説明

みみずを利用した食物残渣等の処理方法

【課題】みみずを利用して食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換し、有機肥料等として利用し、さらには、みみずコンポストに転換する過程で得られる液肥を圃場の土壌等にコストをかけることなく供給する食物残渣等の処理方法を提供する。
【解決手段】みみずファーム1の箱体2を方形状の周壁21及び底壁22から形成し、底壁22を対向する他側壁から一側壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成するとともに、一側壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口21aを形成する。この箱体2を、開口21aを形成した一側壁が圃場Fの一辺にほぼ面するように、圃場Fの一辺に沿って設置するとともに、箱体2内にみみず飼育床3を敷きつめた後、みみず飼育床3上に食物残渣を散布し、散布された食物残渣をみみずによって分解消化させてみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を圃場Fに導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食物残渣等をみみずを利用して分解消化する処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品工場や飲食店等から発生する食品由来の廃棄物は、産業廃棄物処理業者に委託されて焼却処理あるいは廃棄処理されている。また、各家庭から出る生ゴミも、地方自治体によって焼却処理されている場合がほとんどである。
【0003】
このような食物残渣等を焼却する場合には燃料が必要になり、特に、水分を多量に含む場合には、より多くの燃料を必要とするものである。
【0004】
このため、近年、環境への影響を考慮して、食物残渣等を微生物を利用して分解し、堆肥化して再利用する試みが提案され、実施されている。
【0005】
例えば、出願人は、内部に通水層、みみず育成層を順に積層した筐体を建物の屋上に設置し、建物内で発生した生ゴミをみみずの餌として筐体のみみず育成層上に散布することにより、生ゴミをみみずによって消化させるとともに、その排泄物によって地中微生物による生ゴミの分解を促進させ、生ゴミを堆肥化して植物の育成用土として再利用することを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−86856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したように、みみずを利用して食物残渣等を分解消化し、みみずコンポストを作る場合、例えば、各家庭から出る生ゴミ等を地方自治体体が集めて堆肥化したり、食品工場等で発生する食品由来の廃棄物を産業廃棄物処理業者が堆肥化することを考慮すると、みみずを利用してみみずコンポストを作るみみずファームと、みみずコンポストの消費地、例えば、農家とは、距離的に離れていることから、作られたみみずコンポストを別途消費地に輸送する必要がある。しかも、みみずコンポストを作る過程で生成される養分豊かな液肥を有効に活用することができないものである。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、生ゴミや食品由来の廃棄物といった食物残渣等をみみずを利用して分解消化してみみずコンポストに転換し、転換されたみみずコンポストを有機肥料等として、さらには、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を圃場の土壌等にコストをかけることなく供給することのできるみみずを利用した食物残渣等の処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を対向する他側壁から一側壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成するとともに、一側壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁が圃場の一辺にほぼ面するように、圃場の少なくとも一辺に沿って設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を圃場に導くことを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、複数個の開口を形成した一側壁が穀物や野菜等の農作物の圃場に面するように、圃場の少なくとも一辺に沿って箱体を設置した後、箱体内にみみず飼育床を敷きつめる。次いで、みみず飼育床上に食物残渣等を散布すれば、みみずは、食物残渣等を餌として消化し、排泄物を排泄する。みみずの排泄物は、土壌微生物の活動を活発化させることから、土壌微生物による食物残渣等の分解を促進する。そして、分解された食物残渣等を再びみみずが消化し、排泄物を排泄する。以下、食物残渣等をみみず飼育床上に散布することを繰り返すことにより、食物残渣等は、みみずによって消化されるとともに、土壌微生物によって分解され、一定時間経過後、みみず糞土(みみずコンポスト)に転換される。
