説明

のり枠工の主鉄筋の設置間隔とモルタル等硬化材のかぶりを確保できるのり面保護工

【課題】
従来ののり枠工では、現地で設置作業を行なう場合、主鉄筋の設置位置は両端以外には目印がなく不明確であったため、所定の位置に設置することが難しい場合もあった。さらに、上部主鉄筋を結線する場合、スターラップ内で上部主鉄筋を持ち上げながらの作業となっていた。また、地面の不陸が大きい箇所では、スターラップと地面の間隔を十分に確保することができなかったという問題があった。
【解決手段】
のり枠工部材のスターラップに上部主鉄筋(7)・下部主鉄筋(6)の設置位置が解る目印を設けることで上部主鉄筋(7)・下部主鉄筋(6)を所定の設置位置に配置することができる。このため、上部主鉄筋(7)は目印上に配置した状態で上部スターラップ(8)と結線することが可能となる。また、下部スターラップ(4)に取り付けた目印部材の高さを調節することで地面(9)との所定のかぶりの確保も可能となる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面の崩壊防止等に利用するモルタル等硬化材吹き付けによるのり枠工において、鉄筋の設置位置を所定の間隔で確保し、スターラップと地面の間隔を適正に保持できるのり枠工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ののり枠工には、設置する主鉄筋が上面あるいは下面で4本以上になった場合、両端以外の主鉄筋の設置は、設置中に設置者が位置を測りながら設置する方法、または、経験による目測で設置する方法である(例えば、非特許文献1、2、3参照)。
また、のり枠工を地表面の不陸が大きい場所に設置する場合、アンカー材を地面に打ち込み、このアンカー材にのり枠工内のスターラップを取り付けることによりモルタル等硬化材のかぶりを確保しているものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の施工方法でののり枠工の主鉄筋設置について図4で説明する(非特許文献2参照)。図4において、8はのり枠工の上部スターラップであり、これと対向側の下部スターラップ4で、現地作業により上部主鉄筋7と下部主鉄筋6を設置する。下部主鉄筋6の両端の下部主鉄筋6aは下部スターラップ4により施工位置が決まるが、両端以外の下部主鉄筋6bの施工位置は現地で計測、または、目測により決定し設置している。
また、上部主鉄筋7の両端の上部主鉄筋7aは上部スターラップ8により施工位置が決まるが、両端以外の上部主鉄筋7bの施工位置は現地で計測、または、目測により決定し設置している。
【0004】
特許文献1の図1は、のり枠工の内の上部鉄筋4、下部鉄筋4′及びスターラップ5等から構成される鉄筋組立体6をアンカー材3に設置してかぶりを確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−37201号公報の発明(発明の名称:法枠形成用型枠及びのり枠施工方法)
【非特許文献1】のり枠工の設計・施工指針(改訂版) 平成18年11月 社団法人全国特定法面保護協会 P50〜51
【非特許文献2】新版 フリーフレーム工法 性能照査型による限界状態設計例 2008年4月 フリーフレーム協会 P12〜13
【非特許文献3】改訂版 フリーフレーム工法 設計・施工の手引き 2003年3月 フリーフレーム協会 P93(写真)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、例えば図4(非特許文献2参照)において、のり枠工に上部主鉄筋7と下部主鉄筋6を設置しようとする場合、両端の上部主鉄筋7aと下部主鉄筋6aは、施工位置をスターラップ4、8によって特定できたが、中央の上部主鉄筋7b及び下部主鉄筋6bは、スターラップ4、8内での設置位置を特定できなかった。
さらに、上部主鉄筋7を上部スターラップ8に取り付ける場合は、上部スターラップ8を取り付ける前に一旦下部スターラップ4内に上部鉄筋7を置いた後、上部スターラップ8を設置し、その後、上部鉄筋7を持ち上げながら上部スターラップ8に結線していた。
また、のり枠工を設置する場合、下部スターラップ4から地面9までのモルタル等硬化材のかぶりを確保するためには、特許文献1の図1のアンカー材3を設置するなどの事前準備が必要であった。
【0007】
