説明

はんだ付けフラックス用洗浄剤組成物

【課題】鉛を含む高融点はんだを実装した電子部品を洗浄する際、水すすぎにて鉛崩壊現象を抑制することができ、すすぎ剤を使用した場合と同等の洗浄性を有する洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)一般式(1):


(式中、Rは炭素鎖8〜72の直鎖若しくは分岐鎖の不飽和または飽和のアルキル基又はアルキレン基を、nは2〜4を示す。)で表わされ、かつ、非水溶性のポリカルボン酸系化合物、(B)リン酸エステル系界面活性剤、及び、(C)有機溶剤を含むはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けフラックス用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子部品をはんだ付けにより接合する際に使用されるフラックスを洗浄する際は、主にトリクロロエチレン、塩化メチレン等の塩素系溶剤を主成分とする塩素系洗浄剤が用いられてきた。これら塩素系溶剤は、不燃性でかつ良好な洗浄性を得ることができるが、オゾン層破壊、土壌汚染、人体への毒性等が懸念されており、1990年以降使用が制限されている。
【0003】
これに対し、本出願人は、塩素系溶剤の代替洗浄剤としてグリコールエーテル系溶剤、界面活性剤、水を含む非ハロゲン系の準水系洗浄剤を提案した(特許文献1参照)。この準水系洗浄剤は、洗浄性に優れ、毒性・臭気・引火性・被洗浄物への影響が低い等のため、各種電子部品のフラックス洗浄に用いられている。
【0004】
ところで、2006年以降、ヨーロッパでRoHS(Restriction of Hazardous Substances:電子・電気機器における特定有害物質の使用制限)指令が施行されたことにより、鉛を含んだ鉛はんだから、環境破壊や健康被害の原因の一つでもある鉛を使用しない鉛フリーはんだが開発され、広く用いられるようになってきている。しかしながら、鉛はんだの方が鉛フリーはんだより優れた部分もあり、鉛はんだの代替技術が存在しない場合は、鉛はんだが認められる場合がある。例えば、鉛を85%以上含有する高融点のはんだは、はんだ処理工程が2回以上必要な電子部品に使用されることが多い。電子部品を組立てる際は、別々の工程ではんだ付け処理が行われるが、同じ融点のものを用いると2回目のはんだ付けにて部品を搭載する際に、1回目にはんだ処置して搭載した部品のズレやはんだの溶け出し等が生じ、性能不良を引き起こす。そのため、はんだ処理が2回以上行われる電子部品には1回目に使用するはんだ金属の溶融温度は2回目のはんだ付け温度よりも高くする必要がある。このような理由から、鉛を85%以上含む高融点はんだは、RoHS指令の適用除外となっており、未だ広く用いられている。
【0005】
上記準水系洗浄剤は、洗浄工程にて電子部品に付着したフラックスを除去後、水すすぎにて電子部品に付着した洗浄剤成分を効果的に除去するものの、鉛を90%以上含有した高融点はんだを実装した電子部品のフラックスを洗浄する場合は、水すすぎ時に水と鉛が反応し、不溶性の鉛化合物がすすぎ水中に溶出していた(鉛崩壊現象)。溶出した不溶性の鉛化合物は、被洗浄物に付着し絶縁抵抗の低下、製品の性能低下を引き起こしてしまうという問題が生じていた。
【0006】
この鉛崩壊現象を防止するため、出願人は、揮発性炭酸塩を含んだ水溶液をすすぎ剤(リンス剤ともいう)として使用する方法を提案した(特許文献2参照)。しかしながら、すすぎ剤を用いた洗浄は、鉛崩壊の防止が可能な半面、水のみによる洗浄に比べると、すすぎ剤と排水のコストがかかるといった問題があった。すすぎ剤を使用しない洗浄は、環境への悪影響を防止するとともに、コストダウンにもつながり、今後重要な洗浄技術になると考えられる。
【0007】
【特許文献1】特公平5−40000号公報
【特許文献2】特許第3674655号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鉛を含む高融点はんだを実装した電子部品を洗浄する際、(フラックス)洗浄剤としての性能を維持しつつ、水すすぎにて鉛崩壊現象を抑制することができ、すすぎ剤を使用した場合と同等の洗浄性を得る洗浄剤組成物を提供することを目的とする。また、すすぎ剤を使用しないため排水量を低減させることが可能となるはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の非水溶性のポリカルボン酸系化合物、リン酸エステル系界面活性剤、有機溶剤を含む洗浄剤組成物を用いてフラックス残渣を洗浄すれば、水すすぎにて高融点はんだを実装した電子部品の鉛崩壊現象を防止することが可能となり、すすぎ剤を使用した場合と同等の高い洗浄性が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明1は、
(A)一般式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素鎖8〜72の直鎖若しくは分岐鎖の不飽和または飽和のアルキル基又はアルキレン基を、nは2〜4を示す。)で表わされ、かつ、非水溶性のポリカルボン酸系化合物、(B)リン酸エステル系界面活性剤、及び、(C)有機溶剤を含むはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物である。
