説明

まくら木の連結構造

【課題】 耐摩耗性が高く長期間使用可能であり、製作しやすいまくら木を提供する。
【解決手段】 本発明のまくら木1は、長尺方向L、幅方向W及び高さ方向Hを有する長尺体であって、本体部10と耐摩耗部11とを有するものである。耐摩耗部11は本体部10の下側に位置して高さ方向に層状となっており、耐摩耗部11には下側に向かって突出する突条部20が設けられている。また、耐摩耗部11は、ガラス繊維を含む樹脂を粉状体として、前記粉状体を用いた材料を固めて成形したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まくら木に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に用いられるまくら木は長手方向の長さが軌間より長い長尺状であり、レール方向に対して長尺方向をほぼ垂直に配置し、各まくら木は2本のレールと締結されている。
そして、レール上を列車が通過する場合には、両側の車輪から受ける力をそれぞれのレールを介して同じまくら木が受けている。
【0003】
レールの継ぎ目や分岐部では、レールの曲げ剛性が他の部分に比べて低い。そのため、バラスト道床などの場合には、列車荷重によりバラストの圧密化が進みやすい。そして、圧密化が進むと列車通過時に上下動(いわゆるあおり現象)が発生しやすくなり、かかる上下動が起こると乗り心地が悪くなり、軌道管理の問題もある。
【0004】
まくら木の材料に、ポリウレタン発泡樹脂を長繊維で強化した材料を用いたものがある。このような樹脂材料で製作されたまくら木は、通常のまくら木よりも耐摩耗性などが優れている。
そして、このような技術は特許文献1などに記載されている。
【特許文献1】特公昭48−36420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まくら木の耐摩耗性を改善することにより、まくら木の点検・交換の頻度を小さくすることができる。
【0006】
一般に、同じ種類の樹脂を用いた場合、発泡して密度が小さい樹脂ほど、耐摩耗性が小さくなる。しかしながら、まくら木に使用する樹脂の密度を大きくすると、同じ大きさのまくら木でも重くなってしまい、取付作業などが行いにくくなってしまう。
そのため、まくら木の耐摩耗性と軽量化を両立させることは難しかった。
【0007】
また、列車通過時など、まくら木とバラスト道床との間に力が作用するが、まくら木とバラスト道床との間の道床抵抗によってまくら木のずれを防いでいるが、この道床抵抗が小さいとまくら木がずれてしまう。
【0008】
そこで、まくら木に突出する部分を設けることによって表面を凹凸状として、道床抵抗を大きくすることができる。しかし、長繊維で強化した樹脂材料を用いたまくら木の場合、一旦、角柱状のものを成形して、その後に、突出する部分に取り付けたり、突出する部分以外の部分を削ったりしなければならなかった。
さらに、突出する部分を複数設ける場合には、長尺体のものを成形した後に行う、取り付けたり、削ったりする作業に多くの時間がかかってしまう。
【0009】
また、上記のような樹脂を用いたまくら木の場合、表面研磨の工程、形状加工の工程、切断の工程など、製造過程などで切削粉などの粉体が生じる。このような粉体の処理は、廃棄物として処理することとなり、環境問題となるおそれがある。
【0010】
そこで、耐摩耗性が高く長期間使用可能であり、製作しやすいまくら木を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、長尺方向、幅方向及び高さ方向を有する長尺体であって、本体部と耐摩耗部とを有するものであり、耐摩耗部は本体部の下側に位置して高さ方向に層状となっており、耐摩耗部には、下側に向かって突出する突条部が設けられており、本体部は長尺方向に配向している長繊維を有する発泡樹脂であり、耐摩耗部は、ガラス繊維を含む樹脂を粉状体として、前記粉状体を用いた材料を固めて成形したものであることを特徴とするまくら木である。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、耐摩耗部は本体部の下側に位置して高さ方向に層状となっており、耐摩耗部には、下側に向かって突出する突条部が設けられ、耐摩耗部はガラス繊維を含む樹脂を粉状体として、前記粉状体を用いた材料を固めて成形したものであるので、突条部を有する耐摩耗部の成形がしやすく、まくら木の耐摩耗性を向上させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、突条部は幅方向に延びるものであって、長尺方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のまくら木である。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、突条部は幅方向に延びるものであって、長尺方向に複数設けられているので、道床横抵抗力が大きく、まくら木の長手方向に作用する力に対して抵抗力を大きくすることができ、まくら木の使用時にずれにくい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、本体部は長尺方向に配向している長繊維を有するポリウレタン発泡樹脂であり、耐摩耗部は、ガラス繊維を含むポリウレタン樹脂を粉状体として、前記粉状体を用いた材料を固めて成形したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のまくら木である。
