説明

はんだ付け装置およびはんだ付け方法

【課題】プリント基板と電子部品との接続部付近の空気層を効果的に除去することができ、かつ噴出口にはんだ酸化物などが付着し難いはんだ付け装置およびはんだ付け方法を提供する。
【解決手段】はんだ付け装置1は、噴出口3より噴流させた溶融はんだ2をプリント基板15と接触させることによりはんだ付けするはんだ付け装置であって、はんだ槽4と、螺旋流れ発生部材20とを有している。はんだ槽4は、噴出口3を有し、かつ溶融はんだ2を貯留するためのものである。螺旋流れ発生部材20は、はんだ槽4の噴出口3より噴流させた溶融はんだ2の内部に螺旋状の流れを生じさせるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け装置およびはんだ付け方法に関し、特に、噴出口より噴流させた溶融はんだをプリント基板と接触させることによりはんだ付けするはんだ付け装置およびはんだ付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に搭載された電子部品をはんだ付けする方法の一つとして、噴流させた溶融はんだにプリント基板と電子部品との接続部を接触および浸漬させることによりはんだ付けを行なう方法がある。
【0003】
しかし、噴出口より噴流する溶融はんだにプリント基板および電子部品が接触した際に、プリント基板および電子部品に対する溶融はんだの表面張力によって、プリント基板および電子部品と溶融はんだとの間に空気層が形成される。この空気層により、溶融はんだがプリント基板および電子部品の電極に濡れ広がることが阻害される。このため、この空気層を溶融はんだの噴流によって、溶融はんだと電極とが接触するようになるまで追い出さなければ、はんだの接触不良、いわゆる未はんだが生じる。
【0004】
このような空気層を追い出すための技術は、たとえば実開平6−9750号公報(特許文献1)、特開昭58−178593号公報(特許文献2)に開示されている。
【0005】
実開平6−9750号公報には、基板に搭載した電子部品が基板上の搭載場所に関わらず少なくとも2つのはんだ噴流孔の噴流に浸漬できるように噴流孔が配置された噴流ノズルの構造が開示されている。これにより、最初に通過したはんだ噴流孔の噴流圧力によってガスを追い出し、次のはんだ噴流孔の噴流によって確実にはんだ付けを行なうことができると実開平6−9750号公報には記載されている。
【0006】
また特開昭58−178593号公報には、先端がノズルとなった噴射管から溶融はんだをプリント基板に噴射させた後に、フローソルダリング式はんだ付け装置によって発生する溶融はんだ液をプリント基板に接触させてはんだ付けを行なうことが開示されている。このように前工程で噴射管のノズルから溶融はんだの噴流が噴射されることにより、電子部品に停滞していたフラックスガスが溶融はんだの噴流によって排除されるため、電子部品が確実にはんだ付けされると特開昭58−178593号公報には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−9750号公報(図1)
【特許文献2】特開昭58−178593号公報(図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実開平6−9750号公報に記載のはんだ噴流孔では、噴流孔から噴流する溶融はんだの噴流圧力を大きくすることができない。このため、少なくとも2回、基板を溶融はんだ噴流に接触させても、空気層が除去されないという問題がある。
【0009】
また特開昭58−178593号公報に記載の先端がノズルとなった噴射管では噴出口が狭い。このため、はんだ酸化物やフラックスのカスなどが噴出口に溜まり易いという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プリント基板と電子部品との接続部付近の空気層を効果的に除去することができ、かつ噴出口にはんだ酸化物などが付着し難いはんだ付け装置およびはんだ付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のはんだ付け装置は、噴出口より噴流させた溶融はんだをプリント基板と接触させることによりはんだ付けするはんだ付け装置であって、はんだ槽と、螺旋流れ発生部材とを備えている。はんだ槽は、噴出口を有し、かつ溶融はんだを貯留するためのものである。螺旋流れ発生部材は、はんだ槽の噴出口より噴流させた溶融はんだの内部に螺旋状の流れを生じさせるよう構成されている。
【0012】
本発明のはんだ付け方法は、噴出口より噴流させた溶融はんだをプリント基板と接触させることによりはんだ付けするはんだ付け方法であって、以下の工程を備えている。
【0013】
まず噴出口を有するはんだ槽内に溶融はんだが貯留される。そして噴出口から噴流された溶融はんだの内部に螺旋状の流れを生じさせるように、はんだ槽内に貯留された溶融はんだが噴出口から噴流される。
