説明

はんだ付け装置及びはんだ付け方法

【課題】小型に構成することが可能で各工程の処理状況を搬入口に居る作業者が目視で確認可能で、予備加熱工程からはんだ付け工程に移行するプリント配線板の予備加熱温度が低下しないはんだ付け装置を構成すること。
【解決手段】噴流波を形成する噴流波形成装置20の上方にプリント配線板2を保持して上下方向に搬送する搬送装置30を設け、搬送装置30にプリント配線板2を保持した状態でプリント配線板と噴流波形成装置20との間に予備加熱装置40を展開しまた噴流波形成装置20の側部側に収納する展開装置50を設け、展開装置50により予備加熱装置40を展開してプリント配線板2の予備加熱を行った後に予備加熱装置40を収納し、搬送装置30によりプリント配線板2を下降させてプリント配線板の下方側の面を噴流波206に接液させ、プリント配線板2を上昇させて噴流波206からプリント配線板2を離脱させる構成を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載されたプリント配線板(板状の被はんだ付けワーク)の被はんだ付け部に溶融はんだを供給してはんだ付けを行うはんだ付け装置及びはんだ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のはんだ付け装置は、プリント配線板を搬送する搬送コンベアに沿ってフラックス塗布工程→予備加熱工程→はんだ付け工程→冷却工程が順に設けられ、各工程に対応してフラックス塗布装置、予備加熱装置、噴流波形成装置、冷却装置が設けられて構成されている。一般的にはんだ付け装置はインラインでの使用を考慮して、その搬送コンベアは直線状に構成されている。そのため、プリント配線板の搬入口と搬出口とは対極に離れて位置している。
【0003】
特許文献1には、はんだ付け装置の小型化や多品種少量生産を考慮したはんだ付け装置の構成が開示されている。プリント配線板の搬送コンベアの搬送方向を往動と復動とに制御可能に構成し、この搬送コンベアに沿ってフラックス塗布装置と噴流波形成装置そして予備加熱装置とを配置し、プリント配線板の往動と復動とによりフラックス塗布工程→予備加熱工程→はんだ付け工程の全工程が完了するように構成されている。
【特許文献1】特開平10−112582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、プリント配線板がフラックス塗布装置と噴流波形成装置そして予備加熱装置を通るように、このプリント配線板の搬送コンベアを直線状に設けている。そのため、依然としてはんだ付け装置全体が大きくなり易く、また各工程を直線状に並べて設けているために、各工程の処理状況を搬入口に居る作業者が目視確認することは困難である。また、予備加熱装置から噴流波形成装置へプリント配線板が搬送される間に、プリント配線板の予備加熱温度が低下する問題がある。そして、この予備加熱温度の低下により、鉛フリーはんだを使用する場合にプリント配線板の被はんだ付け部のはんだ濡れ性が低下することが問題となっている。
【0005】
本発明の目的は、小型に構成することが可能で各工程の処理状況を搬入口に居る作業者が目前で確認することが可能であり、さらに予備加熱工程からはんだ付け工程に移行するプリント配線板の予備加熱温度が低下しないはんだ付け装置を構成することにあり、これにより、多品種のプリント配線板のはんだ付けを行う際に、はんだ付け品質の良好なプリント配線板を低コストで生産可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フラックス塗布工程や予備加熱工程、はんだ付け工程、冷却工程等の全ての処理工程をはんだ付け工程を担う噴流波形成装置の上方位置で行うように構成したところに特徴がある。
【0007】
(1)すなわち、溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持して上下方向に搬送することで前記プリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させるプリント配線板の搬送装置を設ける。さらに、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の予備加熱を行う予備加熱装置を展開しまた前記噴流波形成装置の側部側に収納する予備加熱装置の展開装置を設ける。
【0008】
そして、前記展開装置により前記予備加熱装置を展開してプリント配線板の予備加熱を行った後に前記予備加熱装置を収納し次に前記搬送装置により前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させ続いて前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させる制御装置を設けて成るように構成したはんだ付け装置である。
【0009】
これにより、プリント配線板の搬送は上下方向であるので搬送装置が小型になり、はんだ付け装置としても小型になる。また、プリント配線板の予備加熱を行う際に予備加熱装置がプリント配線板と噴流波形成装置の間に展開し、予備加熱が終了すれば噴流波形成装置の側部側に予備加熱装置を収納する。したがって、この構成からもはんだ付け装置を小型に構成することができる。
【0010】
また、プリント配線板は噴流波形成装置の噴流波の上方に常に位置しており、予備加熱装置が収納されても噴流波(噴流波すなわち溶融はんだの温度は通常約250℃程度)からの放射熱と対流熱を受けて予備加熱温度(通常約100℃程度)が低下することがなく、最適な予備加熱温度を維持したままで噴流波に接液させ、被はんだ付け部に溶融はんだを供給してはんだ付けを行うことができる。また、予備加熱工程の処理とはんだ付け工程の処理とを共にはんだ付け工程の位置において行うので、これらの処理が行われる様子を作業者が移動することなく目視確認できる。
【0011】
(2)すなわち、溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持して上下方向に搬送することで前記プリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させるプリント配線板の搬送装置を設ける。また、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の下方側の面にフラックスを塗布するフラックス塗布装置を展開しまた前記噴流波形成装置の側部側に収納するフラックス塗布装置の展開装置を設ける。さらに、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の予備加熱を行う予備加熱装置を展開しまた前記噴流波形成装置の側部側に収納する予備加熱装置の展開装置を設ける。
【0012】
そして、前記フラックス塗布装置の展開装置により前記フラックス塗布装置を展開してプリント配線板の下方側の面にフラックスの塗布を行った後に前記フラックス塗布装置を収納し続いて前記予備加熱装置の展開装置により前記予備加熱装置を展開してプリント配線板の予備加熱を行った後に前記予備加熱装置を収納し次に前記搬送装置により前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させ続いて前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させる制御装置を設けて成るように構成したはんだ付け装置である。
