ねじ込み連結部用のナノ複合コーティング
ねじ込み連結部に腐食耐性および、場合により、潤滑性を与えるコーティングシステムが開示される。組成物は少量の弗素含有重合体で改質されたポリイミド類またはエポキシ類の重合体マトリックスを含んでなる第一のコーティング組成物200を含んでなる。コーティング組成物中には、腐食抑制剤および約10nm〜10μmの間の平均直径を有する無機粒子も存在する。PTFE、HDPE、グラファイト、およびMoS2の少なくとも1種を包含しうる固体潤滑剤を場合により加えて第一のコーティングに低い摩擦係数を与えうる。コーティングシステムは、エポキシ樹脂および溶媒内に分散されている固体潤滑剤を含んでなる第二のコーティング組成物202をさらに含んでなりうる。第一および第二のコーティング組成物200、202はねじ込み連結部のピンおよび箱部品100、104の少なくとも1つの少なくとも一部分上に置かれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関するクロスリファレンス
本出願は、各々がここに引用することにより本発明の内容となる、2006年12月1日に出願された潤滑性および腐食耐性のためのナノ複合コーティング(Nanocomposite Coatings for Lubrication and Corrosion Resistance)の名称の米国特許暫定出願第60/872615号、2007年4月27日に出願された潤滑性および腐食耐性のための重合体コーティング(Polymer Coating for Lubricating and Corrosion Resistance)の名称の米国特許暫定出願第60/914699号、および2007年5月29日に出願された潤滑性および腐食耐性のためのコーティング(Coatings for Lubrication and Corrosion Resistance)の名称の米国特許暫定出願第60/940690号の優先権を35U.S.C.§119(e)の下で主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の態様は、特にねじ込み連結部用の、コーティングシステムに関し、そして、1つの態様では、腐食耐性のためのナノ複合コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記述
油田では、油または気体を地下貯蔵所またはプールから抜き出すために金属製パイプを使用することが常套的方法である。この抜き出し技術は一般的に、地中の油井のボーリング、並びに油井に対して構造的安定性を与えそしてそれが壊れるのを防止するためのケーシングと称する比較的大きい直径の金属製パイプを有する油井の内部枠を必要とする。従って、油井の必要な深度に達したら、気体状または液体の炭化水素を地表へポンプで汲み上げるためにチュービングと称する比較的小さい直径の金属製パイプの紐が油井の中に置かれる。チュービングを形成するパイプは抜き出しに必要な深度に達するのに充分な定められた長さの紐の中で連結される。ケーシングおよびチュービングの両方の一続き(string)はパイプ部分から構成され、それらはねじ込み連結部を用いて一緒に連結される。
【0004】
ケーシングまたはチュービングパイプのいずれかの組み立て中に、滑動接触しているねじおよびパイプの他の表面内の焼き付けが、起きうる大きな問題である。焼き付けを回避するためにパイプの組み立て中にねじ込み連結部の雄および雌部品のねじの表面上でドープまたはグリースを使用することが常套的方法である。ドープは典型的には例えばPbまたはCuの如き重金属の小粒子を使用する。
【0005】
しかしながら、ドープの使用は大きな欠点も有する。とりわけ、過剰濃度の重金属は人間および動物の体内でそれらの蓄積をもたらして、重篤な病気をもたらしうる。さらに、ドープ中に存在する重金属は土壌、地下水、および海水を汚染する可能性があり、環境公害となりうる。さらに、これらの公害を鑑みると、ドープの使用時には重金属の廃棄を規制する厳密な規則に注意を必要とし、それはその使用価格を高める。
【0006】
上記の事象の他に、ドープの使用は他の操作、例えば使用中の現場でのねじ込み連結部のクリーニングおよびドーピング、を必要とする。しかしながら、これらの操作は莫大に労力がかかるため、それらは費用がかかり且つ時間もかかる。さらに、これらの操作は移動しているパイプへの露呈を必要としそしてしばしば悪条件下で行われるため、それらは
人間を安全性における危険にさらす。
【0007】
ドープの使用における別の潜在的な危険性は「不足ドーピング」または「過剰ドーピング」である。不足ドーピングでは、不充分なドープが与えられおよび/またはドープがねじ込み連結部の全表面上に分布されず、焼き付けを適切に抑制することに失敗する。過剰ドープの適用は不足ドーピングを処理しうるが、このやり方は連結部のねじ上に多すぎるドープが置かれる状態である過剰ドーピングの危険性がある。過剰ドーピングは、連結部の組み立て中に、過剰ドープをパイプ区分のねじ込み部分の端部を通して空にできないというありうる結果となる。それ故、停留されたドープは連結部内部で高い圧力を発生して、ねじ込み部分内のパイプ区分の可塑的変形をもたらしうる。極端な場合には、そのような可塑的変形は継手の雄部品の破壊を引き起こして、連結部を無効にし、そしてパイプ区分および/またはスリーブの交換を必要としうる。
【0008】
これらの問題を処理するためにドープを使用しない抗−焼き付け溶液が試験されてきた。一面で、Imai他に対する国際特許出願である特許文献1は、固体潤滑性粉末および結合剤を含んでなる下部層、並びに固体粒子を含まない固体腐食保護コーティングの上部コーティング層を含有するコーティング組成物を開示している。継手を固定する時に、腐食保護コーティングは接触部分において固定中に起きる摩擦により徐々に摩耗して下層にある固体潤滑性コーティングを露呈し、それがその潤滑作用を与える。
【0009】
別の面で、Petelot他に対する特許文献2は、金属製のねじ込みチューブの保護用の抗−シージング性(anti−seizing)コーティングを記述している。コーティングは、基質上に形成される銅、ニッケル、またはクロムの下層にある層の上に形成される鉛層の酸化により製造される薄い酸化鉛層を含んでなる。
【0010】
他の面で、Goto他に対する特許文献3は、少なくともワックスおよび脂肪酸アルカリ土類金属塩を含んでなり重金属を含まない粘着性の液体または半固体の潤滑性コーティングの下部層を有する改良された焼き付けおよび腐食耐性を有するねじ込み継手を開示している。コーティングは水性樹脂コーティング組成物から製造される乾燥固体コーティングの上部層も含んでなる。
【0011】
しかしながら、これらのやり方のそれぞれは欠点を有する。Imaiのやり方は、磨耗して潤滑性層を露呈する比較的軟らかい腐食保護コーティングに依存する。そのため、腐食保護層の機械的耐性は低くそしてこの層は時間が経つにつれて望まれざる領域で摩耗されて、コーティングの腐食保護能力を有意に減じうる。Petelotにより提案されたやり方は重金属、例えば鉛および銅、を使用するため以上で論じされたようにそれに伴う環境および毒性公害をもたらす。Gotoにより提案されたやり方も、液体または半固体の潤滑性コーティングの下部層が下部層組成物の適用時に過剰ドーピングまたは不足ドーピングの問題を課すであろうという点で問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2006/075774号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,253,902号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/104251号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
少なくとも以上の理由のために、特に油およびガス製造工業で直面する過酷な環境において、改良された腐食耐性を与える保護システムに関する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
この開示の態様はねじ込み継手を提供する。1つの態様では、ねじ込み継手はピン部品および箱部品を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。ねじ込み継手は、ピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくとも一部の上に沈着される第一のコーティング組成物もさらに含んでなる。1つの態様では、第一のコーティング組成物は
重合体、
重合体用弗素含有改質剤、
少なくとも1種の抗腐食添加剤、および
約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する少なくとも1種の金属酸化物を含んでなる。
【0015】
ある種の態様では、第一のコーティング組成物はピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくとも一部の上に置かれる第二のコーティング組成物と組み合わせることができる。1つの態様では、第二のコーティング組成物は
重合体、
重合体内に分散された固体潤滑剤、
金属酸化物、および
溶媒
を含んでなる。
【0016】
この開示の別の態様もねじ込み継手を提供する。1つの態様では、ねじ込み継手はピン部品および箱部品を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。ねじ込み継手は、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物もさらに含んでなる。1つの態様では、第一のコーティング組成物は
エポキシ類(epoxies)およびポリイミド類よりなる群から選択される重合体、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%のオルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0017】
別の態様では、ねじ込み継手はピン部品および箱部品を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。ねじ込み継手は、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物もさらに含んでなる。1つの態様では、第一のコーティング組成物は
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%の、Zn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0018】
この開示の態様はねじ込み継手を保護する方法もさらに提供する。1つの態様では、この方法はピン部品および箱部品の用意を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。この方法は第一の組成物の用意もさらに含んでなる。第一のコーティング組成物は
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%のZn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0019】
この方法は第二のコーティング組成物の用意もさらに含んでなる。第二のコーティング組成物は乾燥膜潤滑剤を含んでなる。
【0020】
この方法は第一および第二のコーティングの各々をピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくともねじ部分上に適用することも含んでなる。
【0021】
開示の他の態様はねじ込み継手を提供する。継手は
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有し、ピンまたは箱部品の少なくとも1つの表面がサンドブラストされている、ピン部品および箱部品;
エポキシ、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%の、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、および
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部はエポキシから構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、ピン部品のねじ部分上に置かれる第一のコーティング組成物;並びに
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、箱部品のねじ部分上に置かれる第二のコーティング組成物
を含んでなる。
【0022】
この開示の他の態様はねじ込み継手または他の表面に適用できる組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はピン部品および箱部品の噛み合っているねじを含んでなる継手の態様の断面図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、少なくとも腐食保護を与えるためのピンおよび箱の先端の噛み合っている表面上に置かれる第一および第二のコーティングシステムを示す、図1のピンおよび箱部品の断面図である。
【図3】図3A−3Eは、第一および第二のコーティングシステムの態様の配置を示す、ピンおよび箱部品の噛み合っている表面の図式的例証図である。
【図4】図4は、コーティングシステムが基質に優れた接着性を与えることを示す、固体状態潤滑剤としてグラファイトを用いるポリイミドをベースとしたコーティングシステムの1つの態様のクロスカットテープ試験の写真である。
【図5】図5はグラファイト対SiCの変動比を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図6】図6はグラファイトを含有しそして重合体状炭素弗素化アルコール(D10H)の変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図7】図7はMoS2およびD10Hの変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図8】図8はMoS2およびSiCの変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図9】図9はPTFEおよびSiCの変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図10】図10はD10Hを含有しそして異なる固体状態潤滑剤(TP9):グラファイト、TP11:PTFE、TP30:MoS2、TP36:HDPE、TP33:MoS2/SiC、TP14:グフラファイト/SiC)を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図11】図11は異なる固体状態潤滑剤を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関する回数の関数としての平均摩擦係数および摩耗係数のヒストグラムである。
【図12】図12は、約70時間の中性塩噴霧試験(SST)後の、プライマーを含まない(組成物TP30)離層されたポリイミドコーティングの1つの態様の写真である。
【図13】図13は加水分解ポリイミド/金属界面層の機構を示す。
【図14】図14は約500時間のSST後のポリイミドコーティング組成物TP9の態様の写真である。グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)プライマーがコーティングおよび基質の間に存在する。
【図15】図15Aおよび15Bは市販のエポキシプライマーを有するポリイミドコーティング組成物TP14の態様の写真である;(15A)約300時間の塩噴射試験後;(15B)約500時間の塩噴射試験後。
【図16】図16Aおよび16Bは市販のエポキシプライマーを有するポリイミドコーティング組成物TP30の態様の写真である;(16A)約500時間のSST後;(16B)コーティング表面のむき出しの膨れを示す16Aのクローズアップ図。
【図17】図17A−17Cはコーティングの剥離を示す、約500時間のSST後のポリイミドコーティング組成物TP30の態様の写真である;(17A)粘着しなかったコーティングの剥離直後−実質的に腐食が観察されない;(17B)環境条件への約10分間の露呈後、以前はきれいな露呈された基質表面が錆を示す;(17C)環境条件への約10分間の露呈後、頂部上のコーティングが除去されて実質的に腐食を示さない。
【図18】図18は約300時間のSST後のコーティング組成物TP65の態様の写真である。
【図19】図19はグラファイトおよびD10Hの変動濃度を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図20】図20はMoS2の変動濃度を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図21】図21は異なるHDPE濃度を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図22】図22は異なる潤滑剤を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図23】図23は引っ掻き傷周辺の離層を示す、約200時間のSST後の、プライマーを含まないコーティング組成物TE13の態様の写真である。
【図24】図24Aおよび24Bは塩噴霧試験後のプライマーを含まないコーティング組成物TE20の態様の写真である:(24A)約200時間のSST後;(24B)約500時間のSST後。
【図25】図25Aおよび25Bは約400時間のSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE33およびTE34の態様の写真である;(25A)TE33;(25B)TE44。
【図26】図26A−26Cは約400時間のSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE48、TE49、TE50の態様の写真である;(26A)TE48;(26B)TE49;(26C)TE50。
【図27】図27Aおよび27Bは約400時間の中性塩噴霧露呈後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE49およびTE50の態様の写真である;(27A)TE49;(27B)TE50。
【図28】図28は変動する抗腐食添加剤を有するエポキシマトリックスコーティング組成物TE33、TE44、TE48、TE49、TE50の態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図29】図29A−29CはSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE44の態様の写真である;(29A)500時間;(29B)1100時間;(29C)2000時間。
【図30】図30はSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE44の下層にある金属製基質の写真である。
【図31】図31は変動量のHeucophos(R)ZCPおよびZnO並びに変動サイズのZnOを有するエポキシマトリックスコーティング組成物TE60、TE61、TE64、TE67、TE68の態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図32】図32Aおよびは32Bはエポキシマトリックスコーティング組成物TE64(32A)およびTE67(32B)で部分的にコーティングされたねじ込み連結部ねじの態様の写真である;腐食はコーティングされていない領域で観察されうる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましい態様の詳細な記述
この開示の態様は、ねじ込み連結部の保護のための、コーティングシステムおよび製造方法を開示する。ある種の態様では、コーティングシステムは少なくとも腐食耐性を与えるためのねじ込み連結部の表面の少なくとも1つの少なくとも一部への沈着のために構成される第一のコーティングを少なくとも含んでなる。場合により、第一のコーティングは潤滑性も与えうる。別の態様では、コーティングシステムは第一のコーティングを潤滑性を与えるためのねじ込み連結部の表面の少なくとも1つの少なくとも一部への沈着のために構成される第二のコーティングと組み合わせて含んでなる。特に、コーティングは鋼パイプねじ込み連結部の如き用途に適しており、そこでは組み立て工程中に摩擦により引き起こされる極端に高い負荷および高い局部的温度が存在する。ねじ切り鋼パイプに関するさらなる詳細は「チューブ用のねじ込み継手(Threaded Join for Tubes)」の名称の米国特許第6,921,110号、「表面処理されたねじ切りパイプ(Threaded Pipe with Surface Treatment)」
の名称の米国特許第6,971,681号、「高および低摩擦性コーティングを有するねじ込み連結部(Threaded Connections With High and Low Friction Coatings)」の名称の国際特許出願番号国際公開第2007/063079号に見出すことができる。
【0025】
以下で論じるコーティングシステムはねじ込み連結部で使用される時には有意な性能利点を与える。一般的に、製造されたパイプは海外から輸送され、その時間中にそれらは海洋環境に露呈される。さらに、製造されたパイプは典型的には長期間にわたり帆装部位近くに屋外で貯蔵され、そして局地的な気候条件、例えば雨および低いまたは高い温度、を受ける。これらのタイプの環境への露呈は腐食をもたらし、パイプ組み立てのためだけでなく連結部の一体性および性能に関しても不利である錆の生成を生じうる。それ故、パイプ輸送および貯蔵中の腐食を回避するために従来の連結システムは貯蔵用化合物を使用する。貯蔵用化合物はパイプ組み立て直前に除去しなければならずそしてパイプの固定を補助するために連続的にドープ化合物が適用される。
【0026】
有利なことに、ここに記述されるドープを含まない連結部は抗−腐食性質および、場合により、潤滑性質を有する。それ故、これらの連結部は工場施設で処理され、輸送され、貯蔵され、そして組み立て前にはさらなる処理がされない。その結果、貯蔵化合物を除去しそして連続的にドープ化合物を適用する余分の段階を回避して、パイプを組み立てるための時間および費用を減らすことができる。
【0027】
ある種の態様では、第一のコーティングは内部に分散された腐食抑制添加剤を有する単一層の重合体マトリックスを含んでなる。添加剤は下層にあるねじ込み連結部を腐食から保護する能力を有するコーティングを提供する一方で、重合体マトリックスは適当な温度安定性および接着性を有する第一のコーティング組成物を提供する。別の態様では、ナノ−スケールの強化剤を重合体マトリックス内にさらに分散させることができる。有利なことに、強化剤は改良された機械的性質、特に摩擦学的性質、例えば摩耗耐性、を与える。他の態様では、固体状態潤滑剤を第一のコーティング組成物の重合体マトリックスに加えて選択された摩擦係数をコーティングに与えることもできる。
【0028】
ある種の態様では、第二のコーティングはエポキシ樹脂および溶媒の混合物中に分散された固体潤滑剤を含んでなる。必要に応じて、別の添加剤、例えば接着促進剤および重合体改質剤、を第一および第二のコーティング組成物の各々にさらに加えることもできる。この開示のこれらのおよび他の目的および利点は以下でさらに詳細に論じられる。
【0029】
図1は第一のパイプ100および第二のパイプ104を示す。パイプ100、104は相補的なねじ切り先端を有し、それらは一緒に連結される時に継手110を形成する。継手110はそれ故「ピン」または「ピン部品」と称する外表面上にねじ102が装備された第一のパイプ100、および「箱」または「箱部品」と称する内表面上にねじ106が装備された第一のパイプ104を含んでなる。箱部品104は一般的には、継手110の型によって、パイプまたはスリーブである。ピン部品100のねじ101は箱部品104のねじ106と噛み合うように適合される。
【0030】