【0014】
本発明のはんだ付け装置およびはんだ付け方法によれば、溶融はんだは内部に螺旋状の流れを生じた状態で噴出口から噴流される。螺旋状の流れを生じさせることで溶融はんだに自転回転のような運動をさせ、それにより溶融はんだが自転軸の方向を保とうとするために、直進性の強い噴流が得られる。これにより、噴出口を狭くせずともプリント基板に接触する溶融はんだの圧力を大きくすることができる。よって、プリント基板と電子部品との接続部付近の空気層を効果的に除去することができるとともに、噴出口にはんだ酸化物などが付着し難くなる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、溶融はんだは内部に螺旋状の流れを生じた状態で噴出口から噴流されるため、プリント基板と電子部品との接続部付近の空気層を効果的に除去でき、かつ噴出口にはんだ酸化物などが付着し難いはんだ付け装置およびはんだ付け方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるはんだ付け装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるはんだ付け装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】比較例のはんだ付け装置においてはんだ付けをする様子を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2におけるはんだ付け装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3におけるはんだ付け装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態4におけるはんだ付け装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4におけるはんだ付け装置において回転装置の構成を概略的に示す部分斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態4におけるはんだ付け装置の噴出口の変形例の構成を概略的に示す斜視図である。
【図9】溶融はんだの3重螺旋を示す図である。
【図10】図8に示す噴出口の変形例において3重螺旋の流れが生じることを示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に、本発明の実施の形態1におけるはんだ付け装置の構成について図1および図2を用いて説明する。
【0018】
図1および図2を参照して、本実施の形態のはんだ付け装置1は、噴出口3より噴流させた溶融はんだ2をプリント基板15の電極17と電子部品16とに接触させることによりはんだ付けするものである。このはんだ付け装置1は、はんだ槽4と、駆動手段5と、インペラ6と、螺旋流れ発生部材20とを主に有している。
【0019】
はんだ槽4は、筒部4aと、貯留部4bとを有している。筒部4aは、たとえば円筒形状を有している。貯留部4bは、筒部4aが接続されており、かつ溶融はんだ2を貯留するためのものである。この筒部4aの一方端には、溶融はんだ2を噴流するための噴出口3が形成されている。筒部4aの他方端は貯留部4bに接続されている。インペラ6は、はんだ槽4の貯留部4b内に配置されており、かつ駆動手段5により回転可能である。
【0020】
螺旋流れ発生部材20は、はんだ槽4の噴出口3より噴流させた溶融はんだ2の内部に螺旋状の流れ(図1中の矢印に沿う流れ)を生じさせるよう構成されている。この螺旋流れ発生部材20は、プロペラ7と、支持軸8と、固定部材9と、駆動手段12とを有している。
【0021】
プロペラ7は、溶融はんだ2の噴流の方向において噴出口3の下流側に配置されており、たとえば筒部4a内に配置されている。プロペラ7は、複数個のプロペラ羽根7aとプロペラシャフト7bとを有している。複数個のプロペラ羽根7aは、プロペラシャフト7bに固定されている。プロペラシャフト7bは、支持軸8に挿入されており、固定部材9によって支持軸8に固定されている。
【0022】
プロペラシャフト7bは円筒形状を有しており、プロペラシャフト7bの内径は支持軸8の直径(外径)より大きく、固定部材9の直径(外径)より小さい。このようにプロペラシャフト7bは、支持軸8の直径より大きい内径を有しており、かつ固定部材9によって固定されているため、プロペラシャフト7bは支持軸8に着脱可能である。そのため、プロペラ7は、筒部4a内に装着可能であり、また筒部4a内から取り外し可能である。支持軸8ははんだ槽4のたとえば底面において回転可能に支持されており、かつ駆動手段(たとえばモータ)12に接続されている。
【0023】