【0011】
また、本発明2は、本発明1において、はんだの金属組成が鉛を90重量%以上含有するはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物である。
【0012】
また、本発明3は、本発明1又は2において、(B)リン酸エステル系界面活性剤が、一般式(2):
【化2】

(式中、Rは炭素数5〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は炭素鎖7〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、nは0〜20の整数、Xは水酸基又は一般式(3):RO−(CHCHO)n−H(式中、Rは炭素数5〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、nは0〜20の整数を示す)を示す)で表わされるはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物である。
【0013】
本発明4は、本発明1〜3において、(D)ノニオン系界面活性剤及び/又は(E)ポリオキシアルキレンアミン系界面活性を含むはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物である。
【0014】
本発明5は、本発明1〜4において、上記(A)ポリカルボン酸化合物を0.05〜5.0重量%、上記(B)リン酸エステル系界面活性剤を0.1〜60重量%、及び、上記(C)有機溶剤を40〜98.5重量%含有するはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物である。
【0015】
本発明6は、本発明1〜5において、5重量%水溶液に希釈した際のpHが2.0〜7.0であるはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗浄剤組成物を用いることにより、鉛を含有する電子部品(特に鉛を90重量%以上含有する高融点はんだを実装した電子部品)を洗浄した際に、水すすぎにて鉛崩壊現象を抑制することができ、すすぎ剤を使用した場合同等の洗浄性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物は、(A)ポリカルボン酸系化合物(以下、(A)成分という)、(B)リン酸エステル系界面活性剤(以下、(B)成分という)および(C)有機溶剤(以下、(C)成分という)を有効成分として含有するものである。
【0018】
また、本発明のはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物は、はんだ付けにより実装した電子部品上のフラックス残渣を対象とするものである。特に、水すすぎ時に水と鉛が反応し、不溶性の鉛化合物がすすぎ水中に溶出する現象(鉛崩壊現象)が起こりやすいはんだの金属組成が鉛を90重量%以上含有する高融点のはんだを使用して実装した電子部品上のフラックス残渣を対象とすることが好適である。はんだの金属組成は、鉛を95重量%以上含有するものがより好適である。
【0019】
(A)成分としては、一般式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素鎖8〜72の直鎖若しくは分岐鎖の不飽和または飽和のアルキル基又はアルキレン基を、nは2〜4を示す。)で表わされ、かつ、非水溶性のポリカルボン酸系化合物であれば特に限定されず、公知のものを単独でまたは数種を混合して使用することができる。

【0020】
上記(A)成分(n=2)としては、具体的には、例えば、オクタン二酸(スベリン酸)、2−オクテン二酸、2,6−オクタジエン二酸、2,4,6−オクタトリエン二酸、ノナン二酸(アゼライン酸)、2−ノネン二酸、2,7−ノナジエン二酸、2,4,7−ノナトリエン二酸、デカン二酸(セバシン酸)、2−デセン二酸、2,8−デカジエン二酸、2,6,8−デカトリエン二酸、ウデカン二酸、2−ウデセン二酸、2,9−ウデカジエン二酸、2,6,9−ウデカトリエン二酸、ドデカン二酸、2−ドデセン二酸、2,10−ドデカジエン二酸、2,4,10−ドデカトリエン二酸、トリデカン二酸、2−トリデセン二酸、2,11−トリデカジエン二酸、2,5,11−トリデカトリエン二酸、テトラデカン二酸、2−テトラデセン二酸、2,12−テトラデカジエン二酸、2,6,12−テトラデカトリエン二酸、ペンタデカン二酸、2−ペンタデセン二酸、2,13−ペンタデカジエン二酸、2,7,13−ペンタデカトリエン二酸、ヘキサデカン二酸、2−ヘキサデセン二酸、2,14−ヘキサデカジエン二酸、2,8,14−ヘキサデカトリエン二酸、ヘプタデカン二酸、2−ヘプタデセン二酸、2,15−ヘプタデカジエン二酸、2,9,15−ヘプタデカトリエン二酸、オクタデカン二酸、2−オクタデセン二酸、2,16−オクタデカジエン二酸、2,10,16−オクタデカトリエン二酸、ノナデカン二酸、2−ノナデセン二酸、2,17−ノナデカジエン二酸、2,11,17−ノナデカトリエン二酸、エイコサン二酸、2−エイコセン二酸、2,18−エイコサジエン二酸、2,12,18−エイコサトリエン二酸、ヘンイコサン二酸、2−ヘンイコセン二酸、2,19−ヘンイコサジエン二酸、2,