ピン部品100および箱部品104のねじ102、106の拡大図が図2A、2Bに示される。ある種の態様では、少なくとも腐食耐性をそして場合により潤滑性を与える第一のコーティング組成物200がピンおよび箱部品100、104の少なくとも1つの少なくとも一部上に置かれる。ある態様では、第一のコーティング200はピン部品100の少なくとも一部上に置かれる。第二の層コーティング202は、存在する時には、少なくとも潤滑性を与えそしてピンおよび箱部品102、104の少なくとも1つの少なくとも一部上に置かれる。ある態様では、第二のコーティング組成物202は箱部品104の少
なくとも一部上に置かれる。
【0031】
この構造はこの開示のコーティングシステムの構造の単なる一例であることは理解されうる。別の態様では、第一のコーティング組成物だけを使用することができそして箱部品104の上に置かれる。他の態様では、第一および第二のコーティング200、202が、それぞれ、ピンおよび箱部品100、104のねじ102、106の領域近くに置かれる。さらに別の態様では、第一および第二のコーティング200、202はピンおよび箱部品100、104の少なくとも一部上に置かれ、それらはねじ102、106の少なくとも一部を含んでいてもまたはいなくてもよい。さらに別の態様では、第一および第二のコーティング200、202はピンおよび箱部品100、104の実質的に全ての表面上に置かれる。
【0032】
図3A−3Eはピン部品100および箱部品104に適用される選択されたコーティング構造を示すこの開示の第一および第二のコーティング組成物200、202の態様を示す。ある種の態様では、第一および第二のコーティング組成物200、202は各々単一層を含んでなる。これらの構造は例として提示されておりそしてこの開示の態様を何らかの方法で限定するものでないことは理解されうる。
【0033】
図3Aの態様では、第一および第二のコーティング200、202は単一層としてピン100および箱104に適用される。例えば、第一のコーティング200はピン部品100の表面に適用されそして第二のコーティング202は箱部品104に適用される。或いは、図3Bに示されているように、両方のコーティング200、202をねじ込み連結部であるピン部品100または箱部品104の1つの表面に適用しうる。例えば、第一および第二のコーティング200、202の両方をピン部品100に適用しうる。別の態様では、図3Cに示されているように、第一および第二のコーティング200、202の両方をピンおよび箱部品100、104の各々に適用しうる。
【0034】
他の態様では、複数のコーティングを継手に隣接する表面上に積層しうる。例えば、図3Dに示されているように、第一のコーティング組成物200はピン部品100上の第一および第三の層として存在しうる一方で、第二のコーティング組成物202はピン部品104上に第二の層として存在しうる。
【0035】
別の態様では、第一および第二のコーティング200、202の厚さは互いに関して変動しうる。例えば、図3Eに示されているように、第一のコーティング組成物200は第二のコーティング層202より厚くてもよい。
【0036】
以上で示されたこれらの構造を必要に応じて改変しうることは理解されうる。例えば、コーティングをピン部品100から箱部品104に動かすこともできそして逆もできる。或いは、第一および第二のコーティング組成物200、202の位置を交換することもできる。さらに、別の層をここに記述されている態様に従い用意することもできる。
【0037】
コーティングの厚さは必要に応じて変動しうる。例えば、第一および第二のコーティング組成物200、202の各々の厚さは約1μm〜100μmの間で変動しうる。ある種の態様では、第一および第二のコーティング組成物200、202の各々の厚さは約10〜40μmの範囲内でありうる。他の態様では、第一および第二のコーティング層200、202の合計厚さは約80μmより薄い。別の態様では、第一のコーティング200の厚さは約40μmより薄い。他の態様では、第二のコーティング202の厚さは約30μmより薄い。別の態様では、第一および第二のコーティング200、202はほぼ等しい厚さを有する。
【0038】
第一および第二のコーティング200、202は当該技術で一般的に理解されている技術に従い設置することができる。例えば、ピンおよび箱部品100、104を噴霧コーティングすることができる。1つの態様では、円筒形状での使用のための自動的噴霧装置を使用できる(SPMA GmbH、ビッシンゲン、ドイツ)。或いは、ピンおよび箱部品100、104を浸漬コーティングすることもできる。別の態様では、例えば拍動レーザーデポジション、化学蒸着、および電気化学デポジションの如き技術を使用できる。単一のピン100または箱部品104の表面上への複数層の沈着用には、これらの技術を必要に応じて繰り返すことができる。さらに、これらの技術は単独でまたは組み合わせて行うことができる。
【0039】
沈着前に、ある種の態様では、ピンまたは箱部品の少なくとも1つの表面をコーティングを沈着させる表面に対する沈着したコーティングの接着性を増強させるために設計された表面処理にかけることができる。このようにして製造されたねじ込み連結部の性質を増強させるための処理もさらに設計される。そのような表面処理の例はサンドブラスティング、燐酸塩処理、および銅メッキを包含するが、それらに限定されない。
【0040】
ある態様では、第一のコーティング組成物の重合体マトリックスはポリイミドを含んでなる。ポリイミド類は金属に対する良好な接着性を有し、それは第一のコーティング組成物により与えられる腐食耐性を増強する。ポリイミドシステムの別の利点は約0.1重量%というそれらの低い水吸収性である。低い水吸収性はポリイミドを水障壁として作用させ、第一のコーティング組成物により与えられる腐食耐性を増強する。ポリイミド類は高温耐性もさらに有し、それは摩擦滑動中の第一のコーティング組成物の摩擦学的性質を安定化させる。
【0041】
ポリイミドの態様をプライマー類とさらに組み合わせてコーティングの接着性を増強させうる。適するプライマー類の例はシランをベースとしたプライマー類および市販のエポキシをベースとしたプライマー類を包含するが、それらに限定されない。シラン基は金属の表面への安定な複合体を形成するが、エポキシをベースとしてプライマー類ではエポキシ基と金属表面との反応により接着性が生ずる。例えば、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)を有するシランをベースとしたシステムを使用してポリイミドコーティングおよび金属表面の間の界面を安定化させうる。
【0042】
別の態様では、第一のコーティング組成物の重合体マトリックスはエポキシを含んでなる。エポキシ類は有極性表面に対する優れた接着性を与える。さらに、エポキシ類は自己硬化性膜を生成することができ、それらは濃密化のためのコーティングの外部加熱を強める必要がなく、これらのマトリックスに加えられるナノ複合体の処理を促進する。ある種の態様では、オリゴマー状ビスフェノール−A−エピクロロヒドリン樹脂よりなる積層樹脂「L20」(R & G GmbH)を硬化剤としてのイソホロンジアミンと共に使用することができる。
【0043】
ある種の態様では、第一のコーティング組成物のマトリックス重合体が改質される。例えば、重合体を少量の弗素含有化合物、例えば反応性ペルフルオロポリエーテル類、で改質することができる。改質剤は弗素含有化合物の疎水性により水浸透に対する重合体の障壁性質を改良する。ある態様では、ペルフルオロポリエーテルは重合体と化学的に反応して、ペルフルオロポリエーテルおよび重合体の間に複数の共有結合を生成する。さらに、ペルフルオロポリエーテルは主要なマトリックス重合体連鎖と縮合可能でありうる。ある態様では、ペルフルオロポリエーテルはFluorolink(R) D10H(ソルベイ・ソレキシス(Solvay Solexis))を含んでなる。この化合物はまたここではD10Hとも称することができる。ある種の態様では、第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤を使用すること
ができる。他の態様では、非−反応性のフルオロ−化合物を使用してこの目的を達成することができる。
【0044】
別の態様では、他の重合体用改質剤を使用することができる。例えば、ポリイミドマトリックスをアミドプロピル末端のポリジメチルシロキサンを用いて柔軟性ポリシロキサン単位で改質することができる。シロキサンは重合体のガラス転移温度を低下させ、そしてその結果としてコーティング内部で機械的応力弛緩を起こさせる。ある種の態様では、第一の重合体組成物の合計重量を基準として、約10〜20重量%のポリジメチルシロキサンを使用することができる。
【0045】
ある種の態様では、第一のコーティング組成物はコーティングの性能を改良するために作用するナノ−スケールおよび/またはミクロン−スケールの添加剤をさらに含んでなる。ある種の態様では、基質に対するコーティング組成物の接着性を増強するように添加剤を構成することができる。別の態様では、添加剤は組成物の機械的安定性を増強させうる。他の態様では、添加剤は腐食耐性をさらに増強させる。これらの添加剤はコーティング組成物内で単独でまたは組み合わせて存在しうる。
【0046】
ある態様では、第一のコーティング組成物は少なくとも1種の接着用添加剤を含んでなる。ある種の態様では、添加剤はミクロ粒子またはナノ粒子を含んでなる。接着用添加剤の例は酸化亜鉛(ZnO)およびタルクを包含するが、それらに限定されない。ZnOは充填剤として作用することにより特に湿潤環境中のコーティング組成物の接着性を改良して、重合体マトリックスによる水分の吸収を実質的に抑制する。他の態様では、接着用添加剤はタルク、例えばMicrotalc(R) AT1、を含んでなる。その小板のような構造のために、タルクは障壁としても作用することによりコーティング組成物の接着性を改良して、重合体マトリックス内への水の吸収を同様に抑制する。有利なことに、酸化亜鉛は以下で論じるようにコーティングの腐食耐性も増強しうる。ある種の態様では、約10nm〜100μmの間の平均直径を有するZnO添加剤を使用できる。他の態様では、ZnO添加剤の平均直径は約10nm〜10μmの間の範囲にわたる。別の態様では、ZnO添加剤の平均直径は約10nm〜300nmの間の範囲にわたる。第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約10〜15重量%の接着用添加剤を使用することができる。
【0047】
強化剤を第一のコーティング組成物の重合体マトリックス内に加えることもできる。強化剤の添加はコーティングの硬度および摩耗耐性を改良して、それらの機械的耐性を増強させる。ある種の態様では、強化剤は無機粒子を含んでなる。粒子は、それぞれ、概略マイクロ−スケール(約1μm〜約500μm)およびナノ−スケール(約1nm〜約500nm)の間の範囲にわたる平均直径をさらに有することができる。ある種の態様では、粒子は約300nmより小さい平均直径を有する。有利なことに、強化剤によりコーティングに付与される機械的耐性の結果として、コーティングは耐性がより少ないコーティングより少ない維持費用および交換を要する。ある態様では、炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、または二酸化珪素(SiO2)ナノ粒子を使用することができる。別の態様では、強化剤の表面を有機官能基で改質することができる。ある種の態様では、第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の強化剤を使用することができる。
【0048】
コーティングに低い摩擦係数を与えてその潤滑能力を改良するために、固体状態潤滑剤をコーティング組成物に加えることもできる。この潤滑性質はねじ込み連結部の噛み合わせ部品によって受ける機械的応力および摩耗を減少させ、並びに部品の接触中に発生する熱を減少させる。1つの態様では、固体状態潤滑剤はミクロン寸法の固体を含んでなる。固体状態潤滑剤の例はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高密度ポリエチレン(
HDPE)、グラファイト、およびMoS2を包含するが、それらに限定されない。具体的な調合物は以下の実施例で論じられる。ある種の態様では、第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約3〜30重量%の固体潤滑剤をコーティング組成物中で使用できる。
【0049】
別の態様では、組成物は腐食抑制化合物を含んでなる。ある種の態様では、抗腐食化合物はZn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、オルト燐酸塩官能基、ホウ燐酸塩官能基、ポリ燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸塩官能基、ホウ珪酸塩類、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる。例は三燐酸アルミニウム、ホスホ珪酸亜鉛ストロンチウム、燐酸亜鉛、酸化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスホモリブデン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛カルシウム、およびホスホモリブデン酸亜鉛カルシウム、オルト燐酸アルミニウム亜鉛水和物、オルト燐酸亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデン亜鉛水和物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、ポリ燐酸アルミニウムストロンチウム水和物、ポリ燐酸アルミニウムカルシウム水和物、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物、ホウ酸オルト燐酸亜鉛水和物、燐酸水素カルシウム、ホウ燐酸バリウム、ホウ燐酸ストロンチウム、ホウ珪酸カルシウム、ホスホ珪酸バリウム、ホスホ珪酸ストロンチウム、およびホスホ珪酸カルシウムを包含するが、それらに限定されない。ある種の態様では、Heucophos(R) ZCP、Heucophos(R) ZCP−Plus、Heucophos(R) ZAM、Heucophos(R) ZAM−Plus、およびHeucorin(R) RZ(ハウバッフ・GmbH・ジャーマニー(Heubach GmbH Germany))の少なくとも1種を使用できる。これらの化合物はまたここではZCP、ZCP−Plus、ZAM、ZAM−Plus、およびRZと称することもできる。ある種の態様では、全ての抗腐食化合物の合計量は第一のコーティング組成物の合計重量を基準として約5〜15重量%である。
【0050】
他の態様では、第一のコーティング組成物は伝導性を増強するための添加剤をさらに含んでなりうる。例えば、約1〜5重量%のカーボンブラックを使用することができ、ここで量は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0051】
以下の表は第一のコーティング組成物中に存在する各成分の相対量の選択された態様を示す:
【0052】
【表1】
【0053】
例えば、組成物TE64は約77.4重量%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink(R) D10H、約6.2重量%のHeucophos(R) ZCP、および約12.4重量%の約
1μmの寸法を有するZnOを含んでなる。TE67は約77.4重量%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink(R) D10H、約6.2重量%のHeucophos(R) ZCP、および約12.4重量%の約50nmの平均直径を有するZnOを含んでなる。全ての百分率は組成物の合計重量を基準とする。
【0054】
第二のコーティング組成物の態様は乾燥膜潤滑剤を含んでなる。固体潤滑剤粉末は反応性エポキシ樹脂および溶媒を含んでなる混合物内に分散される。ある種の態様では、潤滑剤粉末はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含んでなりそして溶媒は酢酸2−メトキシ−1−メチル−エチルを含んでなる。ある態様では、二酸化チタン(TiO2)粉末を組成物にさらに加えることができる。TiO2はPTFE粉末の前に、後に、または同時に加えることができる。
【0055】
成分の比は必要に応じて変えることができる。固体成分(粉末およびエポキシ)は約20〜40重量%の範囲内で存在しそして溶媒は約60〜70重量%の範囲内で存在し、ここで百分率は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする。固体の中で、PTFE粉末は固体成分の合計重量の約20〜40重量%の間の量で存在し、エポキシ樹脂は約40〜60重量%の間の量で存在し、そしてTiO2粉末は約5〜15重量%の間の量で存在する。
【0056】
1つの態様では、第二のコーティング組成物は
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなる。
【0057】
固体粉末の実質的に均質な分散液を与えるために、組成物を約20分間にわたり撹拌した。生じた樹脂はFord No.4カップの中で25℃において約28〜32秒間の範囲内の粘度を有した。別の態様では、樹脂粘度はFord No.4カップの中で25℃において約26〜28秒間であった。
【0058】
別の態様では、溶媒の混合物を使用することができる。例えば、酢酸2−メトキシ−1−メチル−エチルおよびキシレンの混合物を使用することができる。
【0059】
別の態様では、乾燥膜潤滑剤は自己潤滑性膜、例えば金属合金、を含んでなりうる。
【実施例】
【0060】
第一および第二のコーティングの態様は、以上で論じられたように、ねじ込み連結部上で使用できる。コーティングの性能を評価するために、コーティングを金属基質上に噴霧コーティングしそして種々の試験にかけた。断らない限り、N80鋼基質試料が試験で使用された。接着性、摩擦係数、表面粗さ、摩耗耐性、腐食および耐性がポリイミド−およびエポキシ−マトリックスコーティング組成物中で試験された。
【0061】
腐食試験はDIN 50021/ASTM B117である「塩噴霧(霧)装置を操作するための標準的実施法(Standard Practice for Operating Salt Spray(Fog)Apparatus)」に従う中性塩噴霧試験(SST)により行われた。一般的には、試験試料を特定の位置および角度でNaCl溶液噴霧に露呈した。NaCl溶液の濃度は約3.5〜20%の範囲にわたることができそして断らない限り約5%であった。コーティング層が損傷しそしてベース金属が露呈され
る時に腐食がどのように進行するかを検討するために、引っ掻き傷もコーティング中に加えられた。
【0062】
コーティング組成物の摩擦係数はDIN 50324に従うピン−オン−ディスク(pin−on−disc)摩擦計試験により試験された。概略試験パラメーターはP=2N、v=10cm/s,v=10cm/s、r=15mm、およびs=1000mであった。
【0063】
ある態様では、ピンおよび箱部品100、104の表面をコーティング組成物の適用前にクリーニングした。複数のクリーニング技術の1種もしくはそれ以上を、必要に応じて、使用することができる。
【0064】
第一のクリーニング技術では、ピンおよび箱部品の金属表面を最初にアセトンで洗浄した。次に、表面を超音波浴内で約15分間にわたり約75℃において工業用クリーニング剤(Bonder T5400)を用いることによりクリーニングした。浴の後に水道水クリーニングおよび約2分間にわたるほぼ室温におけるUNIBOND HDHクリーニング剤を用いるクリーニングを行った。残存するクリーニング剤を水道水で除去しそして表面を約10分間にわたり約120℃において乾燥した。
【0065】
第二のクリーニング技術では、ピンおよび箱部品の金属表面を最初にキシレンで洗浄した。次に、表面を超音波浴内で約15分間にわたり約75℃において工業用クリーニング剤(Bonder T5400)を用いることによりクリーニングした。浴の後に水道水クリーニングおよび約10分間にわたる約80℃におけるUNIBOND HDHクリーニング剤を用いるクリーニングを行った。残存するクリーニング剤を水道水で除去しそして表面を約10分間にわたり約120℃において乾燥した。このようにして調整された表面は約0.61μmの平均粗さ(Ra)、約3.8μmの平均粗さ深度(Rz)、および約4.32μmの頂部対谷部の粗さ(Rmax)を示した。
【0066】
第三のクリーニング技術では、ピンおよび箱部品の金属表面を最初にサンドブラストした。次に、表面を超音波浴内で約15分間にわたり約80℃において工業用クリーニング剤(Bonder T5400)を用いることによりクリーニングした。浴の後に水道水クリーニングおよび約5分間にわたる約60℃におけるUNIBOND HDHクリーニング剤を用いるクリーニングを行った。残存するクリーニング剤を水道水で除去しそして表面を約10分間にわたり約120℃において乾燥した。この工程は実質的に再現可能な表面および表面粗さにおける変化を与えることが注目される。このようにして調整された表面は約0.92μmの平均粗さ(Ra)、約6.09μmの平均粗さ深度(Rz)、および約8.4μmの頂部対谷部の粗さ(Rmax)を示した。
【0067】
別の態様では、クリーニング工程はサンドブラスティングだけを含んでなっていた。
【0068】
実施例−ポリイミドをベースとしたシステム
ポリイミドマトリックスを4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(BAPPS)およびピロメリト酸二無水物(PMDA)共単量体から溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)中の重付加反応により製造した。この単量体組成物はフェノキシおよびフェニルスルホン基から起因してわずかに有極性であり、それは接着性に関して有利である。この組成物はさらに必要に応じてマトリックス物質を多量の無機ナノ粒子および潤滑剤粒子を分散させる。さらに、ヒドロキシル基を含有するペルフルオロポリエーテル(Fluorolink(R) D10H、ソルベイ・ソレキシス)を共−単量体として反応混合物に加えた。生じた中間生成物は懸垂ペルフルオロポリエーテル側鎖基を有するポリアミック・アシド(polyamic acid)構造であった。
【0069】
最初の試験では、未硬化ポリイミドをSiCナノ粒子および固体状態潤滑剤(グラファイト)と以下の表1に示されている比で混合した。混合物を引き続きクリーニングされた鋼表面上にコーティングしそして約150℃まで熱硬化した。
【0070】
【表2】
【実施例1】
【0071】
実施例1:
クロスカットテープ試験−グラファイト/ポリイミド組成物
クロスカットテープ試験を使用してASTM D3359−02である「テープ試験により接着性を測定するための標準試験方法(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test)」に従いコーティングの接着性を同定した。この基準に従い、基質上に置かれたコーティング中で刃の付いた切断器具を用いて斜交陰影切断を行った。引き続き、接着テープを切断表面上に置きそして次に剥離した。コーティングの一部がテープ上に残っている場合には、コーティングの接着性は不充分であると判定される。
【0072】
試験結果の分類は基準と比較する視覚的比較により行われ、それは試験部分の影響を受けた面積を剥がされたテープにより表面から離されたコーティングの百分率として規定する。0〜5の評価は試験試料部分の接着性を100%合格(0)から試験領域の65%より多くが表面から離層する不合格(5)までに分類する。
【0073】
クロスカットテープ試験は表1に示されたコーティング組成物に関して良好な接着性(cc/tt 0/0)を示した。図4は接着性に関して最初に試験した代表例の写真を示す。像は、コーティングが基質に実質的に接着したままであることを示す。
【実施例2】
【0074】
実施例2:摩擦学的同定−グラファイト/ポリイミドナノ複合体
ナノ複合体の摩擦および摩耗に対する固体状態潤滑剤および強化剤の影響をDIN 50324に従うピン−オン−ディスク摩擦計試験により試験した。概略試験パラメーターはP=2N、v=10cm/s,v=10cm/s、r=15mm、およびs=1000mであった。コーティングシステムTP9、TP13、TP14、およびTP15を検討し、各々は約1.5gのほぼ等量のD10Hを有していた。とりわけ、TP9試料はSiC強化剤を含まなかった。
