投与を10月間受けた単一の患者による非盲検試験(open trial)を報告している。この試験により、この患者において発作頻度が顕著に低減することが示された。
【0013】
これらの試験以来約20年間更なる進展がないことは、おそらく重大なことである。これは、大麻に基づく医薬に対する一般的な偏見を含む多数の因子に起因すると考えられる。臨床試験に使用された用量レベルが最適でなかった可能性もあり、本出願人は、カンナビノイドがベル形の用量応答曲線を生じる可能性があると判断した。
【0014】
CBDが有益であり得ることを示唆する開示に加えて、標準的な治療(フェノバルビタール及びフェニトイン)に応答しない5人の入院中の児童にテトラヒドロカンナビノール(THC)を投与したという報告がある(非特許文献13)。1人は発作が完全になくなり、1人は発作がほぼ完全になくなり、その他の3人も以前より悪くはならなかった。
【0015】
しかしながら、患者ごとに異なる発作感受性に部分的に起因する、40種類を超える認識可能なてんかん症候群が存在し(非特許文献14、非特許文献15)、課題は、これらの種々の種類の症候群に対して効果的な薬剤を見出すことである。
【0016】
神経細胞の活動は、適切な脳機能のための必要条件である。しかしながら、神経細胞の活動の興奮−抑制の平衡を妨害することにより、てんかん発作が誘導され得る。これらのてんかん発作は、部分発作及び全般発作という2つの基本的なカテゴリーにグループ分けすることができる。部分発作は特定の脳領域において起こり、通常は側頭葉(海馬を含有する)に局在したままであるが、全般発作は、部分発作の二次的な全般化として大脳皮質全体に現れる(非特許文献14、非特許文献15)。部分発作及び全般発作の分類に関するこの考え方は、1969年に国際抗てんかん連盟がてんかん発作の分類体系を発表するまで、常識となってはいなかった(非特許文献16、非特許文献17、非特許文献18)。
【0017】
国際抗てんかん連盟は部分発作を更に分類し、意識状態の存在又は障害に応じて、部分発作を単純部分発作及び複雑部分発作に分けた(非特許文献18)。
【0018】
連盟は、全般発作も多数の臨床発作タイプへとカテゴリー分けしたが、そのうち幾つかの例を以下に概説する:
【0019】
欠神発作は頻繁に起こり、進行中の活動の突然の開始及び中断を伴う。加えて、ほんの数秒続く発作に伴い発話が遅くなる、又は妨げられる(非特許文献18)。
【0020】
「大発作」としてよく知られる強直間代発作は、全般発作の中で最も頻繁に起こるものである(非特許文献18)。この発作タイプは、2つの段階を含む:強直性の筋収縮の後、痙攣性運動の間代段階に移行する。患者は、発作中を通じて、またその後不定期間、意識不明のままとなる。
【0021】
「転倒発作」として知られる脱力発作は、身体における特定の筋肉、筋肉群、又は全ての筋肉の筋緊張の突然の喪失により生じるものである(非特許文献18)。
【0022】
てんかん発作の開始は生命を脅かす場合があり、患者は長期間の健康上の影響も受ける(非特許文献15)。これらの影響は多くの形をとり得る:
精神衛生上の問題(例えば、幼少期における正常なグルタミン酸作動性シナプスの発達の阻害)、
認知機能障害(例えば、学習し記憶を蓄えるための海馬中の神経回路の能力の減弱)、
形態上の変化(例えば、興奮毒性の結果として内側側頭葉てんかんを示す患者の海馬のCA1領域及びCA3領域中の神経細胞の選択的喪失)(非特許文献19、非特許文献20)。
【0023】
てんかんが患者の生活様式にも大きな影響を及ぼす、すなわち患者が、大発作により起こる結果としての損傷(例えば頭部損傷)の恐怖の中で、又は日々の仕事を行うことができない、若しくは長い無発作期間をおかない限り車を運転することができないという中で生活する可能性があることは注目に値する(非特許文献21)。
【0024】
てんかんを有する者が患った発作において現れる神経細胞の活動、及び結果として起こる身体症状を模倣する、3種類の十分に確立され広範に使用される急性発作のin vivoモデルは、以下のものである:
ペンチレンテトラゾール誘導性の全般発作モデル(非特許文献22、非特許文献23)、
ピロカルピン誘導性の側頭葉(すなわち海馬)発作モデル(非特許文献24)、及び
ペニシリン誘導性の部分発作モデル(非特許文献25)。
【0025】
これらは、ヒトにおける治療の研究に必要不可欠な広範な発作及びてんかんのモデルを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】国際公開第02/064109号
【特許文献2】国際公開第2006/054057号
【特許文献3】国際公開第2009/007697号
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Sander, 2003
【非特許文献2】Mackie, 2006
【非特許文献3】Wingerchuk, 2004
【非特許文献4】Alger, 2006
【非特許文献5】Brust et al., 1992
【非特許文献6】Ferdinand et al., 2005
【非特許文献7】Consroe et al., 1975
【非特許文献8】Ng (1990)
【非特許文献9】Institute of Medicine report (1999)
【非特許文献10】Cunha et al (1980)
【非特許文献11】Ames (1986)
【非特許文献12】Trembly et al (1990)
【非特許文献13】Davis & Ramsey
【非特許文献14】McCormick and Contreras, 2001
【非特許文献15】Lutz, 2004
【非特許文献16】Merlis, 1970
【非特許文献17】Gastaut, 1970
【非特許文献18】Dreifuss et al., 1981
【非特許文献19】Swann, 2004
【非特許文献20】Avoli et al., 2005
【非特許文献21】Fisher et al., 2000
【非特許文献22】Obay et al., 2007
