説明

はんだ接合方法及びはんだ接合装置

【課題】被接合物及びはんだ表面にカルボン酸を安定して供給することができ、カルボン酸の消費量を抑制することが可能なはんだ接合方法及びはんだ接合装置を提供する。
【解決手段】カルボン酸供給領域3において、リフロー治具10の切り欠き部104に液状のカルボン酸11を滴下することにより、滴下されたカルボン酸11がリードフレーム91の第1の被接合面及び半導体チップ93の第2の被接合面と板はんだ92の各隙間を毛細管現象により移動し、各隙間に行き渡る。リフロー領域4において窒素ガスをパージしながら加熱を行うことにより、気化されたカルボン酸の大部分は凹部103内に留まるため、各被接合面及び板はんだ92表面の酸化膜を除去するのに十分なカルボン酸ガス濃度が保持される。これにより、各被接合面及び板はんだ92表面の酸化膜除去とはんだ接合が確実に行われ、生産性が向上し、カルボン酸の消費量を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールデバイスに代表される半導体装置の製造工程において、電子部品と絶縁基板、あるいは絶縁基板と金属ベース板等をはんだ接合する際のはんだ接合方法及びはんだ接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のはんだ接合装置においては、はんだ溶融の際にフラックスを使用し、被接合物及びはんだ表面の酸化膜を除去し清浄化しながら、はんだ接合を行っていた。電子部品モジュールの実装工程においても、フラックスまたはフラックス含有ペーストを配線基板の表面に塗布した状態で、電子部品モジュールの端子をその配線基板上に実装する工程が一般的である。被接合物及びはんだ表面に塗布されたフラックスは、加熱により該表面を活性化しながら酸化膜を除去すると共に加熱による酸化を防止し、その活性状態を維持する。これと同時にはんだが溶融し、被接合物の表面に拡がる。
【0003】
はんだ溶融温度まで加熱されたフラックスの一部は分解され、はんだが冷却されて凝固すると、被接合物上に残ったフラックスと分解生成物も固化する。はんだ接合後に残った固化したフラックスは、腐食等の原因となるため、フロン、トリクレン等を含む有機溶剤を使用した洗浄により除去する必要があった。
【0004】
また、加熱によりフラックスが分解し有害ガスが発生するため、作業の安全性を確保する必要があった。さらに、残渣フラックスとしてハロゲン成分がモジュール内に残ると、配線の腐食、マイグレーションが助長されるため徹底的な洗浄が要求され、これらは製造コストが高くなる原因となっていた。
【0005】
そこで近年、フラックスを用いずに、蟻酸、酢酸等のカルボン酸を還元剤として付与することにより、被接合物及びはんだ表面の酸化膜を除去し清浄化する方法が開発されている。カルボン酸をはんだ加熱溶融領域(処理室)に導入する方法としては、カルボン酸薬液に窒素ガス等のキャリアガスをバブリングし、キャリアガス内に蒸気として混入させて導入する方法(キャリアガスバブリング法)や、タンク等の容器に入れたカルボン酸を恒温槽で加熱、蒸発させ、その蒸気を導入する方法(タンク内酸蒸気パージ法)が用いられていた。
【0006】
例えば、特許文献1では、減圧雰囲気内で加熱中にカルボン酸(蟻酸)ガスを含む雰囲気ガスを処理室に導入することにより、引火性のあるカルボン酸ガスの雰囲気中濃度を十分に下げ、安全性を向上させる方法が提示されている。また、この特許文献1では、はんだ層を加熱溶融する前に、蟻酸をはんだ層上に供給する方法も提示されている(酸薬液直接投入法)。さらに、特許文献2では、はんだを加熱溶融する処理室内にガス状の蟻酸を供給する蟻酸スプレー装置を備えたはんだ接合装置が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−244283号公報
【特許文献2】特開2002−210555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来のカルボン酸の導入方法には、以下のような課題があった。まず、キ
