てんかんの治療
本発明は、患者に施す、NMDA受容体へのPSD-95の特異的な結合を阻害する薬剤の有効な投与計画で、てんかんにかかっている患者を治療する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、2008年5月16日に出願した米国仮出願第61/054,109号の利益を主張し、全ての目的について参照によってここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、反復性で理由が不明な発作によって特徴付けられる神経学的状態である (Blume et al., Epilepsia. 2001;42:1212-1218) 。これらの発作は、脳における異常な、過剰な又は同調的なニューロンの活動に起因する一過性の兆候及び/又は症状である (Fisher et al., Epilepsia 46 (4): 470-2) 。てんかんは、単一の疾患ではなく、むしろ非常に多岐に渡る症状であるが、脳の一時的で異常な電気活動に関係している全ての症候群のグループとして理解すべきである。これは、米国における最も一般的で深刻な神経障害の1つであり、多くの場合、長期管理を必要とする。米国において毎年150000人が新たにてんかんを患っているとして診断され、累積生涯発症率は、3%に近づいている (Hauser et al., Epilepsia. 1991;32:429-445; Begley et al., Epilepsia. 1994;35:1230-1243) 。発症率は、生後1年と高齢者が最も高い。同上の患者の30%から40%は、既存の抗てんかん薬を単独で又は併用して使用しているにも関わらず発作が続く (Kwan et al., N Engl J Med. 2000;342:314-319) 。発作をうまくコントロールできない患者は、有意な罹患率と死亡率に直面し、社会的な恥辱及び差別にも直面する。
【0003】
既知の抗てんかん薬は、「従来の」薬物 (例:フェノバルビタール、プリミドン、フェニトイン、カルバマゼピン及びバルプロン酸) や新規の抗てんかん薬 (電位依存性イオンチャネル遮断、抑制性神経伝達の促進、及び/又は興奮性神経伝達の抑制を誘導するもの) を含む。例として、N-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) 受容体に対するグルタミン酸拮抗作用 (例:フェルバメート) 及びα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸 (AMPA) 受容体 (例:フェルバメート、トピラマート) に対するグルタミン酸拮抗作用とニューロン及びアストロサイトに対するγ-アミノ酪酸 (GABA) 再取り込みの阻害 (例:チアガビン) が含まれる。
【0004】
シナプス後肥厚部タンパク質95 (PSD-95) は、興奮毒性及び虚血性脳損傷を介する経路でNMDARと結合する (Aarts et al., Science 298, 846-850 (2002) ) 。この結合は、PSD-95/NMDAR相互作用複合体のいずれかの側にあるモジュラードメインに結合するペプチドをニューロンに形質導入することで分断された。この治療は、NMDAR活性を阻害することなく下流のNMDARシグナル伝達を弱め、培養皮質ニューロンを興奮毒性損傷から保護し、一過性局所的脳虚血状態のラットにおいて脳梗塞体積を減少させた。この結果から、脳卒中及び興奮毒性を介する他の疾病を治療するためにPSD-95/NMDARのペプチドアンタゴニストを使用する提案に至っている。重大な副作用は、第1相試験において、いずれのアンタゴニストに対しても観察されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、てんかんの症状を患っている又は進行させるリスクを有する患者に対する治療法又は効果的な予防法を提供するものであって、患者にPSD-95 PDZドメインがPDZ結合リガンド (別名「PL」) 、例えばNMDA受容体、に対して特異的に結合することを阻害する薬剤の効果的な投与計画を施すことを含む。任意に、上記薬剤は、キメラペプチドであって、NMDA受容体のC末端から3-25アミノ酸又はPSD-95受容体からのPDZドメイン1及び/又は2からなるアミノ酸配列を有し、内在化ペプチドに結合する活性ペプチドを含むキメラペプチドである。任意に、上記活性ペプチドは、[E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記活性ペプチドは、ESDV (配列番号:1) 、ESEV (配列番号:2) 、ETDV (配列番号:3) 、ETEV (配列番号:4) 、DTDV (配列番号:5) 、DTEV (配列番号:6) からなる群より選択されるカルボキシ末端のアミノ酸配列を含む。任意に、上記活性ペプチドは、KLSSIETDV (配列番号:7) を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記キメラペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIETDV (配列番号:8) を含むアミノ酸を有する。任意に、上記キメラペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIETDV (配列番号:8) からなるアミノ酸配列を含む。任意に、上記活性ペプチドは、KLSSIESDV (配列番号:9) を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記キメラペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIESDV (配列番号:10) を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記アミノ酸配列は、YGRKKRRQRRRKLSSIESDV (配列番号:10) からなる。
【0006】
本発明は、PDZ-結合リガンドがPSD-95のPDZドメインに結合することを阻害するPSD-95阻害剤の効果的な投与計画を施すことを含むてんかん治療法も提供する。任意に、上記PSD-95のPDZドメインは、PSD-95PDZドメイン2である。任意に、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが起きた後、少なくとも約1時間経過後に投与される。例えば、てんかんのエピソードが起きた後、少なくとも約3時間経過後に投与される。これは、上記エピソードの持続が約10分未満の場合に特に適している。任意に、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが収まった後、少なくとも約1時間経過後に投与される。例えば、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが収まった後、少なくとも約3時間経過後に投与される。必要に応じて、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが収まった後、約1週以内 (例:1日以内) に投与される。任意に、上記阻害剤は、Tat-NR2B9cである。任意に、上記阻害剤は、F-Tat-NR2B9cである。任意に、上記阻害剤は、次の構造を有する。
【0007】
例えば、上記阻害剤は、0625-0057である。てんかんのエピソードの開始、終了及び/又はそのエピソード中は、脳波記録 (例:ビデオ脳波記録 (V-EEG) モニタリング) を用いることで判定できる。
【0008】
好ましい方法として、上記薬剤は、てんかんのエピソード (例:発作)後、少なくとも1時間経過後に投与できる。上記薬剤は、例えば、てんかんのエピソード後、少なくとも約3、4、5、6、8、10、12、16又は24時間経過後に投与できる。上記薬剤は、上記てんかんエピソードの後、数日経過後 (例:開始後、少なくとも約1、2、3、4、5、7、8、9、10又は12日経過後) でも投与できる。上記薬剤は、てんかんエピソードの後、少なくとも1週経過後 (例:エピソード後、少なくとも約1、2又は3週経過後) でも投与できる。任意に、上記阻害剤は、てんかんエピソードの後で投与されるが、そのエピソード後1又は複数時間以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、18又は24時間以内) に投与される。任意に、上記阻害剤は、てんかんエピソードの後で投与されるが、そのエピソード後1又は複数日以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は14日以内) に投与される。任意に、上記阻害剤は、てんかんエピソードの後で投与されるが、そのエピソード後1又は数週以内 (例:エピソード後、約1、1.5、2、2.5又は3週以内) に投与される。
【0009】
任意に、てんかんのエピソード後の投与のタイミングは、例えばエピソードが短い場合は、エピソードの開始時間から、又は例えばてんかん性発作が長い場合は、エピソードの終了時間から、又は脳でてんかん性活動の兆候が観察される任意の時点から測定できる。
【0010】
任意に、上記薬剤は、てんかんのエピソード前又はそのエピソード中では投与されない。他の例では、上記薬剤は、てんかん性エピソード (例:発作) 中でも投与できる。
【0011】
任意に、上記患者は、上記アンタゴニストでの治療を必要とする疾病の内、てんかんを除く疾病を患っていない。任意に、上記患者は、興奮毒性により介される疾病の内、てんかんを除く疾病を患っていない。任意に、上記患者は、脳卒中を患っていない。任意に、上記患者は、興奮毒性により介される疾病を患っていない。任意に、上記薬剤は、てんかんを進行させるイベントを経験してきている上記患者に応答して投与される。任意に、上記患者は、急性てんかんのエピソードを患っている。
【0012】
任意に、上記効果的な投与計画は、上記患者に対するてんかんの診断に応答して施される。任意に、上記方法は、てんかんの治療に効果な又はてんかんの予防を効果的にする第2の投与計画を施すことを更に含む。任意に、上記第2の投与計画は、第2の薬剤を投与することを含む。任意に、上記第2の投与計画は、抗てんかん薬又は複数の抗てんかん薬の組み合わせを含む。
【0013】
一部の方法において、上記患者は、ヒトである。任意に、上記薬剤は、静脈内注射よって又は皮下に投与される。任意に、上記薬剤は、薬剤的に許容可能な担体と共に医薬組成物として投与される。
【0014】
一部の方法は、上記患者をモニタリングし、てんかんの症状及び/又は兆候時の治療効果を評価することを更に含む。任意に、上記キメラペプチドは、0.05〜500 mg、任意に 0.1〜100 mg、 0.5〜50 mg、又は1-20 mgの量で投与される。
【0015】
本発明は、患者のてんかん症状の予防又は治療のための医薬組成物であって、薬剤的に許容可能な担体と先に定義した薬剤を含むものを更に提供する。任意に、上記医薬組成物は、てんかん症状の治療又は効果的な予防に適していることを示すラベルを表示する。
【0016】
本発明は、てんかんの治療又は効果的な予防のための薬物の製造において、先に定義した薬剤の使用を更に提供する。
【0017】
本発明は、てんかん症状の治療法又は効果的な予防法を、てんかん又はそのリスクに苦しむ患者に更に提供するものであって、内在化ペプチドに連結したtSXV ペプチドの効果的な投与計画を施すことを含むものである。
【0018】
任意に、上記効果的な投与計画を、上記患者のてんかん症状の診断後に施し、上記症状を緩和する、又は上記症状の更なる進行を抑制又は阻害する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】てんかん性発作後、徐々に神経細胞が減少する。(A) ナイーブラット及びてんかん性発作の誘導後、3、24及び3日目のラットにおける、NeuN (ニューロン特異的) 抗体を用いて染色した細胞の数を示す脳切片の写真である。(B) てんかん性発作 (てんかん重積状態) の終了後のNeuN陽性細胞密度の定量的経時変化。
【図2】(A) 神経細胞は、てんかん性発作後の様々な時点における、海馬の様々な部位で減少する。各領域は、各カラムの左から右に、コントロール、てんかん性発作後3時間、6時間、12時間、1日、3日、7日、14日及び90日経過後のNeuN陽性細胞のパーセント (コントロールと比較) を示す。(B) 迅速且つ著しい細胞消失が、他の脳領域で起きる。各グループにおける動物の合計は4-8匹であった。
【図3】60分間のてんかん重積状態に続く神経変性の時間的パターン。値は、細胞密度 (# 細胞/mm3) ± 標準偏差を表す。各グループの動物数は、少なくとも4匹であった。
【図4A】Tat-NR2B9cは、Tat-NR2BAAと異なり、海馬の前CA1領域において、神経保護的である。各ドットは、個々の動物を表す。ダッシュ記号は、グループの平均を表す。
【図4B】てんかん性発作中ではなく、その発作後に投与した時に、Tat-NR2B9cは神経保護的であった。
【図5】Tat-NR2B9cは、てんかん性発作中ではなく、その発作後3時間経過後に投与した時に、用量依存的な神経保護作用をもたらした。カラム1及び2:偽対照 (shams) (てんかん性発作を誘導しなかったラット) 及び発作を誘導したラットに、それぞれ生理食塩水を投与した。カラム3、4、5:Tat-NR2B9cをSEの開始後10分経過後に、0.3 nmol/gm、3 nmol/gm及び9 nmol/gmの用量をそれぞれ投与した。カラム6:3 nmol/gm Tat-NR2B9cをSEの終了後3時間経過後に投与した。
【図6】Tat-NR2B9cで処理しなかった動物において、60分間の連続したてんかん性発作の状態を誘導後、1、3、7及び14日間に渡る神経 (NeuN陽性) 細胞消失の経時変化。400X倍率の脳切片を左側に示す。カラムグラフは、様々な時点における、視野あたりのNeuN陽性細胞の総数 ± 標準偏差を示す。
【図7】てんかん重積状態中に、Tat-NR2B9cで処理した動物において、60分間の連続したてんかん性発作の状態を誘導後7日目の神経 (NeuN陽性) 細胞消失の経時変化。400X倍率の脳切片を左側に示す。カラムグラフは、種々の濃度のTat-NR2B9cにおける視野あたりのNeuN陽性細胞の総数 ± 標準偏差を示す。
【図8】てんかん性発作後の3時間経過後にat-NR2B9c処理したラットにおける、てんかん性発作の誘導後の神経 (NeuN陽性) 細胞消失の経時変化。免疫染色した脳切片の低倍率の写真を左側に示す。カラムグラフは、種々の濃度のTat-NR2B9cにおける14日間の回復後の視野あたりのNeuN-陽性細胞の総数 ± 標準偏差を示す。
【図9】CA1領域の海馬台境界付近におけるTat-NR2B9c神経保護作用。Tat-NR2B9cは、生理食塩水で処理した動物と比較して、生存する神経細胞の数を増加させた。一方、Tat-NR2BAAでは、増加させなかった。
【図10】Tat-NR2B9cは、CA4領域に神経保護作用をもたらす一方で、Tat-NR2BAAは、その保護作用をもたらさない。
【図11】SE後処理せず放置したラット (コントロール) 又はSE後3時間経過後にTat-NR2B9c (0.3 nmol/gm及び3 nmol/gm) で処理したラットの14日目の海馬及び側脳室の容積変化であって、ニッセル染色された切片を隣同士で比較したものである。
【図12】Tat-NR2B9cは、ラットにおいててんかん重積状態により引き起こされた認識機能障害を低減させる。SE後8週目で、動物を高架式十字迷路に5分間置き、記録した。
【図13】慢性認識機能障害を検出する目的でSE後8週目にモーリス水迷路で試験した視空間記憶。Tat-NR2B9c治療は、逃避潜時の成績を、とりわけ習得学習の最初の5日間で向上させた。
【図14】脳及び脳内の様々な領域の地図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<定義>
「キメラポリペプチド」とは、複合ポリペプチド、即ち、単一の連続アミノ酸配列であり、2つ (又はそれ以上) の異なった、異種ポリペプチドから構成され、通常、単一のアミノ酸配列として融合されないポリペプチドを言う。
【0021】
「PDZドメイン」なる用語は、約90アミノ酸のモジュラータンパク質 ドメインであって、脳シナプスタンパク質PSD-95、セプテート (septate) ジャンクションタンパク質 ショウジョウバエディスクスラージ(discs large) (DLG) 、及び上皮タイトジャンクションタンパク質 閉鎖帯-1タンパク質 (ZO1) との有意な同一性 (例:少なくとも60%) によって特徴付けられるドメインを言う。PDZドメインは、DLG ホモログ領域 (「DHR」) 及びGLGF (配列番号:11) 反復としても知られている。PDZドメインは、一般的には、コアコンセンサス配列を保持するように見える (Doyle, D. A., 1996, Cell 85: 1067-76) 。典型的なPDZドメインを含むタンパク質及びPDZドメイン配列は、US2006-0148711 A1に開示され、その全てを参照によってここに組み込まれる。
【0022】
「PLタンパク質」又は「PDZリガンドタンパク質」なる用語は、PDZドメインと分子複合体を形成する天然のタンパク質、又は全長タンパク質から分離して(例えば、3-25残基のペプチド断片 (例:3、4、5、8、10、12、14又は16残基) ) 発現した時、そのような分子複合体を形成するカルボキシ末端のタンパク質を言う。上記分子複合体は、例えば、米国2006-0148711 A1に記述されている「Aアッセイ」又は「Gアッセイ」を用いたインビトロ又はインビボで観察が可能である。
【0023】
「PLモチーフ」は、PLタンパク質のC末端のアミノ酸配列 (例:C末端3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、20又は25連続残基) (「C末端PL配列」) 又はPDZドメインに結合することで知れられる内部配列 (「内部PL配列」) を言う。
【0024】
「PLペプチド」は、とりわけPDZドメインに結合するPLモチーフを含む、又はそのモチーフからなる、又はそうでなければそのモチーフに基づくペプチドである。
【0025】
「単離した」又は「精製した」なる用語は、目的種 (例:ペプチド) を、サンプル (例:目的種を含む自然源から得られるサンプル) が存在する混入物から精製されていることを意味する。目的種が単離された又は精製された場合、サンプル中に高分子 (例:ポリペプチド) 種が主に存在し (即ち、分子量ベースで、組成物中の他の個々の種より豊富である) 、そして好ましくは、目的種が、存在する全ての高分子種の内、少なくとも約50パーセント (分子量ベース) 含んでいる。一般的に、単離された、精製された又は実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種を80から90パーセント超えで含む。最も好ましくは、目的種は、本質的に均質になるまで精製され (即ち、混入物の種は、標準的な検出方法では、組成物において検出されない) 、上記組成物は、本質的に単一の高分子種からなる。
【0026】
「ペプチドミミック」は、本発明にかかるペプチドの実質的に同じ構造的及び/又は機能的特徴を有する合成化合物を言う。ペプチドミミックは、完全に合成した、非天然のアミノ酸アナログを含むことができ、又は、部分的に天然ペプチドアミノ酸及び部分的に非天然のアミノ酸アナログのキメラ分子を含むことができる。上記ペプチドミミックは、任意量の天然アミノ酸同類置換を組み込むこともできるが、それは、その置換がミミック構造及び/又は阻害又は結合活性を実質的に変えない場合に限られる。ポリペプチドミミック組成物は、非天然の構造成分の任意の組み合わせを含むことが可能であり、典型的に3つの構造グループ:a) 天然アミド結合 (「ペプチド結合」) 連結以外の残基連結グループ;b) 天然のアミノ酸残基の場所が非天然残基;又はc) 二次構造模倣を誘導する残基、即ち、二次構造 (例:ベータターン、ガンマターン、ベータシート、アルファヘリックス構造等) を誘導又は安定させるための残基。
【0027】
「特異的結合」なる用語は、2つの分子 (例:リガンドとレセプター) 間の結合であって、多くの他の様々な分子が存在する中で、ある分子 (リガンド) が他の特徴的な分子 (受容体) と結合する能力によって特徴付けられる結合、即ち、不均一な分子の混合物における他の分子の内、1つの分子を優先して結合することを示すことを言う。リガンドによる受容体への特異的結合は、過剰な非標識リガンドの存在下で、検出可能な程度に標識したリガンドによる受容体への結合の減少によっても証明される (即ち、結合拮抗実験) 。
【0028】
統計的に有意とは、p値が< 0.05、好ましくは< 0.01そして最も好ましくは< 0.001を言う。
【0029】
「患者」は、ヒト、家畜 (例:ネコ、イヌ) 、畜産用家畜 (例:ニワトリ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ) 、及び実験動物 (例:ラット、マウス) を言う。
【0030】
抗体なる用語は、完全な抗体及びその結合断片を含むものとして用いられる。典型的には、断片は、断片の由来である完全な抗体と、抗原と特異的に結合する他の抗体と競合する。
【0031】
「薬剤」なる用語は、薬理学的活性を有する又は有するであろう化合物を記述するものとして使用される。薬剤は、薬として既知の化合物、薬理学的活性は同定されているが、更なる治療効果評価が行われている化合物、及び薬理学的活性をスクリーニングするためのコレクション及びライブラリーのメンバーの化合物を含む。上記用語は、有機又は無機化合物 (例:抗体を含む ペプチド、タンパク質及び低分子分子 (500 D未満) ) 及び天然物を含む。
【0032】
「症状」又は「臨床症状」なる用語は、患者が気づいた疾病の主観的証拠 (例:前兆) と内科医によって観察された疾病の客観的証拠 (例:てんかん性の神経学的な活動) を含む。
【0033】
<本発明の詳細な説明>
I. 概要
1以上のPLにPDZタンパク質が結合することを阻害する阻害剤が、てんかん対して治療効果があることは、驚くべき発見である。例えば、そのような阻害剤は、てんかんにより引き起こされる神経損傷を低減することができる。上記阻害剤は、PLに結合するPSD-95の阻害剤である。ある態様において、上記阻害剤は、てんかんのエピソード (例:発作) 後に起きる神経細胞死を低減する効果がある。
【0034】
本発明は、てんかん症状の治療に有益な又はてんかん症状の予防を効果的にする薬剤を提供する。本発明は、NMDAR 2BへのPSD-95の特異的な結合を崩壊させるPSD-95アンタゴニストが、この疾患に関するラットモデルにおいててんかんを低減することを明らかにした実施例において記述される結果に部分的に基づく。てんかんは、興奮毒性の結果によるものであると知られていないという点において、この種のアンタゴニストが有益であると提案されている他の疾病とは区別される。メカニズムの理解は、本発明の実施に要求されないが、そのような本発明の薬剤は、NMDAR (特に、NR2A、2B、2C及びD) と後シナプス肥厚95 タンパク質 (即ち、PSD-95阻害剤) との相互作用を阻害することによって、少なくとも部分的には作用すると考えられる。上記薬剤は、PSD-95及びnNOS (GenBank NM_008712) との相互作用もまた阻害するだろう。上記薬剤は、PSD-95ファミリーのメンバーであるSAP102 (Muller, Neuron 17, 255-265 (1996) ) 、SAP97 (GenBank NM_007862) 、及びPSD93 (GenBank NM_0011807) と、PDZを含むタンパク質TIP1 (GenBank NM_029564) の相互作用も阻害するだろう。使用可能な他の阻害剤は、出願人の同時係属している米国出願第12/040,851号 (2008年02月29日出願) 及び第60/947883号 (2007年07月03日出願) に開示され、それらの全てを参照によって両方共ここに組み込まれる。ここで参照することで述べた又は組み込まれた上記阻害剤の任意の適切な組み合わせ又は誘導体も用いることができる。本発明の上記方法は、てんかんに関するいずれの形態に対しても用いることが可能であるが、てんかんのエピソード後に投与した時、特に有益である。
【0035】
II. 薬剤
薬剤には、少なくとも2つの要素を有するキメラペプチド及びペプチドミミックを含む。第一の成分は、活性ペプチドであって、任意にNMDA受容体のPLモチーフ (即ち、PLペプチド) 又はPSD-95のPDZドメインを含む又はこれに基づくアミノ酸配列を有する。本発明において有益な活性ペプチドは、シナプス後肥厚部タンパク質 95 (PSD-95) のPDZドメイン1及び2 (Stathakismによって提供されたヒトアミノ酸配列、Genomics 44(1):71-82 (1997) ) と神経N-メチル-D-アスパラギン酸受容体のNR2Bサブユニットを含んでいる1以上のNMDA受容体2サブユニットのC末端PL配列 (Mandich et al., Genomics 22, 216-8 (1994) ) との相互作用を阻害する。NMDAR2Bは、GenBank ID 4099612、C末端20アミノ酸FNGSSNGHVYEKLSSIESDV (配列番号:12) 及びPLモチーフESDV (配列番号:1) を有する。しかし、阻害は、上記タンパク質の種変異からも示される。使用可能なNMDA及びグルタミン酸受容体のリストを下記に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
ある活性ペプチドは、PSD-95と様々なNMDARサブユニットとの相互作用を阻害する。そのような状況で、上記ペプチドの使用は、興奮性神経伝達に対する種々のNMDARのそれぞれの貢献に関する理解を特別必要としない。別の活性ペプチドは、単一のNMDARに対して特異的である。
【0038】
活性ペプチドは、上記サブユニットの任意のC末端由来のPLモチーフを含む又はそのモチーフに基づき、そして[S/T]-X-[V/L]を含んでいるアミノ酸配列を有する。この配列は、好ましくは、本発明のペプチドのC末端に存在する。好ましいペプチドは、これらのC末端に[E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含んでいるアミノ酸配列を有する。例示的なペプチドは、C末端アミノ酸としてESDV (配列番号:1)、ESEV (配列番号:2) 、ESTV (配列番号:37) 、ETDV (配列番号:3) 、ETEV (配列番号:4) 、DTDV (配列番号:5)、及びDTEV (配列番号:6) を含む。特に好ましい2つのペプチドは、KLSSIESDV (配列番号:9) 、及びKLSSIETDV (配列番号:7) である。内在化ペプチドを除いた本発明のペプチドは、通常、3-25アミノ酸を有し、5-10アミノ酸、そして特に9アミノ酸のペプチド長 (これも内在化ペプチドを除く) が好ましい。一部のそのような活性ペプチドにおいて、全てのアミノ酸は、NMDA受容体のC末端由来である。
【0039】
