説明

はんだペースト印刷用マスクおよびその製造方法、はんだペースト印刷用装置

【課題】ファインピッチ用はんだペーストを用いた場合にも、基板とマスクとの間にはんだペーストが入り込むことを防止して電極のにじみやブリッジの発生を低減し、はんだペーストを高精度で基板上に印刷する。
【解決手段】金属層21の表面に形成した感光性のレジストマスクを感光させ、任意形状のエッチング用開口部を前記レジストマスクに形成し、前記レジストマスクの前記エッチング用開口部を通じて金属層21をエッチングして開口部を金属層21に形成することにより製造され、はんだペーストを通過させる任意形状の開口部20aを有し、前記レジストマスクをエッチングレジスト層22として金属層21上に積層状態で備えるはんだペースト印刷用マスク10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインピッチ印刷に適したはんだペースト印刷用マスクおよびその製造方法、はんだペースト印刷用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の微細化に伴い、電子部品を搭載する基板の接合部電極(バンプ)の小サイズ化が求められている。バンプは、基板上に印刷したはんだペーストを溶融して形成することができるが、はんだペーストのはんだ粉末粒径が印刷面積に対して大きすぎる場合、印刷量がばらつくことにより形成されるバンプの高さがばらつき、接合不良等の問題を招くおそれがある。
【0003】
このため、はんだ粉末の微細化や、微細粉末のペースト化技術の改良が進められている。たとえば、体積累積中位径(Median径:D50)が5μm以下であるはんだ粉末を用いたファインピッチ用はんだペーストが開発されている。
【0004】
はんだペーストを基板等に印刷する技術としては、スクリーン印刷が一般的である。たとえば特許文献1に示されるスクリーン印刷機では、印刷テーブル(ステージ)上に吸着保持された基板上面にマスクを接触させ、このマスク上にはんだペーストを載せた状態で、マスクの上面に沿ってスキージを移動させることにより、はんだペーストをマスクに形成された開口部を経由して基板面に印刷している。
【0005】
この装置では、基板の周辺部に、マスクの周縁部を保持するマスク面保持部材が設けられており、このマスク面保持部材にマスクを真空吸着する、あるいはマスクを磁性金属で形成しかつマスク面保持部材のマスク接触部分に電磁石を設けることにより、マスク面保持部材に対してマスクを密着させ、基板に対するマスクのずれを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−143110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のマスク保持方法により、基板とマスクとの面方向の位置ずれが防止できる。しかしながら、ファインピッチ用はんだペーストを用いた場合には、基板とマスクとの間に数μmの隙間が生じただけでもこの隙間にはんだペーストが侵入し、電極がにじんで形成されたり、隣接するバンプ間を接続するブリッジが形成されたりするおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ファインピッチ用はんだペーストを用いた場合にも、基板とマスクとの間にはんだペーストが入り込むことを防止して電極のにじみやブリッジの発生を低減し、はんだペーストを高精度で基板上に印刷することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属層と、この金属層の表面に積層されたエッチングレジスト層とを備え、前記金属層および前記エッチングレジスト層を貫通する任意の開口部を備えるはんだペースト印刷用マスクである。
【0010】
このはんだペースト印刷用マスクによれば、基板に密着するエッチングレジスト層を備えるので、基板上面とマスク下面との間に隙間が形成されにくい。したがって、スクリーン印刷の際にファインピッチ用はんだペーストを用いる場合であっても、開口部からマスク下面と基板上面との間にはんだペーストが入り込みにくく、高精度の印刷が可能となる。
【0011】
このはんだペースト印刷用マスクにおいて、エッチングレジスト層の厚さは1〜5μmと設定することが好ましい。エッチングレジスト層が薄すぎると基板に密着する効果が十分に得られなかったり破損したりするおそれがあり、厚すぎると大きく変形して印刷精度を低下させるおそれがあるからである。
【0012】