ャリアガスバブリング法では、キャリアガス内に混入させるカルボン酸の蒸気量が、カルボン酸の液温、蒸発雰囲気圧力、キャリアガス温度等により変動するため、処理室内のカルボン酸濃度が安定しないという問題があった。特に、蒸発気化潜熱によるカルボン酸の液温変動が著しく、これに伴い蒸発量すなわちカルボン酸濃度が大きく変動する。
【0009】
また、タンク内酸蒸気パージ法も同様に、処理室内に均一なカルボン酸濃度を得ることは困難であった。さらに、タンク内のカルボン酸蒸気を処理室に輸送するためのドライビングフォースがなく、単なる圧力差もしくは拡散で導入しているため、カルボン酸蒸気の導入に時間を要し、生産性が低いという問題があった。
【0010】
さらに、酸薬液直接投入法では、薬液が投入された領域で酸濃度が高くなり、処理室内全体にわたって均一なカルボン酸濃度を得ることが困難であった。このため、はんだ接合プロセスが不安定で且つ制御が難しいという問題があった。また、上記のいずれの方法においても、カルボン酸の消費量を抑制することが課題であり、さらに、高温環境下の処理室においてカルボン酸ガスが構成部材の大部分に接触し、構成部材の腐食が進行するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、被接合物及びはんだ表面にカルボン酸を安定して供給することができると共に、カルボン酸の消費量を抑制することが可能なはんだ接合方法を提供し、生産性向上及び生産コストの低減を図ることを目的とする。
【0012】
また、被接合物及びはんだ表面にカルボン酸を安定して供給することができると共に、カルボン酸の消費量を抑制することが可能であり、さらにカルボン酸による処理室内構成部材の腐食を抑制することが可能なはんだ接合装置を提供し、生産性向上及び生産コスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るはんだ接合方法は、ワーク側面に近接して該側面を囲む内壁を有する凹部と、カルボン酸供給部と、カルボン酸供給部に滴下されたカルボン酸を凹部内に導くカルボン酸導入経路が設けられた治具を用意し、はんだ層を介して対向配置された第1の被接合面と第2の被接合面、及びこれら被接合面に略垂直な側面を有するワークに治具を装着する治具装着工程と、治具のカルボン酸供給部に液状のカルボン酸を滴下し、凹部内のワークにカルボン酸を供給するカルボン酸供給工程と、カルボン酸が供給された凹部内のワークを加熱し、カルボン酸を気化させると共にはんだ層を溶融する加熱溶融工程を含み、カルボン酸供給工程において、治具のカルボン酸供給部に滴下されたカルボン酸は、カルボン酸導入経路を通って凹部の内壁とワーク側面の隙間に溜まり、さらに第1及び第2の被接合面とはんだ層の各隙間を毛細管現象により移動し、第1及び第2の被接合面及びはんだ層表面に供給されるものである。
【0014】
また、本発明に係るはんだ接合装置は、はんだ層を介して対向配置された第1の被接合面と第2の被接合面、及びこれら被接合面に略垂直な側面を有するワークに、ワーク側面に近接して該側面を囲む内壁を有する凹部と、カルボン酸供給部と、カルボン酸供給部に滴下されたカルボン酸を凹部内に導くカルボン酸導入経路が設けられた治具を装着する治具装着領域、治具のカルボン酸供給部に液状のカルボン酸を滴下し、凹部内のワークにカルボン酸を供給するカルボン酸供給手段を有するカルボン酸供給領域、カルボン酸供給手段によりカルボン酸が供給された凹部内のワークを加熱し、カルボン酸を気化させると共にはんだ層を溶融する加熱溶融領域、治具装着領域からカルボン酸供給領域を経て加熱溶融領域にワークを搬送する搬送手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るはんだ接合方法によれば、治具のカルボン酸供給部に液状のカルボン酸を滴下し、滴下されたカルボン酸は、カルボン酸導入経路を通って凹部の内壁とワーク側面の隙間に溜まり、さらに毛細管現象により第1及び第2の被接合面とはんだ層の各隙間に行き渡るため、ワークの第1及び第2の被接合面及びはんだ層表面にカルボン酸を安定して供給することができる。さらに、加熱溶融工程において気化されたカルボン酸の大部分は凹部内に留まり、第1及び第2の被接合面及びはんだ層表面の酸化膜を除去するのに十分なカルボン酸ガス濃度が保持され、はんだ接合が確実に行える。その結果、生産性が向上すると共に、カルボン酸の消費量を抑制することができ、生産コスト低減が図られる。