【0013】
これにより、前記(1)と同様にプリント配線板の搬送は上下方向であるので搬送装置が小型になり、はんだ付け装置としても小型になる。また、プリント配線板にフラックスを塗布するフラックス塗布装置やプリント配線板の予備加熱を行う際に予備加熱装置がプリント配線板と噴流波形成装置の間に展開し、プリント配線板へのフラックスの塗布やプリント配線板の予備加熱が終了すれば噴流波形成装置の側部側に収納する。したがって、この構成からもはんだ付け装置を小型に構成することができる。
【0014】
また、プリント配線板は噴流波形成装置の噴流波の上方に常に位置しており、予備加熱装置が収納されても噴流波からの放射熱と対流熱を受けて予備加熱温度が低下することがなく、最適な予備加熱温度を維持したままで噴流波に接液させ、被はんだ付け部に溶融はんだを供給してはんだ付けを行うことができる。また、フラックス塗布工程の処理と予備加熱工程の処理そしてはんだ付け工程の処理の全てをはんだ付け工程の位置において行うので、これらの処理が行われる様子を作業者が移動することなく目視確認できる。
【0015】
(3)すなわち、溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持して上下方向に搬送することで前記プリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させるプリント配線板の搬送装置を設ける。また、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の下方側の面にフラックスを塗布するフラックス塗布装置を展開しまた前記噴流波形成装置の側部側に収納するフラックス塗布装置の展開装置を設ける。
【0016】
そして、前記フラックス塗布装置の展開装置により前記フラックス塗布装置を展開してプリント配線板の下方側の面にフラックスの塗布を行った後に前記フラックス塗布装置を収納し続いて前記搬送装置により前記プリント配線板を下降させて前記噴流波の上方の至近位置で停止させることで前記プリント配線板の予備加熱を行い次に前記搬送装置により前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させその後前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させる制御装置を設けて成るように構成したはんだ付け装置である。
【0017】
これにより、前記(2)と同様にプリント配線板の搬送は上下方向であるので搬送装置が小型になり、はんだ付け装置としても小型になる。また、プリント配線板にフラックスを塗布するフラックス塗布装置がプリント配線板と噴流波形成装置の間に展開し、プリント配線板へのフラックスの塗布が終了すれば噴流波形成装置の側部側にフラックス塗布装置を収納する。したがって、この構成からもはんだ付け装置を小型に構成することができる。
【0018】
また、プリント配線板は噴流波形成装置の噴流波の上方に常に位置しているので、高温の噴流波からの放射熱と対流熱を受けて加熱され、この加熱によりプリント配線板の予備加熱が行われるので予備加熱装置が不要になり、はんだ付け装置を一層小型に構成することができる。そして、フラックス塗布工程の処理と予備加熱工程の処理そしてはんだ付け工程の処理の全てをはんだ付け工程の位置において行うので、これらの処理が行われる様子を作業者が移動することなく目視確認できる。
【0019】
(4)すなわち、前記(1)および(2)のはんだ付け装置において、予備加熱装置を収納する収納室を設けると共にこの収納室には断熱材が設けられて保温室に形成されて成るように構成したはんだ付け装置である。
【0020】
これにより、予備加熱装置が収納室に収納されている場合には予備加熱装置からの熱エネルギーの放散が激減し、予備加熱装置のエネルギー消費量(例えば、電気ヒータを用いた場合には消費電力)を大幅に低減することができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、はんだ付け装置を極めて小型に構成することが可能となる。また、プリント配線板のはんだ付けを行う際の全ての処理を同じ場所(噴流波形成装置の上方位置)で行うので、作業者は移動することなく全ての工程の処理を同じ場所で目視確認することができる。さらに、予備加熱工程からはんだ付け工程に移行するプリント配線板の予備加熱温度が低下しないので、プリント配線板の被はんだ付け部におけるはんだ濡れ性を向上させることができる。したがって、多品種のプリント配線板のはんだ付けを行う際にも、はんだ付け品質の良好なプリント配線板を低コストで生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明のはんだ付け装置の実施形態例を説明する。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置をその予備加熱装置の展開方向(矢印D方向)に対する縦断面で見た図である。
【0024】
また、図5は、本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置を予備加熱装置の展開方向(矢印D方向)に対する横断面で見た図である。
【0025】
そして、図6は、本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置を上方から見た図であり、筐体内部の主要な構成部分を破線で示してある。
【0026】
(1)主要構成
図1〜図6において、1は本実施形態のはんだ付け装置である。また、10ははんだ付け装置1の筐体である。
【0027】
本実施形態のはんだ付け装置は、図1や図5に示すように、噴流波形成装置20の上方にはプリント配線板2の搬送装置30を設けてあり、また、噴流波形成装置20の側部側には予備加熱装置40が設けてある。
【0028】
そして、噴流波形成装置20を挟んで予備加熱装置40の反対側には搬入口/搬出口101が設けてあり、プリント配線板2の搬入と搬出を行うための搬入手段すなわち搬入レール70を設けてある。
【0029】
この例では、図6に示すように搬入口/搬出口101から見てすなわち作業者から見て正面奥側に予備加熱装置40を設けてあるが、右側や左側すなわちダクト102aやダクト102b側に設けてもよい。ちなみに、ダクト102a,102b内には、フラックスヒュームなどの排気装置103a,103bが設けられている。
【0030】
噴流波形成装置20のはんだ槽201内にははんだ202を収容してあり、図1〜図6には示していないが後述する図9に示すはんだ加熱用ヒータ917とはんだ温度センサ918と温度制御装置916とが設けられ、はんだ槽201内のはんだ202は溶融状態で予め決めた所定の温度に維持されている。
【0031】
また、はんだ槽201内にはポンプ203とこのポンプに繋がる吹き口体204が設けられ、この吹き口体204にポンプから溶融はんだを供給することで吹き口体204の吹き口205上に溶融はんだの噴流波206が形成される。
【0032】
なお、吹き口体204内の整流板207は、溶融はんだの流れを整えて安定した噴流波206を形成するための手段である。
【0033】
そして、噴流波形成装置20の上方にはプリント配線板2の搬送装置30が設けられ、図3,図4に示すように、搬送レール301をアクチュエータ302により上下方向すなわち矢印A(A1,A2)方向/矢印B(B1,B2)方向に搬送できるように構成してある。