【非特許文献23】Rauca et al., 2004
【非特許文献24】Pereira et al., 2007
【非特許文献25】Bostanci and Bagirici, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
てんかんと関連する特定の形態の発作を治療する際に有用なフィトカンナビノイド、又はフィトカンナビノイドの組合せを特定することが、本発明の目的の一つである。
【0029】
効果的であることが分かる可能性が高い用量範囲を決定すること、及びその作用メカニズムの考え得る差異に基づき、より有益であることが分かる可能性が高い(種々の大麻の化学変種又は変種(varieties)中に存在し得るような)カンナビノイドの組合せを特定することが、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の第1の態様によれば、全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)及びカンナビジオール(CBD)からなる群から選択される1つ又は複数のフィトカンナビノイドが提供される。
【0031】
好ましくは、前記薬物は、間代発作及び/又は強直発作を治療するためのものである。
【0032】
THCVの好ましい1日量は、少なくとも1.5mg、より好ましくは少なくとも5mg、10mg〜15mg以上である。
【0033】
好ましくはTHCVを、少なくとも第2の治療上有効なカンナビノイド、好ましくはCBDと組み合わせて使用する。
【0034】
CBDは好ましくは、少なくとも400mgの、より好ましくは少なくとも600mgの、及び800mg以上もの、ただし好ましくは1200mg未満の1日量をもたらす量で存在する。
【0035】
カンナビノイドは、純粋な若しくは単離されたカンナビノイドとして、又は植物抽出物の形態で存在し得る。植物抽出物を使用する場合、THC含有量が、総カンナビノイドの5重量%未満、より好ましくは4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満及び1重量%未満であることが好ましい。クロマトグラフィ等の技法を使用して、THCを抽出物から選択的に除去することができる。
【0036】
本発明は、特定の形態のてんかんを治療するための薬物の製造においてフィトカンナビノイドを使用することにも及ぶ。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、THCV及び/又はCBDを含む、全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための組成物が提供される。
【0038】
前記組成物は好ましくは、1つ又は複数のフィトカンナビノイド、及び1つ又は複数の添加剤を含有する植物抽出物の形態をとる。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための薬物の製造において使用するための、THCV及び/又はCBDが提供される。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、有効量のTHCV及び/又はCBDを含む薬物を患者に投与することを含む、全般発作及び/又は部分発作を治療する方法が提供される。
【0041】
組合せによる使用は、種々の動物モデルにおいて種々の用量で観察された種々の結果を考慮して、明らかに異なる作用メカニズムを前提としている。
【0042】
本発明の実施形態を、以下の添付の図面を参照して以下に更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】初期及び後期の発作の重症度までの潜時(latencies)を示す図である。ビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDS、及び70mg/kgのPTZに関して、第一ミオクローヌス反射(FMJ)及びスコア3.5までの平均潜時±S.E.M.を示す。n=8〜10。
【図2】発作の持続時間、及び死ぬまでの時間を示す図である。ビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDS、及び70mg/kgのPTZに関して、生存した動物における発作の平均持続時間±S.E.M.、及び死んだ動物における最初の発作の徴候から死ぬまでの時間±S.E.M.を示す。実験群内の死んだ動物の割合に応じてn=3〜10。∫=ビヒクル群は死ななかったため、ここでは値を示していない。
【図3】重症度スコアの中央値を示す図である。70mg/kgのPTZの前にビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDSにより処理した動物の群に関する重症度スコアの中央値。全ての群に関してn=10。
【図4】致死率を示す図である。ビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDS、及び70mg/kgのPTZにより処理した動物に関して、致死率を百分率として表す。全ての群に関してn=10。∫=ビヒクル群は死ななかったため、値を示していない。
【図5】初期及び後期の発作の重症度までの潜時を示す図である。ビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDS、及び80mg/kgのPTZに関して、第一ミオクローヌス反射(FMJ)及びスコア3.5までの平均潜時±S.E.M.を示す。n=7〜10。
【図6】発作の持続時間、及び死ぬまでの時間を示す図である。ビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDS、及び80mg/kgのPTZに関して、生存した動物における発作の平均持続時間±S.E.M.、及び死んだ動物における最初の発作の徴候から死ぬまでの時間±S.E.M.を示す。実験群内の死んだ動物の割合に応じてn=3〜7。