【0016】
また、本発明に係るはんだ接合装置によれば、治具のカルボン酸供給部に液状のカルボン酸を滴下し、凹部内のワークにカルボン酸を供給するカルボン酸供給手段を備えることにより、ワークの第1及び第2の被接合面及びはんだ層表面にカルボン酸を安定して供給することができると共に、カルボン酸の消費量を抑制することができる。また、加熱溶融領域において気化されたカルボン酸の大部分は凹部内に留まり、加熱溶融領域におけるカルボン酸ガスの接触領域が限定されるため、構成部材の腐食を抑制することができる。さらに、真空チャンバや真空装置が不要であるため、従来に比べて装置の低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係るリフロー装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るリフロー装置のカルボン酸供給領域を示す側面図、上面図、及び部分拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るリフロー装置のカルボン酸供給領域を示す部分拡大断面図及び部分拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係るリフロー装置のカルボン酸供給領域を示す側面図及び部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
以下に、本実施の形態1に係るはんだ接合装置及びはんだ接合方法について、図面に基づいて説明する。本実施の形態1に係るはんだ接合装置(以下、本リフロー装置という)は、リフロー領域の前段に、蟻酸、酢酸等の液状のカルボン酸を還元剤として付与するカルボン酸供給領域を設けたことを特徴とする。また、本リフロー装置におけるワークは、被接合物としてリードフレームと半導体チップ、接合媒体として板はんだを備えたものである。ただし、ワークはこれに限定されるものではなく、はんだ層を介して対向配置された第1の被接合面と第2の被接合面、及びこれら被接合面に略垂直な側面を有するものであればよい。
【0019】
本リフロー装置の全体構成について、図1を用いて簡単に説明する。本リフロー装置は、主に6つの処理ゾーン、すなわち治具セット部1、チップ・板はんだマウンタ2、カルボン酸供給領域3、リフロー領域4、冷却領域5、及び治具分離部6から構成されている。
【0020】
治具装着領域である治具セット部1とチップ・板はんだマウンタ2は、ワーク9にリフロー治具を装着する領域である(ワーク9及びリフロー治具については、後に図2を用いて詳細に説明する)。治具セット部1では、第1の被接合面を有するリードフレームにリフロー治具がセットされる。チップ・板はんだマウンタ2では、治具セット部1でリードフレーム上にセットされたリフロー治具の開口部に、はんだ層としての板はんだと、第2の被接合面を有する半導体チップが載置される。チップ・板はんだマウンタ2の搬入口2
1は、トンネル型の処理ゾーンの入口となり、大気中に開放されている。ただし、搬入口21にはトンネル内のガスを排出するガス排気系(図示せず)を備えることが望ましい。
【0021】
カルボン酸供給領域3は、リフロー治具に設けられたカルボン酸供給部に、液状のカルボン酸を滴下することにより、ワーク9にカルボン酸を供給するカルボン酸供給手段を有している。本リフロー装置では、カルボン酸供給手段として、所定量のカルボン酸を任意のタイミングで滴下することが可能なニードル32を有するディスペンサ31を備えている。カルボン酸供給領域3の搬入口33と搬出口34はそれぞれ、ガス排気手段である第1のガス排気系7aと第2のガス排気系7bに接続されている。
【0022】
加熱溶融領域であるリフロー領域4は、カルボン酸が供給されたワーク9を加熱し、カルボン酸を気化させると共に板はんだを溶融するためのホットプレート41を備えている。また、窒素ガス供給系42と窒素ガス整流部43を備えることにより、窒素ガスをパージしながら外気よりも高い圧力下でワーク9を加熱するようにしている。リフロー領域4では、カルボン酸ガスによりワーク9の第1及び第2の被接合面、及び板はんだ表面の酸化膜を除去しながら、はんだ接合を行う。リフロー領域4の搬入口44は、第2のガス排気系7bに接続されている。