プロペラ7は、駆動手段12の駆動力を支持軸8および固定部材9を介在して伝えられることにより、筒部4aの軸線方向に沿って延びる支持軸8の軸線を中心として回転可能に構成されている。このプロペラ7は、プロペラ7の回転によって、噴出口3から噴流する溶融はんだ2の内部に螺旋状の流れ(図1中の矢印)を生じさせるように構成されている。このように螺旋流れ発生部材20は、噴出口3から噴流する溶融はんだ2の内部に螺旋状の流れを生じさせることが可能なように構成されている。
【0024】
次に、本実施の形態のはんだ付け方法について説明する。
図1および図2を参照して、まずはんだ槽4の貯留部4bに溶融はんだ2が貯留される。はんだ槽4の貯留部4bに貯留された溶融はんだ2は、駆動手段5によるインペラ6の回転によって噴出口3の下方に供給される。溶融はんだ2は、噴出口3の下方から噴出口3に向かって上方へ噴流していく。溶融はんだ2は、筒部4a内で、回転するプロペラ7のプロペラ羽根7aと衝突することによって螺旋状の流れを与えられて筒部4aの上部の噴出口3から噴流する。噴出口3から噴流した溶融はんだ2は、プリント基板15の電極17と電子部品16とに接触することにより、プリント基板15の電極17と電子部品16とをはんだ付けする。
【0025】
次に、本実施の形態の作用効果について、図3に示す比較例と対比して説明する。
図3を参照して、噴出口3より噴流する溶融はんだ2にプリント基板15および電子部品16が接触した際に、プリント基板15および電子部品16に対する溶融はんだ2の表面張力によって、プリント基板15および電子部品16と溶融はんだ2との間に空気層18が形成される。この空気層18により、溶融はんだ2がプリント基板15の電極17および電子部品16に濡れ広がることが阻害される。このため、この空気層18を溶融はんだ2の噴流によって、溶融はんだ2が電極17および電子部品16と接触するようになるまで追い出さなければ、はんだの接触不良、いわゆる未はんだが生じる。
【0026】
本実施の形態のはんだ付け装置1によれば、図1および2に示すように筒部4a内にプロペラ7が設けられているため、噴出口3の下方へと供給された溶融はんだ2は、プロペラ7が有するプロペラ羽根7aによって回転力を得た後に、噴出口3から上方へ噴流する。そのため、噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて、噴出口3の上方へ回転しながら吹き上がっていく。
【0027】
このとき、溶融はんだ2は螺旋状の流れを与えられることで、いわゆるジャイロ効果によって直進性の高い噴流となる。つまり、螺旋状に回転することにより溶融はんだ2が自転回転のような運動をし、それにより溶融はんだ2が自転軸の方向を保とうとするために噴流した溶融はんだ2の直進性が向上する。
【0028】
これにより、溶融はんだ2が回転せずに噴流する図3の比較例と比べて、本実施の形態では溶融はんだ2が直進性の高い噴流となるため、噴出口3から噴流した溶融はんだ2がプリント基板15に接触するまでの間の噴流圧力の減少が低減される。よって、プリント基板15に接触する溶融はんだ2の噴流の圧力を大きくすることができる。
【0029】
これにより、噴出口3を狭くせずともプリント基板15に接触する溶融はんだ2の圧力を大きくすることができる。よって、プリント基板15の電極17と電子部品16との接続部付近の空気層を効果的に除去することができるとともに、噴出口3にはんだ酸化物などが付着し難くなる。
【0030】
なお、溶融はんだ2は表面張力によって高い凝集力を有するため、噴出口3から噴流した後は固体に近い動きをするので、螺旋状の回転力によって噴出口3の中心から外側へと分散することはない。
【0031】
また、プロペラ7は、筒部4a内から取り外すことができるため、プロペラ羽根7aに溶融はんだ2の酸化物などが付着しても、すぐに筒部4a内からプロペラ7のみを取り外し、付着物を取り除くことができる。
【0032】
本実施の形態においては、プロペラ7が筒部4a内に位置する場合について説明したが、プロペラ7は筒部4aの外であっても筒部4aの真下に位置していればよい。この場合においても、プロペラ7は噴出口3から噴流する溶融はんだ2に螺旋状の流れを与えることができる。
【0033】
(実施の形態2)
図4を参照して、本発明の実施の形態2のはんだ付け装置は、実施の形態1のはんだ付け装置1の構成と比較して、螺旋流れ発生部材20の構成において主に異なっている。
【0034】
本実施の形態のはんだ付け装置1の螺旋流れ発生部材20は、スクリュー10と、支持軸8と、固定部材9と、駆動手段12とを有している。
【0035】
スクリュー10は、溶融はんだ2の噴流の方向において噴出口3の下流側に配置されており、たとえば筒部4a内に配置されている。スクリュー10は、スクリュー羽根10aとスクリューシャフト10bとを有している。スクリュー羽根10aは、スクリューシャフト10bに固定されている。スクリューシャフト10bは、支持軸8に挿入されており、固定部材9によって支持軸8に固定されている。
【0036】