【0075】
ピン−オン−ディスクの結果は図5に示されそして以上の表1にまとめられており、ここでkは摩耗耐性である。図5から、固体状態潤滑剤としてグラファイトを用いるとμ=
0.1−0.2の範囲内の摩擦係数が得られた。測定された摩耗係数は概略k=2.5*10−4mm3/Nmであることが見出された。グラファイトを含有するコーティングに関する低い摩耗耐性はグラファイト固有の軟らかさにより引き起こされることが信じられており、それはコーティングの硬度の低下をもたらす。約1:1の比でのグラファイトおよびSiCの添加(組成物TP14)は摩耗耐性が改良されることを示しており、そして摩擦性能もわずかに改良された。
【実施例3】
【0076】
実施例3:表面粗さ−グラファイト/ポリイミドコーティングシステム
重要な摩擦学的問題は表面粗さが摩擦性能にどのように影響するかの疑問である。摩擦および摩耗は一般的に同時に起きる工程であるため、摩耗破片は一般的に滑動工程が表面上で起きる時点から始まり発展する。これらの破片は摩擦係数を劇的に増加させそして、その結果として、それらを滑動路から除去することが重要である。この除去は表面粗さの凹み内での破片の収集により行われる。摩耗は表面粗さに依存しており、粗い表面は滑らかな表面より多い摩耗破片を生ずるため、摩耗/摩擦均衡を実質的に最適化する表面粗さの範囲を判定することができる。この影響は最低の摩擦係数を有する表面において見られうる。
【0077】
ポリイミドシステムでは、重合体状炭素弗素化されたアルコール(D10H)を使用することにより表面粗さが変えられそして実質的に最適化される。D10Hは界面活性剤のように作用し、熱力学的理由のために生ずるポリイミドコーティングの表面を富裕化させる。その結果は表面自由エネルギーにおける低下であり、それを使用して表面の粗さを変動させうる。表2および図6は表面粗さに対する摩擦係数の依存性を示す。
【0078】
【表3】
【0079】
図6から、試料の表面粗さにより摩擦係数が約100%以上変化することが信じられる。1つの態様では、低い摩擦係数に関すると、ポリイミドシステムに対する最適な表面粗さは概略Ra=0.3μmである。これは、重合体マトリックス中での約8.5重量%のFluorolink(R) D10Hの使用により得られる。さらに、弗素化されたアルコールの濃度の他に表面粗さはマトリックス中の潤滑剤の容量割合にも依存することを述べるべきである。匹敵するマトリックスシステムを製造するためには、ペルフルオロポリエーテルの濃度は未強化マトリックスに関してほぼ一定に保たれていた。
【実施例4】
【0080】
実施例4:摩擦学的同定−MoS2/ポリイミドコーティングシステム
第二のタイプの固体状態潤滑剤であるMoS2が加えられているコーティングシステムの態様の摩耗および摩擦性能も検討した。表3は潤滑剤としてMoS2を含有するポリイミドシステムの組成および摩擦実験からの対応する摩耗係数を示す。断らない限り、マトリックス物質はポリイミドを含んでなっていた。
【0081】
【表4】
【0082】
図7は、MoS2を含有しSiCナノ粒子を含まないポリイミドシステム(TP30、PT31、PT32、TP44、およびTP45)に関する滑動回数に対する摩擦係数の対応する依存性を示す。MoS2は、潤滑剤としてのグラファイトと比べて、試験パラメーターに従うとほぼ同じ性能を示す。グラファイトの場合には、約8.5重量%のペルフルオロポリエーテルの濃度(組成物TP30、TP31、TP32)が摩擦性能に関して最適であることが見出された。
【0083】
摩擦学的性質に対するSiCナノ粒子の影響を検討するために、MoS2対SiCの種々の比をマトリックス中で使用しそしてコーティングを同定した。この同定の結果は図8に示される。
【0084】
MoS2含有組成物に関すると、SiCだけの添加は摩耗耐性に実質的な影響を示したが、摩擦係数はSiCを含まないコーティングに関するものとほぼ同じであった。これは、以下で詳細に論じられる図11に示された比較例でさらに良く観察できる。
【0085】
他方で、図8にさらに示されているように、約0.1より低い比較的低い摩擦因子がある種のコーティング中で約4000サイクル(回)までに観察された。この傾向は図9でも見られ、PTFE/SiCシステムでは約2500サイクル後であった。
【実施例5】
【0086】
実施例5:摩擦学的同定−PTFE潤滑剤
より低い摩擦値を得るために、コーティングに対する重合体をベースとした固体状態潤滑剤の添加を検討した。表4および図9はPTFEおよびPTFE/SiCを用いる選択された実験を示す。
【0087】
【表5】
【0088】
PTFE(TP11)およびPTFE/SiC(TP17)の性能は以上で論じられたグラファイトおよびMoS2コーティングのものと実質的に逆であった。PTFEの場合には、SiCの添加は摩耗係数を有意に改良したが、摩擦係数も劇的に増加させた。
【実施例6】
【0089】
実施例6:摩擦学的同定−ポリイミド/HDPE潤滑剤
ポリイミドシステムの1つの特徴はそれらの比較的高い硬化温度であり、それはHDPEが重合体状潤滑剤として使用される時には相分離をもたらしうる。このコーティングは合成され(表3に示された組成物、TP36)そしてこのシステムはこの時点までに論じられた組成物の中で最低の摩擦係数を示した(図10)。
【0090】
しかしながら、HDPEを用いて合成されたコーティングシステムは相分離を示し、それはコーティングシステムの腐食耐性の性質にとって不利でありうる。
【実施例7】
【0091】
実施例7:種々の潤滑剤を有するポリイミドコーティングシステムの摩擦学的性質の比較
種々の固体状態潤滑剤を有するコーティング組成物の摩擦および摩耗性能の比較は図11に示される。選択された固体状態潤滑剤の摩擦性能の検討は、1つの態様では、潤滑剤としてHDPEおよびPTFEを使用することにより最低の摩擦が得られたことを示した(図10)。重合体コーティングが約8.5重量%のD10Hおよび約30重量%の含有量の充填剤も含有するという事実のために、約20重量%より多い固体状態潤滑剤を含んでなる組成物をピン−オン−ディスク試験で使用した。比較的多量の固体は実質的に脆いコーティングをもたらし、それは摩擦実験にかけることができなかった。コーティングに対する硬質充填剤としてのSiCの添加は摩耗耐性を有意に改良した。グラファイトの場合には、SiCの添加は試料の摩擦性能に対する正の影響も示した(図10、図11)。
【実施例8】
【0092】
実施例8:ポリイミドをベースとしたコーティングシステムの腐食試験
ポリイミドコーティングの腐食保護性質を検討するために、DIN 50021/ASTM B117に従い、全てのコーティングをSSTに約500時間にわたりかけた。これらの実験は、ポリイミドマトリックスおよび金属基質の間の界面が加水分解に対して非常に敏感性であることを示す。クリーニングされた鋼表面上に直接適用された全てのポリイミドコーティングは約70時間のSST後に離層した。この離層の典型的な例証が図12に示される。
【0093】
加水分解に対する敏感性および離層の理由は、ポリイミド類の接着性が重合体層および金属表面の間のエステル結合の形成に基づくという事実により説明できる。これらのエステル基の源はポリアミド酸であり、それはポリイミドシステム用の前駆体として使用される。これらのエステル結合がイミド化をもたらす加水分解用に使用可能な部位であり、それが接着性の欠如をもたらしうる(図13)。
【0094】
この問題を解決するために、金属に対する界面の安定化を適切なプライマーの使用またはポリイミドマトリックス自体の改質により行って、表面上で異なる安定な固定基を得ることができる。イソシアネート類は金属表面との複合体を生成しそしてジイソシアネート類との反応によりエステル表面基の改質を生じてイソシアネート固定基を得る。このタイプのマトリックス改質は試行試験で試験されたが、離層問題を解決したことは見出されなかった。
【0095】
ポリイミドコーティングの接着性を改良するために、2種のプライマーシステムである(a)シラン基が金属表面に対する安定な複合体を生成するシランをベースとしたプライマーおよび(b)エポキシ基と金属表面との反応により接着が生ずる市販のエポキシをベースとしたプライマーを試験した。GPTES(グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)を有するシランをベースとしたシステムはポリイミドコーティングおよび金属基質表面の間の界面を安定化させることが予期される。SSTの結果に基づくと、GPTESプライマーシステム自体は加水分解に対して敏感性である傾向があり、それが500時間のSST後に離層をもたらすことを結論しうる。
【0096】
エポキシをベースとしたプライマーでは、以下の結果が得られた(図15A、15Bおよび図16A)。GPTESプライマー(図14)と比べて、エポキシプライマーの使用は接着性における増加をもたらす。さらに、約300時間のSST後(図15A)並びに約500時間のSST後(図15B)では、MoS2/SiC(TP30)およびグラファイト/SiC(TP14)を含むポリイミドシステムはそれぞれ引っ掻き傷の近くで実質的に離層を示さなかった。両方の試料上で、小さい膨れだけが検出された(例えば、図16B)。
【0097】
グラファイト/SiC(TP14)およびMoS2/SiC(TP30)コーティングの間の少なくとも1つの差異はグラファイト/SiCコーティング中のものより小さいMoS2/SiCコーティングの膨れであった。
【0098】
約500時間のSSTの条件に合格した後の膨れ下の腐食を検討するために、MoS2/SiCコーティングの膨れを手により開けた。膨れの下には金属表面上で実質的に腐食は検出されなかった。コーティングの完全剥離によっても同じ結果が得られ、実質的に腐食が観察されず、以前の状態を確認した(図17A、17B、17C)。
【0099】
以上で示された結果から、ポリイミドマトリックスの障壁性質は、部分的に離層された領域でさえ、腐食傾向を少なくとも部分的に抑制するのに充分でありうることを結論しうる。
【実施例9】
【0100】
実施例9:選択されたポリイミドコーティングシステムの別の改良
2種の最も有望なコーティングシステムにおいて膨れを分析した後に、コーティング内部の機械的応力が膨れの主要原因であることが推定される。この問題に対する可能な解決法はコーティングの柔軟性すなわち弛緩能力の増加であることが予期される。この仮説は、ガラス転移温度を低下させそしてその結果としてコーティング内部で機械的応力弛緩を引き起こしうるようにするための柔軟性ポリシロキサン単位(ポリジメチルシロキサン、アミノプロピル末端、分子量約900−1000g/モル)を用いるポリイミドマトリックスの改質により検討された。図18は約300時間のSST後のこのポリシロキサン改良マトリックス(TP65)のコーティングを示す。
【0101】
TP65のコーティングは約1gのポリジメチルシロキサンで改質されたコーティングTP14である。コーティングは実質的に膨れを示さず、腐食を示さずそして優れた接着
性を示した。
【0102】
ポリイミドコーティングシステムコーティング同定のまとめ
一面で、ポリイミドをベースとしたコーティングシステムは、以下の表における概観で示されているように、有望な摩擦学的性質を示す:
【0103】
【表6】
【0104】
別の面で、コーティングシステムは約500時間の露呈時間で中性塩噴霧試験に合格し、わずかだけの膨れがありそして膨れの下には実質的に腐食はなかった。行われたさらなる研究は膨れの外観に関する原因を克服できる証拠を示した。
【0105】
他の面で、上記のようにして行われた研究は最終的コーティング物質を均衡させそして最適化するためのさらなる開発中に種々の組成パラメーターを使用できることを示している。
【0106】
実施例−エポキシをベースとしたコーティングシステム
エポキシドシステム用の重合体マトリックスは積層樹脂「L20」をベースとし、それはオリゴマー状ビスフェノール−A−エピクロロヒドリン樹脂よりなる。このシステム用の硬化剤として、イソホロンジアミンが使用された。そのような樹脂に関する典型的な用途はグラスファイバー強化製品である。樹脂が低い粘度を有し、それが比較的高い濃度においてさえ無機充填剤の分散を可能にするはずであるという事実のために、この物質は選択された。エポキシド樹脂は実質的にいずれの有極性表面に対しても優れた接着性を示し、そして、その結果として、ポリイミドマトリックスをベースとしたコーティングシステムに対して改良された固有の腐食保護能力を与えるはずである。この観点から、摩擦学的並びに腐食試験においてプライマーをさらに使用せずに最初の実験が行われた。そのように構成されると、エポキシをベースとしたコーティングシステムはポリイミドシステムと比べて改良された腐食保護を得るためのさらなる選択肢を与えることが予期される。
【実施例10】
【0107】
実施例10:摩擦学的同定−グラファイト/エポキシコーティングシステム
図19および表5はグラファイトを含有するエポキシをベースとしたコーティング組成物に対して行われた選択された実験を示す。
【0108】
【表7】
【0109】
潤滑剤としてグラファイトを有するエポキシをベースとしたシステムでは、ポリイミドをベースとしたシステムに匹敵する結果が得られた。平均摩擦係数は概略μ=0.15−0.3の範囲内であった。しかしながら、コーティング層の破損のために、摩耗係数の測定は可能でなかった。
【0110】
システムに対するD10Hの接着性は短期滑動工程(TE5−TE6)ではわずかに正の影響を示したが、概略μ=0.1−0.15の摩擦係数が得られた。試験中に、それぞれ約2000サイクルおよび4000サイクル後にコーティング層が破損する傾向があったことが観察された。この性能に関する可能な理由は、以前に検討したポリイミドマトリックスと比べて低いエポキシマトリックスの固有熱安定性のために摩擦行程中のマトリックスの熱破壊および破損をもたらしうることである。
【実施例11】
【0111】
実施例11:摩擦学的同定−MoS2/エポキシコーティングシステム
エポキシシステム中の固体状態潤滑剤としてのMoS2も評価した。表6および図20は固体状態潤滑剤としてMoS2を含有するエポキシをベースとしたコーティングの同定の結果を示す:
【0112】
【表8】
【0113】
MoS2を含有する層に関して、平均摩擦はそれぞれ約1000および2000サイクル後に概略μ=0.55であることが測定された(図20)。
【0114】
高温における摩擦化学性により生成する酸化物と組み合わされた潤滑剤としてのMoS2は金属と接触する時に摩擦工程において有意な役割を演ずる。この場合には、エポキシをベースとしたマトリックスはその生成に関する温度の臨界点に達する前に軟化するため酸化物は実質的に生成できないことが信じられている。
【実施例12】
【0115】
実施例12:摩擦学的同定−HDPE/D10H含有エポキシコーティングシステム
検討した第三の固体状態潤滑剤は重合体状HDPEであった。HDPEはエポキシ樹脂に関して要求される低い硬化温度のためにエポキシ樹脂中で使用できる(表7、図21)。
【0116】
【表9】
【0117】
HDPEを含有するコーティングに関する検討は、HDPE量が増加するにつれて摩擦係数が減少することを示した。約4gより多いHDPE含有量を有するコーティングに関して、摩擦係数が測定されそして概略μ=0.05−0.15の範囲内であった。摩耗係数も実質的に低く、概略k<2.0E−6mm3/Nmであることが測定された。
【実施例13】
【0118】
実施例13:種々の潤滑剤を有するエポキシをベースとしたコーティングシステムの摩擦学的性質の比較
図22は種々の潤滑剤を有するエポキシをベースとしたコーティングシステムの摩擦学的同定をまとめている。
【0119】
エポキシをベースとしたコーティングシステムの摩擦学的同定に対する種々の潤滑剤の影響の試験は、HDPEでは比較的低い摩擦係数が得られうることを示した(図22)。ポリイミドシステムとは対照的に、約120℃より低いエポキシ樹脂の比較的低い硬化温度のためにHDPEをエポキシコーティング中で使用できる。
【0120】
これらの結果から、固体状態潤滑剤としてHDPEを有するエポキシマトリックスをベースとしたコーティングシステムは有望であることを推論できる。この組み合わせでは、ベースマトリックスおよび潤滑剤自体が重合体であるシステムを得ることができ、それはエポキシおよびHDPEの両者がコーティングのマトリックス成分として作用することを意味する。これは、さらに、追加の腐食保護が要求される場合には、コーティングがナノ粒子をベースとした腐食抑制剤を本来的に含むことを意味する。
【実施例14】
【0121】
実施例14:エポキシ/HDPEコーティングシステムの腐食試験
HDPE含有エポキシコーティングシステムの優れた摩擦学的性能のために、腐食評価を行った。上記の有望な結果および有極性表面に対するエポキシシステムの予期される良好な接着性のために、コーティングをプライマーなしでクリーニングされた鋼表面上に適用した。組成物TE13(未充填のエポキシ/HDPEコーティング)のSSTの結果を
図23に示す。
【0122】
図23から、約200時間の塩噴霧試験後にコーティングが引っ掻き傷の周辺で離層を示すことが観察された。
【0123】
エポキシ/HDPEコーティングの腐食耐性をさらに改良するために、追加化合物をコーティング組成物に加えることができる。例は腐食抑制剤としての亜鉛および燐酸亜鉛(II)、伝導剤としてのカーボンブラック、並びに強化剤としてのSiCを包含するが、それらに限定されない。検討されたコーティングであるTE20は約25gのエポキシ、約4gのHDPE、約0.5gの燐酸亜鉛(II)、約2gの亜鉛および約0.5gのカーボンブラックを含有していた(表7)。このシステムに対する塩噴霧試験の結果は図24に示される。
【0124】
図24Aおよび24Bに示されているように、組成物TE20は約500時間のSST後に膨れを示さず、良好な接着性を示しそして腐食を示さなかった。有利なことに、この結果はプライマーを使用せずに得られた。
【実施例15】
【0125】
実施例15−単一添加剤を有するエポキシマトリックスコーティングシステム
抗腐食性および接着用添加剤の影響を個別に評価するために選択された実験を行った。実施例15では、試験された抗腐食添加剤はタルクであるMicrotalc(R) AT1(ノルウェージアン・タルク・ドイッチュランド(Norwegian Talc Deutschland)GmbH)、酸化亜鉛であるHeucophos(R) ZCP(オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物)、Heucophos(R) ZAM(オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物)、およびHeucorin(R) RZ(5−ニトロイソフタル酸亜鉛)であった。エポキシを以上で論じた通りにして製造しそして抗腐食化合物と混合した。コーティング組成物を引き続き以上で論じたクリーニング工程2に従いクリーニングされた鋼表面上に噴霧コーティングしそして硬化した。表8は試験した組成物を示す。
【0126】
【表10】
【0127】
図25Aおよび25Bは組成物TE33およびTE44の性能を約400時間にわたる中性塩噴霧試験後に比較している。約12重量%のMicrotalc(R) AT1がTE33中に存在したが、約12重量%のZnOがTE44中に存在した。試験後に各コーティングの表面を試験すると、TE33コーティング(図26A)は表面下泳動を示すことが見出されたが、TE44コーティング(図26B)は引っ掻き傷のところで実質的に膨れを示さなかった。これらの観察から、ZnOは接着用添加剤としてAT1より有効であるようである。
【0128】
図26A−26Cは約400時間のSST後の組成物TE48(図26A)、TE49(図26B)、およびTE50(図27C)の性能を比較している。約10重量%のHeucorin(R) RZが組成物TE48中に存在したが、約10重量%のHeucophos(R) ZAMが組成物TE49中に存在し、そして約10重量%のHeucophos(R) ZCPが組成物TE50中に存在した。試験後に各コーティングの表面を試験すると、TE48コーティング(図26A)は有意な表面腐食を示したことが見出されたが、TE49(図26B)およびTE50コーティング(図27C)は実質的に膨れを示さずそして引っ掻き傷のところでほぼ腐食を示さなかった。これらの観察から、オルト燐酸塩組成物であるTE49およびTE50はニトロイソフタル酸塩組成物であるTE48と比べて改良された腐食耐性を与えるようである。
【0129】
図27Aおよび27Bは約668時間のSST後の組成物TE49およびTE50(それぞれ、Heucophos(R) ZAMおよびZCP)の性能を比較している。試験後に各コーティングの表面を試験すると、TE49コーティング(図27A)は引っ掻き傷離層を示したことが見出されたが、TE50(図27C)は部分的離層だけを示した。
【0130】
組成物TE33、TE44、TE48、TE49、およびTE50の摩擦係数もピン−オン−ディスク試験により試験した。これらの試験の結果は図28にまとめられている。ZnO含有コーティングであるTE44は試験した試料の中で最低の摩擦係数を示したことが見出された。短い初期期間にわたって、それぞれ、Heucophos(R) ZAMおよびZCPを含有するコーティングであるTE49およびTE50はZnOに匹敵する摩擦係数を示した。
【実施例16】
【0131】
実施例16−腐食耐性−ZnO添加剤、延長された露呈
エポキシマトリックスをHDPE潤滑剤およびZnO接着用添加剤と共に含んでなるコーティングであるコーティング組成物TE44を試験した。1つの態様では、エポキシはエポキシ樹脂L20および硬化剤EPH161(R & G GmbH)を含んでなっていた。樹脂および硬化剤を約100:29容量比で混合して約25gの合計エポキシ質量を与えた。このエポキシ混合物に約4gのZnOおよび約4gのHDPEを加えた。組成物を混合してZnOおよびHDPEを重合体マトリックス内に実質的に均一に分散させた。コーティング組成物を引き続き上記の2種の工程に従いクリーニングされた鋼表面上に噴霧コーティングしそして硬化した。1つの態様では、硬化は製造業者の指示に従い約24時間にわたりほぼ室温において行うことができ、その後に約15時間にわたり約60℃の最低温度においてアニーリングした。別の態様では、コーティングを約150℃までの温度においてアニーリングすることができる。
【0132】
このようにして製造されたコーティングの腐食耐性を平らな試料上で塩噴霧試験を用いて試験した。図29A−Cは約500時間(図29A)、1100時間(図29B)、および2000時間(図29C)のSST露呈時間後に試験した試料を示す。結果は、コーティングが塩噴霧試験に合格しそして2000時間までの露呈でさえ試料内で離層または膨れが実質的に観察されないことを示している。
【0133】
コーティングの腐食保護能力をさらに試験するために、コーティングを実質的に除去して下層にある金属表面の試験を可能にした。コーティング除去は約1時間にわたる約100℃における約10%のNaOH溶液への露呈により行われた。
【0134】
図30は生じた露呈された金属表面を示す。表面上に腐食は実質的に観察されなかった。しかしながら、他の表面特徴は存在する。これらの特徴は引っ掻き傷のところの膨れまたは表面の不充分なクリーニングに起因しうることが考察される。
【実施例17】
【0135】
実施例17−腐食耐性−D10H、ZnO、およびZCP添加剤を有するエポキシマトリックスコーティング
実施例17の組成物をさらに改質してコーティング性能を改良する。ある種の態様では、Fluorolink D10Hを含んでなる反応性フルオロ重合体およびHeucophos(R) ZCPを含んでなる別の腐食抑制剤をコーティング組成物に加えた。コーティング組成物を以上で論じられたクリーニング工程3に従いクリーニングされた鋼表面上に噴霧コーティングしそして硬化した。試験した組成物中の各成分の割合を表9に概略表示する。
【0136】
【表11】
【0137】
表9に示されているように、試料TE60およびTE61はZCPの不存在下におけるZnOの寸法の影響を検討した。試料TE62、TE63、およびTE64は約1μmの寸法のZnO粒子に関して約0.5〜2gの範囲にわたるZCPの量の影響を検討したが、試料TE65、TE66、およびTE67は約50nmのZnO粒子に関して同じことを検討した。試料TE68はZCPまたはZnO添加なしの基準値を与える。