【0023】
冷却領域5は、はんだ接合処理を終えたワーク9を徐冷するコールドプレート51を備えている。冷却領域5は、リフロー領域4と同様に、窒素ガス供給系52と窒素ガス整流部53を備え、外気よりも高い圧力に調整されている。リフロー領域4と冷却領域5の間には第3のガス排気系7cが、冷却領域5の後方には第4のガス排気系7dがそれぞれ設けられ、冷却領域5の搬出口54は大気中に開放されている。なお、カルボン酸ガスには刺激臭があるため、第1のガス排気系7a〜第4のガス排気系7dの外側にはさらに排気ガス処理手段(図示せず)を設けることが好ましい。
【0024】
治具分離部6は、ワーク9とリフロー治具を分離する手段(図示せず)を備えている。また、本リフロー装置は、治具装着領域からカルボン酸供給領域3を経てリフロー領域4、さらに冷却領域5及び治具分離部6にワーク9を搬送する搬送手段として、搬送ベルト8を備えている。搬送ベルト8は、処理ゾーン毎に分割されており、各々が周回動作となっている。
【0025】
次に、本リフロー装置のカルボン酸供給領域3について、図2を用いて詳細に説明する。図2(a)は、カルボン酸供給領域の側面図(一部断面図)、図2(b)はリフロー治具の上面図、図2(c)は、図2(a)のA部を示す部分拡大断面図であり、図2(c)において、黒い部分はカルボン酸11を示している。なお、図2中、図1と同一、相当部分には同一符号を付している。
【0026】
図2(a)に示すように、カルボン酸供給領域3に設置されたディスペンサ31は、所定量のカルボン酸を任意のタイミングで滴下することが可能なニードル32を備えている。ディスペンサ31は、ニードル32の位置をカルボン酸供給部に合わせるアライメント機能を有しており、駆動手段(図示せず)により間欠的にカルボン酸が供給されている。
【0027】
リフロー治具10は、リッド板101及びベース板102から構成されている。また、ワーク9は、リードフレーム91、板はんだ92、及び半導体チップ93から構成され、リードフレーム91はリフロー治具10のリッド板101とベース板102により挟まれ固定されている。
【0028】
また、リフロー治具10は、リッド板101の開口部により形成される凹部103を有している。凹部103の底面にはリードフレーム91が露出しており、この凹部103内
に板はんだ92と半導体チップ93を載置することにより、ワーク9が位置決めされる。凹部103の内壁103aは、ワーク9の側面に近接して該側面を囲んでいる。
【0029】
さらに、リフロー治具10は、カルボン酸供給部に滴下されたカルボン酸を凹部103内に導くカルボン酸導入経路を有している。本リフロー治具10では、凹部103の内壁103aに形成された切り欠き部104が、カルボン酸供給部とカルボン酸導入経路を兼ねている。切り欠き部104は、図2(b)に示すように、凹部103の内壁に法面状に加工されている。
【0030】
ディスペンサ31のニードル32は、カルボン酸供給部である切り欠き部104にカルボン酸11を滴下する。滴下されたカルボン酸11は、図2(c)に示すように、切り欠き部104を通って凹部103内に導かれ、凹部103の内壁103aとワーク9側面の隙間に溜まる。さらに、リードフレーム91の第1の被接合面及び半導体チップ93の第2の被接合面と板はんだ92の各隙間を毛細管現象により移動して、第1及び第2の被接合面及び板はんだ表面に供給される。
【0031】
なお、本リフロー装置では、リフロー治具10の凹部103の内壁103aに、カルボン酸供給部とカルボン酸導入経路を兼ねた切り欠き部104を設けたが、カルボン酸供給部とカルボン酸導入経路はこれに限定されるものではない。例えば、カルボン酸供給部を凹部から離れた位置とし、複数のカルボン酸導入経路を介して複数の凹部に連通させてもよい。その際、複数のカルボン酸導入経路の長さを互いに等しく形成することにより、カルボン酸供給量を安定化できる。これにより、ニードル32を交換せずに複数の製品に適用することも可能となり、装置が簡略化され生産効率が上がる。
【0032】
