説明

はんだ接合剤組成物

【課題】フラックス成分に熱硬化性樹脂を含有させたVOCフリーかつハロゲンフリータイプの鉛フリーはんだ接合剤において、基板に速やかに塗布することが可能な粘性を有し、貯蔵安定性、高強度、高絶縁性を有し、速やかに樹脂の硬化を進めることができるようにすることである。
【解決手段】はんだ接合剤組成物は、本発明は,(A) 鉛フリーはんだ粉末60〜90質量%と(B)熱硬化性樹脂含有フラックス10〜40質量%とからなる。(B)熱硬化性樹脂含有フラックスが、(C)熱硬化性樹脂、(D)活性剤、(E)チクソ剤および(F)イミダゾール化合物を含有する。(F)イミダゾール化合物が(B)熱硬化性樹脂含有フラックスの0.1質量%〜10質量%を占めており、(B)熱硬化性樹脂含有フラックスの揮発成分(VOC)含有量が1質量%以下であり、(B)熱硬化性樹脂含有フラックスのハロゲン含有量が1000ppm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品のプリント配線板等への実装や、半導体装置の組立てにおける電子部品を基板へ搭載する際に、各種部品の電極端子と各種基板上の電極とを電気的に導通接合または機械的に接着させる材料とその工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の小型化及び薄型化に伴って、モジュール化された部品の実装や、ICやLSI等の半導体素子その他の各種電子部品の組立ての中で、優れた導電性と高い接合信頼性の点からSn/Pb系共晶はんだが広く使用されてきた。しかし近年、環境汚染の問題から鉛に対する規制が強化され、鉛フリーはんだを使用した接合材料に切り替わりつつある。
【0003】
ところが、Sn/Ag/Cu合金に代表する鉛フリー合金はんだは、Sn/Pb系合金はんだに比べて、約40℃高い融点を有するため、はんだ付される各種電子部品や基板あるいはその接合界面に大きな熱歪みを生じるので、接合信頼性に不安がある。
【0004】
また、はんだとともに用いられるフラックス成分も、前記の技術動向に合わせて、より特殊なものになり、はんだ接合部を清浄し、金属の酸化を防ぎ、且つ溶融したはんだの表面張力を下げてぬれ性をよくする働きにより、必要不可欠な材料となっている。
【0005】
ところが、最近の高密度実装においては、接合部の面積が小さいため、接合強度の信頼性が問題となっており、接合強度を上げるため、はんだ接合後に補強用樹脂等にて部品を補強する方法があるが、その硬化過程でフラックス残さが補強用樹脂の硬化を妨げるなど接着効果を低減させるため、洗浄工程を必要とし、工程数が大幅に増加している。また、高密度実装では、フラックス残さの洗浄そのものがしにくくなり、洗浄が終了しているかの確認も困難となるため、残さの洗浄が必要ない材料も要求されている。
【0006】
さらに、近年、パソコンなどを中心に製品中およびこれを構成する電子部品に対して、ハロゲン化合物の含有量を規制する動きが高まりつつある。部品を接合するはんだ材料中のハロゲン量もその対象となり、化合物中にF、Cl、Br、Iの各ハロゲン化合物の合計量が1000ppm以下であることが求められる。
【0007】
高密度実装分野において、前述の通り、はんだ接合後に補強用樹脂やアンダーフィル剤等を用いて部品の接合強度を上げて信頼性を高める手法があるが、補強用樹脂やアンダーフィル剤を塗布し硬化させたり、場合によってはフラックス洗浄工程を必要とするため、工数が大幅に増大している。
【0008】
また、はんだペースト中のフラックス成分に熱硬化性樹脂を含有する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0009】
しかし、特許文献1では、接着性樹脂の硬化温度及び硬化速度を調整するため、および粘度調整のために、溶剤が必須成分となっており、VOCフリーには当たらず、環境上の問題を回避していない。また、一般には熱硬化性樹脂と硬化剤を溶剤により希釈熔解した場合、硬化剤が溶剤に溶け出し硬化反応が促進され、貯蔵安定性が極端に悪化する。
【0010】
これに対して、VOCフリーはんだ接合の材料として、溶剤を使用せず低粘度のエポキシ樹脂を使用する方法がある(特許文献2参照)。
【0011】
特許文献2では、溶剤の代わりに反応性エポキシ希釈剤を使用しているが、反応性エポキシは一般に沸点が低く、加熱実装中に全く揮発しないとは言い切れない。仮に比較的沸点の高い反応性エポキシを使用した場合には、目標とする材料の粘度が得られ難く、また未反応物を多く残しやすいため、絶縁性など充分な物性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−219294号公報
【特許文献2】特許第3953514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の通り、はんだペースト中のフラックス成分に熱硬化性樹脂を含有させて、はんだによる溶融接合と、熱硬化性樹脂による接着補強を同時に施すことを可能にする材料で、溶剤等を含有しないVOCフリータイプで、所定の基板パターンに速やかに塗布することが可能な粘性を有し、貯蔵時の安定性とはんだを溶融させる加熱条件下にて、速やかに樹脂の硬化を進めることができる材料は無かった。
【0014】