【図7】重症度スコアの中央値を示す図である。80mg/kgのPTZの前にビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDSにより処理した動物の群に関する重症度スコアの中央値。全ての群に関してn=10。
【図8】致死率を示す図である。ビヒクル、又は低用量、中用量若しくは高用量のTHCV BDS、及び80mg/kgのPTZにより処理した動物に関して、致死率を百分率として表す。全ての群に関してn=10。
【図9A】純粋なTHCVを用いた場合の、PTZにより誘導される発作の発生を示す図である。図9Aは、ビヒクル群及びTHCV投与群に関して、80mg/kgのPTZの注射から発作の最初の徴候までの平均潜時(秒)を示す。特定の群内の各マーカーの発生率に応じてn=5〜16。全て値±S.E.M.であり、は、ビヒクル群からの有意差(P<0.05;マンホイットニーのU検定)を示す。
【図9B】純粋なTHCVを用いた場合の、PTZにより誘導される発作の発生を示す図である。図9Bは、ビヒクル群及びTHCV投与群に関して、80mg/kgのPTZの注射からミオクローヌス発作の発生までの平均潜時(秒)を示す。特定の群内の各マーカーの発生率に応じてn=5〜16。全て値±S.E.M.であり、は、ビヒクル群からの有意差(P<0.05;マンホイットニーのU検定)を示す。
【図9C】純粋なTHCVを用いた場合の、PTZにより誘導される発作の発生を示す図である。図9Cは、ビヒクル群及びTHCV投与群に関して、80mg/kgのPTZの注射から全強直間代発作までの平均潜時(秒)を示す。特定の群内の各マーカーの発生率に応じてn=5〜16。全て値±S.E.M.であり、は、ビヒクル群からの有意差(P<0.05;マンホイットニーのU検定)を示す。
【図9D】純粋なTHCVを用いた場合の、PTZにより誘導される発作の持続時間を示す図である。図9Dは、発作後生存した動物における発作の平均持続時間(秒)を示す。全て値±S.E.M.であり、は、ビヒクル群からの有意差(P<0.05;マンホイットニーのU検定)を示す。
【図10A】PTZにより誘導される発作に対するCBDの効果を示す図である。ビヒクル及びCBD(1mg/kgのCBD、10mg/kgのCBD、100mg/kgのCBD)を投与した動物(全ての群に関してn=15)において、80mg/kgのPTZのIP注射の結果として得られた致死率(%)。は、有意な結果(p<0.01)を示す。
【図10B】PTZにより誘導される発作に対するCBDの効果を示す図である。80mg/kgのPTZのIP注射の結果として強直間代発作を起こした、ビヒクル及びCBD(1mg/kgのCBD、10mg/kgのCBD、100mg/kgのCBD)を投与した動物の%。は、有意な結果(p<0.01)を示す。
【図11】致死率(百分率)に対してTHCVの効果がないことを示す図である。対照との比較により二項検定を使用して有意性を評価し、P<0.05で有意性を認めた。いずれの用量でも対照に対する有意差は見出されなかった。
【図12】発作の平均最大重症度に対してTHCVの効果がないことを示す図である。チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVAにより有意性を評価した。対照に対する全ての比較に関してP>0.5。
【図13】THCVで処理した場合に特定の発作状態に到達した動物の各群における百分率を示す図である。対照に対する有意差を、二項検定を使用して評価した。P≦0.05。
【図14】致死率(百分率)に対するCBDの効果を示す図である。有意性を、二項検定により評価した。は、致死率の有意な増大(P<0.05)を示す。この効果が10mg/kgでのみ現れ、100mg/kgでは消失し、二相効果を示唆したことに留意されたい。
【図15】発作の平均最大重症度を示す図である。チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVAにより有意性を評価した。対照に対する全ての比較に関してP>0.5。
【図16】特定の発作状態に到達した動物の各群における百分率を説明する図である。対照に対する有意差を、二項検定を使用して評価した。P≦0.05()。P≦0.001(***)。
【図17】強直−間代発作の平均頻度に対するCBDの効果を示す図である。チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVAを使用して有意性を評価した。P≦0.05()。P≦0.01(**)。
【図18】発作期間の総持続時間と比較した強直間代状態に費やされた持続時間(百分率)を説明する図である。チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVAを使用して有意性を評価した。P≦0.05()。
【図19A】姿勢制御を失った(without postural control)強直間代発作に対するCBDの効果を説明する図である。姿勢制御を失った強直間代発作を起こした動物の%。統計的二項検定。***及び#は、それぞれp≦0.001及びp≦0.1を示す。
【図19B】姿勢制御を失った強直間代発作に対するCBDの効果を説明する図である。2時間の記録期間中に(又は死ぬまでに)、姿勢制御を失った強直間代発作を動物が示した頻度。一方向ANOVAの後にチューキー検定。**及び#は、それぞれp≦0.01及びp≦0.1を示す。
【図20A】ペニシリンにより誘導される発作の重症度に対するCBDの効果を説明する図である。発作の重症度の中央値(灰色の線)。第一四分位数及び第三四分位数(黒色の横線)並びに最大値及び最小値(それぞれ、上方及び下方の誤差バー)も示す。一方向ANOVAの後にチューキー検定。は、p≦0.05を示す。
【図20B】ペニシリンにより誘導される発作に対するCBDの効果を説明する図である。全過程で無発作のままであった動物の百分率。統計的二項検定。***は、p≦0.001を示す。
【図20C】ペニシリンにより誘導される発作の致死率に対するCBDの効果を説明する図である。致死率(百分率)。統計的二項検定。#は、p≦0.1を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0044】