他の活性ペプチドは、PSD-95とNMDA受容体 (例:NMDA 2B) との相互作用を阻害するPSD-95のPDZドメイン1及び/又は2、又はこれらの任意の小断片を含む。そのような活性ペプチドは、PSD-95のPDZドメイン1及び/又はPDZドメイン2由来の少なくとも50、60、70、80又は90アミノ酸を含むものであって、それらは、Stathakism, Genomics 44(1):71-82 (1997) (ヒト配列) によって提供されたPSD-95のおよそアミノ酸65-248又はNP_031890.1、GI:6681195 (マウス配列) 又は他の種変異体の対応する領域の中に存在する。
【0040】
本発明のいずれのペプチドも、好ましくはそのN末端において、細胞の原形質膜の通過を促進する内在化ペプチドに結合することが可能である。これらのペプチドの例には、HIV由来のtat (Vives et al., 1997, J. Biol. Chem. 272:16010; Nagahara et al., 1998, Nat. Med. 4:1449) 、ショウジョウバエ由来アンテナペディア (Derossi et al., 1994, J. Biol. Chem. 261:10444) 、単純ヘルペスウイルス由来のVP22 (Elliot and D'Hare, 1997, Cell 88:223-233) 、抗DNA抗体の相補性決定領域 (CDR) 2及び3 (Avrameas et al., 1998, Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A., 95:5601-5606) 、70 KDa熱ショックタンパク質 (Fujihara, 1999, EMBO J. 18:411-419) 及びトランスポータント (transportan) (Pooga et al., 1998, FASEB J. 12:67-77) を含む。例えば、上記HIV TAT内在化ペプチドYGRKKRRQRRR (配列番号:38) が使用可能である。HIV Tat内在化ペプチド及び活性ペプチドを含んでいる、好ましい2つのペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIETDV (配列番号:8、Tat-NR2B9c(TDV)) 、とYGRKKRRQRRRKLSSIESDV (配列番号:10、Tat-NR2B9c(SDV)) である。
【0041】
標準tat配列YGRKKRRQRRR (配列番号:38) の変異体も使用可能である。同時係属出願60/904507 (2007年03月02日出願) で、標準tatペプチドが、N型カルシウムチャネルに結合し、そして阻害し、この結合が様々な副作用を引き起こす可能性があることを報告している。本発明の実施は、メカニズムの理解に依存しないが、tatの膜を通過する能力とN結合カルシウムチャネルへの結合の両方は、ペプチドにおける正電荷を帯びた残基Y、R及びKの異常に高い出現率によって与えられるものであると考えられる。本発明で使用される変異ペプチドは、細胞への取り込みを促進する能力を保持すべきであるが、N型カルシウムチャンネルに結合する能力は低減すべきである。ある適切な内在化ペプチドは、アミノ酸配列 XGRKKRRQRRR (配列番号:39) を含む又はこれからなるものであって、Xは、Y以外のアミノ酸である。好ましいtat変異体は、Fで置換したN末端Y残基を有する。従って、FGRKKRRQRRR (配列番号:40) を含む又はこれからなるtat変異体が好ましい。他の好ましい変異tat内在化ペプチドは、GRKKRRQRRR (配列番号:41) からなる。XGRKKRRQRRR (配列番号:39) に隣接する追加残基が存在する (活性ペプチド側) 場合、上記残基は、例えば、tatタンパク質由来のこのセグメントに隣接する天然アミノ酸、スペーサー又はリンカーアミノ酸であって、2つのペプチドドメインを連結することに典型的に用いられる種類 (例:Gly (Ser)4 (配列番号:42) 、TGEKP (配列番号:43) 、GGRRGGGS (配列番号:44) 、又はLRQRDGERP (配列番号:45) (例:Tang et al. (1996), J. Biol. Chem. 271, 15682-15686; Hennecke et al. (1998), Protein Eng. 11, 405-410を参照)) であってもよく、又は隣接残基を除いた変異体の取り込みをもたらす能力を検出可能な程度に低減させない及び隣接残基を除いた変異体と比較してN型カルシウムチャネルの阻害を有意に増加させない任意の他のアミノ酸であってもよい。好ましくは、活性ペプチドを除いた隣接アミノ酸の数は、XGRKKRRQRRR (配列番号:39) のどちらの側も10を超えない数である。好ましくは、隣接アミノ酸が存在せず、内在化ペプチドは、活性ペプチドのC末端に直接結合する。
【0042】
他のtat変異体であって、N型カルシウムチャネルを阻害することなくPSD-95相互作用を阻害する本発明にかかる、任意の活性ペプチドの取り込みを可能にできるものは、下記表2に表すものを含む。これら内在化ペプチドをスクリーニングし、所望の取り込みの確認及びN型カルシウムチャネルの阻害が欠如していることの確認が推奨される。これらの配列は、N型カルシウムチャネルを阻害することなく輸送能力を維持すること、従って、てんかん治療のためのより優れた治療指数にすることがここでは期待される。
【0043】
【表2】
【0044】
Xは、フリーのアミノ末端、ビオチン分子又は他のキャップ部分であって、これらに限定されないが、H、アセチル、ベンゾイル、アルキル基 (脂肪族) 、ピログルタミン酸、末端にシクロアルキル基を有するアルキル基、アルキルスペーサーを有するビオチン、又は5,6-カルボキシフルオセイン (5,6-FAM) を含むものを意味する。キャップ基のN末端ペプチドに対する化学カップリングは、アミドケミストリー、スルファミドケミストリー、スルホンケミストリー、アルキル化ケミストリーを通じて行われる。加えて、Xは、チロシン以外のアミノ酸であってもよい。
【0045】
内在化ペプチドは、通常、活性ペプチドに結合し、融合ペプチドとしているが、化学結合によって接続されてもよい。2つの構成要素のカップリングは、カップリング剤又は共役剤を通じて成し遂げられてもよい。そのような薬剤の多くは、市販され、S. S. Wong, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press (1991) によって概説されている。架橋剤のいくつかの例は、J-サクシニミジル3-(2-ピリジルジチオ) プロピオネート (SPDP) 又はN,N'-(1,3-フェニレン) ビスマレイミド;N,N'-エチレン-ビス-(ヨードアセタミド) 又は他のそのような試薬であって、6 〜11 炭素メチレンブリッジ (これは、スルフヒドリル基に比較的特異的) を有するもの;及び1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン (これは、アミノ基及びチロシン基で不可逆的な結合を形成) を含む。他の架橋剤は、p,p'-ジフルオロ-m, m'-ジニトロジフェニルスルホン (これは、アミノ基及びフェノール基で不可逆的な架橋を形成);アジプイミド酸ジメチル (これは、アミノ基に特異的);フェノール-1,4-ジスルホニルクロライド (これは、主にアミノ基で反応);ヘキサメチレンジイソシアネート又はジイソチオシアネート、又はアゾフェニル-p-ジイソシアネート (これは、主にアミノ基で反応);グルタルアルデヒド (これは、様々な異なる側鎖で反応) 及びジスジアゾベンジジン (これは、チロシン及びヒスチジンで反応) を含む。
【0046】
上述したこれらのペプチドを任意に誘導体化 (例:アセチル化、リン酸化及び/又はグリコシル化) し、阻害剤の結合親和性を向上、細胞膜を横切って輸送される阻害剤の能力を向上又は安定性を向上させてもよい。具体的な例として、C末端から3番目の残基がS又はTである阻害剤について、この残基を、ペプチドの使用前にリン酸化させてもよい。
【0047】
本発明のペプチドは、任意に内在化ドメイン融合しており、固相合成又は組換え法によって合成してもよい。ペプチドミミックは、科学文献及び特許文献 (例:Organic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY, al-Obeidi (1998) Mol. Biotechnol. 9:205-223; Hruby (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:114-119; Ostergaard (1997) Mol. Divers. 3:17-27; Ostresh (1996) Methods Enzymol. 267:220-234) で記述される、様々な手順及び手法を用いることで合成してもよい。
【0048】
内在化ペプチドを除いた本発明のペプチドは、通常、3-25アミノ酸を有し、5-10アミノ酸、そして特に9アミノ酸のペプチド長 (内在化ペプチドを除く) が好ましい。
【0049】
ペプチド又はペプチドミミックの適切な薬理学的活性は、必要に応じて、ここで記述される動物モデルを用いて確認してもよい。任意に、ペプチド又はペプチドミミックは、例えば、US20050059597 (これは、参照することで組み込まれている) で記述されるアッセイを用いて、PSD-95とNMDAR 2Bとの相互作用を阻害する能力をスクリーニングしてもよい。有益なペプチドは、典型的には、50 μM、25 μM、10 μM、0.1 μM又は0.01 μM未満のIC50値を、そのようなアッセイで有する。好ましいペプチドは、典型的には、0.001-1 μM、更に好ましくは0.05-0.5又は0.05から0.1 μMの間にIC50値を有する。
【0050】
上述したこれらのペプチドを任意に誘導体化 (例:アセチル化、リン酸化及び/又はグリコシル化) し、阻害剤の結合親和性を向上、細胞膜を横切って輸送される阻害剤の能力を向上又は安定性を向上させてもよい。具体的な例として、C末端から3番目の残基がS又はTである阻害剤について、この残基を、ペプチドの使用前にリン酸化させてもよい。
【0051】
薬剤は、PSD-95とNMDAR 2Bとの相互作用、及び/又は上述した他の相互作用を阻害する低分子も含む。適切な低分子阻害剤は、同時係属国際出願番号PCT/US2006/062715 (2005年12月29日出願) (全てを参照によりここに組み込まれる) に記述されている。これらの分子は、PSD-95に結合する化合物ライブラリーのインシリコスクリーニングによって同定され、例示化合物の結合は、実験的に実証された。適切な化合物は、P0-A-B-C-D-Eの一般的な構造を有する化合物を含み、D及び Eは任意であり、P0は、
(R1、R2、R3、R4、及び R5 の1つは、 -COOHであって、R1、R2、R3、R4、及び R5 の残りは、F、H、OCH3 及び CH3からなる群から選択される。X は、 -A-B-C-D-Eであって、A、B、C、D 及び E は、単結合で接続される。Aは、C=O、NH、SO2 及び (CH2)m (m = 0、1、2、3、4、は 5) からなる群より選択される。B は、-OCH2-、C=O、
(R6-R10の1つは-C-D-Eと結合し、残りのR6-R10は、H、OH、F、Cl、Br、I、CH3、CH2CH3及びOCH3からなる群より選択され、n = 0又は1) 、飽和又は不飽和シクロアルキル又は複素環からなる群より選択される環系、又は
(o及びp = 0又は1、q = 0、1、2、3又は4、そしてR11は、置換又は非置換低級アルキル、アミド、チオエーテル、フェニル、フェノール、インドール、イミダゾール、NH(NH2)(N(+)H2) 、COOH、SH、OH、又はHからなる群より選択される) である。
Cは、-O-、C=O、NH、CONH、S、フタルアミド、CH3、H、SO2及び (CH2)r (r = 0、1、2、3、4、又は5) からなる群より選択される。Dは任意であるが、Cが末端でない場合、Dは、-CN-、C=O、NH、S、O、SO2、(CH2)s (s = 0、1、2、3、4、又は5) 、 (CH2)t-OH (t = 0、1、2、3、4又は5)、及び
からなる群より選択される。Eは任意であるが、Dが末端でない場合、Eは、低級アルキル、低級アルコキシ、ケトン、OH、COOH、ニトロソ、N-置換インドリン、又は細胞膜移行ペプチドのいずれかで置換されたシクロヘキシル又はフェニル;又は - (CH2)u-(CHR12R13) ( u = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は 17)であって、R12 及びR13 は、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル、シクロペンタジエンからなる群より独立して選択される; 又はイソプロピル、イソブチル、1-イソプロピル-2-メチル-ブチル、1-エチル-プロピルを含む分岐低級アルキル;又は -NH-COR14であって、R14 は (CR15R16)vH ( v = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17) であり、R15 及び R16 はH、シクロヘキサン、フェニル、及び細胞膜移行ペプチドからなる群より独立して選択される。) である。
【0052】
あるいは、P0は
(t = 0、1又は2であり、R1、R2、R3、R4、R5又はR6のいずれかは、COOHであって、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の残りは、H、CH3、F、及びOCH3からなる群より選択される。またXは、-A-B-C-D-Eであって、A、B、C、D及びEは、単結合で接続される。そしてAは、C=O、SO2、NH、及び (CH2)m (m = 0、1、2、3、4、又は5) からなる群より選択される。Bは、-OCH2-、C=O、又は
(R5-R9 の1つは、-C-D-Eに結合し、残りのR5-R9 はH、OH、F、Cl、Br、I、CH3、CH2CH3 及び OCH3からなる群より選択され、そしてn = 0 又は 1) 、飽和又は不飽和シクロアルキル又は複素環からなる群より選択される環系、又は
(o及びp = 0又は1、そしてR10は、置換又は非置換アルキル、アミド、チオエーテル、フェニル、フェノール、インドール、イミダゾール、NH(NH2)(N(+)H2) 、COOH、SH、OH、又はHからなる群より選択される) である。Cは、C=O、NH、S、フタルアミド、-O-、CH3、H、SO2、及び (CH2)r (r = 0、1、2、3、4、又は5) からなる群より選択される。Dは任意であるが、Cが末端ではない場合、Dは、C=O、-CN-、NH、S、O、SO2、(CH2)s (s = 0、1、2、3、4、又は5) 、及び
からなる群より選択される。そして、Eは、低級アルキル、低級アルコキシ、ケトン、OH、COOH、ニトロソ、N-置換インドリンのいずれかで置換されたフェニル又はシクロヘキシル;又は-(CHR11R12)u (u = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17)であって、R11 及び R12 は、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル、シクロペンタジエンからなる群より選択される; 又はイソプロピル、イソブチル、1-イソプロピル-2-メチル-ブチル、1-エチル-プロピルを含む分岐低級アルキル;又は-NH-COR11であって、R11 は(CHR12R13)s (s = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17) であり、R12 及び R13 は、H、シクロヘキサン、フェニル、及び細胞膜移行ペプチドからなる群より独立して選択される。) である。
【0053】
いくつかの好ましい化合物は、次の構造
(R1 は、0-4 R7で置換したシクロヘキシル、0-4 R7で置換したフェニル、- (CH2)u-(CHR8R9)、分岐C1-6 アルキル (イソプロピル、イソブチル、1-イソプロピル-2-メチル-ブチル、1-エチル-プロピル) 及び -NH-C(O)-(CR10R11)vHからなる群より選択されるメンバーであって、各R7 は、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、-C(O)R12、OH、COOH、-NO、N-置換インドリン及び細胞膜移行ペプチドからなる群より選択される、独立したメンバーであり、各R8 及び R9 は、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル (例えば、ハロ、アルキル 及び/又はヒドロキシル基で置換) 及びシクロペンタジエンからなる群より独立して選択され、各R10 及び R11 は、H、シクロヘキサン、フェニル及び細胞膜移行ペプチドからなる群より独立して選択され、R12 は、C1-6 アルキル及びアリールからなる群より選択されるメンバーである。そして、u 及び vは、それぞれ独立して0から20までである。R2、R3、R4、R5 及び R6 の1つは、-COOHであって、残りのR2、R3、R4、R5 及び R6 は、F、H、OCH3 及び CH3からなる群より、それぞれ独立して選択される。) を有する。
【0054】
ある実施形態において、R1は、-(CH2)u-(CHR8R9) である。他の実施形態では、R1は、-(CH2)u-(CHR8R9) を除いた、上記で定義したR1置換基群のメンバーである。
【0055】
好ましい薬剤は、次の構造を有する。
【0056】
他の化合物は、天然又は合成分子からスクリーニングしてもよい。スクリーニングされる薬剤は、自然源(例:海洋微生物、藻、植物、菌類)から得られるものであってもよい。ペプチド又は他の化合物のランダムライブラリーは、PSD-95への結合や、PSD-95とNMDAR及び/又は上記第I節で述べた分子との相互作用を阻害する能力に関してスクリーニングしてもよい。コンビナトリアルライブラリーは、段階的な方法で合成可能な、多くのタイプの化合物に対して作製してもよい。そのような化合物は、ポリペプチド、ベータターンミミック、多糖類、リン脂質、ホルモンプロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーN置換グリシン及びオリゴカルバメートを含む。化合物のラージコンビナトリアルライブラリーは、コードされた合成ライブラリー (ESL) 法によって構築してもよく、この方法は、Affymax, WO 95/12608, Affymax, WO 93/06121, Columbia University, WO 94/08051, Pharmacopeia, WO 95/35503及びScripps, WO 95/30642 (全ての目的を参照により、それぞれ組み込まれる) に記述されている。ペプチドライブラリーは、ファージディスプレイ法によって作製してもよい。例えば、Devlin, W0 91/18980を参照。Aドメインの多量体を構成するアビマー (avimer) は、抗体に対するのと同様の方法を用いてもよい (Silverman et al. Nat. Biotechnol. 23, 1493-4 (2005) ) 。上述した結合及び阻害特性を有する化合物は、てんかんの動物モデルで更にスクリーニングを行ってもよい。任意に、上記化合物のいずれも、医薬品賦形剤を混ぜて医薬組成物としている。
【0057】
III. てんかん
てんかんは、脳におけるコントロールできない電気活動に関する、反復性で理由が不明なイベントによって特徴付けられるCNS疾患であって、一般的には過剰な及び/又は同期した神経活動の形である。てんかんは、脳の一時的で異常な電気活動に関係している全ての症候群のグループである。反復性てんかん性エピソードは、非常に希に起きる場合 (例:何年もの間起きていない) から度々起きる場合 (例:1日に何度も起きる) まである。多くの個人は、エピソードとエピソードの間で無症状である。一般的に言えば、多くのてんかん性発作は、特発性 (要因又は原因不明で起きる) 、突発性 (事前の徴候がなく起きる) 、短期間 (数秒又は数分続く) 、及び自己限定性 (医療の手助けなく、停止すること) である。
【0058】
てんかんの一般的な症状
繰り返し起きる挙動のほとんどのタイプは、けいれん、筋肉のけいれん、意識消失、奇妙な感覚、情動及び/又は挙動を含んでいるてんかん性発作を示すだろう。次の症状のいずれか1以上は、てんかんを示す可能性がある。目まい;失神;錯乱;記憶喪失;頭痛;気分又はエネルギーのレベルの変動;発熱を伴う又は伴わないけいれん;記憶の喪失又は混乱の期間;膀胱又は腸の制御が消失し、続く疲労による偶発的な発作;ぼんやりとするエピソード;質問又は指示に無反応な短い期間;ハッキリとした理由がない突然の硬直又は転倒;不適当な時期のまばたき又は咀嚼のエピソード;放心状態;会話又はコミュニケーションが短期間できなくなる;場違いに又は不自然に見える繰り返し運動;理由のない突然の恐怖、怒り、パニック;物事の見え方、聞こえ方、匂い方又は感じ方の奇妙な変化;腕、足又は体の筋肉のひきつり;及び/又は体中の素早い痙動クラスター。
【0059】
種々のタイプのてんかんの分類
てんかんは、数多くの種々の基準によって分類することが可能であり、この基準は、(1) 第一原因 (又は病因) 、(2) セミオロジーとして知られる、発作の観察可能な症状、(3) 発作の起源となる脳の場所、(4) 別々の部位として、同定可能な医学的症候群、及び (5) もしあれば、発作を引き起こすイベントを含んでいる。国際抗てんかん連盟 (ILAE) による1981年の分類体系は、一般的に使用されているものであり、基本的な病理学又は解剖学よりもむしろ観察 (臨床上の及び電気生理学的なデータに基づくもの) に基づく。1989年に、ILAEは、1つの軸を原因とし、もう1つの軸を脳内における局在範囲とする2軸のスキームによる、てんかんとてんかん性症候群の分類体系を提案した。1997年以来、ILAEは、5軸 (発作の現象、発作のタイプ、症候群、病因及び障害) を有する新規のスキームで活動している。当然、てんかんの多くのケースは、「不明」グループのままであるが、これらの症状は、いずれの単一分類にも当てはまらないためである。
【0060】
てんかん性発作の局在に基づく分類
てんかん性発作は、脳におけるニューロンのてんかん性活動 (典型的には、過剰な及び/又は過同期性、及び通常の自己限定性活動) に関する。てんかん性発作の国際分類は、てんかん性発作を焦点 (また、部分とも呼ばれる) 及び全般てんかん性発作に大まかに分けている。部分発作は、典型的には、初期セミオロジーが、大脳半球のほんの一部の初期活動を示す、又はこの初期活性に一致する発作である。全般発作は、典型的には、初期セミオロジーが、両方の大脳半球に対する少なからずの関与を示す、又はこの初期活性に一致する発作である。部分発作は、脳内に広がる、二次性全般化として知られるプロセスであろう。
【0061】
部分発作は、意識に影響を与える範囲で、更に分類される。影響を与えない場合は、脳の比較的小さな領域 (例:前頭葉、側頭葉、後頭葉又は頭頂葉) に多くの場合関与する単純部分発作 (SPS) である。
【0062】
個人に現れる発作の症状は、根本的な異常神経活動が起こる脳の部分を示すことができる。例えば、任意に局部又は全身の筋肉のけいれん、単収縮、チック及び/又は幻覚が結合される意識の保持は、焦点てんかんを示すことができる。側頭葉SPS症状は、以下を含むことができる。それは、「上腹部が上昇する感覚」既視感又は未視感、記憶のフラッシュバック、突然の恐怖又は歓喜からくる強い感情及び/又は奇妙な味覚又は嗅覚、突然の挙動変化、変わった挙動、攻撃性、怒り又は興奮である。前頭葉SPSは、奇妙な動き、凝り又はけいれんと関係しており、初期には身体の一部に局所的であるが、他の部位に広がり得る。頭頂葉SPSには、奇妙な感覚 (例えばしびれ又はうずくこと) 、灼熱感又は熱感及び/又は身体の一部が実際よりも大きい又は小さい感覚を含み得る。後頭葉SPSは、視覚 (例:視野のゆがみ又は失明、光が点滅して見える、着色した形状及び/又は幻覚) を含み得る。
【0063】
複雑部分 (精神運動) 発作 (CPS) は、一般的には、ほとんど又は全ての発作による意識障害 (部分的な意識のみを有する個人の意識障害) 、応答性の低下及び記憶障害に関係する。側頭葉CPSは、多くの場合、自動症、又は混乱により左右を見渡すことにより明らかにされる。この種のCPSは、通常、2-3分位 (およそラジオの歌の長さ) 続き、そして、その人に5-10分の時間を与えることで、正常な機能が完全回復する。反対に、前頭葉CPSは、側頭葉CPSよりも非常に短く、通常、約15-30秒持続するが、多くの場合、辺縁系の動き (limbic movements) により特徴付けられ、続く回復は早い。
【0064】
全般発作は、身体に対する影響に従って分けられるが、一般的には、意識消失に関係する。これらは、欠神発作 (小発作) 、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代性発作(大発作)及び無緊張発作を含む。全般発作は、これらの運動徴候を基礎として主に分類される。
【0065】
症状に基づく分類:
てんかん性発作は、特徴的な動きのイベントが伴う可能性があり、これには、動きをもたらす筋収縮の増加 (陽性) 又は減少 (陰性) が含まれる。てんかん性発作は、運動徴候を付随する期間によって、以下の通り分類される。
1) 強直性:数秒から数分間の筋収縮が持続して増大すること。
2) てんかん性けいれん:主に近位筋肉及び体幹筋肉の、突然の屈曲、拡張又は混ざった拡張-屈曲であって、通常、ミオクローヌス性の動きよりも持続するが、強直性発作よりは持続しない (即ち、約1秒) 。限られた形として起きることもある (顔を歪めることや、頭を縦に振ること) 。てんかん性けいれんは、たびたびまとまって起きる。
3) 筋緊張異常性:アテトーゼ又はねじれ運動をもたらしている主動筋と拮抗筋の両方の持続的な収縮であって、これが続くと、姿勢異常をもたらす可能性がある。
4) ミオクローヌス性:変り易い局所分布 (軸上の、近位肢、遠位) における筋肉 (又は複数の筋肉) 又は筋肉群の、突然であり、短い時間 (<100ミリ秒) の不随意性単一収縮又は複数収縮。
5) 陰性ミオクローヌス性:先のミオクローニアの所見を除く、<500ミリ秒の強直性筋肉活動の中断。
6) 間代性:定期的な反復性があり、同じ筋肉群に関与し、約2-3 c/秒の頻度であって、且つ長く続くミオクローヌスである。
7) 強直間代性:強直性からなるシーケンスに続く間代性の段階。間代性-強直性-間代性のような異型が、見られることもある。
8) 全般強直間代性発作 (両側性強直間代性発作とも呼ばれ、以前は「大発作」とも呼ばれた):体性筋の両側対称的な強直性収縮の後に続く両側性間代性収縮であって、通常、自律神経の現象と関連する。
9) 無緊張性:1〜2秒以上続く、明らかに進行しているミオクローヌス性又は強直性のイベントを除いた、筋緊張の突然の消失又は減少。
【0066】