次に、本リフロー装置におけるはんだ接合方法について、図1及び図2を用いて説明する。なお事前に、ワーク9側面に近接して該側面を囲む内壁103aを有する凹部103と、カルボン酸供給部とカルボン酸導入経路を兼ねた切り欠き部104が設けられたリフロー治具10を用意しておく。
【0033】
まず、治具セット部1において、開口部を有するリッド板101及びベース板102からなるリフロー治具10でリードフレーム91を挟む。続いて、チップ・板はんだマウンタ2において、リフロー治具10の開口部に、板はんだ92と半導体チップ93を順次載置する。これにより、板はんだ92を介して対向配置されたリードフレーム91の第1の被接合面と半導体チップ93の第2の被接合面、及びこれら被接合面に略垂直な側面を有するワーク9に、リフロー治具10が装着される(治具装着工程)。
【0034】
続いて、カルボン酸供給領域3において、リフロー治具10に設けられた切り欠き部104に液状のカルボン酸11を滴下し、凹部103内のワーク9にカルボン酸11を供給する。滴下されたカルボン酸11は、切り欠き部104を通って凹部103内に導かれ、凹部103の内壁103aとワーク9側面の隙間に溜まり、さらに、リードフレーム91の第1の被接合面及び半導体チップ93の第2の被接合面と板はんだ92の各隙間を、毛細管現象により移動し、各被接合面及び板はんだ表面に供給される(カルボン酸供給工程)。
【0035】
カルボン酸供給工程においては、カルボン酸11が毛細管現象により前記各隙間に拡がるために必要な量を把握してカルボン酸11の供給量を決定し、過剰に供給しないことが重要である。また、カルボン酸11の蒸発を防ぐため、カルボン酸供給領域3におけるワーク9の温度は、カルボン酸11の沸点以下とする。さらに、カルボン酸11が毛細管現象により前記各隙間に拡がるために必要な時間を確保した後、次の加熱溶融工程を実施しなければならない。なお、搬送ベルト8の速度を調整することにより必要な時間を確保することができる。
【0036】
続いて、リフロー領域4において、カルボン酸11が供給された凹部103内のワーク9をホットプレート41により加熱し、カルボン酸11を気化させると共に、板はんだ92を溶融する。リフロー領域4では、窒素ガス供給系42により窒素ガスをパージしながら凹部103内のワーク9を加熱する。気化されたカルボン酸の大部分は、凹部103内の狭小空間に留まり、各被接合面及び板はんだ92表面の酸化膜を除去するのに十分なカルボン酸ガス濃度が保持される。これにより、各被接合面及び板はんだ92表面の酸化膜が除去され、同時に板はんだ92が溶融されて各被接合面がはんだ接合される(加熱溶融工程)。なお、ワーク9の昇温プロファイルは、ホットプレート41の温度や搬送ベルト8の速度により調整され、はんだ接合が適正に行われるように設定される。
【0037】
続いて冷却領域5に搬送されたワーク9は、搬送ベルト8下部に設けられたコールドプレート51により徐冷される。その後、治具分離部6において、ワーク9すなわち半導体チップ93が接合されたリードフレーム91と、リフロー治具10が分離される。以上で本リフロー装置における処理は終了する。
【0038】
なお、リフロー領域4と冷却領域5は、窒素ガス供給系42、52及び窒素ガス整流部43、53とガス排気系7b、7c、7dの作用により、各領域内に大気(酸素)が混入しないように構成されている。すなわち、リフロー領域4では、窒素ガス供給系42から導入された窒素ガスを、窒素ガス整流部43を通してガス排気系7b、7cから導出し、逆流、乱流が起こらないようにしている。なお、本リフロー装置では窒素ガスをパージしているが、その他の不活性ガスであってもよい。
【0039】
窒素ガス整流部43、53は、例えば格子状の流路を経てガスを導入し、層流を任意の方向に形成する。なお、リフロー領域4内に大気が混入しない構成であれば他の手法でもよく、例えばエアカーテンを用いてもよい。このようにして、リフロー領域4内雰囲気の残存酸素濃度は50ppm以下に管理される。リフロー領域4の酸素濃度をできるだけ低濃度とすることにより、はんだ付け時のボイドや不濡れを防止することができる。
【0040】
また、リフロー領域4内雰囲気の圧力は、カルボン酸供給領域3内雰囲気の圧力よりも高く、且つカルボン酸供給領域3内雰囲気の圧力は、外気圧よりも高くなるように調整される。これにより、カルボン酸ガスの流出防止とリフロー領域4の酸素濃度低減(大気混入防止)を両立することができる。