詳細な説明
PTZモデル−実施例1〜実施例3
PTZモデルに関する一般手法
動物
雄性ウイスターラット(P24−29、75g〜110g)を使用して、全般発作を有するPTZモデルに対するカンナビノイド(THCV(BDS及び純粋)及びCBD)の効果を評価した。実験の前に、試験環境、ケージ、注射プロトコル、取り扱いに動物を慣らした。動物を、21℃、12時間の明暗サイクル(0900に明るくする)、湿度50%の部屋に収容し、飼料及び水を自由に摂取できる状態にした。
【0045】
実験設定
5個の6L容蓋付パースペクス製タンクを、タンクの間に仕切りを設けた単一のベンチ上に配置した。ラットの挙動を観察するために、その仕切り上に閉回路テレビ(CCTV)カメラを取り付けた。Sony Topica CCDカメラ(Bluecherry, USA)を、BNCケーブルを介して、Brooktree デジタルキャプチャカード(Bluecherry, USA)を用いる低ノイズPCと接続した。Zoneminder(http://www.zoneminder.com)のソフトウェアを使用して、ラットをモニタリングし、録画を開始及び終了させ、ビデオファイルを管理した。組織内(In-house)Linux(登録商標)スクリプトを使用して、ビデオファイルを、The Observer(Noldus Technologies)を使用する更なるオフライン解析に好適な形式へとエンコードした。
【0046】
用量
広範な用量のPTZ(体重1kg当たり50mg〜100mg)を使用して、発作の誘導に最良の用量を決定した(以下を参照されたい)。結果として、腹腔内に(IP;0.9%の生理食塩水中50mg/mlのストック溶液)注射する70mg/kg及び80mg/kgの用量を、カンナビノイドをスクリーニングするために使用した。
【0047】
実験プロトコル
試験日に、動物に、カンナビノイド(低用量、中用量又は高用量)、又は陰性対照群の役割を果たす同体積のカンナビノイドビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)のNaCl溶液=1:1:18)のIP注射を行った。それから動物を30分間観察し、その後動物に70mg/kg又は80mg/kgのPTZのIP注射を行った。陰性ビヒクル対照の実験を、カンナビノイドを投与した被験体と並行して行った。PTZを投与した後、動物を観察しビデオ録画して、発作の重症度、及び複数の発作挙動タイプまでの潜時を決定した(以下のin vivo解析を参照されたい)。動物を、発作の最後の徴候の後30分間フィルムに収め(filmed)、それからそれぞれのケージに戻した。
【0048】
In vivo解析
実験手順中に動物を観察したが、全ての解析は、The Observer挙動解析ソフトウェア(Noldus, Netherlands)を使用して、録画したビデオファイルによりオフラインで行った。発作の重症度のスコア化システムを使用して、被験体が経験した発作のレベルを決定した(Pohl & Mares, 1987)。全ての動物に関して、発作の全ての徴候を詳細に記載した。
【0049】
【表1】

【0050】
PTZの注射から発作の発生の特定の指標までの潜時:
PTZの注射から第一ミオクローヌス反射(FMJ;スコア1)までの、及び動物が「強直性要素及び身体のねじれを伴う前肢間代」(スコア3.5)に到達するまでの潜時(単位:秒)を記録した。FMJは、発作活動の開始の指標であるが、90%を超える動物がスコア3.5を生じるため、より重度の発作の発生の良好なマーカーである。データを、実験群内の平均±S.E.M.として示す。
【0051】
発作の最大重症度:
これは、以下のスコア化尺度に基づき、各実験群に関する中央値として示す。
【0052】
致死率(%):
PTZにより誘導される発作の結果として死んだ動物の実験群内における百分率。THCV(BDS)研究において強直間代発作(スコア4及びスコア5)を発生した動物の大部分が結果的に死んだこと、及びスコア6(致死)は動物が強直間代発作も経験したことを自動的に示すことに留意されたい。
【0053】
発作の持続時間:
発作の最初の徴候(通常はFMJ)から(生存した動物と生存しなかった動物とに分けて)発作の最後の徴候までの時間、又は死んだ被験体の場合には死んだ時間までの時間(単位:秒)。これは、各実験群に関して平均±S.E.M.として示す。
【0054】
統計:
潜時及び持続時間の差異を、チューキーの事後検定を伴う一方向分散分析(ANOVA)により評価した。P≦0.05を有意とみなした。
【0055】
実施例1−THCV(BDS)
THCV BDSは、THCVが優勢なカンナビノイドである(すなわち、THCVが、総カンナビノイド含有量の80重量%で抽出物に存在する主要なカンナビノイドである)化学変種(chemovar)の全抽出物を含むものであった。THCは、2番目に多く含まれるカンナビノイドであり、相当量存在しており(すなわち、THCが総カンナビノイド含有量の10重量%超含まれており、約16%で存在する)、同定された多数の微量カンナビノイドが存在しており、その各々がHPLC分析により測定されるように総カンナビノイド含有量の2重量%未満含まれていた。この抽出物におけるTHCV対THCの比率は、約5:1である。
【0056】
実際には、THCV含有量は抽出物の67.5重量%であり、THC含有量は抽出物の13.6重量%であり、他の同定されたカンナビノイドは合計で抽出物の約3重量%含まれており、残りの16%は非カンナビノイドを含んでいた。
【0057】
PTZ予備研究
ラットにおいて或る範囲のPTZ濃度(50mg/kg〜100mg/kg;文献に記載のある範囲)により誘導される発作を、カンナビノイドの効果の調査の前に最適な用量を決定するために調査した。
50mg/kg及び60mg/kgの用量のPTZにより誘導された発作様の活動はほとんどなかった(n=4)。
70mg/kgの用量のPTZにより典型的に、間代発作が誘導された(スコア3.5;13匹の被験体のうち8匹)。
