説明

ふとんカバー

【課題】簡易な構成を維持して、従来品に比べてふとんの出し入れ性及び使い勝手により優れたものを提供する。
【解決手段】発明対象は矩形袋状に形成されると共に、カバー周囲部の一部に設けられたスライドファスナー3を有し、前記スライドファスナー3を開閉操作してふとん20を袋状内に出し入れするふとんカバー1である。この工夫点は、前記カバー周囲部のうち、前部10から両側の左右前部分、及び後部11から両側の左右後部分を縫製(縫製部5と7、縫製部6と8)することによりカバー前後に断面コ形状の前後収容部13,14をそれぞれ形成し、かつ、両側にあって前記縫製された前記左右前部分と前記左右後部分との間に前記スライドファスナー3をそれぞれ設けたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形袋内にふとんを収納するふとんカバーに関し、特にふとんの出し入れ性を改良したふとんカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のふとんカバーは、カバー周囲部の一部に設けられたスライドファスナーを開閉操作することで袋状カバー内にふとんを出し入れする構成となっている。これは、袋状カバー内にふとんを出し入れする開口部形成用として、スライドフッァスナーは上下の布(表地及び裏地)を上下紐で結んだり解いて開閉する紐構成に比べ操作性及び外観に優れているからである。
【0003】
ところで、スライドファスナー(以下、ファスナーと省略する)を用いた開閉構造としては、矩形袋状の周囲部のうち、前後部及び一方側部の三辺を縫い合わせ、残りの他方側部つまり一辺だけにファスナーを取り付ける第1従来構成(特許文献1を参照)、前後部の一方及びそれに交差する左右側部分の三辺に連続したファスナーを取り付ける第2従来構成(特許文献2を参照)、一側部及びそれに交差する前後部の一方つまり二辺に連続したファスナーを取り付ける第3従来構成とがある。また、それ以外として、袋状を区画している上下の布のうち上側布にあって、ファスナーを左右中間の前後方向に取り付ける第4従来構成がある。
【特許文献1】実開平4−37507号公報
【特許文献2】特開平5−28262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人らは、上記第1〜第4の従来構成を検討してきた結果、何れもがふとんを出し入れする際の操作性や使い勝手から未だ満足できないことが分かった。
【0005】
(ア)第1従来構成は、最も多く採用されているが、ファスナーが一辺だけであり、該ファスナーを介して一側部を開口した状態から、ふとんを袋状カバー内に押し入れると、反対側部が閉じているためふとんの奥側角部がカバー対応部からずれたとき一致させるのに手をカバー奥深く差し込まなくてはならず苦労する。
(イ)第2従来構成は、ファスナーが三辺にあり、袋内を前後部の一方から両側の途中まで大きく開口できるが、ファスナーが三辺に連続した略コ形状となるためファスナー角部の故障、更にはファスナースライド時の布噛み付き現象が生じ易くなる。また、カバー前後部の一方にも配置されるためそのファスナー部分が使用態様において人の首に当たる虞がある。
【0006】
(ウ)第3従来構成は、ファスナーがL形となる関係で第2従来構成と同様な問題がある。また、第1従来構成と同様にふとんの奥側角部がカバー対応部からずれたとき一致させるのに手をカバー奥深く差し込まなくてはならず苦労する。
(エ)第4従来構成は、ファスナーが袋状を区画している上側の布にあるため、使用態様でのふとんカバーの表裏が決まってしまう。つまり、仮にファスナー側を下にすると異物感を与える。
【0007】
以上のような問題は、例えば、目的のふとんがダブルふとんやコタツふとんのように大きくなるほど顕著となる。また、介護現場などでは、特にふとんカバーを頻繁に洗うため、ふとんをより簡単に出し入れしたり、交換時に腰等に加わる負担をより軽減できることが好ましい。そこで、本発明の目的は、ふとんカバーとして簡易な構成を維持して、従来品に比べてふとんの出し入れ性及び使い勝手により優れたふとんカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、矩形袋状に形成されると共に、カバー周囲部の一部に設けられたスライドファスナーを有し、前記スライドファスナーを開閉操作してふとんを袋状内に出し入れするふとんカバーにおいて、前記カバー周囲部のうち、前部から両側の左右前部分、及び後部から両側の左右後部分を縫製することによりカバー前後に断面コ形状の前後収容部をそれぞれ形成し、かつ、両側にあって前記縫製された前記左右前部分と前記左右後部分との間に前記スライドファスナーをそれぞれ設けたことを特徴としている。