【0138】
2000時間の露呈後のSST試験の結果を以下の表10に示す。これらの試料は各組成物に関して製造された。結果は各試料に関してそして3種の試料の平均に関して示されている。
【0139】
【表12】
【0140】
表10にある最初の数字は引っ掻き傷の周りで最初に膨れが観察された時間を示す。表10にある第二の値は試料の表面上で膨れが観察された時間を示す。OKの記入は約2000時間後に試験が終了した時に実質的に膨れが観察されないことを示す。表10に示されているように、組成物TE64およびTE67は両方とも試料の表面上に明白な膨れが実質的にないままであった。これらの2種の組成物は最高量のHeucophos(R) ZCPを有するため、この結果はHeucophos(R) ZCPが腐食耐性の改良において有意な役割を演ずることを示す。
【0141】
コーティング組成物TE64は約77.4%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink D10H、6.2重量%のHeucophos ZCP、および約12.4重量%の約1μmの寸法を有するZnOを含んでなっていた。TE67は約77.4重量%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink D10H、6.2重量%のHeucophos ZCP、および約12.4重量%の約50nmの寸法を有するZnOを含んでなっていた。全ての百分率は組成物の重量を基準とする。
【0142】
コーティングTE64およびTE67中の腐食の程度も種々の概略露呈時間:500時間、860時間、1500時間、1868時間、および2000時間(TE64)並びに860時間、1000時間、1500時間、1500時間、1868時間、および2000時間(TE67)後に試験した。試験では、コーティングにより保護された領域で表面腐食が実質的に観察されないことが両方のコーティング中で見られた。コーティングを実施例18に関して以上で論じられたようにNaOHを用いる処理により引っ掻き傷付近で除去した後の金属表面の外観の試験は、引っ掻き傷付近の領域内で金属では腐食を実質的に見出さなかった。これらの結果に基づき、2種のZnO含有組成物であるTE64およびTE67は抗−腐食コーティングとして実質的に匹敵する性能を示す。
【0143】
組成物TE60、TE61、TE64、およびTE67、並びにTE68と称するZnOまたはZCPを添加しない対比コーティングの摩擦係数をピン−オン−ディスク試験により試験した。これらの試験の結果は図31にまとめられている。これらの結果は、短い期間にわたり約0.15より低い摩擦係数が得られうることを示す。
【実施例18】
【0144】
実施例18−腐食耐性−ねじ込み連結部
図32Aおよび32Bは組成物TE64(図32A)およびTE67(図32B)で部分的にコーティングされたねじ込み連結部に対して行われた塩噴霧試験の結果を示す。それぞれのねじ込み連結部の左手側はコーティングされたが、右手側はされなかった。それぞれの連結部を約500時間にわたりSSTにかけた。図32A、32Bに示されているように、それぞれのねじ込み連結部の左手側は腐食が実質的になかったが、それぞれのねじ込み連結部の右手側は有意な腐食を示す。
【実施例19】
【0145】
実施例19−第二の潤滑層と組み合わされた腐食耐性層
コーティングの摩擦および摩擦学的性質を評価するために、良好な腐食耐性を示したコーティングシステムTE64およびTE67を金属−対−金属シールおよびトルク肩並びに約3.5インチの外径を有する「高級連結部」として知られる市販のねじ込み連結部(TenarisBlue(R)、テナリス(Tenaris)、アルゼンチン)に適用した。
【0146】
TE64でコーティングされたピンおよびむき出しの箱並びにTE67でコーティングされたピンおよびむき出しの箱を用いて数回の組み立ておよび解体操作を行った。試験の重要なパラメーターは、連続的な組み立ておよび解体操作による回転に対するトルク、肩トルク(これは滑動中の摩擦に関係する)およびその一貫性並びに焼き付け耐性性能である。ここで使用される用語「肩トルク」は当業者に既知であるその通常の意味を有する。ここで記述されるねじ込み連結部に関すると、肩トルクはピンの肩および箱の肩が実質的に接してパイプの組み立て中に測定される回転に対するトルクのプロットの傾斜における突然の変化を生ずる時のトルクを称すると理解されよう。両方のコーティングシステムで満足のいく抗−焼き付け性質が観察され、肩トルクにおける変動は約3000〜4500lbf.ftであった。
【0147】
別の試験が行われ、そこではコーティングシステムTE64およびTE67がピン上に適用されそして上記の第二の潤滑性コーティング組成物が箱の内表面上に適用された。
【0148】
転属的な組み立ておよび解体操作中に、両方のコーティングシステムは驚くべき抗−焼き付け特徴および一貫した摩擦性質を示した。肩トルク値は約2000〜3000lbf.ftの範囲であり、箱に適用された乾燥膜潤滑剤の寄与による摩擦係数における低下を示した。
【実施例20】
【0149】
実施例20−固体潤滑剤を添加しない腐食耐性層
エポキシ、反応性フルオロ重合体(D10H)、腐食抑制剤(Heucophos(R)
ZCP)、およびZnOのナノ粒子をベースとした腐食耐性コーティングシステムを検討した。これらのコーティングシステムは固体状態潤滑剤を含有しなかった。検討したコーティング組成物を以下の表11に詳述する:
【0150】
【表13】
【0151】
コーティングシステムをQ−パネル類(Q−Panels)(Q−ラブ・コーポレーション(Q−Lab Corporation)、クリーブランド、オハイオ州)上に適用しそして約30分間にわたり約150℃において硬化し、1個の試料当たり3個の試験パネルを製造した。低炭素鋼から製造されたQ−パネル類は、実質的に同様な条件下で、N80基質より速く腐食を示し、促進腐食試験を行うための方法を提供した。それ故、Q−パネル類を用いる腐食試験は促進試験による種々のコーティングシステムの腐食耐性の比較を可能にする。
【0152】
試験試料を試験室内に入れそして約35℃においてASTM基準B117に従い塩溶液(約5重量%のNaCl)に連続的に露呈した。腐食進行を定期的な時間間隔でさらに監視した。約750時間の露呈時間後に、コーティングシステムの各々はほんの小さい腐食証拠を有する良好な腐食耐性を示した。コーティングシステムTE105、TE106、TE107、およびTE108の中で、TE108コーティングが最も少ない腐食徴候を有する最良の腐食耐性を示した。
【0153】
以上の記述はこの教示の基本的な新規な特徴を示し、記述し、そして指摘してきたが、示されている装置の詳細な形態並びにそれらの使用における種々の省略、代替、および変更を、この教示の範囲から逸脱せずに、当業者により行うことができる。従って、この教示の範囲は以上の論議に限定すべきでなく、添付された特許請求の範囲により定義されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願に関するクロスリファレンス
本出願は、各々がここに引用することにより本発明の内容となる、2006年12月1日に出願された潤滑性および腐食耐性のためのナノ複合コーティング(Nanocomposite Coatings for Lubrication and Corrosion Resistance)の名称の米国特許暫定出願第60/872615号、2007年4月27日に出願された潤滑性および腐食耐性のための重合体コーティング(Polymer Coating for Lubricating and Corrosion Resistance)の名称の米国特許暫定出願第60/914699号、および2007年5月29日に出願された潤滑性および腐食耐性のためのコーティング(Coatings for Lubrication and Corrosion Resistance)の名称の米国特許暫定出願第60/940690号の優先権を35U.S.C.§119(e)の下で主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の態様は、特にねじ込み連結部用の、コーティングシステムに関し、そして、1つの態様では、腐食耐性のためのナノ複合コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記述
油田では、油または気体を地下貯蔵所またはプールから抜き出すために金属製パイプを使用することが常套的方法である。この抜き出し技術は一般的に、地中の油井のボーリング、並びに油井に対して構造的安定性を与えそしてそれが壊れるのを防止するためのケーシングと称する比較的大きい直径の金属製パイプを有する油井の内部枠を必要とする。従って、油井の必要な深度に達したら、気体状または液体の炭化水素を地表へポンプで汲み上げるためにチュービングと称する比較的小さい直径の金属製パイプの紐が油井の中に置かれる。チュービングを形成するパイプは抜き出しに必要な深度に達するのに充分な定められた長さの紐の中で連結される。ケーシングおよびチュービングの両方の一続き(string)はパイプ部分から構成され、それらはねじ込み連結部を用いて一緒に連結される。
【0004】
ケーシングまたはチュービングパイプのいずれかの組み立て中に、滑動接触しているねじおよびパイプの他の表面内の焼き付けが、起きうる大きな問題である。焼き付けを回避するためにパイプの組み立て中にねじ込み連結部の雄および雌部品のねじの表面上でドープまたはグリースを使用することが常套的方法である。ドープは典型的には例えばPbまたはCuの如き重金属の小粒子を使用する。
【0005】
しかしながら、ドープの使用は大きな欠点も有する。とりわけ、過剰濃度の重金属は人間および動物の体内でそれらの蓄積をもたらして、重篤な病気をもたらしうる。さらに、ドープ中に存在する重金属は土壌、地下水、および海水を汚染する可能性があり、環境公害となりうる。さらに、これらの公害を鑑みると、ドープの使用時には重金属の廃棄を規制する厳密な規則に注意を必要とし、それはその使用価格を高める。
【0006】
上記の事象の他に、ドープの使用は他の操作、例えば使用中の現場でのねじ込み連結部のクリーニングおよびドーピング、を必要とする。しかしながら、これらの操作は莫大に労力がかかるため、それらは費用がかかり且つ時間もかかる。さらに、これらの操作は移動しているパイプへの露呈を必要としそしてしばしば悪条件下で行われるため、それらは
人間を安全性における危険にさらす。
【0007】
ドープの使用における別の潜在的な危険性は「不足ドーピング」または「過剰ドーピング」である。不足ドーピングでは、不充分なドープが与えられおよび/またはドープがねじ込み連結部の全表面上に分布されず、焼き付けを適切に抑制することに失敗する。過剰ドープの適用は不足ドーピングを処理しうるが、このやり方は連結部のねじ上に多すぎるドープが置かれる状態である過剰ドーピングの危険性がある。過剰ドーピングは、連結部の組み立て中に、過剰ドープをパイプ区分のねじ込み部分の端部を通して空にできないというありうる結果となる。それ故、停留されたドープは連結部内部で高い圧力を発生して、ねじ込み部分内のパイプ区分の可塑的変形をもたらしうる。極端な場合には、そのような可塑的変形は継手の雄部品の破壊を引き起こして、連結部を無効にし、そしてパイプ区分および/またはスリーブの交換を必要としうる。
【0008】
これらの問題を処理するためにドープを使用しない抗−焼き付け溶液が試験されてきた。一面で、Imai他に対する国際特許出願である特許文献1は、固体潤滑性粉末および結合剤を含んでなる下部層、並びに固体粒子を含まない固体腐食保護コーティングの上部コーティング層を含有するコーティング組成物を開示している。継手を固定する時に、腐食保護コーティングは接触部分において固定中に起きる摩擦により徐々に摩耗して下層にある固体潤滑性コーティングを露呈し、それがその潤滑作用を与える。
【0009】
別の面で、Petelot他に対する特許文献2は、金属製のねじ込みチューブの保護用の抗−シージング性(anti−seizing)コーティングを記述している。コーティングは、基質上に形成される銅、ニッケル、またはクロムの下層にある層の上に形成される鉛層の酸化により製造される薄い酸化鉛層を含んでなる。
【0010】
他の面で、Goto他に対する特許文献3は、少なくともワックスおよび脂肪酸アルカリ土類金属塩を含んでなり重金属を含まない粘着性の液体または半固体の潤滑性コーティングの下部層を有する改良された焼き付けおよび腐食耐性を有するねじ込み継手を開示している。コーティングは水性樹脂コーティング組成物から製造される乾燥固体コーティングの上部層も含んでなる。
【0011】
しかしながら、これらのやり方のそれぞれは欠点を有する。Imaiのやり方は、磨耗して潤滑性層を露呈する比較的軟らかい腐食保護コーティングに依存する。そのため、腐食保護層の機械的耐性は低くそしてこの層は時間が経つにつれて望まれざる領域で摩耗されて、コーティングの腐食保護能力を有意に減じうる。Petelotにより提案されたやり方は重金属、例えば鉛および銅、を使用するため以上で論じされたようにそれに伴う環境および毒性公害をもたらす。Gotoにより提案されたやり方も、液体または半固体の潤滑性コーティングの下部層が下部層組成物の適用時に過剰ドーピングまたは不足ドーピングの問題を課すであろうという点で問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2006/075774号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,253,902号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/104251号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
少なくとも以上の理由のために、特に油およびガス製造工業で直面する過酷な環境において、改良された腐食耐性を与える保護システムに関する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
この開示の態様はねじ込み継手を提供する。1つの態様では、ねじ込み継手はピン部品および箱部品を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。ねじ込み継手は、ピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくとも一部の上に沈着される第一のコーティング組成物もさらに含んでなる。1つの態様では、第一のコーティング組成物は
重合体、
重合体用弗素含有改質剤、
少なくとも1種の抗腐食添加剤、および
約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する少なくとも1種の金属酸化物を含んでなる。
【0015】
ある種の態様では、第一のコーティング組成物はピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくとも一部の上に置かれる第二のコーティング組成物と組み合わせることができる。1つの態様では、第二のコーティング組成物は
重合体、
重合体内に分散された固体潤滑剤、
金属酸化物、および
溶媒
を含んでなる。
【0016】
この開示の別の態様もねじ込み継手を提供する。1つの態様では、ねじ込み継手はピン部品および箱部品を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。ねじ込み継手は、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物もさらに含んでなる。1つの態様では、第一のコーティング組成物は
エポキシ類(epoxies)およびポリイミド類よりなる群から選択される重合体、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%のオルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0017】
別の態様では、ねじ込み継手はピン部品および箱部品を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。ねじ込み継手は、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物もさらに含んでなる。1つの態様では、第一のコーティング組成物は
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%の、Zn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0018】
この開示の態様はねじ込み継手を保護する方法もさらに提供する。1つの態様では、この方法はピン部品および箱部品の用意を含んでなり、ピン部品は箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する。この方法は第一の組成物の用意もさらに含んでなる。第一のコーティング組成物は
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%のZn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0019】
この方法は第二のコーティング組成物の用意もさらに含んでなる。第二のコーティング組成物は乾燥膜潤滑剤を含んでなる。
【0020】
この方法は第一および第二のコーティングの各々をピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくともねじ部分上に適用することも含んでなる。
【0021】
開示の他の態様はねじ込み継手を提供する。継手は
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有し、ピンまたは箱部品の少なくとも1つの表面がサンドブラストされている、ピン部品および箱部品;
エポキシ、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%の、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、および
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなり、第一のコーティング組成物の残部はエポキシから構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、ピン部品のねじ部分上に置かれる第一のコーティング組成物;並びに
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、箱部品のねじ部分上に置かれる第二のコーティング組成物
を含んでなる。
【0022】
この開示の他の態様はねじ込み継手または他の表面に適用できる組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はピン部品および箱部品の噛み合っているねじを含んでなる継手の態様の断面図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、少なくとも腐食保護を与えるためのピンおよび箱の先端の噛み合っている表面上に置かれる第一および第二のコーティングシステムを示す、図1のピンおよび箱部品の断面図である。
【図3】図3A−3Eは、第一および第二のコーティングシステムの態様の配置を示す、ピンおよび箱部品の噛み合っている表面の図式的例証図である。
【図4】図4は、コーティングシステムが基質に優れた接着性を与えることを示す、固体状態潤滑剤としてグラファイトを用いるポリイミドをベースとしたコーティングシステムの1つの態様のクロスカットテープ試験の写真である。
【図5】図5はグラファイト対SiCの変動比を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図6】図6はグラファイトを含有しそして重合体状炭素弗素化アルコール(D10H)の変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図7】図7はMoS2およびD10Hの変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図8】図8はMoS2およびSiCの変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図9】図9はPTFEおよびSiCの変動濃度を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図10】図10はD10Hを含有しそして異なる固体状態潤滑剤(TP9):グラファイト、TP11:PTFE、TP30:MoS2、TP36:HDPE、TP33:MoS2/SiC、TP14:グフラファイト/SiC)を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図11】図11は異なる固体状態潤滑剤を有するポリイミドマトリックスコーティングの態様に関する回数の関数としての平均摩擦係数および摩耗係数のヒストグラムである。
【図12】図12は、約70時間の中性塩噴霧試験(SST)後の、プライマーを含まない(組成物TP30)離層されたポリイミドコーティングの1つの態様の写真である。
【図13】図13は加水分解ポリイミド/金属界面層の機構を示す。
【図14】図14は約500時間のSST後のポリイミドコーティング組成物TP9の態様の写真である。グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)プライマーがコーティングおよび基質の間に存在する。
【図15】図15Aおよび15Bは市販のエポキシプライマーを有するポリイミドコーティング組成物TP14の態様の写真である;(15A)約300時間の塩噴射試験後;(15B)約500時間の塩噴射試験後。
【図16】図16Aおよび16Bは市販のエポキシプライマーを有するポリイミドコーティング組成物TP30の態様の写真である;(16A)約500時間のSST後;(16B)コーティング表面のむき出しの膨れを示す16Aのクローズアップ図。
【図17】図17A−17Cはコーティングの剥離を示す、約500時間のSST後のポリイミドコーティング組成物TP30の態様の写真である;(17A)粘着しなかったコーティングの剥離直後−実質的に腐食が観察されない;(17B)環境条件への約10分間の露呈後、以前はきれいな露呈された基質表面が錆を示す;(17C)環境条件への約10分間の露呈後、頂部上のコーティングが除去されて実質的に腐食を示さない。
【図18】図18は約300時間のSST後のコーティング組成物TP65の態様の写真である。
【図19】図19はグラファイトおよびD10Hの変動濃度を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図20】図20はMoS2の変動濃度を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図21】図21は異なるHDPE濃度を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図22】図22は異なる潤滑剤を有するエポキシマトリックスコーティングの態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図23】図23は引っ掻き傷周辺の離層を示す、約200時間のSST後の、プライマーを含まないコーティング組成物TE13の態様の写真である。
【図24】図24Aおよび24Bは塩噴霧試験後のプライマーを含まないコーティング組成物TE20の態様の写真である:(24A)約200時間のSST後;(24B)約500時間のSST後。
【図25】図25Aおよび25Bは約400時間のSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE33およびTE34の態様の写真である;(25A)TE33;(25B)TE44。
【図26】図26A−26Cは約400時間のSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE48、TE49、TE50の態様の写真である;(26A)TE48;(26B)TE49;(26C)TE50。