本発明は、従来の構造が有していた問題を解決しようとするものであり、のり枠工の内側に設置する上部主鉄筋と下部主鉄筋をそれぞれ所定の位置に設置するとともに、下部スターラップから地面までのモルタル等硬化材のかぶりを確保することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するために提供するものであり、本発明の第1は、のり枠工の主鉄筋の設置間隔とモルタル等硬化材のかぶりを確保できるのり面保護工において、のり枠工に設置する下部主鉄筋を所定の間隔で設置するために、当該下部主鉄筋の設置位置に合わせて調整したカバースペーサーを下部スターラップに設置する主鉄筋径以上に延長することで下部主鉄筋を所定の位置で確保できるようにしたものである。
【0009】
本発明の第2は、のり枠工の主鉄筋の設置間隔とモルタル等硬化材のかぶりを確保できるのり面保護工において、のり枠工に設置する上部主鉄筋を所定の間隔で設置するために、主鉄筋の設置間隔に合わせて調整したL字型ネットコネクターを下部スターラップに所定位置の左右に取り付けることより上部主鉄筋を所定の位置に設置できるようにしたものである。
【0010】
本発明の第3は、のり枠工の主鉄筋の設置間隔とモルタル等硬化材のかぶりを確保できるのり面保護工において、のり枠工の両側の金網状の型枠に所定の間隔で配置したU字形の上部スターラップとU字形の下部スターラップのうち、当該下部スターラップの下側にカバースペーサーを取り付けることにより、当該下部スターラップから地面までのモルタル等硬化材のかぶりを確保できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記の構造であるから、のり枠工内に設置する下部主鉄筋は下部スターラップにあらかじめ下部主鉄筋の所定の位置に加工したカバースペーサーを設置しておくことで、現地で下部主鉄筋を設置するときにカバースパーサーの上端部に合わせて設置することで所定の位置を確実に確保できる。
【0012】
また、のり枠工に設置する上部主鉄筋はカバースペーサーを下部スターラップの上端部にあらかじめ所定の長さに加工したL字型ネットコネクターを設置しておくことで、現地で上部主鉄筋を設置する場合、L字型ネットコネクターに合わせて設置することで所定の位置が確実に確保できる。
【0013】
さらに、下部スターラップに取り付ける下部スターラップから地面までのモルタル等硬化材のかぶりを確保できるような形状に加工して取り付けることで、不陸のある施工箇所の地面でも、あるいは上部主鉄筋や下部主鉄筋を設置したため過重量でのり枠が変形した場合でも、カバースペーサーを設置しておくことでかぶりを確保することが可能となる。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例を図面に即して説明する。図1において、1はのり枠の金網状型枠、2はL字型ネットコネクター、3は下部ネットコネクターで4の下部スターラップを支えている5はカバースペーサーで下部スターラップ4に取り付けている。6(6a・6b)は下部主鉄筋であり、その両端の下部主鉄筋6aは下部スターラップ4の両端に取り付け、中央部の下部主鉄筋6bはカバースペーサー5の位置で取り付け、下部主鉄筋6を下部スターラップ4にそれぞれ結線する。次に、上部主鉄筋7を2のL字型ネットコネクター上に配置した後、上部スターラップ8を下部スターラップ4に沿って配置し、上部主鉄筋7(7a・7b)を上部スターラップ8にそれぞれ結線する。
【0015】
図2は、工場で加工されたのり枠工部材を現地に設置した状態のものである。すでに、のり枠工部材として金網状型枠1にL字型ネットコネクター2を介して下部スターラップ4が取り付けられ、下部スターラップ4にカバースペーサー5も取り付けられている。
【0016】
図1は、図2の工場加工したのり枠工部材に下部主鉄筋6と上部主鉄筋7を取り付け、さらに上部スターラップ8を設置したもので、のり枠工部材の設置完了図となる。この後、のり枠工部材内にモルタル等硬化材を吹き付けてのり枠工を斜面の保護工として完成させる。
【0017】
「発明に係る設置工程」
本発明に係るカバースペーサー5とL字型ネットコネクター2を用いたのり枠工部材の工場での組み立て工程は次のとおりである。
(1) のり枠工部材の組み立て工場にて、両端の金網状型枠1内にU字型の下部スターラップ4を金網状型枠1の所定位置に設置してあるL字型ネットコネクター2と下部ネットコネクター3に取り付ける。
(2) 取り付けられた下部スターラップ4に下部主鉄筋6bの設置位置が合うように加工したカバースぺーサー5を取り付ける。このとき、カバースペーサー5を下部主鉄筋径程度の長さを下部スターラップ5から突出させて取り付ける。
