説明

なべ等の調理器に対する調理具用のストッパ

【課題】なべ等の中に調理具がズリ落ちないようにすることができて、なべ等の大きさに合わせた位置決めが簡単に行えて使用しない場合には簡単に外すことができ、しかも梱包時において緩衝材の役目も果たすことのできるストッパを、簡単な構造によって提供すること。
【解決手段】ストッパ10全体をシリコンゴムにより一体成形するとともに、その中程に、柄21の断面形状よりも僅かに小さい挿通孔11を形成し、挿通孔11以外の部分の一部を、調理器30の縁部31に係止できる係止部12として、挿通孔11内に柄21を挿通することによりこれに位置調整自在に取り付け得るようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、なべやフライパン等の調理器に対する調理具のストッパに関し、特に、なべ等に対する位置調整を簡単に行えるようにしたストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理を行う台所で使用することの多い玉杓子(所謂お玉)や網杓子、フライ返し、各種トング、ヘラ等の調理具は、作業者によって持たれる「柄」と、その先に設けられて、実際の作業を行う作用部、つまり杓子部や返し部を有するものであり、これらの杓子部や返し部をなべやフライパンの中に入れたままにして、その「柄」をなべやフライパンの縁に掛けておくことがよくある。
【0003】
このようなときに、調理具がなべやフライパンの中にズリ落ちてしまうことがあり、例えばみそ汁に浸かってしまった玉杓子を中から取り出さなければならないといったことになる。このような、なべ等の中へのズリ落ちを防止するために、特許文献1〜特許文献3に示されているような種々な工夫がなされてきている。
【特許文献1】実開平7−3542号公報、要約、代表図
【特許文献2】実公平8−39号公報、要約、代表図
【特許文献3】特開2004−321311号公報、要約、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された「カギつきおたま」は、「おたまが鍋の中に滑りおちるのを防ぐ」ことを目的としてなされたもので、図6に示すように、「(イ)の手もち部を持ち(ハ)の具もり部に具をもりお椀に具をうつし、鍋におたまの(ロ)のカギ部を掛ける」ように構成したものである。
【0005】
また、特許文献2に示された「お玉などの調理道具」は、「お玉で鍋の中味をかきまわしたり取り出したりするときの、係止部が邪魔になって使用しずらいという欠点を除去し、調理道具を鍋の縁に掛け止めして鍋の中にずり落ちることがなく、且つ使用中に係止部が邪魔にならない調理道具を提供すること」を目的としてなされたもので、図7に示すように、「柄1の後端部に把持部2を有するお玉などの調理道具であって、別体の細長い掛止部材3が柄1に取付けられ、この掛止部材3はその端部が把持部2の前端の位置から後端の位置まで反転できるように把持部2のほぼ中央部を中心に回動可能に取付けられ、且つ掛止部材3はその端部が把持部2の先端及び後端の位置にあるときに把持部2に固定されるように、掛止部材3と把持部2との間に係止手段が介在しており、掛止部材3の端部が把持部2の先端の位置に固定されたときに、当該調理道具を鍋などの容器の縁に係止するための掛止部4が掛止部材3の端部に設けられていることを特徴とするお玉などの調理道具」という構成を有するものである。
【0006】
しかしながら、これらの特許文献1に示された「カギつきおたま」あるいは特許文献2に示された「お玉などの調理道具」では、「カギ部(ロ)」や「柄1に取付けられた細長い掛止部材3」が固定的なものであるため、なべの大きさが変化すると、使用できない場合があると考えられる。
【0007】
一方、特許文献3にも、「鍋の容器本体の開口周縁部に係止することができるお玉であって、そのようにして容器本体の開口周縁部に係止していても、鍋の蓋を容器本体に安定して被せることができるお玉を提供すること」を目的としてなされた「お玉」が記載されているが、この「お玉」は、図8及び図9に示すように、「グリップの先端に柄を介してお玉本体を連設したお玉において、グリップの先端部を、柄の伸延方向に対して傾斜状の端面と、同端面の一側端を伸延して形成した押さえ片と、同押さえ片の反対側の端面に形成した係合片とより構成した」ものである。
【0008】
この特許文献3に記載されている「お玉」でも、「押さえ片」が柄に対して固定的であるため、容器本体の開口周縁部に係止していても、「鍋の蓋を容器本体に安定して被せることができる」という効果あるいは作用を発揮する反面、上記特許文献1及び2と同様な問題があるだけでなく、使用後に洗いづらい複雑な構造になっていると考えられる。
【0009】
換言すれば、上記お玉のような調理器は、種々な大きさのなべやフライパンに対して使用されるものであり、例えば「なべの縁」といっても大きさが異なれば種々な高さになっているから、「押さえ片、掛止部材3あるいはカギ」を固定的なものとしておけば、適用できない場合が生ずるのは当然である。しかも、これらの「押さえ片、掛止部材3あるいはカギ」があることによって構造が複雑化しては、当該お玉は、使用後の洗浄がしづらいということでもある。
【0010】
また、このお玉のような調理具は、大量生産されて販売されるものであるが、工場から出荷するに際しては、複数の調理具を一つの箱に纏めて梱包されることが多く、その場合に、上述したような固定的な「押さえ片、掛止部材3あるいはカギ」を有しているとこれが邪魔になって効率的な梱包が行えないだけでなく、その運搬途中においうて、これらの「押さえ片、掛止部材3あるいはカギ」が他の同種製品に傷を付けて商品価値を損ねてしまうこともあり得る。