【図27】図27Aおよび27Bは約400時間の中性塩噴霧露呈後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE49およびTE50の態様の写真である;(27A)TE49;(27B)TE50。
【図28】図28は変動する抗腐食添加剤を有するエポキシマトリックスコーティング組成物TE33、TE44、TE48、TE49、TE50の態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図29】図29A−29CはSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE44の態様の写真である;(29A)500時間;(29B)1100時間;(29C)2000時間。
【図30】図30はSST後のエポキシマトリックスコーティング組成物TE44の下層にある金属製基質の写真である。
【図31】図31は変動量のHeucophos(R)ZCPおよびZnO並びに変動サイズのZnOを有するエポキシマトリックスコーティング組成物TE60、TE61、TE64、TE67、TE68の態様に関して摩擦係数を回数の関数としてプロットするグラフである。
【図32】図32Aおよびは32Bはエポキシマトリックスコーティング組成物TE64(32A)およびTE67(32B)で部分的にコーティングされたねじ込み連結部ねじの態様の写真である;腐食はコーティングされていない領域で観察されうる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましい態様の詳細な記述
この開示の態様は、ねじ込み連結部の保護のための、コーティングシステムおよび製造方法を開示する。ある種の態様では、コーティングシステムは少なくとも腐食耐性を与えるためのねじ込み連結部の表面の少なくとも1つの少なくとも一部への沈着のために構成される第一のコーティングを少なくとも含んでなる。場合により、第一のコーティングは潤滑性も与えうる。別の態様では、コーティングシステムは第一のコーティングを潤滑性を与えるためのねじ込み連結部の表面の少なくとも1つの少なくとも一部への沈着のために構成される第二のコーティングと組み合わせて含んでなる。特に、コーティングは鋼パイプねじ込み連結部の如き用途に適しており、そこでは組み立て工程中に摩擦により引き起こされる極端に高い負荷および高い局部的温度が存在する。ねじ切り鋼パイプに関するさらなる詳細は「チューブ用のねじ込み継手(Threaded Join for Tubes)」の名称の米国特許第6,921,110号、「表面処理されたねじ切りパイプ(Threaded Pipe with Surface Treatment)」
の名称の米国特許第6,971,681号、「高および低摩擦性コーティングを有するねじ込み連結部(Threaded Connections With High and Low Friction Coatings)」の名称の国際特許出願番号国際公開第2007/063079号に見出すことができる。
【0025】
以下で論じるコーティングシステムはねじ込み連結部で使用される時には有意な性能利点を与える。一般的に、製造されたパイプは海外から輸送され、その時間中にそれらは海洋環境に露呈される。さらに、製造されたパイプは典型的には長期間にわたり帆装部位近くに屋外で貯蔵され、そして局地的な気候条件、例えば雨および低いまたは高い温度、を受ける。これらのタイプの環境への露呈は腐食をもたらし、パイプ組み立てのためだけでなく連結部の一体性および性能に関しても不利である錆の生成を生じうる。それ故、パイプ輸送および貯蔵中の腐食を回避するために従来の連結システムは貯蔵用化合物を使用する。貯蔵用化合物はパイプ組み立て直前に除去しなければならずそしてパイプの固定を補助するために連続的にドープ化合物が適用される。
【0026】
有利なことに、ここに記述されるドープを含まない連結部は抗−腐食性質および、場合により、潤滑性質を有する。それ故、これらの連結部は工場施設で処理され、輸送され、貯蔵され、そして組み立て前にはさらなる処理がされない。その結果、貯蔵化合物を除去しそして連続的にドープ化合物を適用する余分の段階を回避して、パイプを組み立てるための時間および費用を減らすことができる。
【0027】
ある種の態様では、第一のコーティングは内部に分散された腐食抑制添加剤を有する単一層の重合体マトリックスを含んでなる。添加剤は下層にあるねじ込み連結部を腐食から保護する能力を有するコーティングを提供する一方で、重合体マトリックスは適当な温度安定性および接着性を有する第一のコーティング組成物を提供する。別の態様では、ナノ−スケールの強化剤を重合体マトリックス内にさらに分散させることができる。有利なことに、強化剤は改良された機械的性質、特に摩擦学的性質、例えば摩耗耐性、を与える。他の態様では、固体状態潤滑剤を第一のコーティング組成物の重合体マトリックスに加えて選択された摩擦係数をコーティングに与えることもできる。
【0028】
ある種の態様では、第二のコーティングはエポキシ樹脂および溶媒の混合物中に分散された固体潤滑剤を含んでなる。必要に応じて、別の添加剤、例えば接着促進剤および重合体改質剤、を第一および第二のコーティング組成物の各々にさらに加えることもできる。この開示のこれらのおよび他の目的および利点は以下でさらに詳細に論じられる。
【0029】
図1は第一のパイプ100および第二のパイプ104を示す。パイプ100、104は相補的なねじ切り先端を有し、それらは一緒に連結される時に継手110を形成する。継手110はそれ故「ピン」または「ピン部品」と称する外表面上にねじ102が装備された第一のパイプ100、および「箱」または「箱部品」と称する内表面上にねじ106が装備された第一のパイプ104を含んでなる。箱部品104は一般的には、継手110の型によって、パイプまたはスリーブである。ピン部品100のねじ101は箱部品104のねじ106と噛み合うように適合される。
【0030】
ピン部品100および箱部品104のねじ102、106の拡大図が図2A、2Bに示される。ある種の態様では、少なくとも腐食耐性をそして場合により潤滑性を与える第一のコーティング組成物200がピンおよび箱部品100、104の少なくとも1つの少なくとも一部上に置かれる。ある態様では、第一のコーティング200はピン部品100の少なくとも一部上に置かれる。第二の層コーティング202は、存在する時には、少なくとも潤滑性を与えそしてピンおよび箱部品102、104の少なくとも1つの少なくとも一部上に置かれる。ある態様では、第二のコーティング組成物202は箱部品104の少
なくとも一部上に置かれる。
【0031】
この構造はこの開示のコーティングシステムの構造の単なる一例であることは理解されうる。別の態様では、第一のコーティング組成物だけを使用することができそして箱部品104の上に置かれる。他の態様では、第一および第二のコーティング200、202が、それぞれ、ピンおよび箱部品100、104のねじ102、106の領域近くに置かれる。さらに別の態様では、第一および第二のコーティング200、202はピンおよび箱部品100、104の少なくとも一部上に置かれ、それらはねじ102、106の少なくとも一部を含んでいてもまたはいなくてもよい。さらに別の態様では、第一および第二のコーティング200、202はピンおよび箱部品100、104の実質的に全ての表面上に置かれる。
【0032】
図3A−3Eはピン部品100および箱部品104に適用される選択されたコーティング構造を示すこの開示の第一および第二のコーティング組成物200、202の態様を示す。ある種の態様では、第一および第二のコーティング組成物200、202は各々単一層を含んでなる。これらの構造は例として提示されておりそしてこの開示の態様を何らかの方法で限定するものでないことは理解されうる。
【0033】
図3Aの態様では、第一および第二のコーティング200、202は単一層としてピン100および箱104に適用される。例えば、第一のコーティング200はピン部品100の表面に適用されそして第二のコーティング202は箱部品104に適用される。或いは、図3Bに示されているように、両方のコーティング200、202をねじ込み連結部であるピン部品100または箱部品104の1つの表面に適用しうる。例えば、第一および第二のコーティング200、202の両方をピン部品100に適用しうる。別の態様では、図3Cに示されているように、第一および第二のコーティング200、202の両方をピンおよび箱部品100、104の各々に適用しうる。
【0034】
他の態様では、複数のコーティングを継手に隣接する表面上に積層しうる。例えば、図3Dに示されているように、第一のコーティング組成物200はピン部品100上の第一および第三の層として存在しうる一方で、第二のコーティング組成物202はピン部品104上に第二の層として存在しうる。
【0035】
別の態様では、第一および第二のコーティング200、202の厚さは互いに関して変動しうる。例えば、図3Eに示されているように、第一のコーティング組成物200は第二のコーティング層202より厚くてもよい。
【0036】
以上で示されたこれらの構造を必要に応じて改変しうることは理解されうる。例えば、コーティングをピン部品100から箱部品104に動かすこともできそして逆もできる。或いは、第一および第二のコーティング組成物200、202の位置を交換することもできる。さらに、別の層をここに記述されている態様に従い用意することもできる。
【0037】
コーティングの厚さは必要に応じて変動しうる。例えば、第一および第二のコーティング組成物200、202の各々の厚さは約1μm〜100μmの間で変動しうる。ある種の態様では、第一および第二のコーティング組成物200、202の各々の厚さは約10〜40μmの範囲内でありうる。他の態様では、第一および第二のコーティング層200、202の合計厚さは約80μmより薄い。別の態様では、第一のコーティング200の厚さは約40μmより薄い。他の態様では、第二のコーティング202の厚さは約30μmより薄い。別の態様では、第一および第二のコーティング200、202はほぼ等しい厚さを有する。
【0038】
第一および第二のコーティング200、202は当該技術で一般的に理解されている技術に従い設置することができる。例えば、ピンおよび箱部品100、104を噴霧コーティングすることができる。1つの態様では、円筒形状での使用のための自動的噴霧装置を使用できる(SPMA GmbH、ビッシンゲン、ドイツ)。或いは、ピンおよび箱部品100、104を浸漬コーティングすることもできる。別の態様では、例えば拍動レーザーデポジション、化学蒸着、および電気化学デポジションの如き技術を使用できる。単一のピン100または箱部品104の表面上への複数層の沈着用には、これらの技術を必要に応じて繰り返すことができる。さらに、これらの技術は単独でまたは組み合わせて行うことができる。
【0039】
沈着前に、ある種の態様では、ピンまたは箱部品の少なくとも1つの表面をコーティングを沈着させる表面に対する沈着したコーティングの接着性を増強させるために設計された表面処理にかけることができる。このようにして製造されたねじ込み連結部の性質を増強させるための処理もさらに設計される。そのような表面処理の例はサンドブラスティング、燐酸塩処理、および銅メッキを包含するが、それらに限定されない。
【0040】
ある態様では、第一のコーティング組成物の重合体マトリックスはポリイミドを含んでなる。ポリイミド類は金属に対する良好な接着性を有し、それは第一のコーティング組成物により与えられる腐食耐性を増強する。ポリイミドシステムの別の利点は約0.1重量%というそれらの低い水吸収性である。低い水吸収性はポリイミドを水障壁として作用させ、第一のコーティング組成物により与えられる腐食耐性を増強する。ポリイミド類は高温耐性もさらに有し、それは摩擦滑動中の第一のコーティング組成物の摩擦学的性質を安定化させる。
【0041】
ポリイミドの態様をプライマー類とさらに組み合わせてコーティングの接着性を増強させうる。適するプライマー類の例はシランをベースとしたプライマー類および市販のエポキシをベースとしたプライマー類を包含するが、それらに限定されない。シラン基は金属の表面への安定な複合体を形成するが、エポキシをベースとしてプライマー類ではエポキシ基と金属表面との反応により接着性が生ずる。例えば、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)を有するシランをベースとしたシステムを使用してポリイミドコーティングおよび金属表面の間の界面を安定化させうる。
【0042】
別の態様では、第一のコーティング組成物の重合体マトリックスはエポキシを含んでなる。エポキシ類は有極性表面に対する優れた接着性を与える。さらに、エポキシ類は自己硬化性膜を生成することができ、それらは濃密化のためのコーティングの外部加熱を強める必要がなく、これらのマトリックスに加えられるナノ複合体の処理を促進する。ある種の態様では、オリゴマー状ビスフェノール−A−エピクロロヒドリン樹脂よりなる積層樹脂「L20」(R & G GmbH)を硬化剤としてのイソホロンジアミンと共に使用することができる。
【0043】
ある種の態様では、第一のコーティング組成物のマトリックス重合体が改質される。例えば、重合体を少量の弗素含有化合物、例えば反応性ペルフルオロポリエーテル類、で改質することができる。改質剤は弗素含有化合物の疎水性により水浸透に対する重合体の障壁性質を改良する。ある態様では、ペルフルオロポリエーテルは重合体と化学的に反応して、ペルフルオロポリエーテルおよび重合体の間に複数の共有結合を生成する。さらに、ペルフルオロポリエーテルは主要なマトリックス重合体連鎖と縮合可能でありうる。ある態様では、ペルフルオロポリエーテルはFluorolink(R) D10H(ソルベイ・ソレキシス(Solvay Solexis))を含んでなる。この化合物はまたここではD10Hとも称することができる。ある種の態様では、第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤を使用すること
ができる。他の態様では、非−反応性のフルオロ−化合物を使用してこの目的を達成することができる。
【0044】
別の態様では、他の重合体用改質剤を使用することができる。例えば、ポリイミドマトリックスをアミドプロピル末端のポリジメチルシロキサンを用いて柔軟性ポリシロキサン単位で改質することができる。シロキサンは重合体のガラス転移温度を低下させ、そしてその結果としてコーティング内部で機械的応力弛緩を起こさせる。ある種の態様では、第一の重合体組成物の合計重量を基準として、約10〜20重量%のポリジメチルシロキサンを使用することができる。
【0045】
ある種の態様では、第一のコーティング組成物はコーティングの性能を改良するために作用するナノ−スケールおよび/またはミクロン−スケールの添加剤をさらに含んでなる。ある種の態様では、基質に対するコーティング組成物の接着性を増強するように添加剤を構成することができる。別の態様では、添加剤は組成物の機械的安定性を増強させうる。他の態様では、添加剤は腐食耐性をさらに増強させる。これらの添加剤はコーティング組成物内で単独でまたは組み合わせて存在しうる。
【0046】
ある態様では、第一のコーティング組成物は少なくとも1種の接着用添加剤を含んでなる。ある種の態様では、添加剤はミクロ粒子またはナノ粒子を含んでなる。接着用添加剤の例は酸化亜鉛(ZnO)およびタルクを包含するが、それらに限定されない。ZnOは充填剤として作用することにより特に湿潤環境中のコーティング組成物の接着性を改良して、重合体マトリックスによる水分の吸収を実質的に抑制する。他の態様では、接着用添加剤はタルク、例えばMicrotalc(R) AT1、を含んでなる。その小板のような構造のために、タルクは障壁としても作用することによりコーティング組成物の接着性を改良して、重合体マトリックス内への水の吸収を同様に抑制する。有利なことに、酸化亜鉛は以下で論じるようにコーティングの腐食耐性も増強しうる。ある種の態様では、約10nm〜100μmの間の平均直径を有するZnO添加剤を使用できる。他の態様では、ZnO添加剤の平均直径は約10nm〜10μmの間の範囲にわたる。別の態様では、ZnO添加剤の平均直径は約10nm〜300nmの間の範囲にわたる。第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約10〜15重量%の接着用添加剤を使用することができる。
【0047】
強化剤を第一のコーティング組成物の重合体マトリックス内に加えることもできる。強化剤の添加はコーティングの硬度および摩耗耐性を改良して、それらの機械的耐性を増強させる。ある種の態様では、強化剤は無機粒子を含んでなる。粒子は、それぞれ、概略マイクロ−スケール(約1μm〜約500μm)およびナノ−スケール(約1nm〜約500nm)の間の範囲にわたる平均直径をさらに有することができる。ある種の態様では、粒子は約300nmより小さい平均直径を有する。有利なことに、強化剤によりコーティングに付与される機械的耐性の結果として、コーティングは耐性がより少ないコーティングより少ない維持費用および交換を要する。ある態様では、炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、または二酸化珪素(SiO2)ナノ粒子を使用することができる。別の態様では、強化剤の表面を有機官能基で改質することができる。ある種の態様では、第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の強化剤を使用することができる。
【0048】
コーティングに低い摩擦係数を与えてその潤滑能力を改良するために、固体状態潤滑剤をコーティング組成物に加えることもできる。この潤滑性質はねじ込み連結部の噛み合わせ部品によって受ける機械的応力および摩耗を減少させ、並びに部品の接触中に発生する熱を減少させる。1つの態様では、固体状態潤滑剤はミクロン寸法の固体を含んでなる。固体状態潤滑剤の例はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高密度ポリエチレン(
HDPE)、グラファイト、およびMoS2を包含するが、それらに限定されない。具体的な調合物は以下の実施例で論じられる。ある種の態様では、第一のコーティング組成物の合計重量を基準として、約3〜30重量%の固体潤滑剤をコーティング組成物中で使用できる。
【0049】
別の態様では、組成物は腐食抑制化合物を含んでなる。ある種の態様では、抗腐食化合物はZn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、オルト燐酸塩官能基、ホウ燐酸塩官能基、ポリ燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸塩官能基、ホウ珪酸塩類、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる。例は三燐酸アルミニウム、ホスホ珪酸亜鉛ストロンチウム、燐酸亜鉛、酸化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスホモリブデン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛カルシウム、およびホスホモリブデン酸亜鉛カルシウム、オルト燐酸アルミニウム亜鉛水和物、オルト燐酸亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデン亜鉛水和物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、ポリ燐酸アルミニウムストロンチウム水和物、ポリ燐酸アルミニウムカルシウム水和物、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物、ホウ酸オルト燐酸亜鉛水和物、燐酸水素カルシウム、ホウ燐酸バリウム、ホウ燐酸ストロンチウム、ホウ珪酸カルシウム、ホスホ珪酸バリウム、ホスホ珪酸ストロンチウム、およびホスホ珪酸カルシウムを包含するが、それらに限定されない。ある種の態様では、Heucophos(R) ZCP、Heucophos(R) ZCP−Plus、Heucophos(R) ZAM、Heucophos(R) ZAM−Plus、およびHeucorin(R) RZ(ハウバッフ・GmbH・ジャーマニー(Heubach GmbH Germany))の少なくとも1種を使用できる。これらの化合物はまたここではZCP、ZCP−Plus、ZAM、ZAM−Plus、およびRZと称することもできる。ある種の態様では、全ての抗腐食化合物の合計量は第一のコーティング組成物の合計重量を基準として約5〜15重量%である。
【0050】
他の態様では、第一のコーティング組成物は伝導性を増強するための添加剤をさらに含んでなりうる。例えば、約1〜5重量%のカーボンブラックを使用することができ、ここで量は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする。
【0051】
以下の表は第一のコーティング組成物中に存在する各成分の相対量の選択された態様を示す:
【0052】
【表1】
【0053】
例えば、組成物TE64は約77.4重量%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink(R) D10H、約6.2重量%のHeucophos(R) ZCP、および約12.4重量%の約
1μmの寸法を有するZnOを含んでなる。TE67は約77.4重量%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink(R) D10H、約6.2重量%のHeucophos(R) ZCP、および約12.4重量%の約50nmの平均直径を有するZnOを含んでなる。全ての百分率は組成物の合計重量を基準とする。
【0054】
第二のコーティング組成物の態様は乾燥膜潤滑剤を含んでなる。固体潤滑剤粉末は反応性エポキシ樹脂および溶媒を含んでなる混合物内に分散される。ある種の態様では、潤滑剤粉末はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含んでなりそして溶媒は酢酸2−メトキシ−1−メチル−エチルを含んでなる。ある態様では、二酸化チタン(TiO2)粉末を組成物にさらに加えることができる。TiO2はPTFE粉末の前に、後に、または同時に加えることができる。
【0055】
成分の比は必要に応じて変えることができる。固体成分(粉末およびエポキシ)は約20〜40重量%の範囲内で存在しそして溶媒は約60〜70重量%の範囲内で存在し、ここで百分率は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする。固体の中で、PTFE粉末は固体成分の合計重量の約20〜40重量%の間の量で存在し、エポキシ樹脂は約40〜60重量%の間の量で存在し、そしてTiO2粉末は約5〜15重量%の間の量で存在する。
【0056】
1つの態様では、第二のコーティング組成物は
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなる。
【0057】
固体粉末の実質的に均質な分散液を与えるために、組成物を約20分間にわたり撹拌した。生じた樹脂はFord No.4カップの中で25℃において約28〜32秒間の範囲内の粘度を有した。別の態様では、樹脂粘度はFord No.4カップの中で25℃において約26〜28秒間であった。
【0058】
別の態様では、溶媒の混合物を使用することができる。例えば、酢酸2−メトキシ−1−メチル−エチルおよびキシレンの混合物を使用することができる。
【0059】
別の態様では、乾燥膜潤滑剤は自己潤滑性膜、例えば金属合金、を含んでなりうる。
【実施例】
【0060】
第一および第二のコーティングの態様は、以上で論じられたように、ねじ込み連結部上で使用できる。コーティングの性能を評価するために、コーティングを金属基質上に噴霧コーティングしそして種々の試験にかけた。断らない限り、N80鋼基質試料が試験で使用された。接着性、摩擦係数、表面粗さ、摩耗耐性、腐食および耐性がポリイミド−およびエポキシ−マトリックスコーティング組成物中で試験された。
【0061】
腐食試験はDIN 50021/ASTM B117である「塩噴霧(霧)装置を操作するための標準的実施法(Standard Practice for Operating Salt Spray(Fog)Apparatus)」に従う中性塩噴霧試験(SST)により行われた。一般的には、試験試料を特定の位置および角度でNaCl溶液噴霧に露呈した。NaCl溶液の濃度は約3.5〜20%の範囲にわたることができそして断らない限り約5%であった。コーティング層が損傷しそしてベース金属が露呈され