13,19−ヘンイコサトリエン二酸、ドコサン二酸、2−ドコセン二酸、2,20−ドコサジエン二酸、2,14,20−ドコサトリエン二酸、トリコサン二酸、2−トリコセン二酸、2,21−トリコサジエン二酸、2,15,21−トリコサトリエン二酸、テトラコサン二酸、2−テトラコセン二酸、2,22−テトラコサジエン二酸、2,16,22−トリコサトリエン二酸、ペンタコサン二酸、2−ペンタコセン二酸、2,23−ペンタコサジエン二酸、2,17,23−ペンタコサトリエン二酸、ヘキサコサン二酸、2−ヘキサコセン二酸、2,24−ヘキサコサジエセン二酸、2,18,24−ヘキサコサトリエン二酸、ヘプタコサン二酸、2−ヘプタコセン二酸、2,25−ヘプタコサジエン二酸、2,18,25−ヘプタコサトリエン二酸、オクタコサン二酸、2−オクタコセン二酸、2,26−オクタコサジエン二酸、2,19,26−オクタコサトリエン二酸、ノナコサン二酸、2−ノナコセン二酸、2,27−ノナコサジエン二酸、2,20,27−ノナコサトリエン二酸、トリアコンタン二酸、2−トリアコンテン二酸、2,28−トリアコンタジエン二酸、2,20,28−トリアコンタトリエン二酸、ヘントリアコンタン二酸、2−ヘントリアコンテン二酸、2,29−ヘントリアコンタジエン二酸、2,21,29−ヘントリアコンタトリエン二酸、ドトリアコンタン二酸、2−ドトリアコンテン二酸、2,30−ドトリアコンタジエン二酸、2,22,30−ドトリアコンタトリエン二酸、トリトリアコンタン二酸、2−トリトリアコンテン二酸、2,31−トリトリアコンタジエン二酸、2,23,31−トリトリアコンタトリエン二酸、テトラトリアコンタン二酸、2−テトラトリアコンテン二酸、2,32−テトラトリアコンタジエン二酸、2,24,32−テトラトリアコンタトリエン二酸、ペンタトリアコンタン二酸、2−ペンタトリアコンテン二酸、2,33−ペンタトリアコンタジエン二酸、2,25,32−ペンタトリアコンタトリエン二酸、ヘキサトリアコンタン二酸、2−ヘキサトリアコンテン二酸、2,34−ヘキサトリアコンタジエン二酸、2,26,34−ヘキサトリアコンタトリエン二酸、ヘプタトリアコンタン二酸、2−ヘプタトリアコンテン二酸、2,35−ヘプタトリアコンタジエン二酸、2,27,35−ヘプタトリアコンタトリエン二酸、オクタトリアコンタン二酸、2−オクタトリアコンテン二酸、2,36−オクタトリアコンタジエン二酸、2,28,36−オクタトリアコンタトリエン二酸、ノナトリアコンタン二酸、2−ノナトリアコンテン二酸、2,37−ノナトリアコンタジエン二酸、2,29,37−ノナトリアコンタトリエン二酸、テトラコンタン二酸、2−テトラコンテン二酸、2,38−テトラコンタジエン二酸、2,30,38−テトラコンタトリエン二酸、ヘンテトラコンタン二酸、2−ヘンテトラコンテン二酸、2,39−ヘンテトラコンタジエン二酸、2,31,39−ヘンテトラコンタトリエン二酸、ドテトラコンタン二酸、2−ドテトラコンテン二酸、2,40−ドテトラコンタジエン二酸、2,32,40−ドテトラコンタトリエン二酸、トリテトラコンタン二酸、2−トリテトラコンテン二酸、2,41−トリテトラコンタジエン二酸、2,33,41−トリテトラコンタトリエン二酸、テトラテトラコンタン二酸、2−テトラテトラコンテン二酸、2,42−テトラテトラコンタジエン二酸、2,34,42−テトラテトラコンタトリエン二酸、ペンタテトラコンタン二酸、2−ペンタテトラコンテン二酸、2,43−ペンタテトラコンタジエン二酸、2,35,43−ペンタテトラコンタトリエン二酸、ヘキサテトラコンタン二酸、2−ヘキサテトラコンテン二酸、2,44−ヘキサテトラコンタジエン二酸、2,36,44−ペンタテトラコンタトリエン二酸、ヘプタテトラコンタン二酸、2−ヘプタテトラコンテン二酸、2,45−ヘプタテトラコンタジエン二酸、2,37,45−ヘプタテトラコンタトリエン二酸、オクタテトラコンタン二酸、2−オクタテトラコンテン二酸、2,46−オクタテトラコンタジエン二酸、2,38,46−オクタテトラコンタトリエン二酸、ノナテトラコンタン二酸、2−ノナテトラコンテン二酸、2,47−ノナテトラコンタジエン二酸、2,39,47−ノナテトラコンタトリエン二酸、ペンタコンタン二酸、2−ペンタコンテン二酸、2,48−ペンタコンタジエン二酸、2,40,48−ペンタコンタトリエン二酸、ヘンペンタコンタン二酸、2−ヘンペンタコンテン二酸、2,49−ヘンペンタコンタジエン二酸、2,41,49−ヘンペンタコンタトリエン二酸、ドペンタコンタン二酸、2−ドペンタコンテン二酸、2,50−ドペンタコンタジエン二酸、2,42,50−ドペンタコンタトリエン二酸、トリペンタコンタン二酸、2−トリペンタコンテン二酸、2,51−トリペンタコンタジエン二酸、2,43,51−トリペンタコンタトリエン二酸、テトラペンタコンタン二酸、2−テトラペンタコンテン二酸、2,52−テトラペンタコンタジエン二酸、2,44,52−テトラペンタコンタトリエン二酸、ペンタペンタコンタン二酸、2−ペンタペンタコンテン二酸、2,53−ペンタペンタコンタジエン二酸、2,45,53−ペンタペンタコンタトリエン二酸、ヘキサペンタコンタン二酸、2−ヘキサペンタコンテン二酸、2,54−ヘキサペンタコンタジエン二酸、2,46,54−ヘキサペンタコンタトリエン二酸、ヘプタペンタコンタン二酸、2−ヘプタペンタコンテン二酸、2,55−ヘプタペンタコンタジエン二酸、2,47