80mg/kgの用量のPTZにより通常(regularly)、強直間代発作が誘導された(スコア4及びスコア5;10匹の被験体のうち6匹)。
【0058】
加えて、PTZの投与の繰り返しにより経時的な感受性の増大がもたらされることが見出された。このため、或る用量のPTZの投与を既に受けた動物に対しては実験を行わなかった。
【0059】
最初に、PTZにより誘導される発作に対するTHCV BDSの効果を、70mg/kgの用量のPTZに対して評価した。以下で記載するように、これにより、典型的に重度の発作スコアが得られないビヒクル対照群がもたらされた。したがって、THCV BDSを、80mg/kgの用量のPTZに対してもスクリーニングした。80mg/kgのPTZに曝露したビヒクル対照動物が経験する発作の重症度の増大が、潜在的な抗痙攣活性のより適切な試験であると考えられた。
【0060】
中程度の重度の(70mg/kg)PTZにより誘導される発作に対するTHCV BDSの効果
3種類の用量のTHCV BDSを、ラットにおいて中程度の発作を誘導することが分かったPTZの濃度(70mg/kg;上の予備研究を参照されたい)に対して評価した。使用したTHCV BDSの低用量、中用量及び高用量はそれぞれ、0.37mg/kg、3.70mg/kg及び37.04mg/kgであり、実際のTHCVの用量としてそれぞれ0.25mg/kg、2.5mg/kg及び25mg/kgをもたらした。これらの用量を、THCV含有量により、PTZにより誘導される発作に対する純粋なTHCVのスクリーニングに使用される用量と一致させた。
【0061】
THCV BDSは、第一ミオクローヌス反射までの潜時に対して、又は発作の重症度の尺度上で重症度スコア3.5に到達するまでの潜時に対して、何らの有意な効果をも有しなかった(図1)。これらの変数の両方に関する値は中用量及び高用量のTHCV BDSで処理した動物では対照と比較して高かったが、有意には到達しなかった(P>0.05)ことに留意するものとする。同様に、発作の持続時間に対して有意な影響は見られなかった(図2)。
【0062】
70mg/kgの用量のPTZの投与を受けた動物における発作の重症度(図3)及び致死率(図4)に対するTHCV BDSの効果は、単純なパターンに適合しなかった。ビヒクルを単独で注射した動物で、その群に関して重症度スコアの中央値が3.5を超えたものはなく、死んだ動物もいなかった(n=10)。
【0063】
対照的に、70mg/kgのPTZにより、低用量のTHCV BDSを注射した動物の50%において重度の強直間代発作及び死が誘導され、重症度スコアの中央値が4.75を示した。重症度のこの増大は、有意ではなかった。しかしながら、中用量及び高用量のTHCV BDSを注射した動物は、低用量に曝露した動物よりも低い重症度スコアの中央値及び低い致死率を示した(図3及び図4)。中用量及び高用量での致死率はビヒクル群の致死率より高かったが、有意に高くはなかった(P>0.05;図4)。しかしながら、重症度スコアの中央値は、中用量及び高用量の間で同じであった(図3)。この結果のパターンにより、対照(ビヒクルで処理した)動物において重度の発作を誘導する用量のPTZに対してTHCV BDSをスクリーニングする更なる実験のセットが必要とされることが示唆された。
【0064】
重度の(80mg/kg)PTZにより誘導される発作に対するTHCV BDSの効果
80mg/kgのPTZにより誘導される発作に対する同じ3種類の用量のTHCV BDSの効果を評価した。80mg/kgが、ビヒクル対照群において70mg/kgより有意に(P=0.009)重度の発作を誘導した(発作の重症度スコアの中央値はそれぞれ6及び3.5であった)ことは注目に値する。THCV BDSは、FMJ又は重症度スコア3.5までの潜時に対して有意な効果を有しなかった(図5)。同様に、発作の持続時間に対しても効果は観察されなかった(図6)。
【0065】
低用量のTHCV BDSにより、80mg/kgの用量のPTZの投与を受けた動物における発作の重症度(図7)及び致死率(図8)の両方が減少した。低用量のTHCV BDSの投与を受けた動物の重症度スコアの中央値は、ビヒクル対照より低かった(6と比較して3.5)。しかしながら、この差異は有意ではなかった(P>0.5)。また、低用量のTHCV BDS群の致死率は、ビヒクル対照群の半分であった(60%に対して30%)。
【0066】
中用量及び高用量のTHCV BDSで処理した群は、それぞれ6及び60%と比較して、より低い発作の重症度スコア4.75(対照に対してP>0.5)、及びより低い致死率50%を有していた。
【0067】
in vivoでの要約及び結論
PTZモデルでのTHCV BDSのスクリーニングは、PTZにより誘導される中程度又は重度の発作に対して何らの有意な抗痙攣効果又は痙攣促進効果も示さないように思われた。しかしながら、重度の(80mg/kgのPTZ)発作の誘導の前に低用量のTHCV BDSの投与を受けた動物においては、ビヒクル対照と比較して、より低い重症度及び致死率に向かう傾向が見られた。
【0068】
より高用量のTHCV BDSでは、THCV BDSの非THCV内容物中に存在する、より高いレベルの他のカンナビノイド成分(例えばTHC)により、この効果が妨げられている可能性がある。より高用量のTHCV BDSは、THCVの任意の有望な正の効果を妨害し得る、漸増用量の非THCV内容物(例えばTHC)を含有する。
【0069】
実施例2−THCV(純粋)
PTZにより誘導される発作に対する純粋なTHCVの効果
低用量(0.025mg/kg)、中用量(0.25mg/kg)及び高用量(2.5mg/kg)の純粋なTHCVを、PTZにより誘導される発作に対するその効果に関して評価した。この点で、実施例1(THCV BDS)との比較に関して、異なる用量の純粋なTHCVをTHCV BDSと比較して使用したことは注目に値する。以下の表2を参照されたい。
【0070】
【表2】

【0071】
