説明

ほぐれ性改善用油脂組成物、ほぐれ性改善用油脂組成物を利用した非焼成食品、および非焼成食品の製造方法

【課題】澱粉含量の多い非焼成食品のほぐれ性が良好で、水分による乳化剤分離が起こりにくい、ほぐれ性改善用油脂組成物を提供することである。また、粉末ソースが焦げにくいほぐれ性改善用油脂組成物を提供することである。
【解決手段】ソルビタンモノラウリン酸エステルを0.1〜0.8質量%含有することを特徴とするほぐれ性改善用油脂組成物。同ほぐれ性改善用油脂組成物には、さらにグリセリンモノ脂肪酸エステルを0.05〜0.5質量%含有させることが好ましく、グリセリンモノ脂肪酸エステルは、構成脂肪酸の50質量%以上が、不飽和脂肪酸であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぐれ性改善用油脂組成物、およびそれを利用した非焼成食品と非焼成食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炒飯、中華蒸し麺、ゆでパスタなどの澱粉が多く、表面に水分が多い食品は、ご飯や麺、パスタなどが付着するなどの問題が発生しやすい。従来よりこれらの問題を改善するために、油脂をコーティングし、ご飯、麺、パスタなどの相互の付着を防止し、ほぐれ性を改善することが行われてきた。特に、コーティングに用いる油脂中に特定の乳化剤を含有させることで、これらのほぐれ性改善および食品のツヤだし等の効果が認められていた(特許文献1)。
【0003】
しかし、これまでの乳化剤を配合したほぐれ性改善用油脂組成物は、含まれる乳化剤の水との親和性が高く、乳化剤を含む油脂組成物は水分が高くなる傾向があり、また、油脂組成物が高水量になると乳化剤成分が分離しやすくなるとの問題が発生した。一度、分離すると再度の均質化が難しく、さらにご飯、蒸し麺、ゆでパスタへの調理時に不均一になる。ご飯、蒸し麺、ゆでパスタへのスプレー等で目詰まりを起すなどのトラブルがあった。特に、ご飯、蒸し麺、ゆでパスタ等の調理環境は湿度が高く、より耐湿性の高いものが望まれている。また、粉末ソースで味付けする焼そばに利用する場合、粉末ソースが焦げるという問題も発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−14139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、澱粉含量の多い非焼成食品のほぐれ性が良好で、水分による乳化剤分離が起こりにくい、ほぐれ性改善用油脂組成物を提供することである。また、粉末ソースが焦げにくいほぐれ性改善用油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ソルビタンモノラウリン酸エステルを特定量含有する油脂が上記の課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、次の(1)〜(8)からなっている。
(1)ソルビタンモノラウリン酸エステルを0.1〜0.8質量%含有することを特徴とするほぐれ性改善用油脂組成物。
(2)ソルビタンモノラウリン酸エステルを0.1〜0.8質量%、グリセリンモノ脂肪酸エステルを0.05〜0.5質量%含有することを特徴とする(1)記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
(3)前記グリセリンモノ脂肪酸エステルが、グリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の50質量%以上が不飽和脂肪酸であることを特徴とする(2)記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
(4)ほぐれ性改善用油脂組成物中の水分量が1500ppm以下であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
(5)ほぐれ性改善用油脂組成物が、スプレー用途であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
(6)(1)〜(5)のほぐれ性改善用油脂組成物を非焼成食品にコーティングして製造されたことを特徴とする非焼成食品。
(7)(1)〜(5)のほぐれ性改善用油脂組成物を非焼成食品にコーティングして製造することを特徴とする非焼成食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、澱粉の多い非焼成食品のほぐれ性が良好で、水分による乳化剤分離が起こり難いことから、ほぐれ性改善用油脂組成物の保存性及び調理時の作業性が良好である。さらに、焼そば等に用いると、焼そばの粉末ソースが焦げることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のほぐれ性改善油脂組成物は、ソルビタンモノラウリン酸エステルを0.1〜0.8質量%含有する。ソルビタンモノラウリン酸エステルの量が少なすぎるとほぐれ性改善効果が期待できず、多すぎると水分により沈澱を生じやすくなり、粉末ソースの焦げ付きやすくなる。ソルビタンモノラウリン酸エステルは、0.3〜0.7質量がより好ましく、0.4〜0.6質量%がさらに好ましい。
【0010】
