説明

はかり用の搬送装置

【課題】秤量対象物を秤量ベルト上に移送する時の好ましくない動的作用を低減した動的はかり用の搬送装置を提供する。
【解決手段】秤量セルのための先行荷重を形成する秤量ベルト2を有し、当該秤量ベルト上に載った秤量対象物3を第1の方向Xに沿って搬送すると同時にその重量を検知するために構成され、上流の入口領域に配置されて対象物3を支持するが秤量セルのための先行荷重は形成しない供給ベルト5を有する供給装置4から対象物3を受け取り、秤量する対象物3が第1の方向と、第1の方向に垂直に延在する水平方向Yと、両方向X、Yに垂直なZ方向とに延びた搬送装置1において、秤量ベルト2上で対象物を搬送する間に当該対象物を傾斜した状態で秤量するために、X方向に延びて先行荷重を形成する2つの秤量案内要素7a、7bがY方向において対象物3の横方向の支持のために配設されている搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文に対応したはかり用の搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動的はかり用のこの種の搬送装置は従来技術で公知である。秤量する対象物は秤量ベルトに連続的に供給され、そして搬送中にこの秤量ベルトを介して秤量される。対象物はとりわけ手紙であって、入口領域を経由して秤量ベルトに供給され、除去装置に向けて秤量ベルトの下流側へ移送される。
【0003】
手紙は供給装置から入口領域に入った段階ではまだ秤量されないが、先行荷重を形成する秤量ベルトに向かって移送される時に好ましくない逸脱力がしばしば発生し、この逸脱力によって秤量信号と干渉する運動力の作用が発生する。特に正確で干渉のない手紙の重量測定のために、手紙の秤量工程中に秤量ベルト上で手紙を横方向に挟持することが従来技術で公知である。それによって衝撃が低減ないし除去され、手紙の滑らかな移送が可能となる。そのような解決法は、例えばドイツ特許第10 2007 044 746 A1号公報で開示されている。
【0004】
また、既に入口領域にある手紙を、衝撃効果または慣性効果の質量モーメントを大部分除去するため、秤量ベルト上で当該手紙が搬送される速度と同じ速度で搬送することも知られている。この目的のため、ドイツ10 2005 018 395 A1は、対向するベルト間で対象物を横方向に縁で挟持し、水平な秤量ベルトの上方領域で対象物の挟持を解放することで対象物が秤量ベルト上に落ち、そこで対象物を秤量することを教示している。その対象物は秤量ベルトによってさらに搬送され、そして最終的にはかりの下流の搬送ベルトによって再度挟持される。しかしこの場合、秤量セルはかなりの干渉力によって影響を受ける。さらに、この装置は手紙を秤量ベルト上で縁で搬送するには不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許第10 2005 018 395 A1号公報
【特許文献2】ドイツ特許第10 2007 044 746 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、従来技術で知られた解決法は、可及的に高速で搬送しつつより高い秤量精度を得るという要求を満足することができない。
それ故、本発明の目的は従来の動的はかり用の搬送装置を改良することにあり、特に、秤量対象物を秤量ベルト上に移送する時の好ましくない動的作用を低減することにある。本発明の搬送装置は、特に、電磁気力の補償原理に従って作動する動的はかりに適用するのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、請求項1に対応した搬送装置によって解決される。すなわち前記課題は、はかり用の搬送装置1であって、a)秤量セルのための先行荷重を形成する秤量ベルト2を有し、b)秤量ベルト2は当該秤量ベルト上に載った秤量対象物3を第1の方向Xに沿って搬送すると同時にその重量を検知するために構成され、c)秤量ベルト2は、上流の入口領域に配置されて対象物3を支持するが秤量セルのための先行荷重は形成しない供給ベルト5または供給ローラを有する供給装置4から対象物3を受け取り、d)秤量する対象物3が第1の方向と、この第1の方向に垂直に延在する水平方向Yと、両方向X、Yに垂直なZ方向とに延びた搬送装置1において、e)秤量ベルト2上で対象物を搬送する間に当該対象物を傾斜した状態で秤量するために、X方向に延びて先行荷重を形成する2つの秤量案内要素7a、7bがY方向において対象物3の横方向の支持のために配設され、秤量案内要素7a、7b間の最小のY方向距離は対象物3のY方向の最大範囲よりも大きい搬送装置によって解決される。
【0008】