【0016】
請求項3に記載のまくら木は、本体部及び耐摩耗部がポリウレタン樹脂であるので接合しやすく、また、本体部の製造の際に発生する粉状体を用いて耐摩耗部を成形することが可能である。
【0017】
また、耐摩耗部の繊維は配向していないので、いずれの方向に対しても補強効果を有しており、その密度を本体部よりも大きくすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のまくら木は、耐摩耗性が高く長期間使用することができ、また製作しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態におけるまくら木の斜視図である。図2は、図1のまくら木の分解斜視図である。
【0020】
本発明の第1の実施形態におけるまくら木1は、図1に示されており、本体部10と耐摩耗部11とを有するものである。
また、まくら木1は長尺体であって、長尺方向L、幅方向W及び高さ方向Hを有している。そして、長尺方向に対向する端面23、24、幅方向に対向する側面25、26、高さ方向に対向する上面27及び下面28を有している。
まくら木1を使用する場合には、高さ方向Hを上下方向にして上面27を上側となるようにし、長尺方向Lをレールに対してほぼ垂直な方向となるように、レールの下側に配置して使用される。
【0021】
本体部10は、角柱状であり、ガラス長繊維で繊維強化されたポリウレタン樹脂が用いられている。また、この長繊維の配向方向はまくら木1の長尺方向Lである。また、本体部10は成形時に発泡した発泡樹脂である。
【0022】
耐摩耗部11は本体部10の下側に位置しており、本体部10とは耐摩耗部11は高さ方向Hに層状となっている。また、耐摩耗部11は板状であって、下側に向かって突出する突条部20が設けられている。耐摩耗部11の長尺方向Lの長さ、幅(幅方向Wの長さ)は、本体部10と同じであるが、厚み(高さ方向Hの長さ)は本体部10より短い。そして、耐摩耗部11の厚みは、まくら木1の高さ(突条部20の部分を除く)に対して、5%以上30%以下であることが望ましい。5%未満だと破損等の問題がおき易く、30%を超えると、その分、長尺方向に配向している長繊維を有する発泡樹脂からなる本体部の厚みが薄くなり、十分な曲げ強度が得られにくくなる。
【0023】
耐摩耗部11の突条部20は、複数設けられており、それぞれの突条部20は幅方向Wに延びている。そして、突条部20の両端は、まくら木1の側面25、26に位置しており、幅方向Wの全域に設けられている。
突条部20の形状は、先端(下方)側ほど幅が狭い形状であり、断面形状が台形状である。なお、突条部20の形状は他の形状を採用することができ、例えば、断面形状が長方形状のものなどを採用することができる。
【0024】
また、突条部20同士の間は凹部21となり、まくら木1の使用時には、バラストが入って道床抵抗を大きくさせることができる。本実施形態では、突条部20が幅方向に延びるものであるので、長尺方向Lに働く力に対してまくら木1がずれにくい。
【0025】
各突条部20は、全て同じ形状であり、図2に示されるように、突出長さA(高さ方向Hの長さ)、先端付近の幅B(長尺方向Lの長さ)が同じである。
具体的には、突条部20の突出長さAは、5mm以上50mm以下であり、まくら木1の高さ(突条部20の部分を除く)に対して、3%以上40%以下であることが望ましい。また、突条部20の先端付近の幅Bは、5mm以上100mm以下であり、まくら木1の長尺方向の長さに対して、0.1%以上10%以下であることが望ましい。
【0026】
本実施形態の突条部20は、8ヵ所設けられているが、隣接する突条部20との間隔は等しく、その距離であるピッチPは、100mm以上300mm以下であり、幅Bに対して、1倍以上20倍以下であることが望ましい。
【0027】
耐摩耗部11は、ガラス繊維を有するウレタン樹脂である。しかしながら、耐摩耗部11に用いられるガラス繊維は、本体部10のように長繊維が用いられておらず、比較的短い繊維である。
また、耐摩耗部11は発泡樹脂でなく、本体部10よりも耐摩耗性がよい。
【0028】
まくら木1の製作は、本体部10及び耐摩耗部11を別々に形成し、これらを接着剤などで接合することにより行われる。
本体部10は、束状のガラス長繊維に液状の樹脂を含浸させ、これを加熱させて発泡させながら成形する方法により連続成形し、これを切断したものが用いられる。
【0029】
耐摩耗部11は、本体部10と同じ樹脂であるポリウレタン樹脂が用いられ、ガラス繊維を有するものであるが、本体部10とは形成の方法が異なるものである。具体的には、一旦成形されたポリウレタンガラス繊維強化樹脂を粉状としたものなどの粉状体を用い、この粉状体にバインダーを混合した材料を圧縮成形したものが用いられる。