【0011】
このようにして、みみずコンポストが得られたならば、箱体からみみずコンポストを取り出し、隣接する圃場に散布し、有機肥料や土壌改良材等として再利用する。また、食物残渣等をみみずコンポストに転換する過程において、有機物を分解することで発生する水分やみみずの尿は、みみずコンポストの養分等を溶かし込みながら底壁に達し、その傾斜面に沿って流下し、開口を通して圃場の土壌に流れ込んでいる。
【0012】
一方、みみずコンポストを取り出したならば、箱体内に再びみみず飼育床を敷きつめ、以下、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、食物残渣等を分解消化させてみみずコンポストに転換し、有機肥料等として取り出すことを繰り返す。
【0013】
この結果、これまで焼却処理あるいは廃棄処理されてきた食物残渣等をみみずによって分解消化してみみずコンポストに転換し、有機肥料等として圃場に還元して安全な穀物や野菜等の農作物を生産することができる。しかも、みみずコンポストは、農作物の圃場に隣接して作られることから、輸送費をかけることなく圃場に供給することができる。また、みみずコンポストに含まれる多量の養分及び大量の微生物を溶かし込んだ液肥も余すことなく圃場の土壌に供給することができ、圃場の土壌を養分豊かに維持し、あるいは、転換し、農作物の成育を促進することができる。
【0014】
本発明は、方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を中間部から対向する一側壁及び他側壁に向かってそれぞれ下り勾配に傾斜する山形状傾斜面に形成するとともに、一側壁及び他側壁の各下端部にそれぞれ底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁及び他側壁がそれぞれ各圃場の一辺にほぼ面するように、隣接する圃場の間に設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を隣接する圃場にそれぞれ導くことを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、それぞれ複数個の開口を形成した一側壁及び他側壁が穀物や野菜等の農作物の各圃場の一辺にほぼ面するように、隣接する圃場の間に箱体を設置した後、箱体内にみみず飼育床を敷きつめる。次いで、みみず飼育床上に食物残渣等を散布すれば、みみずは、食物残渣等を餌として消化し、排泄物を排泄する。みみずの排泄物は、土壌微生物の活動を活発化させることから、土壌微生物による食物残渣等の分解を促進する。そして、分解された食物残渣等を再びみみずが消化し、排泄物を排泄する。以下、食物残渣等をみみず飼育床上に散布することを繰り返すことにより、食物残渣等は、みみずによって消化されるとともに、土壌微生物によって分解され、一定時間経過後、みみず糞土(みみずコンポスト)に転換される。
【0016】
このようにして、みみずコンポストが得られたならば、箱体からみみずコンポストを取り出し、隣接する各圃場にそれぞれ散布し、有機肥料や土壌改良材等として再利用する。また、食物残渣等をみみずコンポストに転換する過程において、有機物を分解することで発生する水分やみみずの尿は、みみずコンポストの養分等を溶かし込みながら底壁に達し、その山形傾斜面に沿って流下し、開口を通して各圃場の土壌に流れ込んでいる。
【0017】
一方、みみずコンポストを取り出したならば、箱体内に再びみみず飼育床を敷きつめ、以下、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、食物残渣等を分解消化させてみみずコンポストに転換し、有機肥料等として取り出すことを繰り返す。
【0018】
この結果、これまで焼却処理あるいは廃棄処理されてきた食物残渣等をみみずによって分解消化してみみずコンポストに転換し、有機肥料等として圃場に還元して安全な穀物や野菜等の農作物を生産することができる。しかも、みみずコンポストは、野菜等の農作物の隣接する圃場の間で作られることから、輸送費をかけることなく各圃場にそれぞれ供給することができる。また、みみずコンポストに含まれる多量の養分及び大量の微生物を溶かし込んだ液肥も余すことなく各圃場の土壌に供給することができ、各圃場の土壌を養分豊かに維持し、あるいは、転換し、農作物の成育を促進することができる。
【0019】