【0041】
具体的には、リフロー領域4(及び冷却領域5)において窒素ガスをパージしながら、カルボン酸供給領域3の搬入口33に設置された第1のガス排気系7aの排気能力を、カルボン酸供給領域の搬出口34とリフロー領域4の搬入口44の間に設置された第2のガス排気系7bの排気能力よりも高くすることにより、上記のような圧力差が実現できる。
【0042】
なお、本リフロー装置では、各処理ゾーンの間に仕切りを設けているが、外気へのカルボン酸ガスの流出を防止するためには、仕切りをできる限り低位置まで設けることが望ましい。あるいは、仕切りとしてシャッターを用いてもよいが、その場合はシャッター動作による空気の巻き込みを防止する機能を有するものが望ましい。
【0043】
以上のように、本実施の形態1に係るはんだ接合方法によれば、カルボン酸供給領域3において、リフロー治具10の切り欠き部104に液状のカルボン酸11を滴下することにより、滴下されたカルボン酸11がリードフレーム91の第1の被接合面及び半導体チップ93の第2の被接合面と板はんだ92の各隙間を毛細管現象により移動し、各隙間に行き渡るようにしたので、各被接合面及び板はんだ92表面の酸化膜除去とはんだ接合が
確実に行われ、生産性が向上する。
【0044】
また、リフロー領域4において窒素ガスをパージしながら凹部103内のワーク9を加熱することにより、気化されたカルボン酸の大部分は凹部103内の狭小空間に留まるため、各被接合面及び板はんだ92表面の酸化膜を除去するのに十分なカルボン酸ガス濃度が保持され、はんだ接合が確実に行われる。また、従来方法のようにリフロー領域(処理室)の全容積に渡って均一にカルボン酸ガスを供給する必要がないため、カルボン酸の消費量を著しく抑制することができる。さらに、リフロー領域4内の構成部材へのカルボン酸ガスの接触領域が限定されるため、高温環境下での構成部材の腐食耐久性が顕著に向上する。
【0045】
また、従来方法では、カルボン酸ガスを確実に被接合面へ到達させるために、真空引きによるガス置換が必要であったが、本実施の形態1では液状のカルボン酸11を直接ワーク9に供給し、毛細管現象により被接合面全域へ行き渡らせるようにしたので、従来のリフロー装置が備えていた真空チャンバや真空装置が不要である。これにより、装置の低コスト化が図られると共に、従来のようなガスパージのための真空引きやガス供給(サイクルパージ)の必要がなく、生産性が向上する。
【0046】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について、図3を用いて説明する。図3(a)は、本実施の形態2におけるカルボン酸供給領域の部分拡大断面図、図3(b)は、本実施の形態2におけるカルボン酸供給領域で用いられるニードルの先端を示す部分拡大図である。なお、図3中、図1及び図2と同一、相当部分には同一符号を付している。また、本実施の形態2におけるリフロー装置の全体構成は、上記実施の形態1(図1)と同様であるので説明を省略する。
【0047】
本実施の形態2では、図3(a)に示すように、カルボン酸供給手段であるディスペンサのニードル32の先端に突起状のロッド35を設け、リフロー治具10に設けられた切り欠き部104に、液状のカルボン酸11を滴下するようにしたものである。
【0048】
突起状のロッド35は、図3(b)に示すように、ニードル32先端周縁部の一部に設けられている。これにより、カルボン酸11は、ニードル32先端から突起状ロッド35を伝わってスムーズに滴下される。また、リフロー治具10のカルボン酸供給部(切り欠き部104)に対してカルボン酸11を正確に滴下することが容易となる。さらに、ニードル32先端部のカルボン酸11の液残りを防止することができる。
【0049】
本実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、ニードル32の先端に突起状ロッド35を備えることにより、カルボン酸11を正確且つスムーズに滴下することが可能となり、ニードル32先端部の液残りを防止することができるため、生産性がさらに向上し、カルボン酸11の消費量をさらに抑制することができる。