また本発明は、金属層の表面に感光性のレジストマスクを積層形成する工程と、露光用開口部を備える露光マスクを前記レジストマスク上に配置し、前記露光用開口部を通じて前記レジストマスクを感光させ、エッチング用開口部を前記レジストマスクに形成する工程と、前記レジストマスクの前記エッチング用開口部を通じて前記金属層をエッチングし、前記エッチング用開口部に対応する形状の開口部を前記金属層に形成する工程とを有し、前記レジストマスクは、被印刷物に対する密着層として、前記金属層上に形成したまま除去しないはんだペースト印刷用マスクの製造方法である。
【0013】
この製造方法によれば、基板に密着しやすく、ファインピッチ用はんだペーストを基板との間に入り込ませにくいはんだペースト印刷用マスクを、容易に製造することができる。
【0014】
このはんだペースト印刷用マスクの製造方法において、レジストマスクは、厚さ1〜5μmに形成することが好ましい。レジストマスクが薄すぎると基板に密着する効果が十分に得られなかったり破損したりするおそれがあり、厚すぎると大きく変形して印刷精度を低下させるおそれがあるからである。
【0015】
また本発明は、被印刷物である基板を保持するステージと、エッチングレジスト層と金属層とが積層されてなり、はんだペーストを通過させる開口部を有し、前記ステージ上の前記基板に対して前記エッチングレジスト層を密着させるように配置されるはんだペースト印刷用マスクと、前記はんだペースト印刷用マスクの上面に沿って移動し、前記はんだペーストを前記開口部を通過させて前記基板に付着させるスキージとを備えるはんだペースト印刷用装置である。
【0016】
このはんだペースト印刷用装置によれば、はんだペースト用印刷マスクのエッチングレジスト層を基板に密着させてスクリーン印刷を行うので、ファインピッチ用のはんだペーストであってもマスクと基板との間に入りこみにくく、高精度での印刷が可能である。
【0017】
このはんだペースト印刷用装置において、前記エッチングレジスト層の厚さは1〜5μmであることが好ましい。エッチングレジスト層が薄すぎると基板に密着する効果が十分に得られなかったり破損したりするおそれがあり、厚すぎると大きく変形して印刷精度を低下させるおそれがあるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ファインピッチ用はんだペーストを用いた場合にも、基板とマスクとの間にはんだペーストが入り込むことを防止できるので、電極のにじみやブリッジの発生を低減し、はんだペーストを高精度で基板上に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るはんだペースト印刷用マスクを備えるはんだペースト印刷用装置を示す断面図である。
【図2】本発明に係るはんだペースト印刷用マスクの製造方法において、金属層の表面に感光性のレジストマスクを積層形成する工程を示す断面図である。
【図3】本発明に係るはんだペースト印刷用マスクの製造方法において、任意の露光用開口部を備える露光マスクをレジストマスク上に配置し、露光用開口部を通じてレジストマスクを感光させ、露光用開口部に対応する形状のエッチング用開口部をレジストマスクに形成する工程を示す断面図である。
【図4】本発明に係るはんだペースト印刷用マスクの製造方法において、エッチング用開口部がレジストマスクに形成された状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係るはんだペースト印刷用マスクの製造方法において、レジストマスクのエッチング用開口部を通じて金属層をエッチングすることにより、エッチング用開口部に対応する形状の開口部が金属層に形成された状態を示す断面図である。
【図6】図1に示すはんだペースト印刷用装置を用いた印刷方法を示す断面図である。
【図7】図1に示すはんだペースト印刷用装置を用いてはんだペーストが基板上に印刷された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明のはんだペースト印刷用装置10は、図1に示すように、被印刷物である基板100を保持するステージ11と、はんだペーストPを通過させる任意形状の開口部20aを有するはんだペースト印刷用マスク(以下「マスク」)20と、マスク20の上面に沿って移動し、開口部20aを通じてはんだペーストPを基板100に付着させるスキージ13と、マスク20を保持する枠体14とを備える。
【0021】
基板100は、たとえばガラス、エポキシ樹脂等から形成され、厚さが1.5〜3mm、大きさが20cm×20cm程度から40cm×40cm程度の矩形の平面形状に形成されている。また、この基板100には、上面にランド部101が形成されているとともに、四隅等にマスク20を位置合わせするための位置決めマーク(図示略)が設けられている。