,55−ヘプタペンタコンタトリエン二酸、オクタペンタコンタン二酸、2−オクタペンタコンテン二酸、2,56−オクタペンタコンタジエン二酸、2,48,56−オクタペンタコンタトリエン二酸、ノナペンタコンタン二酸、2−ノナペンタコンテン二酸、2,57−ノナペンタコンタジエン二酸、2,49,57−ノナペンタコンタトリエン二酸、ヘキサコンタン二酸、2−ヘキサコンテン二酸、2,58−ヘキサコンタジエン二酸、2,50,58−ヘキサコンタトリエン二酸、ヘンヘキサコンタン二酸、2−ヘンヘキサコンテン二酸、2,59−ヘンヘキサコンタジエン二酸、2,51,59−ヘンヘキサコンタトリエン二酸、ドヘキサコンタン二酸、2−ドヘキサコンテン二酸、2,60−ドヘキサコンタジエン二酸、2,52,60−ドヘキサコンタトリエン二酸、トリヘキサコンタン二酸、2−トリヘキサコンテン二酸、2,61−トリヘキサコンタジエン二酸、2,53,61−トリヘキサコンタトリエン二酸、テトラヘキサコンタン二酸、2−テトラヘキサコンテン二酸、2,62−テトラヘキサコンタジエン二酸、2,54,62−テトラヘキサコンタトリエン二酸、ペンタヘキサコンタン二酸、2−ペンタヘキサコンテン二酸、2,63−ペンタヘキサコンタジエン二酸、2,55,63−ペンタヘキサコンタトリエン二酸、ヘキサヘキサコンタン二酸、2−ヘキサヘキサコンテン二酸、2,64−ヘキサヘキサコンタジエン二酸、2,56,64−ヘキサヘキサコンタトリエン二酸、ヘプタヘキサコンタン二酸、2−ヘプタヘキサコンテン二酸、2,65−ヘプタヘキサコンタジエン二酸、2,57,65−ヘプタヘキサコンタトリエン二酸、オクタヘキサコンタン二酸、2−オクタヘキサコンテン二酸、2,66−オクタヘキサコンタジエン二酸、2,58,66−オクタヘキサコンタトリエン二酸、ノナヘキサコンタン二酸、2−ノナヘキサコンテン二酸、2,67−ノナヘキサコンタジエン二酸、2,59,67−ノナヘキサコンタトリエン二酸、ヘプタコンタン二酸、2−ヘプタコンテン二酸、2,68−ヘプタコンタジエン二酸、2,60,68−ヘプタコンタトリエン二酸、ヘンヘプタコンタン二酸、2−ヘンヘプタコンテン二酸、2,69−ヘンヘプタコンタジエン二酸、2,61,69−ヘンヘプタコンタトリエン二酸、ドヘプタコンタン二酸、2−ドヘプタコンテン二酸、2,70−ドヘプタコンタジエン二酸、2,62,70−ヘプタコンタトリエン二酸等およびその異性体が挙げられる。これらの中では、ドデカン二酸(一般式(1)においてn=2、Rは、炭素数が10のものをさす)、ヘキサトリアコンタン二酸およびその異性体(※)(一般式(1)においてn=2、炭素数が36の直鎖アルキル基のものをさす)が鉛崩壊現象を効果的に防止できる点で好ましい。
【0021】
上記(A)成分(n=3)としては、リノール酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸をDiels−Alder反応より得られるトリカルボン酸が挙げられる。具体的にこれらの中では、トリスカルボキシオクタデシルメタン、トリスカルボキシオクタデセンメタン、トリスカルボキシオクタジエンメタン、トリスカルボキシオクタトリエンメタンおよびそれらの異性体が挙げられる。これらの中では、トリスカルキシオクタデシルメタン(一般式(1)においてn=3、炭素鎖が54の分岐鎖のものをさす)が、鉛崩壊現象を効果的に防止できる点で好ましい。
【0022】
上記(A)成分(n=4)としては、具体的に例えば、テトラカルボキシオクタデシルメタン、テトラカルボキシオクタデセンメタン、テトラカルボキシオクタジエンメタン、テトラカルボキシオクタトリエンメタンおよびそれらの異性体が挙げられる。これらの中では、テトラカルボキシオクタデシルメタン(一般式(1)においてn=4、炭素鎖が72の分岐鎖のものをさす)が、鉛崩壊現象を効果的に防止できる点で好ましい。
【0023】
上記(A)成分が非水溶性であるとは、(A)成分の20℃における水100gへの溶解度が1重量%以下であり、実質的に水に不溶であることを意味する。例えば、(A)成分がドデカン二酸の20℃における水100gへの溶解度は、0.003gである。(A)成分が非水溶性であることで、はんだ表面へ(A)成分がキレート作用しやすくなるとともに、洗浄後の水すすぎの際に、はんだ表面から水中へ溶解しにくくなるためキレート作用を維持することができ、鉛崩壊現象を効果的に防止することができる。
【0024】
上記(B)成分としては、リン酸エステル系界面活性剤であれば特に限定されず、公知のものを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。その中でも、一般式(2):
【化2】

(式中、Rは炭素数5〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は炭素鎖7〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、nは0〜20の整数、Xは水酸基又は一般式(3):RO−(CHCHO)n−H(式中、Rは炭素数5〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、nは0〜20の整数を示す)を示す)で表されるポリオキシエチレンリン酸エステル系界面活性剤またはその塩は、水で希釈して使用する際に、優れた洗浄性向上効果があるため好ましい。なお、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0025】
