説明

べた基礎構造

【課題】 べた基礎埋設面積を少なくし、べた基礎のために確保すべき地耐力の影響範囲
を狭くすること。
【解決手段】 ベース11の外縁に基礎梁12を備えたべた基礎10を、地盤1に設ける
べた基礎構造において、べた基礎10の基礎梁12をベース11の外縁から地盤1よりも
上方かつ外方にまで張り出し形成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はべた基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の基礎として、耐久性や基礎断熱の利点から、特許文献1に記載の如くのべた基礎
が採用されている。従来のべた基礎構造は、ベースの外縁から鉛直に基礎梁を立上げてい
る。
【特許文献1】特開2002-285562
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のべた基礎構造には以下の問題点がある。
(1)べた基礎の基礎梁を地盤に埋設したベースの外縁から鉛直に立上げたから、べた基
礎の外周を含む全体が地盤に埋設される。このため、べた基礎埋設面積が大きく、掘削・
残土・鉄筋・コンクリート量が多いし、土留めや盛土掘下げ、隣接地耐力の干渉範囲が広
がる。また、べた基礎のために確保すべき地耐力の影響範囲がべた基礎の外周の広い範囲
に及ぶし、敷地境界までの配管類の埋設スペースにも余裕がない。
【0004】
(2)べた基礎の基礎梁を地盤に埋設したベースの外縁から鉛直に立上げたから、建物の
土台や柱を基礎梁の上に接合する作業は、べた基礎の下方から行なうことができない。こ
のため、基礎梁にアンカーボルトを埋込んでおき、このアンカーボルトに孔付き土台や柱
脚フランジを上から締結作業するものになり、土台や柱の接合作業性が悪い。
【0005】
本発明の課題は、べた基礎埋設面積を少なくし、べた基礎のために確保すべき地耐力の
影響範囲を狭くすることにある。
【0006】
本発明の他の課題は、べた基礎の下方から基礎上構造物のための作業を行なうスペース
を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ベースの外縁に基礎梁を備えたべた基礎を、地盤に設けるべた基礎
構造において、べた基礎の基礎梁をベースの外縁から地盤よりも上方かつ外方にまで張り
出し形成したものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記べた基礎の地盤よりも上方かつ
外方に張り出された基礎梁の下面に、基礎上構造物のための作業用孔を設けたものである

【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記べた基礎の地盤よりも上
方かつ外方に張り出された基礎梁の下面から地中に、断熱材を配設するようにしたもので
ある。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において更に、前記べた基礎の基礎
梁を水平に対し傾斜状にするようにしたものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において更に、前記べた基礎の傾斜状基礎梁を地下
に延長し、べた基礎の内側に地下室を形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1)
(a)べた基礎の基礎梁をベースの外縁から地盤よりも上方かつ外方にまで張り出し形成
したから、べた基礎の外周より内側の地盤にそのベースを埋設するものになり、べた基礎
埋設面積が少なくなる。このため、掘削・残土・鉄筋・コンクリート量が減少し、土留め
や盛土掘下げ、隣接地耐力の干渉等の緩和範囲が広がる。また、べた基礎のために確保す
べき地耐力の影響範囲が狭まり、敷地境界までの配管類の埋設スペースに余裕ができる。
【0013】
(請求項2)
(b)べた基礎の地盤よりも上方かつ外方に張り出された基礎梁の下面に、基礎上構造物
のための作業用孔を設けた。従って、木造の土台では、基礎梁の下面の作業用孔から挿入
される木ねじを直接土台に接合できる。また、鉄骨柱脚では、基礎梁の下面の作業用孔か
ら挿入されるタッピングねじを直接柱脚に接合できる。
【0014】
(請求項3)
(c)べた基礎の地盤よりも上方かつ外方に張り出された基礎梁の下面から地中に、断熱
材を配設した。従って、べた基礎の地盤埋設部分から外方に離れたところで外断熱し、地
耐力の影響範囲を避けて地中深く断熱し、凍結深度対策できる。
【0015】
(請求項4)
(d)べた基礎の基礎梁を水平に対し傾斜状にすることにより、基礎梁の型枠を平坦にで
きるし、地下への延長が容易になる。
