ばね
【課題】上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、選択された用途でのばね定数を低値に適宜調整することができるばねを提供する。
【解決手段】本体部10は、軸線方向断面において、内周部10Aと外周部10Bとの間の中央部が内周部10Aと外周部10Bとを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有する。第1フランジ部11を上方移動させる荷重Pが加わると、本体部10が弾性変形して、本体部10の内周部10Aが上方に移動する。第1フランジ部11を下方移動させる荷重Pが加わると、本体部10が弾性変形して、本体部10の内周部10Aが下方に移動する。ばね1の変形では、上方移動時および下方移動時のいずれのときにも、本体部10の径方向に対して引張が加わる引張モードを示すことができ、この場合、曲げ変形をすることができる。
【解決手段】本体部10は、軸線方向断面において、内周部10Aと外周部10Bとの間の中央部が内周部10Aと外周部10Bとを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有する。第1フランジ部11を上方移動させる荷重Pが加わると、本体部10が弾性変形して、本体部10の内周部10Aが上方に移動する。第1フランジ部11を下方移動させる荷重Pが加わると、本体部10が弾性変形して、本体部10の内周部10Aが下方に移動する。ばね1の変形では、上方移動時および下方移動時のいずれのときにも、本体部10の径方向に対して引張が加わる引張モードを示すことができ、この場合、曲げ変形をすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動伝達の抑制に用いられるばねに係り、特に、高周波帯域での使用に好適なばねの形状の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業や、精密機器産業、家電、建築等の各種分野では、振動伝達を抑制する技術が要求されており、振動伝達の抑制技術では弾性部材が用いられている。たとえば自動車等の車両において路面からの車体への衝撃伝達を抑制する装置であるサスペンション装置では、緩衝器と車体との間に弾性部材が用いられている。
【0003】
具体的には、サスペンション装置は、緩衝器とサスペンションスプリングを備えている。緩衝器は、車体側に連結されるピストン部と、車輪側に連結されるとともにピストン部を摺動自在に案内するシリンダ部を有している。シリンダ部は、サスペンションアーム等を介して車輪側に連結される。ピストン部は、その上端部にロッド有し、ロッドの上端部は、車体側に連結され、ロッドの下端部に弁が固定されている。ピストン部の弁は、シリンダ部内面を摺動し、ロッドは、その周囲に設けられたロッドガイド部のシールを摺動する。ピストン部およびサスペンションスプリングの上端部は、アッパシートを介して車体側に連結される。
【0004】
緩衝器では、高周波帯域や微振幅領域の振動に対して追従できないため、それら振動に対して緩衝機能を実現することができない。たとえば、ロッドガイド部のシールとロッド間にスティックスリップが発生した場合、滑らかな動作を行うことができない。その結果、乗り心地が悪くなる。そこで、乗り心地の悪化防止のために、上記のように緩衝器と車体との間に弾性部材が設けられている。この場合、ピストン部のロッドからの車体上下方向(緩衝器の軸線方向)の振動は、弾性部材に対してせん断応力として作用することから、操縦安定性を確保する必要がある。
【0005】
これにより、弾性部材には、緩衝器の軸線方向において高周波帯域で柔らかいばね特性を示すこと(緩衝器の軸線方向の動的ばね定数が低いこと)、および、緩衝器の軸線方向以外の方向の撓みが抑制されること(剛性が高いこと)が要求されている。
【0006】
従来では、たとえば特許文献1に開示されているように上記弾性部材としてゴム部材が用いられていたが、ゴム部材の場合、動的ばね定数が高く、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めるには限界があったため、上記問題を解決することができない。
【0007】
そこで弾性部材として、動的ばね定数の低い金属ばねを用いることが考えられ、上記特性を満足することができる金属ばねには皿ばねがある(たとえば特許文献2)。皿ばねは、通常、常用荷重として所定荷重が付与された状態から上下方向に荷重が変動するような片振りでの使用形態を前提としている。皿ばねでは、高さHと板厚tとの比(=H/t)を調整することにより、常用荷重時とその上下方向の微小振幅でのばね定数を低く設定することができる。
【0008】
図31は、皿ばね200が第1部材111と第2部材112の間に設置されている状態を表し、(A)は動作前の状態、(B)は第1部材111が皿ばね200の突出方向と同方向に移動した時(上方移動時)の状態、(C)は第1部材111が皿ばね200の突出方向とは逆方向に移動した時(下方移動時)の状態を表す軸線方向断面図である。なお、図31では、皿ばね200の右側部分を表し、皿ばね200の突出方向は、第2部材112からみた方向である。皿ばね200は、略円錐形状をなすとともに孔部210Aを有する本体部210を備え、本体部210の内周部および外周部にはフランジ部211,212が形成されている。内周部側のフランジ部211は内周部の内側に向けて突出し、外周部側のフランジ部212は外周部の外側に向けて突出している。フランジ部211,212は、第1部材111と第2部材112に完全に固定されている。第1部材111と第2部材112の形状は、フランジ部211,212の形状に対応している。
【0009】
たとえば、図31(A)に示す皿ばね200の一例(従来例)を用い、H/tを7に設定して荷重を負荷した場合、図32に示す特性が得られる。この場合、板厚tを0.6mm、外径φを131.4mm、内径φを28.8mm、外周部のフランジ部212の外径φを161.4mm、内周部211のフランジ部の内径φを13mmに設定している。なお、本願では、荷重たわみ特性は、有限要素法(FEM)により得ている。また、本願では、内側は径方向中心側方向を示し、外側は径方向中心側方向とは反対の方向を示している。本願では、内径および外径等の径寸法は板厚中心での寸法とし、荷重値を示すグラフの全てにおいて、皿ばねに負荷する荷重Pを絶対値で示している。本願では、上方移動時のたわみ量の符号は正、下方移動時のたわみ量の符号は負で示している。図32に示すように、1200N±50Nの荷重範囲で用いる場合、500N/mm以下という低ばね定数で荷重を支えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許2662164号
【特許文献2】特公昭62−30924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
緩衝器に皿ばね200を設ける場合、車体による荷重はサスペンションスプリングで受けられるから、皿ばね200の初期状態は無荷重の状態である。この状態で上下方向に高荷重が加えられるから、皿ばね200は、両振りでの使用形態となる。両振りでの使用形態では、皿ばね200にフランジ部211,212を設けることは必須となる。
【0012】
皿ばね200では、図31(B)に示すように、第1部材111の上方移動に伴って第1フランジ部11が上方移動した時、図の矢印で示すように、本体部210は径方向に引張が加わる引張モードとなる。これに対して、図31(C)に示すように、第1部材111の下方移動に伴って第1フランジ部211が下方移動した時、図の矢印で示すように、本体部210は径方向に圧縮が加わる圧縮モードとなる。
【0013】
図33は、上記従来例においてH/tを変更して得られた特性を表すグラフである。なお、この場合、H/t以外のサイズおよび相手部材は変更していない。図33に示すように、H/tを小さく設定することにより、圧縮モードでのばね定数を低く設定することができるが、上方移動時の引張モードでのばね定数は、H/tを調整しても、下方移動時の圧縮モードでのばね定数と同程度に低く設定することができず、圧縮モードでのばね定数とは顕著に異なる。そのため、皿ばね200は、上方移動用のばねとして使用することができない。
【0014】
また、下方移動時の圧縮モードでの荷重たわみ線図では、H/tを大きく設定した場合、所定のたわみ量以上で荷重Pの絶対値の変化が単調増加から減少へと移行する。この場合、荷重たわみ線図での荷重の絶対値のピークよりも大きい荷重Pを負荷した後に荷重Pを除いても、本体部210は、元の形状に戻ることができず、変形状態のままとなる。そのため、皿ばね200は、下方移動用のばねとして使用する場合、ばね定数を低値に設定することができるが、荷重に応じてH/tを選択することが制限されるため、ばね定数を適宜調整することができない。一方、荷重Pの絶対値の変化が減少へ転じないように最大荷重を制限することによってH/tを適宜調整することが可能であるが、この場合、低ばね定数となるのは高荷重領域に限られる。
【0015】
したがって、本発明は、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができるのはもちろんのこと、上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、選択された用途でのばね定数を低値に適宜調整することができるばねを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のばねは、内周部および外周部を有するとともに弾性変形可能な本体部と、本体部の内周部および外周部に設けられ、内周部および外周部のそれぞれの相手部材に固定されるフランジ部とを備え、本体部は、軸線方向断面において、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のばねでは、両振りの荷重をばねに負荷した場合、たとえば一方のフランジ部は相手部材の移動に従って上方あるいは下方に移動する。ここで本発明のばねでは、本体部が、軸線方向断面において、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有する。
【0018】
したがって、一方のフランジ部が上方に移動したとき(上方移動時)、上記形状をなす本体部が適宜弾性変形することにより、本体部における一方のフランジ部側の周部(内周部あるいは外周部)が、一方のフランジ部の上方移動に応じて上方に移動することができる。このようなばねの変形は、本体部では径方向に引張が加わる引張モードである。また、一方のフランジ部が下方に移動したとき(下方移動時)、上記形状をなす本体部が適宜弾性変形することにより、一方のフランジ部の下方移動に応じて下方に移動することができる。このようなばねの変形では、本体部では径方向に引張が加わる引張モードである。
【0019】
このように両振りの荷重を加えた場合、一方のフランジ部が上方に移動した時および下方に移動した時のいずれの時も、ばねは、引張モードという同様な変形モードを示すことができる。したがって、下方移動時には圧縮モードが生じないから、皿ばねの下方移動時とは異なり、荷重に応じてH/tを選択することができ、ばね定数の調整が可能となる。
【0020】
ここで本発明のばねでは、上記のように曲線状の凸状をなす本体部は、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線状に沿って形成されている皿ばねとは異なり、上方移動時および下方移動時の引張モードにおいて曲げ変形をすることができる。したがって、上方移動時および下方移動時のいずれも弾性変形しやすくなり、ばね定数を低く設定することができる。この場合、ばね定数は、荷重方向や荷重の大きさに依存せずに略一定に設定することができる。さらに、同一荷重時における応力は、皿ばねの場合と同等あるいはそれ以下に設定することができるので、皿ばねの場合と同等あるいはそれ以上の疲労耐久性を有することができる。このように上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、選択された用途でのばね定数を低値に適宜調整することができる。また、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができる。
【0021】
本発明のばねは種々の構成を用いることができる。たとえば内周部および外周部に筒状部が設けられ、筒状部は、本体部の凸状の突出方向とは逆方向に突出し、フランジ部は、筒状部を介して内周部および外周部に設けられている態様を用いることができる。
【0022】
上記態様では、本体部が内周部側および外周部側の筒状部を介して内周部側および外周部側の相手部材のそれぞれに固定することができるから、内周部側および外周部側の少なくとも一方の筒状部の高さを適宜設定することにより、相手部材への取付位置を調整することができる。また、一方のフランジ部が上方あるいは下方に移動した場合、本体部が弾性変形することができるのはもちろんのこと、本体部と筒状部との境界部および筒状部が弾性変形することができるから、ばね定数をさらに低く設定することができる。
【0023】
本体部は種々の曲線形状を有することができる。この場合、ばねの用途に応じて最適形状を設定することができる。なお、本願では、本体部の形状の記載について、本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において内終端から外終端に向かう方向に設定し、軸線方向断面における本体部の形状の勾配を本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合を用いている。
【0024】
たとえば本体部の内周部側の相手部材の移動方向が本体部の形状の凸状の突出方向とは逆方向に移動(上方移動)するためのばねとして本発明のばねを用いるとき、軸線方向断面における本体部の形状の勾配は内周端から外周端に向かって単調増加し、本体部の内周端の形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部の外周端の形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部の形状の勾配が0になる箇所は、内周端と外周端との中心位置よりも内周端側に位置する態様を用いることができる。この態様では、半径方向の曲げモーメントを均一とすることにより、半径方向の曲げ応力の均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、図30に示すように、上方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0025】
たとえば本体部の内周部側の相手部材の移動方向が本体部の形状の凸状の突出方向に移動(下方移動)するためのばねとして本発明のばねを用いるとき、軸線方向断面における本体部の形状の勾配は、内周端から外周端に向かって減少し、内周端と外周端との中心位置よりも内周端側で増加に転じ、本体部の内周端の形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部の外周端の形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部の形状の勾配が0になる箇所は、中心位置よりも外周端側に位置する態様を用いることができる。この態様では,円周方向の曲げモーメントを均一とすることにより、円周方向の曲げ応力の均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、図30に示すように、下方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0026】