【0034】
また、搬送装置30は、図6に示すように4つのアクチュエータ302a,302b,302c,302dを有し、平行2条に構成された搬送レール301a,301bの4隅をそれぞれ独立して上下方向に移動させることができるように構成されている。しかし、アクチュエータを2つだけ用いて、図1に示すように平行2条の搬送レールの図の右側を1つのアクチュエータで一緒に上下方向に移動させ、他方の図の左側を1つのアクチュエータで一緒に上下方向に移動させる構成としてもよい。
【0035】
また、噴流波形成装置20の側部側にはプリント配線板2の予備加熱装置40が収納室60に収納されている。この予備加熱装置40は、図2に示すように、アクチュエータ501に駆動されて矢印D方向に出納する展開装置50のスライドレール502に設けられている。
【0036】
なお、収納室60には、断熱保温材601を設けてあり、収納された予備加熱装置40からの熱エネルギーの放散を抑えることで消費電力を低減するように構成してある。
【0037】
そして、予備加熱装置40には、赤外線加熱型の装置と熱風加熱型の装置そして赤外線と熱風の併用加熱型の装置とを用いることが可能であり、例えば即熱型のクオーツヒータを用いて赤外線加熱型の予備加熱装置を構成すれば、プリント配線板の加熱を行う時だけクオーツヒータに電力を供給すればよいので、一層消費電力を低減することができる。
【0038】
なお、予備加熱装置40は、それに設けられた温度センサによりヒータ表面温度や熱風温度等が検出され、後述する図9に示す温度制御装置915によって予め決めた所定の温度でプリント配線板の加熱を行うように構成されている。
【0039】
他方で、図1に示すように、搬送レール301と整合して搬入レール70を設けてあり、キャリアに保持したプリント配線板を搬入口101から搬入して搬送レール301へ移送(矢印C)できるように構成してある。この移送は、キャリア80に設けた把手801を作業者が押し込むことで行う。しかし、搬入レール70や搬送レール301をモータ等に駆動された搬送コンベアとして構成することも可能であり、その場合には作業者が押し込む必要はない。
【0040】
以下、図7,図8を参照して、キャリア80とプリント配線板2について説明する。
【0041】
図7は、キャリア80の全容とその使用状態を説明する斜視図で、(a)はプリント配線板2の被はんだ付け面に一括して溶融はんだを供給するキャリアを示し、(b)はプリント配線板2の被はんだ付け部とその近傍にのみ溶融はんだを供給するキャリアを示している。
【0042】
また、図8は、キャリア80に保持されたプリント配線板2の様子を説明する図であり、図8(a)は図7(a)のI−I断面を示す図、図8(b)は図7(b)のII−II断面を示す図である。
【0043】
図7(a)および図8(a)に示すように、キャリア80にはプリント配線板2を嵌入して保持するための嵌入凹部802が形成されており、その支持片803でプリント配線板2の端部を支持して嵌入凹部802内に保持する仕組みである。支持片803の内側に窓部804があり、プリント配線板2の下方側の面がキャリア80の下方側に露出するように構成されている。
【0044】
そして、このキャリア80には、搬送レール(搬送コンベア)70に結合する結合片805が設けられ、この結合片805の配置位置と配置寸法が規格化されていて、嵌入凹部802の形状が異なってもすなわち保持するプリント配線板2の種類が異なっても、搬送レール(搬送コンベア)70の保持幅等をその都度調節することなく連続して搬送することができる仕組みである。
【0045】
図7(b)および図8(b)に示すキャリア80は、プリント配線板2に搭載されたリード型電子部品21のリード端子22の位置すなわち被はんだ付け部23の位置に合わせて窓部807を設けた構成すなわちマスク部806を設けた構成で、この窓部の領域だけがキャリア80の下方側に露出するように構成されている。この構成は、窓部807以外の領域に溶融はんだを供給したくない場合すなわち部分はんだ付けに使用される。例えば、既にリフローはんだ付けされた電子部品が存在するような場合に使用される。
【0046】
(2)制御系の構成
図9は、図1〜図6に示したはんだ付け装置1の各部を制御する制御構成の一例を示すブロック図であり、図1〜図6と同一のものには同一の符号を付してある。
【0047】
図9において、90は制御装置であり、はんだ付け装置1の各部の制御を行う。制御装置90は、一般的なコンピュータシステムで構成され、対話のための手段としてLCD等の表示部901とキーボード等の指示操作部902を備えている。そして、その入出力ポートにセンサや駆動装置が接続され、通信により各部の情報を入手したり各部の作動を制御する。
【0048】
なお、制御装置90は、CPU903,ROM904,RAM905,ハードディスク(HD)906を備え、上記制御は、CPU903が、ROM904又はHD906に格納されたプログラムを読み出してRAM905を作業領域として実行することにより実現される。
【0049】
なお、図9に使用する矢印は通信信号の流れる方向を示し、センサ等からの情報は一方向通信で入手し、アクチュエータ等の駆動装置の制御はアクチュエータの作動情報(例えば、移動位置や移動速度に関する情報)をアクチュエータに設けられたセンサから入手しながら行うため、両方向通信で制御を行うように構成してある。
【0050】
そして、図9に示すキャリア検出センサ907は、搬送レール301に設けられていて、キャリア80が搬入レール70から搬送レール301に移送されたことを検出するセンサである。また、スタートスイッチ908は、プリント配線板2を保持したキャリア80を搬送レール301に移送した後に作業者がはんだ付け作業の開始を指令する際に使用するスイッチである。
【0051】
さらに、報知装置909は、はんだ付け装置1の運転状態(例えば、作業中であるか否かや現在の処理工程)の報知を行う手段であり、ランプやモニタ等で構成される。また、赤外線温度センサ910は、プリント配線板2の表面温度を検出するセンサである。
【0052】
なお、これらのキャリア検出スイッチ907やスタートスイッチ908そして報知装置909と赤外線温度センサ910は、図1等では省略して図示していない。
【0053】
また、予備加熱装置移動用アクチュエータ501すなわち予備加熱装置40を図1の矢印D方向に展開したり収納したりするアクチュエータは駆動装置911により駆動される。
【0054】
さらに、第1の接液用アクチュエータ302a,第3の接液用アクチュエータ302cすなわち図1において搬送レールの右側を矢印A方向に移動させるアクチュエータは、駆動装置912a,912cにより駆動される。
【0055】
また、第2の接液用アクチュエータ302b,第4の接液用アクチュエータ302dすなわち図1において搬送レールの左側を矢印B方向に移動させるアクチュエータは、駆動装置912b,912dにより駆動される。
【0056】
なお、アクチュエータが電動アクチュエータの場合はサーボ回路で構成された電力駆動回路が、空気圧アクチュエータの場合はサーボ回路で構成された空気圧回路等の流体駆動回路が駆動装置として用いられる。
【0057】
はんだ送給ポンプ914(図1〜図5のポンプ203と同じ)には、モータの回転力を使用するポンプとリニアモータの原理を応用して溶融はんだ内に誘導電流を流し、この溶融はんだに直接に電磁力を作用させる電磁ポンプ等があり、ポンプ速度制御装置913によりポンプを制御して単位時間当たりの溶融はんだ送給流量を調節し、吹き口体に形成される噴流波の波高等を制御する。