上記(C)成分としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、グリコールエーテル類等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶剤、窒素化合物系溶剤など各種公知の有機溶剤が使用できる。なお、これらの中では、洗浄性等の点からグリコールエーテル類を用いることが好ましく、特にグリコールエーテル類のなかでも、一般式(4):RO−(CHCHRO)−R(式中、Rは水素原子、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基またはアセチル基を、Rは炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖アルキル基を、Rは水素原子またはメチル基を、kは1〜4の整数を示す。)で表されるグリコールエーテル類を使用することが、洗浄性、安全性、環境特性などの点から好ましい。一般式(4)で表されるグリコールエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルブチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールジペンチルエーテル、ジエチレングリコールメチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールエチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルペンチルエーテル、ジエチレングリコールブチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルならびにこれらに対応するトリ−もしくはテトラエチレングリコールエーテル類が挙げられる。これらの中でもジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルが好ましい。
【0026】
上記(A)〜(C)成分の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、(A)成分を洗浄剤組成物の0.05〜5.0重量%程度、好ましくは0.1〜3.0重量%、より好ましくは0.5〜2.0重量%、(B)成分を洗浄剤組成物の0.1〜60重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%、(C)成分を洗浄剤組成物の40〜98.5重量%程度、好ましくは70〜98.5重量%となるように添加する。(A)成分を上記割合で、洗浄剤中に含有することにより、水すすぎの際の鉛成分の溶出を抑制することができるため好ましい。はんだ表面へポリカルボン酸系化合物がキレート作用するため、少量の添加で十分に鉛化合物の溶出を抑制することができる。(A)成分の含有量が0.05%未満では、ポリカルボン酸系化合物のキレート効果が発揮されないため、鉛崩壊現象を防止できない場合がある。逆に5.0%を超えて含有すると、洗浄剤のすすぎ性が大幅に低下してしまうため、それ以上の添加は好ましくない。(B)成分を、洗浄剤組成物の0.1〜60重量%用いることにより、特にはんだ金属表面へのポリカルボン酸のキレート効果が向上するため好ましい。(C)成分を洗浄剤組成物の40〜98.5重量%用いることにより、フラックス成分の溶解性が向上するため好ましい。
【0027】
なお、本発明の洗浄剤組成物には、フラックス成分の溶解性が向上し、すすぎ性効果が良好となる点で(D)ノニオン性界面活性剤(以下、(D)成分という)及び/又は(E)ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤(以下、(E)成分という)を混合することができる。これにより、洗浄性を向上させることができる。
【0028】
上記(D)成分としては、そのイオン性がノニオン性であれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(C6以上)エーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールエーテル型ノニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールモノエステル、ポリエチレングリコールジエステル等のポリエチレングリコールエステル型ノニオン性界面活性剤;高級脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物;脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物;ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の多価アルコール型ノニオン性界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミド等、さらにはこれらに対応するポリオキシプロピレン系ノニオン性界面活性剤およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合型ノニオン性界面活性剤をあげることができる。