本発明の課題は、フラックス成分に熱硬化性樹脂を含有させたVOCフリーかつハロゲンフリータイプの鉛フリーはんだ接合剤において、基板に速やかに塗布することが可能な粘性を有し、貯蔵安定性、高強度、高絶縁性を有し、速やかに樹脂の硬化を進めることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、環境対応型でしかも各種電子部品の実装における接合信頼性が高い材料を提供すべく新規な材料として、鉛フリーはんだを使用し、溶剤を使用せず、ハロゲン含有量が少ない熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を開発した。
【0016】
すなわち、本発明は,(A) 鉛フリーはんだ粉末60〜90質量%と(B)熱硬化性樹脂含有フラックス40〜10質量%とからなるはんだ接合剤組成物であって、
(B)熱硬化性樹脂含有フラックスが、(C)熱硬化性樹脂、(D)活性剤、(E)チクソ剤および(F)イミダゾール化合物を含有しており、(F)イミダゾール化合物が(B)熱硬化性樹脂含有フラックスの0.1質量%〜10質量%を占めており、(B)熱硬化性樹脂含有フラックスの揮発成分(VOC)含有量が1質量%以下であり、(B)熱硬化性樹脂含有フラックスのハロゲン含有量が1000ppm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フラックス成分に熱硬化性樹脂を含有させたVOCフリーかつハロゲンフリータイプの鉛フリーはんだ接合剤において、基板に速やかに塗布することが可能な粘性を有し、貯蔵安定性、高強度、高絶縁性を有し、速やかに樹脂の硬化を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】Sn42/Bi58熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤のリフロー条件を示すグラフである。
【図2】Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤のリフロー条件を示すグラフである。
【図3】Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5はんだペーストのリフロー条件を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のはんだ接合剤は、基板ランドに塗布されて、電子部品端子と基板ランドを(A)鉛フリーはんだにより導通接合する工程と、電子部品を基板に(B)熱硬化性樹脂含有フラックスにより接着させる工程とを同時に行なうことを可能にする熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤である。(B)熱硬化性樹脂含有フラックス中には、(C)熱硬化性樹脂、活性剤(D)、チクソ剤(E)、さらに硬化剤としての(F)イミダゾール化合物を含有する。
【0020】
((A)鉛フリーはんだ粉末)
鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末である。ただし、はんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に,鉛の量は、100ppm以下であることが好ましい。
鉛フリーはんだは、Sn,Cu,Ag,Bi,Sb,In,Znから選択された少なくとも一種の金属を含むことが好ましい。
【0021】
具体的には、鉛フリーはんだ粒子を形成するハンダ組成としては、以下を例示できる。
純金属:Ag、Au、Cu、Pt、Pd、W、Ni、Ta、Ti、Cr、Fe、Co、Ga、In、Li、Se、Sn、Bi、Tl、Zn、Te
合金:
2元系合金: 95.3Ag/4.7Bi等のAg−Bi系、66Ag/34Li等のAg−Li系、3Ag/97In等のAg−In系、67Ag/33Te等のAg−Te系、97.2Ag/2.8Tl等のAg−Tl系、45.6Ag/54.4Zn等のAg−Zn系、80Au/20Sn等のAu−Sn系、52.7Bi/47.3In系のBi−In系、35In/65Sn、51In/49Sn、52In/48Sn等のIn−Sn系、8.1Bi/91.9Zn等のBi−Zn系、43Sn/57Bi、42Sn/58Bi等のSn−Bi系、98Sn/2Ag、96.5Sn/3.5Ag、96Sn/4Ag、95Sn/5Ag等のSn−Ag系、91Sn/9Zn、30Sn/70Zn等のSn−Zn系、99.3Sn/0.7Cu等のSn−Cu系、95Sn/5Sb等のSn−Sb系
3元系合金: 95.5Sn/3.5Ag/1In等のSn−Ag−In系、86Sn/9Zn/5In、81Sn/9Zn/10In等のSn−Zn−In系、95.5Sn/0.5Ag/4Cu、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cu等のSn−Ag−Cu系、90.5Sn/7.5Bi/2Ag、41.0Sn/58Bi/1,0Ag等のSn−Bi−Ag系、89.0Sn/8.0Zn/3.0Bi等のSn−Zn−Bi系
その他:
Sn/Ag/Cu/Bi
【0022】
(A)鉛フリーはんだ粉末と(B)熱硬化性樹脂含有フラックスとの含有比率は、
60〜90質量%:40〜10質量%であり、特に好ましくは75〜85質量%:25〜15質量%である。この比率により、ペーストとしての粘性やチクソ性が良好で、印刷やディスペンス塗布など量産工程に対応できる材料となる。
【0023】