【0058】
また、予備加熱装置40には温度センサを設けてあり、赤外線ヒータの表面温度や熱風温度等を検出し、それらが予め決めた所定の温度になるように温度制御装置915により制御され、この温度制御装置915は制御装置90からの指令により温度やPID制御特性等が任意に設定される。
【0059】
同様にして、はんだ槽201内のはんだの温度をはんだ温度センサ918で検出し、温度制御装置916はこれを参照してはんだの温度が予め決めた所定の温度になるようにはんだ加熱ヒータ917への供給電力を制御する。そして、この温度制御装置916は、制御装置90からの指令により温度やPID制御特性等が任意に設定される。
【0060】
(3)はんだ付け動作
図10〜図12は、本発明のはんだ付け装置の制御構成の一例を示すフローチャートであり、はんだ付け動作制御手順に対応する。なお、図中、S1〜S13,S91〜S92,S101〜S102は各ステップを示す。
【0061】
制御装置90は、コンピュータシステムで構成してあるので、その作業手順をソフトウェア上で実現することができる。このソフトウェア(プログラム)は、HD906にCPU903により読み出し可能に格納されており、CPU903が読み出してRAM905上で実行することにより、図10〜図12に示すフローチャートに対応する制御処理が実現される。
【0062】
以下、図10〜図12に示すのフローチャートと図1〜図4に示した作動態様例を参照しながら、はんだ付け装置の作動を説明する。
【0063】
まず、はんだ付け装置1が起動されると、制御装置90は、ステップS1において、搬送レール301にプリント配線板2を保持したキャリア80が搬入されたか否かをキャリア検知センサ907の検知信号に基づいて判断する(プリント配線板2をキャリア80に保持させる作業とこのキャリア80を搬入レール70から搬送レール301に移送する作業は作業者が行う)。すなわち、制御装置90は、図1の状態から図2の状態にキャリア80が移送されたか否かを判断し、キャリア80が搬入されるまで待機し、図1の状態から図2の状態にキャリア80が搬入されたと判断した場合には、制御装置90は、ステップS2へ処理を移行して、スタートスイッチ908がONされたかすなわち操作されたか否かを判断する。
【0064】
そして、ステップS2において、スタートスイッチ908がONされるまで待機し、ONされたと判断した場合には、制御装置90は、ステップS3へ処理を移行し、報知装置909に作業中であることを表示して作業者に報知し、はんだ付け作業が開始されたことへの注意を喚起する。
【0065】
その後、制御装置90は、ステップS4へ処理を移行して、予備加熱装置40を展開装置50により展開する。すなわち展開装置50のアクチュエータ501を駆動してスライドレール502を前進(矢印D1)させ、図2のように噴流波形成装置20とプリント配線板2との間に予備加熱装置40を位置させてプリント配線板2の予備加熱を開始する。
【0066】
続いてステップS5において、制御装置90は、予備加熱装置40を省電力の待機モードから通常モード(通常の加熱状態)へ直ちに移行させる。
【0067】
次に、制御装置90は、ステップS6へ処理を移行させて、赤外線温度センサ910の情報を参照してプリント配線板2の予備加熱温度が予め決められてプログラムされている目標値に到達したか否かを判断する。
【0068】
そして、ステップS6において、制御装置90は、プリント配線板の予備加熱温度が目標値に到達するまで待機し、プリント配線板の予備加熱温度が目標値に到達したと判断した場合には、ステップS7へ処理を移行させ、予備加熱装置40を省電力の待機モードへ移行させる。
【0069】
続いて、制御装置90は、ステップS8において、待機モードに移行した予備加熱装置40を展開装置50により収納室60に収納する。すなわち展開装置50のアクチュエータ501を駆動してスライドレール502を後退(矢印D2)させて、図3のように予備加熱装置40を展開装置50により収納室60に収納する。
【0070】
なお、プリント配線板の予備加熱を開始してからの時間経過に対する当該プリント配線板の温度プロファイルは、同じプリント配線板では同じプロファイルになる。したがって、このプロファイルから目標温度に到達するまでの時間を抽出し、ステップS6をこの目標温度に到達するまでに要する時間にわたって待機するタイマーステップに変更してもよい。
【0071】
このように、プリント配線板の予備加熱温度が予め決めた所定温度に到達し予備加熱装置40が収納されたら、制御装置90は、ステップS9へ処理を移行させ、プリント配線板2の接液手順(接液シーケンス)を開始する。ここで、図11を参照して、ステップS9の接液シーケンスについて説明する。図11は、図10のS9に示した接液シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【0072】
まず、図11のステップS901において、制御装置90は、プリント配線板2の前端すなわち図3の右側端部を溶融はんだ202の噴流波206に接液させる。即ち、ステップS91の作業は、制御装置90が図3の搬送装置30の右側の第1の接液用アクチュエータ302aと第3アクチュエータ302cのみを矢印A1方向に駆動して搬送レール301を下降させることで行われる。
【0073】
続いて、制御装置90は、ステップS92に処理を移行させて、プリント配線板2の後端すなわち図3の左側端部を溶融はんだ202の噴流波206に接液させる。即ち、ステップS92の作業は、制御装置90が図3の搬送装置30の左側の第2の接液用アクチュエータ302bと第4の接液用アクチュエータ302dのみを矢印B1方向に駆動して搬送レール301を下降させることで行われる。
【0074】
すなわち、ステップS9(図11ステップS91とステップS92)によりプリント配線板2の下方側の全面が溶融はんだ202の噴流波206に接液し、その被はんだ付け部23に溶融はんだが供給されてはんだ付けが行われる。
【0075】
続いて、制御装置90は、ステップS10へ処理を移行させ、プリント配線板2の離脱手順(離脱シーケンス)を開始する。ここで、図12を参照して、ステップS10の離脱シーケンスについて説明する。図12は、図10のS10に示した離脱シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【0076】
まず、図12のステップS101において、制御装置90は、プリント配線板2の前端すなわち図1〜図4の右側端部を溶融はんだ202の噴流波206から離脱させる。即ち、ステップS101の作業は、制御装置90が図1〜図4の搬送装置30の右側の第1の接液用アクチュエータ302aと第3の接液用アクチュエータ302cのみを図4の矢印A2方向に駆動して搬送レール301を上昇させることで行われる。
【0077】
続いて、制御装置90は、ステップS102に処理を移行させて、プリント配線板2の後端すなわち図1〜図4の左側端部を溶融はんだの噴流波から離脱させる。即ち、ステップS102の作業は、制御装置90が、図1〜図4の搬送装置30の左側の第2の接液用アクチュエータ302bと第4の接液用アクチュエータ302dのみを図4の矢印B2方向に駆動して搬送レール301を上昇させることで行われる。
【0078】