(3) 取り付けが完了したら、この状態で、のり枠部材の中央を畳むように、コンパクトにパッケージして現地に搬入する。
【0018】
現地でののり枠工部材の設置工程は次の通りである。
(1) 工場より受け入れたのり枠部材を現地で再度広げて地面に設置する。
(2) 下部主鉄筋6(6a・6b)を下部スターラップ4およびカバースペーサー5に合わせて位置を確保し、それぞれを結線する。
(3) 上部主鉄筋7(7a・7b)をL字型ネットコネクター2の上に載せ所定の位置を確保した上で上部スターラップ8を下部スターラップ4に沿って設置する。
(4) L字型ネットコネクター2に載っている上部主鉄筋7(7a・7b)を上部スターラップ8にそれぞれを結線する。
(5) このとき、カバースペーサー5により下部スターラップ4と設置地面の間隔は、所定のかぶりとなるカバースペーサー5の高さhで保持している。
【0019】
「本発明装置による作用」
本発明による具体的な作用は次のとおりである。
(1) 下部スターラップ4に取り付けているカバースペーサー5により下部主鉄筋6(6a・6b)の所定の位置を確保することが容易に可能となり、品質の向上と施工性の向上が達成できる。
(2) L字型ネットコネクター2により上部主鉄筋7(7a・7b)の所定の位置を確保することが容易に可能となり、また、上部スターラップ8に結線するときも上部主鉄筋7(7a・7b)を持ち上げることなく結線できるため、品質の向上と施工性の向上が達成できる。
(3) 工場加工であらかじめカバースペーサー5を取り付けていることにより下部スターラップ4と設置地面9の間隔となるかぶりをカバースペーサー5の高さhとして所定の間隔で確保することが容易に可能となり、品質の向上と施工性の向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明においてL字型ネットコネクターとカバースペーサーを用い主鉄筋とスターラップを取り付けたのり枠工の断面図である。
【図2】本発明において工場で加工したのり枠工部材を現地で広げ、設置した断面図である。
【図3】図1の斜視図である。
【図4】従来ののり枠工の断面図である。
【図5】特許文献1の図1でアンカー材を用いた従来ののり枠工の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1……金網状型枠
2……L字型ネットコネクター
3……下部ネットコネクター
3′……上部ネットコネクター
4……下部スターラップ
5……カバースペーサー
6(6a・6b)……下部主鉄筋
7(7a・7b)……上部主鉄筋
8……上部スターラップ
9……地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
のり枠工に設置する下部主鉄筋(6)を所定の間隔で設置するために、当該下部主鉄筋の設置位置に合わせて調整したカバースペーサー(5)を下部スターラップ(4)に設置する主鉄筋径以上に延長することで下部主鉄筋(6)を所定の位置で確保できるように構成したことを特徴とするのり枠工の主鉄筋の設置間隔とモルタル等硬化材のかぶりを確保できるのり面保護工。
【請求項2】
のり枠工に設置する上部主鉄筋(7)を所定の間隔で設置するために、主鉄筋の設置間隔に合わせて調整したL字型ネットコネクター(2)を下部スターラップ(4)に所定位置の左右に取り付けることより上部主鉄筋(7)を所定の位置に設置できるように構成したことを特徴とするのり枠工の主鉄筋の設置間隔とモルタル等硬化材のかぶりを確保できるのり面保護工。
【請求項3】
のり枠工の両側の金網状の型枠(1)に所定の間隔で配置したU字形の上部スターラップ(8)とU字形の下部スターラップ(4)のうち、当該下部スターラップの下側にカバースペーサー(5)を取り付けることにより、当該下部スターラップから地面(9)までのモルタル等硬化材のかぶりを確保できるように構成したことを特徴とするのり枠工の主鉄筋の設置間隔とモルタル等硬化材のかぶりを確保できるのり面保護工。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−57345(P2012−57345A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200940(P2010−200940)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フリーフレーム
【出願人】(000170646)国土防災技術株式会社 (23)
【Fターム(参考)】