この比率よりも(A)鉛フリーはんだ粉末が多くなると、粘性やチクソ性が高くなり、連続あるいは長時間の印刷やディスペンス塗布作業に支障をきたす。また、この比率よも(A)鉛フリーはんだ粉末が少なくなると、連続あるいは長時間の印刷やディスペンス塗布作業に支障をきたすほか、部品実装後の加熱工程において、ペーストがだれたり、はんだ粒が溶融せず残る場合がある。
【0024】
((C)熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等を例示でき、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂としては、主に非揮発性のエポキシ系化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−ヒドロキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールなどのグリシジルアミン系樹脂、(プロピレン、ポリプロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、(エチレン、プロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
(C)としては、主に、(C1)常温で液状のエポキシ樹脂と、(C2)固形のエポキシ樹脂とをブレンドして使用することが、はんだをブレンドした際の粘性から好ましい。
【0027】
ここで、ハロゲン化合物のうち塩素(Cl)は、(C)熱硬化性樹脂として使用するエポキシ樹脂中に含有されており、特に精製する事が困難な(C2)固形エポキシ樹脂に多く含まれている。このため、ハロゲンの含有量を抑える為には、(C1)液状エポキシ樹脂を多く使用すれば良い。しかし、(C1)液状エポキシ樹脂を多量に用いた場合には、組成物の粘性やチクソ性が低下し、取り扱い上困難となるため、(C2)固形エポキシ樹脂をある程度混合することが好ましい。こうした観点からは、(C1)常温で液状のエポキシ樹脂と、(C2)固形のエポキシ樹脂との比率は、55:45〜75:25が好ましい。
【0028】
(B)熱硬化性樹脂含有フラックス全体を100質量%としたときの(C)熱硬化性樹脂の含有量は、40〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%とすることが更に好ましい。
【0029】
((D)活性剤)
(D)活性剤は、金属表面に存在する酸化物、硫化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩及び炭酸塩を還元して金属を清浄化する成分である。
【0030】
(D)活性剤としては、非ハロゲン化合物が好ましく、アミン類、アミン塩類(エチレンジアミン等のポリアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン等のアミンの有機酸塩)、有機酸類、アミノ酸類、アミド系化合物等が好ましい。具体的には、アジピン酸、セバシン酸、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等が特に好ましい。
【0031】
(B)熱硬化性樹脂含有フラックス全体を100質量%としたときの(D)活性剤の含有量は、0.5〜15質量%であることが好ましく、2〜10質量%とすることが更に好ましい。
【0032】
((E)チクソ剤)
(E)チクソ剤としては、従来から使用されている水添ヒマシ油、脂肪酸アマイド類などが使用できる。
【0033】
(B)熱硬化性樹脂含有フラックス全体を100質量%としたときの(E)チクソ剤の含有量は、(C)+(D)+(E)+(F)の合計量が100質量%となるような残部であるが、例えば0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%とすることが更に好ましい。
【0034】
(F) イミダゾール化合物
イミダゾール化合物とは、イミダゾール環を有する化合物である。イミダゾール化合物としては、以下の式(I)、式(II)、式(III)および式(IV)からなる群より選ばれた一種以上の化合物が特に好ましい。
【0035】
【化1】

【0036】
式(I)において、R1、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシ基、または低級アルコキシ基を表す。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が特に好ましい。
また、低級アルコキシ基の炭素数は、1〜3が特に好ましい。
式(I)において、Rは、炭素数2〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。炭素数2〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基の炭素数は、より好ましくは4〜8である。
【0037】
式(I)に属する代表的な化合物は以下のように例示できる。
5−ブチル−2,4−ジフェニル−1H−イミダゾール、5−ヘキシル−2,4−ジフェニル−1H−イミダゾール、5−エチルヘキシル−2,4−ジフェニル−1H−イミダゾール、5−オクチル−2,4−ジフェニル−1H−イミダゾール、5−ヘキシル−4−フェニル−2−トルイル−1H−イミダゾール、5−ヘキシル−2−フェニル−4−トルイル−1H−イミダゾール、4−(5−ヘキシル−2−フェニルー1H−イミダゾール−4−イル)−フェノール、4−(5−ヘキシル−4−フェニルー1H−イミダゾール−2−イル)−フェノール、5−ヘキシル−4−(4−メトキシ−フェニル)−2−フェニル−1H−イミダゾール