たとえばばねを上方移動用および下方移動用の両用として用いるとき、軸線方向断面における本体部の形状の勾配は内周端から外周端に向かって単調増加し、本体部の内周部の形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部の外周部の形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部の形状の勾配が0になる箇所は、内周端と外周端との中心位置よりも外周端側に位置する態様を用いることができる。この態様では,各部位において半径方向および円周方向の曲げモーメントの絶対値のうちの大きい方の曲げモーメントを均一とすることにより、最大主応力の均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、図30に示すように、上方移動時および下方移動時のいずれの時もばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0027】
また、内周端と外周端との軸線方向の位置が同じである態様を用いることができる。この態様では、上方移動時あるいは下方移動時のたわみ量が大きくなった時でも、ばね定数を低く設定することができる。さらに、たとえば本体部の形状としては、円弧形状や楕円形状を用いることができる。さらに、本体部は、曲線形状の一部に直線形状が形成されていてもよい。本体部は複数の直線形状を有することができ、この場合、隣接する直線形状の境界部を湾曲形状とし、全体として略曲線形状をなすようにしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のばねによれば、上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、選択された用途でのばね定数を低値に適宜調整することができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るばねの構成を表し、(A)は上面図、(B)はばねの軸線方向断面図である。
【図2】図1に示すばねの右側部分の動作状態を表し、(A)はばねの上方移動時の状態、(B)はばねの下方移動時の状態を表す軸線方向断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るばねの一例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図4】図3に示すばねの一例(第1本発明例)において高さHと板厚tの比(=H/t)を変更して得られた荷重たわみ線図である。
【図5】第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図6】第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の軸線垂直方向のたわみ量に対する荷重、および、ばね定数の線図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るばねの好適例(第2本発明例)の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図8】図7に示すばねの好適例(第2本発明例)および第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の荷重たわみ線図である。
【図9】第2本発明例おいてH/tを6.3に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図10】第1本発明例おいてH/tを5.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るばねの本体部の好適形状を得るために用いる円板モデルを表し、(A)は斜視図、(B)は概略側面図である。
【図12】図11に示す円板モデルから得られた軸線方向断面における上面側の応力分布の一例を表すグラフである。
【図13】図11に示す円板モデルから得られた軸線方向断面における下面側の応力分布の一例を表すグラフである。
【図14】図12,13のグラフから得られた円板の上面側および下面側での最大主応力のうちの大きい方の最大主応力を示したグラフである。
【図15】図14のグラフに基づき得られた軸線方向断面における曲げモーメント分布の一例を表すグラフである。
【図16】本実施形態に係る上方移動用ばねの本体部の形状の好適例(第3本発明例)を説明するための図である。
【図17】第3本発明例の本体部の形状の好適例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図18】第3本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図19】第2筒状部を有しない第3本発明例において下方に1500Nの荷重を負荷したときの最大主応力と等しい最大主応力に設定したときの第1本発明例のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図20】第3本発明例の変形例(図16の変形例)を説明するための図である。
【図21】第3本発明例の変形例のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図22】本実施形態に係る下方移動用ばねの本体部の形状の好適例(第4本発明例)を説明するための図である。
【図23】第4本発明例の本体部の形状の好適例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図24】第4本発明例の本体部の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図25】第4本発明例においてH/tを9に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図26】本実施形態に係る上方移動用および下方移動用の両用ばねの本体部の形状の好適例(第5本発明例)を説明するための図である。
【図27】第5本発明例の本体部の形状の好適例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図28】第5本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図29】本発明の一実施形態に係るばねの適用例であるサスペンション装置の概略構成を表す軸線方向断面図である。
【図30】本発明に係る上方移動用ばね、下方移動用ばね、および、上方移動用および下方移動用の両用ばねの荷重たわみ線図の一例を表すグラフである。
【図31】皿ばねの右側部分の動作状態を表し、(A)は動作前の状態、(B)はばねの上方移動時の状態、(C)はばねの下方移動時の状態を表す軸線方向断面図である。
【図32】図31に示す皿ばねの一例(従来例)においてH/tを7に設定した場合のたわみ量に対する荷重およびばね定数の線図である。
【図33】従来例においてH/tを変更して得られた荷重たわみ線図である。
【図34】従来例においてH/tを1.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(1)実施形態の構成
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、ばね1の構成を表し、(A)はばね1の上面図、(B)は、ばね1の軸線方向断面図である。図2は、図1に示すばね1における軸線中心よりも右側部分の動作状態を表し、(A)はばね1の上方移動時の状態、(B)はばね1の下方移動時の状態を表す軸線方向断面図である。図2の破線部は、動作前のばね1の形状を示している。
【0031】
ばね1は、ばね鋼や強化材プラスチックからなる。ばね1は、たとえば図1(A)に示すように内周部10Aおよび外周部10Bを有する本体部10を備え、内周部10Aおよび外周部10Bは円形状をなしている。本体部10の内周部10Aおよび外周部10Bの形状は、円形状に限定されるものではなく、たとえば楕円形状でもよい。この場合、本体部10の外周部の形状が長手方向に延在する板状をなす場合とは異なり、省スペース化を図ることができる。本体部10、下記フランジ部11,12、および、下記筒状部13,14にスリットを形成してもよい。この態様では、軽量化を図ることができる。
【0032】
本体部10は、たとえば第1部材111と第2部材112からの押圧力の方向に対して交差する方向に延在している。本体部10は、弾性変形可能なばね部である。本体部10は、たとえば図1(B)に示すように軸線方向断面において、内周部10Aと外周部10Bとの間の中央部が内周部10Aと外周部10Bとを結ぶ直線Sに対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有する。たとえば図1,2に示す形態では、凸状の突出方向は下側方向である。本体部10は、軸線方向断面において、たとえば円弧状や楕円状をなすことができる。
【0033】
本体部10の内周部10Aは、たとえば径方向の内側に向かって突出する第1フランジ部11を有している。本体部10の外周部10Bは、たとえば径方向の外側に向かって突出する第2フランジ部12を有している。たとえば本体部10の内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が同じである。第1フランジ部11は、ねじ手段等を用いることにより第1部材111に固定され、第2フランジ部12は、ねじ手段等を用いることにより第2部材112に固定されている。第1フランジ部11の内周部には、たとえばねじ手段を設けるための孔部11Aが形成されている。なお、ねじ手段以外の手段(たとえば溶接)を用いる場合、孔部11Aは設けなくてもよい。フランジ部11,12の突出方向および形状は、図1に示されるものに限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、相手部材や干渉物等に応じて適宜設定することができる。
【0034】
ばね1は、プレス成形により各部位を折り曲げて形成することができる。また、各部位を溶接して形成することができる。
【0035】
(2)実施形態の動作
ばね1の動作について、図面を参照して説明する。ばね1の本体部10は、図1に示すように軸線方向断面において、内周部10Aと外周部10Bとの間の中央部が内周部10Aと外周部10Bとを結ぶ直線Sに対して突出する凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有するから、ばね1は、上方移動時および下方移動時、次のような変形モードを示す。
【0036】
たとえば図2(A)に示すように第1フランジ部11を上方移動させるような荷重Pが加わると、上記形状をなす本体部10が適宜弾性変形することにより、本体部10の内周部10Aは、第1フランジ部11の上方移動に伴って、本体部10の外周部10Bに対して上方に移動することができる。このようなばね1の変形は、図の矢印で示すように、本体部10では径方向に引張が加わる引張モードである。
【0037】
一方、図2(B)に示すように第1フランジ部11を下方移動させるような荷重Pが加わると、上記形状をなす本体部10が適宜弾性変形することにより、本体部10の内周部10Aは、第1フランジ部11の下方移動に伴って、本体部10の外周部10Bに対して下方に移動することができる。このようなばね1の変形は、図の矢印で示すように、本体部10では径方向に引張が加わる引張モードである。
【0038】
このように両振りの荷重を加えた場合、第1フランジ部11の上方移動時および下方移動時のいずれの時も、ばね1は引張モードという同様な変形モードを示すことができる。また、上記のように曲線状の凸状をなす本体部10は、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線に沿って形成されている皿ばねとは異なり、上方移動時および下方移動時の引張モードにおいて曲げ変形をすることができる。このようなばね1は、たとえば次のような特性を得ることができる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態に係るばね1の一例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。図3に示すばね1の一例では、本体部10が軸線方向断面において一定の曲率を有する円弧形状をなしている。円弧形状の高さHは、内周端10Aと外周端10Bとを結ぶ直線の中心位置から円弧までの距離である。図4は、図3に示すばね1の一例(第1本発明例)において高さHと板厚tの比(=H/t)を変更して得られた荷重たわみ線図である。なお、第1本発明例および第2本発明例について、本体部およびフランジ部の内外径、板厚、ならびに、相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0040】
第1本発明例は、図4に示すように、H/tを変更することにより、ばね定数を変化させることができる。また、この場合、上方移動時と下方移動時とでは、皿ばねとは異なり、荷重の絶対値とたわみ量との関係がともに略線形特性を示す。
【0041】
図5は、第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。図34は、従来例においてH/tを1.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。なお、この場合、第1本発明例のばねと従来例との本体部およびフランジ部の内外径、板厚、ならびに、相手部材は上記のように同じである。
【0042】
従来例では、図33に示すように、圧縮側の荷重特性は、H/tが約1.5を超えた場合、所定のたわみ量以上で荷重Pの絶対値の変化が単調増加から減少へと移行する。この場合、荷重Pの絶対値のピークよりも大きい荷重Pを負荷した後に荷重を除いても、本体部210は変形した状態のままであって、元の形状に戻らない。このため、従来例では、高荷重を負荷することができ、かつばね定数を低く設定することができるH/tの上限値は、約1.5である。この場合、従来では、図34に示すように、ばね定数を500N/mm以下に設定できるのは、下方移動側250N〜下方移動側100N程度の荷重範囲のみであり、それ以外の範囲ではばね定数が高い。
【0043】
これに対して、第1本発明例では、図5に示すように、ばね定数は、荷重方向および荷重の大きさに依存せずに略一定となり、いかなる荷重においても、ばね定数を500N/mm程度の低いばね定数に設定することができる。この場合、第1本発明例では、高荷重を負荷することができ、かつばね定数を低く設定することができるH/tが約1.5に限定されていた皿ばね200とは異なり、H/tの範囲を広く設定することができる。さらに、同一荷重時における最大主応力は従来例のものよりも低く、疲労耐久性は、従来例のものよりも同等あるいはそれ以上となる。
【0044】
図6は、第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の軸線垂直方向のたわみ量に対する荷重およびばね定数の線図である。図5,6から判るように、第1本発明例では、軸線垂直方向のばね定数は、軸線方向のばね定数の40倍以上の高い値に設定することができる。したがって、第1本発明例では、ゴム部材とは異なり、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができる。
【0045】