すなわち、ステップS10(図12のステップS101とステップS102)によりプリント配線板2の下方側の全面が溶融はんだ202の噴流波206から離脱し、その被はんだ付け部23への溶融はんだの供給処理が終了する。
【0079】
なお、ステップS9の接液手順とステップS10の離脱手順には公知の技術例が多数あり、本実施形態で例示した手順はその最も代表的な手順例である。他の公知例としては、例えば、制御装置90が、搬送レール301を駆動する4つのアクチュエータ302a,302b,302c,302dをそれぞれを独立に駆動し、プリント配線板2(通常は四角形)の何れかの角部から接液を開始して噴流波206へ接液さたり、逆に離脱に際してもプリント配線板2の何れかの角部から離脱を開始して噴流波206からの離脱を完了させたりする技術がある。これら多数の公知例の接液手順と離脱手順の技術の要点は、プリント配線板2と溶融はんだ202の噴流波206との間にフラックスガスが滞留したりしないようにすることや、被はんだ付け部23のはんだ濡れ不良を無くすこと、フィレット形状を整えること、スルーホールに溶融はんだが濡れ上がること、等々のはんだ付け品質を規定するパラメータが最良になるように決められている点である。
【0080】
以下、図10のフローチャートの説明へ戻る。
【0081】
制御装置90は、プリント配線板2への溶融はんだの供給処理が終了すると、ステップS10からステップS11へ処理を移行させ、報知装置909に作業が終了したことを表示して作業者に報知し、プリント配線板2を保持したキャリア80の搬出作業を促す。すなわち、作業者は作業終了の報知があった場合にのみ、キャリア80の把手801を把持してキャリア80を引き出し搬入レール70に移動(矢印C)させ、キャリア80に保持されたプリント配線板2すなわちはんだ付け作業の終了したプリント配線板2を取り出す。これにより、はんだ付け作業が終了する。
【0082】
一方で、制御装置90は、ステップS12へ処理を移行させ、キャリア80が搬出されたか否かを判断して搬出されるまで待機し、搬出されたと判断した場合には、ステップS13へ処理を移行させ、はんだ付けの待機状態であることを報知装置909に表示して報知(スタンバイを報知)して、ステップS1に処理を戻す。これにより、一連の作業が完了する。
【0083】
以上説明したように、本実施形態のはんだ付け装置1は、溶融はんだをプリント配線板2の被はんだ付け部23に供給する噴流波形成装置20の上方にプリント配線板2の搬送装置30を設け、また予備加熱装置40を噴流波形成装置20の側部側の収納室60に収納して設けることではんだ付け装置1を小型に構成することができる。しかも、プリント配線板2に対する全ての処理作業を噴流波形成装置20の上方の位置(1箇所)でのみ行うので、作業者が移動することなくこれらの作業を確認できる。
【0084】
また、各装置の展開と収納を連動して隙間時間無く行わせることにより、各工程間の移行に際して何も処理を行わない無駄時間が発生しなくなり、この無駄時間によって発生するプロセス因子の変動(例えば予備加熱温度の低下)が無くなり、はんだ付け品質を高めることができるようになる。また、このように無駄時間が無くなることにより、本発明のような枚葉処理(プリント配線板を1枚ずつ搬入/搬出して処理)のはんだ付け装置において生産性を大幅に高めることができるようになる。
【0085】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、部分はんだ付け装置への応用例を示す。
【0086】
図13は、本発明の部分はんだ付け装置への応用例をその予備加熱装置40の展開方向(矢印D方向)に対する縦断面で見た図である。すなわち、プリント配線板2の予め決めた所定の特定の領域にのみ溶融はんだを供給するために、噴流波形成装置20の吹き口体204にノズル体208を設けて構成した例である。
【0087】
ノズル体208のノズル209は、プリント配線板2に溶融はんだ202を供給する領域の位置に整合させて設けてあり、これにより、特定の領域にのみはんだ波210から溶融はんだが供給されてはんだ付けが行われる。
【0088】
したがって、図7(a)に示すようなキャリアを使用しても図7(b)のキャリアを使用した場合と同様の部分はんだ付け作業を行うことができる。
【0089】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、フラックス塗布装置と冷却装置とを備えたはんだ付け装置の例を示す。
【0090】
図14は、本発明の第3実施形態を示すはんだ付け装置を上方から見た図であり、筐体10内部の主要な構成部分を破線で示してある。すなわち、このはんだ付け装置は、前記第1実施形態で説明したはんだ付け装置に、さらにフラックス塗布装置1000と冷却装置2000とを設けた例である。
【0091】
図14に示すように、フラックス塗布装置1000は、噴霧ノズル1001からフラックスを噴霧して塗布する構成であり、噴霧ノズル1001をアクチュエータ1002により矢印E方向に往復移動しながらフラックスを塗布するいわゆるスイング式のフラックス塗布装置である。
【0092】
そして、待機中は噴霧ノズル1001とアクチュエータ1002は収納室1003に収納されていて、フラックスを塗布する場合にのみ噴流波形成装置20とプリント配線板2の間に展開してプリント配線板2の下方側の面にフラックスを塗布する。
【0093】
噴霧ノズル1001とこの噴霧ノズル1001を往復移動させるアクチュエータ1002の展開は、展開装置1004のアクチュエータ1005によって矢印F方向への前進移動により行われ、フラックス塗布後には収納室に収納(後退移動)される。なお、スイング式のフラックス塗布装置の技術は公知であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0094】
また、冷却装置2000は、冷風をプリント配線板2に吹きつけて冷却を行う装置であり、筐体10内の雰囲気をファンにより吹きつけるだけでも噴流波やはんだ波に接液後のプリント配線板には十分な冷却作用が期待できる。しかし、一層良好な冷却特性を実現するために、気化した直後の窒素ガスを吹きつけたり、熱交換機で温度管理されている冷却した雰囲気を吹きつけるように構成することができる。
【0095】
そして、図14に示すように待機中は、冷却装置2000が収納室2001に収納されていて、プリント配線板2の冷却を行う場合にのみ噴流波形成装置20とプリント配線板2の間に展開してプリント配線板2を冷却する。
【0096】
冷却装置2000の展開は、展開装置2002のアクチュエータ2003によって矢印G方向への前進移動により行われ、冷却完了後には収納室に収納(後退移動)される。なお、冷却装置の技術は公知であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0097】
一般的に、プリント配線板のはんだ付け作業はフラックス塗布工程→予備加熱工程→はんだ付け工程→冷却工程の順に行われる。
【0098】
したがって、プリント配線板2を保持したキャリア80を搬送レール301に移送すると先ず、制御装置90は、フラックス塗布装置1000を展開してフラックス塗布作業が行う。そして、フラックス塗布作業が完了すると、制御装置90は、フラックス塗布装置1000を収納し、続いて予備加熱装置40を展開してプリント配線板2の予備加熱を行う。
【0099】