【0009】
以上の本発明は、前記両側の左右前部分及び左右後部分の各長さは10〜15cmであること(請求項2)が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、両側のスライドファスナーを開口すると、前後収容部に対応した前後部を除いて上側の布が幅方向均等に上方へ持ち上げられる。このため、ふとんを袋状カバー内に収納する場合は、図3に例示したごとくふとんの両側を丸めた状態で、前記開口部の一方から袋内に挿入した後、ふとんの一方側を巻き戻しながら対応収容部に配置する。この状態では、ふとんが巻き戻した側が対応収容部に拘束されているため、以後は他方側を巻き戻しながら対応収容部に配置する。その後、両側のスライドファスナーを閉操作する。ふとんを取り出す場合は逆操作により行える。そして、本発明では以下のような利点を具備できる。
【0011】
(1)本発明では、例えば、ふとんの収納操作において、袋状カバーの両側部にあって前後収容部を除いた箇所に設けられた二本のスライドファスナーを有しているため、図3(a),(b)のごとく前後収容部に対応した前後部を除いて上側の布が幅方向均等に上方へ容易に持ち上げることができ、それによりふとんの出し入れが容易となり負荷も受け難く、女性や老人にも操作し易いものとなる。また、コタツふとんやダブルふとんのように大きなふとんでも正確かつ容易に出し入れ可能となる。
(2)本発明では、袋状カバーの前後部に設けられたコ形状の前収容部及び後収容部により、例えば、ふとん収納操作ではふとん前後部の一方を対応収容部に拘束ないしは位置決めし、その状態からふとん前後部の他方を対応収容部に入れるだけで正確に収納でき、ふとん前後のずれがなくなるなど操作性を向上できる。
(3)本発明の各スライドファスナーは、直線形ファスナーとなるため上記従来のL形やコ形ファスナーに比べて故障し難く、しかも袋状カバーの周囲のうち両側に取り付けられているため、使用状態でふとん前後を逆にしてもファスナー部分に接して異物感を与えるという虞がない。
【0012】
請求項2の発明では、図1のMの長さが10cmより短くなると上記した前後収容部のふとん拘束作用ないしは位置決め作用が損なわれ、15cmより長くなるとふとんの前後部を対応収容部へ入れただけではふとんの角部が収容部の対応部に一致せず弾けやすくなって不安定となる、そのような不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るふとんカバーについて、図1〜図3に示した形態例と、図4に示した変形例について詳述する。
【0014】
(構造)図1に示したふとんカバー1は、シングルタイプの敷き布団用を想定したもので、長さLが200cm、幅L1が100cm程度の大きさである。カバー構造としては、前後部10,11及び両側12を有した矩形袋状に形成されると共に、カバー周囲部の一部に設けられたスライドファスナー3を有し、該スライドファスナー3を開閉操作してふとんを袋状内に出し入れする点で従来と同じ。工夫点は、特に、カバー前後に断面コ形状の前収容部13及び後収容部14が対向して設けられている構成と、スライドファスナー3が両側部12にあって、前後収容部13,14を除いた両側部分にそれぞれ設けられている構成とにある。なお、ふとんカバー1は、カバー周囲部のうち、前部10及び後部11がそれぞれ幅方向の縫製部5,6で閉じられていると共に、前部10から両側部12である左右前部分つまり符号Mの長手方向前部分、及び後部11から両側部12である左右後部分つまり符号Mの長手方向後部分がそれぞれ縫製部7,8で閉じられている。
【0015】