スクリューシャフト10bは円筒形状を有しており、スクリューシャフト10bの内径は支持軸8の直径(外径)より大きく、固定部材9の直径(外径)より小さい。このようにスクリューシャフト10bは、支持軸8の直径より大きい内径を有しており、かつ固定部材9によって固定されているため、スクリューシャフト10bは支持軸8に着脱可能である。そのため、スクリュー10は、筒部4a内に装着可能であり、また筒部4a内から取り外し可能である。支持軸8ははんだ槽4のたとえば底面において回転可能に支持されており、かつ駆動手段(たとえばモータ)12に接続されている。
【0037】
スクリュー10は、駆動手段12の駆動力を支持軸8および固定部材9を介在して伝えられることにより、筒部4aの軸線方向に沿って延びる支持軸8の軸線を中心として回転可能に構成されている。このスクリュー10は、スクリュー10の回転によって、噴出口3から噴流する溶融はんだ2の内部に螺旋状の流れ(図4中の矢印)を生じさせるように構成されている。このように螺旋流れ発生部材20は、噴出口3から噴流する溶融はんだ2の内部に螺旋状の流れを生じさせることが可能なように構成されている。
【0038】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0039】
本実施の形態のはんだ付け方法においては、図4に示すように、筒部4a内にスクリュー10が設置されていることにより、溶融はんだ2は筒部4a内のスクリュー羽根10aによって圧縮されながら筒部4a内を回転しつつ上昇する。そのため、噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて、噴出口3から速い流速で回転しながら噴流する。噴出口3から噴流した溶融はんだ2は、プリント基板15の電極17と電子部品16とに接触することにより、プリント基板15の電極17と電子部品16とをはんだ付けする。
【0040】
本実施の形態においては、筒部4a内にスクリュー10を設けることにより、噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて、ジャイロ効果による高い直進性と速い流速とを備えた噴流となる。そのため、噴出口3から噴流しプリント基板15に接触するまでの間の噴流圧力の低下が少なくなるので、プリント基板に接触する溶融はんだの圧力が大きくなる。
【0041】
これにより、噴出口3を狭くせずともプリント基板15に接触する溶融はんだ2の圧力を大きくすることができる。よって、プリント基板15の電極17と電子部品16との接続部付近の空気層を効果的に除去することができるとともに、噴出口3にはんだ酸化物などが付着し難くなる。
【0042】
また、スクリュー10は、筒部4a内から取り外すことができるため、スクリュー羽根10aに溶融はんだ2の酸化物などが付着しても、すぐに筒部4a内からスクリュー10のみを取り外し、付着物を取り除くことができる。
【0043】
本実施の形態においてはスクリュー10の全体が筒部4a内に配置された構成について説明したが、スクリュー10は全体が筒部4a内に配置されてなくてもよく、上端側の一部のみが筒部4a内に配置されていてもよい。またスクリュー10は全体が筒部4aの外に配置されていても、筒部4aの真下に位置していればよい。この場合においても、スクリュー10は噴出口3から噴流する溶融はんだ2に螺旋状の流れを与えることができる。
【0044】
(実施の形態3)
図5を参照して、本発明の実施の形態3のはんだ付け装置は、実施の形態1のはんだ付け装置1の構成と比較して、螺旋流れ発生部材20の構成において主に異なっている。
【0045】
本実施の形態のはんだ付け装置1の螺旋流れ発生部材20は、ネジ穴部材11を有している。ネジ穴部材11は、筒部4aの内周側に配置されており、かつ内周側に向けて突き出したネジ山を有する雌ネジ部を有している。ネジ穴部材11は、筒部4aとは異なる部材で構成されており、筒部4aに取り付け・取り外し可能なように構成されている。
【0046】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0047】
本実施の形態のはんだ付け方法においては、図5に示すように、筒部4a内にネジ穴部材11を設置することにより、溶融はんだ2はネジ穴部材11のネジ山に沿うようにして筒部4a内を上昇していく。そのため、噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて回転しながら噴出口3から噴流する。噴出口3から噴流した溶融はんだ2は、プリント基板15の電極17と電子部品16とに接触することにより、プリント基板15の電極17と電子部品16とをはんだ付けする。
【0048】
本実施の形態においては、筒部4a内にネジ穴部材11を設けることにより、噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて、ジャイロ効果による高い直進性を備えた噴流となる。そのため、噴出口3から噴流しプリント基板15に接触するまでの間の噴流圧力の低下が少なくなるので、プリント基板に接触する溶融はんだの圧力が大きくなる。
