説明

ひずみゲージ

【課題】特に高感度で抵抗温度係数の大きなひずみゲージ材料を採用した場合においても、温度勾配に起因する熱見かけひずみを低減可能なひずみゲージを提供することである。
【解決手段】主ひずみを受感する素子11と、副ひずみを受感する素子12および13と、で形成されるひずみゲージ10であって、前記主ひずみを受感する素子11と一対の前記副ひずみを受感する素子12および13とが各々直交する2方向から成り、前記主ひずみを受感する素子11の左右に一対の前記副ひずみを受感する素子12および13を対称に配置し、両側の前記副ひずみを受感する素子12および13方向からの熱による見かけひずみを相殺する構成にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はひずみゲージに関し、特に、例えば射出成形機の型締装置におけるタイバーのひずみを検出するひずみゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば射出成形機の型締装置におけるタイバーのひずみを検出するひずみゲージが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、タイバー用の着脱型センサを開示するものであり、1枚のゲージベース上に互いに直交する一対のひずみゲージを有し、互いに180°方向に対向するように張り付けられたフルブリッジ回路で構成し、単ゲージのブリッジ回路と比較してポアソン比分の出力を増大することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−309400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、元来タイバーに発生するひずみは非常に小さいため、従来、タイバー用ひずみゲージにおいては、その出力向上が望まれていた。
【0006】
そこで、出力を上げるため、高感度で抵抗温度係数の大きなひずみゲージ材料を採用すると、感度は高いが同時に、抵抗温度係数も大きくなるものであった。タイバーには、射出成形時の熱による温度勾配が生じるものである。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の、1枚のゲージベース上に互いに直交する一対のひずみゲージに高感度で抵抗温度係数の大きなひずみゲージ材料を採用すると、特に温度過渡時の微小部位のわずかな温度勾配が一対のひずみゲージに亘って発生した場合、直行2素子の温度差により熱見かけひずみを生じ、エラーの要因となり測定精度が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、特に高感度で抵抗温度係数の大きなひずみゲージ材料を採用した場合においても、温度勾配に起因する熱見かけひずみを低減可能なひずみゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、主ひずみを受感する素子と、副ひずみを受感する素子と、で形成されるひずみゲージであって、前記主ひずみを受感する素子と一対の前記副ひずみを受感する素子とが各々直交する2方向から成り、前記主ひずみを受感する素子の左右に一対の前記副ひずみを受感する素子を対称に配置し、両側の前記副ひずみを受感する素子方向からの熱による見かけひずみを相殺する構成にしたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記主ひずみを受感する素子と、一対の前記副ひずみを受感する素子と、でハーフブリッジ回路を構成したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記主ひずみを受感する素子と、一対の前記副ひずみを受感する素子と、からなるひずみゲージで、少なくとも2枚からなるフルブリッジ回路を構成したことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、ひずみの測定対象に対して脱着可能であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、ひずみの測定対象であるタイバーに対して脱着可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特に高感度で抵抗温度係数の大きなひずみゲージ材料を採用した場合においても、温度勾配に起因する熱見かけひずみを低減可能なひずみゲージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるひずみゲージの一実施の形態のパターンを示す平面図である。
【図2】図1に示したひずみゲージ10の回路図の一例を示す図である。
【図3】図1に示したひずみゲージ10の回路図の図2とは別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明によるひずみゲージの一実施の形態のパターンを示す平面図である。
【0018】
本実施の形態のひずみゲージ10は、パターンの材質について特に問わないものではあるが、高感度で抵抗温度係数の大きなひずみゲージ材料を用いた場合、その効果がより顕著なものである。高感度で抵抗温度係数の大きなひずみゲージ材料としては、例えばFe−Ni系の合金、Fe−Cr系の合金等が挙げられる。
【0019】
ひずみゲージ10は、例えばポリイミド樹脂材料をシート状にしたフレキシブル基板上に形成されるが、基板材料の種類は特には問わない。ただし、本実施の形態のひずみゲージ10を例えば射出成形機の型締装置におけるタイバーのひずみを検出するひずみゲージとして用いる場合には、タイバーに対して着脱可能であることが求められるとともにタイバーの外周に密着可能であることが望ましいので、タイバーの外径に応じて撓むことができるようにひずみゲージ10の基板としては可撓性を有するものを用いるのがよい。