【0038】
【化2】

【0039】
式(II)において、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素、炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシ基、または低級アルコキシ基を表す。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が特に好ましい。
また、低級アルコキシ基の炭素数は、1〜3が特に好ましい。
10は、水素、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基の炭素数は、より好ましくは4〜8である。
【0040】
式(II)に属する代表的な化合物は以下のように例示できる。
5−ブチル−4−ナフタレン−1イル−2−フェニル−1H−イミダゾール、5−ヘキシル−4−ナフタレン−1イル−2−フェニル−1H−イミダゾール、5−エチルヘキシル−4−ナフタレン−1イル−2−フェニル−1H−イミダゾール、5−オクチル−4−ナフタレン−1イル−2−フェニル−1H−イミダゾール、5−ヘキシル−4−(3−メチル−ナフタレン−1−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール、5−ヘキシル−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−ナフタレン−1−イル−1H−イミダゾール、4−ナフタレン−1−イル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−(4−メトキシフェニル)−4−ナフタレン−1−イル−1H−イミダソール
【0041】
【化3】

【0042】
式(III)において、R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立して水素、炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシ基、または低級アルコキシ基を表す。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が特に好ましい。
また、低級アルコキシ基の炭素数は、1〜3が特に好ましい。
15は、水素、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基の炭素数は、より好ましくは4〜8である。
【0043】
式(III)に属する代表的な化合物は以下のように例示できる。
5−ヘキシル−2−ナフタレン−1−イル−4−フェニル−1H−イミダゾール、5−エチル−2−ナフタレン−1−イル−4−フェニル−1H−イミダゾール、4−(4−エチルフェニル)−2−ナフタレン−1−イル−1H−イミダゾール、2−ナフタレン−1−イル−4−フェニル−1H−イミダゾール、4−(4−メトキシフェニル)−2−ナフタレン−1−イル−1H−イミダゾール、4−(4−メトキシフェニル)−2−ナフタレン−1−イル−1H−イミダゾール
【0044】
【化4】

【0045】
式(IV)において、R16は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R17は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。このようなイミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールを例示できる。
【0046】
特に水酸基を有するイミダゾール化合物が、エポキシ樹脂の硬化反応が急激に進むことが無く応力の発生を防止できるので、特に好ましい。
【0047】
また、特に好ましいものは、2,4−ジアミノ−6−[2‘−メチルイミダゾール(1’)]エチル−s−トリアジン(2MZ−A)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシ−メチルイミダゾール(例:四国化成工業 2PHZ:水酸基含有)、2−フェニル−4−メチル5−ヒドロキシ−メチルイミダゾール(例:四国化成工業 2P4MHZ:水酸基含有)、2−メチル−4、5−ジヒドロキシ−メチルイミダゾール(例:四国化成工業 2MHZ:水酸基含有)である。
【0048】
熱硬化性樹脂含有フラックス(B)において、(F)イミダゾール化合物の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%とすることが更に好ましい。
【0049】
(B)熱硬化性樹脂含有フラックスの揮発成分(VOC)含有量は1質量%以下とする。この測定方法は以下のとおりである。熱硬化性樹脂含有フラックスを示差熱天秤(TG/DTA測定装置)により、窒素雰囲気下、室温から300℃まで加熱し、質量の減少から含有量を測定する。
【0050】
(B)熱硬化性樹脂含有フラックスのハロゲン含有量は1000ppm以下とする。この測定方法は以下のとおりである。
熱硬化性樹脂含有フラックスを完全燃焼させ、そのハロゲンを0.1%過酸化水素水溶液に捕集後、イオンクロマトグラフィーにより、ハロゲン含有量を測定する。
【0051】
本発明の熱硬化樹脂含有はんだ接合剤組成物に対して、上記の成分(A)+(B)に加えて、必要に応じて種々の添加剤、例えば消泡剤、レベリング剤等の添加剤などを添加することができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定を受けるものではない。