そして、制御装置90は、予備加熱作業が完了すると予備加熱装置40を収納し、キャリア80ひいてはプリント配線板2を下降させて、プリント配線板2の噴流波形成装置20の溶融はんだの噴流波206への接液と離脱を行う。
【0100】
このプリント配線板2の被はんだ付け部23への溶融はんだの供給作業が完了すると、制御装置90は、冷却装置2000を展開し、プリント配線板2の冷却作業を行う。プリント配線板2の冷却が完了すれば、制御装置90は、冷却装置2000を収納室2001に収納し、一連のはんだ付け作業が完了する。
【0101】
なお、図示しないが、本実施形態のはんだ付け装置は、アクチュエータ1002,1005,2003を駆動する駆動装置を設け、制御装置90からの制御により、アクチュエータ1002,1005,2003を駆動する。
【0102】
以下、図15を参照して、本実施形態のはんだ付け作業についてフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0103】
図15は、本発明の第3実施形態を示すはんだ付け装置の制御処理動作の一例を示すフローチャートであり、はんだ付け作業処理手順に対応する。なお、図中、S1〜S20は各ステップを示し、図10と同一のステップには同一のステップ番号を付してある。
【0104】
制御装置90は、コンピュータシステムで構成してあるので、その作業手順をソフトウェア上で実現することができる。このソフトウェア(プログラム)は、HD906にCPU903により読み出し可能な格納されており、CPU903が読み出してRAM905上で実行することにより、図15に示すフローチャートに対応する制御処理が実現される。
【0105】
まず、S1〜S3は、図10と同一なので説明は省略する。
【0106】
ステップS3の処理が終了すると、制御装置90は、ステップS14へ処理を移行して、フラックス塗布装置1000を展開する。すなわち、制御装置90は、展開装置1004のアクチュエータ1005を駆動して噴霧ノズル1001とアクチュエータ1002を噴流波形成装置20とプリント配線板2の間に展開する。
【0107】
次に、ステップS15において、制御装置90は、フラックス塗布作業を行う。即ち、制御装置90は、アクチュエータ1002を駆動して噴霧ノズル1001を図14の矢印E方向に往復移動させながら噴霧ノズル1001からフラックスを噴霧してプリント配線板2にフラックスを塗布する。
【0108】
そして、フラックスの塗布作業が完了すると、制御装置90は、ステップS16において、フラックス塗布装置1000を収納室1003に収納する。すなわち、制御装置90は、展開装置1004のアクチュエータ1005を駆動して噴霧ノズル1001とアクチュエータ1002を収納室1003に収納する。
【0109】
なお、制御手順を若干変更して、ステップS15のフラックス塗布作業すなわち噴霧ノズル1001を矢印E方向に往復移動させながらステップS14の展開すなわち噴霧ノズル1001の矢印F方向へ移動とステップS16の収納すなわち噴霧ノズル1001の矢印F方向への移動を行うことにより、噴霧ノズル1001がジグザグの移動軌跡でプリント配線板2にフラックスを塗布することができる。
【0110】
その後、制御装置90は、ステップS4へ処理を移行する。なお、S4〜S10は、図10と同一なので説明は省略する。
【0111】
制御装置90は、プリント配線板2への溶融はんだの供給処理(S9,S10)が終了すると、ステップS17へ処理を移行させ、冷却装置2000を展開する。すなわち制御装置90は、展開装置2002のアクチュエータ2003を駆動して冷却装置2000を噴流波形成装置20とプリント配線板2との間に移動(矢印G)させる。
【0112】
続いてステップS18において、制御装置90は、冷却装置2000によるプリント配線板2の冷却作業を行う。即ち、制御装置90は、冷却装置2000により冷風をプリント配線板2に吹きつけて冷却を行う。
【0113】
次に、制御装置90は、ステップS19へ処理を移行させて、赤外線温度センサ910の情報を参照してプリント配線板2の温度が予め決められてプログラムされている冷却目標値に到達したか否かを判断する。
【0114】
そして、ステップS19において、制御装置90は、プリント配線板2の温度が冷却目標値に到達するまで待機し、プリント配線板2の温度が目標値に到達したと判断した場合には、ステップS20へ処理を移行させる。
【0115】
次に、ステップS20において、制御装置90は、展開装置2002のアクチュエータ2003を駆動して冷却装置2000を収納室2001に収納(矢印G)させる。
【0116】
なお、プリント配線板の冷却を開始してからの時間経過に対する当該プリント配線板の温度プロファイルは、同じプリント配線板では同じプロファイルになる。したがって、このプロファイルから冷却目標温度に到達するまでの時間を抽出し、ステップS19をこの冷却目標温度に到達するまでに要する時間にわたって待機するタイマーステップに変更してもよい。
【0117】
このように、プリント配線板の温度が予め決めた所定冷却温度に到達し冷却装置2000が収納されたら、制御装置90は、ステップS11へ処理を移行させる。以下、図10と同一なので詳細な説明は省略し簡単に述べる。
【0118】
その後、制御装置90は、ステップS11へ処理を移行する。なお、S11〜S13は、図10と同一なので説明は省略する。そして、ステップS13の処理が終了すると、制御装置90は、ステップS1に処理を戻す。これにより、一連の作業が完了する。
【0119】
このように、本発明のはんだ付け装置は、溶融はんだをプリント配線板の被はんだ付け部に供給する噴流波形成装置の上方にプリント配線板の搬送装置を設け、またフラックス塗布装置や予備加熱装置、冷却装置、等々を噴流波形成装置の側部側に収納して設けることではんだ付け装置を小型に構成することができる。しかも、プリント配線板に対する全ての処理作業を噴流波形成装置の上方の位置(1箇所)でのみ行うので、作業者が移動することなくこれらの作業を確認できる。
【0120】
また、各装置の展開と収納を連動して隙間時間無く行わせることにより各工程間の移行に際して何も処理を行わない無駄時間が発生しなくなり、この無駄時間によって発生するプロセス因子の変動(例えば予備加熱温度の低下)が無くなり、はんだ付け品質を高めることができるようになる。また、前記のように無駄時間が無くなることにより、本発明のような枚葉処理(プリント配線板を1枚ずつ搬入/搬出して処理)のはんだ付け装置において生産性を大幅に高めることができるようになる。
【0121】
〔第4実施形態〕
本実施形態では、予備加熱装置40とその展開装置50およびその収納室60とを備えていないはんだ付け装置の例を示す。
【0122】
そして、他のハードウェア構成については上記第1実施形態又は第3実施形態と同様とする。以下の説明では、上記第3実施形態と同様にフラックス塗布装置1000,冷却装置2000を設けた構成として説明する。
【0123】
〔はんだ付け動作〕
図16は、本発明の第4実施形態を示すはんだ付け装置の制御構成の一例を示すフローチャートであり、はんだ付け動作制御手順に対応する。なお、図中、S1〜S3,S6,S9〜S21は各ステップを示し、図10,図15と同一のステップには同一のステップ番号を付してある。
【0124】