なお、本発明のほぐれ性改善油脂組成物は、通常の食用油とブレンドして製造される。通常の食用油量は、ほぐれ性改善油脂組成物中、95〜99.9質量%であることが好ましく、98.7〜99.9質量%がより好ましい。更に好ましくは、99.3〜99.7質量%である。通常の食用油は、一般に食用として使用される動植物油脂及びその水素添加油、分別油、エステル交換油などを単独あるいは組合わせて用いることができる。特に、食用油の精製の程度は限定するものではないが、ブレンド後にろ過以外の精製を行うとソルビタンモノラウリン酸エステルが、除去・分解されることもあるので、ブレンド後はろ過以外の精製を行わないことが好ましい。また、動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。室温で固形化するものは、使用時に加熱により溶解させる必要があるので、液状油が好ましい。
【0011】
本発明において、ソルビタンモノラウリン酸エステルの他に、グリセリンモノ脂肪酸エステルを0.05〜0.5質量%含有させることで、ほぐれ性改善効果を有しながら、さらに水分による沈澱防止や粉末ソースの焦げ付きを防止することができる。グリセリンモノ脂肪酸エステル含有量は、0.1〜0.3質量%がより好ましい。
【0012】
本発明に用いられるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、グリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が不飽和脂肪酸の多いものが低温で液状であることから好ましい。特に好ましいのは、構成する脂肪酸の50質量%以上が不飽和脂肪酸であり、60質量%がより好ましい。最も好ましくは、80質量%以上である。なお、不飽和脂肪酸としてオレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが好ましく、同不飽和脂肪酸の多い、サフラワー油の脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリンモノ脂肪酸エステルが好ましい。
【0013】
本発明の、ほぐれ性改善油脂組成物は、組成物中の水分量を抑えることで乳化剤の分離を抑えることができる。通常、製造時は原料由来の水分により50〜500ppmの水分量となるが、経時的に水分を吸湿し、水分量が増加する。水分により乳化剤が沈澱した場合、再度の溶解は難しい。本発明品は1500ppm以下で、特に乳化剤の分離を抑制することができる。本発明品を1500ppm以下の水分量で用いるとともに、水分量増加を抑制するために、湿度の低い金属やガラス素材の密閉容器中に保管することが好ましい。
【0014】
本発明の、ほぐれ性改善油脂組成物は、非焼成食品に用いるが、非焼成食品としては、特に限定するものではないが、炒飯、焼そば、餃子、パスタなどが挙げられる。ほぐれ性改善油脂組成物は、非焼成食品を蒸す・茹でる後、コーティングして用いることができる。また、コーティングの方法としては、スプレーのほか、添加して混合してコーティングする方法があるが、スプレーであることが好ましく、ほぐれ性改善油脂組成物がスプレー用途であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の非焼成食品は、上記本発明のほぐれ性改善油脂組成物を非焼成食品にコーティングして製造したものであり、本発明の非焼成食品の製造方法は、上記本発明のほぐれ性改善油脂組成物を非焼成食品にコーティングして製造することを特徴とする。非焼成食品に対するほぐれ性改善油脂組成物の使用量は、特に限定するものではないが、非焼成食品の重量に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。また、0.5〜3質量%でありことがより好ましい。
【0016】
また、本発明において、ほぐれ性改善油脂組成物中には、本発明の効果を損ねない程度に、その他の成分を加えることができる。その他の成分とは、例えば、一般的な油脂に用いられる成分(食品添加物など)である。これらの成分としては、例えば、酸化防止剤、結晶調整剤、食感改良剤等が挙げられ、脱臭後から充填前に添加されることが好ましい。
【0017】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、アスコルビン酸類、フラボン誘導体、コウジ酸、没食子酸誘導体、カテキンおよびそのエステル、フキ酸、ゴシポール、セサモール、テルペン類等が挙げられる。その他の乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリグリセリン縮合リシノレート、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、ワックス類、ステロールエステル類等が挙げられる。着色成分としては、例えば、カロテン、アスタキサンチン等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
〔実施例1〜5、比較例1〕
精製なたね油(日清オイリオグループ株式会社製)と乳化剤を表1に示す配合(質量%)で溶解させ、油脂組成物を得た。同油脂のほぐれ性・粉末ソースの焦げ付きの評価、及び耐沈澱性を評価した。結果を表1に示す。
<ほぐれ性・粉末ソースの焦げ付きの評価>
市販の生麺(「蒸し焼きそば」 東洋水産株式会社製)を3分30秒茹で、水で冷却した後、水を分離した。油脂組成物を麺に対して3質量%スプレーして塗布してサンプル麺を得た。24時間5℃にて冷蔵し、サンプル麺をほぐし、ほぐれ性を比較した。
さらに、フライパンに日清サラダ油を5g入れ、強火で加熱した後、サンプル麺130gを入れ、水50gを加える。水がなくなったところで、「蒸し焼きそば」(東洋水産株式会社製)に添付されていた粉末ソースを加え、混ぜながら炒めた。粉末ソースの焦げ付きを比較した。