以上のように本実施形態では、たとえば高荷重の両振りでの使用形態において、高さHと板厚tとの比(=H/t)を調整することにより、ばね定数を低く設定することができる。特に、本体部10の内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が同じであるから、上方移動時あるいは下方移動時のたわみ量が大きくなった時でも、ばね定数を低く設定することができる。また、ゴム部材とは異なり、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができる。
【0046】
(3)実施形態の好適例
(3−1)筒状部を設ける例
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば図7に示すように、本体部10の内周部10Aおよび外周部10Bに第1筒状部13および第2筒状部14を設けることができる。この場合、筒状部13,14は、本体部10の凸状の突出方向とは逆方向(図7では上側方向)に突出することができる。たとえば第1フランジ部11は、第1筒状部13を介して本体部10の内周部10Aに設けることができる。たとえば第2フランジ部12は、第2筒状部14を介して本体部10の外周部10Bに設けることができる。たとえば筒状部13,14は、その高さGが同一に設定された円筒部である。この場合、たとえば本体部10の内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が同じであるから、フランジ部11,12の本体側端部11C,12D(筒状部13,14の上端同士)の高さ方向の位置が等しく設定されている。
【0047】
上記態様では、本体部10が内周部側および外周部側の筒状部13,14を介して内周部側および外周部側の相手部材のそれぞれに固定することができるから、内周部側および外周部側の少なくとも一方の筒状部の高さを適宜設定することにより、相手部材への取付位置を調整することができる。また、上記態様は、次のような特性を得ることができる。
【0048】
図8は、図7に示すばねの変形例(第2本発明例)および第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の荷重たわみ線図である。第2本発明例は、第1本発明例と同じ内外径および板厚を有し、H/tも上記値と同じに設定されている。
【0049】
図8から判るように、筒状部を有する第2本発明例は、筒状部を有しない第1本発明例よりも荷重Pの絶対値が低く、ばね定数が低い。 なお、筒状部を有する第2本発明例について、筒状部の上端部が本体部からの離間距離が長くなると、筒状部のうち本体部から離間している部分はほとんど変形しないから、筒状部の高さHを高くしても効果はほぼ変化しない。たとえば高さHが10mmの場合と高さHが10mmの場合と高さHが20mmの場合との荷重たわみ特性は略同等となる。
【0050】
図9は、第2本発明例おいてH/tを6.3に設定した場合の荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。図5、9から判るように、筒状部を有する第2本発明例は、筒状部を有しなくて、かつH/t(=6.3)が同じである第1本発明例と比較すると、ばね定数は低くなる。しかしながら、この場合、第2本発明例は、荷重値に対応する最大主応力が高く、疲労耐久性が異なるため、両者の性能を比較することができない。
【0051】
図10は、第1本発明例おいてH/tを5.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。筒状部を有しない第1本発明例のH/tを5.5に設定し、荷重値に対応する最大主応力を第2本発明例のものと同じに設定すると、図9,10から判るように、筒状部を有する第2本発明例は、筒状部を有しない第1本発明例よりもばね定数を低くすることができる。このように筒状部を有する第2本発明例では、疲労耐久性が同等の第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。
【0052】
(3−2)本体部の好適形状
(A)本体部の好適形状の取得手法例
(A−1)勾配の決定手法
本実施形態では、本体部10の形状を適宜設定することにより上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、この場合、高さHと板厚tとの比(=H/t)を調整することにより、ばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0053】
たとえば本体部10の曲線形状の最適形状は、たとえば軸対称曲げを受ける円板モデルを用いて取得した曲げモーメント分布を利用することにより決定することができる。具体的には、円板モデルを用いて半径方向の位置rに対する曲げモーメントの分布M(r)を取得し、その分布を打ち消すような形状を選択する。この場合、本体部の形状を軸対称形状に設定して、中心軸からの半径方向の位置rに応じて高さhを設定することにより本体部の形状を表現する場合、その勾配dh/drの絶対値|dh/dr|が曲げモーメントMの絶対値|M|に比例するように高さh(r)を得る。このように得られた高さh(r)を利用することにより、本体部10の形状を得ることができる。
【0054】
曲げモーメントは、図11(A),11(B)に示すように円板300(内径Din、外径Dout)を用いることにより得ることができる。円板300では、内径Dinより内側部分300Aは剛体とし、内側部分300Aの中心位置(円板300の中心位置(軸中心位置))に荷重Pとしてせん断荷重を加える。円板300は、内周部および外周部にフランジ部(図示略)を有し、内周部側のフランジ部への荷重負荷を再現するための条件に近似する支持条件を用い、その支持条件では、円板300の外周部が変位しないように完全固定され、円板300の内周部では、そこにせん断力を加える方向以外は完全固定される。このような円板300に、その中心位置に原点を有する極座標系(r、θ、z) を設定する。円板300は荷重Pの負荷により曲げられ、その内部に応力が生じる。以下のように曲げモーメントの各成分を求めることにより、曲げ応力の各成分を得る。
【0055】
弾性学の円板曲げ理論および2次元弾性論を用いることにより円板300でのたわみ角φは、数1の数式で表される。円板300の支持条件を数1の式に代入した数3,4の数式から立てた連立方程式を解くことにより、C1,C2は数5,6の数式で表される。
【0056】
【数1】
なお、rは円板300の原点からの距離、Pは荷重値、Dは、円板の曲げ剛性であって数2の数式で表される。
【0057】
【数2】
なお、Eはヤング率、νはポアソン比である。
【0058】
【数3】
【0059】
【数4】
【0060】
【数5】
【0061】
【数6】
【0062】
2次元弾性論を用いることにより、数7の数式で表される半径方向の曲げモーメントMrおよび数8の数式で表される円周方向の曲げモーメントMθが得られる。数7,8の数式のなかのdφ/drは、数1の数式を微分することによって数9の数式で与えられる。上方移動用のばねの形状を決定するために必要な半径方向の曲げモーメント分布は、数7の数式により得られる。下方移動用のばねの形状を決定するために必要な円周方向の曲げモーメント分布は、数8の数式により得られる。勾配は、その大きさがそのような分布を有する曲げモーメントの大きさに比例するように決定される。なお、曲げモーメントは荷重P、円板の曲げ剛性の逆数1/Dに比例することから、勾配の分布は、荷重Pおよび板厚tによらず、内径Dinおよび外径Doutにより決定される。
【0063】
【数7】
【0064】
【数8】
【0065】
【数9】
【0066】
上方移動用および下方移動用の両用のばねの形状を決定するために必要な最大主応力σmaxの考えに基づくモーメントの分布の算出について説明する。数7の数式で表される半径方向の曲げモーメントMrおよび数8の数式で表される円周方向の曲げモーメントMθを用いると、円板300の上面側および下面側の応力成分σr(上面)、σθ(上面)、σr(下面)、σθ(下面)は、数10〜13の数式で与えられる。応力成分σrは半径方向の曲げモーメントMrに比例し、応力成分σθは円周方向の曲げモーメントMθに比例していることが判る。
【0067】
【数10】
なお、Aは板厚tによって決定されるパラメータ(=6/t2)である。
【0068】
【数11】
なお、Aは、数10の数式と同じパラメータである。
【0069】
【数12】
【0070】
【数13】
【0071】
上記のように円板300にせん断荷重を加えた場合、軸線方向断面での任意の最大主応力σmaxは、数14の数式で表され、疲労強度パラメータとして用いられる。応力成分τrθは軸対称問題のために0であるから、最大主応力σmaxは数15の数式で表される。
【0072】
【数14】
【0073】
【数15】
【0074】
任意の半径rにて半径方向の曲げモーメントMrおよび円周方向の曲げモーメントMθのうちの大きい方の曲げモーメントをMmaxとした場合、Mmaxは数16の数式で表される。Mmaxを用いることにより、最大主応力σmaxは数17の数式で表される。この場合、円板300の上面側と下面側では最大主応力σmaxが異なる。たとえば、荷重Pが正のとき、上面側の最大主応力σmaxは図12に示す分布を有し、下面側の最大主応力σmaxは図13に示す分布を有する。
【0075】
【数16】
【0076】
【数17】
なお、Aは、数10の数式と同じパラメータである。
【0077】
上面側および下面側の最大主応力σmaxのうちの大きい方の最大主応力σmax’は数18の数式で表される。σmax’は、図12,13に示すグラフから図14に示すように得られる。σmax’に対応する曲げモーメント分布Mmax’は、数19の数式に示すように半径方向および円周方向の曲げモーメントの絶対値のうちの大きい方のモーメントを採用することにより得られる。Mmax’は、図15に示すように得られる。曲げモーメント分布Mmax’に着目し、勾配は、その大きさが上記分布を有する曲げモーメントMmax’の絶対値に比例するように決定される。なお、曲げモーメント分布Mmax’は|Mr|および|Mθ|で表現されることから、勾配の分布は、MrおよびMθと同様、荷重Pおよび板厚tによらず、内径Dinおよび外径Doutにより決定される。
【0078】
【数18】
【0079】
【数19】
【0080】
(A−2)高さの決定手法
ばねの本体部の形状はたとえば下方に向けて凸状に設定されているから、勾配の正負が本体部の内終端から外終端へ向かう途中で1回変化するように符号が決定される。この場合、勾配が0となる位置で正負が変化すると、曲線は連続的に変化するから、勾配の正負は、上方移動用のばねあるいは下方移動用のばねとして用いる場合には、数20の数式を満たす位置r(=r’)で変化させ、上方移動用および下方移動用の両用のばねとして用いる場合には、勾配は常に0より大きいから、勾配の大きさが最も小さな位置となる数21の数式を満たす位置r(=r’)で変化させる。
【0081】
【数20】
なお、Mは、上方移動用のばねの場合にはMr、下方移動用のばねの場合にはMθである。
【0082】
【数21】
【0083】
以上のように曲げモーメントM(上方移動用のばねの場合にはMr、下方移動用のばねの場合にはMθ、上方移動用および下方移動用の両用のばねの場合にはMmax’)に基づき勾配を求めて本体部の形状を得る場合、勾配とモーメントの関係は数22の数式で表される。一方、高さ位置hは、勾配を積分することにより得られ、数23の数式で表される。数22および数23の数式から高さ位置hが得られ、高さ位置hは、数24の数式で示すように、任意の軸線方向断面上の位置rで表される。本体部の形状の設計時、比例定数αを調整することにより、h(r)を調整することができる(すなわち、高さHを調整することができる)。したがって、 H/tを適宜調整することができるから、ばねの仕様に応じてばね定数を調整することができる。なお、本体部の好適形状の取得で用いられる高さHは、たとえば本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、h(r)のうちの最小値hminの絶対値|hmin|であり、hminは、数25の数式で表される。
【0084】
【数22】
なお、αは、0より大きな任意の比例定数である。
【0085】
【数23】
【0086】
【数24】
【0087】
【数25】
【0088】
なお、本体部の形状を得るために、曲げモーメント分布Mmax’の代わりにその変形例であるモーメント分布Mmax”を用いてもよい。Mmax’は常に0より大きいため、r=r’のときのMmax’は、rの全域において与えられる。そこで、数26の数式で表されるモーメントMmax”について説明する。Mmax”はr=r’となる位置の勾配が0となるから、モーメント分布Mmax”のモーメントの大きさに勾配の大きさを比例させることにより本体部を得、その本体部では、その曲線形状が連続的に変化する。
【0089】
【数26】
【0090】
(B)本体部の好適形状例
本体部の好適形状例について、たとえば本体部およびフランジ部の内外径、板厚、ならびに、相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである場合、軸対称曲げを受ける円板モデルを用いて得られる曲げモーメントM(上方移動用のばねの場合にはMr、下方移動用のばねの場合にはMθ、上方移動用および下方移動用の両用のばねの場合にはMmax’)の分布は、図15に示すように得られる。勾配の大きさが、図15に示す分布を有する曲げモーメントMの大きさに比例するように作成した曲線を利用することにより、本体部10の曲線形状の最適形状を得ることができる。
【0091】
上方移動用のばね、下方移動用のばね、および、上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いる場合の本体部の好適形状例について説明する。なお、本願では、符号Cは、本体部10の内周端10Aと外周端10Bとの中心位置を示し、符号Qは、本体部10の形状の勾配の正負が変化する箇所を示し、符号Lは、本体部10の形状の内周端10Aの勾配のデータを示し、符号Mは、本体部の形状の外周端10Bの勾配のデータを示している。なお、以下の本体部の好適形状例では、たとえば本体部10の外周部10Bに第2筒状部14を設けることにより、本体部10の内周端10A(第1フランジ部11の本体側端部11C)と第2フランジ部12の本体側端部12Dの高さ方向の位置を等しく設定している。
【0092】
(B―1)上方移動用のばねを用いる場合
図16は、得られた本体部10の形状の好適例(第3本発明例)を示すグラフである。図16は、勾配の大きさが、図15に示す分布を有する半径方向の曲げモーメントMrの大きさの大きさに比例するように勾配分布を決めたときの高さ分布である。図16に示す例では、H/tを6.3に設定し、H/t以外のサイズおよび相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0093】
本体部10の軸線方向断面の形状について、たとえば図16,17に示すように本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、軸線方向断面における本体部10の形状の勾配は内周端10Aから外周端10Bに向かって単調増加し、本体部10の内周端10Aの形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部10の外周端10Bの形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部10の形状の勾配の正負が変化する位置Qは中心位置Cよりも内周端10A側に位置する。なお、このような本体部10の特徴は、板厚、外径、内径を変更しても同様である。
【0094】