明確な運動イベントでは明らかにされない発作は、時々、他の経験的な症状を基礎として分類される。「欠神」発作は、典型的には、短期発作(例えば、うつろになること及び凝視することより、個人が認識を失うもの)である。発作は全くかすかなものであり、認識することが難しく、明らかな動きがないかもしれない。欠神発作は、児童においてより高い頻度の傾向がある (1日につき最大数百人が発作を起こす) が、成人においても起こる可能性がある。一部の児童には、毎日、数百回もの欠神発作が起きている。「非定型」欠神発作は、数秒より長く続き、身体の幾分かの動き (例:肩のけいれん) を含むことができる。
【0067】
感覚発作は、知覚体験を含むものであって、外界の適切な刺激によって引き起こされないものである。「前兆」は、主観的な発作現象を構成するものであって、特定の患者においては、観察可能な発作の症状に先立っても良い。単独の場合は、それは感覚発作を構成する。自律神経の前兆には、自律神経系の関係と整合した感覚が含まれ、心血管、胃腸、汗腺、血管運動及び温度調節の機能が含まれている。自律神経発作には、自律神経系機能 (例:心血管、瞳孔、胃腸、汗腺、血管運動及び温度規則の機能に関するもの) の、客観的に文書化された、特徴的な変形例が含まれる。
【0068】
病因に基づく分類
根本原因に基づくと、てんかんは、特発性タイプ (即ち、根本原因が明らかでないもの) 、症候性タイプ及び原因不明タイプに分けることができる。原因不明てんかんは、特定の根本原因が疑われるてんかんであり、その原因まだ確認されていないてんかんである。症候性てんかんは、脳における既知の構造異常又は損傷によって、又は基礎的な疾病 (例:先天性脳奇形、損傷又は外傷 (出生時又はその後) ) 、損傷が引き起こしている脳に対する酸素の欠乏、永続的な損傷での感染、腫瘍、血管のもつれ、脳卒中及び/又は代謝異常) によって引き起こされる。
【0069】
てんかん重積状態(SE)
多くのてんかん性発作は、不定期で、短い期間 (例:数分未満) であるが、ある症例における個人は、てんかん重積状態 (てんかん性発作の一般的な持続よりも長く持続 (少なくとも約5、10、又は30分) する持続性の発作によって特徴づけられるもの) に苦しむ可能性がある。てんかん重積状態は、個人の意識がベースラインまで戻らない間に2以上の反復性発作の形で起きる可能性がある。上記発作は、全般及び/又はけいれん性であって、意識障害を伴う長期に渡るけいれんが、全般けいれん性SE (GCSE) を構成する。けいれん患者は、容易に認識できるが、GCSEの一部の患者は、最小運動活動がある又はあきらかな運動活動はないが、脳波計 (EEG) 上で発作を示して、進行するだろう。非けいれん性SE (NCSE) を患う個人は、多種多様な臨床症状であって、昏睡、混乱、傾眠、情動変化、遁走状態、失語症、異常な自律神経 (autonomic) /自律神経 (vegetative) の症状、妄想、幻覚及び偏執病を含むものを示す可能性がある。NCSEは、全般 (欠神) 、焦点 (複雑部分) 、又はその他のいずれかに分けることが可能である。「てんかんのもうろう状態」は、その状態の間に注意障害を有する完全な覚醒があり、この状態は、全般NCSE及び焦点NCSEとの間に臨床的共通部分を示すことができる。単純部分SEは、典型的には、完全に意識がある、長期にわたる焦点発作 (例:局限性の手のけいれん) によって示される。
【0070】
他の一般的なてんかん性疾患
一部のより一般的なてんかん疾患及びそれに関連した状態であって、本願明細書において記載されている薬剤と方法によって治療されるものは、以下の1以上を含む:良性家族性新生児発作、早期ミオクローヌス脳症、大田原症候群、幼児期の移動性部分発作、ウェスト症候群、幼児期の良性ミオクローヌスてんかん、良性家族性及び非家族性小児発作、Dravet症候群、HH症候群、非進行性脳症のミオクローヌス状態、中心側頭スパイクを伴う良性小児てんかん、早発性良性の小児後頭葉てんかん (Panayiotopoulosタイプ) 、遅発性小児後頭葉てんかん (Gastautタイプ) 、ミオクローヌス欠神てんかん、ミオクローヌス失立発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群、ランドー・クレフナー症候群、徐波睡眠 (LKS以外の) 中の連続スパイク徐波を伴うてんかん、小児期欠神てんかん、進行性のミオクローヌスてんかん、変り易い表現型を伴う特発性全般てんかん (例:若年性欠神てんかん又は若年性ミオクローヌスてんかん又は全般性強直間代性発作だけを伴うてんかん) 、反射てんかん、特発性光過敏性後頭葉てんかん、他の視覚感受性てんかん、原発性読書てんかん、驚愕てんかん、常染色体優性夜間前頭葉てんかん、家族性側頭葉てんかん、熱性発作プラスを伴う全般てんかん、病巣が変り易い家族性焦点てんかん、症候性 (又はおそらく症候性) 焦点てんかん、辺縁系てんかん、海馬硬化症を伴う近心側頭葉てんかん、特定の病因により定義される近心側頭葉てんかん、位置及び病因により定義される他のタイプ、新皮質てんかん、及び/又はラスムッセン症候群。
【0071】
側頭葉てんかん (TLE) は、成人の焦点てんかんで最も一般的で、薬物に抵抗性のある種類である。TLEは、全体として、てんかんの一般的な種類を構成する。正確な発症率は明白ではないが、薬物耐性てんかんのかなりの割合を形成すると思われる。およそ30% (米国におけるてんかんの2,700,000の症例の中) は、薬物に適切に反応しない。これらの内、最高で半分は、TLEによるものかもしれない。TLE患者から外科的に海馬が切除されると、海馬硬化症 (グリオーシス及びニューロン消失と軸索発芽、神経新生及びシナプス形成より特徴付けられる) を示す。ヒトTLEのこれらの特徴は、安定したリチウム-ピロカルピン動物モデルのTLEで再現される。ピロカルピンは、化学けいれん薬であり、持続性発作により特徴付けられるてんかん状態を誘導し、一連の神経病理学的変化と、それに続く突発性反復性発作 (SRS) の進行が3〜5週以内に起こる。大きな細胞損失が、扁桃体、梨状皮質及び背側CA1海馬に示す。
【0072】
てんかんの診断及び/又は検出
観察可能症状の徴候の他に、てんかんは、様々な手順を用いることで検出及び/又は診断できる。これらは、脳波のような (EEG) 、ビデオEEG、コンピュータ断層撮影 (CT) スキャン、磁気共鳴映像法 (MRI) 、ポジトロン放出断層撮影 (PET) 及び/又は単光子放出コンピュータ断層撮影法 (SPECT) を含むことができる。
【0073】
EEGは、てんかんの検出又は診断の支援に広く用いられる。発作中のてんかん型放電 (IED) の存在は、てんかんを示すことができる。ある種のてんかん様現象 (例:3〜7 Hzのスパイク波放出、ヒプスアリスミア及び/又は全般光発作反応) は、臨床てんかんと強く相関している。中心側頭部或いは後頭部における焦点鋭波、又は中心側頭或いはローランドEEG放電は、てんかんを示すことができる。てんかん原性域の位置には関連性があるが、大多数の側頭葉てんかん患者はIEDを示す一方で、頭皮電極と離れた近心又は基底皮質領におけるてんかん病巣はスパイクを示しそうにない。EEGは、覚醒中及び睡眠中の両方の間で、任意の複数の時点でとることができる。例えば、Smith et al., Journal of Neurology Neurosurgery and Psychiatry 2005;76:ii2-ii7を参照し、全てを参照によって組み込まれる。
【0074】
IV. 治療を受ける患者
治療を受ける患者は、上述したものを含むてんかんの内、1以上の症状又は疾患を患っているヒトを含む。
【0075】
治療を受ける患者は、PSD-95アンタゴニストでの治療が以前から提案されている他の疾病又は疾患にかかっていてもよく又はかかっていなくてもよい。これらの疾病及び状態は、興奮性毒性が介する疾病、脳卒中、てんかん、低酸素症、CNSに対する外傷であって脳卒中と関連していないもの (例:外傷性脳損傷及び脊髄損傷) 、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む。この種の共存症が存在する患者において、本発明の薬剤は、てんかん及び共存症に対して効果的である。
【0076】
任意に、本発明の薬剤は、てんかんと診断される対象であって、興奮性毒性を介した脳卒中及び/又は他の疾患及び/又は虚血性脳障害又は他の疾病の病歴を有しないものに投与される。本発明の薬剤は、てんかんを患っている対象であって、第2の疾病にかかり易いことが又はそのリスクが増加することが知られていないものに投与することもできる。任意に、本発明の薬剤は、てんかんを患っている対象であって、第2の疾病のリスクが減少することが知られている、又は第2の疾病のリスクが増加しないことが知られているものに投与することも可能である。他の例では、本発明の薬剤は、てんかんを患っている対象であって、第2の疾病にかかっていないが、第2の疾病にかかり易いかもしれない、又はそのリスクが増加するかもしれないものに、優先的に投与することも可能である。薬剤は、第2の疾病のリスクが未知である対象に対して投与するこも可能である。第2の疾病は、PSD-95を介した疾病である。任意に、第2の疾病は、脳卒中、興奮性毒性を介した疾病、脳卒中、てんかん、低酸素症、CNSに対する外傷であって脳卒中と関連していないもの (例:外傷性脳損傷及び脊髄損傷) 、アルツハイマー病及びパーキンソン病、先天性脳奇形、永続的な損傷を伴う感染症、CNS腫瘍、血管のもつれ及び/又は代謝異常である。
【0077】
V. 治療の方法、投与のタイミング
本発明の薬剤は、てんかん性疾患 (上述したものを含む) に苦しむ患者、又はその症状が進行するリスクがある患者を治療する目的で使用される。
【0078】
好ましい方法として、薬剤は、てんかんのエピソード (例:発作) 後、少なくとも30分又は1時間経過後に投与できる。薬剤は、例えば、てんかんのエピソード後、少なくとも約2、3、4、5、6、8、10、12、16又は24時間経過後に投与できる。薬剤は、てんかんエピソード後、数日経過後 (例:開始後、少なくとも約1、2、3、4、5、7、8、9、10又は12日経過後) でも投与ができる。薬剤は、てんかんエピソード後、少なくとも1週経過後 (例:エピソード後、少なくとも約1、2又は3週経過後) でも投与できる。
【0079】
任意に、阻害剤は、てんかんエピソード後であって1又は複数時間以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、18又は24時間以内) に投与される。任意に、阻害剤は、てんかんエピソード後であって1又は複数日以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は14日以内) に投与される。任意に、阻害剤は、てんかんエピソード後であって1又は数週間以内 (例:エピソード後、約1、1.5、2、2.5又は3週以内) に投与される。
【0080】
阻害剤は、任意にある時間範囲内でてんかんエピソード後に投与される。上記時間範囲は、前述した時点の任意の組合せにも基づくことができる。例えば、上記阻害剤は、てんかんエピソード後、少なくとも約1時間経過後であって、エピソード後約2週間以内、例えば、てんかんエピソード後、少なくとも約2時間経過後であって、エピソード後約1週間以内 (例:てんかんエピソード後、少なくとも約3時間経過後であって、エピソード後、約3日 (あるいは1週) 以内) の時間範囲内で投与ができる。
【0081】
任意に、てんかんエピソード後の投与のタイミングは、エピソードの開始時間 (例:エピソードが短い時) から、又はエピソードの終了時間 (例:てんかん性発作が、より長い期間の時) から、又は脳においててんかん活動の兆候が観察される、任意の時点から測定できる。本発明の目的で、脳のてんかん性発作活動で経験する又は観察される症状 (非特異性発作の予感又は発作後の状態を含まない) の開始は、てんかん性エピソードの開始とみなすことができる。同様に、脳のてんかん性発作活動で経験する又は観察される症状の停止は、てんかん性エピソードの終了とみなすことができる。
【0082】
任意に、薬剤は、てんかんエピソード前又はそのエピソード中では投与されない。他の例では、薬剤は、てんかん性エピソード (例:発作) 中でも投与ができる。
【0083】
エピソードが始まった後、治療が施される場合、治療は、任意に、てんかん性エピソードの終結後、少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24又は48時間経過後で施される。多くの場合、本発明にかかる薬剤は、単数回投与で充分である。しかし、複数回投与でも、6-24時間の間隔で投与ができる。
【0084】
所望の所で、治療は、誘因となるイベントであってエピソードを促進するものの前、又は対象の観察可能な発作の発症に先立つ典型的な前兆を対象が経験する後のいずれかで、開始することができる。薬剤は、任意にてんかん性発作前、少なくとも約50.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24又は48時間前に投与される。
【0085】
他の例では、治療は、てんかん性発作の開始後、所望の時点で施すことができる。薬剤は、例えば、てんかん性発作の開始後、少なくとも約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24又は48時間経過後に投与される。てんかん性発作は、短い (例:1秒、又は数秒、又は約1又は数分、又は約30分未満続く) 。
【0086】
本発明の方法は、てんかんのための他の治療と組合せることができる。この種の従来の治療は、行動療法、生活様式の変化及び/又は薬物療法を含む。既知の抗てんかん薬は、「従来の」薬物 (例えばフェノバルビタール、プリミドン、フェニトイン、カルバマゼピン及びバルプロ酸) と新規の抗てんかん薬 (電位依存性イオンチャネル遮断、抑制性神経伝達の促進、及び/又は興奮性神経伝達の抑制を誘導するもの) を含む。N-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) 受容体におけるグルタミン酸拮抗作用 (例:フェルバメート) 及びα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸 (AMPA) 受容体におけるグルタミン酸拮抗作用 (例:フェルバメート、トピラマート) とニューロン及びアストロサイトにおけるγ-アミノ酪酸 (GABA) 再取り込みの阻害 (例:チアガビン) が例としてあげられる。
【0087】
好適な抗てんかん薬には、ナトリウムチャネル遮断薬、GABA受容体アゴニスト、GABA再取り込み阻害剤、GABAアミノ基転移酵素阻害剤、グルタミン酸遮断薬と他の作用機序の抗てんかん薬が含まれる。抗てんかん薬は、アルデヒド、芳香族アリル型アルコール、バルビツール酸、ベンゾジアゼピン、臭化物、カルバミン酸、カルボキサミド、脂肪酸、フルクトース誘導体、gaba類似体、ヒダントイン、オキサゾリジンジオン、プロピオン酸、ピリミジンジオン、ピロリジン、スクシンイミド、スルホンアミド、トリアジン、尿素、バルプロイルアミド (バルプロ酸のアミド誘導体) を含む。一般的に使用される抗てんかん薬の具体的な例としては、アセタゾラミド、放出調整されたアセタゾラミド、カルバマゼピン、放出調整されたカルバマゼピン、クロバザム、クロナゼパム、エトサクシミド、ガバペンチン、ラモトリジン、レベチラセタム、オキスカルバゼピン、フェノバルビタール (フェノバルビトン) 、フェニトイン、プレガバリン、プリミドン、ルフィナマイド、バルプロ酸ナトリウム、放出調整されたバルプロ酸ナトリウム、チアガビン、トピラマート、バルプロン酸、ビガバトリン又はゾニサミドがあげられる。そのような薬又はそれらの誘導体の任意の組合せを使うことが可能である。
【0088】
VI. 医薬組成物、投与量及び投与のルート
本発明のペプチド及びペプチドミミックは、医薬組成物の形で投与できる。医薬組成物は、GMP条件で製造される。医薬組成物は、後述する任意の投与量を含んでいる単位用量の形態 (即ち、1回分の投与量) で提供することができる。医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣化、すりつぶし、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥工程の方法により製造することができる。特に、本発明の凍結乾燥したペプチド又はペプチドミミックは、後述する製剤及び組成物で用いることができる。
【0089】
医薬組成物は、従来の方法であって、1以上の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤であり、薬剤的に使用可能な製剤にペプチド又はペプチドミミックを処理することを容易にするものを使用する方法で調製できる。適当な製剤は、選択する投与ルートに依存する。
【0090】
投与は、非経口、静脈、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内又は筋肉内であってもよい。薬をリン酸緩衝食塩水中に溶かしての静脈内投与が好ましい。
【0091】
本発明は、脳の任意の部位における神経変異を治療することを目的とするものであって、脳の様々な領域を図14において示す。
【0092】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは無菌及び実質的に等張である。注入のために、ペプチド又はペプチドミミックは、水溶液で調製してもよく、好ましくは生理学的に許容可能な緩衝液 (例:ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水) 又は酢酸緩衝液 (注入の部位で、不快感を和らげるため) である。溶液は、製剤化剤 (例:懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤) を含むことができる。
【0093】
あるいは、ペプチド又はペプチドミミックは、使用前に適切な媒体(例:発熱物質を含まない水) で構成するために粉末形態であってもよい。
【0094】
経粘膜投与のために、透過すべきバリヤーに対して適切な浸透剤が製造中において用いられる。この投与ルートは、化合物を鼻腔に届けるため又は舌下投与のために用いることができる。
【0095】
経口投与のために、化合物は、治療を受ける患者による経口摂取の為に、ペプチド又はペプチドミミックと薬剤的に許容可能な担体 (例:錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、溶液、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等) とを結合することにより調製できる。経口用固形製剤 (例:粉末、カプセル及び錠剤) のために、適切な賦形剤は、糖 (例:ラクトース、スクロース、マンニトール及びソルビトール) 、セルロース製剤 (例:トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン (PVP) ) のような充填剤、造粒剤、及び結合剤を含む。必要に応じて、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はその塩 (例:アルギン酸ナトリウム) のような崩壊剤を加えることも可能である。必要に応じて、固体投与形態は、標準的な技術を用いて糖衣化又は腸溶性としてもよい。経口用液体製剤 (例:懸濁液、エリキシル及び溶液) のために、適切な担体、賦形剤又は希釈剤は、水、グリコール、油、アルコールを含む。加えて、香料添加剤、防腐剤、着色剤等を加えることが可能である。
【0096】
上述の製剤に加え、化合物はデポー製剤として調製することもできる。この種の長時間作用型製剤は、埋め込み (例:皮下又は筋内) 又は筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、化合物は、適切な高分子材料又は疎水性材料 (例:許容可能な油のエマルジョン) 又はイオン交換樹脂を用いて、又はやや溶けにくい誘導体(例:やや溶けにくい塩)として調製することが可能である。
【0097】
あるいは、他の薬理学的デリバリーシステムを採用できる。リポソーム及びエマルジョンは、ペプチド及びペプチドミミックを運搬するために用いることができる。ある種の有機溶剤 (例:ジメチルスルホキシド) も用いることができるが、通常、より大きな毒性を代償として払う。加えて、化合物は、徐放性システム (例:治療薬を含んでいる、固体ポリマーの半透過性マトリクス) を用いて届けることができる。
【0098】
徐放性カプセルは、それらの化学的性質に応じて、数週間から100日以上の間、ペプチド又はペプチドミミックを放出することができる。治療用薬剤の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化に関する更なる戦略を採用してもよい。
【0099】
本発明のペプチド又はペプチドミミックは、帯電した側鎖又は末端を含むことができるため、それらは、遊離酸又は塩基として、又は薬剤的に許容可能な塩として、上記の製剤のいずれかに含むことができる。薬剤的に許容可能な塩は、遊離塩基の生物活性を実質的に保持し、無機酸との反応により調製される、それらの塩である。製薬としての塩は、対応する遊離塩基形態より、水性及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
【0100】
本発明にかかる薬剤は、意図された目的を達成するのに効果的な量が用いられる。治療上有効な量とは、てんかんの症状を現在経験している患者において、てんかん又はその亜種の内、少なくとも1つの兆候及び/又は症状が悪化することを除去する、減らす又は阻害するのに十分な薬剤の量を意味する。例えば、量が治療上有効であるとみなされるのは、治療を受けている患者 (ヒト又は動物) の集団と治療を受けていない患者のコントロール集団とを比較して、少なくとも1つのてんかんの兆候又は症状を著しく低減する場合である。上記量が治療上有効であるとみなされるのは、個々の治療をうけている患者が、本発明にかかる方法で治療されていない比較患者のコントロール集団の平均結果より、良好な結果を成し遂げる場合でもある。薬剤の予防的に有効な量とは、現在症状を経験していないが、そのような症状が進行している一般集団と比較してリスクが高いとみなされる患者において、少なくとも1つのてんかん又はその亜種の兆候又は症状の進行を遅延する、阻害する又は防止するのに十分な薬剤の量を意味する。例えば、量が予防的に有効であるとみなされるものは、てんかん症状を進行させるリスクのある患者の集団が、薬剤で治療を受け、兆候又は症状の軽減を、薬剤で治療されていないコントロール集団と比較して、促進する場合である。有効な量について言及は、治療上有効な量又は予防上有効な量のいずれかを意味する。有効な投与計画についての言及は、上述した通りに意図した目的を達成するために要求される有効な量及び投与頻度の組合せを意味する。
【0101】
好ましい投与量の範囲は、患者体重1 kgあたり約0.01〜100 μmolの薬剤、任意に患者体重1 kgあたり約0.1〜10 μmolの薬剤、例えば、患者体重1kgあたり約0.5〜2 μmolの薬剤、又は患者体重1 kgあたり約1 μmolの薬剤を含む。一部の方法において、患者体重1 kgあたり約0.1-10 μmolの薬剤が投与される。一部の方法において、患者体重1 kgあたり0.5-5 μmolの薬剤が、6時間以内に投与され、より好ましくは、患者体重1 kgあたり約1 μmolの薬剤が、てんかん性発作後、3-6時間経過後に投与される。他の例において、投与量の範囲は、患者体重1 kgあたり0.05 μmolから0.5 μmolまでの薬剤である。体重1 kgあたりの投与量を、質量比に対する種々の表面積を補償するために6.2で割ることで、ラットからヒトへ変換することができる。同様に、体重1 kgあたりの投与量を、12.3で割ることで、マウスからヒトへ変換することができる。投与量は、ペプチドのモル重量 (ここで、Tat-NR2B9cなら2519) を掛け算することで、モルのユニットからグラムへ変換することができる。投与量は、ペプチドのモル重量を掛け算することで、モルのユニットからグラムへ変換することができる。ヒトでの使用における本発明のペプチド又はペプチドミミックの好適な投与量は、約0.01〜100 mg/kgの患者体重、又はより好ましくは約0.1〜10 mg/kgの患者体重、又は約0.5〜5 mg/kg、又は約1-4 mg/kg 、例えば、約2.6 mg/kgが含み得る。75 kgの患者の場合の絶対重量について、これらの投与量は、0.75-7500 mg、7.5〜750 mgs、37.5-3750 mgs又は約75-300 mgs、例えば、約200 mgsに変換する。変数 (例:患者重量) を含めての概数となるため、投与量は、通常、0.05〜500 mg以内、好ましくは0.1〜100 mg以内、0.5〜50 mg以内又は1-20 mg以内である。
【0102】
あるいは、現在の方法での使用を意図する薬剤 (例:Tat-NR2B9c) は、脳卒中の治療に役立つことが以前から報告され、重篤な有害事象のないこの適応症に第1相臨床試験を行ってきた。脳卒中を治療するために用いる投与量及び投与計画が、てんかん、特に短期間欠性のてんかん発作のためにも使用可能である。
【0103】
投与される薬剤の量は、治療を受けている対象、対象の質量、苦痛の厳しさ、投与方法及び処方する医師の判断に依存する。治療法は、症状が検出可能な間、又はたとえそれらが検出可能でない時でも、断続的に繰り返すことができる。治療法は、単独又は他の薬との併用で提供できる。
【0104】
治療的上有効な薬剤の量は、実質的な毒性を引き起こすことなく治療上の利益を提供できる。ペプチド又はペプチドミミックの毒性は、細胞培養又は実験動物による標準的な製薬手順により測定すること (例:LD50 (集団の50%にとって致死量) 又はLD100 (集団の100%にとって致死量) を測定すること) ができる。毒性と治療上の有効性との用量比が、治療指数である。高い治療指数を示しているペプチド又はペプチドミミックが、好まれる (例えば、Fingl et al., 1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1を参照) 。
【0105】
VII. スクリーニング方法
本発明は、てんかんを治療することに役立つ活性を有するペプチド、ペプチドミミック及び他の化合物をスクリーニングする方法を更に提供する。化合物は、てんかんの動物モデルに投与される。様々な動物モデルは、後述する。
【0106】
上記方法でのスクリーニングに適している化合物は、PSD-95のPDZドメインとリガンド (NDMAR 2Bを含む) の相互作用を阻害することで公知のペプチド、ペプチドミミック及び低分子 (即ち、500 Da未満) を含む。表1に示すNDMAR及びPDZドメインタンパク質の他の対との間の相互作用を阻害することで既知の他のペプチド、ペプチドミミック及び低分子もスクリーニングできる。
【0107】