制御装置90は、コンピュータシステムで構成してあるので、その作業手順をソフトウェア上で実現することができる。このソフトウェア(プログラム)は、HD906にCPU903により読み出し可能な格納されており、CPU903が読み出してRAM905上で実行することにより、図20に示すフローチャートに対応する制御処理が実現される。
【0125】
まず、S1〜S3,S14〜S16は、図15と同一なので説明は省略する。
【0126】
ステップS16の処理が終了すると、制御装置90は、ステップS20へ処理を移行して、プリント配線板を降下させる。即ち、ステップS20の作業は、制御装置90が搬送装置30のアクチュエータ302a,302cを矢印A1方向、アクチュエータ302b,302dを矢印B1方向に駆動して搬送レール301と共にプリント配線板2を下降させて噴流波形成装置20の噴流波206の上方の至近位置で停止させる。これにより、噴流波206からの放射熱と雰囲気の熱対流を受けて加熱され、プリント配線板2の予備加熱を行う。
【0127】
次に、制御装置90は、ステップS6へ処理を移行させる。そして、ステップS6において、制御装置90は、プリント配線板の予備加熱温度が目標値に到達するまで待機し、プリント配線板の予備加熱温度が目標値に到達したと判断した場合には、ステップS9へ処理を移行させる。なお、S9,S10,S17〜S20,S11〜S13は、図15と同一なので詳細な説明は省略するが、この後、搬送装置30によりプリント配線板2をさらに下降させてプリント配線板2の下方側の面を噴流波206に接液させその後、図19に示すようにA2,B2方向に、プリント配線板2を上昇させて噴流波206からプリント配線板を離脱させる等の制御を行う。そして、ステップS13の処理が終了すると、制御装置90は、ステップS1に処理を戻す。これにより、一連の作業が完了する。
【0128】
以上説明したように、本実施形態のはんだ付け装置は、上記各実施形態と同様にプリント配線板2の搬送は上下方向であるので搬送装置が小型になり、はんだ付け装置としても小型になる。また、プリント配線板2にフラックスを塗布するフラックス塗布装置1000がプリント配線板2と噴流波形成装置20の間に展開し、プリント配線板2へのフラックスの塗布が終了すれば噴流波形成装置20の側部側にフラックス塗布装置1000を収納する。したがって、この構成からもはんだ付け装置を小型に構成することができる。
【0129】
また、プリント配線板2を噴流波形成装置20の噴流波206の至近上方位置に降下させることで、高温の噴流波からの放射熱と対流熱を受けて加熱され、この加熱によりプリント配線板2の予備加熱が行われるので、展開/収納されるフラックス塗布装置や展開/収納される冷却装置の構成と相まって、はんだ付け装置を一層小型に構成することができる。そして、フラックス塗布工程の処理と予備加熱工程の処理そしてはんだ付け工程の処理の全てをはんだ付け工程の位置において行うので、これらの処理が行われる様子を作業者が移動することなく目視確認できる。
【0130】
なお、本発明は、コンピュータが記録媒体より読み出した(又は通信回線を介してダウンロードした)プログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能を実現する構成であっても、ハードウェアにより前述した実施形態の機能を実現する構成であってもよい。
【0131】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0132】
本発明の様々な例と実施形態を示して説明したが、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲は、本明細書内の特定の説明に限定されるのではない。
【0133】
なお、上述した各実施形態およびその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0134】
以上示したように、小型に構成することが可能で各工程の処理状況を搬入口に居る作業者が目前で確認可能にし、予備加熱工程からはんだ付け工程に移行するプリント配線板の予備加熱温度が低下しないはんだ付け装置を構成し、多品種のプリント配線板のはんだ付けを行う際に、はんだ付け品質の良好なプリント配線板を低コストで生産可能にすることができる等の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明に係るはんだ付け装置は、多品種少量のプリント配線板のはんだ付け作業を行う際に最適であり、小型であって作業者がはんだ付け作業の全処理を容易に確認できることからセル生産に好適である。また、リフローはんだ付けされたプリント配線板に、リフローはんだ付けを行うことができないコネクタ等のリード型部品のフローはんだ付けを行う際にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置をその予備加熱装置の展開方向(矢印D方向)に対する縦断面で見た図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置をその予備加熱装置の展開方向(矢印D方向)に対する縦断面で見た図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置をその予備加熱装置の展開方向(矢印D方向)に対する縦断面で見た図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置をその予備加熱装置の展開方向(矢印D方向)に対する縦断面で見た図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置を予備加熱装置の展開方向(矢印D方向)に対する横断面で見た図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示すはんだ付け装置を上方から見た図である。
【図7】キャリア80の全容とその使用状態を説明する斜視図である。
【図8】キャリア80に保持されたプリント配線板2の様子を説明する図である。
【図9】図1〜図6に示したはんだ付け装置1の各部を制御する制御構成の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明のはんだ付け装置の制御構成の一例を示すフローチャートである。
【図11】図10のS9に示した接液シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【図12】図10のS10に示した離脱シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の部分はんだ付け装置への応用例をその予備加熱装置40の展開方向(矢印D方向)に対する縦断面で見た図である。
【図14】本発明の第3実施形態を示すはんだ付け装置を上方から見た図でる。
【図15】本発明の第3実施形態を示すはんだ付け装置の制御処理動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第4実施形態を示すはんだ付け装置の制御構成の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0137】
1 はんだ付け装置
2 プリント配線板
10 筐体
20 噴流波形成装置
30 搬送装置
40 予備加熱装置
50 展開装置
60 収納室
70 搬入レール
80 キャリア
90 制御装置
101 搬入口/搬出口
201 はんだ槽
203 ポンプ
204 吹き口体
205 吹き口
206 噴流波