本発明は、秤量ベルト上で対象物が搬送される間に対象物が倒れるのを防止するための横方向案内要素によって対象物が保護されるなら、入口領域から秤量ベルトへ特に低い干渉作用で対象物を搬送することが可能であるという知見に基づいている。対象物は横方向案内要素で案内される時に横方向案内要素に接触するが、案内要素間で対象物が搬送される時に案内要素間の最小距離は常に対象物の最大厚さよりも大きくされている。手紙は秤量中は案内要素によって挟持されないので、搬送方向またはその横断方向で衝撃はない。
【0009】
本発明によれば、案内要素が互いに離間して横方向案内としてのみ機能して、特に縁で搬送される手紙を安定させる。案内要素は手紙の横方向で接触して支持するだけであり、手紙に対して余分な力を積極的に掛けないようにしている。
【0010】
特に、干渉がない状態で手紙を秤量するために、手紙は、好ましくは空間内の向きを変えずに、かつ、一時的な横方向の圧力をまったく受けることなく、秤量ベルトを横切って走行する。手紙はその下縁が秤量ベルト上に載り、片側で案内要素に対して自然に当接しているので(案内要素以外は余分な力は掛かっていない)、従来技術で知られた動的衝撃作用は有利に低減される。特に正確な秤量結果を得るため、秤量ベルト上の案内要素は、秤量ベルトと共に、秤量ベルトを横切る搬送中の逸脱力が排除されるように、はかりのための先行荷重を形成する。
【0011】
本発明の搬送装置は、秤量セルのための先行荷重を形成する秤量ベルトを有する。秤量ベルトは、縁で立っている秤量対象物を搬送するために構成され、ここで搬送は第1の方向Xで行われる。本発明によると、秤量ベルトは、入口領域の上流側に配設された供給装置から対象物を取得する。秤量ベルトは、対象物を搬送する手段(対象物を支持及び搬送するのに適した供給ベルトまたは供給ローラまたは類似の手段)を構成する。供給装置はその搬送手段と共に先行荷重を形成しない。秤量ベルトは秤量のために対象物を上流の供給装置から取得し、そして下流の出口領域に配設された除去装置に搬送する。秤量する対象物としての好ましくは手紙は、秤量工程の間に、好ましくは、搬送ベルトの搬送方向に対応する第1の方向Xと、X方向に垂直な水平方向Yと、これら方向X方向とY方向に垂直であって秤量セルの秤量方向に対応する方向Zに延在する。
【0012】
本発明によれば、対象物を秤量ベルト上で搬送する間に挟持することなくY方向で横方向に案内するために、先行荷重を形成する2つの秤量案内要素が配設される。この目的のため、案内要素間のY方向の最小距離は対象物のY方向の最大距離よりも大きく選定される。従って、手紙の最大厚さは案内要素間の最小距離よりも常に小さく、それにより好ましくない挟持作用を避けることができる。
【0013】
手紙は一般的に薄い形式であって、その縁で搬送中に秤量ベルト上で自由に立てることができないので、2つの案内要素のうちのいずれか一方にいくぶん軽く傾いた状態で搬送されることになる。それ故、秤量ベルト上の搬送中に手紙は安定した位置を取り、信頼できる秤量がなされる。
【0014】
本発明の一実施形態では、秤量ベルトの上流の供給装置はまた、この領域の対象物を予め安定させ又は案内するために、少なくとも2つの案内要素を有する。ここでも、入口案内要素間のY方向距離は手紙のY方向厚みの最大値よりも大きい。この大小関係は手紙が供給装置から秤量ベルトに移送される少なくとも移送領域で適用される。搬送用の秤量ベルトの上面と供給装置の搬送ベルトの上面は面一状を成している。入口案内要素間のY方向距離と秤量案内要素間のY方向距離はこの領域で等しく選択されていることと、搬送用の秤量ベルトの上面と供給装置の搬送ベルトの上面が面一状を成していることによって、手紙は、好ましくない衝撃作用がなく、空間内で向きを変えないで、かつ受け渡しの際に余分な力を受けることなく、秤量ベルトによって滑らかに受け取られる。秤量結果は、従来技術に比較して、主として干渉作用がない移送によって秤量セルが衝撃を受けず、安定した秤量結果がより迅速に提供されるので、有利に改善される。
【0015】
入口案内要素は、好ましくない逸脱力を避けるために、秤量案内要素から離間されて形成されている。前者は固定的すなわち供給装置に結合されているのに対し、秤量案内要素は秤量セルのための先行荷重を形成する。
【0016】
入口領域から秤量ベルト上への特別に滑らかな移送のため、本発明の一実施例では入口案内要素と秤量案内要素がX方向に直接に互いに隣接するか、又は互いにX方向において部分的に重なる。後者の場合、手紙は、秤量案内要素が秤量の時期に遅れることなく完全に横方向案内を引き継ぐことにより、継ぎ目または段差なく連続的に横方向に案内される。
【0017】