【0020】
本実施形態のひずみゲージ10は、基板上に電極14、15および16を形成し、ゲージ抵抗素子(受感素子)である素子11、12および13を有して成る。素子13の一端は電極14に接続され、素子13の他端は素子12の一端に接続される。素子12の他端は電極16に接続されるとともに素子11の一端に接続される。素子11の他端は電極15に接続される。
【0021】
ひずみゲージ10を図示しないタイバーに取り付ける場合には、図示しない取り付け具を用いて、タイバーの外周に密着させる。このときのひずみゲージ10の向きは、図1の上下方向がタイバーの軸方向と一致するようにする。
【0022】
素子11は、タイバーの主ひずみを感知する素子であり、素子12および13は、タイバーの副ひずみを感知する素子である。すなわち、素子11は、タイバーの軸方向と一致する向きに配置し、素子12および13は、タイバーの軸方向と直交する向きに配置する。また、素子12と素子13とは素子11を挟んで左右に一対で設け、対称な位置に配置している。
【0023】
図2は、図1に示したひずみゲージ10の回路図の一例を示す図である。
【0024】
図2の例は、本実施形態のひずみゲージ10によってハーフブリッジ回路を構成した例である。
【0025】
図2において、抵抗R1およびR2は、素子11、12および13とともにホイートストンブリッジを形成するように定めた所定の抵抗値の抵抗器である。
【0026】
この図2のハーフブリッジ回路においては、既知のホイートストンブリッジの原理により所定電極間に入力電圧21を印加し、所定電極間から出力を得て例えばアンプ22によって増幅してひずみの検出結果として利用する。
【0027】
図3は、図1に示したひずみゲージ10の回路図の図2とは別の例を示す図である。
【0028】
図3の例は、本実施形態のひずみゲージ10のほかに、ひずみゲージ10と同様の構成のひずみゲージ10aをさらに1枚設け、これをひずみゲージ10と同様にタイバーに取り付け、このひずみゲージ10とひずみゲージ10aとでフルブリッジ回路を構成した例である。
【0029】
図3において、ひずみゲージ10aは、ひずみゲージ10と同様の構成であり、ひずみゲージ10とともにホイートストンブリッジを形成するように定めた所定の抵抗値である。
【0030】
この図3のフルブリッジ回路においては、既知のホイートストンブリッジの原理により所定電極間に入力電圧21を印加し、所定電極間から出力を得て例えばアンプ22によって増幅してひずみの検出結果として利用する。
【0031】
以上説明した本実施の形態によれば、主ひずみを感知する素子11の両側に副ひずみを感知する素子12および13を対称的に配置したことにより、平面的に温度勾配が発生存在する場合でも、ブリッジを校正する隣り合う辺の見かけひずみが等価となり、ブリッジの熱出力を相殺し、温度補償することができる。
【0032】
例えば図1の左右方向で温度勾配が存在する場合、素子11、12および13の平面位置のそれぞれで温度の違いがあるが、副ひずみを感知する素子12および13が主ひずみを感知する素子11の左右に位置しているので、素子11、12および13の平均温度は、主ひずみを感知する素子11と同じ温度となり、熱による見かけひずみは、同等の値を示し相殺される。
【0033】
以上説明した本発明は、この説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で数々の変形および組み合わせが出来ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10 ひずみゲージ
11、12、13 受感素子(ゲージ抵抗素子)
14、15、16 電極
21 入力電圧
22 アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ひずみを受感する素子と、
副ひずみを受感する素子と、
で形成されるひずみゲージであって、
前記主ひずみを受感する素子と一対の前記副ひずみを受感する素子とが各々直交する2方向から成り、
前記主ひずみを受感する素子の左右に一対の前記副ひずみを受感する素子を対称に配置し、
両側の前記副ひずみを受感する素子方向からの熱による見かけひずみを相殺する構成にしたことを特徴とするひずみゲージ。
【請求項2】
前記主ひずみを受感する素子と、
一対の前記副ひずみを受感する素子と、
でハーフブリッジ回路を構成したことを特徴とする請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項3】
前記主ひずみを受感する素子と、
一対の前記副ひずみを受感する素子と、
からなるひずみゲージで、少なくとも2枚からなるフルブリッジ回路を構成したことを特徴とする請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項4】
ひずみの測定対象に対して脱着可能であることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載のひずみゲージ。
【請求項5】
ひずみの測定対象であるタイバーに対して脱着可能であることを特徴とする請求項1ないし4のうちのいずれか1項に記載のひずみゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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