本発明は、方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を対向する他側壁から一側壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成するとともに、一側壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁が列をなす複数本の樹木からなる樹木林における各樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にほぼ面するように、樹木林に沿って設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を樹木林に導くことを特徴とするものである。
【0020】
本発明によれば、果樹等の複数本の樹木が列状に植設されてなる樹木林において、複数個の開口を形成した一側壁が、各樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にほぼ面するように、樹木林に沿って箱体を設置した後、箱体内にみみず飼育床を敷きつめる。次いで、みみず飼育床上に食物残渣等を散布すれば、みみずは、食物残渣等を餌として消化し、排泄物を排泄する。みみずの排泄物は、土壌微生物の活動を活発化させることから、土壌微生物による食物残渣等の分解を促進する。そして、分解された食物残渣等を再びみみずが消化し、排泄物を排泄する。以下、食物残渣等をみみず飼育床上に散布することを繰り返すことにより、食物残渣等は、みみずによって消化されるとともに、土壌微生物によって分解され、一定時間経過後、みみず糞土(みみずコンポスト)に転換される。
【0021】
このようにして、みみずコンポストが得られたならば、箱体からみみずコンポストを取り出し、隣接する樹木林に散布し、有機肥料や土壌改良材等として再利用する。また、食物残渣等をみみずコンポストに転換する過程において、有機物を分解することで発生する水分やみみずの尿は、みみずコンポストの養分等を溶かし込みながら底壁に達し、その傾斜面に沿って流下し、開口を通して樹木林の土壌に流れ込んでいる。
【0022】
一方、みみずコンポストを取り出したならば、箱体内に再びみみず飼育床を敷きつめ、以下、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、食物残渣等を分解消化させてみみずコンポストに転換し、有機肥料等として取り出すことを繰り返す。
【0023】
この結果、これまで焼却処理あるいは廃棄処理されてきた食物残渣等をみみずによって分解消化してみみずコンポストに転換し、有機肥料等として樹木林に還元して安全な果物等を生産することができる。しかも、みみずコンポストは、果物等の樹木林に隣接して作られることから、輸送費をかけることなく樹木林に供給することができる。また、みみずコンポストに含まれる多量の養分及び大量の微生物を溶かし込んだ液肥も余すことなく樹木林の土壌に供給することができ、樹木林の土壌を養分豊かに維持し、あるいは、転換し、樹木の成育を促進することができる。
【0024】
本発明は、方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を中間部から対向する一側壁及び他側壁に向かってそれぞれ下り勾配に傾斜する山形状傾斜面に形成するとともに、一側壁及び他側壁の各下端部にそれぞれ底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁及び他側壁がそれぞれ列をなす複数本の樹木からなる2列の樹木林における各列の樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にそれぞれほぼ面するように、2列の樹木林の間に設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を各列の樹木林にそれぞれ導くことを特徴とするものである。
【0025】
本発明によれば、それぞれ果樹等の複数本の樹木が列状に植設されてなる2列の樹木林において、それぞれ複数個の開口を形成した一側壁及び他側壁が、各列における各樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にそれぞれほぼ面するように、2列の樹木林の間に箱体を設置した後、箱体内にみみず飼育床を敷きつめる。次いで、みみず飼育床上に食物残渣等を散布すれば、みみずは、食物残渣等を餌として消化し、排泄物を排泄する。みみずの排泄物は、土壌微生物の活動を活発化させることから、土壌微生物による食物残渣等の分解を促進する。そして、分解された食物残渣等を再びみみずが消化し、排泄物を排泄する。以下、食物残渣等をみみず飼育床上に散布することを繰り返すことにより、食物残渣等は、みみずによって消化されるとともに、土壌微生物によって分解され、一定時間経過後、みみず糞土(みみずコンポスト)に転換される。
【0026】
このようにして、みみずコンポストが得られたならば、箱体からみみずコンポストを取り出し、各樹木林に散布し、有機肥料や土壌改良材等として再利用する。また、食物残渣等をみみずコンポストに転換する過程において、有機物を分解することで発生する水分やみみずの尿は、みみずコンポストの養分等を溶かし込みながら底壁に達し、その傾斜面に沿って流下し、それぞれ開口を通して各樹木林の土壌に流れ込んでいる。