80mg/kgのPTZにより、4つの全実験群(1群当たりn=16)由来の動物において種々の重症度の発作が首尾よく誘導された。PTZにより誘導される発作により、ビヒクルを単独で投与された動物のうち44%の死が引き起こされた。低用量、中用量及び高用量のTHCVの投与を受けた群の全てが、それぞれ41%、33%及び38%という、より低い致死率を示した。しかしながら、これらの値は、ビヒクル群の値と有意に異なってはいなかった(p>0.05、二項検定)。
【0072】
最初の発作の徴候までの、並びに使用した発作のスコア化尺度でのスコア[3]及びスコア[5]までの潜時、並びに生存した動物に関する発作の持続時間に関する平均値を、図9A〜図9Dに記載する。
【0073】
ビヒクル対照と比較して、THCVの投与を受けた動物においては、発作様の挙動の最初の顕在化までの潜時の増大により示される(図9A)ように、発作の開始がより遅れたと見ることができる。
【0074】
開始の遅れは、最高用量のTHCVでは有意であった(p=0.02)。スコア[3]及びスコア[5]までの潜時に関して同様のパターンが見られ(図9B及び図9C)、全ての用量のTHCVで潜時の増大が示され、最高用量のTHCVで有意なレベルに到達した([3]及び[5]に関して、それぞれp=0.017及びp=0.013)。
【0075】
ビヒクル対照と比較して、中用量のTHCVの投与後では、実験期間中生存した動物におけるPTZにより誘導される発作の持続時間が有意に短いことも観察された(図9D;p=0.03)。
【0076】
以下の表3は、各実験群における発作の重症度の中央値に関する値を示す。
【0077】
【表3】

【0078】
各実験群に関して最大重症度の中央値、及び発作の何らの徴候もなかった動物の%を示す(各々の値に対してn=16)。は、ビヒクル群からの有意差を示す(有意性の二項検定、P<0.05)。
【0079】
ビヒクル対照動物が4.25という発作の重症度の中央値を示したが、THCVの投与を受けた全ての群の重症度スコアの中央値は3.5であった。この減少は、有意に異なるものではなかった。
【0080】
12.5%のビヒクル対照動物が発作の指標を示さず、これらの動物はPTZ投与後に発作を発生しないことが示唆された。0.25mg/kgの投与を受けた群においては、有意に多数の動物(33.3%)が発作の徴候を示さなかった(表3;p=0.031)。このデータにより、中用量の0.25mg/kgのTHCVが発作の発生を防いだことが示唆される。
【0081】
in vivoでの要約及び結論
潜時の値に対する高用量のTHCVの効果により、THCVが開始及び発作の発生の両方を遅らせることができることが示唆され、中用量(0.25mg/kg)のTHCVでの発作の発生率に対する中用量のTHCVの有意な効果により、PTZにより誘導される発作に対する有意な抗痙攣作用が示唆される。
【0082】
実施例3−CBD(純粋)
THCVに加えて、CBDもPTZモデルにおいてスクリーニングした。結果は、このモデルにおける(100mg/kgのレベルの)CBDが、ビヒクル対照動物と比較して、致死率、及び最も重度の発作の発生率を有意に減少させたため、これが抗痙攣性であることを強く示唆している。
【0083】
PTZにより誘導される発作に対する純粋なCBDの効果
純粋なCBDを、同体積のビヒクルを単独で投与された動物と平行して、1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kgの用量で、標準ビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)において腹腔内に(IP)注射した(各群に関してn=15)。60分後にPTZ(80mg/kg、IP)を投与した。
【0084】
ビヒクルを単独で投与した対照動物の46.7%が、PTZ投与後30分以内に死んだ(図10)。対照的に、100mg/kgのCBDの投与を受けた動物の6.7%しか(15匹のうち1匹のみ)死なず、顕著な低減が有意であることが分かった(p<0.001)。
【0085】
加えて、ビヒクル対照動物の53.3%と比較して、100mg/kgのCBDの投与を受けた動物の6.7%でしか最も重度の発作(スコア5)が起こらず、この減少も有意なものであった(p<0.001;in vivoでの図10)。
【0086】
純粋なTHCVと対照的に、発作の発生の潜時の有意な増大は観察されなかった。しかしながら、顕著かつ有意な低減により、PTZにより誘導される発作に対する著しい抗痙攣効果が示される。
【0087】
致死率レベル、及び最も重度の発作の発生率に対する、高用量(100mg/kg)のCBDでのPTZモデルにおける純粋なCBDのスクリーニング及び分析により、CBDが、PTZにより誘導される発作の重症度を減弱することができることが示唆される。
【0088】
ピロカルピンモデル−実施例4及び実施例5
実施例4−純粋なTHCV
ピロカルピンにより誘導される発作に対する純粋なTHCVの効果
純粋なTHCVを、同体積のビヒクルを単独で投与された動物と平行して、0.025mg/kg、0.25mg/kg及び2.5mg/kgの用量で、標準ビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)において腹腔内に(IP)注射した(各群に関してn≧14)。15分後にメチルスコポラミン(1mg/kg;ピロカルピンの末梢性ムスカリン効果を低減するために)を投与し、その45分後にピロカルピン(380mg/kg、IP)を投与した。
【0089】
結果
発作の開始までの潜時に対するTHCVの有意な効果は、いずれの用量でも観察されなかった(対照に対して全ての用量に関してP>0.5;チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVA)。いずれの用量のTHCVについても、対照に対する致死率(百分率)の有意な変化は見られなかった(図11)。
【0090】
加えて、THCVは、動物群ごとに到達した発作の平均最大重症度に対する効果を有しなかった(図12)。
【0091】
特定の発作状態(片側前肢間代、両側前肢間代、起立及び転倒(rearing and falling)を伴う両側前肢間代、並びに強直間代発作)に達した動物の各群における百分率も評価した(図13A〜図13D)。