【0053】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON 860)85質量%、チクソ剤(脂肪酸アマイド)2質量%、活性剤(アジピン酸)5質量%、界面活性剤2質量%、消泡剤1質量%、さらに硬化剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)を5質量%同容器に計量し、らいかい機を用いて混合し、熱硬化性樹脂含有フラックスを得た。その後、熱硬化性樹脂含有フラックス:Sn42Bi58はんだ粉末=20:80の比率に計量し、混練機にて2時間混合することで熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0054】
このペーストを用いて、各種物性評価を行った。実施例の各成分および評価結果を表1に記載した。
【0055】
(実施例2)
実施例1の各成分のうち、表1の実施例2の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1で使用した硬化剤2P4MHZを10質量%混合して使用したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0056】
(実施例3)
実施例1の各成分のうち、表1の実施例3の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1で使用した硬化剤として、2,4ジアミノ−6−[2‘−メチルイミダゾール(1’)]エチル−s−トリアジン(2MZ−A)を5質量%混合して使用したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0057】
(実施例4)
実施例1の各成分のうち、表1の実施例4の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1で使用した硬化剤として、2P4MHZを2.5質量%と、2MZ−Aを2.5質量%混合して使用したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0058】
(実施例5)
実施例1の各成分のうち、表1の実施例5の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1の熱硬化性樹脂含有フラックス:Sn42Bi58はんだ粉末=40:60の比率で混合したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0059】
(実施例6)
実施例1の各成分のうち、表1の実施例6の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1の熱硬化性樹脂含有フラックス:Sn42Bi58はんだ粉末=10:90の比率で混合したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0060】
(実施例7)
実施例1の各成分のうち、表1の実施例8の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1で使用した硬化剤2P4MHZを1.0質量%と2MZ−Aを1.0質量%添加し、熱硬化性樹脂含有フラックス:Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5はんだ粉末=20:80の比率で混合したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、各使用成分を表2の比較例1の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1の硬化剤として、ジシアンジアミドを5質量%混合して使用したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0062】
(比較例2)
実施例1において、各使用成分を表2の比較例2の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1の硬化剤を使用しなかったこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0063】
(比較例3)
実施例1において、各使用成分を表2の比較例3の欄に記載した成分を使用したこと、すなわち実施例1の硬化剤として2P4MHZを15質量%混合して使用したこと以外は同様にして熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤を調製した。
【0064】
(比較例4)
ロジン系樹脂50質量%、チクソ剤8質量%、活性剤(アジピン酸)5質量%、界面活性剤1質量%、さらに有機溶剤(ヘキシルジグリコール)を36質量%同容器に計量した後加熱混合しフラックス成分とした。フラックス:Sn42Bi58はんだ粉末=10:90の比率に計量し、混練機にて2時間混合することではんだペースト接合剤を調製した。
【0065】
(比較例5)
ロジン系樹脂48質量%、チクソ剤9質量%、活性剤(アジピン酸)8質量%、界面活性剤1質量%、さらに有機溶剤(ヘキシルジグリコール)を34質量%同容器に計量した後加熱混合しフラックス成分とした。フラックス:Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5はんだ粉末=10:90の比率に計量し、混練機にて2時間混合することではんだペースト接合剤を調製した。