る時に腐食がどのように進行するかを検討するために、引っ掻き傷もコーティング中に加えられた。
【0062】
コーティング組成物の摩擦係数はDIN 50324に従うピン−オン−ディスク(pin−on−disc)摩擦計試験により試験された。概略試験パラメーターはP=2N、v=10cm/s,v=10cm/s、r=15mm、およびs=1000mであった。
【0063】
ある態様では、ピンおよび箱部品100、104の表面をコーティング組成物の適用前にクリーニングした。複数のクリーニング技術の1種もしくはそれ以上を、必要に応じて、使用することができる。
【0064】
第一のクリーニング技術では、ピンおよび箱部品の金属表面を最初にアセトンで洗浄した。次に、表面を超音波浴内で約15分間にわたり約75℃において工業用クリーニング剤(Bonder T5400)を用いることによりクリーニングした。浴の後に水道水クリーニングおよび約2分間にわたるほぼ室温におけるUNIBOND HDHクリーニング剤を用いるクリーニングを行った。残存するクリーニング剤を水道水で除去しそして表面を約10分間にわたり約120℃において乾燥した。
【0065】
第二のクリーニング技術では、ピンおよび箱部品の金属表面を最初にキシレンで洗浄した。次に、表面を超音波浴内で約15分間にわたり約75℃において工業用クリーニング剤(Bonder T5400)を用いることによりクリーニングした。浴の後に水道水クリーニングおよび約10分間にわたる約80℃におけるUNIBOND HDHクリーニング剤を用いるクリーニングを行った。残存するクリーニング剤を水道水で除去しそして表面を約10分間にわたり約120℃において乾燥した。このようにして調整された表面は約0.61μmの平均粗さ(Ra)、約3.8μmの平均粗さ深度(Rz)、および約4.32μmの頂部対谷部の粗さ(Rmax)を示した。
【0066】
第三のクリーニング技術では、ピンおよび箱部品の金属表面を最初にサンドブラストした。次に、表面を超音波浴内で約15分間にわたり約80℃において工業用クリーニング剤(Bonder T5400)を用いることによりクリーニングした。浴の後に水道水クリーニングおよび約5分間にわたる約60℃におけるUNIBOND HDHクリーニング剤を用いるクリーニングを行った。残存するクリーニング剤を水道水で除去しそして表面を約10分間にわたり約120℃において乾燥した。この工程は実質的に再現可能な表面および表面粗さにおける変化を与えることが注目される。このようにして調整された表面は約0.92μmの平均粗さ(Ra)、約6.09μmの平均粗さ深度(Rz)、および約8.4μmの頂部対谷部の粗さ(Rmax)を示した。
【0067】
別の態様では、クリーニング工程はサンドブラスティングだけを含んでなっていた。
【0068】
実施例−ポリイミドをベースとしたシステム
ポリイミドマトリックスを4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(BAPPS)およびピロメリト酸二無水物(PMDA)共単量体から溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)中の重付加反応により製造した。この単量体組成物はフェノキシおよびフェニルスルホン基から起因してわずかに有極性であり、それは接着性に関して有利である。この組成物はさらに必要に応じてマトリックス物質を多量の無機ナノ粒子および潤滑剤粒子を分散させる。さらに、ヒドロキシル基を含有するペルフルオロポリエーテル(Fluorolink(R) D10H、ソルベイ・ソレキシス)を共−単量体として反応混合物に加えた。生じた中間生成物は懸垂ペルフルオロポリエーテル側鎖基を有するポリアミック・アシド(polyamic acid)構造であった。
【0069】
最初の試験では、未硬化ポリイミドをSiCナノ粒子および固体状態潤滑剤(グラファイト)と以下の表1に示されている比で混合した。混合物を引き続きクリーニングされた鋼表面上にコーティングしそして約150℃まで熱硬化した。
【0070】
【表2】
【実施例1】
【0071】
実施例1:
クロスカットテープ試験−グラファイト/ポリイミド組成物
クロスカットテープ試験を使用してASTM D3359−02である「テープ試験により接着性を測定するための標準試験方法(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test)」に従いコーティングの接着性を同定した。この基準に従い、基質上に置かれたコーティング中で刃の付いた切断器具を用いて斜交陰影切断を行った。引き続き、接着テープを切断表面上に置きそして次に剥離した。コーティングの一部がテープ上に残っている場合には、コーティングの接着性は不充分であると判定される。
【0072】
試験結果の分類は基準と比較する視覚的比較により行われ、それは試験部分の影響を受けた面積を剥がされたテープにより表面から離されたコーティングの百分率として規定する。0〜5の評価は試験試料部分の接着性を100%合格(0)から試験領域の65%より多くが表面から離層する不合格(5)までに分類する。
【0073】
クロスカットテープ試験は表1に示されたコーティング組成物に関して良好な接着性(cc/tt 0/0)を示した。図4は接着性に関して最初に試験した代表例の写真を示す。像は、コーティングが基質に実質的に接着したままであることを示す。
【実施例2】
【0074】
実施例2:摩擦学的同定−グラファイト/ポリイミドナノ複合体
ナノ複合体の摩擦および摩耗に対する固体状態潤滑剤および強化剤の影響をDIN 50324に従うピン−オン−ディスク摩擦計試験により試験した。概略試験パラメーターはP=2N、v=10cm/s,v=10cm/s、r=15mm、およびs=1000mであった。コーティングシステムTP9、TP13、TP14、およびTP15を検討し、各々は約1.5gのほぼ等量のD10Hを有していた。とりわけ、TP9試料はSiC強化剤を含まなかった。
【0075】
ピン−オン−ディスクの結果は図5に示されそして以上の表1にまとめられており、ここでkは摩耗耐性である。図5から、固体状態潤滑剤としてグラファイトを用いるとμ=
0.1−0.2の範囲内の摩擦係数が得られた。測定された摩耗係数は概略k=2.5*10−4mm3/Nmであることが見出された。グラファイトを含有するコーティングに関する低い摩耗耐性はグラファイト固有の軟らかさにより引き起こされることが信じられており、それはコーティングの硬度の低下をもたらす。約1:1の比でのグラファイトおよびSiCの添加(組成物TP14)は摩耗耐性が改良されることを示しており、そして摩擦性能もわずかに改良された。
【実施例3】
【0076】
実施例3:表面粗さ−グラファイト/ポリイミドコーティングシステム
重要な摩擦学的問題は表面粗さが摩擦性能にどのように影響するかの疑問である。摩擦および摩耗は一般的に同時に起きる工程であるため、摩耗破片は一般的に滑動工程が表面上で起きる時点から始まり発展する。これらの破片は摩擦係数を劇的に増加させそして、その結果として、それらを滑動路から除去することが重要である。この除去は表面粗さの凹み内での破片の収集により行われる。摩耗は表面粗さに依存しており、粗い表面は滑らかな表面より多い摩耗破片を生ずるため、摩耗/摩擦均衡を実質的に最適化する表面粗さの範囲を判定することができる。この影響は最低の摩擦係数を有する表面において見られうる。
【0077】
ポリイミドシステムでは、重合体状炭素弗素化されたアルコール(D10H)を使用することにより表面粗さが変えられそして実質的に最適化される。D10Hは界面活性剤のように作用し、熱力学的理由のために生ずるポリイミドコーティングの表面を富裕化させる。その結果は表面自由エネルギーにおける低下であり、それを使用して表面の粗さを変動させうる。表2および図6は表面粗さに対する摩擦係数の依存性を示す。
【0078】
【表3】
【0079】
図6から、試料の表面粗さにより摩擦係数が約100%以上変化することが信じられる。1つの態様では、低い摩擦係数に関すると、ポリイミドシステムに対する最適な表面粗さは概略Ra=0.3μmである。これは、重合体マトリックス中での約8.5重量%のFluorolink(R) D10Hの使用により得られる。さらに、弗素化されたアルコールの濃度の他に表面粗さはマトリックス中の潤滑剤の容量割合にも依存することを述べるべきである。匹敵するマトリックスシステムを製造するためには、ペルフルオロポリエーテルの濃度は未強化マトリックスに関してほぼ一定に保たれていた。
【実施例4】
【0080】
実施例4:摩擦学的同定−MoS2/ポリイミドコーティングシステム
第二のタイプの固体状態潤滑剤であるMoS2が加えられているコーティングシステムの態様の摩耗および摩擦性能も検討した。表3は潤滑剤としてMoS2を含有するポリイミドシステムの組成および摩擦実験からの対応する摩耗係数を示す。断らない限り、マトリックス物質はポリイミドを含んでなっていた。
【0081】
【表4】
【0082】
図7は、MoS2を含有しSiCナノ粒子を含まないポリイミドシステム(TP30、PT31、PT32、TP44、およびTP45)に関する滑動回数に対する摩擦係数の対応する依存性を示す。MoS2は、潤滑剤としてのグラファイトと比べて、試験パラメーターに従うとほぼ同じ性能を示す。グラファイトの場合には、約8.5重量%のペルフルオロポリエーテルの濃度(組成物TP30、TP31、TP32)が摩擦性能に関して最適であることが見出された。
【0083】
摩擦学的性質に対するSiCナノ粒子の影響を検討するために、MoS2対SiCの種々の比をマトリックス中で使用しそしてコーティングを同定した。この同定の結果は図8に示される。
【0084】
MoS2含有組成物に関すると、SiCだけの添加は摩耗耐性に実質的な影響を示したが、摩擦係数はSiCを含まないコーティングに関するものとほぼ同じであった。これは、以下で詳細に論じられる図11に示された比較例でさらに良く観察できる。
【0085】
他方で、図8にさらに示されているように、約0.1より低い比較的低い摩擦因子がある種のコーティング中で約4000サイクル(回)までに観察された。この傾向は図9でも見られ、PTFE/SiCシステムでは約2500サイクル後であった。
【実施例5】
【0086】
実施例5:摩擦学的同定−PTFE潤滑剤
より低い摩擦値を得るために、コーティングに対する重合体をベースとした固体状態潤滑剤の添加を検討した。表4および図9はPTFEおよびPTFE/SiCを用いる選択された実験を示す。
【0087】
【表5】
【0088】
PTFE(TP11)およびPTFE/SiC(TP17)の性能は以上で論じられたグラファイトおよびMoS2コーティングのものと実質的に逆であった。PTFEの場合には、SiCの添加は摩耗係数を有意に改良したが、摩擦係数も劇的に増加させた。
【実施例6】
【0089】
実施例6:摩擦学的同定−ポリイミド/HDPE潤滑剤
ポリイミドシステムの1つの特徴はそれらの比較的高い硬化温度であり、それはHDPEが重合体状潤滑剤として使用される時には相分離をもたらしうる。このコーティングは合成され(表3に示された組成物、TP36)そしてこのシステムはこの時点までに論じられた組成物の中で最低の摩擦係数を示した(図10)。
【0090】
しかしながら、HDPEを用いて合成されたコーティングシステムは相分離を示し、それはコーティングシステムの腐食耐性の性質にとって不利でありうる。
【実施例7】
【0091】
実施例7:種々の潤滑剤を有するポリイミドコーティングシステムの摩擦学的性質の比較
種々の固体状態潤滑剤を有するコーティング組成物の摩擦および摩耗性能の比較は図11に示される。選択された固体状態潤滑剤の摩擦性能の検討は、1つの態様では、潤滑剤としてHDPEおよびPTFEを使用することにより最低の摩擦が得られたことを示した(図10)。重合体コーティングが約8.5重量%のD10Hおよび約30重量%の含有量の充填剤も含有するという事実のために、約20重量%より多い固体状態潤滑剤を含んでなる組成物をピン−オン−ディスク試験で使用した。比較的多量の固体は実質的に脆いコーティングをもたらし、それは摩擦実験にかけることができなかった。コーティングに対する硬質充填剤としてのSiCの添加は摩耗耐性を有意に改良した。グラファイトの場合には、SiCの添加は試料の摩擦性能に対する正の影響も示した(図10、図11)。
【実施例8】
【0092】
実施例8:ポリイミドをベースとしたコーティングシステムの腐食試験
ポリイミドコーティングの腐食保護性質を検討するために、DIN 50021/ASTM B117に従い、全てのコーティングをSSTに約500時間にわたりかけた。これらの実験は、ポリイミドマトリックスおよび金属基質の間の界面が加水分解に対して非常に敏感性であることを示す。クリーニングされた鋼表面上に直接適用された全てのポリイミドコーティングは約70時間のSST後に離層した。この離層の典型的な例証が図12に示される。
【0093】
加水分解に対する敏感性および離層の理由は、ポリイミド類の接着性が重合体層および金属表面の間のエステル結合の形成に基づくという事実により説明できる。これらのエステル基の源はポリアミド酸であり、それはポリイミドシステム用の前駆体として使用される。これらのエステル結合がイミド化をもたらす加水分解用に使用可能な部位であり、それが接着性の欠如をもたらしうる(図13)。
【0094】
この問題を解決するために、金属に対する界面の安定化を適切なプライマーの使用またはポリイミドマトリックス自体の改質により行って、表面上で異なる安定な固定基を得ることができる。イソシアネート類は金属表面との複合体を生成しそしてジイソシアネート類との反応によりエステル表面基の改質を生じてイソシアネート固定基を得る。このタイプのマトリックス改質は試行試験で試験されたが、離層問題を解決したことは見出されなかった。
【0095】
ポリイミドコーティングの接着性を改良するために、2種のプライマーシステムである(a)シラン基が金属表面に対する安定な複合体を生成するシランをベースとしたプライマーおよび(b)エポキシ基と金属表面との反応により接着が生ずる市販のエポキシをベースとしたプライマーを試験した。GPTES(グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)を有するシランをベースとしたシステムはポリイミドコーティングおよび金属基質表面の間の界面を安定化させることが予期される。SSTの結果に基づくと、GPTESプライマーシステム自体は加水分解に対して敏感性である傾向があり、それが500時間のSST後に離層をもたらすことを結論しうる。
【0096】
エポキシをベースとしたプライマーでは、以下の結果が得られた(図15A、15Bおよび図16A)。GPTESプライマー(図14)と比べて、エポキシプライマーの使用は接着性における増加をもたらす。さらに、約300時間のSST後(図15A)並びに約500時間のSST後(図15B)では、MoS2/SiC(TP30)およびグラファイト/SiC(TP14)を含むポリイミドシステムはそれぞれ引っ掻き傷の近くで実質的に離層を示さなかった。両方の試料上で、小さい膨れだけが検出された(例えば、図16B)。
【0097】
グラファイト/SiC(TP14)およびMoS2/SiC(TP30)コーティングの間の少なくとも1つの差異はグラファイト/SiCコーティング中のものより小さいMoS2/SiCコーティングの膨れであった。
【0098】
約500時間のSSTの条件に合格した後の膨れ下の腐食を検討するために、MoS2/SiCコーティングの膨れを手により開けた。膨れの下には金属表面上で実質的に腐食は検出されなかった。コーティングの完全剥離によっても同じ結果が得られ、実質的に腐食が観察されず、以前の状態を確認した(図17A、17B、17C)。
【0099】
以上で示された結果から、ポリイミドマトリックスの障壁性質は、部分的に離層された領域でさえ、腐食傾向を少なくとも部分的に抑制するのに充分でありうることを結論しうる。
【実施例9】
【0100】
実施例9:選択されたポリイミドコーティングシステムの別の改良
2種の最も有望なコーティングシステムにおいて膨れを分析した後に、コーティング内部の機械的応力が膨れの主要原因であることが推定される。この問題に対する可能な解決法はコーティングの柔軟性すなわち弛緩能力の増加であることが予期される。この仮説は、ガラス転移温度を低下させそしてその結果としてコーティング内部で機械的応力弛緩を引き起こしうるようにするための柔軟性ポリシロキサン単位(ポリジメチルシロキサン、アミノプロピル末端、分子量約900−1000g/モル)を用いるポリイミドマトリックスの改質により検討された。図18は約300時間のSST後のこのポリシロキサン改良マトリックス(TP65)のコーティングを示す。
【0101】
TP65のコーティングは約1gのポリジメチルシロキサンで改質されたコーティングTP14である。コーティングは実質的に膨れを示さず、腐食を示さずそして優れた接着
性を示した。
【0102】
ポリイミドコーティングシステムコーティング同定のまとめ
一面で、ポリイミドをベースとしたコーティングシステムは、以下の表における概観で示されているように、有望な摩擦学的性質を示す:
【0103】
【表6】
【0104】
別の面で、コーティングシステムは約500時間の露呈時間で中性塩噴霧試験に合格し、わずかだけの膨れがありそして膨れの下には実質的に腐食はなかった。行われたさらなる研究は膨れの外観に関する原因を克服できる証拠を示した。
【0105】
他の面で、上記のようにして行われた研究は最終的コーティング物質を均衡させそして最適化するためのさらなる開発中に種々の組成パラメーターを使用できることを示している。
【0106】
実施例−エポキシをベースとしたコーティングシステム
エポキシドシステム用の重合体マトリックスは積層樹脂「L20」をベースとし、それはオリゴマー状ビスフェノール−A−エピクロロヒドリン樹脂よりなる。このシステム用の硬化剤として、イソホロンジアミンが使用された。そのような樹脂に関する典型的な用途はグラスファイバー強化製品である。樹脂が低い粘度を有し、それが比較的高い濃度においてさえ無機充填剤の分散を可能にするはずであるという事実のために、この物質は選択された。エポキシド樹脂は実質的にいずれの有極性表面に対しても優れた接着性を示し、そして、その結果として、ポリイミドマトリックスをベースとしたコーティングシステムに対して改良された固有の腐食保護能力を与えるはずである。この観点から、摩擦学的並びに腐食試験においてプライマーをさらに使用せずに最初の実験が行われた。そのように構成されると、エポキシをベースとしたコーティングシステムはポリイミドシステムと比べて改良された腐食保護を得るためのさらなる選択肢を与えることが予期される。
【実施例10】
【0107】
実施例10:摩擦学的同定−グラファイト/エポキシコーティングシステム
図19および表5はグラファイトを含有するエポキシをベースとしたコーティング組成物に対して行われた選択された実験を示す。
【0108】
【表7】
【0109】
潤滑剤としてグラファイトを有するエポキシをベースとしたシステムでは、ポリイミドをベースとしたシステムに匹敵する結果が得られた。平均摩擦係数は概略μ=0.15−0.3の範囲内であった。しかしながら、コーティング層の破損のために、摩耗係数の測定は可能でなかった。
【0110】
システムに対するD10Hの接着性は短期滑動工程(TE5−TE6)ではわずかに正の影響を示したが、概略μ=0.1−0.15の摩擦係数が得られた。試験中に、それぞれ約2000サイクルおよび4000サイクル後にコーティング層が破損する傾向があったことが観察された。この性能に関する可能な理由は、以前に検討したポリイミドマトリックスと比べて低いエポキシマトリックスの固有熱安定性のために摩擦行程中のマトリックスの熱破壊および破損をもたらしうることである。
【実施例11】
【0111】
実施例11:摩擦学的同定−MoS2/エポキシコーティングシステム
エポキシシステム中の固体状態潤滑剤としてのMoS2も評価した。表6および図20は固体状態潤滑剤としてMoS2を含有するエポキシをベースとしたコーティングの同定の結果を示す:
【0112】
【表8】
【0113】
MoS2を含有する層に関して、平均摩擦はそれぞれ約1000および2000サイクル後に概略μ=0.55であることが測定された(図20)。
【0114】
高温における摩擦化学性により生成する酸化物と組み合わされた潤滑剤としてのMoS2は金属と接触する時に摩擦工程において有意な役割を演ずる。この場合には、エポキシをベースとしたマトリックスはその生成に関する温度の臨界点に達する前に軟化するため酸化物は実質的に生成できないことが信じられている。
【実施例12】
【0115】
実施例12:摩擦学的同定−HDPE/D10H含有エポキシコーティングシステム
検討した第三の固体状態潤滑剤は重合体状HDPEであった。HDPEはエポキシ樹脂に関して要求される低い硬化温度のためにエポキシ樹脂中で使用できる(表7、図21)。
【0116】
【表9】
【0117】
HDPEを含有するコーティングに関する検討は、HDPE量が増加するにつれて摩擦係数が減少することを示した。約4gより多いHDPE含有量を有するコーティングに関して、摩擦係数が測定されそして概略μ=0.05−0.15の範囲内であった。摩耗係数も実質的に低く、概略k<2.0E−6mm3/Nmであることが測定された。
【実施例13】
【0118】
実施例13:種々の潤滑剤を有するエポキシをベースとしたコーティングシステムの摩擦学的性質の比較
図22は種々の潤滑剤を有するエポキシをベースとしたコーティングシステムの摩擦学的同定をまとめている。
【0119】
エポキシをベースとしたコーティングシステムの摩擦学的同定に対する種々の潤滑剤の影響の試験は、HDPEでは比較的低い摩擦係数が得られうることを示した(図22)。ポリイミドシステムとは対照的に、約120℃より低いエポキシ樹脂の比較的低い硬化温度のためにHDPEをエポキシコーティング中で使用できる。
【0120】
これらの結果から、固体状態潤滑剤としてHDPEを有するエポキシマトリックスをベースとしたコーティングシステムは有望であることを推論できる。この組み合わせでは、ベースマトリックスおよび潤滑剤自体が重合体であるシステムを得ることができ、それはエポキシおよびHDPEの両者がコーティングのマトリックス成分として作用することを意味する。これは、さらに、追加の腐食保護が要求される場合には、コーティングがナノ粒子をベースとした腐食抑制剤を本来的に含むことを意味する。
【実施例14】
【0121】
実施例14:エポキシ/HDPEコーティングシステムの腐食試験
HDPE含有エポキシコーティングシステムの優れた摩擦学的性能のために、腐食評価を行った。上記の有望な結果および有極性表面に対するエポキシシステムの予期される良好な接着性のために、コーティングをプライマーなしでクリーニングされた鋼表面上に適用した。組成物TE13(未充填のエポキシ/HDPEコーティング)のSSTの結果を
図23に示す。
【0122】
図23から、約200時間の塩噴霧試験後にコーティングが引っ掻き傷の周辺で離層を示すことが観察された。
【0123】
エポキシ/HDPEコーティングの腐食耐性をさらに改良するために、追加化合物をコーティング組成物に加えることができる。例は腐食抑制剤としての亜鉛および燐酸亜鉛(II)、伝導剤としてのカーボンブラック、並びに強化剤としてのSiCを包含するが、それらに限定されない。検討されたコーティングであるTE20は約25gのエポキシ、約4gのHDPE、約0.5gの燐酸亜鉛(II)、約2gの亜鉛および約0.5gのカーボンブラックを含有していた(表7)。このシステムに対する塩噴霧試験の結果は図24に示される。
【0124】
図24Aおよび24Bに示されているように、組成物TE20は約500時間のSST後に膨れを示さず、良好な接着性を示しそして腐食を示さなかった。有利なことに、この結果はプライマーを使用せずに得られた。
【実施例15】
【0125】
実施例15−単一添加剤を有するエポキシマトリックスコーティングシステム