これらノニオン性界面活性剤は1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらの中では洗浄力の点から、好ましいものは、ポリエチレングリコールエーテル型ノニオン界面活性剤であり、さらに好ましいものとしては一般式(6):RO−(CHCHO)−H(式中、Rは炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、または炭素数7〜12の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基で置換されたフェニル基を、mは2〜20の整数を示す。)で表されるポリエチレングリコールエーテル型のノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0029】
上記(E)成分としては、ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤であれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。これらの中では、洗浄性、環境特性、引火性の点から、一般式(7):
【化3】

(式中、R は水素原子または炭素数1〜22の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示し、Zは水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはアシル基を示し、pは1〜15、qは0〜15の整数を示す。)で表されるポリオキシエチレンアミン系界面活性剤を用いることが好ましい。これらのなかでもR が炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基、Zが水素原子、p+qが2〜15の整数であるポリオキシエチレンアミン系界面活性剤とすることで、特に水で希釈して使用する際に、優れた洗浄性向上効果があるため好ましい。
【0030】
上記(D)及び/(E)成分を使用する場合には、その使用量は特に制限されないが、(D)成分を、通常、洗浄剤組成物の0.1〜60重量%程度、好ましくは1〜30重量%含有するのがよい。0.1重量%未満では水すすぎ時のすすぎ性が著しく低下する傾向があり、60重量%を超えて含有すると、相対的に(C)成分の含有量が減少し洗浄性が低下する傾向がある。(E)成分を、通常、洗浄剤組成物の0.1〜60重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%含有するのがよい。0.1重量%未満だと、水希釈時の洗浄性向上効果が低く、60重量%を超えて含有すると、余剰の添加となり効果の向上がみられないばかりか、むしろ被洗浄物に対する腐食等の影響が出ることがあり好ましくない。なお、(D)、(E)成分は、いずれか一成分を単独で添加しても良く、組み合わせて用いてもよいが、(D)及び(E)成分の両方を添加した場合に、洗浄性が良好となるため好ましい。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(A)〜(C)成分を必須成分とし、さらに必要に応じて(D)、(E)成分を含有するものであるが、さらに水を含有させることにより、引火点が消滅する等、安全性が向上することができるため、水を添加し水溶液として使用することもできる。この場合、通常、洗浄剤組成物中の水分濃度は2重量%程度以上となるよう調整する。洗浄性の点から、前記洗浄剤組成物の濃度が50〜98重量%程度になるようにするのが好ましい。
【0032】
なお、本発明の洗浄剤組成物を水溶液として使用する場合のそのpHは、特に制限されないが、洗浄剤組成物を5重量%水溶液とした場合に、2.0〜7.0程度を示すように、ポリカルボン酸の種類・配合量、界面活性剤の種類・配合量により調製することが、ポリカルボン酸のはんだ金属へのキレート作用を示す点で、好ましい。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物は、鉛を90重量%以上含有する高融点はんだを使用した部品のフラックス残渣の洗浄において良好な洗浄性および鉛崩壊防止効果を示す。鉛を90重量%以上含有する高融点はんだとしては、具体的には、例えば、鉛/錫=90/10〜98/2、鉛/銀=97.5/2.5、鉛/銀/錫=97.5/1.5/1等が挙げられる。これらの中でも、特に、はんだ金属が鉛/錫からなり、鉛を90重量%以上含有する高融点はんだを使用した部品のフラックス残渣に対して用いた場合に、高い洗浄性および鉛崩壊防止効果を示す。
【0034】
さらに本発明の洗浄剤組成物には、必要により消泡剤、防錆剤、酸化防止剤などの添加剤を配合することができる。添加剤の使用量は洗浄剤に対して1%程度以下とされる。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物は、上記成分を含有するものであり、その成分の添加方法は問わない。洗浄剤中の添加剤の添加順、調整方法は本発明の効果に関係しない。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物を用いて、被洗浄物を洗浄するにあたっては、各種の洗浄方法を採用できるが、以下に、一般的な洗浄方法として、電子部品上のロジンフラックスに接触させる場合について説明する。すなわち、洗浄剤組成物に電子部品を直接浸漬して洗浄する方法、スプレー装置を使用して水溶液をフラッシュする方法、あるいは機械的手段によりブラッシングする方法などを適宜選択して採用することができる。フリップチップ実装基板を洗浄する場合、50μm以下の隙間に洗浄剤を通液させなければならず、ダイレクトパス洗浄装置(荒川化学工業株式会社製、商品名、特許第2621800号)を用いて洗浄するのが最適である。