【0016】
(請求項5)
(e)べた基礎の傾斜状基礎梁を地下に延長し、べた基礎の内側に地下室を形成できる。
地下室のための掘下げを傾斜面で行なえ、山止めや縦型枠を省略してオープンカットで施
工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は実施例1のべた基礎構造を示す模式図、図2は実施例1のべた基礎構造における
土台接合作業方法を示す模式図、図3は実施例2のべた基礎構造を示す模式図、図4は実
施例3のべた基礎構造を示す模式図、図5は実施例4のべた基礎構造を示す模式図、図6
は実施例5のべた基礎構造を示す模式図、図7は実施例6のべた基礎構造を示す模式図で
ある。
【実施例】
【0018】
(実施例1)(図1、図2)
図1において、地盤1にはべた基礎10の一部が埋設される。べた基礎10は平板状の
ベース11の外縁に基礎梁12を備える。べた基礎10は基礎梁12をベース11の外縁
から地盤1の表面よりも上方かつ外方にまで張り出し形成するものであり、基礎梁12を
水平に対し傾斜状にしている。べた基礎10は皿鉢形状のシェル構造をなし、地盤1に埋
設されて地盤1に接するベース11及び基礎梁12の接地面を皿鉢形状にしている。
【0019】
べた基礎10はベース11及び基礎梁12を埋設する地盤1のうち、べた基礎10の外
周寄りの一部、本実施例では基礎梁12に対応する部分を地耐力無負担範囲1Bとし、残
部を地耐力負担範囲1Aとする。
【0020】
即ち、べた基礎10(ベース11及び基礎梁12)の四周又は相対する二辺(四周のう
ちの一辺であっても、三辺であっても可)の基礎梁12の範囲(地耐力無負担範囲1B)
を、地耐力のない片持ち状態メカニズムとするものである。本実施例では、地耐力負担範
囲1Aと地耐力無負担範囲1Bの境界部を、べた基礎10のベース11と基礎梁12の境
界部に合致させた。但し、地耐力負担範囲1Aと地耐力無負担範囲1Bの境界部は、べた
基礎10のベース11の中間部に合致させても良いし、べた基礎10の基礎梁12の中間
部に合致させても良い。
【0021】
実施例1によれば、べた基礎10の外周の一部に対応する部分の地盤1を地耐力無負担
範囲1Bとし、残部を地耐力負担範囲1Aとした。従って、べた基礎10の外周に対応す
る部分の地盤1に盛土やのり面を含むときにも、べた基礎10に必要な地耐力を容易に確
保できる。べた基礎10の外周より内側の地盤1だけを地耐力負担範囲1Aとし、外周の
地耐力を利用せず、地際での地耐力の影響範囲を小さくするから、隣接家屋等のための地
耐力との干渉を生じない。
【0022】
また、実施例1によれば、べた基礎10の接地面を皿鉢形状にしたから、べた基礎10
をシェル構造にし、地耐力を受け易くすることができる。
【0023】
べた基礎10は、基礎梁12を前述の如く、ベース11の外縁から地盤1の表面よりも
上方かつ外方にまで張り出し形成し、この地盤1の表面よりも上方かつ外方に張り出し形
成した基礎梁12の下面に基礎上構造物(例えば1階建物2の土台3A)のための作業用
孔13を設けた。図2に示す如く、作業用孔13に下から挿入される木ねじ14Aを木製
土台3Aに直接接合できる。
【0024】
べた基礎10は、地盤1の表面よりも上方かつ外方に張り出し形成した基礎梁12の下
面から地中に、断熱材20を配設する。べた基礎10のための地耐力の影響範囲(地耐力
負担範囲1A)を避けて、べた基礎10のベース11及び基礎梁12の周辺の地中深くま
で断熱材20によって外断熱でき、凍結深度対策できる。断熱材20は基礎梁12の上端
側側面を覆う必要がなく(図1)、断熱材20により覆われない基礎梁12の外側面をシ
ロアリ蟻道分断面12Aとすることができる(図1)。地盤1の地耐力無負担範囲1Bの
うち、断熱材20によって外断熱された範囲には、配管類40を埋設することもできる(
図1)。べた基礎10の外断熱不足分は、基礎梁12の内側面に設けた局部断熱材21に
より補助できる(図1)。
【0025】
実施例1によれば、べた基礎10の基礎梁12をベース11の外縁から地盤1よりも上
方かつ外方にまで張り出し形成したから、べた基礎10の外周より内側の地盤1にそのベ
ース11を埋設するものになり、べた基礎埋設面積が少なくなる。このため、掘削・残土
・鉄筋・コンクリート量が減少し、土留めや盛土掘下げ、隣接地耐力の干渉等の緩和範囲
が広がる。また、べた基礎10のために確保すべき地耐力の影響範囲が狭まり、敷地境界
までの配管類の埋設スペースに余裕ができる。
【0026】
また、実施例1によれば、べた基礎10の地盤1よりも上方かつ外方に張り出された基
礎梁12の下面に、基礎上構造物のための作業用孔13を設けた。従って、木造の土台3