【0022】
ステージ11は、はんだペーストPの印刷時に基板100が載置される印刷テーブルである。はんだペースト印刷用装置10は、このステージ11とマスク20とを相対的に移動させる移動装置(図示せず)を備えている。
【0023】
マスク20は、金属層21と厚さ1〜5μmのエッチングレジスト層(以下「レジスト層」)22とが積層されてなり、印刷時にはステージ11上の基板100に対してレジスト層22を密着させるように配置される。金属層21はたとえばステンレス鋼、レジスト層22は基板100に対する粘着性を有する樹脂材料(たとえばポリエステル)から形成されている。マスク20を用いてスクリーン印刷を行う場合、印刷されるはんだペーストPの厚さ(すなわちバンプの大きさ)は、金属層21の厚さに応じて決定される。
【0024】
マスク20の開口部20aは、基板100のランド部101と略同一形状で、このランド部101に対応した箇所に設けられている。なお、これらの開口部20aは、ピッチが120μm以下(たとえば80〜120μm)、直径が60〜90μm程度に設定されている。また、マスク20には、基板100に対する位置決めマーク(図示略)が設けられている。
【0025】
枠体14は、このマスク20の周縁部を保持し、ステージ11に対して上下に移動可能に設けられている。
【0026】
このはんだペースト印刷用マスク20は、金属層21の表面に感光性のレジストマスク23を積層形成する工程と、任意の露光用開口部24aを備える露光マスク24をレジストマスク23上に配置し、露光用開口部24aを通じてレジストマスク23を感光させ、露光用開口部24aに対応する形状のエッチング用開口部23aをレジストマスク23に形成する工程と、レジストマスク23のエッチング用開口部23aを通じて金属層21をエッチングし、エッチング用開口部23aに対応する形状の開口部21aを金属層21に形成する工程とを行うことにより形成される。本発明においては、金属層21をエッチングした後もレジストマスク23はマスク20から除去されず、基板100に密着するレジスト層22として備えられたままスクリーン印刷に用いられる。
【0027】
より具体的には、まず、図2に示すように、金属層21の表面に感光性のレジストマスク23を積層形成する。なお、レジストマスク23は、現像後に露光部分が残るネガ型フォトレジスト、または現像後に露光部分が除去されるポジ型フォトレジストのいずれを用いても形成できるが、ここではポジ型フォトレジストを用いて形成する場合について説明する。
【0028】
ポジ型フォトレジストの一例として、たとえば、ビス(アミノフェノール)化合物と、ジカルボン酸由来の構造からなるポリベンゾオキサゾール前駆体樹脂(ベース樹脂)と、ジアゾキノン化合物(感光剤)とで構成され、アルカリ水溶液で現像できるポジ型感光性樹脂組成物があげられる。また、ネガ型フォトレジストの一例として、たとえば、ポリベンゾオキサゾール前駆体に、放射線の照射により酸を発生する化合物と、この酸の作用で前記ポリベンゾオキサゾール前駆体を架橋しうる化合物とが配合された耐熱性ネガ型感光性樹脂組成物があげられる。
【0029】
次いで、図3に示すように、任意の露光用開口部24aを備える露光マスク24をレジストマスク23上に配置し、図に矢印で示すように光を照射し、露光用開口部24aを通じてレジストマスク23を感光させる。そして、図4に示すように、露光マスク24を除去するとともに、レジストマスク23を現像して露光用開口部24aに対応する部分(露光部分)を除去し、エッチング用開口部23aをレジストマスク23に形成する。また、金属層21の裏面に、不溶性フィルム25を貼り付けておく。不溶性フィルムとしては、たとえば、撥水性を有し、一方の面に弱い接着力を有する粘着剤が塗布されたPET樹脂やアクリル樹脂、ビニルなどのマスキングテープ(たとえば積水化学工業株式会社製フォトマスク保護テープ「タックウェル(商品名)」など)を用いることができる。
【0030】
次いで、たとえばFeCl2液などのエッチング液を用いて、図5に示すように、エッチング用開口部23aを通じて金属層21をエッチングし、エッチング用開口部23aと同じ形状の開口部21aを金属層21に形成する。これにより、開口部21aおよびエッチング用開口部23aが連通して、金属層21およびレジストマスク23を厚さ方向に貫通する印刷用の開口部20aが形成される。なお、不溶性フィルム25は、このエッチング液によって溶解されず、金属層21を保持するとともに、金属層21が裏面からエッチングされるのを防止する。
【0031】