第3本発明例では、半径方向の曲げモーメントMrを均一とすることにより、応力成分σrの均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、上方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0095】
図18は、第3本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。第3本発明例では、図18に示すようにたとえば引張方向の荷重Pが1500Nのときのたわみ量は4.2mmであり、0〜1500Nの範囲での平均ばね定数に換算すると約360N/mmである。第1本発明例では、図4に示すようにH/tを調整しても、たわみ量を大きく設定することができないため、ばね定数は高いが、第3本発明例では上記のようにばね定数を低く設定することができる。
【0096】
図19は、第1本発明例のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。この場合、第1本発明例において荷重値に対応する最大主応力を、筒状部を有しない第3本発明例(図18に示す例)のものと同じに設定している。本体部10が円弧形状をなす第1本発明例では、図19に示すようにたとえば下方移動するように1500Nの荷重を負荷したときのたわみ量は3.1mmであり、下方移動における0〜1500Nの範囲での平均ばね定数に換算すると約480N/mmである。したがって、第3本発明例は、第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。このように第3本発明例では、疲労耐久性が同等の第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。
【0097】
(B―2)下方移動用のばねを用いる場合
図22は、得られた本体部10の形状の好適例(第4本発明例)を示すグラフである。図22は、勾配の大きさが図15に示す分布を有する円周方向の曲げモーメントMθの大きさに比例するように勾配分布を決めたときの高さ分布である。図22に示す例では、H/tを6.3に設定し、H/t以外のサイズおよび相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0098】
本体部10の軸線方向断面の形状について、たとえば図22,23に示すように本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、軸線方向断面における本体部10の形状の勾配は、内周端10Aから外周端10Bに向かって減少し、中心位置Cよりも内周端10A側で増加に転じ、本体部10の内周端10Aの形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部10の外周端10Bの形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部10の形状の勾配の正負が変化する位置Qは、中心位置Cよりも外周端10B側に位置する。なお、このような本体部10の特徴は、板厚、外径、内径を変更しても同様である。
【0099】
第3本発明例では、円周方向の曲げモーメントMθを均一とすることにより、応力成分σθの均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、下方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0100】
図24は、第4本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。第4本発明例では、図24に示すようにたとえば下方移動時の荷重Pが1000Nのときのたわみ量は―5mmであり、下方移動における0〜1000Nの範囲での平均ばね定数に換算すると約200N/mmである。第1本発明例では、図4に示すようにH/tを調整しても、たわみ量を大きく設定することができないため、ばね定数が高いが、第4本発明例では上記のようにばね定数を低く設定することができる。
【0101】
図25は、第4本発明例においてH/tを9に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。第4本発明例では、図25に示すようにたとえば圧縮方向の荷重Pが1500Nのときのたわみ量は、―4.81mmである。本体部10が円弧形状をなす第1本発明例では、図19に示すようにたとえば圧縮方向の荷重Pが1500Nのときのたわみ量は―3.5mmであり、最大主応力は高くなっている。したがって、第4本発明例は、第1本発明例よりも、最大主応力が低くて、かつ平均ばね定数を低く設定することができる。このように第4本発明例では、疲労耐久性が同等の第1本発明例よりも下方移動時のばね定数を低く設定することができる。
【0102】
(B―3)上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いる場合
図26は、得られた本体部10の形状の好適例(第5本発明例)を示すグラフである。図26は、勾配の大きさが、図15に示す分布において半径方向の曲げモーメントの大きさ|Mr|および円周方向の曲げモーメントの大きさ|Mθ|のうちの大きい方の値であるモーメントMmax’に比例するように勾配分布を決めたときの高さ分布である。図26に示す例では、H/tを6.3に設定し、H/t以外のサイズおよび相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0103】
本体部10の軸線方向断面の形状について,たとえば図26,27に示すように本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、軸線方向断面における本体部10の形状の勾配は内周端10Aから外周端10Bに向かって単調増加し、本体部10の内周端10Aの形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部10の外周端10Bの形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部10の形状の勾配が0になる位置Qは、中心位置Cよりも外周端10B側に位置する。なお、このような本体部10の特徴は、板厚、外径、内径を変更しても同様である。
【0104】
第5本発明例では、半径方向の曲げモーメントの大きさ|Mr|および円周方向の曲げモーメントの大きさ|Mθ|のうちの大きい方の値であるモーメントMmax’を均一とすることにより、最大主応力σmaxの均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、上方移動時および下方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0105】
図28は、第5本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。第5本発明例では、図28に示すようにたとえば上方移動時の荷重Pが1500Nのとき、図19に示すように、本体部10が円弧形状をなす第1本発明例と同一の最大主応力とたわみ量を示す。第5本発明例は、図28に示すようにたとえば下方移動時の荷重Pが1500Nのとき、図19に示す第1本発明例よりも最大主応力が低くて、かつ平均ばね定数を低く設定することができる。このように第5本発明例では、上方移動時および下方移動時のいずれの時も、疲労耐久性が同等あるいはそれ以下の第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。
【0106】
なお、本体部の好適形状の設定では、勾配と曲げモーメントの関係を示す数22の数式の比例定数αを、軸線方向断面の径方向の位置毎に変更してもよい。たとえば上記実施形態では、上方移動用のばね、下方移動用のばね、および、上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いる場合の本体部10の好適形状例について、本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定したとき、いずれの例でも、本体部10の内周端10Aは、外周端10Bよりも上方に位置するが、たとえば内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が等しくなるように、径方向の所定位置を境にして比例定数αを変更して調整してもよい。
【0107】
比例定数αを一定にしている図18,24,28に示す第3本発明例、第4本発明例、および、第5本発明例のたわみ量に対するばね定数の線図では、いずれの例でも、上方移動時のたわみ量が増すに従い、ばね定数が高くなる。このように本体部10の内周端10Aが外周端10Bよりも上方に位置する形状では、軸線方向断面の本体部10の外周端10B近傍の略円弧形状の長さが短いため、図2(A)で示す上方移動時にたわみ量が大きくなると、本体部10が変形しにくくなる虞がある。そのため、上方移動時のたわみ量が大きくなるに従って、ばね定数も高くなる虞がある。
【0108】
そこでたとえば図20に示す第3本発明例の変形例では、半径方向の曲げモーメントMrに対する勾配の比例定数が、勾配の正負の変化位置Qよりも内周側と外周側とにおいて異なるように設定することにより、内周端10Aと外周端10Bの高さを等しく設定することができる。図21は、第3本発明例の変形例(図16の変形例、第6本発明例)のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。図18,21から判るように、第6本発明例では、第3本発明例よりも上方移動のたわみ量が大きいときのばね定数を低くすることができる。このように第6本発明例では、内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置を等しく設定することにより、上方移動時のたわみ量が大きくなった時でも、ばね定数を低くすることができる。
【0109】
(4)実施形態の適用例
ばね1は、たとえば図29に示すサスペンション装置50に適用することができる。サスペンション装置50は、たとえば緩衝器60、サスペンションスプリング70、および、ばね1を備えている。ばね1は、たとえばサスペンション装置50のアッパシートとしての機能を兼ねている。
【0110】
緩衝器60は、ピストン部61およびシリンダ部62を備えている。ピストン部61の下端部の弁(図示略)がシリンダ部62内面を摺動する。ピストン部61のロッドは、その周囲に設けられたロッドガイド部(図示略)のシールを摺動する。シリンダ部62の外周部には、サスペンションスプリング70の車輪側端部を受けるフランジ部63が形成されている。シリンダ部62には、作動油等が封入され、作動油等が摺動時の弁を通過して抵抗が発生することにより緩衝機能が実現される。サスペンションスプリング70は、フランジ部63とばね1との間に設けられ、たとえばコイルスプリングである。
【0111】
ばね1では、第1フランジ部11が、孔部11Aに設けられたねじ手段等の固定部材71により固定されるとともに、第2フランジ部12が、ねじ手段等の固定部材72により車体120に固定される。ばね1としては、要求される特性に応じて、上方移動用、下方移動用、あるいは、上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いることができる。
【0112】
車両の車輪側からの荷重が緩衝器60を通じて車体に入力される場合、その荷重が高周波帯域や微振幅領域の振動である時、緩衝器60がそのような振動に対して追従できない虞がある。この場合、軸線方向のばね定数が低く設定されているばね1が、図2(A),(B)に示すように変形することにより、高周波帯域や微振幅領域の振動を吸収することができる。したがって、緩衝器60でスティックスリップが発生した場合でも、ばね1は荷重変動を抑制することができるから、乗り心地が良好となる。
【0113】
また、ばね1では、本体部10が皿ばね部として機能するから、緩衝器60の軸線方向以外の方向の剛性を高くすることができる。したがって、緩衝器60の軸線方向の振動がばね1に対してせん断応力として作用した場合でも、ばね1は軸線方向以外の方向に撓まない。その結果、操縦安定性を確保することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…ばね、10…本体部、10A…内周部,内周端、10B…外周部,外周端、11…第1フランジ部(フランジ部)、12…第2フランジ部(フランジ部)、13…第1筒状部(筒状部)、14…第2筒状部(筒状部)、111…第1部材(相手部材)、112…第2部材(相手部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動伝達の抑制に用いられるばねに係り、特に、高周波帯域での使用に好適なばねの形状の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業や、精密機器産業、家電、建築等の各種分野では、振動伝達を抑制する技術が要求されており、振動伝達の抑制技術では弾性部材が用いられている。たとえば自動車等の車両において路面からの車体への衝撃伝達を抑制する装置であるサスペンション装置では、緩衝器と車体との間に弾性部材が用いられている。
【0003】
具体的には、サスペンション装置は、緩衝器とサスペンションスプリングを備えている。緩衝器は、車体側に連結されるピストン部と、車輪側に連結されるとともにピストン部を摺動自在に案内するシリンダ部を有している。シリンダ部は、サスペンションアーム等を介して車輪側に連結される。ピストン部は、その上端部にロッド有し、ロッドの上端部は、車体側に連結され、ロッドの下端部に弁が固定されている。ピストン部の弁は、シリンダ部内面を摺動し、ロッドは、その周囲に設けられたロッドガイド部のシールを摺動する。ピストン部およびサスペンションスプリングの上端部は、アッパシートを介して車体側に連結される。
【0004】
緩衝器では、高周波帯域や微振幅領域の振動に対して追従できないため、それら振動に対して緩衝機能を実現することができない。たとえば、ロッドガイド部のシールとロッド間にスティックスリップが発生した場合、滑らかな動作を行うことができない。その結果、乗り心地が悪くなる。そこで、乗り心地の悪化防止のために、上記のように緩衝器と車体との間に弾性部材が設けられている。この場合、ピストン部のロッドからの車体上下方向(緩衝器の軸線方向)の振動は、弾性部材に対してせん断応力として作用することから、操縦安定性を確保する必要がある。
【0005】
これにより、弾性部材には、緩衝器の軸線方向において高周波帯域で柔らかいばね特性を示すこと(緩衝器の軸線方向の動的ばね定数が低いこと)、および、緩衝器の軸線方向以外の方向の撓みが抑制されること(剛性が高いこと)が要求されている。
【0006】
従来では、たとえば特許文献1に開示されているように上記弾性部材としてゴム部材が用いられていたが、ゴム部材の場合、動的ばね定数が高く、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めるには限界があったため、上記問題を解決することができない。
【0007】
そこで弾性部材として、動的ばね定数の低い金属ばねを用いることが考えられ、上記特性を満足することができる金属ばねには皿ばねがある(たとえば特許文献2)。皿ばねは、通常、常用荷重として所定荷重が付与された状態から上下方向に荷重が変動するような片振りでの使用形態を前提としている。皿ばねでは、高さHと板厚tとの比(=H/t)を調整することにより、常用荷重時とその上下方向の微小振幅でのばね定数を低く設定することができる。
【0008】