Aでは、基礎梁12の下面の作業用孔13から挿入される木ねじ14Aを直接土台3Aに
接合できる。
【0027】
また、実施例1によれば、べた基礎10の地盤1よりも上方かつ外方に張り出された基
礎梁12の下面から地中に、断熱材20を配設した。従って、べた基礎10の地盤埋設部
分から外方に離れたところで外断熱し、地耐力の影響範囲を避けて地中深く断熱し、凍結
深度対策できる。
【0028】
また、実施例1によれば、べた基礎10の基礎梁12を水平に対し傾斜状にすることに
より、基礎梁12の型枠を平坦にできるし、地下への延長が容易になる。
【0029】
(実施例2)(図3)
図3の実施例2が実施例1と異なる点は、建物2の床4のための束5(管柱でも可)を
支持する梁15を、べた基礎10の相対する基礎梁12の内側面に架けたことにある。尚
、束5や管柱はべた基礎10のベース11に立てても良い。
【0030】
(実施例3)(図4)
図4の実施例3が実施例1と異なる点は、べた基礎10の基礎梁12を階段状にしたこ
とにある。べた基礎10の外断熱が容易になる。
【0031】
(実施例4)(図5)
図5の実施例4が実施例1と異なる点は、べた基礎10の基礎梁12を湾曲状にしたこ
とにある。べた基礎10の外観性を向上できる。
【0032】
(実施例5)(図6)
図6の実施例5が実施例1と異なる点は、べた基礎10の傾斜状基礎梁12を地下深く
延長し、べた基礎10の内側に地下室16を形成したことにある。
【0033】
本実施例では、地盤1における地耐力負担範囲1Aと地耐力無負担範囲1Bの境界部を
、べた基礎10の基礎梁12の中間部に合致させた。
【0034】
実施例5によれば、地下室16のための掘下げを傾斜面で行なえ、山止めや縦型枠を省
略してオープンカットで施工できる。また、平坦型枠で施工し、地下室16の防水面を連
続完結できる。
【0035】
尚、建物2の床下(半地下室16)の階高が1.4m以下の場合、階として扱われず、収
納等に有効に利用できる。
【0036】
(実施例6)(図7)
図7の実施例6が実施例5と異なる点は、べた基礎10の基礎梁12の下面に設けた作
業用孔13に、建物2の鉄骨柱脚3Bのための接合金物13Aを埋設したことにある。作
業用孔13の接合金物13Aに下から挿入されるボルト14Bを鉄骨柱脚3Bに直接接合
できる。
【0037】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に
限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明
に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は実施例1のべた基礎構造を示す模式図である。
【図2】図2は実施例1のべた基礎構造における土台接合作業方法を示す模式図である。
【図3】図3は実施例2のべた基礎構造を示す模式図である。
【図4】図4は実施例3のべた基礎構造を示す模式図である。
【図5】図5は実施例4のべた基礎構造を示す模式図である。
【図6】図6は実施例5のべた基礎構造を示す模式図である。
【図7】図7は実施例6のべた基礎構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 地盤
10 べた基礎
11 ベース
12 基礎梁
13 作業用孔
16 地下室
20 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースの外縁に基礎梁を備えたべた基礎を、地盤に設けるべた基礎構造において、
べた基礎の基礎梁をベースの外縁から地盤よりも上方かつ外方にまで張り出し形成した
ことを特徴とするべた基礎構造。
【請求項2】
前記べた基礎の地盤よりも上方かつ外方に張り出された基礎梁の下面に、基礎上構造物
のための作業用孔を設けた請求項1に記載のべた基礎構造。
【請求項3】
前記べた基礎の地盤よりも上方かつ外方に張り出された基礎梁の下面から地中に、断熱
材を配設する請求項1又は2に記載のべた基礎構造。
【請求項4】
前記べた基礎の基礎梁を水平に対し傾斜状にする請求項1〜3のいずれかに記載のべた
基礎構造。
【請求項5】
前記べた基礎の傾斜状基礎梁を地下に延長し、べた基礎の内側に地下室を形成する請求
項4に記載のべた基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−77467(P2006−77467A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262731(P2004−262731)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】