【0030】
本実施形態の耐摩耗部11の密度は1.40g/cm3であり、本体部10の密度は0.74g/cm3であり、耐摩耗部11の密度は、本体部10の密度に比べて大きい。
また、耐摩耗部11は、1.25/cm3以上1.50g/cm3以下の密度のものを用いることができ、本体部10は、0.60g/cm3以上0.90g/cm3以下の密度のものを用いることができる。
【0031】
本実施形態に用いられる原料は粉状体であり、平均粒径50μmからなる粉体である。また補強材として、ガラス繊維強化ポリウレタン樹脂から発生した針状乃至棒状である、長さ(平均)が50mm程度、幅が2mm程度の材料を用いることもできる。補強材の割合は、10〜30wt%が好ましい。
【0032】
また、バインダーは、成形時に粉状体同士を結着させることができるものであり、耐摩耗部11全体を固化させることができるものである。本実施形態では、ポリウレタン樹脂の粉状体であるので、MDI(Methylene Diphenyl Isocyanate)などのイソシアネートが用いられ、ポリウレタン樹脂同士を結着させることができる。
【0033】
バインダーの割合は特に限定されないが、材料全体の重量(粉状体とバインダーの合計の重量)に対するバインダーの重量の割合は、15%以上40%以下が望ましい。かかる割合が少ないと、破砕物の結着が不十分となり、また多すぎると、成形時に外部に排出されるなどして無駄となってしまうおそれがあるからである。
【0034】
そして、粉状体とバインダーを混合した材料を成形用の金型内に、均一となるように入れて、圧縮及び加熱して所定の形状となるように成形する。粉状体には、ガラス繊維が含まれているが、単に材料を金型内に入れるので、この繊維の方向はランダムとなり、成形後の成形物の繊維は配向していない。
本実施形態の耐摩耗部11の成形に用いる金型は、突条部20に対応する位置が凹んでおり、成形によって突条部20が成形されるので、後加工が不要である。
【0035】
この成形の条件は、圧力70〜90kgf/cm2であり、温度80〜120℃で行う。
【0036】
さらに、耐摩耗部11を本体部10に取り付ける。この取り付けは、接着剤など用いて行われるが、他の方法によって行うこともできる。
また、耐摩耗部11及び本体部10は同じ樹脂であるポリウレタン樹脂が用いられているので、接着強度を高強度とすることができる。
【0037】
本実施形態のまくら木1では、耐摩耗部11が本体部10の下側に設けられている。かかる部分は、まくら木1の使用時にバラストと接触する部分であり、他の部分より摩耗しやすい部分であり、耐摩耗部11によって摩耗を低減させて、まくら木1を長期間使用することが可能となる。また、耐摩耗部11の厚みは薄く、重量増加は小さく作業性も良い。
【0038】
また、上記実施形態では、耐摩耗部11の成形に用いる材料は、一旦成形された繊維補強樹脂を粉状体として、これにバインダーを混合したものを用いているが、この粉状体の一部に他の粉状体を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるまくら木の斜視図である。
【図2】図1のまくら木の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 まくら木
10 本体部
11 耐摩耗部
20 突条部
L 長尺方向
W 幅方向
H 高さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺方向、幅方向及び高さ方向を有する長尺体であって、本体部と耐摩耗部とを有するものであり、耐摩耗部は本体部の下側に位置して高さ方向に層状となっており、耐摩耗部には、下側に向かって突出する突条部が設けられており、
本体部は長尺方向に配向している長繊維を有する発泡樹脂であり、耐摩耗部は、ガラス繊維を含む樹脂を粉状体として、前記粉状体を用いた材料を固めて成形したものであることを特徴とするまくら木。
【請求項2】
突条部は幅方向に延びるものであって、長尺方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のまくら木。
【請求項3】
本体部は長尺方向に配向している長繊維を有するポリウレタン発泡樹脂であり、耐摩耗部は、ガラス繊維を含むポリウレタン樹脂を粉状体として、前記粉状体を用いた材料を固めて成形したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のまくら木。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−328731(P2006−328731A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151819(P2005−151819)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)