【0027】
一方、みみずコンポストを取り出したならば、箱体内に再びみみず飼育床を敷きつめ、以下、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、食物残渣等を分解消化させてみみずコンポストに転換し、有機肥料等として取り出すことを繰り返す。
【0028】
この結果、これまで焼却処理あるいは廃棄処理されてきた食物残渣等をみみずによって分解消化してみみずコンポストに転換し、有機肥料等として樹木林に還元して安全な果物等を生産することができる。しかも、みみずコンポストは、果物等の隣接する樹木林の間で作られることから、輸送費をかけることなく各樹木林にそれぞれ供給することができる。また、みみずコンポストに含まれる多量の養分及び大量の微生物を溶かし込んだ液肥も余すことなく各樹木林の土壌にそれぞれ供給することができ、各樹木林の土壌を養分豊かに維持し、あるいは、転換し、樹木の成育を促進することができる。
【0029】
本発明は、設定された中心角の地紙状周壁及び底壁からなり、底壁を対向する弧状の外周壁から内周壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成するとともに、内周壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口を形成した複数個の単位箱体を、その内周壁が樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする直円筒面にほぼ面するように、樹木の周囲に設置するとともに、各単位箱体内にみみず飼育床を敷きつめてなり、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を樹木に導くことを特徴とするものである。
【0030】
本発明によれば、複数個の開口を形成した内側壁が、樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする円を含む直円筒面にほぼ面するように、複数個の単位箱体を樹木の周囲にリング状に設置した後、単位箱体内にそれぞれみみず飼育床を敷きつめる。次いで、各単位箱体のみみず飼育床上に食物残渣等を散布すれば、みみずは、食物残渣等を餌として消化し、排泄物を排泄する。みみずの排泄物は、土壌微生物の活動を活発化させることから、土壌微生物による食物残渣等の分解を促進する。そして、分解された食物残渣等を再びみみずが消化し、排泄物を排泄する。以下、食物残渣等をみみず飼育床上に散布することを繰り返すことにより、食物残渣等は、みみずによって消化されるとともに、土壌微生物によって分解され、一定時間経過後、みみず糞土(みみずコンポスト)に転換される。
【0031】
このようにして、みみずコンポストが得られたならば、箱体からみみずコンポストを取り出し、樹木の周囲に散布し、有機肥料や土壌改良材等として再利用する。また、食物残渣等をみみずコンポストに転換する過程において、有機物を分解することで発生する水分やみみずの尿は、みみずコンポストの養分等を溶かし込みながら底壁に達し、その傾斜面に沿って流下し、開口を通して樹木の土壌に流れ込んでいる。
【0032】
一方、みみずコンポストを取り出したならば、箱体内に再びみみず飼育床を敷きつめ、以下、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、食物残渣等等を分解消化させてみみずコンポストに転換し、有機肥料等として取り出すことを繰り返す。
【0033】
この結果、これまで焼却処理あるいは廃棄処理されてきた食物残渣等をみみずによって分解消化してみみずコンポストに転換し、有機肥料等として樹木に還元して安全な果物等を生産することができる。しかも、みみずコンポストは、果物等の樹木の周囲で作られることから、輸送費をかけることなく樹木に供給することができる。また、みみずコンポストに含まれる多量の養分及び大量の微生物を溶かし込んだ液肥も余すことなく樹木の土壌に供給することができ、樹木の土壌を養分豊かに維持し、あるいは、転換し、樹木の成育を促進することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、生ゴミや食品由来の廃棄物といった食物残渣等をみみずを利用して分解消化してみみずコンポストに転換し、転換されたみみずコンポストを有機肥料等として、さらには、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を圃場の土壌等にコストをかけることなく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のみみずを利用した食物残渣等の処理方法の一実施形態を説明する平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の食物残渣等の処理方法における食物残渣等の散布要領を説明する工程図である。