詳述すると、ふとんカバー1は、例えば、布2の構成として、上側の布2Aと下側の布2Bとからなり、各布2A,2Bが重ねられた状態で矩形袋状に形成されると共に、図3のごとくふとん20の前後端部を収納する前後収容部13,14及び両側部12の中間部を開閉する2つのスライドファスナー3を有している。符号5と6は、上側の布2Aと下側の布2Bとの前縁同士又は後縁同士を接続している縫製部である。符号7と8は、図2(b)の拡大部に示したごとく上側布2Aの側縁2aと下側布2の側縁2bとを接続している縫製部である。各縫製部7,8の長さMは10〜15cmの範囲が好ましい。各スライドファスナー3は、両側部12にあって、前側縫製部7と後側縫製部8との間に配置されている。符号9は、上側の布2Aにあって、前収容部13及び後収容部14に対応して幅方向に縫製した飾り用縫製部である。符号a〜dは上側の布2Aと下側の布2Bの接続ラインである。
【0016】
ここで、前記M値は次のような現象ないしは理由から設定されている。まず、M値が10cmより短いと、縫製部5及び両前側の縫製部7で区画される前収容部13の奥行きが浅くなって、ふとん20をふとんカバー1に収納操作する際にふとん20の前又は後端部を動かないよう規制したり位置決め作用として不充分となる。逆に、M値が15cmより長いと、前収容部13の奥行きが深くなって、ふとん20を収納操作する際にふとん20の前又は後端部を入れただけだとふとん角部がカバー対応部に一致しなかったり位置ずれし易くなったり、図3のごとくスライドファスナー3の長さも短くなって開口部18も小さくなるからである。
【0017】
スライドファスナー3は、図2(a)及び図2(c)の拡大部に示したごとく上側の布2Aの側縁2aに沿って取り付けられた一方ファスナー片3Aと、下側の布2Bの側縁2bに沿って取り付けられた他方ファスナー片3Bと、ファスナー片3A,3B同士を係合したり係合解除する開閉部材4とを有している。この場合、ファスナー片3Aは、側縁2aが比較的長い折り返し部2cを介して内側に配置され、該折り返し部2cの上側に沿って縫製により取り付けられている。符号15はその縫製部である。ファスナー片3Bは、側縁2bの内側折り返し部に沿って縫製により取り付けられている。符号16はその縫製部である。以上のファスナー取付構造では、両ファスナー片3A,3Bの係合状態において、上側折り返し部2cがファスナー片3A,3Bの外側に垂れ下げられることで見栄えを良好に保つ。
【0018】
(使用例)図3は以上のふとんカバー1にふとんを収納する操作例を示している。作業者は、まず、ふとんカバー1を長手方向に拡げると共に両側のスライドファスナー3を開閉部材4により開状態にする。その後、ふとん20の両側を前後中間部に向けて巻いた状態とし、また、図3(a)のごとく上側の布2Aを持ち上げることでふとんカバー1の側部12に開口部18を形成する。この開口部18は、両側部12が各スライドファスナー3を介して開状態となっているため、上側の布2Aを持ち上げると、上側の布2Aが幅方向に均等に持ち上げられ、それにより左右略同大のトンネル状となっている。従って、作業者は、ふとん20を両側巻き状態で、片側開口部18からふとんカバー1内の前後中間部に容易に配置可能となる。
【0019】
図3(b)は、ふとんカバー1内に入れられたふとん20の片側を巻方向と反対側に巻き解した状態を示している。この状態では、ふとん前部(後部)が前収容部13(後収納部14)に収容されて拘束ないしは位置決めされている。図3(c)は、更にふとん後部(前部)を巻方向と反対側に巻き解した状態を示している。すなわち、これらの操作では、ふとん20の前後部の一方を巻き解して対応収容部に収容した後、他方を巻き解して対応収容部に入れるだけでよく、ふとん前後のずれがなくなるなど操作性を向上できる。図3(d)は両側の各スライドファスナー3を開閉部材4を介して閉じた収納完了状態である。なお、ふとん20を再びふとんカバー1から取り出す場合は、上記した手順と逆操作により簡単に行える。そして、以上のふとんカバー構造において、各スライドファスナー3は、直線形ファスナーのため従来のL形やコ形ファスナーに比べて故障を起こし難く、また、袋状カバーの周囲部のうち、両側に取り付けられている関係でふとん使用状態として、ふとん前後を逆にしてもファスナー部分に接して異物感を与えるという虞がない。
【0020】
図4の変形例は、以上のふとんカバー構造をコタツふとん用を想定したもので、長さL2が250cm、幅L1が200cm程度の大きさである。この説明では、上記形態と同じ部材及び部位に同一符号を付して、重複した記載を極力省く。