【0066】
上記実施例、比較例で得られた熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤、はんだペーストについて以下の試験を行った。
【0067】
(1) ローリング試験(連続印刷時における粘度経時変化)
印刷機MK−8789V(南工学社製)、目止め処理メタルマスク、メタルスキージ(角度60°)、スキージ速度30mm/sec、印圧300kPaの条件にて、熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤あるいははんだペーストをローリング処理し、ローリング開始より一定時間ごとに粘度を測定する。
【0068】
(2) 保存安定性
10℃保管後の粘度を測定し、初期値に対する変化率が±20%を超えない日数を測
定した。粘度の測定は、恒温槽中で25℃に調整されたポリ容器中の樹脂を、粘度計
(マルコ社製PCU−205)を用いて測定。
【0069】
(3) ピン間ボール試験
ガラスエポキシ基板上の0.8mmピッチQFPランドに上記熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤あるいははんだペーストを200μmtメタルマスクを用いて印刷し、各種はんだに合わせた図1〜図3に示すリフロー条件にて加熱後、残さ膜中に発生したはんだボールをカウントして、1ピン間(1ランド間)当たりのはんだボール数を算出した。
【0070】
(4) はんだ広がり率 (JIS Z 3197に準ずる)
(5) せん断強度試験
表面に銅箔ランドが形成されたガラスエポキシ基板上に上記熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤あるいははんだペーストを、150μmtのメタルマスクを用いて、メタルスキージで印刷し、Snめっきの1608CRチップを銅箔ランドの印刷膜上に10個載置した。各種はんだに合わせた図1〜図3に示すリフロー条件にて加熱して試験片を作製した。この試験片について、引張り試験機を用いて、チップのせん断強度を測定した。
【0071】
(6) 絶縁抵抗試験(JIS Z 3284に準ずる)
JIS2型基板の銅箔ランド上(導体幅0.318mm、導体間隔0.318mmの銅箔ランドを有するガラスエポキシ樹脂基板上)に、上記熱硬化性樹脂含有はんだ接合剤あるいははんだペーストについて100μmtメタルマスクを用いて印刷し、各種はんだに合わせた図1〜図3に示すリフロー条件にて加熱して試験片を作製した。この試験片を85℃、85%RH(相対湿度)中、50V電圧を印加し、168時間後の銅箔ランド表面間における絶縁抵抗を100V印加にて測定した。
【0072】
(7) エージング試験
85℃、85%RHで1000時間の処理後に、前記(5)のせん断強度試験を行った。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
本発明の実施例では、保存安定性が良く、はんだの広がりが大きく、接合部分の剪断強度、絶縁抵抗が高い鉛フリー、ハロゲンフリー、溶剤フリーのはんだを提供することができた。特に、水酸基含有イミダゾール化合物を使用した実施例1、2、4、5、6、7の特性が優れており、更には水酸基含有イミダゾール化合物と水酸基非含有イミダゾール化合物とを併用した実施例4、7が優れている。
【0076】
比較例1では、硬化剤としてジシアンジアミドを使用しているが、保存安定性が低く、はんだボール数が多く、はんだの広がりが不十分であった。比較例2では、硬化剤を添加していないが、はんだボール数が多く、剪断強度、絶縁抵抗が低い。比較例3では、イミダゾール化合物の添加量がフラックスのうち15質量%と多いが、ローリング試験による粘度変化が早く、はんだボール数が多く、はんだの広がりが若干小さい。
【0077】
比較例4、5では、ロジン系樹脂を使用しており、ハロゲン含有量、溶剤含有量が多く、剪断強度が低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 鉛フリーはんだ粉末60〜90質量%と(B)熱硬化性樹脂含有フラックス40〜10質量%とからなるはんだ接合剤組成物であって、
(B)熱硬化性樹脂含有フラックスが、(C)熱硬化性樹脂、(D)活性剤、(E)チクソ剤および(F)イミダゾール化合物を含有しており、(F)イミダゾール化合物が(B)熱硬化性樹脂含有フラックスの0.1質量%〜10質量%を占めており、(B)熱硬化性樹脂含有フラックスの揮発成分(VOC)含有量が1質量%以下であり、(B)熱硬化性樹脂含有フラックスのハロゲン含有量が1000ppm以下であることを特徴とする、はんだ接合剤組成物。
【請求項2】
前記(A)鉛フリーはんだ粉末が、Sn,Cu,Ag,Bi,Sb,InおよびZnからなる群より選ばれた一種以上の金属を含むことを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記(F)イミダゾール化合物が、1種以上の水酸基含有イミダゾール化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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