【0011】
そこで、本発明者等は、この種のお玉を代表とする調理具について、なべやフライパン中にズリ落ちないようにすることができることは勿論、なべ等の大きさに合わせて位置決めが簡単に行えて使用しない場合には簡単に外すことができ、しかも梱包時において緩衝材の役目も果たすことのできるストッパとするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、なべ等の中に調理具がズリ落ちないようにすることができて、なべ等の大きさに合わせた位置決めが簡単に行えて使用しない場合には簡単に外すことができ、しかも梱包時において緩衝材の役目も果たすことのできるストッパを、簡単な構造によって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「柄21の先端に作用部22を一体化した調理具20に対して取り付けられるストッパ10であって、
このストッパ10全体をシリコンゴムにより一体成形するとともに、その中程に、柄21の断面形状よりも僅かに小さい挿通孔11を形成し、挿通孔11以外の部分の一部を、調理器30の縁部31に係止できる係止部12として、
挿通孔11内に柄21を挿通することによりこれに位置調整自在に取り付け得るようにしたことを特徴とする調理具20用のストッパ10」
である。
【0014】
すなわち、本発明に係るストッパ10は、図1に示すように、玉杓子やフライ返しである調理具20の柄21に取り付けられて使用されるものであり、図示したように、その係止部12または係止突起13を調理器30の縁部31に係合させて、調理具20の調理器30内へのズリ落ちを防止するものである。
【0015】
そのために、このストッパ10は、その全体をシリコンゴムにより一体成形するとともに、図2及び図3に示すように、その中程に、調理具20の柄21の断面形状よりも僅かに小さい挿通孔11を形成し、挿通孔11以外の部分の一部を、調理器30の縁部31に係止できる係止部12としたものである。
【0016】
この場合、このストッパ10は、その全体をシリコンゴムにより一体成形する必要がある。その理由は、当該ストッパ10が熱せられている調理器30の縁部31に接触することもあるから、その熱に耐え得るものであって熱的変化が少ないものであることが必要だからである。また、このストッパ10は、その挿通孔11内に通した柄21に対して十分な摩擦力を発生させ得るようにして、位置決めした場所で止まっている必要があるからである。
【0017】
また、このストッパ10に形成した挿通孔11は、調理具20の柄21の断面形状よりも僅かに小さいものとする必要がある。その理由は、この挿通孔11は、これに柄21を挿通したときに、当該ストッパ10をシリコンゴムによって形成したこととも相まって、調理具20の柄21に対してある程度の摩擦力を発生させ、しかもその位置を変えたい場合には、簡単に柄21上を移動させることができるものとする必要があるからである。
【0018】
換言すれば、このストッパ10は、例えば図1中の実線で示した位置から同仮想線で示した位置にまで、調理具20の柄21に対してある程度の力で簡単に移動することができ、これにより、調理器30の大きさが異なってその縁部31の位置が、図1中の実線で示した位置から同仮想線で示した位置にまで変化したとしも、その柄21に対する取付位置の調整が自在に行えるものとなっているのである。
【0019】
勿論、以上のように、当該ストッパ10の調理具20に対する位置調整が自由に行えるということは、柄21の形状が図2に示したようなストレートな板状あるいは棒状のものであれば、このストッパ10を簡単に外すことができるということも意味している。
【0020】
また、このストッパ10は、図5に示すように、複数の調理具20を積み重ねて梱包する場合にも使用されるものであり、図4に示したように、各調理具20の柄21に挿通された当該ストッパ10によって各調理具20間の緩衝材としての役割をも果たすものである。
【0021】
すなわち、このストッパ10はシリコンゴムによって一体成形したものであるから、このシリコンゴムの物性によって軟質なものとなっているだけでなく、各調理具20間の位置保持も十分行えるものとなっているのである。このため、このストッパ10は、複数の調理具20を図5に示すような状態に保持することができるのであり、運搬時等において各調理具20が触れ合うことを防止して、各調理具20の保護をも行えるものとなっているのである。
【0022】
従って、本発明に係るストッパ10は、なべ30等の中に調理具20がズリ落ちないようにすることができて、なべ30等の大きさに合わせた位置決めが簡単に行えて使用しない場合には簡単に外すことができ、しかも梱包時において緩衝材の役目も果たすのである。
【発明の効果】
【0023】
以上の通り、本発明においては、
「柄21の先端に作用部22を一体化した調理具20に対して取り付けられるストッパ10であって、
このストッパ10全体をシリコンゴムにより一体成形するとともに、その中程に、柄21の断面形状よりも僅かに小さい挿通孔11を形成し、挿通孔11以外の部分の一部を、調理器30の縁部31に係止できる係止部12として、