【0021】
このふとんカバー1Aは、ふとんがコタツふとんやダブルふとんのようにかなり大きくなると、両側部12の左右前部分及び左右後部分の各長さM1を大きして前収容部13及び後収容部14を深くしないとふとん対応部を拘束できなかったりずれやすくなるため、前収容部13の内側、及び後収容部14の内側にふとん側対応部(通常は角部に設けられたループ部)を掛け止める取付紐17を設けた構成である。取付紐17は、従来と同様に対応する縫製部5,7又は縫製部6,8と共縫いしたものである。
【0022】
本発明らは、上記形態の要部構成を大きさの異なるふとん用に作成し、また、上記MやM1の長さを10〜15cmにしたものを作成してふとん収納性を調べた。その結果、ふとんカバー1Aとしては、カバー前後の長さが210cm以上、幅が190cm以上の場合、前後の収容部13,14内に縫製により取り付けられてふとん側対応部を掛け止める取付紐17を有していることが好ましいことが分かった。
【0023】
すなわち、以上の取付紐17は、前後の収容部13,14内にあって、スライドファスナー3の開状態で手が届き易い角部に設けられており、収納されるふとんを位置規制可能にする。この点は、特に、コタツふとんやダブルふとんのように大きくなると、前後の収容部13,14の規制作用や位置決め作用が不充分となる。対策としては、袋状カバーの両側部12の左右前部分及び左右後部分の各長さM又はM1を15cmより長くすることも有効であるが、その場合は上述したふとんの角部が対応する収容部の対応部に一致せず弾けやすくなって不安定となる。この構造はそのような問題を避ける上で工夫されたものである。
【0024】
なお、本発明のふとんカバーは、請求項で特定される構成を実質的に備えておればよく、細部は各形態を参考にして更に変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1形態のふとんカバーを模式的に示し、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は前又は後端面図である。
【図2】上記ふとんカバーの構成を示し、(a)は上記ふとんカバーの模式外観図、(b)は図1のA−A線断面図、(c)は図1のB−B線断面図である。
【図3】(a)〜(d)は上記ふとんカバーにふとんを収納する操作例を示している。
【図4】第2形態のふとんカバーを模式的に示し、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は前又は後端面図、(d)は(a)のC部内側構成を模式的に示す拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1,1A…ふとんカバー(10,11は前後部、12は両側部)
2…布(2Aは上側の布、2Bは下側の布)
3…スライドファスナー(3Aは一方ファスナー、3Bは他方ファスナー)
5〜9…縫製部
13,14…ふとんカバーの前後収容部
18…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形袋状に形成されると共に、カバー周囲部の一部に設けられたスライドファスナーを有し、前記スライドファスナーを開閉操作してふとんを袋状内に出し入れするふとんカバーにおいて、
前記カバー周囲部のうち、前部から両側の左右前部分、及び後部から両側の左右後部分を縫製することによりカバー前後に断面コ形状の前後収容部をそれぞれ形成し、かつ、両側にあって前記縫製された前記左右前部分と前記左右後部分との間に前記スライドファスナーをそれぞれ設けたことを特徴とするふとんカバー。
【請求項2】
前記両側の左右前部分及び左右後部分の各長さ(M)は10〜15cmである請求項1に記載のふとんカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−285226(P2009−285226A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141774(P2008−141774)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(504398812)
【Fターム(参考)】