【0050】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3について、図4を用いて説明する。図4(a)は、本実施の形態3におけるカルボン酸供給領域の側面図(一部断面図)、図4(b)は、図4(a)のB部を示す部分拡大断面図である。なお、図4中、図1及び図2と同一、相当部分には同一符号を付している。また、本実施の形態3におけるリフロー装置の全体構成は、上記実施の形態1(図1)と同様であるので説明を省略する。
【0051】
本実施の形態3では、図4(a)に示すように、カルボン酸供給手段であるディスペンサ31にマイクロインジェクタ36を備え、図4(b)に示すように、リフロー治具10
のカルボン酸供給部(切り欠き部104)に対して、液状のカルボン酸11を滴下するようにしたものである。マイクロインジェクタ36は、上記実施の形態1及び実施の形態2で用いたニードル32よりも高速且つ極小範囲にカルボン酸11を吐出することが可能である。
【0052】
本実施の形態3によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、ディスペンサ31にマイクロインジェクタ36を備えることにより、カルボン酸11を正確且つ高速に滴下することが可能となり、生産性がさらに向上する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、半導体装置製造工程において電子部品と絶縁基板、あるいは絶縁基板と金属ベース板等をはんだ接合するためのリフロー装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 治具セット部、2 チップ・板はんだマウンタ、3 カルボン酸供給領域、
4 リフロー領域、5 冷却領域、6 治具分離部、7a 第1のガス排気系、
7b 第2のガス排気系、7c 第3のガス排気系、7d 第4のガス排気系、
8 搬送ベルト、9 ワーク、10 リフロー治具、11 カルボン酸、
21 搬入口、31 ディスペンサ、32 ニードル、33 搬入口、34 搬出口、
35 突起状ロッド、36 マイクロインジェクタ、
41 ホットプレート、42 窒素ガス供給系、43 窒素ガス整流部、44 搬入口、51 コールドプレート、52 窒素ガス供給系、53 窒素ガス整流部、
54 搬出口、91 リードフレーム、92 板はんだ、93 半導体チップ、
101 リッド板、102 ベース板、103 凹部、103a 内壁、
104 切り欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク側面に近接して該側面を囲む内壁を有する凹部と、カルボン酸供給部と、前記カルボン酸供給部に滴下されたカルボン酸を前記凹部内に導くカルボン酸導入経路が設けられた治具を用意し、はんだ層を介して対向配置された第1の被接合面と第2の被接合面、及びこれら被接合面に略垂直な側面を有するワークに前記治具を装着する治具装着工程、前記治具の前記カルボン酸供給部に液状のカルボン酸を滴下し、前記凹部内のワークにカルボン酸を供給するカルボン酸供給工程、
カルボン酸が供給された前記凹部内のワークを加熱し、カルボン酸を気化させると共に前記はんだ層を溶融する加熱溶融工程を含み、
前記カルボン酸供給工程において、前記治具の前記カルボン酸供給部に滴下されたカルボン酸は、前記カルボン酸導入経路を通って前記凹部の前記内壁とワーク側面の隙間に溜まり、さらに前記第1及び第2の被接合面と前記はんだ層の各隙間を毛細管現象により移動し、前記第1及び第2の被接合面及び前記はんだ層表面に供給されることを特徴とするはんだ接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載のはんだ接合方法であって、前記カルボン酸供給工程において、カルボン酸が毛細管現象により前記各隙間に行き渡るために必要な量を把握し、カルボン酸の供給量を決定することを特徴とするはんだ接合方法。
【請求項3】
請求項1に記載のはんだ接合方法であって、前記カルボン酸供給工程において、カルボン酸が毛細管現象により前記各隙間に行き渡るために必要な時間を確保した後、前記加熱溶融工程を実施することを特徴とするはんだ接合方法。
【請求項4】