図31は、皿ばね200が第1部材111と第2部材112の間に設置されている状態を表し、(A)は動作前の状態、(B)は第1部材111が皿ばね200の突出方向と同方向に移動した時(上方移動時)の状態、(C)は第1部材111が皿ばね200の突出方向とは逆方向に移動した時(下方移動時)の状態を表す軸線方向断面図である。なお、図31では、皿ばね200の右側部分を表し、皿ばね200の突出方向は、第2部材112からみた方向である。皿ばね200は、略円錐形状をなすとともに孔部210Aを有する本体部210を備え、本体部210の内周部および外周部にはフランジ部211,212が形成されている。内周部側のフランジ部211は内周部の内側に向けて突出し、外周部側のフランジ部212は外周部の外側に向けて突出している。フランジ部211,212は、第1部材111と第2部材112に完全に固定されている。第1部材111と第2部材112の形状は、フランジ部211,212の形状に対応している。
【0009】
たとえば、図31(A)に示す皿ばね200の一例(従来例)を用い、H/tを7に設定して荷重を負荷した場合、図32に示す特性が得られる。この場合、板厚tを0.6mm、外径φを131.4mm、内径φを28.8mm、外周部のフランジ部212の外径φを161.4mm、内周部211のフランジ部の内径φを13mmに設定している。なお、本願では、荷重たわみ特性は、有限要素法(FEM)により得ている。また、本願では、内側は径方向中心側方向を示し、外側は径方向中心側方向とは反対の方向を示している。本願では、内径および外径等の径寸法は板厚中心での寸法とし、荷重値を示すグラフの全てにおいて、皿ばねに負荷する荷重Pを絶対値で示している。本願では、上方移動時のたわみ量の符号は正、下方移動時のたわみ量の符号は負で示している。図32に示すように、1200N±50Nの荷重範囲で用いる場合、500N/mm以下という低ばね定数で荷重を支えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許2662164号
【特許文献2】特公昭62−30924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
緩衝器に皿ばね200を設ける場合、車体による荷重はサスペンションスプリングで受けられるから、皿ばね200の初期状態は無荷重の状態である。この状態で上下方向に高荷重が加えられるから、皿ばね200は、両振りでの使用形態となる。両振りでの使用形態では、皿ばね200にフランジ部211,212を設けることは必須となる。
【0012】
皿ばね200では、図31(B)に示すように、第1部材111の上方移動に伴って第1フランジ部11が上方移動した時、図の矢印で示すように、本体部210は径方向に引張が加わる引張モードとなる。これに対して、図31(C)に示すように、第1部材111の下方移動に伴って第1フランジ部211が下方移動した時、図の矢印で示すように、本体部210は径方向に圧縮が加わる圧縮モードとなる。
【0013】
図33は、上記従来例においてH/tを変更して得られた特性を表すグラフである。なお、この場合、H/t以外のサイズおよび相手部材は変更していない。図33に示すように、H/tを小さく設定することにより、圧縮モードでのばね定数を低く設定することができるが、上方移動時の引張モードでのばね定数は、H/tを調整しても、下方移動時の圧縮モードでのばね定数と同程度に低く設定することができず、圧縮モードでのばね定数とは顕著に異なる。そのため、皿ばね200は、上方移動用のばねとして使用することができない。
【0014】
また、下方移動時の圧縮モードでの荷重たわみ線図では、H/tを大きく設定した場合、所定のたわみ量以上で荷重Pの絶対値の変化が単調増加から減少へと移行する。この場合、荷重たわみ線図での荷重の絶対値のピークよりも大きい荷重Pを負荷した後に荷重Pを除いても、本体部210は、元の形状に戻ることができず、変形状態のままとなる。そのため、皿ばね200は、下方移動用のばねとして使用する場合、ばね定数を低値に設定することができるが、荷重に応じてH/tを選択することが制限されるため、ばね定数を適宜調整することができない。一方、荷重Pの絶対値の変化が減少へ転じないように最大荷重を制限することによってH/tを適宜調整することが可能であるが、この場合、低ばね定数となるのは高荷重領域に限られる。
【0015】
したがって、本発明は、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができるのはもちろんのこと、上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、選択された用途でのばね定数を低値に適宜調整することができるばねを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のばねは、内周部および外周部を有するとともに弾性変形可能な本体部と、本体部の内周部および外周部に設けられ、内周部および外周部のそれぞれの相手部材に固定されるフランジ部とを備え、本体部は、軸線方向断面において、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のばねでは、両振りの荷重をばねに負荷した場合、たとえば一方のフランジ部は相手部材の移動に従って上方あるいは下方に移動する。ここで本発明のばねでは、本体部が、軸線方向断面において、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有する。
【0018】
したがって、一方のフランジ部が上方に移動したとき(上方移動時)、上記形状をなす本体部が適宜弾性変形することにより、本体部における一方のフランジ部側の周部(内周部あるいは外周部)が、一方のフランジ部の上方移動に応じて上方に移動することができる。このようなばねの変形は、本体部では径方向に引張が加わる引張モードである。また、一方のフランジ部が下方に移動したとき(下方移動時)、上記形状をなす本体部が適宜弾性変形することにより、一方のフランジ部の下方移動に応じて下方に移動することができる。このようなばねの変形では、本体部では径方向に引張が加わる引張モードである。
【0019】
このように両振りの荷重を加えた場合、一方のフランジ部が上方に移動した時および下方に移動した時のいずれの時も、ばねは、引張モードという同様な変形モードを示すことができる。したがって、下方移動時には圧縮モードが生じないから、皿ばねの下方移動時とは異なり、荷重に応じてH/tを選択することができ、ばね定数の調整が可能となる。
【0020】
ここで本発明のばねでは、上記のように曲線状の凸状をなす本体部は、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線状に沿って形成されている皿ばねとは異なり、上方移動時および下方移動時の引張モードにおいて曲げ変形をすることができる。したがって、上方移動時および下方移動時のいずれも弾性変形しやすくなり、ばね定数を低く設定することができる。この場合、ばね定数は、荷重方向や荷重の大きさに依存せずに略一定に設定することができる。さらに、同一荷重時における応力は、皿ばねの場合と同等あるいはそれ以下に設定することができるので、皿ばねの場合と同等あるいはそれ以上の疲労耐久性を有することができる。このように上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、選択された用途でのばね定数を低値に適宜調整することができる。また、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができる。
【0021】
本発明のばねは種々の構成を用いることができる。たとえば内周部および外周部に筒状部が設けられ、筒状部は、本体部の凸状の突出方向とは逆方向に突出し、フランジ部は、筒状部を介して内周部および外周部に設けられている態様を用いることができる。
【0022】
上記態様では、本体部が内周部側および外周部側の筒状部を介して内周部側および外周部側の相手部材のそれぞれに固定することができるから、内周部側および外周部側の少なくとも一方の筒状部の高さを適宜設定することにより、相手部材への取付位置を調整することができる。また、一方のフランジ部が上方あるいは下方に移動した場合、本体部が弾性変形することができるのはもちろんのこと、本体部と筒状部との境界部および筒状部が弾性変形することができるから、ばね定数をさらに低く設定することができる。
【0023】
本体部は種々の曲線形状を有することができる。この場合、ばねの用途に応じて最適形状を設定することができる。なお、本願では、本体部の形状の記載について、本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において内終端から外終端に向かう方向に設定し、軸線方向断面における本体部の形状の勾配を本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合を用いている。
【0024】
たとえば本体部の内周部側の相手部材の移動方向が本体部の形状の凸状の突出方向とは逆方向に移動(上方移動)するためのばねとして本発明のばねを用いるとき、軸線方向断面における本体部の形状の勾配は内周端から外周端に向かって単調増加し、本体部の内周端の形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部の外周端の形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部の形状の勾配が0になる箇所は、内周端と外周端との中心位置よりも内周端側に位置する態様を用いることができる。この態様では、半径方向の曲げモーメントを均一とすることにより、半径方向の曲げ応力の均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、図30に示すように、上方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0025】
たとえば本体部の内周部側の相手部材の移動方向が本体部の形状の凸状の突出方向に移動(下方移動)するためのばねとして本発明のばねを用いるとき、軸線方向断面における本体部の形状の勾配は、内周端から外周端に向かって減少し、内周端と外周端との中心位置よりも内周端側で増加に転じ、本体部の内周端の形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部の外周端の形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部の形状の勾配が0になる箇所は、中心位置よりも外周端側に位置する態様を用いることができる。この態様では,円周方向の曲げモーメントを均一とすることにより、円周方向の曲げ応力の均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、図30に示すように、下方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0026】
たとえばばねを上方移動用および下方移動用の両用として用いるとき、軸線方向断面における本体部の形状の勾配は内周端から外周端に向かって単調増加し、本体部の内周部の形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部の外周部の形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部の形状の勾配が0になる箇所は、内周端と外周端との中心位置よりも外周端側に位置する態様を用いることができる。この態様では,各部位において半径方向および円周方向の曲げモーメントの絶対値のうちの大きい方の曲げモーメントを均一とすることにより、最大主応力の均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、図30に示すように、上方移動時および下方移動時のいずれの時もばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0027】
また、内周端と外周端との軸線方向の位置が同じである態様を用いることができる。この態様では、上方移動時あるいは下方移動時のたわみ量が大きくなった時でも、ばね定数を低く設定することができる。さらに、たとえば本体部の形状としては、円弧形状や楕円形状を用いることができる。さらに、本体部は、曲線形状の一部に直線形状が形成されていてもよい。本体部は複数の直線形状を有することができ、この場合、隣接する直線形状の境界部を湾曲形状とし、全体として略曲線形状をなすようにしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のばねによれば、上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、選択された用途でのばね定数を低値に適宜調整することができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るばねの構成を表し、(A)は上面図、(B)はばねの軸線方向断面図である。
【図2】図1に示すばねの右側部分の動作状態を表し、(A)はばねの上方移動時の状態、(B)はばねの下方移動時の状態を表す軸線方向断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るばねの一例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図4】図3に示すばねの一例(第1本発明例)において高さHと板厚tの比(=H/t)を変更して得られた荷重たわみ線図である。
【図5】第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図6】第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の軸線垂直方向のたわみ量に対する荷重、および、ばね定数の線図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るばねの好適例(第2本発明例)の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図8】図7に示すばねの好適例(第2本発明例)および第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の荷重たわみ線図である。
【図9】第2本発明例おいてH/tを6.3に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図10】第1本発明例おいてH/tを5.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るばねの本体部の好適形状を得るために用いる円板モデルを表し、(A)は斜視図、(B)は概略側面図である。
【図12】図11に示す円板モデルから得られた軸線方向断面における上面側の応力分布の一例を表すグラフである。
【図13】図11に示す円板モデルから得られた軸線方向断面における下面側の応力分布の一例を表すグラフである。
【図14】図12,13のグラフから得られた円板の上面側および下面側での最大主応力のうちの大きい方の最大主応力を示したグラフである。
【図15】図14のグラフに基づき得られた軸線方向断面における曲げモーメント分布の一例を表すグラフである。
【図16】本実施形態に係る上方移動用ばねの本体部の形状の好適例(第3本発明例)を説明するための図である。