スクリーニングされる化合物は、天然及び合成の両方、有機及び無機の両方であってもよく、それは、ポリマー (例:オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド) 、低分子、抗体、糖、脂肪酸、ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体、天然構造の類似体 (例:ペプチドミミック、核酸類似体等) 、及び多数の他の化合物を含んでいる。化合物は、多様性ライブラリー (例:ランダム或いはコンビナトリアルペプチド又は非ペプチドライブラリー) から調製できる。ライブラリーは、化学的に合成されたライブラリー、組換え (例:ファージディスプレイライブラリー) 及びインビトロ翻訳ベースのライブラリーを含む。化学的に合成されたライブラリーの例は、Fodor et al., 1991, Science 251:767-773; Houghten et al., 1991, Nature 354:84-86; Lam et al., 1991, Nature 354:82-84; Medynski, 1994, Bio/Technology 12:709-710; Gallop et al., 1994, J. Medicinal Chemistry 37(9):1233-1251; Ohlmeyer et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926; Erb et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422-11426; Houghten et al., 1992, Biotechniques 13:412; Jayawickreme et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1614-1618; Salmon et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11708-11712; WO 93/20242; and Brenner and Lerner, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381-5383に記載されている。ファージディスプレイライブラリーの例は、Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin et al., 1990, Science, 249:404-406; Christian, R.B., et al., 1992, J. Mol.に記載されている。インビトロ翻訳ベースのライブラリーは、WO 91/05058; and Mattheakis et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022-9026に記載されているものを含む。非ペプチドライブラリーの例として、ベンゾジアゼピンライブラリー (例えば、Bunin et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708-4712を参照) が、使用に適しているだろう。ペプトイドライブラリー (Simon et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367-9371) も、用いることができる。用いることが可能なライブラリーの他の例は、ペプチドにおけるアミドの官能性が、パーメチル化され、化学的に変換されたコンビナトリアルライブラリーが生成するものであって、Ostreshら (1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11138-11142) によって記述されているものである。
【0108】
てんかんの動物モデル:
多数の種々のてんかん状態の動物モデルは、よく特徴付けられている。例えば、 Models of Seizures and Epilepsy : Asla Pitkanen, Philip A. Schwartzkroin and Solomon L. Mosheにより編集, ISBN: 978-0-12-088554-1; Elsevier Inc., Copyright (C) 2006を参照し、この全体を参照することで組み込まれる。動物は、ショウジョウバエから霊長類まで変更することが可能であり、これらの動物において、てんかんは、化学物質を投与すること、又は発作及び/又はてんかんが特発的に進行する検体を対象とした遺伝的スクリーニングすることを含む様々な方法で引き起こされる。動物モデルの例は、熱性けいれんに似た症状を呈する、異常高熱により誘導される発作を起こすラット、マウスの変異体 (例:トッテラー (totterer) 、スターゲイザー (stargazer) 、レサージック (lethargic)) 及びのようなヒト欠神てんかん (例:短期間の行動停止 (即ち、ジロジロ見ること又は凝視すること) ) に類似する特徴が共通するスローウェーブてんかん (SWE) マウスを含む。
【0109】
側頭葉てんかん (TLE) 患者において観察される複雑部分発作についてよく特徴づけられた動物モデルも記述されている。カイニン酸及びピロカルピン (PILO) 発作モデルは、おそらくTLEに関して最も一般的に研究された化学的誘導動物モデルである。燃え上がり現象 (初期の亜けいれん性電気刺激を反復して病巣へ適用することが、最終的に強度の部分及び全般けいれん性発作になる現象) は、TLEの有益なモデルであり続ける。
【0110】
加えて、いくつかの遺伝的にてんかん易発性の種は、感光性及び聴原性反射てんかんを研究するための動物モデルとして記述されている。これらは、ヒヒギニアヒヒ、ニワトリのファイオミてんかん (FEpi) 株、遺伝的にてんかん易発性のラット (GEPR) 及びDBA/2マウスを含む。
【0111】
様々な方法は、動物の全般強直間代性発作又は欠神発作を誘導することに利用でき、それらは、非常に発作を起こしやすい又は突発性発作患っているいずれかの一部の遺伝的動物モデルである。次は、この種の発作タイプを引き出す2、3の従来の方法である。
【0112】
けいれん性発作 (強直性後肢伸展/屈曲の次に間代性活性が続くことによって、特徴づけられるもの) は、新規な抗けいれん薬の迅速なスクリーニングのための普及している方法としてあり続けている最大電気ショックによって、確実に誘導される。
【0113】
ペンチレンテトラゾール (PTZ) は、おそらく最も広く使われている、全身に投与されるけいれん誘発薬である。PTZの反復注入は、電気燃え上がり現象に類似する化学燃え上がり現象の一種をもたらすことができる。高用量でのPTZ (通常、皮下に又は静脈に投与される) は、ラット又はマウスに対して強直間代性けいれんを確実にもたらし、これは新薬のけいれん感受性及びスクリーニングの両方にとって迅速且つ効率的な測定である。低用量で全身的とすれば、PTZは、欠神様の発作を誘発するために用いることもできる。
【0114】
フルロチル (ヘキサフッ化エーテル) は、齧歯動物の再現可能なけいれん発作パターンを誘導するために用いる化学吸入薬である。この方法では、ラット又はマウスを、中央で投与されるフルロチルが拡散する気密室に置き、10-20分後に、フルロチルが、まず最初に、ミオクローヌス性けいれんを引き起こし、次に重度の間代強直性けいれんが続く。最後に、全般欠神発作の他の実験動物モデルは、視床刺激、ネコの全身ペニシリン投与、g -ヒドロキシ酪酸塩処理 (GHB) 及び側脳室内オピエートとラット (GAERS, WAG/Rij, SER) 及び既に述べたマウス(スターゲイザー、トッタリング (tottering) 、レサージック、スローウェーブてんかんマウス、モカ (mocha) 及びダッキー (ducky) ) の遺伝モデルの種類を含む。
【0115】
上記のそれらの動物モデルは、インビボとインビトロの両方で、部分又は全般発作関連の現象に対する基本的なメカニズムを理解する際に貴重であり、新規な薬物療法を評価することための標準的な方法である。Sarkisian, Epilepsy & Behavior 2, 201-216 (2001) は、全体を参照によって組み込まれる。
【実施例】
【0116】
<実施例1>
<てんかんのピロカルピンラットモデル>
A. 大腿静脈の挿管
動物を、3%のイソフルランの連続供給下でおよそ40分間麻酔し、手術の間、加温パッドの上に横臥位で置いた。手術部位は、ベタジン (Betadine) 石鹸で清潔にし、剃毛した。3 cmの腹部皮膚の切開を、腹部の右下部位から、右大腿部に沿い、大腿静脈、大腿動脈及び座骨神経の位置を示す識別可能なしわの隣に作成した。内転筋の最小解離を、血管の束を視覚化するために実行し、大腿静脈、大腿動脈及び座骨神経を慎重に分離した。小さい切れ目を大腿静脈に作成し、P10ポリエチレンカニューレ (ヘパリン (1 mLのヘパリン/1 L PBS) を含んでいる生理食塩水を予め充填している) を4〜5 cm挿入した。複数の4.0絹縫合糸で、カニューレを固定するために、大腿静脈、大腿動脈、座骨神経周辺で結紮した。動物を横臥位で置き、0.5 cmの背側正中皮膚切開を肩甲骨の間で作成した。端が尖った長さ15 cmの金属管を、背側正中切開から挿入し、腹側の大腿切開まで皮下にトンネルを作成した。カニューレの自由末端が、金属管で供給され、そして背側正中切開から押し出された。金属管を取り除き、そして、腹側の皮膚切開を閉じた。カニューレを、形成外科的ボタンを介して織ることで固定し、ヘパリン含有生理食塩水で洗浄し、23-ゲージピンで封止した。背側の切開を閉じ、形成外科的ボタンは肩甲骨 (続く5日間の回復期間の間、動物が届かない重要な領域) の間に4.0絹縫合糸で植え付けた。
【0117】
B. てんかん性発作の誘導
350〜400グラムの間の雄のウィスターラットを、化学けいれん薬ピロカルピンの全身注入の前17〜24時間に、塩化リチウムで前処理 (ip; 3 mEq/kg) した。ピロカルピン (ip; 10 mg/kg) を、てんかん重積状態 (SE) の発症までの30分ごとに投与した。これを、意識消失及び連続する明白な発作活動として定義した。低用量ピロカルピン (LDP) 法において、LEH又はウィスターラットは、ピロカルピン (30 mg/kg, i.p.) の最初の注入を施した。SEが60分以内に発達しない場合、2回目のピロカルピン注入 (15 mg/kg) を施した。第2の手順である、繰り返し低用量ピロカルピン (RLDP) 法において、ピロカルピン (10 mg/kg, i.p.) を、30分ごとにLEH又はウィスターラットに投与 (Glien et al, Epilepsy Res. 2001 Aug ;46 (2):111-9に記述) し、ラットが、全般、クラス4/5発作を経験するまで投与した。ラットは、大体、その後まもなくSEに進行した。最初のクラス4/5発作の30分以内でSEに進行しなかった動物は、最高6回の注入を30分間隔で追加のピロカルピン注射を受けた。SEは、ジアゼパム (ip; 4 mg/kg) によるSEの発症後、1、3及び5時間で終了した。SE中に発生した明白な発作活動は、以下の通り、修正ラシーンスケール (Racine, 1972) を用いたステージに記録した。1) 口の動き、2) 口の動き及び点頭、3)前肢クローヌス、4) 前肢クローヌス及び立ち上がり、5) 前肢クローヌス、立ち上がり及び一度の転倒、6) 前肢クローヌス、立ち上がり及び複数回の転倒、7) 走ること及び跳ぶこと。我々の修正ラシーンスケールは、オリジナルのクラス5から3つのステージに分割し、複数回の転倒に関する発作活動 (6) と走ること及び跳ぶこと (7) を更に加えた。
【0118】
C. てんかん性発作に続く神経変性の評価
動物をケタミン及びロンプタム (romptum) により麻酔し、SE誘導後2週目に、パラホルムアルデヒド (4% PFA;0.1Mリン酸緩衝液、pH 7.4) で経心的にかん流した。脳を取り出し、PFAで終夜固定した後、30%スクロース含有PBSで平衡化した。脳を-35℃のメチルブタンで凍結し、凍結乾燥を防ぐ目的で凍結した30%スクロース含有PBSを含むシンチレーションバイアル中にて-70℃で、更に使用するまで保存した。脳は、凍結ミクロトームを使用して40 μmの冠状に切片し、不凍液 (15%グルコース、30%エチレングリコール、50 mMolリン酸緩衝液、pH 7.4) を含む24穴プレートで-20℃にて保存した。
【0119】
動物ごとに、神経細胞を、NeuN (神経細胞特異的抗体) で免疫組織化学的染色によって定量化した。フリーの浮遊切片を、神経特異的一次抗体NeuN (1:1000) (0.3% Triton X-100及び2%ヤギ血清)を用いて、終夜4℃でゆっくり振盪するインキュベートの前に、0.1 M PBSで洗浄 (3分×2) した。切片を0.1 M PBSで洗浄 (3分×2) し、Cy3 (1:200) と共役した抗マウス二次抗体及び0.3% Triton X-100とで室温で2時間インキュベートした。脳切片を洗浄 (3分×3) し、ゼラチンで被覆したスライドにマウントした。切片を1分間の100%アルコールに浸す前に空気乾燥を行い、3分間のキシレンできれいにし、パーマウントで覆った。
【0120】
NeuN免疫反応細胞を、背側の海馬 (ブレグマ-2.8〜-3.8 mm) の体軸に沿って240 μmの間隔で離れている3つの切片で、光学分析装置法 (40X対物) を用いてカウントした。選択された切片は、動物間で比較可能であった。CA1領域の中では、切片あたりの3つの計数ボックス(計数フレーム=60 X 120 μm、分析高=40 μm)を、体系的にランダムな方法で分散した。0.7 μm間隔で重なることで得られる計数フレームのZスタックイメージは、Zeiss LSM Image Browserソフトウェアで2564 x 2051 JPEGのギャラリー画像として保存しエクスポートした。JPEGのギャラリー画像は、ADOBE Photoshop 7.0を用いてインポートし、定量した。動物あたり合計9つの計数ボックスを、前CA1領域について定量化した。結果は、計数フレームあたり定量化した細胞の総数の平均として表している。
【0121】
<実施例2>
<ラットモデルにおける脳のてんかん性発作の効果>
てんかん重積状態を、実施例1で説明したように、雄のウィスターラットで誘導した。これらのラットの脳におけるてんかん性発作の影響を、以下で特徴付けた。
【0122】
A. SE誘導神経病理学の特性評価
神経変性は、光学分析法と神経を定量するためのNeuN染色で立体的分析を用いて評価した。動物あたり3つの冠状切片を分析し、60-100のニューロンをナイーブ動物の脳切片あたりで計数した。細胞計数を実行した (SEの終了後、3時間、6時間、12時間、24時間、3日、7日、14日及び3ヵ月経過後) 。すべての動物は、3週から8週の間でSRSが進展した。少なくとも4匹の動物は、すべての群に含まれていた。現在まで、以下の脳領域:海馬亜領域の腹側CA1、CA2、CA3、CA4、後背側CA1及び後腹側CA1 (D&V) 、扁桃体外側基底核 (BLN) 、側部後視床核 (LPTN) 及び梨状皮質の錐体細胞層を分析した。
【0123】
後CA1 (図1及び2を参照) を除いては、最大細胞消失は、すべての脳領域で3日以内に発生した。突発性反復性発作の発生は、これらの脳領域の細胞消失に更に寄与しなかったことから、神経変性は、持続したSEの結果として特異的に発生することを示している。海馬のCA2及びCA3亜領域は、細胞消失の影響を受けにくいようにいくらか見えた (図2及び3) 。前及び後CA1亜領域は、海馬で最も厳しい影響を受けた領域 (>70%の細胞消失) であった。加えて、LPTN、BLN及び梨状皮質も、厳しい影響 (<80%の細胞損失) を受ける。
【0124】
ニューロン特異的抗体NeuNでの染色は、NeuN陽性細胞の欠如、即ち、神経変性プロセス終了によって神経変性を検出する。反対に、フルオロジェイドB (FJB) 染色は、病理学的評価の前に死ぬニューロンを検出する。SE後のNeuN及びFJBの二重染色は、神経変性の早期発見を可能にした。例えば、扁桃体外側基底核において、FJB染色は、SE後、3時間経過時という早い時期にニューロンの8 ± 13%に、6時間経過時のニューロンの30 ± 6%に、そして、24時間経過時のニューロンの54 ± 7%に現れた。従って、SE後の神経変性に寄与するプロセスの迅速な開始は、SE後6時間経過時という早い時期に検出した細胞消失で検出された。
【0125】
<実施例3>
<TAT-NR2B9Cは、てんかん性発作に続く背側CA1領域におけるニューロン消失を救済する>
てんかん重積状態を、実施例1で説明したように、雄のウィスターラットで誘導した。Tat-NR2B9c (生理食塩水中に3 nmol/gm) は、1分あたり60 μmの定率で、SE終了後3時間経過後に大腿静脈を経て投与された。ラットは、SE後14日間回復し、そして分析された。
【0126】
神経変性を、実施例1及び2で説明したように、NeuN陽性細胞の消失に関して評価した。てんかん性発作の誘導の後の神経細胞消失の典型的時間経過を、図6に示す。細胞消失は、SE後、約7日目で最大で、14日目まで減少したままである。
【0127】
図8に示すように、てんかん性発作の誘導後、約3時間経過後にラットへ投与した時、Tat-NR2B9cが用量依存的にニューロン消失を救済した。対照的に、コントロールペプチドTat-NR2BAAは、神経変性 (図4A) を減少させなかった。
【0128】
逆に驚くべきことは、Tat-NR2B9cを、持続性てんかん性発作の状態中、ラットへ投与しても、ニューロン消失 (図7) を減少させなかった。この結果は、脳卒中の前又はその1時間経過後にアプライした時、Tat-NR2B9cが、脳卒中の動物モデルにおいて、非常にニューロン保護的であり (Aarts et al, 2002) 、神経学的な発作後3時間経過後及びその後まで効果的であることを示している以前の研究を踏まえると特に驚きである。
【0129】
Tat-NR2B9cは、特に前CA1領域に対して保護的であった一方で、ネガティブコントロールペプチドTat-NR2BAA (PSD-95アンタゴニストとして作用できない) は、保護的ではなかった (図4A) 。てんかん性発作と関連する投与のタイミングに依存するTat-NR2B9cの効果の差を比較したものを、図5及び4Bに示している。てんかん重積状態中、Tat-NR2B9cを投与されたラットのニューロン消失は、たとえ高用量のTat-NR2B9c (9 nmol/gm) であっても、未治療のラットのニューロン消失 (図4B、5及び7) と同程度であった。顕著な対照として、低用量のTat-NR2B9c (0.3 nmol/gm及び3 nmol/gm) を、てんかん重積状態の終了後に与えた時、ニューロン保護 (図4B、5及び7) を与えた。
【0130】
<実施例4>
< TAT-NR2B9Cによる、てんかん性発作に続く神経保護作用の組織化学的可視化>
発作は、雄のウィスターラットにおいて誘導し、実施例1及び2で説明したように、Tat-NR2B9cを、発作の後3時間経過後に投与した。脳を固定し、切片とし、上述の通り、NeuNで免疫染色した。背側海馬の冠状切片は、2.5xの顕微鏡下で視覚化され、代表的な画像が下で示される。図8の左パネルは、Tat-NR2B9c投与の結果として増加したNeuN免疫染色であって、より高い量のTat-NR2B9cで得られた最善の結果 (非SEコントロールに最も近い) で示している。
【0131】
海馬の背側CA1領域の切片を、40x倍率で見た時、NeuNで染色した細胞の数は、食生理食塩水処理したラットと比較して、ピロカルピン処理したラットで著しく減少した。この効果は、Tat-NR2B9c (図8、左パネル) の投与によって、逆転した。
【0132】
<実施例5>
< TAT-NR2B9Cは、SEに続く側脳室のサイズを著しく救済する>
ピロカルピン及びTat-NR2B9c投与、及び脳切片の固定後に、上述の通り、切片を6枚目ごとに、クレシルバイオレットによるニッスル染色のために用いた。切片をマウントし、ゼラチンを被覆スライドで空気乾燥をした。切片を、100%、95%、70%及び50%のアルコールシリーズで、それぞれ5分間再水和した。切片を、水で洗浄 (30秒×2) し、50%で5分間 (又は5分未満) 、70%で5分間 (又は5分未満) 、95%で5分間 (又は5分未満) 、100%で5分間 (又は5分未満) 及び100%で5分間 (又は5分未満) のアルコールシリーズで脱水した。差異は、50%及び70%のアルコール勾配で最大限に発生する。切片を、5分間のキシレンできれいにし、パーマウントで覆い、例えば、40X倍率で見た。
【0133】
発作を受けたラットが非常に大きい側脳室を有した一方、Tat-NR2B9cを投与することで、ピロカルピンを与えていなかったラットで見られるサイズにまで側脳室のサイズを下げた。
【0134】
図11は、SE後3時間経過後にTat-NR2B9c処理した動物の側脳室サイズの劇的な減少を示す。ニッスル染色した切片の比較において、SE後3時間経過後にTat-NR2B9c処理した動物は、未処理の動物と比較してより顕著に小さい側脳室を有した。
【0135】
<実施例6>
< Tat-NR2B9cが、てんかん性発作により引き起こされる認識機能障害を改善する>
我々は、RLDP手順により誘導した60分間のSEに対する有力な行動効果を調査した。視空間記憶を、SE後8週経過後にモーリス水迷路 (MWM) を用いて調査し、慢性認識機能障害を検出した。MWMは治療薬に関する研究で特に有用で、その理由は、前CA1領域の神経変性の重症度は、成績 (逃避潜時) と強く相関しているためである (Clasussen et al, 2005) 。4つのグループの動物を、本分析で比較した。:1) ピロカルピンの代わりに生理食塩水を与え、SEに入らなかったコントロール、2) 低用量のピロカルピンを最高6回与えたが、SEに入らなかった非SEグループ、3) RLDP手順による誘導でSEに入ったSEグループ、そして4) RLDP手順による誘導でSEに入り、大腿静脈カニュレーション (Tat-NR2B9cで得られた結果は、セクション4) で述べるだろう) を介してSE後3時間経過後にTat-NR2B9c薬を投与したTat-NR2B9cグループ) 。すべてのグループにおいて、少なくとも6匹の動物が含まれていた。
【0136】
Tat-NR2B9cで治療した又は治療していないてんかん性マウスの様々な認識機能を以下で評価した。
i) 高架式十字迷路:
【0137】
高架式十字迷路を用いて、探索行動を調査した。SE後8週経過後に、動物を、高架式十字迷路に5分間置き、ビデオテープで録画した。SE動物は、コントロール (86%) と比較して、より少ない時間 (50%) をクローズドアームで費やし、オープンアームへ入ったより多くの数とクローズドアームへ入ったより少ない数を得た (図12A-D) 。さらに、コントロール (図12E及びF) と比較した時、SE動物は、オープンアームへの関心及び立ち上がるエピソードの頻度が減少した。Tat-NR2B9c治療動物は、未治療の動物と比較した時、探索行動におけるこれらのSE効果を減少させた。
ii)モーリス水迷路:
【0138】
我々は、連日に渡る反復試験の成績で、SEラットが、明白な好転を示すことがわかった (図13) 。我々の研究において、動物を、1日で完了する6つの試験で、14日間連続のMWMを課題として訓練した。図13Bにて図示するように、SE動物は、すべての訓練日に渡って、試験の間で好転 (試験1-2から試験4-5の間の度合いが検出される) を示した。対照的に、非SE動物は、6日目の後は更なる好転を示さないが、これは、プラットフォームの位置を既に学んでいるためである。 図13Aは、SE動物が、連日に渡る逃避潜時で適度に好転することを示す。しかし、非SE動物は連続する6日間の内で課題を学ぶが、その後、逃避潜時で更なる好転はなかった。
【0139】
前述の本発明が、理解の明快さのために詳述したにもかかわらず、特定の変更形態が添付の特許請求の範囲内で実施できること明らかである。すべての刊行物、文書、登録番号及び上記引用等は、あたかも各々が個々に意味されたかのように、同程度にすべての目的をそれらの全部において、引用することで本願明細書に組み込まれている。シーケンスの複数のバージョンが異なる時間で同じ登録番号と関係している場合、その登録番号の参照は、その登録番号を含むいずれの優先権出願にも遡る本出願の提出時に、それに関連したバージョンを意味する。もし前後関係から明らかでなければ、いかなるステップ、特徴、要素又は実施例も他のものと結合して使うことができる。
【技術分野】
【0001】
この明細書は、2008年5月16日に出願した米国仮出願第61/054,109号の利益を主張し、全ての目的について参照によってここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、反復性で理由が不明な発作によって特徴付けられる神経学的状態である (Blume et al., Epilepsia. 2001;42:1212-1218) 。これらの発作は、脳における異常な、過剰な又は同調的なニューロンの活動に起因する一過性の兆候及び/又は症状である (Fisher et al., Epilepsia 46 (4): 470-2) 。てんかんは、単一の疾患ではなく、むしろ非常に多岐に渡る症状であるが、脳の一時的で異常な電気活動に関係している全ての症候群のグループとして理解すべきである。これは、米国における最も一般的で深刻な神経障害の1つであり、多くの場合、長期管理を必要とする。米国において毎年150000人が新たにてんかんを患っているとして診断され、累積生涯発症率は、3%に近づいている (Hauser et al., Epilepsia. 1991;32:429-445; Begley et al., Epilepsia. 1994;35:1230-1243) 。発症率は、生後1年と高齢者が最も高い。同上の患者の30%から40%は、既存の抗てんかん薬を単独で又は併用して使用しているにも関わらず発作が続く (Kwan et al., N Engl J Med. 2000;342:314-319) 。発作をうまくコントロールできない患者は、有意な罹患率と死亡率に直面し、社会的な恥辱及び差別にも直面する。
【0003】
既知の抗てんかん薬は、「従来の」薬物 (例:フェノバルビタール、プリミドン、フェニトイン、カルバマゼピン及びバルプロン酸) や新規の抗てんかん薬 (電位依存性イオンチャネル遮断、抑制性神経伝達の促進、及び/又は興奮性神経伝達の抑制を誘導するもの) を含む。例として、N-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) 受容体に対するグルタミン酸拮抗作用 (例:フェルバメート) 及びα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸 (AMPA) 受容体 (例:フェルバメート、トピラマート) に対するグルタミン酸拮抗作用とニューロン及びアストロサイトに対するγ-アミノ酪酸 (GABA) 再取り込みの阻害 (例:チアガビン) が含まれる。
【0004】