挿通孔11内に柄21を挿通することによりこれに位置調整自在に取り付け得るようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、なべ等の中に調理具がズリ落ちないようにすることができて、なべ等の大きさに合わせた位置決めが簡単に行えて使用しない場合には簡単に外すことができ、しかも梱包時において緩衝材の役目も果たすことのできるストッパ10を、簡単な構造によって提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、以上のように構成した本発明を、図面に示した最良の形態であるストッパ10について説明すると、図1には、実施形態のストッパ10を使用して、なべ等の調理器30内に入れた調理具20の保持を行っている状態が示してある。つまり、この図1では、当該ストッパ10は、柄21の先端に作用部22を一体化した調理具20に対して取り付けられているものである。
【0025】
なお、調理具20としては、玉杓子(所謂お玉)や網杓子、フライ返し、各種トング、ヘラ等があり、作業者によって持たれる柄21は最良形態で例示したようなストレートな板状あるいは棒状のものがある。また、作用部22は、当該調理具20による実際の作業を行う杓子部や返し部が該当するものである。
【0026】
このストッパ10は、その全体をシリコンゴムにより一体成形したものである。このストッパ10は、後述する挿通孔11を有していればどのような形のものに形成してもよく、例えば花や動物を象って形成したり、所謂「フィギア」にしたり、さらには、これが取り付けられる調理具20の形や色にあったものとしてもよい。本最良形態のストッパ10では、実用性を考えて、図2及び図3に示したように、四角形状のものにしているが、こうすることによって、上述した緩衝材としての役割を確実に果たし、かつこのストッパ10を取り付けたまま台や机上に置いた場合に、柄21と台や机上に隙間を形成して、次の作業のための当該調理具20の取り上げを簡単に行えるようにすることができる。
【0027】
さらに、このストッパ10は、その全体をシリコンゴムにより一体成形することによって軟質なものとすることができるから、このストッパ10を取り付けたまま台や机上に置いた場合に、これがない硬質な調理具20をそのまま置いた場合に比較すれば、騒音を発生させることもない。つまり、調理具20を静かに机上等に置くことができるのである。
【0028】
また、このストッパ10は、図3の(a)及び(b)に示したように、その中程に、柄21の断面形状よりも僅かに小さい挿通孔11を形成したものである。このようにしたのは、上述したように、当該ストッパ10の、調理具20の係止部12に対する取付時の安定性を確保するためであり、またこれを柄21の適宜位置までの移動を、それ程の力を入れなくても可能にするためである。
【0029】
そして、このストッパ10では、図3に示したように、上述した挿通孔11以外の部分の一部を、調理器30の縁部31に係止できる係止部12としてある。この係止部12は、図1に示したように、調理器30の縁部31に係合して、調理具20の調理器30内へのズリ落ちを防止するものである。
【0030】
最良形態のストッパ10では、図3の(b)にも示したように、この係止部12の大きさとして、上記挿通孔11の上部になっている部分に対して2倍程度の大きさのものとしてある。このように大きくすることによって、当該係止部12が調理器30の縁部31に係止し易くなっているのであり、机上に置いた時や梱包時の緩衝性を十分なものとすることができる。
【0031】
この係止部12に変えて、図4に示したような係止突起13としてもよい。この係止突起13にも意匠を施せば当該ストッパ10が「カワイイ」ものとなるし、また調理具20の調理器30に対する係止も確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るストッパを使用している状態の断面図である。
【図2】同ストッパを調理具の柄に取り付けたときの平面図である。
【図3】同ストッパを拡大して示すもので、(a)は図2中の1−1線に沿ってみた断面図、(b)はストッパの縦断面図である。
【図4】同ストッパの他の実施例を示す縦断面図である。
【図5】同ストッパを利用して複数の調理具を梱包した時の様子を示す側面図である。
【図6】従来の技術を示す縦断面図である。
【図7】従来の他の技術を示す部分断面図である。
【図8】従来のさらに他の技術を示す断面図である。
【図9】図8に示した従来の玉杓子を使用している様子を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
10 ストッパ
11 挿通孔
12 係止部
13 係止突起
20 調理具
21 柄
22 作用部
30 調理器
31 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄の先端に作用部を一体化した調理具に対して取り付けられるストッパであって、
このストッパ全体をシリコンゴムにより一体成形するとともに、その中程に、前記柄の断面形状よりも僅かに小さい挿通孔を形成し、この挿通孔以外の部分の一部を、調理器の縁部に係止できる係止部として、
前記挿通孔内に前記柄を挿通することによりこれに位置調整自在に取り付け得るようにしたことを特徴とする調理具用のストッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−244708(P2007−244708A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73785(P2006−73785)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000200426)川嶋工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】