【図17】第3本発明例の本体部の形状の好適例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図18】第3本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図19】第2筒状部を有しない第3本発明例において下方に1500Nの荷重を負荷したときの最大主応力と等しい最大主応力に設定したときの第1本発明例のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図20】第3本発明例の変形例(図16の変形例)を説明するための図である。
【図21】第3本発明例の変形例のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図22】本実施形態に係る下方移動用ばねの本体部の形状の好適例(第4本発明例)を説明するための図である。
【図23】第4本発明例の本体部の形状の好適例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図24】第4本発明例の本体部の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図25】第4本発明例においてH/tを9に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。
【図26】本実施形態に係る上方移動用および下方移動用の両用ばねの本体部の形状の好適例(第5本発明例)を説明するための図である。
【図27】第5本発明例の本体部の形状の好適例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。
【図28】第5本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【図29】本発明の一実施形態に係るばねの適用例であるサスペンション装置の概略構成を表す軸線方向断面図である。
【図30】本発明に係る上方移動用ばね、下方移動用ばね、および、上方移動用および下方移動用の両用ばねの荷重たわみ線図の一例を表すグラフである。
【図31】皿ばねの右側部分の動作状態を表し、(A)は動作前の状態、(B)はばねの上方移動時の状態、(C)はばねの下方移動時の状態を表す軸線方向断面図である。
【図32】図31に示す皿ばねの一例(従来例)においてH/tを7に設定した場合のたわみ量に対する荷重およびばね定数の線図である。
【図33】従来例においてH/tを変更して得られた荷重たわみ線図である。
【図34】従来例においてH/tを1.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(1)実施形態の構成
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、ばね1の構成を表し、(A)はばね1の上面図、(B)は、ばね1の軸線方向断面図である。図2は、図1に示すばね1における軸線中心よりも右側部分の動作状態を表し、(A)はばね1の上方移動時の状態、(B)はばね1の下方移動時の状態を表す軸線方向断面図である。図2の破線部は、動作前のばね1の形状を示している。
【0031】
ばね1は、ばね鋼や強化材プラスチックからなる。ばね1は、たとえば図1(A)に示すように内周部10Aおよび外周部10Bを有する本体部10を備え、内周部10Aおよび外周部10Bは円形状をなしている。本体部10の内周部10Aおよび外周部10Bの形状は、円形状に限定されるものではなく、たとえば楕円形状でもよい。この場合、本体部10の外周部の形状が長手方向に延在する板状をなす場合とは異なり、省スペース化を図ることができる。本体部10、下記フランジ部11,12、および、下記筒状部13,14にスリットを形成してもよい。この態様では、軽量化を図ることができる。
【0032】
本体部10は、たとえば第1部材111と第2部材112からの押圧力の方向に対して交差する方向に延在している。本体部10は、弾性変形可能なばね部である。本体部10は、たとえば図1(B)に示すように軸線方向断面において、内周部10Aと外周部10Bとの間の中央部が内周部10Aと外周部10Bとを結ぶ直線Sに対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有する。たとえば図1,2に示す形態では、凸状の突出方向は下側方向である。本体部10は、軸線方向断面において、たとえば円弧状や楕円状をなすことができる。
【0033】
本体部10の内周部10Aは、たとえば径方向の内側に向かって突出する第1フランジ部11を有している。本体部10の外周部10Bは、たとえば径方向の外側に向かって突出する第2フランジ部12を有している。たとえば本体部10の内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が同じである。第1フランジ部11は、ねじ手段等を用いることにより第1部材111に固定され、第2フランジ部12は、ねじ手段等を用いることにより第2部材112に固定されている。第1フランジ部11の内周部には、たとえばねじ手段を設けるための孔部11Aが形成されている。なお、ねじ手段以外の手段(たとえば溶接)を用いる場合、孔部11Aは設けなくてもよい。フランジ部11,12の突出方向および形状は、図1に示されるものに限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、相手部材や干渉物等に応じて適宜設定することができる。
【0034】
ばね1は、プレス成形により各部位を折り曲げて形成することができる。また、各部位を溶接して形成することができる。
【0035】
(2)実施形態の動作
ばね1の動作について、図面を参照して説明する。ばね1の本体部10は、図1に示すように軸線方向断面において、内周部10Aと外周部10Bとの間の中央部が内周部10Aと外周部10Bとを結ぶ直線Sに対して突出する凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有するから、ばね1は、上方移動時および下方移動時、次のような変形モードを示す。
【0036】
たとえば図2(A)に示すように第1フランジ部11を上方移動させるような荷重Pが加わると、上記形状をなす本体部10が適宜弾性変形することにより、本体部10の内周部10Aは、第1フランジ部11の上方移動に伴って、本体部10の外周部10Bに対して上方に移動することができる。このようなばね1の変形は、図の矢印で示すように、本体部10では径方向に引張が加わる引張モードである。
【0037】
一方、図2(B)に示すように第1フランジ部11を下方移動させるような荷重Pが加わると、上記形状をなす本体部10が適宜弾性変形することにより、本体部10の内周部10Aは、第1フランジ部11の下方移動に伴って、本体部10の外周部10Bに対して下方に移動することができる。このようなばね1の変形は、図の矢印で示すように、本体部10では径方向に引張が加わる引張モードである。
【0038】
このように両振りの荷重を加えた場合、第1フランジ部11の上方移動時および下方移動時のいずれの時も、ばね1は引張モードという同様な変形モードを示すことができる。また、上記のように曲線状の凸状をなす本体部10は、内周部と外周部との間の中央部が内周部と外周部とを結ぶ直線に沿って形成されている皿ばねとは異なり、上方移動時および下方移動時の引張モードにおいて曲げ変形をすることができる。このようなばね1は、たとえば次のような特性を得ることができる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態に係るばね1の一例の右側部分の構成を表す軸線方向断面図である。図3に示すばね1の一例では、本体部10が軸線方向断面において一定の曲率を有する円弧形状をなしている。円弧形状の高さHは、内周端10Aと外周端10Bとを結ぶ直線の中心位置から円弧までの距離である。図4は、図3に示すばね1の一例(第1本発明例)において高さHと板厚tの比(=H/t)を変更して得られた荷重たわみ線図である。なお、第1本発明例および第2本発明例について、本体部およびフランジ部の内外径、板厚、ならびに、相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0040】
第1本発明例は、図4に示すように、H/tを変更することにより、ばね定数を変化させることができる。また、この場合、上方移動時と下方移動時とでは、皿ばねとは異なり、荷重の絶対値とたわみ量との関係がともに略線形特性を示す。
【0041】
図5は、第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。図34は、従来例においてH/tを1.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。なお、この場合、第1本発明例のばねと従来例との本体部およびフランジ部の内外径、板厚、ならびに、相手部材は上記のように同じである。
【0042】
従来例では、図33に示すように、圧縮側の荷重特性は、H/tが約1.5を超えた場合、所定のたわみ量以上で荷重Pの絶対値の変化が単調増加から減少へと移行する。この場合、荷重Pの絶対値のピークよりも大きい荷重Pを負荷した後に荷重を除いても、本体部210は変形した状態のままであって、元の形状に戻らない。このため、従来例では、高荷重を負荷することができ、かつばね定数を低く設定することができるH/tの上限値は、約1.5である。この場合、従来では、図34に示すように、ばね定数を500N/mm以下に設定できるのは、下方移動側250N〜下方移動側100N程度の荷重範囲のみであり、それ以外の範囲ではばね定数が高い。
【0043】
これに対して、第1本発明例では、図5に示すように、ばね定数は、荷重方向および荷重の大きさに依存せずに略一定となり、いかなる荷重においても、ばね定数を500N/mm程度の低いばね定数に設定することができる。この場合、第1本発明例では、高荷重を負荷することができ、かつばね定数を低く設定することができるH/tが約1.5に限定されていた皿ばね200とは異なり、H/tの範囲を広く設定することができる。さらに、同一荷重時における最大主応力は従来例のものよりも低く、疲労耐久性は、従来例のものよりも同等あるいはそれ以上となる。
【0044】
図6は、第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の軸線垂直方向のたわみ量に対する荷重およびばね定数の線図である。図5,6から判るように、第1本発明例では、軸線垂直方向のばね定数は、軸線方向のばね定数の40倍以上の高い値に設定することができる。したがって、第1本発明例では、ゴム部材とは異なり、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができる。
【0045】
以上のように本実施形態では、たとえば高荷重の両振りでの使用形態において、高さHと板厚tとの比(=H/t)を調整することにより、ばね定数を低く設定することができる。特に、本体部10の内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が同じであるから、上方移動時あるいは下方移動時のたわみ量が大きくなった時でも、ばね定数を低く設定することができる。また、ゴム部材とは異なり、軸線垂直方向/軸線方向のばね定数比を高めることができる。
【0046】
(3)実施形態の好適例
(3−1)筒状部を設ける例
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば図7に示すように、本体部10の内周部10Aおよび外周部10Bに第1筒状部13および第2筒状部14を設けることができる。この場合、筒状部13,14は、本体部10の凸状の突出方向とは逆方向(図7では上側方向)に突出することができる。たとえば第1フランジ部11は、第1筒状部13を介して本体部10の内周部10Aに設けることができる。たとえば第2フランジ部12は、第2筒状部14を介して本体部10の外周部10Bに設けることができる。たとえば筒状部13,14は、その高さGが同一に設定された円筒部である。この場合、たとえば本体部10の内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が同じであるから、フランジ部11,12の本体側端部11C,12D(筒状部13,14の上端同士)の高さ方向の位置が等しく設定されている。
【0047】
上記態様では、本体部10が内周部側および外周部側の筒状部13,14を介して内周部側および外周部側の相手部材のそれぞれに固定することができるから、内周部側および外周部側の少なくとも一方の筒状部の高さを適宜設定することにより、相手部材への取付位置を調整することができる。また、上記態様は、次のような特性を得ることができる。
【0048】
図8は、図7に示すばねの変形例(第2本発明例)および第1本発明例においてH/tを6.3に設定した場合の荷重たわみ線図である。第2本発明例は、第1本発明例と同じ内外径および板厚を有し、H/tも上記値と同じに設定されている。
【0049】
図8から判るように、筒状部を有する第2本発明例は、筒状部を有しない第1本発明例よりも荷重Pの絶対値が低く、ばね定数が低い。 なお、筒状部を有する第2本発明例について、筒状部の上端部が本体部からの離間距離が長くなると、筒状部のうち本体部から離間している部分はほとんど変形しないから、筒状部の高さHを高くしても効果はほぼ変化しない。たとえば高さHが10mmの場合と高さHが10mmの場合と高さHが20mmの場合との荷重たわみ特性は略同等となる。
【0050】
図9は、第2本発明例おいてH/tを6.3に設定した場合の荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。図5、9から判るように、筒状部を有する第2本発明例は、筒状部を有しなくて、かつH/t(=6.3)が同じである第1本発明例と比較すると、ばね定数は低くなる。しかしながら、この場合、第2本発明例は、荷重値に対応する最大主応力が高く、疲労耐久性が異なるため、両者の性能を比較することができない。
【0051】
図10は、第1本発明例おいてH/tを5.5に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。筒状部を有しない第1本発明例のH/tを5.5に設定し、荷重値に対応する最大主応力を第2本発明例のものと同じに設定すると、図9,10から判るように、筒状部を有する第2本発明例は、筒状部を有しない第1本発明例よりもばね定数を低くすることができる。このように筒状部を有する第2本発明例では、疲労耐久性が同等の第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。
【0052】
(3−2)本体部の好適形状
(A)本体部の好適形状の取得手法例
(A−1)勾配の決定手法
本実施形態では、本体部10の形状を適宜設定することにより上方移動用および下方移動用の少なくとも一方の用途を適宜選択することができ、この場合、高さHと板厚tとの比(=H/t)を調整することにより、ばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0053】
たとえば本体部10の曲線形状の最適形状は、たとえば軸対称曲げを受ける円板モデルを用いて取得した曲げモーメント分布を利用することにより決定することができる。具体的には、円板モデルを用いて半径方向の位置rに対する曲げモーメントの分布M(r)を取得し、その分布を打ち消すような形状を選択する。この場合、本体部の形状を軸対称形状に設定して、中心軸からの半径方向の位置rに応じて高さhを設定することにより本体部の形状を表現する場合、その勾配dh/drの絶対値|dh/dr|が曲げモーメントMの絶対値|M|に比例するように高さh(r)を得る。このように得られた高さh(r)を利用することにより、本体部10の形状を得ることができる。