207 整流板
208 ノズル体
209 ノズル
301 搬送レール
302 アクチュエータ
501 アクチュエータ
502 スライドレール
601 断熱保温材
801 把手
909 報知装置
910 赤外線温度センサ
911 駆動装置
912 駆動装置
913 ポンプ速度制御装置
914 送給ポンプ
915 温度制御装置
916 温度制御装置
917 加熱ヒータ
918 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持して上下方向に搬送することで前記プリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させるプリント配線板の搬送装置を設け、
さらに、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の予備加熱を行う予備加熱装置を展開しまた該展開した予備加熱装置を前記噴流波形成装置の側部側に収納する予備加熱装置の展開装置を設け、
前記展開装置により前記予備加熱装置を展開してプリント配線板の予備加熱を行った後に前記予備加熱装置を収納し次に前記搬送装置により前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させ続いて前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させる制御装置を設けて成ること、
を特徴とするはんだ付け装置。
【請求項2】
溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持して上下方向に搬送することで前記プリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させるプリント配線板の搬送装置を設け、
そして、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の下方側の面にフラックスを塗布するフラックス塗布装置を展開しまた該展開したフラックス塗布装置を前記噴流波形成装置の側部側に収納するフラックス塗布装置の展開装置を設け、
さらに、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の予備加熱を行う予備加熱装置を展開しまた該展開した予備加熱装置を前記噴流波形成装置の側部側に収納する予備加熱装置の展開装置を設け、
前記フラックス塗布装置の展開装置により前記フラックス塗布装置を展開してプリント配線板の下方側の面にフラックスの塗布を行った後に前記フラックス塗布装置を収納し続いて前記予備加熱装置の展開装置により前記予備加熱装置を展開してプリント配線板の予備加熱を行った後に前記予備加熱装置を収納し次に前記搬送装置により前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させ続いて前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させる制御装置を設けて成ること、
を特徴とするはんだ付け装置。
【請求項3】
前記予備加熱装置を収納する収納室を設けると共に、この収納室には断熱材が設けられて保温室に形成されて成る、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持して上下方向に搬送することで前記プリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させるプリント配線板の搬送装置を設け、
そして、プリント配線板を前記搬送装置に保持した状態で前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の下方側の面にフラックスを塗布するフラックス塗布装置を展開しまた前記噴流波形成装置の側部側に収納するフラックス塗布装置の展開装置を設け、
前記フラックス塗布装置の展開装置により前記フラックス塗布装置を展開してプリント配線板の下方側の面にフラックスの塗布を行った後に前記フラックス塗布装置を収納し続いて前記搬送装置により前記プリント配線板を下降させて前記噴流波の上方の至近位置で停止させることで前記プリント配線板の予備加熱を行い次に前記搬送装置により前記プリント配線板をさらに下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させその後前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させる制御装置を設けて成ること、
を特徴とするはんだ付け装置。
【請求項5】
溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持した状態で、前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の予備加熱を行う予備加熱装置を展開してプリント配線板の予備加熱を行った後に、前記予備加熱装置を収納し、次に前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させ、続いて前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項6】
溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持した状態で、前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の下方側の面にフラックスを塗布するフラックス塗布装置を展開してプリント配線板の下方側の面にフラックスの塗布を行った後に前記フラックス塗布装置を収納し、続いて前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の予備加熱を行う予備加熱装置を展開してプリント配線板の予備加熱を行った後に前記予備加熱装置を収納し、次に前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させ、続いて前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項7】
溶融はんだの噴流波を形成する噴流波形成装置の上方にプリント配線板を保持した状態で、前記プリント配線板と前記噴流波形成装置との間に前記プリント配線板の下方側の面にフラックスを塗布するフラックス塗布装置を展開してプリント配線板の下方側の面にフラックスの塗布を行った後に前記フラックス塗布装置を収納し、続いて前記プリント配線板を下降させて前記噴流波の上方の至近位置で停止させることで前記プリント配線板の予備加熱を行い、次に前記プリント配線板を下降させてプリント配線板の下方側の面を前記噴流波に接液させ、その後前記プリント配線板を上昇させて前記噴流波からプリント配線板を離脱させることを特徴とするはんだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−53655(P2008−53655A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231177(P2006−231177)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000232450)日本電熱計器株式会社 (25)
【Fターム(参考)】