【0092】
THCVは、いずれの用量でも、片側前肢間代、両側前肢間代又は強直間代発作を示す動物の百分率における有意な変化をもたらさなかった。興味深いことに、0.25mg/kgのTHCVが、起立及び転倒を伴う両側前肢間代を示す動物の百分率において有意な増大をもたらしたが、この効果は他のいずれの用量でも見られなかった。
【0093】
実施例5−純粋なCBD
ピロカルピンにより誘導される発作に対する純粋なCBDの効果
純粋なCBDを、同体積のビヒクルを単独で投与された動物と平行して、1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kgの用量で、標準ビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)において腹腔内に(IP)注射した(各群に関してn≧14)。15分後にメチルスコポラミン(1mg/kg;ピロカルピンの末梢性ムスカリン効果を低減するために)を投与し、その45分後にピロカルピン(380mg/kg、IP)を投与した。
【0094】
結果
発作の開始までの潜時に対するCBDの有意な効果は、いずれの用量でも観察されなかった(対照に対して全ての用量に関してP>0.5;チューキーの事後検定を伴う一方向ANOVA)。10mg/kgの用量のCBDについては、図14に示されるように、対照に対する致死率(百分率)の有意な増大が見られた。
【0095】
図15は、CBDが、動物群ごとに達した発作の平均最大重症度に対する効果を有しなかったことを詳しく示している。
【0096】
図16A〜図16Dは、特定の発作状態(片側前肢間代、両側前肢間代、起立及び転倒を伴う両側前肢間代、並びに強直間代発作)に達した動物の各群における百分率を詳しく示している。
【0097】
CBDは、1mg/kgを超えるCBDの用量で、片側前肢間代を示す動物の百分率の有意な減少をもたらした。興味深いことに、両側前肢間代を示す動物の百分率に有意差は見出されなかったが、起立及び転倒を伴う両側前肢間代を示す動物の百分率は1mg/kgを超える全てのCBDの用量で有意に低減した。強直間代発作を示す動物の百分率は、1mg/kg及び100mg/kgのCBDの用量で有意に低減したが、10mg/kgでは低減しなかった(図14を参照されたい)。
【0098】
図17に示されるような、強直間代事象の平均頻度を検証することによる強直間代発作事象に対するCBDの効果。CBDは、試験した全ての用量で、強直間代事象の平均頻度の有意な低減をもたらした。他の全ての発作スコアの平均頻度に対するCBDの効果も同様の方法で評価したが、対照に対する有意差は見出されなかった(全てに関してP>0.5)。
【0099】
発作期間の総持続時間と比較した強直間代状態に費やされた持続時間(百分率)を検証した(図18)。CBDは、1mg/kg及び100mg/kgの用量で持続時間(百分率)を有意に低減させたが、10mg/kgでは有意には低減させなかった。
【0100】
実施例6
ペニシリンモデル−実施例6(のみ)
実施例6−純粋なCBD
ペニシリンにより誘導される発作に対する純粋なCBDの効果
CBD(1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kg)、又はCBDビヒクル(エタノール:Cremophor:0.9%(w/v)NaCl=1:1:18)を、成体の雄性ウイスターラット(>250g)にi.p.投与した。この1週間前に、動物に対して、麻酔下でカニューレを右側脳室中に外科的に埋め込んだ。CBD投与の1時間後、生理食塩水溶液1.5μl中で150IUのペニシリンを1分かけて右側脳室中に注入し、発作挙動を2時間ビデオ録画した。
【0101】
ビヒクル対照群から得られたデータを使用する、ペニシリン単独に対する動物の応答の詳細な検証の後、ペニシリンにより誘導される部分発作に関する最終的な発作のスコア化尺度を得た。したがって、このモデルに関して複数の既存及び公開済みのスコア化システムから得られた以下のスコア化システムを、かかる発作に対する薬剤の効果の分析に使用する。
【0102】
【表4】

【0103】
12匹のビヒクルで処理した動物のうち7匹が、最も重度の発作(姿勢制御を失った強直間代発作;図19A)を発生したが、100mg/kgのCBDの投与により、これらの発作の発生が、有意性のある形で(p=0.001)完全に防止された。これらの発作の発生の近有意な(Near-significant)減少が、1mg/kg及び10mg/kgのCBDで処理した動物において観察された(図16A、両方についてp=0.076)。動物が最も重度の発作を経験した頻度も有意に影響され(ANOVA、p=0.009;図19B)、100mg/kgのCBDでのビヒクル群と比較した有意な減少(p=0.006)、及び10mg/kgでの近有意な効果(p=0.071)が示された。
【0104】
発作の重症度、及び動物の致死率に対するCBD処理の効果を、図20A〜図20Cにおいて説明する。100mg/kgの用量のCBDにより、ビヒクルで処理した動物と比較して、ペニシリンにより誘導される発作の重症度の中央値が有意に低減した(ANOVA、p=0.024;ビヒクルと100mg/kgのCBDとの間の差異、p=0.012;図20A)。興味深いことに、全ての用量(1mg/kg、10mg/kg及び100mg/kg)のCBDが、無発作のままであった動物の割合を有意に増大させた(全ての用量に関してp<0.001;図20B)。最後に、100mg/kgの用量が、ビヒクルと比較して、致死率に対する近有意な効果を有していた(p=0.057)。
【0105】
全体的な結論
これらの研究から、THCV(純粋)及びCBD(純粋)の両方が、全般発作、特に間代/強直発作に対する抗てんかん薬としての展望を示すようであると考えられる。相当量のTHCを含む他のカンナビノイドを含有するTHCVが豊富な抽出物に関して得られたデータにより、THCがTHCVの効果を打ち消している可能性があること、及び主要な又は優勢なカンナビノイドとしてTHCVを含有し、また極めて少ないTHCを含有する、又はTHCを実質的に含有しないカンナビノイド抽出物が、てんかんの治療に望ましいと考えられることが示唆される。