抗腐食性および接着用添加剤の影響を個別に評価するために選択された実験を行った。実施例15では、試験された抗腐食添加剤はタルクであるMicrotalc(R) AT1(ノルウェージアン・タルク・ドイッチュランド(Norwegian Talc Deutschland)GmbH)、酸化亜鉛であるHeucophos(R) ZCP(オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物)、Heucophos(R) ZAM(オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物)、およびHeucorin(R) RZ(5−ニトロイソフタル酸亜鉛)であった。エポキシを以上で論じた通りにして製造しそして抗腐食化合物と混合した。コーティング組成物を引き続き以上で論じたクリーニング工程2に従いクリーニングされた鋼表面上に噴霧コーティングしそして硬化した。表8は試験した組成物を示す。
【0126】
【表10】
【0127】
図25Aおよび25Bは組成物TE33およびTE44の性能を約400時間にわたる中性塩噴霧試験後に比較している。約12重量%のMicrotalc(R) AT1がTE33中に存在したが、約12重量%のZnOがTE44中に存在した。試験後に各コーティングの表面を試験すると、TE33コーティング(図26A)は表面下泳動を示すことが見出されたが、TE44コーティング(図26B)は引っ掻き傷のところで実質的に膨れを示さなかった。これらの観察から、ZnOは接着用添加剤としてAT1より有効であるようである。
【0128】
図26A−26Cは約400時間のSST後の組成物TE48(図26A)、TE49(図26B)、およびTE50(図27C)の性能を比較している。約10重量%のHeucorin(R) RZが組成物TE48中に存在したが、約10重量%のHeucophos(R) ZAMが組成物TE49中に存在し、そして約10重量%のHeucophos(R) ZCPが組成物TE50中に存在した。試験後に各コーティングの表面を試験すると、TE48コーティング(図26A)は有意な表面腐食を示したことが見出されたが、TE49(図26B)およびTE50コーティング(図27C)は実質的に膨れを示さずそして引っ掻き傷のところでほぼ腐食を示さなかった。これらの観察から、オルト燐酸塩組成物であるTE49およびTE50はニトロイソフタル酸塩組成物であるTE48と比べて改良された腐食耐性を与えるようである。
【0129】
図27Aおよび27Bは約668時間のSST後の組成物TE49およびTE50(それぞれ、Heucophos(R) ZAMおよびZCP)の性能を比較している。試験後に各コーティングの表面を試験すると、TE49コーティング(図27A)は引っ掻き傷離層を示したことが見出されたが、TE50(図27C)は部分的離層だけを示した。
【0130】
組成物TE33、TE44、TE48、TE49、およびTE50の摩擦係数もピン−オン−ディスク試験により試験した。これらの試験の結果は図28にまとめられている。ZnO含有コーティングであるTE44は試験した試料の中で最低の摩擦係数を示したことが見出された。短い初期期間にわたって、それぞれ、Heucophos(R) ZAMおよびZCPを含有するコーティングであるTE49およびTE50はZnOに匹敵する摩擦係数を示した。
【実施例16】
【0131】
実施例16−腐食耐性−ZnO添加剤、延長された露呈
エポキシマトリックスをHDPE潤滑剤およびZnO接着用添加剤と共に含んでなるコーティングであるコーティング組成物TE44を試験した。1つの態様では、エポキシはエポキシ樹脂L20および硬化剤EPH161(R & G GmbH)を含んでなっていた。樹脂および硬化剤を約100:29容量比で混合して約25gの合計エポキシ質量を与えた。このエポキシ混合物に約4gのZnOおよび約4gのHDPEを加えた。組成物を混合してZnOおよびHDPEを重合体マトリックス内に実質的に均一に分散させた。コーティング組成物を引き続き上記の2種の工程に従いクリーニングされた鋼表面上に噴霧コーティングしそして硬化した。1つの態様では、硬化は製造業者の指示に従い約24時間にわたりほぼ室温において行うことができ、その後に約15時間にわたり約60℃の最低温度においてアニーリングした。別の態様では、コーティングを約150℃までの温度においてアニーリングすることができる。
【0132】
このようにして製造されたコーティングの腐食耐性を平らな試料上で塩噴霧試験を用いて試験した。図29A−Cは約500時間(図29A)、1100時間(図29B)、および2000時間(図29C)のSST露呈時間後に試験した試料を示す。結果は、コーティングが塩噴霧試験に合格しそして2000時間までの露呈でさえ試料内で離層または膨れが実質的に観察されないことを示している。
【0133】
コーティングの腐食保護能力をさらに試験するために、コーティングを実質的に除去して下層にある金属表面の試験を可能にした。コーティング除去は約1時間にわたる約100℃における約10%のNaOH溶液への露呈により行われた。
【0134】
図30は生じた露呈された金属表面を示す。表面上に腐食は実質的に観察されなかった。しかしながら、他の表面特徴は存在する。これらの特徴は引っ掻き傷のところの膨れまたは表面の不充分なクリーニングに起因しうることが考察される。
【実施例17】
【0135】
実施例17−腐食耐性−D10H、ZnO、およびZCP添加剤を有するエポキシマトリックスコーティング
実施例17の組成物をさらに改質してコーティング性能を改良する。ある種の態様では、Fluorolink D10Hを含んでなる反応性フルオロ重合体およびHeucophos(R) ZCPを含んでなる別の腐食抑制剤をコーティング組成物に加えた。コーティング組成物を以上で論じられたクリーニング工程3に従いクリーニングされた鋼表面上に噴霧コーティングしそして硬化した。試験した組成物中の各成分の割合を表9に概略表示する。
【0136】
【表11】
【0137】
表9に示されているように、試料TE60およびTE61はZCPの不存在下におけるZnOの寸法の影響を検討した。試料TE62、TE63、およびTE64は約1μmの寸法のZnO粒子に関して約0.5〜2gの範囲にわたるZCPの量の影響を検討したが、試料TE65、TE66、およびTE67は約50nmのZnO粒子に関して同じことを検討した。試料TE68はZCPまたはZnO添加なしの基準値を与える。
【0138】
2000時間の露呈後のSST試験の結果を以下の表10に示す。これらの試料は各組成物に関して製造された。結果は各試料に関してそして3種の試料の平均に関して示されている。
【0139】
【表12】
【0140】
表10にある最初の数字は引っ掻き傷の周りで最初に膨れが観察された時間を示す。表10にある第二の値は試料の表面上で膨れが観察された時間を示す。OKの記入は約2000時間後に試験が終了した時に実質的に膨れが観察されないことを示す。表10に示されているように、組成物TE64およびTE67は両方とも試料の表面上に明白な膨れが実質的にないままであった。これらの2種の組成物は最高量のHeucophos(R) ZCPを有するため、この結果はHeucophos(R) ZCPが腐食耐性の改良において有意な役割を演ずることを示す。
【0141】
コーティング組成物TE64は約77.4%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink D10H、6.2重量%のHeucophos ZCP、および約12.4重量%の約1μmの寸法を有するZnOを含んでなっていた。TE67は約77.4重量%のL20エポキシ樹脂、約3.1重量%のHDPEおよび0.9重量%の固体状態潤滑剤としてのFluorolink D10H、6.2重量%のHeucophos ZCP、および約12.4重量%の約50nmの寸法を有するZnOを含んでなっていた。全ての百分率は組成物の重量を基準とする。
【0142】
コーティングTE64およびTE67中の腐食の程度も種々の概略露呈時間:500時間、860時間、1500時間、1868時間、および2000時間(TE64)並びに860時間、1000時間、1500時間、1500時間、1868時間、および2000時間(TE67)後に試験した。試験では、コーティングにより保護された領域で表面腐食が実質的に観察されないことが両方のコーティング中で見られた。コーティングを実施例18に関して以上で論じられたようにNaOHを用いる処理により引っ掻き傷付近で除去した後の金属表面の外観の試験は、引っ掻き傷付近の領域内で金属では腐食を実質的に見出さなかった。これらの結果に基づき、2種のZnO含有組成物であるTE64およびTE67は抗−腐食コーティングとして実質的に匹敵する性能を示す。
【0143】
組成物TE60、TE61、TE64、およびTE67、並びにTE68と称するZnOまたはZCPを添加しない対比コーティングの摩擦係数をピン−オン−ディスク試験により試験した。これらの試験の結果は図31にまとめられている。これらの結果は、短い期間にわたり約0.15より低い摩擦係数が得られうることを示す。
【実施例18】
【0144】
実施例18−腐食耐性−ねじ込み連結部
図32Aおよび32Bは組成物TE64(図32A)およびTE67(図32B)で部分的にコーティングされたねじ込み連結部に対して行われた塩噴霧試験の結果を示す。それぞれのねじ込み連結部の左手側はコーティングされたが、右手側はされなかった。それぞれの連結部を約500時間にわたりSSTにかけた。図32A、32Bに示されているように、それぞれのねじ込み連結部の左手側は腐食が実質的になかったが、それぞれのねじ込み連結部の右手側は有意な腐食を示す。
【実施例19】
【0145】
実施例19−第二の潤滑層と組み合わされた腐食耐性層
コーティングの摩擦および摩擦学的性質を評価するために、良好な腐食耐性を示したコーティングシステムTE64およびTE67を金属−対−金属シールおよびトルク肩並びに約3.5インチの外径を有する「高級連結部」として知られる市販のねじ込み連結部(TenarisBlue(R)、テナリス(Tenaris)、アルゼンチン)に適用した。
【0146】
TE64でコーティングされたピンおよびむき出しの箱並びにTE67でコーティングされたピンおよびむき出しの箱を用いて数回の組み立ておよび解体操作を行った。試験の重要なパラメーターは、連続的な組み立ておよび解体操作による回転に対するトルク、肩トルク(これは滑動中の摩擦に関係する)およびその一貫性並びに焼き付け耐性性能である。ここで使用される用語「肩トルク」は当業者に既知であるその通常の意味を有する。ここで記述されるねじ込み連結部に関すると、肩トルクはピンの肩および箱の肩が実質的に接してパイプの組み立て中に測定される回転に対するトルクのプロットの傾斜における突然の変化を生ずる時のトルクを称すると理解されよう。両方のコーティングシステムで満足のいく抗−焼き付け性質が観察され、肩トルクにおける変動は約3000〜4500lbf.ftであった。
【0147】
別の試験が行われ、そこではコーティングシステムTE64およびTE67がピン上に適用されそして上記の第二の潤滑性コーティング組成物が箱の内表面上に適用された。
【0148】
転属的な組み立ておよび解体操作中に、両方のコーティングシステムは驚くべき抗−焼き付け特徴および一貫した摩擦性質を示した。肩トルク値は約2000〜3000lbf.ftの範囲であり、箱に適用された乾燥膜潤滑剤の寄与による摩擦係数における低下を示した。
【実施例20】
【0149】
実施例20−固体潤滑剤を添加しない腐食耐性層
エポキシ、反応性フルオロ重合体(D10H)、腐食抑制剤(Heucophos(R)
ZCP)、およびZnOのナノ粒子をベースとした腐食耐性コーティングシステムを検討した。これらのコーティングシステムは固体状態潤滑剤を含有しなかった。検討したコーティング組成物を以下の表11に詳述する:
【0150】
【表13】
【0151】
コーティングシステムをQ−パネル類(Q−Panels)(Q−ラブ・コーポレーション(Q−Lab Corporation)、クリーブランド、オハイオ州)上に適用しそして約30分間にわたり約150℃において硬化し、1個の試料当たり3個の試験パネルを製造した。低炭素鋼から製造されたQ−パネル類は、実質的に同様な条件下で、N80基質より速く腐食を示し、促進腐食試験を行うための方法を提供した。それ故、Q−パネル類を用いる腐食試験は促進試験による種々のコーティングシステムの腐食耐性の比較を可能にする。
【0152】
試験試料を試験室内に入れそして約35℃においてASTM基準B117に従い塩溶液(約5重量%のNaCl)に連続的に露呈した。腐食進行を定期的な時間間隔でさらに監視した。約750時間の露呈時間後に、コーティングシステムの各々はほんの小さい腐食証拠を有する良好な腐食耐性を示した。コーティングシステムTE105、TE106、TE107、およびTE108の中で、TE108コーティングが最も少ない腐食徴候を有する最良の腐食耐性を示した。
【0153】
以上の記述はこの教示の基本的な新規な特徴を示し、記述し、そして指摘してきたが、示されている装置の詳細な形態並びにそれらの使用における種々の省略、代替、および変更を、この教示の範囲から逸脱せずに、当業者により行うことができる。従って、この教示の範囲は以上の論議に限定すべきでなく、添付された特許請求の範囲により定義されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する、ピン部品および箱部品;
エポキシ類およびポリイミド類よりなる群から選択される重合体、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%の、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなる、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物、
ここで、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、
を含んでなる、ねじ込み継手。
【請求項2】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と化学的に反応して重合体およびペルフルオロポリエーテルの間の複数の共有結合を生成する、請求項1のねじ込み継手。
【請求項3】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と縮合可能である、請求項2のねじ込み継手。
【請求項4】
第一のコーティング組成物が単一層を含んでなる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項5】
第一のコーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項6】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項5のねじ込み継手。
【請求項7】
酸化亜鉛の平均直径が約10〜300nmの間の範囲にわたる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項8】
第一のコーティング組成物が無機強化剤をさらに含んでなる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項9】
無機強化剤が約300nmより小さい平均直径を有する、請求項8のねじ込み継手。
【請求項10】
強化剤が、第一の組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の範囲にわたる量で存在する、請求項9のねじ込み継手。
【請求項11】
強化剤が炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および二酸化珪素(SiO2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項10のねじ込み継手。
【請求項12】
第一のコーティング組成物が
約3〜8重量%の亜鉛、
約1〜5重量%の燐酸亜鉛(II)、
約1〜5重量%のカーボンブラック、および
約10〜20重量%のポリジメチルシロキサン
の少なくとも1種をさらに含んでなり、それぞれの量が第一の組成物の合計重量を基準とする、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項13】
コーティング組成物の摩耗係数が約2.0e−6mm3/Nmより小さい、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項14】
コーティング組成物の摩擦係数が約0.03〜0.10の間の範囲にわたる、請求項5のねじ込み継手。
【請求項15】
コーティングがASTM B117に従い試験して約1000時間の露呈まで実質的に腐食を示さない、請求項5のねじ込み継手。
【請求項16】
乾燥膜潤滑剤を含んでなる第二のコーティング層がピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項17】
第二のコーティング組成物が
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、請求項16のねじ込み継手。
【請求項18】
第一および第二のコーティング層の合計厚さが約80μmより薄い、請求項16および17のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項19】
第一のコーティングが約40μmより薄い厚さを有する、請求項18のコーティング組成物。
【請求項20】
第二のコーティングが約30μmより薄い厚さを有する、請求項16〜19のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項21】
第一および第二のコーティングの厚さがほぼ等しい、請求項16〜20のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項22】
第一のコーティング組成物がピン部品上に沈着されそして第二のコーティング組成物が箱部品上に沈着される、請求項16〜21のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項23】
ピンおよび箱部品が金属製である、前記請求項のいずれかのねじ込み継手。
【請求項24】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する、ピン部品および箱部品;
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%の、Zn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなる、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物、
ここで、第一の組成物の不足分は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、
を含んでなる、ねじ込み継手。
【請求項25】
重合体がエポキシ類およびポリイミド類よりなる群から選択される、請求項24のねじ込み継手。
【請求項26】
重合体用改質剤がペルフルオロポリエーテルを含んでなる、請求項24および25のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項27】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と化学的に反応して重合体およびペルフルオロポリエーテルの間の複数の共有結合を生成する、請求項26のねじ込み継手。
【請求項28】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と縮合可能である、請求項27のねじ込み継手。
【請求項29】
第一のコーティング組成物が単一層を含んでなる、請求項24〜28のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項30】
無機粒子が約10〜300nmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛を含んでなる、請求項24〜29のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項31】
コーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる請求項24〜30のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項32】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項31のねじ込み継手。
【請求項33】
コーティング組成物が無機強化剤をさらに含んでなる、請求項24〜32のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項34】
無機強化剤が約300nmより小さい平均直径を有する、請求項33のねじ込み継手。
【請求項35】
強化剤が、第一の組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の範囲にわたる量で存在する、請求項34のねじ込み継手。
【請求項36】
強化剤が炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および二酸化珪素(SiO2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項35のねじ込み継手。
【請求項37】
第一のコーティング組成物が
約3〜8重量%の亜鉛、
約1〜5重量%の燐酸亜鉛(II)、
約1〜5重量%のカーボンブラック、および
約10〜20重量%のポリジメチルシロキサン
の少なくとも1種をさらに含んでなり、それぞれの量が第一の組成物の合計重量を基準と
する、請求項24〜36のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項38】
第一のコーティング組成物の摩耗係数が約2.0e−6mm3/Nmより小さい、請求項24〜37のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項39】
コーティング組成物の摩擦係数が約0.03〜0.10の間の範囲にわたる、請求項31のねじ込み継手。
【請求項40】
コーティングがASTM B117に従い試験して約1000時間の露呈まで実質的に腐食を示さない、請求項31のねじ込み継手。
【請求項41】
乾燥膜潤滑剤を含んでなる第二のコーティング層がピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される、請求項24〜40のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項42】
第二のコーティング組成物が
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、請求項41のねじ込み継手。
【請求項43】
第一および第二のコーティングの厚さがほぼ等しい、請求項41および42のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項44】
第一のコーティング組成物がピン部品上に沈着されそして第二のコーティング組成物が箱部品上に沈着される、請求項41〜43のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項45】
ピンおよび箱部品が金属製である、請求項24〜43のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項46】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する、ピン部品および箱部品を用意し;
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%の、Zn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなる第一の組成物であって、第一の組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする第一の組成物を用意し;
乾燥膜潤滑剤を含んでなる第二のコーティング組成物を用意し;そして
第一および第二のコーティングの各々をピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくともねじ部分上に適用する
ことを含んでなる、ねじ込み継手を保護する方法。
【請求項47】
重合体がエポキシ類およびポリイミド類よりなる群から選択される、請求項46の方法。