請求項1に記載のはんだ接合方法であって、前記加熱溶融工程において、窒素ガスをパージしながら前記凹部内の前記ワークを加熱することにより、気化したカルボン酸の大部分が前記凹部内に留まるようにしたことを特徴とするはんだ接合方法。
【請求項5】
はんだ層を介して対向配置された第1の被接合面と第2の被接合面、及びこれら被接合面に略垂直な側面を有するワークに、ワーク側面に近接して該側面を囲む内壁を有する凹部と、カルボン酸供給部と、前記カルボン酸供給部に滴下されたカルボン酸を前記凹部内に導くカルボン酸導入経路が設けられた治具を装着する治具装着領域、
前記治具の前記カルボン酸供給部に液状のカルボン酸を滴下し、前記凹部内のワークにカルボン酸を供給するカルボン酸供給手段を有するカルボン酸供給領域、
前記カルボン酸供給手段によりカルボン酸が供給された前記凹部内のワークを加熱し、カルボン酸を気化させると共に前記はんだ層を溶融する加熱溶融領域、
前記治具装着領域から前記カルボン酸供給領域を経て前記加熱溶融領域にワークを搬送する搬送手段を備えたことを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項6】
請求項5に記載のはんだ接合装置であって、前記カルボン酸供給手段は、所定量のカルボン酸を任意のタイミングで滴下することが可能なディスペンサと、前記ディスペンサの位置を前記カルボン酸供給部に合わせるアライメント機能を備えたことを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項7】
請求項6に記載のはんだ接合装置であって、前記ディスペンサは、その先端に突起状ロッドを有するニードルを備えたことを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項8】
請求項6に記載のはんだ接合装置であって、前記ディスペンサは、マイクロインジェクタを備えたことを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項9】
請求項5に記載のはんだ接合装置であって、前記治具の前記凹部は、その内壁に前記カルボン酸供給部と前記カルボン酸導入経路を兼ねた切り欠き部を有することを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項10】
請求項5に記載のはんだ接合装置であって、前記カルボン酸供給部は、複数の前記カルボン酸導入経路を介して複数の前記凹部に連通していることを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項11】
請求項10に記載のはんだ接合装置であって、複数の前記カルボン酸導入経路は、その長さが互いに等しく形成されていることを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項12】
請求項5に記載のはんだ接合装置であって、前記加熱溶融領域は、窒素ガス供給手段を備えていることを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項13】
請求項12に記載のはんだ接合装置であって、前記加熱溶融領域内雰囲気の圧力は、前記カルボン酸供給領域内雰囲気の圧力よりも高く、前記カルボン酸供給領域内雰囲気の圧力は、外気圧よりも高くなるように調整されることを特徴とするはんだ接合装置。
【請求項14】
請求項12に記載のはんだ接合装置であって、前記カルボン酸供給領域の搬入口に設置された第1のガス排気手段と、前記カルボン酸供給領域の搬出口と前記加熱溶融領域の搬入口の間に設置された第2のガス排気手段を備え、前記第1のガス排気手段の排気能力を、前記第2のガス排気手段の排気能力よりも高くしたことを特徴とするはんだ接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121046(P2012−121046A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273431(P2010−273431)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】