ほぐれ性:◎麺のほぐれ性がよく、わずかな塊しか残らない。
○麺のほぐれ性がよいが、やや塊が残る。
△麺のほぐれ性は、あまり改善がみられない。
×麺のほぐれ性は、全く改善されていない。

焦げ付き:◎粉末ソースの焦げ付きがみられない。
○粉末ソースの焦げ付きが、若干みられるが、問題ない程度。
×粉末ソースの焦げ付きが目立つ。

<耐沈澱性>
油脂組成物100gを200mlビーカーに入れ、油脂組成物中の水分量が1000〜2000ppmになるように水を徐々に加水・溶解させ、乳化剤の溶解状態を確認した。

耐沈澱性:◎白濁がないか、やや白濁がある程度であり、乳化剤の沈殿物はない。
○白濁はあるが、乳化剤の沈殿物はない。
△やや乳化剤の沈殿物がある。
×かなりの乳化剤の沈澱がある。
【0020】
【表1】

※エマゾールL−10V(ソルビタンモノラウレート:花王株式会社製 HLB8.6)
※サンソフトNo.8070V(グリセリンモノオレエート:太陽化学株式会社製)
※エマルジーMU(グリセリンモノ脂肪酸エステル(サフラワー油脂肪酸):理研ビタミン株式会社製)
【0021】
本発明の分別方法によって得られる実施例1〜5は、ほぐれ性が良好であり、さらに、油脂組成物中の水分量が上昇しても沈澱が生じ難いことが分かる。また、同配合は、粉末ソースの焦げ付きも少なく良好であることが分かる。
【0022】
〔吸湿の影響〕
実施例3及び4の水分量1500ppmのサンプルを用いて、前記ほぐれ性・焦げ付きの試験を行ったが、問題なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルビタンモノラウリン酸エステルを0.1〜0.8質量%含有することを特徴とするほぐれ性改善用油脂組成物。
【請求項2】
ソルビタンモノラウリン酸エステルを0.1〜0.8質量%、グリセリンモノ脂肪酸エステルを0.05〜0.5質量%含有することを特徴とする請求項1記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
【請求項3】
前記グリセリンモノ脂肪酸エステルが、グリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の50質量%以上が不飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項2記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
【請求項4】
ほぐれ性改善用油脂組成物中の水分量が1500ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
【請求項5】
ほぐれ性改善用油脂組成物が、スプレー用途であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のほぐれ性改善用油脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のほぐれ性改善用油脂組成物を非焼成食品にコーティングして製造されたことを特徴とする非焼成食品。
【請求項7】
請求項1〜5のほぐれ性改善用油脂組成物を非焼成食品にコーティングして製造することを特徴とする非焼成食品の製造方法。

【公開番号】特開2013−56(P2013−56A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134545(P2011−134545)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】