【0054】
曲げモーメントは、図11(A),11(B)に示すように円板300(内径Din、外径Dout)を用いることにより得ることができる。円板300では、内径Dinより内側部分300Aは剛体とし、内側部分300Aの中心位置(円板300の中心位置(軸中心位置))に荷重Pとしてせん断荷重を加える。円板300は、内周部および外周部にフランジ部(図示略)を有し、内周部側のフランジ部への荷重負荷を再現するための条件に近似する支持条件を用い、その支持条件では、円板300の外周部が変位しないように完全固定され、円板300の内周部では、そこにせん断力を加える方向以外は完全固定される。このような円板300に、その中心位置に原点を有する極座標系(r、θ、z) を設定する。円板300は荷重Pの負荷により曲げられ、その内部に応力が生じる。以下のように曲げモーメントの各成分を求めることにより、曲げ応力の各成分を得る。
【0055】
弾性学の円板曲げ理論および2次元弾性論を用いることにより円板300でのたわみ角φは、数1の数式で表される。円板300の支持条件を数1の式に代入した数3,4の数式から立てた連立方程式を解くことにより、C1,C2は数5,6の数式で表される。
【0056】
【数1】
なお、rは円板300の原点からの距離、Pは荷重値、Dは、円板の曲げ剛性であって数2の数式で表される。
【0057】
【数2】
なお、Eはヤング率、νはポアソン比である。
【0058】
【数3】
【0059】
【数4】
【0060】
【数5】
【0061】
【数6】
【0062】
2次元弾性論を用いることにより、数7の数式で表される半径方向の曲げモーメントMrおよび数8の数式で表される円周方向の曲げモーメントMθが得られる。数7,8の数式のなかのdφ/drは、数1の数式を微分することによって数9の数式で与えられる。上方移動用のばねの形状を決定するために必要な半径方向の曲げモーメント分布は、数7の数式により得られる。下方移動用のばねの形状を決定するために必要な円周方向の曲げモーメント分布は、数8の数式により得られる。勾配は、その大きさがそのような分布を有する曲げモーメントの大きさに比例するように決定される。なお、曲げモーメントは荷重P、円板の曲げ剛性の逆数1/Dに比例することから、勾配の分布は、荷重Pおよび板厚tによらず、内径Dinおよび外径Doutにより決定される。
【0063】
【数7】
【0064】
【数8】
【0065】
【数9】
【0066】
上方移動用および下方移動用の両用のばねの形状を決定するために必要な最大主応力σmaxの考えに基づくモーメントの分布の算出について説明する。数7の数式で表される半径方向の曲げモーメントMrおよび数8の数式で表される円周方向の曲げモーメントMθを用いると、円板300の上面側および下面側の応力成分σr(上面)、σθ(上面)、σr(下面)、σθ(下面)は、数10〜13の数式で与えられる。応力成分σrは半径方向の曲げモーメントMrに比例し、応力成分σθは円周方向の曲げモーメントMθに比例していることが判る。
【0067】
【数10】
なお、Aは板厚tによって決定されるパラメータ(=6/t2)である。
【0068】
【数11】
なお、Aは、数10の数式と同じパラメータである。
【0069】
【数12】
【0070】
【数13】
【0071】
上記のように円板300にせん断荷重を加えた場合、軸線方向断面での任意の最大主応力σmaxは、数14の数式で表され、疲労強度パラメータとして用いられる。応力成分τrθは軸対称問題のために0であるから、最大主応力σmaxは数15の数式で表される。
【0072】
【数14】
【0073】
【数15】
【0074】
任意の半径rにて半径方向の曲げモーメントMrおよび円周方向の曲げモーメントMθのうちの大きい方の曲げモーメントをMmaxとした場合、Mmaxは数16の数式で表される。Mmaxを用いることにより、最大主応力σmaxは数17の数式で表される。この場合、円板300の上面側と下面側では最大主応力σmaxが異なる。たとえば、荷重Pが正のとき、上面側の最大主応力σmaxは図12に示す分布を有し、下面側の最大主応力σmaxは図13に示す分布を有する。
【0075】
【数16】
【0076】
【数17】
なお、Aは、数10の数式と同じパラメータである。
【0077】
上面側および下面側の最大主応力σmaxのうちの大きい方の最大主応力σmax’は数18の数式で表される。σmax’は、図12,13に示すグラフから図14に示すように得られる。σmax’に対応する曲げモーメント分布Mmax’は、数19の数式に示すように半径方向および円周方向の曲げモーメントの絶対値のうちの大きい方のモーメントを採用することにより得られる。Mmax’は、図15に示すように得られる。曲げモーメント分布Mmax’に着目し、勾配は、その大きさが上記分布を有する曲げモーメントMmax’の絶対値に比例するように決定される。なお、曲げモーメント分布Mmax’は|Mr|および|Mθ|で表現されることから、勾配の分布は、MrおよびMθと同様、荷重Pおよび板厚tによらず、内径Dinおよび外径Doutにより決定される。
【0078】
【数18】
【0079】
【数19】
【0080】
(A−2)高さの決定手法
ばねの本体部の形状はたとえば下方に向けて凸状に設定されているから、勾配の正負が本体部の内終端から外終端へ向かう途中で1回変化するように符号が決定される。この場合、勾配が0となる位置で正負が変化すると、曲線は連続的に変化するから、勾配の正負は、上方移動用のばねあるいは下方移動用のばねとして用いる場合には、数20の数式を満たす位置r(=r’)で変化させ、上方移動用および下方移動用の両用のばねとして用いる場合には、勾配は常に0より大きいから、勾配の大きさが最も小さな位置となる数21の数式を満たす位置r(=r’)で変化させる。
【0081】
【数20】
なお、Mは、上方移動用のばねの場合にはMr、下方移動用のばねの場合にはMθである。
【0082】
【数21】
【0083】
以上のように曲げモーメントM(上方移動用のばねの場合にはMr、下方移動用のばねの場合にはMθ、上方移動用および下方移動用の両用のばねの場合にはMmax’)に基づき勾配を求めて本体部の形状を得る場合、勾配とモーメントの関係は数22の数式で表される。一方、高さ位置hは、勾配を積分することにより得られ、数23の数式で表される。数22および数23の数式から高さ位置hが得られ、高さ位置hは、数24の数式で示すように、任意の軸線方向断面上の位置rで表される。本体部の形状の設計時、比例定数αを調整することにより、h(r)を調整することができる(すなわち、高さHを調整することができる)。したがって、 H/tを適宜調整することができるから、ばねの仕様に応じてばね定数を調整することができる。なお、本体部の好適形状の取得で用いられる高さHは、たとえば本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、h(r)のうちの最小値hminの絶対値|hmin|であり、hminは、数25の数式で表される。
【0084】
【数22】
なお、αは、0より大きな任意の比例定数である。
【0085】
【数23】
【0086】
【数24】
【0087】
【数25】
【0088】
なお、本体部の形状を得るために、曲げモーメント分布Mmax’の代わりにその変形例であるモーメント分布Mmax”を用いてもよい。Mmax’は常に0より大きいため、r=r’のときのMmax’は、rの全域において与えられる。そこで、数26の数式で表されるモーメントMmax”について説明する。Mmax”はr=r’となる位置の勾配が0となるから、モーメント分布Mmax”のモーメントの大きさに勾配の大きさを比例させることにより本体部を得、その本体部では、その曲線形状が連続的に変化する。
【0089】
【数26】
【0090】
(B)本体部の好適形状例
本体部の好適形状例について、たとえば本体部およびフランジ部の内外径、板厚、ならびに、相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである場合、軸対称曲げを受ける円板モデルを用いて得られる曲げモーメントM(上方移動用のばねの場合にはMr、下方移動用のばねの場合にはMθ、上方移動用および下方移動用の両用のばねの場合にはMmax’)の分布は、図15に示すように得られる。勾配の大きさが、図15に示す分布を有する曲げモーメントMの大きさに比例するように作成した曲線を利用することにより、本体部10の曲線形状の最適形状を得ることができる。
【0091】
上方移動用のばね、下方移動用のばね、および、上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いる場合の本体部の好適形状例について説明する。なお、本願では、符号Cは、本体部10の内周端10Aと外周端10Bとの中心位置を示し、符号Qは、本体部10の形状の勾配の正負が変化する箇所を示し、符号Lは、本体部10の形状の内周端10Aの勾配のデータを示し、符号Mは、本体部の形状の外周端10Bの勾配のデータを示している。なお、以下の本体部の好適形状例では、たとえば本体部10の外周部10Bに第2筒状部14を設けることにより、本体部10の内周端10A(第1フランジ部11の本体側端部11C)と第2フランジ部12の本体側端部12Dの高さ方向の位置を等しく設定している。
【0092】
(B―1)上方移動用のばねを用いる場合
図16は、得られた本体部10の形状の好適例(第3本発明例)を示すグラフである。図16は、勾配の大きさが、図15に示す分布を有する半径方向の曲げモーメントMrの大きさの大きさに比例するように勾配分布を決めたときの高さ分布である。図16に示す例では、H/tを6.3に設定し、H/t以外のサイズおよび相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0093】
本体部10の軸線方向断面の形状について、たとえば図16,17に示すように本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、軸線方向断面における本体部10の形状の勾配は内周端10Aから外周端10Bに向かって単調増加し、本体部10の内周端10Aの形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部10の外周端10Bの形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部10の形状の勾配の正負が変化する位置Qは中心位置Cよりも内周端10A側に位置する。なお、このような本体部10の特徴は、板厚、外径、内径を変更しても同様である。
【0094】
第3本発明例では、半径方向の曲げモーメントMrを均一とすることにより、応力成分σrの均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、上方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0095】
図18は、第3本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。第3本発明例では、図18に示すようにたとえば引張方向の荷重Pが1500Nのときのたわみ量は4.2mmであり、0〜1500Nの範囲での平均ばね定数に換算すると約360N/mmである。第1本発明例では、図4に示すようにH/tを調整しても、たわみ量を大きく設定することができないため、ばね定数は高いが、第3本発明例では上記のようにばね定数を低く設定することができる。
【0096】
図19は、第1本発明例のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。この場合、第1本発明例において荷重値に対応する最大主応力を、筒状部を有しない第3本発明例(図18に示す例)のものと同じに設定している。本体部10が円弧形状をなす第1本発明例では、図19に示すようにたとえば下方移動するように1500Nの荷重を負荷したときのたわみ量は3.1mmであり、下方移動における0〜1500Nの範囲での平均ばね定数に換算すると約480N/mmである。したがって、第3本発明例は、第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。このように第3本発明例では、疲労耐久性が同等の第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。
【0097】
(B―2)下方移動用のばねを用いる場合
図22は、得られた本体部10の形状の好適例(第4本発明例)を示すグラフである。図22は、勾配の大きさが図15に示す分布を有する円周方向の曲げモーメントMθの大きさに比例するように勾配分布を決めたときの高さ分布である。図22に示す例では、H/tを6.3に設定し、H/t以外のサイズおよび相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0098】
本体部10の軸線方向断面の形状について、たとえば図22,23に示すように本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、軸線方向断面における本体部10の形状の勾配は、内周端10Aから外周端10Bに向かって減少し、中心位置Cよりも内周端10A側で増加に転じ、本体部10の内周端10Aの形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部10の外周端10Bの形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部10の形状の勾配の正負が変化する位置Qは、中心位置Cよりも外周端10B側に位置する。なお、このような本体部10の特徴は、板厚、外径、内径を変更しても同様である。
【0099】
第3本発明例では、円周方向の曲げモーメントMθを均一とすることにより、応力成分σθの均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、下方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0100】
図24は、第4本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、およびばね定数の線図である。第4本発明例では、図24に示すようにたとえば下方移動時の荷重Pが1000Nのときのたわみ量は―5mmであり、下方移動における0〜1000Nの範囲での平均ばね定数に換算すると約200N/mmである。第1本発明例では、図4に示すようにH/tを調整しても、たわみ量を大きく設定することができないため、ばね定数が高いが、第4本発明例では上記のようにばね定数を低く設定することができる。
【0101】
図25は、第4本発明例においてH/tを9に設定した場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。第4本発明例では、図25に示すようにたとえば圧縮方向の荷重Pが1500Nのときのたわみ量は、―4.81mmである。本体部10が円弧形状をなす第1本発明例では、図19に示すようにたとえば圧縮方向の荷重Pが1500Nのときのたわみ量は―3.5mmであり、最大主応力は高くなっている。したがって、第4本発明例は、第1本発明例よりも、最大主応力が低くて、かつ平均ばね定数を低く設定することができる。このように第4本発明例では、疲労耐久性が同等の第1本発明例よりも下方移動時のばね定数を低く設定することができる。
【0102】
(B―3)上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いる場合