【請求項48】
重合体用改質剤がペルフルオロポリエーテルを含んでなる、請求項46および47のいずれか一項の方法。
【請求項49】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と化学的に反応して重合体およびペルフルオロポリエーテルの間の複数の共有結合を生成する、請求項48の方法。
【請求項50】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と縮合可能である、請求項49の方法。
【請求項51】
第一のコーティング組成物が単一層を含んでなる、請求項46〜50のいずれか一項の方法。
【請求項52】
無機粒子が約10〜300nmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛を含んでなる、請求項46〜51のいずれか一項の方法。
【請求項53】
第一のコーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる請求項46〜52のいずれか一項の方法。
【請求項54】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項53の方法。
【請求項55】
コーティング組成物が無機強化剤をさらに含んでなる、請求項46〜54のいずれか一項の方法。
【請求項56】
無機強化剤が約300nmより小さい平均直径を有する、請求項55の方法。
【請求項57】
強化剤が、第一の組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の範囲にわたる量で存在する、請求項56の方法。
【請求項58】
強化剤が炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および二酸化珪素(SiO2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項57の方法。
【請求項59】
第一のコーティング組成物が
約3〜8重量%の亜鉛、
約1〜5重量%の燐酸亜鉛(II)、
約1〜5重量%のカーボンブラック、および
約10〜20重量%のポリジメチルシロキサン
の少なくとも1種をさらに含んでなり、それぞれの量が第一の組成物の合計重量を基準とする、請求項46〜58のいずれか一項の方法。
【請求項60】
第一のコーティング組成物がピン部品上に沈着されそして第二のコーティング組成物が箱部品上に沈着される、請求項46〜59のいずれか一項の方法。
【請求項61】
乾燥膜潤滑剤が重合体マトリックスおよび溶媒内に分散された固体潤滑剤を含んでなる、請求項46〜60のいずれか一項の方法。
【請求項62】
乾燥膜潤滑剤が自己潤滑性膜および金属合金の少なくとも1種を含んでなる、請求項61の方法。
【請求項63】
第二のコーティング組成物が
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、請求項46〜62のいずれか一項の方法。
【請求項64】
第一および第二のコーティング組成物の厚さがほぼ等しい、請求項46〜63のいずれか一項の方法。
【請求項65】
第一および第二のコーティング組成物の少なくとも1つを約150℃より低い温度において硬化することをさらに含んでなる、請求項46〜64のいずれか一項の方法。
【請求項66】
ピンおよび箱部品が金属製である、請求項46〜65のいずれか一項の方法。
【請求項67】
ピンおよび箱部品の表面に対するコーティングの接着性を改良するために該ピンおよび箱部品の少なくとも1つが表面処理にかけられる、請求項46〜66のいずれか一項の方法。
【請求項68】
表面処理がサンドブラスティング、燐酸塩処理、および銅メッキの少なくとも1つを含んでなる、請求項67の方法。
【請求項69】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有し、ピンまたは箱部品の少なくとも1つの表面がサンドブラストされているピン部品および箱部品;
エポキシ、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%の、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、および
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなる第一のコーティング組成物であって、第一のコーティング組成物の残部はエポキシから構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、ピン部品のねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物;並びに
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなる第二のコーティング組成物であって、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、箱部品のねじ部分上に沈着される第二のコーティング組成物を含んでなる、ねじ込み継手。
【請求項70】
第一のコーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる、請求項69のねじ込み継手。
【請求項71】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項70のねじ込み継手。
【請求項1】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する、ピン部品および箱部品;
エポキシ類およびポリイミド類よりなる群から選択される重合体、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%の、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなる、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物、
ここで、第一のコーティング組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、
を含んでなる、ねじ込み継手。
【請求項2】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と化学的に反応して重合体およびペルフルオロポリエーテルの間の複数の共有結合を生成する、請求項1のねじ込み継手。
【請求項3】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と縮合可能である、請求項2のねじ込み継手。
【請求項4】
第一のコーティング組成物が単一層を含んでなる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項5】
第一のコーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項6】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項5のねじ込み継手。
【請求項7】
酸化亜鉛の平均直径が約10〜300nmの間の範囲にわたる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項8】
第一のコーティング組成物が無機強化剤をさらに含んでなる、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項9】
無機強化剤が約300nmより小さい平均直径を有する、請求項8のねじ込み継手。
【請求項10】
強化剤が、第一の組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の範囲にわたる量で存在する、請求項9のねじ込み継手。
【請求項11】
強化剤が炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および二酸化珪素(SiO2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項10のねじ込み継手。
【請求項12】
第一のコーティング組成物が
約3〜8重量%の亜鉛、
約1〜5重量%の燐酸亜鉛(II)、
約1〜5重量%のカーボンブラック、および
約10〜20重量%のポリジメチルシロキサン
の少なくとも1種をさらに含んでなり、それぞれの量が第一の組成物の合計重量を基準とする、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項13】
コーティング組成物の摩耗係数が約2.0e−6mm3/Nmより小さい、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項14】
コーティング組成物の摩擦係数が約0.03〜0.10の間の範囲にわたる、請求項5のねじ込み継手。
【請求項15】
コーティングがASTM B117に従い試験して約1000時間の露呈まで実質的に腐食を示さない、請求項5のねじ込み継手。
【請求項16】
乾燥膜潤滑剤を含んでなる第二のコーティング層がピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される、前記請求項のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項17】
第二のコーティング組成物が
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、請求項16のねじ込み継手。
【請求項18】
第一および第二のコーティング層の合計厚さが約80μmより薄い、請求項16および17のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項19】
第一のコーティングが約40μmより薄い厚さを有する、請求項18のコーティング組成物。
【請求項20】
第二のコーティングが約30μmより薄い厚さを有する、請求項16〜19のいずれか一項のコーティング組成物。
【請求項21】
第一および第二のコーティングの厚さがほぼ等しい、請求項16〜20のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項22】
第一のコーティング組成物がピン部品上に沈着されそして第二のコーティング組成物が箱部品上に沈着される、請求項16〜21のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項23】
ピンおよび箱部品が金属製である、前記請求項のいずれかのねじ込み継手。
【請求項24】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する、ピン部品および箱部品;
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%の、Zn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなる、ピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物、
ここで、第一の組成物の不足分は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、
を含んでなる、ねじ込み継手。
【請求項25】
重合体がエポキシ類およびポリイミド類よりなる群から選択される、請求項24のねじ込み継手。
【請求項26】
重合体用改質剤がペルフルオロポリエーテルを含んでなる、請求項24および25のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項27】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と化学的に反応して重合体およびペルフルオロポリエーテルの間の複数の共有結合を生成する、請求項26のねじ込み継手。
【請求項28】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と縮合可能である、請求項27のねじ込み継手。
【請求項29】
第一のコーティング組成物が単一層を含んでなる、請求項24〜28のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項30】
無機粒子が約10〜300nmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛を含んでなる、請求項24〜29のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項31】
コーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる請求項24〜30のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項32】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項31のねじ込み継手。
【請求項33】
コーティング組成物が無機強化剤をさらに含んでなる、請求項24〜32のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項34】
無機強化剤が約300nmより小さい平均直径を有する、請求項33のねじ込み継手。
【請求項35】
強化剤が、第一の組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の範囲にわたる量で存在する、請求項34のねじ込み継手。
【請求項36】
強化剤が炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および二酸化珪素(SiO2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項35のねじ込み継手。
【請求項37】
第一のコーティング組成物が
約3〜8重量%の亜鉛、
約1〜5重量%の燐酸亜鉛(II)、
約1〜5重量%のカーボンブラック、および
約10〜20重量%のポリジメチルシロキサン
の少なくとも1種をさらに含んでなり、それぞれの量が第一の組成物の合計重量を基準と
する、請求項24〜36のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項38】
第一のコーティング組成物の摩耗係数が約2.0e−6mm3/Nmより小さい、請求項24〜37のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項39】
コーティング組成物の摩擦係数が約0.03〜0.10の間の範囲にわたる、請求項31のねじ込み継手。
【請求項40】
コーティングがASTM B117に従い試験して約1000時間の露呈まで実質的に腐食を示さない、請求項31のねじ込み継手。
【請求項41】
乾燥膜潤滑剤を含んでなる第二のコーティング層がピンおよび箱部品の少なくとも1つのねじ部分上に沈着される、請求項24〜40のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項42】
第二のコーティング組成物が
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、請求項41のねじ込み継手。
【請求項43】
第一および第二のコーティングの厚さがほぼ等しい、請求項41および42のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項44】
第一のコーティング組成物がピン部品上に沈着されそして第二のコーティング組成物が箱部品上に沈着される、請求項41〜43のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項45】
ピンおよび箱部品が金属製である、請求項24〜43のいずれか一項のねじ込み継手。
【請求項46】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有する、ピン部品および箱部品を用意し;
重合体、
約0.5〜15重量%の重合体用弗素含有改質剤、
約5〜15重量%の、Zn、Ca、Mg、Sr、Al、燐酸塩官能基、モリブデン酸塩官能基、ホスホモリブデン酸官能基、およびホスホ珪酸塩官能基の少なくとも1種を含んでなる腐食抑制剤、並びに
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する無機粒子
を含んでなる第一の組成物であって、第一の組成物の残部は重合体から構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする第一の組成物を用意し;
乾燥膜潤滑剤を含んでなる第二のコーティング組成物を用意し;そして
第一および第二のコーティングの各々をピンおよび箱部品の少なくとも1つの少なくともねじ部分上に適用する
ことを含んでなる、ねじ込み継手を保護する方法。
【請求項47】
重合体がエポキシ類およびポリイミド類よりなる群から選択される、請求項46の方法。
【請求項48】
重合体用改質剤がペルフルオロポリエーテルを含んでなる、請求項46および47のいずれか一項の方法。
【請求項49】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と化学的に反応して重合体およびペルフルオロポリエーテルの間の複数の共有結合を生成する、請求項48の方法。
【請求項50】
ペルフルオロポリエーテルが重合体と縮合可能である、請求項49の方法。
【請求項51】
第一のコーティング組成物が単一層を含んでなる、請求項46〜50のいずれか一項の方法。
【請求項52】
無機粒子が約10〜300nmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛を含んでなる、請求項46〜51のいずれか一項の方法。
【請求項53】
第一のコーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる請求項46〜52のいずれか一項の方法。
【請求項54】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項53の方法。
【請求項55】
コーティング組成物が無機強化剤をさらに含んでなる、請求項46〜54のいずれか一項の方法。
【請求項56】
無機強化剤が約300nmより小さい平均直径を有する、請求項55の方法。
【請求項57】
強化剤が、第一の組成物の合計重量を基準として、約5〜10重量%の範囲にわたる量で存在する、請求項56の方法。
【請求項58】
強化剤が炭化珪素(SiC)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および二酸化珪素(SiO2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項57の方法。
【請求項59】
第一のコーティング組成物が
約3〜8重量%の亜鉛、
約1〜5重量%の燐酸亜鉛(II)、
約1〜5重量%のカーボンブラック、および
約10〜20重量%のポリジメチルシロキサン
の少なくとも1種をさらに含んでなり、それぞれの量が第一の組成物の合計重量を基準とする、請求項46〜58のいずれか一項の方法。
【請求項60】
第一のコーティング組成物がピン部品上に沈着されそして第二のコーティング組成物が箱部品上に沈着される、請求項46〜59のいずれか一項の方法。
【請求項61】
乾燥膜潤滑剤が重合体マトリックスおよび溶媒内に分散された固体潤滑剤を含んでなる、請求項46〜60のいずれか一項の方法。
【請求項62】
乾燥膜潤滑剤が自己潤滑性膜および金属合金の少なくとも1種を含んでなる、請求項61の方法。
【請求項63】
第二のコーティング組成物が
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなり、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、請求項46〜62のいずれか一項の方法。
【請求項64】
第一および第二のコーティング組成物の厚さがほぼ等しい、請求項46〜63のいずれか一項の方法。
【請求項65】
第一および第二のコーティング組成物の少なくとも1つを約150℃より低い温度において硬化することをさらに含んでなる、請求項46〜64のいずれか一項の方法。
【請求項66】
ピンおよび箱部品が金属製である、請求項46〜65のいずれか一項の方法。
【請求項67】
ピンおよび箱部品の表面に対するコーティングの接着性を改良するために該ピンおよび箱部品の少なくとも1つが表面処理にかけられる、請求項46〜66のいずれか一項の方法。
【請求項68】
表面処理がサンドブラスティング、燐酸塩処理、および銅メッキの少なくとも1つを含んでなる、請求項67の方法。
【請求項69】
ピン部品が箱部品の第二のねじ部分と噛み合うように適合された第一のねじ部分を有し、ピンまたは箱部品の少なくとも1つの表面がサンドブラストされているピン部品および箱部品;
エポキシ、
約0.5〜15重量%のペルフルオロポリエーテル、
約5〜15重量%の、オルト燐酸珪酸ストロンチウムカルシウム亜鉛水和物化合物、オルト燐酸ポリ燐酸珪酸ストロンチウムアルミニウムカルシウム亜鉛水和物、オルト燐酸モリブデンアルミニウム亜鉛水和物、ニトロイソフタル酸亜鉛、およびホスホモリブデン酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種の抗腐食化合物、および
約10〜15重量%の約10nm〜10μmの間の範囲にわたる平均直径を有する酸化亜鉛
を含んでなる第一のコーティング組成物であって、第一のコーティング組成物の残部はエポキシから構成されそして各成分の百分率は第一のコーティング組成物の合計重量を基準とする、ピン部品のねじ部分上に沈着される第一のコーティング組成物;並びに
約4〜16重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
約8〜24重量%の反応性エポキシ、
約1〜6重量%の二酸化チタン、および
溶媒
を含んでなる第二のコーティング組成物であって、各成分の量は第二のコーティング組成物の合計重量を基準とする、箱部品のねじ部分上に沈着される第二のコーティング組成物を含んでなる、ねじ込み継手。
【請求項70】
第一のコーティング組成物が約3〜30重量%の固体潤滑剤をさらに含んでなる、請求項69のねじ込み継手。
【請求項71】
固体潤滑剤が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および二硫化モリブデン(MoS2)の少なくとも1種を含んでなる、請求項70のねじ込み継手。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30】
【図31】
【図32A−32B】
【図23】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図27A】
【図27B】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図30】
【図31】
【図32A−32B】
【図23】
【公表番号】特表2010−511135(P2010−511135A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538806(P2009−538806)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004484
【国際公開番号】WO2008/090411
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(504415946)テナリス・コネクシヨンズ・アクチエンゲゼルシヤフト (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004484
【国際公開番号】WO2008/090411
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(504415946)テナリス・コネクシヨンズ・アクチエンゲゼルシヤフト (15)
【Fターム(参考)】
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