【0106】
さらに、純粋なCBDによる結果により、THCV及びCBDの両方を相当量含有し、さらに、極めて少ないTHCを含有する、又はTHCを実質的に含有しない抽出物が、最適な組合せを提供し得ることが示唆される。したがって、THCが(数パーセント未満のレベルまで)選択的に及び実質的に除去された、THCVが優勢な抽出物を調製することが望ましいことが分かり得る。これを、CBDが主要な及び優勢なカンナビノイド(これもTHCのレベルが低い)であるCBDが豊富な抽出物(はるかに低いレベルのTHCを含有する)と混合して、明確に規定された相当のレベルのTHCV及びCBDの両方を含むが、THCのレベルは僅かである抽出物を作製することができると考えられる。かかる抽出物は、国際公開第04/016277号に開示されるような、例えば二酸化炭素による抽出により得られる他のカンナビノイド、及び非カンナビノイド成分を含有していてもよく、これらの成分は、内在性カンナビノイド系において「補助的な(entourage)」効果を支持し得る。
【0107】
投与量については、ラット/ヒトの換算係数(×6)により、少なくとも600mg(及び任意に400mg〜800mg)というCBDの1日量、及びTHCVに関しては少なくとも1.5mg(中用量)〜好ましくは少なくとも15mg(高用量)が示唆される。
【0108】
フィトカンナビノイド抽出物を使用する場合、低い又は無視できるレベルのTHC、並びに治療上有効なレベルのTHCV及び/又はCBDを含む抽出物が望ましい。
【0109】
上の実施例に記載したデータは、CBDが、試験した3種類のモデルの全てにおいて或る程度の抗痙攣特性を示し、全般発作又は部分発作の治療において最良と考えられることを明確に示している。対照的に、THCVはPTZモデルでのみ効果的であった。この知見により、これら2つのカンナビノイドが異なる作用メカニズムを有する可能性があること、及びその組合せがより包括的な治療をもたらすことができることが示唆される。この観点から、THCVは全身発作、より具体的には強直間代発作に対して選択的であると考えられ、CBDは全般発作及び部分発作において最も効果的と考えられる。
【0110】
【表5−1】

【0111】
【表5−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)及びカンナビジオール(CBD)からなる群から選択される1つ又は複数のフィトカンナビノイド。
【請求項2】
前記全般発作が強直発作及び/又は間代発作である、請求項1に記載の全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のためのTHCV及び/又はCBD。
【請求項3】
前記THCVが、少なくとも一日量1.5mgの請求項1又は2に記載の全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための単独の又はCBDと組み合わせてのTHCV。
【請求項4】
前記THCVが、少なくとも一日量15mgの請求項1又は2に記載の全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための単独の又はCBDと組み合わせてのTHCV。
【請求項5】
前記CBDが、少なくとも一日量400mgの請求項1又は2に記載の全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための単独の又はTHCVと組み合わせてのCBD。
【請求項6】
前記CBDが、一日量400mg〜800mgの請求項1又は2に記載の全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための単独の又はTHCVと組み合わせてのCBD。
【請求項7】
前記THCV及び/又は前記CBDが植物抽出物として存在し、該植物抽出物が、該抽出物中に存在する任意のカンナビノイドに対する百分率として5重量%未満のテトラヒドロカンナビノール(THC)を含む、請求項1又は2に記載の全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のためのTHCV及び/又はCBD。
【請求項8】
THCV及び/又はCBDを含む、全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための組成物。
【請求項9】
全般発作及び/又は部分発作の治療における使用のための薬物の製造において使用するためのTHCV及び/又はCBD。
【請求項10】
有効量のTHCV及び/又はCBDを含む薬物を患者に投与することを含む、全般発作及び/又は部分発作を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A−B】
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【図16C−D】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−532093(P2012−532093A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516867(P2012−516867)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051066
【国際公開番号】WO2011/001169
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508368987)ジーダブリュー・ファーマ・リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】GW PHARMA LIMITED
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】