一つの変形実施例では、少なくとも一つの秤量案内要素がベルト要素として構成され、好ましくは秤量ベルトと同じ速度で駆動される。それにより、秤量ベルトを介した搬送力と、手紙との横接触の領域での搬送力の両方が同じように手紙に作用し、これにより安定した搬送が保証される。この技術思想を延長して、少なくとも一つの入口案内要素が、少なくとも一つの秤量案内要素及び/又は秤量ベルトと同じ速度で駆動されるために、ベルト要素として構成される。固定の又は不動の案内要素と対比すると、手紙と横接触領域との間の相対動すなわちそれにより生じる摩擦力は、この方法で回避される。X方向の運動成分を発生させるすべての要素であって手紙との接触のために適するものは、そのような被駆動案内要素として機能することができる。ベルトはX方向に長く延びているため特に利点があるように思われるが、例えばローラも使用可能である。
【0018】
本発明の追加の実施例によって、秤量ベルトと被駆動秤量案内要素を共通の一つのモータによって、好ましくは歯付きベルトによって駆動することにより、好ましくない動的干渉作用はさらに低減される。案内要素のために別個に一つのモータを配設する場合と比べて、案内要素に共通の一つのモータを使用することで先行荷重を形成する質量を低減できるだけでなく、干渉頻度とアンバランス、それにコストを低減することができる。
【0019】
案内要素は、好ましくは秤量セルの測定方向すなわちZ方向に延びる軸を用いて着座する。アンバランス力が発生しても測定方向に直角な方向に作用するので秤量セルに対する干渉の影響が低減される。
【0020】
本発明の一実施例は、さらに、駆動ベルトおよび案内要素のための回転測定システムの高分解能の知能モータの使用を提供する。これにより、回転速度、回転角、モータ軸の加速度、それらに結合された要素が特定され高分解能で同期される。特に、異なる被駆動要素またはモータ軸のアンバランスの位相角が相対的に設定され、それらによって出力されたアンバランス力が可能な最大範囲で互いに補償し合う。
追加の有利な実施例は本願の従属請求項により明らかとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、秤量対象物を秤量ベルト上に移送する時の好ましくない動的作用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るはかり用の搬送装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図示例を参照して以下説明する。図1の概略平面は図示しない秤量セルの上を走る搬送路を示す。搬送装置1は、図面の下側に配置される秤量セルのための先行荷重を形成する秤量ベルト2を含む。秤量ベルト2の上流には供給装置4が配設されている。手紙3は供給ベルト5上に縁を立てた状態で搬送され、供給装置4の供給ベルト5と秤量ベルト2に接触する移送領域9で秤量ベルト2に移送される。
【0024】
手紙を挟持することなく手紙のための横方向の支持部を形成する2つの秤量案内要素7a、7bが、秤量ベルトの上方で手紙の側方に配設されている。2つの秤量案内要素7a、7bの間の距離は、手紙3のY方向の最大厚さよりも大きくなるように選択される。
【0025】
秤量案内要素7a、7bと同じ相互間距離を有する横方向入口案内要素8a8bが、秤量ベルトの上流の入口領域の供給装置4に配設されている。さらに、案内要素7a、8aと案内要素7b、8b、同様に秤量ベルト2と供給ベルト5が、搬送方向Xで互いに同一面に配設されている。すべての案内要素7a、7b、8a、8bがベルトの形式で構成され、手紙3に面した各ベルトの部分は、秤量ベルト2と供給ベルト5と同じ速度Xで搬送方向Xに駆動される。
【0026】
入口領域に供給された手紙3は供給ベルト5上に縁を立てた状態で入口案内要素8a、8b間に搬送される(左から右の矢印方向に対応)。移送領域9で、手紙3は、秤量セルのための秤量ベルト先行荷重を形成する秤量ベルト2と秤量案内要素7a、7bに接触する。入口案内要素8a、8bと秤量案内要素7a、7bは選択された距離を互いに整合させているので、秤量ベルト2は手紙3を横方向、垂直方向および搬送方向で衝撃作用なく受け取り、手紙3は余分な力を受けることなく及び/又は空間内の向きを変更することなく移送される。手紙3が秤量ベルト2によって搬送されている間に、その重さを検知し秤量セルによって処理することができる。秤量ベルト2の下流に配設された除去領域6でも、秤量ベルト2から除去領域6へ手紙を移送するに際して特別に干渉作用がないようにするために、搬送ベルトまたは横方向案内要素を同様に配設することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 搬送装置
2 秤量ベルト
3 手紙
4 供給装置
5 供給ベルト
6 除去領域
7a、7b 秤量案内要素
8a、8b 入口案内要素
9 移送領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はかり用の搬送装置(1)であって、