【0049】
これにより、噴出口3を狭くせずともプリント基板15に接触する溶融はんだ2の圧力を大きくすることができる。よって、プリント基板15の電極17と電子部品16との接続部付近の空気層を効果的に除去することができるとともに、噴出口3にはんだ酸化物などが付着し難くなる。
【0050】
また、ネジ穴部材11は、筒部4aから取り外すことができるため、ネジ穴部材11に溶融はんだ2の酸化物などが付着しても、すぐに筒部4aからネジ穴部材11のみを取り外し、付着物を取り除くことができる。
【0051】
(実施の形態4)
図6および図7を参照して、本発明の実施の形態4のはんだ付け装置は、筒部4aが回転装置12によって回転する構成を有している。本実施の形態のはんだ付け装置は、実施の形態1のはんだ付け装置1の構成と比較して、筒部4aの構成と螺旋流れ発生部材20の構成とにおいて主に異なっている。
【0052】
本実施の形態のはんだ付け装置1の筒部4aは、筒部4aの軸線を中心として貯留部4bに対して回転可能に構成されている。螺旋流れ発生部材20は、回転装置12を有している。この回転装置12は、筒部4aを回転させるためのものであり、駆動手段12aと、ギヤ12b、12cとを有している。
【0053】
駆動手段12aは、たとえばモータであって、ギヤ12bに接続されている。ギヤ12bは駆動手段12aからの駆動力を受けて回転可能に構成されている。ギヤ12cは、筒部4aの外周面に設けられており、ギヤ12bと噛み合うように配置されている。これにより、駆動手段12aの駆動力は、ギヤ12bを介在してギヤ12cに伝達される。これによりギヤ12cが外周面に設けられた筒部4aが回転するように構成されている。
【0054】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0055】
本実施の形態のはんだ付け方法においては、図6および図7に示すように、駆動手段12aによりギヤ12b、12cが回転されることにより筒部4aが回転する。これにより、噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて回転しながら噴出口3から噴流する。噴出口3から噴流した溶融はんだ2は、プリント基板15の電極17と電子部品16とに接触することにより、プリント基板15の電極17と電子部品16とをはんだ付けする。
【0056】
本実施の形態においては、筒部4aが回転することにより、噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて、ジャイロ効果による高い直進性を備えた噴流となる。そのため、噴出口3から噴流しプリント基板15に接触するまでの間の噴流圧力の低下が少なくなるので、プリント基板に接触する溶融はんだの圧力が大きくなる。
【0057】
これにより、噴出口3を狭くせずともプリント基板15に接触する溶融はんだ2の圧力を大きくすることができる。よって、プリント基板15の電極17と電子部品16との接続部付近の空気層を効果的に除去することができるとともに、噴出口3にはんだ酸化物などが付着し難くなる。
【0058】
次に、筒部4aが回転するタイプのはんだ付け装置の変形例について図8〜図10を用いて説明する。
【0059】
図8を参照して、この変形例の構成は、図6および図7に示すはんだ付け装置1の構成と比較して、筒部4aの上部に複数本の円筒14が配置されている点において主に異なっている。
【0060】
複数本の円筒14の各々は、一方端(上端)が噴出口3を有しており、他方端(下端)が筒部4aの上部に接続されている。これにより複数本の円筒14の各々の内部は、筒部4aの内部に連通している。筒部4aの上部は、複数本の円筒14が接続された部分を除いて閉じられている。複数本の円筒14の各々は、その中心軸が他方端(下端)から一方端(上端)に向かって筒部4aの回転軸に向かうように傾いている。
【0061】
なお、この変形例のこれ以外の構成は、上述した図6および図7に示すはんだ付け装置1の構成と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0062】
この変形例のはんだ付け方法においては、図8に示すように、駆動手段12aによりギヤ12b、12cが回転されることにより筒部4aが回転し、複数本の円筒14の各々も回転する。これにより、複数本の円筒14の各々の噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、図9に示すように3重螺旋をなして噴出口3から噴流する。ここで複数本の円筒14の各々は、中心軸が下側から上側に向かって筒部4aの回転軸に向かうように傾いている。このため複数本の円筒14の各々の噴出口3から噴流する溶融はんだ2は、図10に示すように一体に合流し、その合流した溶融はんだ2の内部に3重螺旋の螺旋状の流れが与えられる。この3重螺旋の流れを内部に有する溶融はんだ2は、プリント基板15の電極17と電子部品16とに接触することにより、プリント基板15の電極17と電子部品16とをはんだ付けする。