図26は、得られた本体部10の形状の好適例(第5本発明例)を示すグラフである。図26は、勾配の大きさが、図15に示す分布において半径方向の曲げモーメントの大きさ|Mr|および円周方向の曲げモーメントの大きさ|Mθ|のうちの大きい方の値であるモーメントMmax’に比例するように勾配分布を決めたときの高さ分布である。図26に示す例では、H/tを6.3に設定し、H/t以外のサイズおよび相手部材は、皿ばねの上記一例(従来例)と同じである。
【0103】
本体部10の軸線方向断面の形状について,たとえば図26,27に示すように本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、軸線方向断面における本体部10の形状の勾配は内周端10Aから外周端10Bに向かって単調増加し、本体部10の内周端10Aの形状の勾配は負であり、その絶対値は、本体部10の外周端10Bの形状の勾配の絶対値よりも大きく、本体部10の形状の勾配が0になる位置Qは、中心位置Cよりも外周端10B側に位置する。なお、このような本体部10の特徴は、板厚、外径、内径を変更しても同様である。
【0104】
第5本発明例では、半径方向の曲げモーメントの大きさ|Mr|および円周方向の曲げモーメントの大きさ|Mθ|のうちの大きい方の値であるモーメントMmax’を均一とすることにより、最大主応力σmaxの均一化を図ることができるから、本体部に分布している応力のうち最大となる応力を低く設定することができる。したがって、上方移動時および下方移動時のばね定数を低値に適宜調整することができる。
【0105】
図28は、第5本発明例の形状において第2筒状部を設けない場合のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。第5本発明例では、図28に示すようにたとえば上方移動時の荷重Pが1500Nのとき、図19に示すように、本体部10が円弧形状をなす第1本発明例と同一の最大主応力とたわみ量を示す。第5本発明例は、図28に示すようにたとえば下方移動時の荷重Pが1500Nのとき、図19に示す第1本発明例よりも最大主応力が低くて、かつ平均ばね定数を低く設定することができる。このように第5本発明例では、上方移動時および下方移動時のいずれの時も、疲労耐久性が同等あるいはそれ以下の第1本発明例よりもばね定数を低く設定することができる。
【0106】
なお、本体部の好適形状の設定では、勾配と曲げモーメントの関係を示す数22の数式の比例定数αを、軸線方向断面の径方向の位置毎に変更してもよい。たとえば上記実施形態では、上方移動用のばね、下方移動用のばね、および、上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いる場合の本体部10の好適形状例について、本体部10の形状を下方に向けて凸状に設定したとき、いずれの例でも、本体部10の内周端10Aは、外周端10Bよりも上方に位置するが、たとえば内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置が等しくなるように、径方向の所定位置を境にして比例定数αを変更して調整してもよい。
【0107】
比例定数αを一定にしている図18,24,28に示す第3本発明例、第4本発明例、および、第5本発明例のたわみ量に対するばね定数の線図では、いずれの例でも、上方移動時のたわみ量が増すに従い、ばね定数が高くなる。このように本体部10の内周端10Aが外周端10Bよりも上方に位置する形状では、軸線方向断面の本体部10の外周端10B近傍の略円弧形状の長さが短いため、図2(A)で示す上方移動時にたわみ量が大きくなると、本体部10が変形しにくくなる虞がある。そのため、上方移動時のたわみ量が大きくなるに従って、ばね定数も高くなる虞がある。
【0108】
そこでたとえば図20に示す第3本発明例の変形例では、半径方向の曲げモーメントMrに対する勾配の比例定数が、勾配の正負の変化位置Qよりも内周側と外周側とにおいて異なるように設定することにより、内周端10Aと外周端10Bの高さを等しく設定することができる。図21は、第3本発明例の変形例(図16の変形例、第6本発明例)のたわみ量に対する荷重、最大主応力、および、ばね定数の線図である。図18,21から判るように、第6本発明例では、第3本発明例よりも上方移動のたわみ量が大きいときのばね定数を低くすることができる。このように第6本発明例では、内周端10Aと外周端10Bの高さ方向の位置を等しく設定することにより、上方移動時のたわみ量が大きくなった時でも、ばね定数を低くすることができる。
【0109】
(4)実施形態の適用例
ばね1は、たとえば図29に示すサスペンション装置50に適用することができる。サスペンション装置50は、たとえば緩衝器60、サスペンションスプリング70、および、ばね1を備えている。ばね1は、たとえばサスペンション装置50のアッパシートとしての機能を兼ねている。
【0110】
緩衝器60は、ピストン部61およびシリンダ部62を備えている。ピストン部61の下端部の弁(図示略)がシリンダ部62内面を摺動する。ピストン部61のロッドは、その周囲に設けられたロッドガイド部(図示略)のシールを摺動する。シリンダ部62の外周部には、サスペンションスプリング70の車輪側端部を受けるフランジ部63が形成されている。シリンダ部62には、作動油等が封入され、作動油等が摺動時の弁を通過して抵抗が発生することにより緩衝機能が実現される。サスペンションスプリング70は、フランジ部63とばね1との間に設けられ、たとえばコイルスプリングである。
【0111】
ばね1では、第1フランジ部11が、孔部11Aに設けられたねじ手段等の固定部材71により固定されるとともに、第2フランジ部12が、ねじ手段等の固定部材72により車体120に固定される。ばね1としては、要求される特性に応じて、上方移動用、下方移動用、あるいは、上方移動用および下方移動用の両用のばねを用いることができる。
【0112】
車両の車輪側からの荷重が緩衝器60を通じて車体に入力される場合、その荷重が高周波帯域や微振幅領域の振動である時、緩衝器60がそのような振動に対して追従できない虞がある。この場合、軸線方向のばね定数が低く設定されているばね1が、図2(A),(B)に示すように変形することにより、高周波帯域や微振幅領域の振動を吸収することができる。したがって、緩衝器60でスティックスリップが発生した場合でも、ばね1は荷重変動を抑制することができるから、乗り心地が良好となる。
【0113】
また、ばね1では、本体部10が皿ばね部として機能するから、緩衝器60の軸線方向以外の方向の剛性を高くすることができる。したがって、緩衝器60の軸線方向の振動がばね1に対してせん断応力として作用した場合でも、ばね1は軸線方向以外の方向に撓まない。その結果、操縦安定性を確保することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…ばね、10…本体部、10A…内周部,内周端、10B…外周部,外周端、11…第1フランジ部(フランジ部)、12…第2フランジ部(フランジ部)、13…第1筒状部(筒状部)、14…第2筒状部(筒状部)、111…第1部材(相手部材)、112…第2部材(相手部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周部および外周部を有するとともに弾性変形可能な本体部と、
前記本体部の内周部および外周部に設けられ、前記内周部および前記外周部のそれぞれの相手部材に固定されるフランジ部とを備え、
前記本体部は、軸線方向断面において、前記内周部と前記外周部との間の中央部が前記内周部と前記外周部とを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有することを特徴とするばね。
【請求項2】
前記内周部および前記外周部に筒状部が設けられ、
前記筒状部は、前記本体部の前記凸状の突出方向とは逆方向に突出し、
前記フランジ部は、前記筒状部を介して前記本体部の前記内周部および前記外周部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のばね。
【請求項3】
前記本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において前記内終端から前記外終端に向かう方向に設定し、前記軸線方向断面における前記本体部の形状の勾配を前記本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、前記本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、
前記本体部の形状の前記勾配は前記内周端から前記外周端に向かって単調増加し、前記本体部の前記内周端の形状の前記勾配は負であり、その絶対値は、前記本体部の前記外周端の形状の前記勾配の絶対値よりも大きく、前記本体部の形状の前記勾配の正負が変化する箇所は、前記内周端と前記外周端との中心位置よりも内周端側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のばね。
【請求項4】
前記本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において前記内終端から前記外終端に向かう方向に設定し、前記軸線方向断面における前記本体部の形状の勾配を前記本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、前記本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、
前記本体部の形状の前記勾配は、前記内周端から前記外周端に向かって減少し、前記内周端と前記外周端との中心位置よりも内周端側で増加に転じ、前記本体部の前記内周端の形状の前記勾配は負であり、その絶対値は、前記本体部の前記外周端の形状の前記勾配の絶対値よりも大きく、前記本体部の形状の勾配の正負が変化する箇所は、前記中心位置よりも前記外周端側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のばね。
【請求項5】
前記本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において前記内終端から前記外終端に向かう方向に設定し、前記軸線方向断面における前記本体部の形状の勾配を前記本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、前記本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、
前記本体部の形状の前記勾配は、前記内周端から前記外周端に向かって単調増加し、前記本体部の前記内周端の形状の勾配は負であり、その絶対値は、前記本体部の前記外周端の形状の勾配の絶対値よりも大きく、前記本体部の形状の勾配の正負が変化する箇所は、前記内周端と前記外周端との中心位置よりも外周端側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のばね。
【請求項6】
前記内周端と前記外周端との前記軸線方向の位置が同じであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のばね。
【請求項1】
内周部および外周部を有するとともに弾性変形可能な本体部と、
前記本体部の内周部および外周部に設けられ、前記内周部および前記外周部のそれぞれの相手部材に固定されるフランジ部とを備え、
前記本体部は、軸線方向断面において、前記内周部と前記外周部との間の中央部が前記内周部と前記外周部とを結ぶ直線に対して凸状をなし、その凸状が曲線状をなすような形状を有することを特徴とするばね。
【請求項2】
前記内周部および前記外周部に筒状部が設けられ、
前記筒状部は、前記本体部の前記凸状の突出方向とは逆方向に突出し、
前記フランジ部は、前記筒状部を介して前記本体部の前記内周部および前記外周部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のばね。
【請求項3】
前記本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において前記内終端から前記外終端に向かう方向に設定し、前記軸線方向断面における前記本体部の形状の勾配を前記本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、前記本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、
前記本体部の形状の前記勾配は前記内周端から前記外周端に向かって単調増加し、前記本体部の前記内周端の形状の前記勾配は負であり、その絶対値は、前記本体部の前記外周端の形状の前記勾配の絶対値よりも大きく、前記本体部の形状の前記勾配の正負が変化する箇所は、前記内周端と前記外周端との中心位置よりも内周端側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のばね。
【請求項4】
前記本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において前記内終端から前記外終端に向かう方向に設定し、前記軸線方向断面における前記本体部の形状の勾配を前記本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、前記本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、
前記本体部の形状の前記勾配は、前記内周端から前記外周端に向かって減少し、前記内周端と前記外周端との中心位置よりも内周端側で増加に転じ、前記本体部の前記内周端の形状の前記勾配は負であり、その絶対値は、前記本体部の前記外周端の形状の前記勾配の絶対値よりも大きく、前記本体部の形状の勾配の正負が変化する箇所は、前記中心位置よりも前記外周端側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のばね。
【請求項5】
前記本体部の軸線方向断面において、軸線方向を縦軸として用い、径方向を横軸として用いた座標系を設定し、縦軸の正方向を軸線方向の上側方向に設定し、横軸の正方向を径方向において前記内終端から前記外終端に向かう方向に設定し、前記軸線方向断面における前記本体部の形状の勾配を前記本体部の凸状の輪郭線における各位置での接線の傾きとし、前記本体部の形状を下方に向けて凸状に設定した場合、
前記本体部の形状の前記勾配は、前記内周端から前記外周端に向かって単調増加し、前記本体部の前記内周端の形状の勾配は負であり、その絶対値は、前記本体部の前記外周端の形状の勾配の絶対値よりも大きく、前記本体部の形状の勾配の正負が変化する箇所は、前記内周端と前記外周端との中心位置よりも外周端側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のばね。
【請求項6】
前記内周端と前記外周端との前記軸線方向の位置が同じであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のばね。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2012−237422(P2012−237422A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108233(P2011−108233)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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