【0037】
また、洗浄剤組成物を適用する際の条件は、洗浄剤組成物中の洗浄剤成分の濃度、各成分の使用割合、除去すべきフラックスの種類等により適宜選択すればよく、一般に除去すべきフラックスを洗浄除去するのに有効な温度と時間で洗浄剤をフラックスに接触させる。洗浄剤組成物の使用時の温度は20℃程度から80℃程度である。これは使用温度が20℃よりも低い場合にはフラックスの溶解性が悪くなるため、また、80℃よりも高くなる場合には洗浄剤中の水分等が蒸発し、洗浄剤の性能・安全性が低下してしまう。これらのことから通常は50〜70℃程度とするのが好ましい。電子部品上のフラックスを、例えば60℃程度の温度において浸漬法により除去する場合には、一般に本発明の洗浄剤組成物にハンダフラックスを有する電子部品を約1〜20分程度浸漬すれば、良好に除去することができる。
【0038】
こうしてフラックスを除去された電子部品は仕上げ処理として、洗浄剤組成物による洗浄のあとに、前すすぎ処理、仕上げすすぎ処理の水すすぎ処理を行い残留している可能性のある洗浄剤組成物を完全に除去する。このような水洗処理により、基板の清浄度は、非常に高いものとなる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、各例の部および%は重量基準である。
【0040】
以下の表1中の実施例1〜11、比較例1〜7に示す組成を順に添加して洗浄剤を調製した。
【0041】
表1中の成分Aは、ポリカルボン酸であり、a1〜a6は、以下を示す。
a1:ドデカン二酸(一般式(1)においてR1が炭素鎖10の直鎖アルキル基、nが2であるもの)
a2:C18の不飽和脂肪酸の2量体であるヘキサトリアコンタン二酸(一般式(1)のRが炭素鎖36の直鎖アルキル基、nが2であるもの)
a3:C18の不飽和脂肪酸の3量体であるトリスカルボシキオクタデシルメタン(一般式(1)のRが炭素鎖54の直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基または環状鎖アルキル基、nが3であるもの)
a4:アジピン酸(一般式(1)においてR1の炭素鎖がC4の直鎖アルキル基、nが1であるもの)
a5:不飽和脂肪酸の2量体エステルであるヘキサトリアコンタン二酸エステル(一般式(1)においてR1の炭素鎖がC36の直鎖のアルキル基、末端が−COOCH(CHであるもの)
a6:ステアリン酸(一般式(1)におけるRが炭素鎖C18の直鎖アルキル基、nが1であるもの)
【0042】
表1中の成分Bは、ポリオキシエチレンアルキレンエーテルのリン酸エステル系界面活性剤であり、b1〜b3は、以下を示す。
b1:ポリオキシアルキレンリン酸エステル系界面活性剤であり、一般式(2)のR2が12〜14の直鎖アルキル基、nが10、Xが水酸基であるもの
b2:一般式(2)のR2が12〜14の直鎖アルキル基、nが6、Xが水酸基であるもの
b3:リン酸
【0043】
表1中の成分Cは、有機溶剤であり、c1〜c4は、以下を示す。
c1:ジエチレングルコールモノブチルエーテル
c2:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
c3:1,3−ジメチルイミダゾリジノン
c4:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
【0044】
表1中の成分Dは、ノニオン系界面活性剤であり、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン系界面活性剤であり、一般式(6)のRがC9の分岐鎖アルキル基、mが9であるものを指す。
一般式(6):R−(CHCHO)−H
【0045】
表1中の成分Eは、一般式(7)で表わされるポリオキシアルキレンアミン系界面活性であり、牛脂由来のポリオキシアルキレンアミン(一般式(7)においてR9がC14からC18の直鎖アルキル基、p+qが15、Zが水素原子であるもの)を示す。
一般式(7)

【0046】
表1中の成分Fは、ベンゾトリアゾールを示す。評価用に用いた部品が、銅へソルダペーストを実装したものであったため、銅変色防止剤として添加した。
【0047】
調製した洗浄剤組成物を(1)フラックス溶解速度、(2)鉛崩壊性、(3)すすぎ性より評価した。結果を表1に示す。
【0048】
1.フラックス溶解速度試験
(試験方法)
電子部品がはんだ(鉛/スズ=95/5)実装されたリードフレームを60度まで加温した表1中の洗浄剤組成物に浸漬し、マグネチックススターラーで攪拌しながら10分間洗浄した。次いで、25℃のイオン交換水に浸漬し、5分間前すすぎを行った。更に、イオン交換水の流水で1分間仕上げすすぎを行った。その後、被洗浄物を1分間エアーブローし、部品に付着している水分を除去して乾燥を行った。