そして、不溶性フィルム25を除去することにより、金属層21と、金属層21の表面に積層された厚さ1〜5μmのレジストマスク23(すなわちレジスト層22)とを備え、金属層21およびレジスト層22を貫通する開口部20aを備えるはんだペースト印刷用マスク20が製造される。つまり、レジストマスク23は金属層21をエッチングした後にも除去されず、基板100に対する粘着性を有する密着層として、マスク20を構成している。
【0032】
以上のように製造されたはんだペースト印刷用マスク20を備えるはんだペースト印刷用装置を用いて基板100に印刷する場合、図6に示すように、レジスト層22が基板100に接触するようにマスク20を配置する。このとき、マスク20と基板100とを、マスク20の開口部20aが基板100のランド部101に一致するように、前述の位置決めマークを用いて位置決めする。
【0033】
この状態で、図に矢印で示すようにスキージ13をマスク20の上面に沿って移動させることにより、開口部20aを通じてはんだペーストPを基板100のランド部101に付着させる。このとき、基板100に対して粘着性を有するレジスト層22が基板100に対して隙間なく密着しているので、微細粉末をペースト化してなるはんだペーストPであっても、開口部20aから基板100とマスク20との間に入り込まず、図7に示すように、基板100上に高精度で印刷される。
【0034】
以上説明したように、本発明に係るマスク20を備える印刷用装置10によれば、ファインピッチ用のはんだペーストPであっても、基板100上ににじみなく正確に印刷できる。したがって、この基板100においてはんだペーストPを溶融してバンプを形成した場合にも、バンプ間のブリッジが形成されにくく、極小バンプが精密に配置された基板を製造することができる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 はんだペースト印刷用装置
11 ステージ
13 スキージ
14 枠体
20 はんだペースト印刷用マスク
20a 開口部
21 金属層
21a 開口部
22 エッチングレジスト層
23 レジストマスク
23a エッチング用開口部
24 露光マスク
24a 露光用開口部
25 不溶性フィルム
100 基板(被印刷物)
101 ランド部
P はんだペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだペーストを通過させる任意形状の開口部を有するはんだペースト印刷用マスクであって、
金属層と、この金属層の表面に積層されたエッチングレジスト層とを備え、前記金属層および前記エッチングレジスト層を貫通する前記開口部を備えることを特徴とするはんだペースト印刷用マスク。
【請求項2】
前記エッチングレジスト層の厚さは1〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載のはんだペースト印刷用マスク。
【請求項3】
金属層の表面に感光性のレジストマスクを積層形成する工程と、
露光用開口部を備える露光マスクを前記レジストマスク上に配置し、前記露光用開口部を通じて前記レジストマスクを感光させ、エッチング用開口部を前記レジストマスクに形成する工程と、
前記レジストマスクの前記エッチング用開口部を通じて前記金属層をエッチングし、前記エッチング用開口部に対応する形状の開口部を前記金属層に形成する工程と
を有し、
前記レジストマスクは、被印刷物である基板に対する密着層として、前記金属層上形成したまま除去しないことを特徴とするはんだペースト印刷用マスクの製造方法。
【請求項4】
前記レジストマスクは、厚さ1〜5μmに形成することを特徴とする請求項3に記載のはんだペースト印刷用マスクの製造方法。
【請求項5】
被印刷物である基板を保持するステージと、
金属層とエッチングレジスト層とが積層されてなり、はんだペーストを通過させる任意形状の開口部を有し、前記ステージ上の前記基板に対して前記エッチングレジスト層を密着させるように配置されるはんだペースト印刷用マスクと、
前記はんだペースト印刷用マスクの上面に沿って移動し、前記開口部を通じて前記はんだペーストを前記基板に付着させるスキージと
を備えることを特徴とするはんだペースト印刷用装置。
【請求項6】
前記エッチングレジスト層の厚さは1〜5μmであることを特徴とする請求項5に記載のはんだペースト印刷用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86531(P2012−86531A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237685(P2010−237685)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】