シナプス後肥厚部タンパク質95 (PSD-95) は、興奮毒性及び虚血性脳損傷を介する経路でNMDARと結合する (Aarts et al., Science 298, 846-850 (2002) ) 。この結合は、PSD-95/NMDAR相互作用複合体のいずれかの側にあるモジュラードメインに結合するペプチドをニューロンに形質導入することで分断された。この治療は、NMDAR活性を阻害することなく下流のNMDARシグナル伝達を弱め、培養皮質ニューロンを興奮毒性損傷から保護し、一過性局所的脳虚血状態のラットにおいて脳梗塞体積を減少させた。この結果から、脳卒中及び興奮毒性を介する他の疾病を治療するためにPSD-95/NMDARのペプチドアンタゴニストを使用する提案に至っている。重大な副作用は、第1相試験において、いずれのアンタゴニストに対しても観察されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、てんかんの症状を患っている又は進行させるリスクを有する患者に対する治療法又は効果的な予防法を提供するものであって、患者にPSD-95 PDZドメインがPDZ結合リガンド (別名「PL」) 、例えばNMDA受容体、に対して特異的に結合することを阻害する薬剤の効果的な投与計画を施すことを含む。任意に、上記薬剤は、キメラペプチドであって、NMDA受容体のC末端から3-25アミノ酸又はPSD-95受容体からのPDZドメイン1及び/又は2からなるアミノ酸配列を有し、内在化ペプチドに結合する活性ペプチドを含むキメラペプチドである。任意に、上記活性ペプチドは、[E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記活性ペプチドは、ESDV (配列番号:1) 、ESEV (配列番号:2) 、ETDV (配列番号:3) 、ETEV (配列番号:4) 、DTDV (配列番号:5) 、DTEV (配列番号:6) からなる群より選択されるカルボキシ末端のアミノ酸配列を含む。任意に、上記活性ペプチドは、KLSSIETDV (配列番号:7) を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記キメラペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIETDV (配列番号:8) を含むアミノ酸を有する。任意に、上記キメラペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIETDV (配列番号:8) からなるアミノ酸配列を含む。任意に、上記活性ペプチドは、KLSSIESDV (配列番号:9) を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記キメラペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIESDV (配列番号:10) を含むアミノ酸配列を有する。任意に、上記アミノ酸配列は、YGRKKRRQRRRKLSSIESDV (配列番号:10) からなる。
【0006】
本発明は、PDZ-結合リガンドがPSD-95のPDZドメインに結合することを阻害するPSD-95阻害剤の効果的な投与計画を施すことを含むてんかん治療法も提供する。任意に、上記PSD-95のPDZドメインは、PSD-95PDZドメイン2である。任意に、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが起きた後、少なくとも約1時間経過後に投与される。例えば、てんかんのエピソードが起きた後、少なくとも約3時間経過後に投与される。これは、上記エピソードの持続が約10分未満の場合に特に適している。任意に、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが収まった後、少なくとも約1時間経過後に投与される。例えば、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが収まった後、少なくとも約3時間経過後に投与される。必要に応じて、上記阻害剤は、てんかんのエピソードが収まった後、約1週以内 (例:1日以内) に投与される。任意に、上記阻害剤は、Tat-NR2B9cである。任意に、上記阻害剤は、F-Tat-NR2B9cである。任意に、上記阻害剤は、次の構造を有する。
【0007】
例えば、上記阻害剤は、0625-0057である。てんかんのエピソードの開始、終了及び/又はそのエピソード中は、脳波記録 (例:ビデオ脳波記録 (V-EEG) モニタリング) を用いることで判定できる。
【0008】
好ましい方法として、上記薬剤は、てんかんのエピソード (例:発作)後、少なくとも1時間経過後に投与できる。上記薬剤は、例えば、てんかんのエピソード後、少なくとも約3、4、5、6、8、10、12、16又は24時間経過後に投与できる。上記薬剤は、上記てんかんエピソードの後、数日経過後 (例:開始後、少なくとも約1、2、3、4、5、7、8、9、10又は12日経過後) でも投与できる。上記薬剤は、てんかんエピソードの後、少なくとも1週経過後 (例:エピソード後、少なくとも約1、2又は3週経過後) でも投与できる。任意に、上記阻害剤は、てんかんエピソードの後で投与されるが、そのエピソード後1又は複数時間以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、18又は24時間以内) に投与される。任意に、上記阻害剤は、てんかんエピソードの後で投与されるが、そのエピソード後1又は複数日以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は14日以内) に投与される。任意に、上記阻害剤は、てんかんエピソードの後で投与されるが、そのエピソード後1又は数週以内 (例:エピソード後、約1、1.5、2、2.5又は3週以内) に投与される。
【0009】
任意に、てんかんのエピソード後の投与のタイミングは、例えばエピソードが短い場合は、エピソードの開始時間から、又は例えばてんかん性発作が長い場合は、エピソードの終了時間から、又は脳でてんかん性活動の兆候が観察される任意の時点から測定できる。
【0010】
任意に、上記薬剤は、てんかんのエピソード前又はそのエピソード中では投与されない。他の例では、上記薬剤は、てんかん性エピソード (例:発作) 中でも投与できる。
【0011】
任意に、上記患者は、上記アンタゴニストでの治療を必要とする疾病の内、てんかんを除く疾病を患っていない。任意に、上記患者は、興奮毒性により介される疾病の内、てんかんを除く疾病を患っていない。任意に、上記患者は、脳卒中を患っていない。任意に、上記患者は、興奮毒性により介される疾病を患っていない。任意に、上記薬剤は、てんかんを進行させるイベントを経験してきている上記患者に応答して投与される。任意に、上記患者は、急性てんかんのエピソードを患っている。
【0012】
任意に、上記効果的な投与計画は、上記患者に対するてんかんの診断に応答して施される。任意に、上記方法は、てんかんの治療に効果な又はてんかんの予防を効果的にする第2の投与計画を施すことを更に含む。任意に、上記第2の投与計画は、第2の薬剤を投与することを含む。任意に、上記第2の投与計画は、抗てんかん薬又は複数の抗てんかん薬の組み合わせを含む。
【0013】
一部の方法において、上記患者は、ヒトである。任意に、上記薬剤は、静脈内注射よって又は皮下に投与される。任意に、上記薬剤は、薬剤的に許容可能な担体と共に医薬組成物として投与される。
【0014】
一部の方法は、上記患者をモニタリングし、てんかんの症状及び/又は兆候時の治療効果を評価することを更に含む。任意に、上記キメラペプチドは、0.05〜500 mg、任意に 0.1〜100 mg、 0.5〜50 mg、又は1-20 mgの量で投与される。
【0015】
本発明は、患者のてんかん症状の予防又は治療のための医薬組成物であって、薬剤的に許容可能な担体と先に定義した薬剤を含むものを更に提供する。任意に、上記医薬組成物は、てんかん症状の治療又は効果的な予防に適していることを示すラベルを表示する。
【0016】
本発明は、てんかんの治療又は効果的な予防のための薬物の製造において、先に定義した薬剤の使用を更に提供する。
【0017】
本発明は、てんかん症状の治療法又は効果的な予防法を、てんかん又はそのリスクに苦しむ患者に更に提供するものであって、内在化ペプチドに連結したtSXV ペプチドの効果的な投与計画を施すことを含むものである。
【0018】
任意に、上記効果的な投与計画を、上記患者のてんかん症状の診断後に施し、上記症状を緩和する、又は上記症状の更なる進行を抑制又は阻害する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】てんかん性発作後、徐々に神経細胞が減少する。(A) ナイーブラット及びてんかん性発作の誘導後、3、24及び3日目のラットにおける、NeuN (ニューロン特異的) 抗体を用いて染色した細胞の数を示す脳切片の写真である。(B) てんかん性発作 (てんかん重積状態) の終了後のNeuN陽性細胞密度の定量的経時変化。
【図2】(A) 神経細胞は、てんかん性発作後の様々な時点における、海馬の様々な部位で減少する。各領域は、各カラムの左から右に、コントロール、てんかん性発作後3時間、6時間、12時間、1日、3日、7日、14日及び90日経過後のNeuN陽性細胞のパーセント (コントロールと比較) を示す。(B) 迅速且つ著しい細胞消失が、他の脳領域で起きる。各グループにおける動物の合計は4-8匹であった。
【図3】60分間のてんかん重積状態に続く神経変性の時間的パターン。値は、細胞密度 (# 細胞/mm3) ± 標準偏差を表す。各グループの動物数は、少なくとも4匹であった。
【図4A】Tat-NR2B9cは、Tat-NR2BAAと異なり、海馬の前CA1領域において、神経保護的である。各ドットは、個々の動物を表す。ダッシュ記号は、グループの平均を表す。
【図4B】てんかん性発作中ではなく、その発作後に投与した時に、Tat-NR2B9cは神経保護的であった。
【図5】Tat-NR2B9cは、てんかん性発作中ではなく、その発作後3時間経過後に投与した時に、用量依存的な神経保護作用をもたらした。カラム1及び2:偽対照 (shams) (てんかん性発作を誘導しなかったラット) 及び発作を誘導したラットに、それぞれ生理食塩水を投与した。カラム3、4、5:Tat-NR2B9cをSEの開始後10分経過後に、0.3 nmol/gm、3 nmol/gm及び9 nmol/gmの用量をそれぞれ投与した。カラム6:3 nmol/gm Tat-NR2B9cをSEの終了後3時間経過後に投与した。
【図6】Tat-NR2B9cで処理しなかった動物において、60分間の連続したてんかん性発作の状態を誘導後、1、3、7及び14日間に渡る神経 (NeuN陽性) 細胞消失の経時変化。400X倍率の脳切片を左側に示す。カラムグラフは、様々な時点における、視野あたりのNeuN陽性細胞の総数 ± 標準偏差を示す。
【図7】てんかん重積状態中に、Tat-NR2B9cで処理した動物において、60分間の連続したてんかん性発作の状態を誘導後7日目の神経 (NeuN陽性) 細胞消失の経時変化。400X倍率の脳切片を左側に示す。カラムグラフは、種々の濃度のTat-NR2B9cにおける視野あたりのNeuN陽性細胞の総数 ± 標準偏差を示す。
【図8】てんかん性発作後の3時間経過後にat-NR2B9c処理したラットにおける、てんかん性発作の誘導後の神経 (NeuN陽性) 細胞消失の経時変化。免疫染色した脳切片の低倍率の写真を左側に示す。カラムグラフは、種々の濃度のTat-NR2B9cにおける14日間の回復後の視野あたりのNeuN-陽性細胞の総数 ± 標準偏差を示す。
【図9】CA1領域の海馬台境界付近におけるTat-NR2B9c神経保護作用。Tat-NR2B9cは、生理食塩水で処理した動物と比較して、生存する神経細胞の数を増加させた。一方、Tat-NR2BAAでは、増加させなかった。
【図10】Tat-NR2B9cは、CA4領域に神経保護作用をもたらす一方で、Tat-NR2BAAは、その保護作用をもたらさない。
【図11】SE後処理せず放置したラット (コントロール) 又はSE後3時間経過後にTat-NR2B9c (0.3 nmol/gm及び3 nmol/gm) で処理したラットの14日目の海馬及び側脳室の容積変化であって、ニッセル染色された切片を隣同士で比較したものである。
【図12】Tat-NR2B9cは、ラットにおいててんかん重積状態により引き起こされた認識機能障害を低減させる。SE後8週目で、動物を高架式十字迷路に5分間置き、記録した。
【図13】慢性認識機能障害を検出する目的でSE後8週目にモーリス水迷路で試験した視空間記憶。Tat-NR2B9c治療は、逃避潜時の成績を、とりわけ習得学習の最初の5日間で向上させた。
【図14】脳及び脳内の様々な領域の地図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<定義>
「キメラポリペプチド」とは、複合ポリペプチド、即ち、単一の連続アミノ酸配列であり、2つ (又はそれ以上) の異なった、異種ポリペプチドから構成され、通常、単一のアミノ酸配列として融合されないポリペプチドを言う。
【0021】
「PDZドメイン」なる用語は、約90アミノ酸のモジュラータンパク質 ドメインであって、脳シナプスタンパク質PSD-95、セプテート (septate) ジャンクションタンパク質 ショウジョウバエディスクスラージ(discs large) (DLG) 、及び上皮タイトジャンクションタンパク質 閉鎖帯-1タンパク質 (ZO1) との有意な同一性 (例:少なくとも60%) によって特徴付けられるドメインを言う。PDZドメインは、DLG ホモログ領域 (「DHR」) 及びGLGF (配列番号:11) 反復としても知られている。PDZドメインは、一般的には、コアコンセンサス配列を保持するように見える (Doyle, D. A., 1996, Cell 85: 1067-76) 。典型的なPDZドメインを含むタンパク質及びPDZドメイン配列は、US2006-0148711 A1に開示され、その全てを参照によってここに組み込まれる。
【0022】
「PLタンパク質」又は「PDZリガンドタンパク質」なる用語は、PDZドメインと分子複合体を形成する天然のタンパク質、又は全長タンパク質から分離して(例えば、3-25残基のペプチド断片 (例:3、4、5、8、10、12、14又は16残基) ) 発現した時、そのような分子複合体を形成するカルボキシ末端のタンパク質を言う。上記分子複合体は、例えば、米国2006-0148711 A1に記述されている「Aアッセイ」又は「Gアッセイ」を用いたインビトロ又はインビボで観察が可能である。
【0023】
「PLモチーフ」は、PLタンパク質のC末端のアミノ酸配列 (例:C末端3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、20又は25連続残基) (「C末端PL配列」) 又はPDZドメインに結合することで知れられる内部配列 (「内部PL配列」) を言う。
【0024】
「PLペプチド」は、とりわけPDZドメインに結合するPLモチーフを含む、又はそのモチーフからなる、又はそうでなければそのモチーフに基づくペプチドである。
【0025】
「単離した」又は「精製した」なる用語は、目的種 (例:ペプチド) を、サンプル (例:目的種を含む自然源から得られるサンプル) が存在する混入物から精製されていることを意味する。目的種が単離された又は精製された場合、サンプル中に高分子 (例:ポリペプチド) 種が主に存在し (即ち、分子量ベースで、組成物中の他の個々の種より豊富である) 、そして好ましくは、目的種が、存在する全ての高分子種の内、少なくとも約50パーセント (分子量ベース) 含んでいる。一般的に、単離された、精製された又は実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種を80から90パーセント超えで含む。最も好ましくは、目的種は、本質的に均質になるまで精製され (即ち、混入物の種は、標準的な検出方法では、組成物において検出されない) 、上記組成物は、本質的に単一の高分子種からなる。
【0026】
「ペプチドミミック」は、本発明にかかるペプチドの実質的に同じ構造的及び/又は機能的特徴を有する合成化合物を言う。ペプチドミミックは、完全に合成した、非天然のアミノ酸アナログを含むことができ、又は、部分的に天然ペプチドアミノ酸及び部分的に非天然のアミノ酸アナログのキメラ分子を含むことができる。上記ペプチドミミックは、任意量の天然アミノ酸同類置換を組み込むこともできるが、それは、その置換がミミック構造及び/又は阻害又は結合活性を実質的に変えない場合に限られる。ポリペプチドミミック組成物は、非天然の構造成分の任意の組み合わせを含むことが可能であり、典型的に3つの構造グループ:a) 天然アミド結合 (「ペプチド結合」) 連結以外の残基連結グループ;b) 天然のアミノ酸残基の場所が非天然残基;又はc) 二次構造模倣を誘導する残基、即ち、二次構造 (例:ベータターン、ガンマターン、ベータシート、アルファヘリックス構造等) を誘導又は安定させるための残基。
【0027】
「特異的結合」なる用語は、2つの分子 (例:リガンドとレセプター) 間の結合であって、多くの他の様々な分子が存在する中で、ある分子 (リガンド) が他の特徴的な分子 (受容体) と結合する能力によって特徴付けられる結合、即ち、不均一な分子の混合物における他の分子の内、1つの分子を優先して結合することを示すことを言う。リガンドによる受容体への特異的結合は、過剰な非標識リガンドの存在下で、検出可能な程度に標識したリガンドによる受容体への結合の減少によっても証明される (即ち、結合拮抗実験) 。
【0028】
統計的に有意とは、p値が< 0.05、好ましくは< 0.01そして最も好ましくは< 0.001を言う。
【0029】
「患者」は、ヒト、家畜 (例:ネコ、イヌ) 、畜産用家畜 (例:ニワトリ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ) 、及び実験動物 (例:ラット、マウス) を言う。
【0030】
抗体なる用語は、完全な抗体及びその結合断片を含むものとして用いられる。典型的には、断片は、断片の由来である完全な抗体と、抗原と特異的に結合する他の抗体と競合する。
【0031】
「薬剤」なる用語は、薬理学的活性を有する又は有するであろう化合物を記述するものとして使用される。薬剤は、薬として既知の化合物、薬理学的活性は同定されているが、更なる治療効果評価が行われている化合物、及び薬理学的活性をスクリーニングするためのコレクション及びライブラリーのメンバーの化合物を含む。上記用語は、有機又は無機化合物 (例:抗体を含む ペプチド、タンパク質及び低分子分子 (500 D未満) ) 及び天然物を含む。
【0032】
「症状」又は「臨床症状」なる用語は、患者が気づいた疾病の主観的証拠 (例:前兆) と内科医によって観察された疾病の客観的証拠 (例:てんかん性の神経学的な活動) を含む。
【0033】
<本発明の詳細な説明>
I. 概要
1以上のPLにPDZタンパク質が結合することを阻害する阻害剤が、てんかん対して治療効果があることは、驚くべき発見である。例えば、そのような阻害剤は、てんかんにより引き起こされる神経損傷を低減することができる。上記阻害剤は、PLに結合するPSD-95の阻害剤である。ある態様において、上記阻害剤は、てんかんのエピソード (例:発作) 後に起きる神経細胞死を低減する効果がある。
【0034】
本発明は、てんかん症状の治療に有益な又はてんかん症状の予防を効果的にする薬剤を提供する。本発明は、NMDAR 2BへのPSD-95の特異的な結合を崩壊させるPSD-95アンタゴニストが、この疾患に関するラットモデルにおいててんかんを低減することを明らかにした実施例において記述される結果に部分的に基づく。てんかんは、興奮毒性の結果によるものであると知られていないという点において、この種のアンタゴニストが有益であると提案されている他の疾病とは区別される。メカニズムの理解は、本発明の実施に要求されないが、そのような本発明の薬剤は、NMDAR (特に、NR2A、2B、2C及びD) と後シナプス肥厚95 タンパク質 (即ち、PSD-95阻害剤) との相互作用を阻害することによって、少なくとも部分的には作用すると考えられる。上記薬剤は、PSD-95及びnNOS (GenBank NM_008712) との相互作用もまた阻害するだろう。上記薬剤は、PSD-95ファミリーのメンバーであるSAP102 (Muller, Neuron 17, 255-265 (1996) ) 、SAP97 (GenBank NM_007862) 、及びPSD93 (GenBank NM_0011807) と、PDZを含むタンパク質TIP1 (GenBank NM_029564) の相互作用も阻害するだろう。使用可能な他の阻害剤は、出願人の同時係属している米国出願第12/040,851号 (2008年02月29日出願) 及び第60/947883号 (2007年07月03日出願) に開示され、それらの全てを参照によって両方共ここに組み込まれる。ここで参照することで述べた又は組み込まれた上記阻害剤の任意の適切な組み合わせ又は誘導体も用いることができる。本発明の上記方法は、てんかんに関するいずれの形態に対しても用いることが可能であるが、てんかんのエピソード後に投与した時、特に有益である。
【0035】
II. 薬剤
薬剤には、少なくとも2つの要素を有するキメラペプチド及びペプチドミミックを含む。第一の成分は、活性ペプチドであって、任意にNMDA受容体のPLモチーフ (即ち、PLペプチド) 又はPSD-95のPDZドメインを含む又はこれに基づくアミノ酸配列を有する。本発明において有益な活性ペプチドは、シナプス後肥厚部タンパク質 95 (PSD-95) のPDZドメイン1及び2 (Stathakismによって提供されたヒトアミノ酸配列、Genomics 44(1):71-82 (1997) ) と神経N-メチル-D-アスパラギン酸受容体のNR2Bサブユニットを含んでいる1以上のNMDA受容体2サブユニットのC末端PL配列 (Mandich et al., Genomics 22, 216-8 (1994) ) との相互作用を阻害する。NMDAR2Bは、GenBank ID 4099612、C末端20アミノ酸FNGSSNGHVYEKLSSIESDV (配列番号:12) 及びPLモチーフESDV (配列番号:1) を有する。しかし、阻害は、上記タンパク質の種変異からも示される。使用可能なNMDA及びグルタミン酸受容体のリストを下記に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
ある活性ペプチドは、PSD-95と様々なNMDARサブユニットとの相互作用を阻害する。そのような状況で、上記ペプチドの使用は、興奮性神経伝達に対する種々のNMDARのそれぞれの貢献に関する理解を特別必要としない。別の活性ペプチドは、単一のNMDARに対して特異的である。
【0038】
活性ペプチドは、上記サブユニットの任意のC末端由来のPLモチーフを含む又はそのモチーフに基づき、そして[S/T]-X-[V/L]を含んでいるアミノ酸配列を有する。この配列は、好ましくは、本発明のペプチドのC末端に存在する。好ましいペプチドは、これらのC末端に[E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含んでいるアミノ酸配列を有する。例示的なペプチドは、C末端アミノ酸としてESDV (配列番号:1)、ESEV (配列番号:2) 、ESTV (配列番号:37) 、ETDV (配列番号:3) 、ETEV (配列番号:4) 、DTDV (配列番号:5)、及びDTEV (配列番号:6) を含む。特に好ましい2つのペプチドは、KLSSIESDV (配列番号:9) 、及びKLSSIETDV (配列番号:7) である。内在化ペプチドを除いた本発明のペプチドは、通常、3-25アミノ酸を有し、5-10アミノ酸、そして特に9アミノ酸のペプチド長 (これも内在化ペプチドを除く) が好ましい。一部のそのような活性ペプチドにおいて、全てのアミノ酸は、NMDA受容体のC末端由来である。
【0039】
他の活性ペプチドは、PSD-95とNMDA受容体 (例:NMDA 2B) との相互作用を阻害するPSD-95のPDZドメイン1及び/又は2、又はこれらの任意の小断片を含む。そのような活性ペプチドは、PSD-95のPDZドメイン1及び/又はPDZドメイン2由来の少なくとも50、60、70、80又は90アミノ酸を含むものであって、それらは、Stathakism, Genomics 44(1):71-82 (1997) (ヒト配列) によって提供されたPSD-95のおよそアミノ酸65-248又はNP_031890.1、GI:6681195 (マウス配列) 又は他の種変異体の対応する領域の中に存在する。
【0040】
本発明のいずれのペプチドも、好ましくはそのN末端において、細胞の原形質膜の通過を促進する内在化ペプチドに結合することが可能である。これらのペプチドの例には、HIV由来のtat (Vives et al., 1997, J. Biol. Chem. 272:16010; Nagahara et al., 1998, Nat. Med. 4:1449) 、ショウジョウバエ由来アンテナペディア (Derossi et al., 1994, J. Biol. Chem. 261:10444) 、単純ヘルペスウイルス由来のVP22 (Elliot and D'Hare, 1997, Cell 88:223-233) 、抗DNA抗体の相補性決定領域 (CDR) 2及び3 (Avrameas et al., 1998, Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A., 95:5601-5606) 、70 KDa熱ショックタンパク質 (Fujihara, 1999, EMBO J. 18:411-419) 及びトランスポータント (transportan) (Pooga et al., 1998, FASEB J. 12:67-77) を含む。例えば、上記HIV TAT内在化ペプチドYGRKKRRQRRR (配列番号:38) が使用可能である。HIV Tat内在化ペプチド及び活性ペプチドを含んでいる、好ましい2つのペプチドは、YGRKKRRQRRRKLSSIETDV (配列番号:8、Tat-NR2B9c(TDV)) 、とYGRKKRRQRRRKLSSIESDV (配列番号:10、Tat-NR2B9c(SDV)) である。
【0041】
標準tat配列YGRKKRRQRRR (配列番号:38) の変異体も使用可能である。同時係属出願60/904507 (2007年03月02日出願) で、標準tatペプチドが、N型カルシウムチャネルに結合し、そして阻害し、この結合が様々な副作用を引き起こす可能性があることを報告している。本発明の実施は、メカニズムの理解に依存しないが、tatの膜を通過する能力とN結合カルシウムチャネルへの結合の両方は、ペプチドにおける正電荷を帯びた残基Y、R及びKの異常に高い出現率によって与えられるものであると考えられる。本発明で使用される変異ペプチドは、細胞への取り込みを促進する能力を保持すべきであるが、N型カルシウムチャンネルに結合する能力は低減すべきである。ある適切な内在化ペプチドは、アミノ酸配列 XGRKKRRQRRR (配列番号:39) を含む又はこれからなるものであって、Xは、Y以外のアミノ酸である。好ましいtat変異体は、Fで置換したN末端Y残基を有する。従って、FGRKKRRQRRR (配列番号:40) を含む又はこれからなるtat変異体が好ましい。他の好ましい変異tat内在化ペプチドは、GRKKRRQRRR (配列番号:41) からなる。XGRKKRRQRRR (配列番号:39) に隣接する追加残基が存在する (活性ペプチド側) 場合、上記残基は、例えば、tatタンパク質由来のこのセグメントに隣接する天然アミノ酸、スペーサー又はリンカーアミノ酸であって、2つのペプチドドメインを連結することに典型的に用いられる種類 (例:Gly (Ser)4 (配列番号:42) 、TGEKP (配列番号:43) 、GGRRGGGS (配列番号:44) 、又はLRQRDGERP (配列番号:45) (例:Tang et al. (1996), J. Biol. Chem. 271, 15682-15686; Hennecke et al. (1998), Protein Eng. 11, 405-410を参照)) であってもよく、又は隣接残基を除いた変異体の取り込みをもたらす能力を検出可能な程度に低減させない及び隣接残基を除いた変異体と比較してN型カルシウムチャネルの阻害を有意に増加させない任意の他のアミノ酸であってもよい。好ましくは、活性ペプチドを除いた隣接アミノ酸の数は、XGRKKRRQRRR (配列番号:39) のどちらの側も10を超えない数である。好ましくは、隣接アミノ酸が存在せず、内在化ペプチドは、活性ペプチドのC末端に直接結合する。