【0049】
(評価方法及び評価基準)
フラックス溶解速度の評価は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製 型番:VH−8000)を用いて、倍率200倍の目視より次の基準で行った。
○:良好に洗浄できている。
△:一部残渣がわずかに有り。
×:フラックス残渣有り。
【0050】
2.鉛崩壊性試験
(試験方法)
電子部品がハンダ(鉛/スズ=95/5)実装されたリードフレームを60度まで加温した表1中に記載の洗浄剤組成物に浸漬し、マグネチックススターラーで攪拌しながら10分間洗浄した。その後、洗浄剤成分をイオン交換水の流水にて部品へ付着した洗浄剤成分を除去し、20分間または60分間イオン交換水中に浸漬・静置した。その後、エアーブローにて部品へ付着した水分を除去し、乾燥を行った。なお、10分間の洗浄でフラックスを除去できなかった洗浄剤組成物はフラックスが完全に除去できるまで洗浄を行い、その後は同様の作業にて試験を実施した。
【0051】
(評価方法及び評価基準)
鉛崩壊性はデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製 型番:VH−8000)を用いて、倍率250倍とし、目視より次の基準で評価した。
◎:60分間、不溶性鉛の付着が見られない。
○:20分間では、部品への不溶性鉛の付着がないが、60分間では不溶性鉛が付着。
△:20分間で、部品へ一部不溶性鉛の付着が見られる。
×:20分間で、部品全体に不溶性鉛の付着が観察されている。
【0052】
3.すすぎ性
(試験方法)
(1.ソルダペースト中からのフラックス抽出方法)
金属成分が鉛/スズ=95/5のソルダペースト20gを50mLのガラス容器に入れ、フラックス中の溶剤成分を留去するため、340℃にて20分間加熱を行い、ソルダペースト中からフラックスを取り出した。
(2.模擬すすぎ水の調製方法)
上記の方法にて、ソルダペーストから抽出したフラックスを表1に記載の洗浄剤組成に濃度が1%となるように添加する。フラックスが完全に溶解した洗浄剤組成物の濃度が5%となるようにイオン交換水にて希釈し、模擬すすぎ水を調製した。
【0053】
(評価方法および評価基準)
すすぎ性は模擬すすぎ水の外観を目視観察し、次の基準から評価した。
◎:外観透明で不溶物が見られない。
○:外観透明で不溶物がほとんど見られない。
△:外観が白濁している。
×:外観が白濁している上、不溶物が析出している。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素鎖8〜72の直鎖若しくは分岐鎖の不飽和または飽和のアルキル基又はアルキレン基を、nは2〜4を示す。)で表わされ、かつ、非水溶性のポリカルボン酸系化合物、(B)リン酸エステル系界面活性剤、及び、(C)有機溶剤を含むはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項2】
上記はんだの金属組成が、鉛を90重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載のはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(B)リン酸エステル系界面活性剤が、一般式(2):
【化2】

(式中、Rは炭素数5〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は炭素鎖7〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、nは0〜20の整数、Xは水酸基又は一般式(3):RO−(CHCHO)n−H(式中、Rは炭素数5〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又は炭素数7〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を、nは0〜20の整数を示す)を示す)で表わされる請求項1又は2記載のはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(D)ノニオン系界面活性剤及び/又は(E)ポリオキシアルキレンアミン系界面活性を含む請求項1〜3のいずれかに記載のはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項5】
上記(A)ポリカルボン酸化合物を0.05〜5.0重量%、上記(B)リン酸エステル系界面活性剤を0.1〜60重量%、及び、上記(C)有機溶剤を40〜98.5重量%含有する請求項1〜4のいずれかに記載のはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物。
【請求項6】
5重量%水溶液に希釈した際のpHが2.0〜7.0である請求項1〜5いずれかに記載のはんだ付けフラックス用洗浄剤組成物。


【公開番号】特開2013−53198(P2013−53198A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191265(P2011−191265)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】