a)秤量セルのための先行荷重を形成する秤量ベルト(2)を有し、
b)秤量ベルト(2)は当該秤量ベルト上に載った秤量対象物(3)を第1の方向Xに沿って搬送すると同時にその重量を検知するために構成され、
c)秤量ベルト(2)は、上流の入口領域に配置されて対象物(3)を支持するが秤量セルのための先行荷重は形成しない供給ベルト(5)または供給ローラを有する供給装置(4)から対象物(3)を受け取り、
d)秤量対象物(3)が第1の方向と、この第1の方向に垂直に延在する水平方向Yと、両方向X、Yに垂直なZ方向とに延びた搬送装置(1)において、
e)秤量ベルト(2)上で対象物を搬送する間に当該対象物を傾斜した状態で秤量するために、X方向に延びて先行荷重を形成する2つの秤量案内要素(7a、7b)がY方向において対象物(3)の横方向の支持のために配設され、秤量案内要素(7a、7b)間の最小のY方向距離は対象物(3)のY方向の最大範囲よりも大きい搬送装置。
【請求項2】
請求項1の搬送装置であって、供給装置(4)が、対象物(3)を倒れないように第2の方向Yで案内するための少なくとも2つの入口案内要素(8a、8b)を有し、入口案内要素(8a、8b)間のY方向距離は、少なくとも供給装置(4)から秤量ベルト(2)への移送領域9で、この移送領域の秤量案内要素(7a、7b)間のY方向距離と可及的に一致する搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2の搬送装置において、秤量案内要素(7a、7b)と入口案内要素(8a、8b)は、X方向の搬送中の衝撃を回避するために、X方向で互いに隣接し又は部分的に重なる搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送装置において、少なくとも一つの秤量案内要素(7a、7b)が秤量ベルト(2)と同じ速度で駆動されるベルト要素として構成されている搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送装置において、少なくとも一つの入口案内要素(8a、8b)が、少なくとも一つの秤量案内要素(7a、7b)の速度と同じ速度で駆動されるベルト要素として構成されている搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送装置において、当該搬送装置は、直立した対象物(3)、特に長い方の縁を下にして直立した手紙であってY方向の長さはX方向とZ方向の長さよりも短い手紙を搬送するために構成されている搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の搬送装置において、秤量ベルト(2)と被駆動秤量案内要素(7a、7b)は共通の1つのモータによって好ましくは歯付きベルトによって駆動される搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の搬送装置において、案内または搬送目的のために駆動されるすべての構成要素(2、5、7a、7b、8a、8b)が同じ回転速度で駆動される搬送装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の搬送装置において、機械的干渉を回避するために、案内目的で駆動されるすべての構成要素(7a、7b、8a、8b)の軸、及び/又は、案内又は搬送のために設けられたすべてのモータが、秤量セルの測定方向Zに配設されている搬送装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の搬送装置において、すべての構成要素(2、5、7a、7b、8a、8b)の案内又は搬送目的のため駆動されるモータが干渉頻度を低減するために同期される搬送装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の搬送装置を有するはかり。

【図1】
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【公開番号】特開2011−39055(P2011−39055A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179640(P2010−179640)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(506186673)ヴィポテック ヴィーゲ−ウント ポジティオニエルシステーメ ゲーエムベーハー (21)
【氏名又は名称原語表記】WIPOTEC WIEGE−UND POSITIONIER−SYSTEME GMBH
【住所又は居所原語表記】ADAM−HOFFMANN STRASSE 26, 67657 KAISERSLAUTERN,GERMANY
【Fターム(参考)】