【0042】
他のtat変異体であって、N型カルシウムチャネルを阻害することなくPSD-95相互作用を阻害する本発明にかかる、任意の活性ペプチドの取り込みを可能にできるものは、下記表2に表すものを含む。これら内在化ペプチドをスクリーニングし、所望の取り込みの確認及びN型カルシウムチャネルの阻害が欠如していることの確認が推奨される。これらの配列は、N型カルシウムチャネルを阻害することなく輸送能力を維持すること、従って、てんかん治療のためのより優れた治療指数にすることがここでは期待される。
【0043】
【表2】
【0044】
Xは、フリーのアミノ末端、ビオチン分子又は他のキャップ部分であって、これらに限定されないが、H、アセチル、ベンゾイル、アルキル基 (脂肪族) 、ピログルタミン酸、末端にシクロアルキル基を有するアルキル基、アルキルスペーサーを有するビオチン、又は5,6-カルボキシフルオセイン (5,6-FAM) を含むものを意味する。キャップ基のN末端ペプチドに対する化学カップリングは、アミドケミストリー、スルファミドケミストリー、スルホンケミストリー、アルキル化ケミストリーを通じて行われる。加えて、Xは、チロシン以外のアミノ酸であってもよい。
【0045】
内在化ペプチドは、通常、活性ペプチドに結合し、融合ペプチドとしているが、化学結合によって接続されてもよい。2つの構成要素のカップリングは、カップリング剤又は共役剤を通じて成し遂げられてもよい。そのような薬剤の多くは、市販され、S. S. Wong, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press (1991) によって概説されている。架橋剤のいくつかの例は、J-サクシニミジル3-(2-ピリジルジチオ) プロピオネート (SPDP) 又はN,N'-(1,3-フェニレン) ビスマレイミド;N,N'-エチレン-ビス-(ヨードアセタミド) 又は他のそのような試薬であって、6 〜11 炭素メチレンブリッジ (これは、スルフヒドリル基に比較的特異的) を有するもの;及び1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン (これは、アミノ基及びチロシン基で不可逆的な結合を形成) を含む。他の架橋剤は、p,p'-ジフルオロ-m, m'-ジニトロジフェニルスルホン (これは、アミノ基及びフェノール基で不可逆的な架橋を形成);アジプイミド酸ジメチル (これは、アミノ基に特異的);フェノール-1,4-ジスルホニルクロライド (これは、主にアミノ基で反応);ヘキサメチレンジイソシアネート又はジイソチオシアネート、又はアゾフェニル-p-ジイソシアネート (これは、主にアミノ基で反応);グルタルアルデヒド (これは、様々な異なる側鎖で反応) 及びジスジアゾベンジジン (これは、チロシン及びヒスチジンで反応) を含む。
【0046】
上述したこれらのペプチドを任意に誘導体化 (例:アセチル化、リン酸化及び/又はグリコシル化) し、阻害剤の結合親和性を向上、細胞膜を横切って輸送される阻害剤の能力を向上又は安定性を向上させてもよい。具体的な例として、C末端から3番目の残基がS又はTである阻害剤について、この残基を、ペプチドの使用前にリン酸化させてもよい。
【0047】
本発明のペプチドは、任意に内在化ドメイン融合しており、固相合成又は組換え法によって合成してもよい。ペプチドミミックは、科学文献及び特許文献 (例:Organic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY, al-Obeidi (1998) Mol. Biotechnol. 9:205-223; Hruby (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:114-119; Ostergaard (1997) Mol. Divers. 3:17-27; Ostresh (1996) Methods Enzymol. 267:220-234) で記述される、様々な手順及び手法を用いることで合成してもよい。
【0048】
内在化ペプチドを除いた本発明のペプチドは、通常、3-25アミノ酸を有し、5-10アミノ酸、そして特に9アミノ酸のペプチド長 (内在化ペプチドを除く) が好ましい。
【0049】
ペプチド又はペプチドミミックの適切な薬理学的活性は、必要に応じて、ここで記述される動物モデルを用いて確認してもよい。任意に、ペプチド又はペプチドミミックは、例えば、US20050059597 (これは、参照することで組み込まれている) で記述されるアッセイを用いて、PSD-95とNMDAR 2Bとの相互作用を阻害する能力をスクリーニングしてもよい。有益なペプチドは、典型的には、50 μM、25 μM、10 μM、0.1 μM又は0.01 μM未満のIC50値を、そのようなアッセイで有する。好ましいペプチドは、典型的には、0.001-1 μM、更に好ましくは0.05-0.5又は0.05から0.1 μMの間にIC50値を有する。
【0050】
上述したこれらのペプチドを任意に誘導体化 (例:アセチル化、リン酸化及び/又はグリコシル化) し、阻害剤の結合親和性を向上、細胞膜を横切って輸送される阻害剤の能力を向上又は安定性を向上させてもよい。具体的な例として、C末端から3番目の残基がS又はTである阻害剤について、この残基を、ペプチドの使用前にリン酸化させてもよい。
【0051】
薬剤は、PSD-95とNMDAR 2Bとの相互作用、及び/又は上述した他の相互作用を阻害する低分子も含む。適切な低分子阻害剤は、同時係属国際出願番号PCT/US2006/062715 (2005年12月29日出願) (全てを参照によりここに組み込まれる) に記述されている。これらの分子は、PSD-95に結合する化合物ライブラリーのインシリコスクリーニングによって同定され、例示化合物の結合は、実験的に実証された。適切な化合物は、P0-A-B-C-D-Eの一般的な構造を有する化合物を含み、D及び Eは任意であり、P0は、
(R1、R2、R3、R4、及び R5 の1つは、 -COOHであって、R1、R2、R3、R4、及び R5 の残りは、F、H、OCH3 及び CH3からなる群から選択される。X は、 -A-B-C-D-Eであって、A、B、C、D 及び E は、単結合で接続される。Aは、C=O、NH、SO2 及び (CH2)m (m = 0、1、2、3、4、は 5) からなる群より選択される。B は、-OCH2-、C=O、
(R6-R10の1つは-C-D-Eと結合し、残りのR6-R10は、H、OH、F、Cl、Br、I、CH3、CH2CH3及びOCH3からなる群より選択され、n = 0又は1) 、飽和又は不飽和シクロアルキル又は複素環からなる群より選択される環系、又は
(o及びp = 0又は1、q = 0、1、2、3又は4、そしてR11は、置換又は非置換低級アルキル、アミド、チオエーテル、フェニル、フェノール、インドール、イミダゾール、NH(NH2)(N(+)H2) 、COOH、SH、OH、又はHからなる群より選択される) である。
Cは、-O-、C=O、NH、CONH、S、フタルアミド、CH3、H、SO2及び (CH2)r (r = 0、1、2、3、4、又は5) からなる群より選択される。Dは任意であるが、Cが末端でない場合、Dは、-CN-、C=O、NH、S、O、SO2、(CH2)s (s = 0、1、2、3、4、又は5) 、 (CH2)t-OH (t = 0、1、2、3、4又は5)、及び
からなる群より選択される。Eは任意であるが、Dが末端でない場合、Eは、低級アルキル、低級アルコキシ、ケトン、OH、COOH、ニトロソ、N-置換インドリン、又は細胞膜移行ペプチドのいずれかで置換されたシクロヘキシル又はフェニル;又は - (CH2)u-(CHR12R13) ( u = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は 17)であって、R12 及びR13 は、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル、シクロペンタジエンからなる群より独立して選択される; 又はイソプロピル、イソブチル、1-イソプロピル-2-メチル-ブチル、1-エチル-プロピルを含む分岐低級アルキル;又は -NH-COR14であって、R14 は (CR15R16)vH ( v = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17) であり、R15 及び R16 はH、シクロヘキサン、フェニル、及び細胞膜移行ペプチドからなる群より独立して選択される。) である。
【0052】
あるいは、P0は
(t = 0、1又は2であり、R1、R2、R3、R4、R5又はR6のいずれかは、COOHであって、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の残りは、H、CH3、F、及びOCH3からなる群より選択される。またXは、-A-B-C-D-Eであって、A、B、C、D及びEは、単結合で接続される。そしてAは、C=O、SO2、NH、及び (CH2)m (m = 0、1、2、3、4、又は5) からなる群より選択される。Bは、-OCH2-、C=O、又は
(R5-R9 の1つは、-C-D-Eに結合し、残りのR5-R9 はH、OH、F、Cl、Br、I、CH3、CH2CH3 及び OCH3からなる群より選択され、そしてn = 0 又は 1) 、飽和又は不飽和シクロアルキル又は複素環からなる群より選択される環系、又は
(o及びp = 0又は1、そしてR10は、置換又は非置換アルキル、アミド、チオエーテル、フェニル、フェノール、インドール、イミダゾール、NH(NH2)(N(+)H2) 、COOH、SH、OH、又はHからなる群より選択される) である。Cは、C=O、NH、S、フタルアミド、-O-、CH3、H、SO2、及び (CH2)r (r = 0、1、2、3、4、又は5) からなる群より選択される。Dは任意であるが、Cが末端ではない場合、Dは、C=O、-CN-、NH、S、O、SO2、(CH2)s (s = 0、1、2、3、4、又は5) 、及び
からなる群より選択される。そして、Eは、低級アルキル、低級アルコキシ、ケトン、OH、COOH、ニトロソ、N-置換インドリンのいずれかで置換されたフェニル又はシクロヘキシル;又は-(CHR11R12)u (u = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17)であって、R11 及び R12 は、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル、シクロペンタジエンからなる群より選択される; 又はイソプロピル、イソブチル、1-イソプロピル-2-メチル-ブチル、1-エチル-プロピルを含む分岐低級アルキル;又は-NH-COR11であって、R11 は(CHR12R13)s (s = 0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17) であり、R12 及び R13 は、H、シクロヘキサン、フェニル、及び細胞膜移行ペプチドからなる群より独立して選択される。) である。
【0053】
いくつかの好ましい化合物は、次の構造
(R1 は、0-4 R7で置換したシクロヘキシル、0-4 R7で置換したフェニル、- (CH2)u-(CHR8R9)、分岐C1-6 アルキル (イソプロピル、イソブチル、1-イソプロピル-2-メチル-ブチル、1-エチル-プロピル) 及び -NH-C(O)-(CR10R11)vHからなる群より選択されるメンバーであって、各R7 は、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、-C(O)R12、OH、COOH、-NO、N-置換インドリン及び細胞膜移行ペプチドからなる群より選択される、独立したメンバーであり、各R8 及び R9 は、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル (例えば、ハロ、アルキル 及び/又はヒドロキシル基で置換) 及びシクロペンタジエンからなる群より独立して選択され、各R10 及び R11 は、H、シクロヘキサン、フェニル及び細胞膜移行ペプチドからなる群より独立して選択され、R12 は、C1-6 アルキル及びアリールからなる群より選択されるメンバーである。そして、u 及び vは、それぞれ独立して0から20までである。R2、R3、R4、R5 及び R6 の1つは、-COOHであって、残りのR2、R3、R4、R5 及び R6 は、F、H、OCH3 及び CH3からなる群より、それぞれ独立して選択される。) を有する。
【0054】
ある実施形態において、R1は、-(CH2)u-(CHR8R9) である。他の実施形態では、R1は、-(CH2)u-(CHR8R9) を除いた、上記で定義したR1置換基群のメンバーである。
【0055】
好ましい薬剤は、次の構造を有する。
【0056】
他の化合物は、天然又は合成分子からスクリーニングしてもよい。スクリーニングされる薬剤は、自然源(例:海洋微生物、藻、植物、菌類)から得られるものであってもよい。ペプチド又は他の化合物のランダムライブラリーは、PSD-95への結合や、PSD-95とNMDAR及び/又は上記第I節で述べた分子との相互作用を阻害する能力に関してスクリーニングしてもよい。コンビナトリアルライブラリーは、段階的な方法で合成可能な、多くのタイプの化合物に対して作製してもよい。そのような化合物は、ポリペプチド、ベータターンミミック、多糖類、リン脂質、ホルモンプロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーN置換グリシン及びオリゴカルバメートを含む。化合物のラージコンビナトリアルライブラリーは、コードされた合成ライブラリー (ESL) 法によって構築してもよく、この方法は、Affymax, WO 95/12608, Affymax, WO 93/06121, Columbia University, WO 94/08051, Pharmacopeia, WO 95/35503及びScripps, WO 95/30642 (全ての目的を参照により、それぞれ組み込まれる) に記述されている。ペプチドライブラリーは、ファージディスプレイ法によって作製してもよい。例えば、Devlin, W0 91/18980を参照。Aドメインの多量体を構成するアビマー (avimer) は、抗体に対するのと同様の方法を用いてもよい (Silverman et al. Nat. Biotechnol. 23, 1493-4 (2005) ) 。上述した結合及び阻害特性を有する化合物は、てんかんの動物モデルで更にスクリーニングを行ってもよい。任意に、上記化合物のいずれも、医薬品賦形剤を混ぜて医薬組成物としている。
【0057】
III. てんかん
てんかんは、脳におけるコントロールできない電気活動に関する、反復性で理由が不明なイベントによって特徴付けられるCNS疾患であって、一般的には過剰な及び/又は同期した神経活動の形である。てんかんは、脳の一時的で異常な電気活動に関係している全ての症候群のグループである。反復性てんかん性エピソードは、非常に希に起きる場合 (例:何年もの間起きていない) から度々起きる場合 (例:1日に何度も起きる) まである。多くの個人は、エピソードとエピソードの間で無症状である。一般的に言えば、多くのてんかん性発作は、特発性 (要因又は原因不明で起きる) 、突発性 (事前の徴候がなく起きる) 、短期間 (数秒又は数分続く) 、及び自己限定性 (医療の手助けなく、停止すること) である。
【0058】
てんかんの一般的な症状
繰り返し起きる挙動のほとんどのタイプは、けいれん、筋肉のけいれん、意識消失、奇妙な感覚、情動及び/又は挙動を含んでいるてんかん性発作を示すだろう。次の症状のいずれか1以上は、てんかんを示す可能性がある。目まい;失神;錯乱;記憶喪失;頭痛;気分又はエネルギーのレベルの変動;発熱を伴う又は伴わないけいれん;記憶の喪失又は混乱の期間;膀胱又は腸の制御が消失し、続く疲労による偶発的な発作;ぼんやりとするエピソード;質問又は指示に無反応な短い期間;ハッキリとした理由がない突然の硬直又は転倒;不適当な時期のまばたき又は咀嚼のエピソード;放心状態;会話又はコミュニケーションが短期間できなくなる;場違いに又は不自然に見える繰り返し運動;理由のない突然の恐怖、怒り、パニック;物事の見え方、聞こえ方、匂い方又は感じ方の奇妙な変化;腕、足又は体の筋肉のひきつり;及び/又は体中の素早い痙動クラスター。
【0059】
種々のタイプのてんかんの分類
てんかんは、数多くの種々の基準によって分類することが可能であり、この基準は、(1) 第一原因 (又は病因) 、(2) セミオロジーとして知られる、発作の観察可能な症状、(3) 発作の起源となる脳の場所、(4) 別々の部位として、同定可能な医学的症候群、及び (5) もしあれば、発作を引き起こすイベントを含んでいる。国際抗てんかん連盟 (ILAE) による1981年の分類体系は、一般的に使用されているものであり、基本的な病理学又は解剖学よりもむしろ観察 (臨床上の及び電気生理学的なデータに基づくもの) に基づく。1989年に、ILAEは、1つの軸を原因とし、もう1つの軸を脳内における局在範囲とする2軸のスキームによる、てんかんとてんかん性症候群の分類体系を提案した。1997年以来、ILAEは、5軸 (発作の現象、発作のタイプ、症候群、病因及び障害) を有する新規のスキームで活動している。当然、てんかんの多くのケースは、「不明」グループのままであるが、これらの症状は、いずれの単一分類にも当てはまらないためである。
【0060】
てんかん性発作の局在に基づく分類
てんかん性発作は、脳におけるニューロンのてんかん性活動 (典型的には、過剰な及び/又は過同期性、及び通常の自己限定性活動) に関する。てんかん性発作の国際分類は、てんかん性発作を焦点 (また、部分とも呼ばれる) 及び全般てんかん性発作に大まかに分けている。部分発作は、典型的には、初期セミオロジーが、大脳半球のほんの一部の初期活動を示す、又はこの初期活性に一致する発作である。全般発作は、典型的には、初期セミオロジーが、両方の大脳半球に対する少なからずの関与を示す、又はこの初期活性に一致する発作である。部分発作は、脳内に広がる、二次性全般化として知られるプロセスであろう。
【0061】
部分発作は、意識に影響を与える範囲で、更に分類される。影響を与えない場合は、脳の比較的小さな領域 (例:前頭葉、側頭葉、後頭葉又は頭頂葉) に多くの場合関与する単純部分発作 (SPS) である。
【0062】
個人に現れる発作の症状は、根本的な異常神経活動が起こる脳の部分を示すことができる。例えば、任意に局部又は全身の筋肉のけいれん、単収縮、チック及び/又は幻覚が結合される意識の保持は、焦点てんかんを示すことができる。側頭葉SPS症状は、以下を含むことができる。それは、「上腹部が上昇する感覚」既視感又は未視感、記憶のフラッシュバック、突然の恐怖又は歓喜からくる強い感情及び/又は奇妙な味覚又は嗅覚、突然の挙動変化、変わった挙動、攻撃性、怒り又は興奮である。前頭葉SPSは、奇妙な動き、凝り又はけいれんと関係しており、初期には身体の一部に局所的であるが、他の部位に広がり得る。頭頂葉SPSには、奇妙な感覚 (例えばしびれ又はうずくこと) 、灼熱感又は熱感及び/又は身体の一部が実際よりも大きい又は小さい感覚を含み得る。後頭葉SPSは、視覚 (例:視野のゆがみ又は失明、光が点滅して見える、着色した形状及び/又は幻覚) を含み得る。
【0063】
複雑部分 (精神運動) 発作 (CPS) は、一般的には、ほとんど又は全ての発作による意識障害 (部分的な意識のみを有する個人の意識障害) 、応答性の低下及び記憶障害に関係する。側頭葉CPSは、多くの場合、自動症、又は混乱により左右を見渡すことにより明らかにされる。この種のCPSは、通常、2-3分位 (およそラジオの歌の長さ) 続き、そして、その人に5-10分の時間を与えることで、正常な機能が完全回復する。反対に、前頭葉CPSは、側頭葉CPSよりも非常に短く、通常、約15-30秒持続するが、多くの場合、辺縁系の動き (limbic movements) により特徴付けられ、続く回復は早い。
【0064】
全般発作は、身体に対する影響に従って分けられるが、一般的には、意識消失に関係する。これらは、欠神発作 (小発作) 、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代性発作(大発作)及び無緊張発作を含む。全般発作は、これらの運動徴候を基礎として主に分類される。
【0065】
症状に基づく分類:
てんかん性発作は、特徴的な動きのイベントが伴う可能性があり、これには、動きをもたらす筋収縮の増加 (陽性) 又は減少 (陰性) が含まれる。てんかん性発作は、運動徴候を付随する期間によって、以下の通り分類される。
1) 強直性:数秒から数分間の筋収縮が持続して増大すること。
2) てんかん性けいれん:主に近位筋肉及び体幹筋肉の、突然の屈曲、拡張又は混ざった拡張-屈曲であって、通常、ミオクローヌス性の動きよりも持続するが、強直性発作よりは持続しない (即ち、約1秒) 。限られた形として起きることもある (顔を歪めることや、頭を縦に振ること) 。てんかん性けいれんは、たびたびまとまって起きる。
3) 筋緊張異常性:アテトーゼ又はねじれ運動をもたらしている主動筋と拮抗筋の両方の持続的な収縮であって、これが続くと、姿勢異常をもたらす可能性がある。
4) ミオクローヌス性:変り易い局所分布 (軸上の、近位肢、遠位) における筋肉 (又は複数の筋肉) 又は筋肉群の、突然であり、短い時間 (<100ミリ秒) の不随意性単一収縮又は複数収縮。
5) 陰性ミオクローヌス性:先のミオクローニアの所見を除く、<500ミリ秒の強直性筋肉活動の中断。
6) 間代性:定期的な反復性があり、同じ筋肉群に関与し、約2-3 c/秒の頻度であって、且つ長く続くミオクローヌスである。
7) 強直間代性:強直性からなるシーケンスに続く間代性の段階。間代性-強直性-間代性のような異型が、見られることもある。
8) 全般強直間代性発作 (両側性強直間代性発作とも呼ばれ、以前は「大発作」とも呼ばれた):体性筋の両側対称的な強直性収縮の後に続く両側性間代性収縮であって、通常、自律神経の現象と関連する。
9) 無緊張性:1〜2秒以上続く、明らかに進行しているミオクローヌス性又は強直性のイベントを除いた、筋緊張の突然の消失又は減少。
【0066】
明確な運動イベントでは明らかにされない発作は、時々、他の経験的な症状を基礎として分類される。「欠神」発作は、典型的には、短期発作(例えば、うつろになること及び凝視することより、個人が認識を失うもの)である。発作は全くかすかなものであり、認識することが難しく、明らかな動きがないかもしれない。欠神発作は、児童においてより高い頻度の傾向がある (1日につき最大数百人が発作を起こす) が、成人においても起こる可能性がある。一部の児童には、毎日、数百回もの欠神発作が起きている。「非定型」欠神発作は、数秒より長く続き、身体の幾分かの動き (例:肩のけいれん) を含むことができる。
【0067】
感覚発作は、知覚体験を含むものであって、外界の適切な刺激によって引き起こされないものである。「前兆」は、主観的な発作現象を構成するものであって、特定の患者においては、観察可能な発作の症状に先立っても良い。単独の場合は、それは感覚発作を構成する。自律神経の前兆には、自律神経系の関係と整合した感覚が含まれ、心血管、胃腸、汗腺、血管運動及び温度調節の機能が含まれている。自律神経発作には、自律神経系機能 (例:心血管、瞳孔、胃腸、汗腺、血管運動及び温度規則の機能に関するもの) の、客観的に文書化された、特徴的な変形例が含まれる。
【0068】
病因に基づく分類
根本原因に基づくと、てんかんは、特発性タイプ (即ち、根本原因が明らかでないもの) 、症候性タイプ及び原因不明タイプに分けることができる。原因不明てんかんは、特定の根本原因が疑われるてんかんであり、その原因まだ確認されていないてんかんである。症候性てんかんは、脳における既知の構造異常又は損傷によって、又は基礎的な疾病 (例:先天性脳奇形、損傷又は外傷 (出生時又はその後) ) 、損傷が引き起こしている脳に対する酸素の欠乏、永続的な損傷での感染、腫瘍、血管のもつれ、脳卒中及び/又は代謝異常) によって引き起こされる。
【0069】
てんかん重積状態(SE)
多くのてんかん性発作は、不定期で、短い期間 (例:数分未満) であるが、ある症例における個人は、てんかん重積状態 (てんかん性発作の一般的な持続よりも長く持続 (少なくとも約5、10、又は30分) する持続性の発作によって特徴づけられるもの) に苦しむ可能性がある。てんかん重積状態は、個人の意識がベースラインまで戻らない間に2以上の反復性発作の形で起きる可能性がある。上記発作は、全般及び/又はけいれん性であって、意識障害を伴う長期に渡るけいれんが、全般けいれん性SE (GCSE) を構成する。けいれん患者は、容易に認識できるが、GCSEの一部の患者は、最小運動活動がある又はあきらかな運動活動はないが、脳波計 (EEG) 上で発作を示して、進行するだろう。非けいれん性SE (NCSE) を患う個人は、多種多様な臨床症状であって、昏睡、混乱、傾眠、情動変化、遁走状態、失語症、異常な自律神経 (autonomic) /自律神経 (vegetative) の症状、妄想、幻覚及び偏執病を含むものを示す可能性がある。NCSEは、全般 (欠神) 、焦点 (複雑部分) 、又はその他のいずれかに分けることが可能である。「てんかんのもうろう状態」は、その状態の間に注意障害を有する完全な覚醒があり、この状態は、全般NCSE及び焦点NCSEとの間に臨床的共通部分を示すことができる。単純部分SEは、典型的には、完全に意識がある、長期にわたる焦点発作 (例:局限性の手のけいれん) によって示される。
【0070】
他の一般的なてんかん性疾患