【0063】
この変形例においては、筒部4aが回転することにより、筒部4aに接続された複数本の円筒14の各々の噴出口3から噴流された溶融はんだ2は、螺旋状の流れを与えられて、ジャイロ効果による高い直進性を備えた噴流となる。そのため、噴出口3から噴流しプリント基板15に接触するまでの間の噴流圧力の低下が少なくなるので、プリント基板に接触する溶融はんだの圧力が大きくなる。
【0064】
これにより、噴出口3を狭くせずともプリント基板15に接触する溶融はんだ2の圧力を大きくすることができる。よって、プリント基板15の電極17と電子部品16との接続部付近の空気層を効果的に除去することができるとともに、噴出口3にはんだ酸化物などが付着し難くなる。
【0065】
上記のはんだ付け装置1では、複数の円筒14の各々は円筒形状を有しているが、この形状に限定されるものではなく、角筒形状であってもよい。また複数の円筒14は3本に限定されず、2本以上であればよい。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 はんだ付け装置、3 噴出口、4 はんだ槽、4a 筒部、4b 貯留部、5 駆動手段、6 インペラ、7 プロペラ、7a プロペラ羽根、7b プロペラシャフト、8 支持軸、9 固定部材、10 スクリュー、10a スクリュー羽根、10b スクリューシャフト、11 ネジ穴部材、12b ギヤ、12c ギヤ、12 駆動手段(回転装置)、12a 駆動手段、14 円筒、15 プリント基板、16 電子部品、17 電極、18 空気層、20 螺旋流れ発生部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴出口より噴流させた溶融はんだをプリント基板と接触させることによりはんだ付けするはんだ付け装置であって、
前記噴出口を有し、かつ前記溶融はんだを貯留するためのはんだ槽と、
前記はんだ槽の前記噴出口より噴流させた前記溶融はんだの内部に螺旋状の流れを生じさせるよう構成された螺旋流れ発生部材とを備えた、はんだ付け装置。
【請求項2】
前記螺旋流れ発生部材は、前記溶融はんだの噴流の方向において前記噴出口の下流側に設けられた回転可能なプロペラを含む、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記プロペラは前記はんだ槽から着脱可能である、請求項2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記螺旋流れ発生部材は、前記溶融はんだの噴流の方向において前記噴出口の下流側に設けられたスクリューを含む、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
前記スクリューは前記はんだ槽から着脱可能である、請求項4に記載のはんだ付け装置。
【請求項6】
前記はんだ槽は、前記噴出口を有する筒部を有し、
前記螺旋流れ発生部材は、前記筒部の内周側に配置された雌ネジ部を有するネジ穴部材を含む、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項7】
前記ネジ穴部材は、前記筒部と異なる部材で構成されており、かつ前記筒部から着脱可能である、請求項6に記載のはんだ付け装置。
【請求項8】
前記はんだ槽は、
前記溶融はんだを貯留するための貯留部と、
前記噴出口を有し、かつ前記貯留部に対して回転可能な筒部とを含み、
前記螺旋流れ発生部材は、前記筒部を回転させるための回転装置を含む、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項9】
噴出口より噴流させた溶融はんだをプリント基板と接触させることによりはんだ付けするはんだ付け方法であって、
前記噴出口を有するはんだ槽内に前記溶融はんだを貯留させる工程と、
前記噴出口から噴流された前記溶融はんだの内部に螺旋状の流れを生じさせるように、前記はんだ槽内に貯留された前記溶融はんだを前記噴出口から噴流させる工程とを備えた、はんだ付け方法。
【請求項10】
前記噴出口から噴流された前記溶融はんだを用いて前記プリント基板と電子部品とをはんだ付けする工程をさらに備えた、請求項9に記載のはんだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−110361(P2013−110361A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256409(P2011−256409)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】