一部のより一般的なてんかん疾患及びそれに関連した状態であって、本願明細書において記載されている薬剤と方法によって治療されるものは、以下の1以上を含む:良性家族性新生児発作、早期ミオクローヌス脳症、大田原症候群、幼児期の移動性部分発作、ウェスト症候群、幼児期の良性ミオクローヌスてんかん、良性家族性及び非家族性小児発作、Dravet症候群、HH症候群、非進行性脳症のミオクローヌス状態、中心側頭スパイクを伴う良性小児てんかん、早発性良性の小児後頭葉てんかん (Panayiotopoulosタイプ) 、遅発性小児後頭葉てんかん (Gastautタイプ) 、ミオクローヌス欠神てんかん、ミオクローヌス失立発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群、ランドー・クレフナー症候群、徐波睡眠 (LKS以外の) 中の連続スパイク徐波を伴うてんかん、小児期欠神てんかん、進行性のミオクローヌスてんかん、変り易い表現型を伴う特発性全般てんかん (例:若年性欠神てんかん又は若年性ミオクローヌスてんかん又は全般性強直間代性発作だけを伴うてんかん) 、反射てんかん、特発性光過敏性後頭葉てんかん、他の視覚感受性てんかん、原発性読書てんかん、驚愕てんかん、常染色体優性夜間前頭葉てんかん、家族性側頭葉てんかん、熱性発作プラスを伴う全般てんかん、病巣が変り易い家族性焦点てんかん、症候性 (又はおそらく症候性) 焦点てんかん、辺縁系てんかん、海馬硬化症を伴う近心側頭葉てんかん、特定の病因により定義される近心側頭葉てんかん、位置及び病因により定義される他のタイプ、新皮質てんかん、及び/又はラスムッセン症候群。
【0071】
側頭葉てんかん (TLE) は、成人の焦点てんかんで最も一般的で、薬物に抵抗性のある種類である。TLEは、全体として、てんかんの一般的な種類を構成する。正確な発症率は明白ではないが、薬物耐性てんかんのかなりの割合を形成すると思われる。およそ30% (米国におけるてんかんの2,700,000の症例の中) は、薬物に適切に反応しない。これらの内、最高で半分は、TLEによるものかもしれない。TLE患者から外科的に海馬が切除されると、海馬硬化症 (グリオーシス及びニューロン消失と軸索発芽、神経新生及びシナプス形成より特徴付けられる) を示す。ヒトTLEのこれらの特徴は、安定したリチウム-ピロカルピン動物モデルのTLEで再現される。ピロカルピンは、化学けいれん薬であり、持続性発作により特徴付けられるてんかん状態を誘導し、一連の神経病理学的変化と、それに続く突発性反復性発作 (SRS) の進行が3〜5週以内に起こる。大きな細胞損失が、扁桃体、梨状皮質及び背側CA1海馬に示す。
【0072】
てんかんの診断及び/又は検出
観察可能症状の徴候の他に、てんかんは、様々な手順を用いることで検出及び/又は診断できる。これらは、脳波のような (EEG) 、ビデオEEG、コンピュータ断層撮影 (CT) スキャン、磁気共鳴映像法 (MRI) 、ポジトロン放出断層撮影 (PET) 及び/又は単光子放出コンピュータ断層撮影法 (SPECT) を含むことができる。
【0073】
EEGは、てんかんの検出又は診断の支援に広く用いられる。発作中のてんかん型放電 (IED) の存在は、てんかんを示すことができる。ある種のてんかん様現象 (例:3〜7 Hzのスパイク波放出、ヒプスアリスミア及び/又は全般光発作反応) は、臨床てんかんと強く相関している。中心側頭部或いは後頭部における焦点鋭波、又は中心側頭或いはローランドEEG放電は、てんかんを示すことができる。てんかん原性域の位置には関連性があるが、大多数の側頭葉てんかん患者はIEDを示す一方で、頭皮電極と離れた近心又は基底皮質領におけるてんかん病巣はスパイクを示しそうにない。EEGは、覚醒中及び睡眠中の両方の間で、任意の複数の時点でとることができる。例えば、Smith et al., Journal of Neurology Neurosurgery and Psychiatry 2005;76:ii2-ii7を参照し、全てを参照によって組み込まれる。
【0074】
IV. 治療を受ける患者
治療を受ける患者は、上述したものを含むてんかんの内、1以上の症状又は疾患を患っているヒトを含む。
【0075】
治療を受ける患者は、PSD-95アンタゴニストでの治療が以前から提案されている他の疾病又は疾患にかかっていてもよく又はかかっていなくてもよい。これらの疾病及び状態は、興奮性毒性が介する疾病、脳卒中、てんかん、低酸素症、CNSに対する外傷であって脳卒中と関連していないもの (例:外傷性脳損傷及び脊髄損傷) 、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む。この種の共存症が存在する患者において、本発明の薬剤は、てんかん及び共存症に対して効果的である。
【0076】
任意に、本発明の薬剤は、てんかんと診断される対象であって、興奮性毒性を介した脳卒中及び/又は他の疾患及び/又は虚血性脳障害又は他の疾病の病歴を有しないものに投与される。本発明の薬剤は、てんかんを患っている対象であって、第2の疾病にかかり易いことが又はそのリスクが増加することが知られていないものに投与することもできる。任意に、本発明の薬剤は、てんかんを患っている対象であって、第2の疾病のリスクが減少することが知られている、又は第2の疾病のリスクが増加しないことが知られているものに投与することも可能である。他の例では、本発明の薬剤は、てんかんを患っている対象であって、第2の疾病にかかっていないが、第2の疾病にかかり易いかもしれない、又はそのリスクが増加するかもしれないものに、優先的に投与することも可能である。薬剤は、第2の疾病のリスクが未知である対象に対して投与するこも可能である。第2の疾病は、PSD-95を介した疾病である。任意に、第2の疾病は、脳卒中、興奮性毒性を介した疾病、脳卒中、てんかん、低酸素症、CNSに対する外傷であって脳卒中と関連していないもの (例:外傷性脳損傷及び脊髄損傷) 、アルツハイマー病及びパーキンソン病、先天性脳奇形、永続的な損傷を伴う感染症、CNS腫瘍、血管のもつれ及び/又は代謝異常である。
【0077】
V. 治療の方法、投与のタイミング
本発明の薬剤は、てんかん性疾患 (上述したものを含む) に苦しむ患者、又はその症状が進行するリスクがある患者を治療する目的で使用される。
【0078】
好ましい方法として、薬剤は、てんかんのエピソード (例:発作) 後、少なくとも30分又は1時間経過後に投与できる。薬剤は、例えば、てんかんのエピソード後、少なくとも約2、3、4、5、6、8、10、12、16又は24時間経過後に投与できる。薬剤は、てんかんエピソード後、数日経過後 (例:開始後、少なくとも約1、2、3、4、5、7、8、9、10又は12日経過後) でも投与ができる。薬剤は、てんかんエピソード後、少なくとも1週経過後 (例:エピソード後、少なくとも約1、2又は3週経過後) でも投与できる。
【0079】
任意に、阻害剤は、てんかんエピソード後であって1又は複数時間以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、18又は24時間以内) に投与される。任意に、阻害剤は、てんかんエピソード後であって1又は複数日以内 (例:エピソード後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は14日以内) に投与される。任意に、阻害剤は、てんかんエピソード後であって1又は数週間以内 (例:エピソード後、約1、1.5、2、2.5又は3週以内) に投与される。
【0080】
阻害剤は、任意にある時間範囲内でてんかんエピソード後に投与される。上記時間範囲は、前述した時点の任意の組合せにも基づくことができる。例えば、上記阻害剤は、てんかんエピソード後、少なくとも約1時間経過後であって、エピソード後約2週間以内、例えば、てんかんエピソード後、少なくとも約2時間経過後であって、エピソード後約1週間以内 (例:てんかんエピソード後、少なくとも約3時間経過後であって、エピソード後、約3日 (あるいは1週) 以内) の時間範囲内で投与ができる。
【0081】
任意に、てんかんエピソード後の投与のタイミングは、エピソードの開始時間 (例:エピソードが短い時) から、又はエピソードの終了時間 (例:てんかん性発作が、より長い期間の時) から、又は脳においててんかん活動の兆候が観察される、任意の時点から測定できる。本発明の目的で、脳のてんかん性発作活動で経験する又は観察される症状 (非特異性発作の予感又は発作後の状態を含まない) の開始は、てんかん性エピソードの開始とみなすことができる。同様に、脳のてんかん性発作活動で経験する又は観察される症状の停止は、てんかん性エピソードの終了とみなすことができる。
【0082】
任意に、薬剤は、てんかんエピソード前又はそのエピソード中では投与されない。他の例では、薬剤は、てんかん性エピソード (例:発作) 中でも投与ができる。
【0083】
エピソードが始まった後、治療が施される場合、治療は、任意に、てんかん性エピソードの終結後、少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24又は48時間経過後で施される。多くの場合、本発明にかかる薬剤は、単数回投与で充分である。しかし、複数回投与でも、6-24時間の間隔で投与ができる。
【0084】
所望の所で、治療は、誘因となるイベントであってエピソードを促進するものの前、又は対象の観察可能な発作の発症に先立つ典型的な前兆を対象が経験する後のいずれかで、開始することができる。薬剤は、任意にてんかん性発作前、少なくとも約50.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24又は48時間前に投与される。
【0085】
他の例では、治療は、てんかん性発作の開始後、所望の時点で施すことができる。薬剤は、例えば、てんかん性発作の開始後、少なくとも約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、8、12、24又は48時間経過後に投与される。てんかん性発作は、短い (例:1秒、又は数秒、又は約1又は数分、又は約30分未満続く) 。
【0086】
本発明の方法は、てんかんのための他の治療と組合せることができる。この種の従来の治療は、行動療法、生活様式の変化及び/又は薬物療法を含む。既知の抗てんかん薬は、「従来の」薬物 (例えばフェノバルビタール、プリミドン、フェニトイン、カルバマゼピン及びバルプロ酸) と新規の抗てんかん薬 (電位依存性イオンチャネル遮断、抑制性神経伝達の促進、及び/又は興奮性神経伝達の抑制を誘導するもの) を含む。N-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) 受容体におけるグルタミン酸拮抗作用 (例:フェルバメート) 及びα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸 (AMPA) 受容体におけるグルタミン酸拮抗作用 (例:フェルバメート、トピラマート) とニューロン及びアストロサイトにおけるγ-アミノ酪酸 (GABA) 再取り込みの阻害 (例:チアガビン) が例としてあげられる。
【0087】
好適な抗てんかん薬には、ナトリウムチャネル遮断薬、GABA受容体アゴニスト、GABA再取り込み阻害剤、GABAアミノ基転移酵素阻害剤、グルタミン酸遮断薬と他の作用機序の抗てんかん薬が含まれる。抗てんかん薬は、アルデヒド、芳香族アリル型アルコール、バルビツール酸、ベンゾジアゼピン、臭化物、カルバミン酸、カルボキサミド、脂肪酸、フルクトース誘導体、gaba類似体、ヒダントイン、オキサゾリジンジオン、プロピオン酸、ピリミジンジオン、ピロリジン、スクシンイミド、スルホンアミド、トリアジン、尿素、バルプロイルアミド (バルプロ酸のアミド誘導体) を含む。一般的に使用される抗てんかん薬の具体的な例としては、アセタゾラミド、放出調整されたアセタゾラミド、カルバマゼピン、放出調整されたカルバマゼピン、クロバザム、クロナゼパム、エトサクシミド、ガバペンチン、ラモトリジン、レベチラセタム、オキスカルバゼピン、フェノバルビタール (フェノバルビトン) 、フェニトイン、プレガバリン、プリミドン、ルフィナマイド、バルプロ酸ナトリウム、放出調整されたバルプロ酸ナトリウム、チアガビン、トピラマート、バルプロン酸、ビガバトリン又はゾニサミドがあげられる。そのような薬又はそれらの誘導体の任意の組合せを使うことが可能である。
【0088】
VI. 医薬組成物、投与量及び投与のルート
本発明のペプチド及びペプチドミミックは、医薬組成物の形で投与できる。医薬組成物は、GMP条件で製造される。医薬組成物は、後述する任意の投与量を含んでいる単位用量の形態 (即ち、1回分の投与量) で提供することができる。医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣化、すりつぶし、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥工程の方法により製造することができる。特に、本発明の凍結乾燥したペプチド又はペプチドミミックは、後述する製剤及び組成物で用いることができる。
【0089】
医薬組成物は、従来の方法であって、1以上の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤であり、薬剤的に使用可能な製剤にペプチド又はペプチドミミックを処理することを容易にするものを使用する方法で調製できる。適当な製剤は、選択する投与ルートに依存する。
【0090】
投与は、非経口、静脈、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内又は筋肉内であってもよい。薬をリン酸緩衝食塩水中に溶かしての静脈内投与が好ましい。
【0091】
本発明は、脳の任意の部位における神経変異を治療することを目的とするものであって、脳の様々な領域を図14において示す。
【0092】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは無菌及び実質的に等張である。注入のために、ペプチド又はペプチドミミックは、水溶液で調製してもよく、好ましくは生理学的に許容可能な緩衝液 (例:ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水) 又は酢酸緩衝液 (注入の部位で、不快感を和らげるため) である。溶液は、製剤化剤 (例:懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤) を含むことができる。
【0093】
あるいは、ペプチド又はペプチドミミックは、使用前に適切な媒体(例:発熱物質を含まない水) で構成するために粉末形態であってもよい。
【0094】
経粘膜投与のために、透過すべきバリヤーに対して適切な浸透剤が製造中において用いられる。この投与ルートは、化合物を鼻腔に届けるため又は舌下投与のために用いることができる。
【0095】
経口投与のために、化合物は、治療を受ける患者による経口摂取の為に、ペプチド又はペプチドミミックと薬剤的に許容可能な担体 (例:錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、溶液、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等) とを結合することにより調製できる。経口用固形製剤 (例:粉末、カプセル及び錠剤) のために、適切な賦形剤は、糖 (例:ラクトース、スクロース、マンニトール及びソルビトール) 、セルロース製剤 (例:トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン (PVP) ) のような充填剤、造粒剤、及び結合剤を含む。必要に応じて、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はその塩 (例:アルギン酸ナトリウム) のような崩壊剤を加えることも可能である。必要に応じて、固体投与形態は、標準的な技術を用いて糖衣化又は腸溶性としてもよい。経口用液体製剤 (例:懸濁液、エリキシル及び溶液) のために、適切な担体、賦形剤又は希釈剤は、水、グリコール、油、アルコールを含む。加えて、香料添加剤、防腐剤、着色剤等を加えることが可能である。
【0096】
上述の製剤に加え、化合物はデポー製剤として調製することもできる。この種の長時間作用型製剤は、埋め込み (例:皮下又は筋内) 又は筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、化合物は、適切な高分子材料又は疎水性材料 (例:許容可能な油のエマルジョン) 又はイオン交換樹脂を用いて、又はやや溶けにくい誘導体(例:やや溶けにくい塩)として調製することが可能である。
【0097】
あるいは、他の薬理学的デリバリーシステムを採用できる。リポソーム及びエマルジョンは、ペプチド及びペプチドミミックを運搬するために用いることができる。ある種の有機溶剤 (例:ジメチルスルホキシド) も用いることができるが、通常、より大きな毒性を代償として払う。加えて、化合物は、徐放性システム (例:治療薬を含んでいる、固体ポリマーの半透過性マトリクス) を用いて届けることができる。
【0098】
徐放性カプセルは、それらの化学的性質に応じて、数週間から100日以上の間、ペプチド又はペプチドミミックを放出することができる。治療用薬剤の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化に関する更なる戦略を採用してもよい。
【0099】
本発明のペプチド又はペプチドミミックは、帯電した側鎖又は末端を含むことができるため、それらは、遊離酸又は塩基として、又は薬剤的に許容可能な塩として、上記の製剤のいずれかに含むことができる。薬剤的に許容可能な塩は、遊離塩基の生物活性を実質的に保持し、無機酸との反応により調製される、それらの塩である。製薬としての塩は、対応する遊離塩基形態より、水性及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
【0100】
本発明にかかる薬剤は、意図された目的を達成するのに効果的な量が用いられる。治療上有効な量とは、てんかんの症状を現在経験している患者において、てんかん又はその亜種の内、少なくとも1つの兆候及び/又は症状が悪化することを除去する、減らす又は阻害するのに十分な薬剤の量を意味する。例えば、量が治療上有効であるとみなされるのは、治療を受けている患者 (ヒト又は動物) の集団と治療を受けていない患者のコントロール集団とを比較して、少なくとも1つのてんかんの兆候又は症状を著しく低減する場合である。上記量が治療上有効であるとみなされるのは、個々の治療をうけている患者が、本発明にかかる方法で治療されていない比較患者のコントロール集団の平均結果より、良好な結果を成し遂げる場合でもある。薬剤の予防的に有効な量とは、現在症状を経験していないが、そのような症状が進行している一般集団と比較してリスクが高いとみなされる患者において、少なくとも1つのてんかん又はその亜種の兆候又は症状の進行を遅延する、阻害する又は防止するのに十分な薬剤の量を意味する。例えば、量が予防的に有効であるとみなされるものは、てんかん症状を進行させるリスクのある患者の集団が、薬剤で治療を受け、兆候又は症状の軽減を、薬剤で治療されていないコントロール集団と比較して、促進する場合である。有効な量について言及は、治療上有効な量又は予防上有効な量のいずれかを意味する。有効な投与計画についての言及は、上述した通りに意図した目的を達成するために要求される有効な量及び投与頻度の組合せを意味する。
【0101】
好ましい投与量の範囲は、患者体重1 kgあたり約0.01〜100 μmolの薬剤、任意に患者体重1 kgあたり約0.1〜10 μmolの薬剤、例えば、患者体重1kgあたり約0.5〜2 μmolの薬剤、又は患者体重1 kgあたり約1 μmolの薬剤を含む。一部の方法において、患者体重1 kgあたり約0.1-10 μmolの薬剤が投与される。一部の方法において、患者体重1 kgあたり0.5-5 μmolの薬剤が、6時間以内に投与され、より好ましくは、患者体重1 kgあたり約1 μmolの薬剤が、てんかん性発作後、3-6時間経過後に投与される。他の例において、投与量の範囲は、患者体重1 kgあたり0.05 μmolから0.5 μmolまでの薬剤である。体重1 kgあたりの投与量を、質量比に対する種々の表面積を補償するために6.2で割ることで、ラットからヒトへ変換することができる。同様に、体重1 kgあたりの投与量を、12.3で割ることで、マウスからヒトへ変換することができる。投与量は、ペプチドのモル重量 (ここで、Tat-NR2B9cなら2519) を掛け算することで、モルのユニットからグラムへ変換することができる。投与量は、ペプチドのモル重量を掛け算することで、モルのユニットからグラムへ変換することができる。ヒトでの使用における本発明のペプチド又はペプチドミミックの好適な投与量は、約0.01〜100 mg/kgの患者体重、又はより好ましくは約0.1〜10 mg/kgの患者体重、又は約0.5〜5 mg/kg、又は約1-4 mg/kg 、例えば、約2.6 mg/kgが含み得る。75 kgの患者の場合の絶対重量について、これらの投与量は、0.75-7500 mg、7.5〜750 mgs、37.5-3750 mgs又は約75-300 mgs、例えば、約200 mgsに変換する。変数 (例:患者重量) を含めての概数となるため、投与量は、通常、0.05〜500 mg以内、好ましくは0.1〜100 mg以内、0.5〜50 mg以内又は1-20 mg以内である。
【0102】
あるいは、現在の方法での使用を意図する薬剤 (例:Tat-NR2B9c) は、脳卒中の治療に役立つことが以前から報告され、重篤な有害事象のないこの適応症に第1相臨床試験を行ってきた。脳卒中を治療するために用いる投与量及び投与計画が、てんかん、特に短期間欠性のてんかん発作のためにも使用可能である。
【0103】
投与される薬剤の量は、治療を受けている対象、対象の質量、苦痛の厳しさ、投与方法及び処方する医師の判断に依存する。治療法は、症状が検出可能な間、又はたとえそれらが検出可能でない時でも、断続的に繰り返すことができる。治療法は、単独又は他の薬との併用で提供できる。
【0104】
治療的上有効な薬剤の量は、実質的な毒性を引き起こすことなく治療上の利益を提供できる。ペプチド又はペプチドミミックの毒性は、細胞培養又は実験動物による標準的な製薬手順により測定すること (例:LD50 (集団の50%にとって致死量) 又はLD100 (集団の100%にとって致死量) を測定すること) ができる。毒性と治療上の有効性との用量比が、治療指数である。高い治療指数を示しているペプチド又はペプチドミミックが、好まれる (例えば、Fingl et al., 1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1を参照) 。
【0105】
VII. スクリーニング方法
本発明は、てんかんを治療することに役立つ活性を有するペプチド、ペプチドミミック及び他の化合物をスクリーニングする方法を更に提供する。化合物は、てんかんの動物モデルに投与される。様々な動物モデルは、後述する。
【0106】
上記方法でのスクリーニングに適している化合物は、PSD-95のPDZドメインとリガンド (NDMAR 2Bを含む) の相互作用を阻害することで公知のペプチド、ペプチドミミック及び低分子 (即ち、500 Da未満) を含む。表1に示すNDMAR及びPDZドメインタンパク質の他の対との間の相互作用を阻害することで既知の他のペプチド、ペプチドミミック及び低分子もスクリーニングできる。
【0107】
スクリーニングされる化合物は、天然及び合成の両方、有機及び無機の両方であってもよく、それは、ポリマー (例:オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド) 、低分子、抗体、糖、脂肪酸、ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体、天然構造の類似体 (例:ペプチドミミック、核酸類似体等) 、及び多数の他の化合物を含んでいる。化合物は、多様性ライブラリー (例:ランダム或いはコンビナトリアルペプチド又は非ペプチドライブラリー) から調製できる。ライブラリーは、化学的に合成されたライブラリー、組換え (例:ファージディスプレイライブラリー) 及びインビトロ翻訳ベースのライブラリーを含む。化学的に合成されたライブラリーの例は、Fodor et al., 1991, Science 251:767-773; Houghten et al., 1991, Nature 354:84-86; Lam et al., 1991, Nature 354:82-84; Medynski, 1994, Bio/Technology 12:709-710; Gallop et al., 1994, J. Medicinal Chemistry 37(9):1233-1251; Ohlmeyer et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926; Erb et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422-11426; Houghten et al., 1992, Biotechniques 13:412; Jayawickreme et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1614-1618; Salmon et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11708-11712; WO 93/20242; and Brenner and Lerner, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381-5383に記載されている。ファージディスプレイライブラリーの例は、Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin et al., 1990, Science, 249:404-406; Christian, R.B., et al., 1992, J. Mol.に記載されている。インビトロ翻訳ベースのライブラリーは、WO 91/05058; and Mattheakis et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022-9026に記載されているものを含む。非ペプチドライブラリーの例として、ベンゾジアゼピンライブラリー (例えば、Bunin et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708-4712を参照) が、使用に適しているだろう。ペプトイドライブラリー (Simon et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367-9371) も、用いることができる。用いることが可能なライブラリーの他の例は、ペプチドにおけるアミドの官能性が、パーメチル化され、化学的に変換されたコンビナトリアルライブラリーが生成するものであって、Ostreshら (1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11138-11142) によって記述されているものである。
【0108】
てんかんの動物モデル:
多数の種々のてんかん状態の動物モデルは、よく特徴付けられている。例えば、 Models of Seizures and Epilepsy : Asla Pitkanen, Philip A. Schwartzkroin and Solomon L. Mosheにより編集, ISBN: 978-0-12-088554-1; Elsevier Inc., Copyright (C) 2006を参照し、この全体を参照することで組み込まれる。動物は、ショウジョウバエから霊長類まで変更することが可能であり、これらの動物において、てんかんは、化学物質を投与すること、又は発作及び/又はてんかんが特発的に進行する検体を対象とした遺伝的スクリーニングすることを含む様々な方法で引き起こされる。動物モデルの例は、熱性けいれんに似た症状を呈する、異常高熱により誘導される発作を起こすラット、マウスの変異体 (例:トッテラー (totterer) 、スターゲイザー (stargazer) 、レサージック (lethargic)) 及びのようなヒト欠神てんかん (例:短期間の行動停止 (即ち、ジロジロ見ること又は凝視すること) ) に類似する特徴が共通するスローウェーブてんかん (SWE) マウスを含む。
【0109】
側頭葉てんかん (TLE) 患者において観察される複雑部分発作についてよく特徴づけられた動物モデルも記述されている。カイニン酸及びピロカルピン (PILO) 発作モデルは、おそらくTLEに関して最も一般的に研究された化学的誘導動物モデルである。燃え上がり現象 (初期の亜けいれん性電気刺激を反復して病巣へ適用することが、最終的に強度の部分及び全般けいれん性発作になる現象) は、TLEの有益なモデルであり続ける。
【0110】
加えて、いくつかの遺伝的にてんかん易発性の種は、感光性及び聴原性反射てんかんを研究するための動物モデルとして記述されている。これらは、ヒヒギニアヒヒ、ニワトリのファイオミてんかん (FEpi) 株、遺伝的にてんかん易発性のラット (GEPR) 及びDBA/2マウスを含む。
【0111】
様々な方法は、動物の全般強直間代性発作又は欠神発作を誘導することに利用でき、それらは、非常に発作を起こしやすい又は突発性発作患っているいずれかの一部の遺伝的動物モデルである。次は、この種の発作タイプを引き出す2、3の従来の方法である。
【0112】
けいれん性発作 (強直性後肢伸展/屈曲の次に間代性活性が続くことによって、特徴づけられるもの) は、新規な抗けいれん薬の迅速なスクリーニングのための普及している方法としてあり続けている最大電気ショックによって、確実に誘導される。
【0113】
ペンチレンテトラゾール (PTZ) は、おそらく最も広く使われている、全身に投与されるけいれん誘発薬である。PTZの反復注入は、電気燃え上がり現象に類似する化学燃え上がり現象の一種をもたらすことができる。高用量でのPTZ (通常、皮下に又は静脈に投与される) は、ラット又はマウスに対して強直間代性けいれんを確実にもたらし、これは新薬のけいれん感受性及びスクリーニングの両方にとって迅速且つ効率的な測定である。低用量で全身的とすれば、PTZは、欠神様の発作を誘発するために用いることもできる。
【0114】
フルロチル (ヘキサフッ化エーテル) は、齧歯動物の再現可能なけいれん発作パターンを誘導するために用いる化学吸入薬である。この方法では、ラット又はマウスを、中央で投与されるフルロチルが拡散する気密室に置き、10-20分後に、フルロチルが、まず最初に、ミオクローヌス性けいれんを引き起こし、次に重度の間代強直性けいれんが続く。最後に、全般欠神発作の他の実験動物モデルは、視床刺激、ネコの全身ペニシリン投与、g -ヒドロキシ酪酸塩処理 (GHB) 及び側脳室内オピエートとラット (GAERS, WAG/Rij, SER) 及び既に述べたマウス(スターゲイザー、トッタリング (tottering) 、レサージック、スローウェーブてんかんマウス、モカ (mocha) 及びダッキー (ducky) ) の遺伝モデルの種類を含む。
【0115】
上記のそれらの動物モデルは、インビボとインビトロの両方で、部分又は全般発作関連の現象に対する基本的なメカニズムを理解する際に貴重であり、新規な薬物療法を評価することための標準的な方法である。Sarkisian, Epilepsy & Behavior 2, 201-216 (2001) は、全体を参照によって組み込まれる。
【実施例】
【0116】
<実施例1>
<てんかんのピロカルピンラットモデル>
A. 大腿静脈の挿管
動物を、3%のイソフルランの連続供給下でおよそ40分間麻酔し、手術の間、加温パッドの上に横臥位で置いた。手術部位は、ベタジン (Betadine) 石鹸で清潔にし、剃毛した。3 cmの腹部皮膚の切開を、腹部の右下部位から、右大腿部に沿い、大腿静脈、大腿動脈及び座骨神経の位置を示す識別可能なしわの隣に作成した。内転筋の最小解離を、血管の束を視覚化するために実行し、大腿静脈、大腿動脈及び座骨神経を慎重に分離した。小さい切れ目を大腿静脈に作成し、P10ポリエチレンカニューレ (ヘパリン (1 mLのヘパリン/1 L PBS) を含んでいる生理食塩水を予め充填している) を4〜5 cm挿入した。複数の4.0絹縫合糸で、カニューレを固定するために、大腿静脈、大腿動脈、座骨神経周辺で結紮した。動物を横臥位で置き、0.5 cmの背側正中皮膚切開を肩甲骨の間で作成した。端が尖った長さ15 cmの金属管を、背側正中切開から挿入し、腹側の大腿切開まで皮下にトンネルを作成した。カニューレの自由末端が、金属管で供給され、そして背側正中切開から押し出された。金属管を取り除き、そして、腹側の皮膚切開を閉じた。カニューレを、形成外科的ボタンを介して織ることで固定し、ヘパリン含有生理食塩水で洗浄し、23-ゲージピンで封止した。背側の切開を閉じ、形成外科的ボタンは肩甲骨 (続く5日間の回復期間の間、動物が届かない重要な領域) の間に4.0絹縫合糸で植え付けた。
【0117】
B. てんかん性発作の誘導
350〜400グラムの間の雄のウィスターラットを、化学けいれん薬ピロカルピンの全身注入の前17〜24時間に、塩化リチウムで前処理 (ip; 3 mEq/kg) した。ピロカルピン (ip; 10 mg/kg) を、てんかん重積状態 (SE) の発症までの30分ごとに投与した。これを、意識消失及び連続する明白な発作活動として定義した。低用量ピロカルピン (LDP) 法において、LEH又はウィスターラットは、ピロカルピン (30 mg/kg, i.p.) の最初の注入を施した。SEが60分以内に発達しない場合、2回目のピロカルピン注入 (15 mg/kg) を施した。第2の手順である、繰り返し低用量ピロカルピン (RLDP) 法において、ピロカルピン (10 mg/kg, i.p.) を、30分ごとにLEH又はウィスターラットに投与 (Glien et al, Epilepsy Res. 2001 Aug ;46 (2):111-9に記述) し、ラットが、全般、クラス4/5発作を経験するまで投与した。ラットは、大体、その後まもなくSEに進行した。最初のクラス4/5発作の30分以内でSEに進行しなかった動物は、最高6回の注入を30分間隔で追加のピロカルピン注射を受けた。SEは、ジアゼパム (ip; 4 mg/kg) によるSEの発症後、1、3及び5時間で終了した。SE中に発生した明白な発作活動は、以下の通り、修正ラシーンスケール (Racine, 1972) を用いたステージに記録した。1) 口の動き、2) 口の動き及び点頭、3)前肢クローヌス、4) 前肢クローヌス及び立ち上がり、5) 前肢クローヌス、立ち上がり及び一度の転倒、6) 前肢クローヌス、立ち上がり及び複数回の転倒、7) 走ること及び跳ぶこと。我々の修正ラシーンスケールは、オリジナルのクラス5から3つのステージに分割し、複数回の転倒に関する発作活動 (6) と走ること及び跳ぶこと (7) を更に加えた。
【0118】
C. てんかん性発作に続く神経変性の評価
動物をケタミン及びロンプタム (romptum) により麻酔し、SE誘導後2週目に、パラホルムアルデヒド (4% PFA;0.1Mリン酸緩衝液、pH 7.4) で経心的にかん流した。脳を取り出し、PFAで終夜固定した後、30%スクロース含有PBSで平衡化した。脳を-35℃のメチルブタンで凍結し、凍結乾燥を防ぐ目的で凍結した30%スクロース含有PBSを含むシンチレーションバイアル中にて-70℃で、更に使用するまで保存した。脳は、凍結ミクロトームを使用して40 μmの冠状に切片し、不凍液 (15%グルコース、30%エチレングリコール、50 mMolリン酸緩衝液、pH 7.4) を含む24穴プレートで-20℃にて保存した。
【0119】
動物ごとに、神経細胞を、NeuN (神経細胞特異的抗体) で免疫組織化学的染色によって定量化した。フリーの浮遊切片を、神経特異的一次抗体NeuN (1:1000) (0.3% Triton X-100及び2%ヤギ血清)を用いて、終夜4℃でゆっくり振盪するインキュベートの前に、0.1 M PBSで洗浄 (3分×2) した。切片を0.1 M PBSで洗浄 (3分×2) し、Cy3 (1:200) と共役した抗マウス二次抗体及び0.3% Triton X-100とで室温で2時間インキュベートした。脳切片を洗浄 (3分×3) し、ゼラチンで被覆したスライドにマウントした。切片を1分間の100%アルコールに浸す前に空気乾燥を行い、3分間のキシレンできれいにし、パーマウントで覆った。
【0120】
NeuN免疫反応細胞を、背側の海馬 (ブレグマ-2.8〜-3.8 mm) の体軸に沿って240 μmの間隔で離れている3つの切片で、光学分析装置法 (40X対物) を用いてカウントした。選択された切片は、動物間で比較可能であった。CA1領域の中では、切片あたりの3つの計数ボックス(計数フレーム=60 X 120 μm、分析高=40 μm)を、体系的にランダムな方法で分散した。0.7 μm間隔で重なることで得られる計数フレームのZスタックイメージは、Zeiss LSM Image Browserソフトウェアで2564 x 2051 JPEGのギャラリー画像として保存しエクスポートした。JPEGのギャラリー画像は、ADOBE Photoshop 7.0を用いてインポートし、定量した。動物あたり合計9つの計数ボックスを、前CA1領域について定量化した。結果は、計数フレームあたり定量化した細胞の総数の平均として表している。
【0121】
<実施例2>
<ラットモデルにおける脳のてんかん性発作の効果>
てんかん重積状態を、実施例1で説明したように、雄のウィスターラットで誘導した。これらのラットの脳におけるてんかん性発作の影響を、以下で特徴付けた。
【0122】
A. SE誘導神経病理学の特性評価
神経変性は、光学分析法と神経を定量するためのNeuN染色で立体的分析を用いて評価した。動物あたり3つの冠状切片を分析し、60-100のニューロンをナイーブ動物の脳切片あたりで計数した。細胞計数を実行した (SEの終了後、3時間、6時間、12時間、24時間、3日、7日、14日及び3ヵ月経過後) 。すべての動物は、3週から8週の間でSRSが進展した。少なくとも4匹の動物は、すべての群に含まれていた。現在まで、以下の脳領域:海馬亜領域の腹側CA1、CA2、CA3、CA4、後背側CA1及び後腹側CA1 (D&V) 、扁桃体外側基底核 (BLN) 、側部後視床核 (LPTN) 及び梨状皮質の錐体細胞層を分析した。
【0123】
後CA1 (図1及び2を参照) を除いては、最大細胞消失は、すべての脳領域で3日以内に発生した。突発性反復性発作の発生は、これらの脳領域の細胞消失に更に寄与しなかったことから、神経変性は、持続したSEの結果として特異的に発生することを示している。海馬のCA2及びCA3亜領域は、細胞消失の影響を受けにくいようにいくらか見えた (図2及び3) 。前及び後CA1亜領域は、海馬で最も厳しい影響を受けた領域 (>70%の細胞消失) であった。加えて、LPTN、BLN及び梨状皮質も、厳しい影響 (<80%の細胞損失) を受ける。
【0124】
ニューロン特異的抗体NeuNでの染色は、NeuN陽性細胞の欠如、即ち、神経変性プロセス終了によって神経変性を検出する。反対に、フルオロジェイドB (FJB) 染色は、病理学的評価の前に死ぬニューロンを検出する。SE後のNeuN及びFJBの二重染色は、神経変性の早期発見を可能にした。例えば、扁桃体外側基底核において、FJB染色は、SE後、3時間経過時という早い時期にニューロンの8 ± 13%に、6時間経過時のニューロンの30 ± 6%に、そして、24時間経過時のニューロンの54 ± 7%に現れた。従って、SE後の神経変性に寄与するプロセスの迅速な開始は、SE後6時間経過時という早い時期に検出した細胞消失で検出された。
【0125】
<実施例3>
<TAT-NR2B9Cは、てんかん性発作に続く背側CA1領域におけるニューロン消失を救済する>
てんかん重積状態を、実施例1で説明したように、雄のウィスターラットで誘導した。Tat-NR2B9c (生理食塩水中に3 nmol/gm) は、1分あたり60 μmの定率で、SE終了後3時間経過後に大腿静脈を経て投与された。ラットは、SE後14日間回復し、そして分析された。
【0126】
神経変性を、実施例1及び2で説明したように、NeuN陽性細胞の消失に関して評価した。てんかん性発作の誘導の後の神経細胞消失の典型的時間経過を、図6に示す。細胞消失は、SE後、約7日目で最大で、14日目まで減少したままである。
【0127】
図8に示すように、てんかん性発作の誘導後、約3時間経過後にラットへ投与した時、Tat-NR2B9cが用量依存的にニューロン消失を救済した。対照的に、コントロールペプチドTat-NR2BAAは、神経変性 (図4A) を減少させなかった。
【0128】
逆に驚くべきことは、Tat-NR2B9cを、持続性てんかん性発作の状態中、ラットへ投与しても、ニューロン消失 (図7) を減少させなかった。この結果は、脳卒中の前又はその1時間経過後にアプライした時、Tat-NR2B9cが、脳卒中の動物モデルにおいて、非常にニューロン保護的であり (Aarts et al, 2002) 、神経学的な発作後3時間経過後及びその後まで効果的であることを示している以前の研究を踏まえると特に驚きである。
【0129】
Tat-NR2B9cは、特に前CA1領域に対して保護的であった一方で、ネガティブコントロールペプチドTat-NR2BAA (PSD-95アンタゴニストとして作用できない) は、保護的ではなかった (図4A) 。てんかん性発作と関連する投与のタイミングに依存するTat-NR2B9cの効果の差を比較したものを、図5及び4Bに示している。てんかん重積状態中、Tat-NR2B9cを投与されたラットのニューロン消失は、たとえ高用量のTat-NR2B9c (9 nmol/gm) であっても、未治療のラットのニューロン消失 (図4B、5及び7) と同程度であった。顕著な対照として、低用量のTat-NR2B9c (0.3 nmol/gm及び3 nmol/gm) を、てんかん重積状態の終了後に与えた時、ニューロン保護 (図4B、5及び7) を与えた。
【0130】
<実施例4>
< TAT-NR2B9Cによる、てんかん性発作に続く神経保護作用の組織化学的可視化>
発作は、雄のウィスターラットにおいて誘導し、実施例1及び2で説明したように、Tat-NR2B9cを、発作の後3時間経過後に投与した。脳を固定し、切片とし、上述の通り、NeuNで免疫染色した。背側海馬の冠状切片は、2.5xの顕微鏡下で視覚化され、代表的な画像が下で示される。図8の左パネルは、Tat-NR2B9c投与の結果として増加したNeuN免疫染色であって、より高い量のTat-NR2B9cで得られた最善の結果 (非SEコントロールに最も近い) で示している。
【0131】
海馬の背側CA1領域の切片を、40x倍率で見た時、NeuNで染色した細胞の数は、食生理食塩水処理したラットと比較して、ピロカルピン処理したラットで著しく減少した。この効果は、Tat-NR2B9c (図8、左パネル) の投与によって、逆転した。
【0132】
<実施例5>
< TAT-NR2B9Cは、SEに続く側脳室のサイズを著しく救済する>
ピロカルピン及びTat-NR2B9c投与、及び脳切片の固定後に、上述の通り、切片を6枚目ごとに、クレシルバイオレットによるニッスル染色のために用いた。切片をマウントし、ゼラチンを被覆スライドで空気乾燥をした。切片を、100%、95%、70%及び50%のアルコールシリーズで、それぞれ5分間再水和した。切片を、水で洗浄 (30秒×2) し、50%で5分間 (又は5分未満) 、70%で5分間 (又は5分未満) 、95%で5分間 (又は5分未満) 、100%で5分間 (又は5分未満) 及び100%で5分間 (又は5分未満) のアルコールシリーズで脱水した。差異は、50%及び70%のアルコール勾配で最大限に発生する。切片を、5分間のキシレンできれいにし、パーマウントで覆い、例えば、40X倍率で見た。
【0133】
発作を受けたラットが非常に大きい側脳室を有した一方、Tat-NR2B9cを投与することで、ピロカルピンを与えていなかったラットで見られるサイズにまで側脳室のサイズを下げた。
【0134】
図11は、SE後3時間経過後にTat-NR2B9c処理した動物の側脳室サイズの劇的な減少を示す。ニッスル染色した切片の比較において、SE後3時間経過後にTat-NR2B9c処理した動物は、未処理の動物と比較してより顕著に小さい側脳室を有した。
【0135】
<実施例6>
< Tat-NR2B9cが、てんかん性発作により引き起こされる認識機能障害を改善する>
我々は、RLDP手順により誘導した60分間のSEに対する有力な行動効果を調査した。視空間記憶を、SE後8週経過後にモーリス水迷路 (MWM) を用いて調査し、慢性認識機能障害を検出した。MWMは治療薬に関する研究で特に有用で、その理由は、前CA1領域の神経変性の重症度は、成績 (逃避潜時) と強く相関しているためである (Clasussen et al, 2005) 。4つのグループの動物を、本分析で比較した。:1) ピロカルピンの代わりに生理食塩水を与え、SEに入らなかったコントロール、2) 低用量のピロカルピンを最高6回与えたが、SEに入らなかった非SEグループ、3) RLDP手順による誘導でSEに入ったSEグループ、そして4) RLDP手順による誘導でSEに入り、大腿静脈カニュレーション (Tat-NR2B9cで得られた結果は、セクション4) で述べるだろう) を介してSE後3時間経過後にTat-NR2B9c薬を投与したTat-NR2B9cグループ) 。すべてのグループにおいて、少なくとも6匹の動物が含まれていた。
【0136】
Tat-NR2B9cで治療した又は治療していないてんかん性マウスの様々な認識機能を以下で評価した。
i) 高架式十字迷路:
【0137】
高架式十字迷路を用いて、探索行動を調査した。SE後8週経過後に、動物を、高架式十字迷路に5分間置き、ビデオテープで録画した。SE動物は、コントロール (86%) と比較して、より少ない時間 (50%) をクローズドアームで費やし、オープンアームへ入ったより多くの数とクローズドアームへ入ったより少ない数を得た (図12A-D) 。さらに、コントロール (図12E及びF) と比較した時、SE動物は、オープンアームへの関心及び立ち上がるエピソードの頻度が減少した。Tat-NR2B9c治療動物は、未治療の動物と比較した時、探索行動におけるこれらのSE効果を減少させた。
ii)モーリス水迷路:
【0138】
我々は、連日に渡る反復試験の成績で、SEラットが、明白な好転を示すことがわかった (図13) 。我々の研究において、動物を、1日で完了する6つの試験で、14日間連続のMWMを課題として訓練した。図13Bにて図示するように、SE動物は、すべての訓練日に渡って、試験の間で好転 (試験1-2から試験4-5の間の度合いが検出される) を示した。対照的に、非SE動物は、6日目の後は更なる好転を示さないが、これは、プラットフォームの位置を既に学んでいるためである。 図13Aは、SE動物が、連日に渡る逃避潜時で適度に好転することを示す。しかし、非SE動物は連続する6日間の内で課題を学ぶが、その後、逃避潜時で更なる好転はなかった。
【0139】
前述の本発明が、理解の明快さのために詳述したにもかかわらず、特定の変更形態が添付の特許請求の範囲内で実施できること明らかである。すべての刊行物、文書、登録番号及び上記引用等は、あたかも各々が個々に意味されたかのように、同程度にすべての目的をそれらの全部において、引用することで本願明細書に組み込まれている。シーケンスの複数のバージョンが異なる時間で同じ登録番号と関係している場合、その登録番号の参照は、その登録番号を含むいずれの優先権出願にも遡る本出願の提出時に、それに関連したバージョンを意味する。もし前後関係から明らかでなければ、いかなるステップ、特徴、要素又は実施例も他のものと結合して使うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
てんかんの治療においてPSD-95のPDZドメインへのPDZ結合リガンドの結合を阻害するPSD-95阻害剤の使用。
【請求項2】
前記PSD-95のPDZドメインが、PSD-95 PDZドメイン2である、請求項1の使用。
【請求項3】
前記てんかんのエピソードは、約20分を超えて持続している持続性てんかん性発作を含む、又は2つの発作の間で意識が戻ることがない、少なくとも2つのてんかん性発作を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記てんかんは、側頭葉てんかんを含む、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
てんかん活動が、脳のCA1領域において観察される、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記てんかんのエピソードは、約10分未満の持続を有する、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記てんかんのエピソードの持続は、脳波を用いて判定される、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、少なくとも約1時間経過後に投与される、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、少なくとも約3時間経過後に投与される、請求項1から8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、約1週以内に投与される、請求項1から9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、約1日以内に投与される、請求項1から10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記阻害剤が、Tat-NR2B9cである、請求項1から11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記阻害剤が、F-Tat-NR2B9cである、請求項1から12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記阻害剤が、0625-0057である、請求項1から13のいずれかに記載の使用。
【請求項1】
てんかんの治療においてPSD-95のPDZドメインへのPDZ結合リガンドの結合を阻害するPSD-95阻害剤の使用。
【請求項2】
前記PSD-95のPDZドメインが、PSD-95 PDZドメイン2である、請求項1の使用。
【請求項3】
前記てんかんのエピソードは、約20分を超えて持続している持続性てんかん性発作を含む、又は2つの発作の間で意識が戻ることがない、少なくとも2つのてんかん性発作を含む、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記てんかんは、側頭葉てんかんを含む、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
てんかん活動が、脳のCA1領域において観察される、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記てんかんのエピソードは、約10分未満の持続を有する、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記てんかんのエピソードの持続は、脳波を用いて判定される、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、少なくとも約1時間経過後に投与される、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、少なくとも約3時間経過後に投与される、請求項1から8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、約1週以内に投与される、請求項1から9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記阻害剤は、てんかんのエピソード終了後、約1日以内に投与される、請求項1から10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記阻害剤が、Tat-NR2B9cである、請求項1から11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記阻害剤が、F-Tat-NR2B9cである、請求項1から12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記阻害剤が、0625-0057である、請求項1から13のいずれかに記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2011−520900(P2011−520900A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509662(P2011−509662)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043831
【国際公開番号】WO2009/140416
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505088020)アルボー ビータ コーポレーション (12)
【住所又は居所原語表記】6611 Dumbarton Circle Fremont, California United States of America
【出願人】(509011178)ノノ インコーポレイテッド (8)
【住所又は居所原語表記】88 Strath Avenue Toronto,Ontario Canada
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043831
【国際公開番号】WO2009/140416
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505088020)アルボー ビータ コーポレーション (12)
【住所又は居所原語表記】6611 Dumbarton Circle Fremont, California United States of America
【出願人】(509011178)ノノ インコーポレイテッド (8)
【住所又は居所原語表記】88 Strath Avenue Toronto,Ontario Canada
【Fターム(参考)】
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