【図4】本発明の食物残渣等の処理方法で得られたみみずコンポストの収穫要領を説明する工程図である。
【図5】本発明のみみずを利用した食物残渣等の処理方法の他の実施形態を説明する平面図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】本発明のみみずを利用した食物残渣等の処理方法のもう一つの実施形態を説明する平面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】本発明のみみずを利用した食物残渣等の処理方法のもう一つの他の実施形態を説明する平面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】本発明のみみずを利用した食物残渣等の処理方法のさらなる他の実施形態を説明する平面図である。
【図12】図11のE−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1、図2には、本発明のみみずを利用した食物残渣等の処理方法を実施するミミズファーム1の一例が示されている。
【0038】
このミミズファーム1は、箱体2内にみみず飼育床3を敷きつめたもので、畑や田等の圃場Fの各辺に沿ってそれぞれ設置されている。
【0039】
この場合、ミミズファーム1の設置位置としては、圃場に隣接する休耕田や耕作放棄地を活用することが好ましい。
【0040】
みみずファーム1の箱体2は、FRP製の方形状の周壁21及び底壁22から構成され、底壁22は、圃場Fの各辺に面する一側壁及び該一側壁に対向する他側壁において、他側壁から一側壁に向かって下り勾配の傾斜面に形成されている。そして、圃場Fの各辺に面する一側壁の下端部には、底壁22の傾斜面に連通する複数個の開口21aが形成されている他、周壁21には、通気性を確保するため、多数の小孔が形成されている。
【0041】
なお、箱体2には、みみずが光を嫌うことに対応して、通常、寒冷紗(図示せず)を被せてみみずファーム1を覆っている。
【0042】
一方、みみず飼育床3は、シマミミズ等のみみずを養殖する腐葉土に木質砕片を混合して形成される。
【0043】
ここで、木質砕片は、間伐材を伐採した後、伐採現場に持ち込んだ小型の破砕機を利用して破砕し、チップ化したものである。
【0044】
ただし、間伐材解消のために木質砕片を使用するものであり、必ずしも木質砕片を必要とするものではないし、木質砕片に代えて、放置竹林で伐採した竹を破砕した竹片や、製材所で発生するおが屑を利用しても構わない。
【0045】
箱体2内にみみず飼育床3を散布して敷きつめたならば、みみず飼育床3上にみみずの餌として生ゴミ等の食物残渣4を散布する。
【0046】
食物残渣4としては、その分解を促進する観点からは粉砕して散布することが好ましいが、必ずしも粉砕する必要はない。
【0047】
この場合、食物残渣4は、みみず飼育床3上に順次場所を変えて散布される。例えば、みみずは、1日に自分の体重と同じ量の有機物を食べると言われていることに対応して、箱体2の内部を7つに分割し、それぞれ分割された区画のみみず飼育床3上に曜日毎に、すなわち、1週間おきに所要量の食物残渣4を散布する。(なお、図3においては、説明を容易にするため、みみずファーム1を3分割して説明している。)
食物残渣4がみみず飼育床3上に散布されると、みみずは、食物残渣4を餌として消化し、排泄物を排泄する。みみずの排泄物は、土壌微生物の活動を活発化させることから、食物残渣4及びみみず飼育床3を構成する腐葉土や木質砕片等の土壌微生物による分解を促進する。そして、分解された食物残渣4及びみみず飼育床3の腐葉土等を再びみみずが消化して排泄することを繰り返して、食物残渣4及びみみず飼育床3の腐葉土等を徐々に分解する。
【0048】
以下、定期的に食物残渣4をみみず飼育床3上に散布することを繰り返すことにより、食物残渣4及びみみず飼育床3の腐葉土等をみみずが消化するとともに、土壌微生物が分解し、数カ月後には、みみず飼育床3がみみず糞土(みみずコンポスト)5(図4(a)参照)に転換される。
【0049】
一方、食物残渣4をみみずコンポスト5に転換する過程において、食物残渣4などの有機物を分解することで発生する水分やみみずの尿は、みみずコンポスト5の養分等を溶かし込みながら底壁22に達し、その傾斜面に沿って流下し、開口21aを通して圃場Fの土壌に流れ込んでいる。このため、箱体2の底部に水(液肥)がたまり、みみずが溺れて死ぬことを防止できる。
【0050】
このようにしてみみずコンポスト5が得られたならば、箱体2からみみずコンポスト5を取り出し、隣接する圃場Fに有機肥料や土壌改良材、あるいは、消臭材として散布することで再利用することができる。
【0051】
この結果、食物残渣4を焼却処理又は廃棄処理することなく、また、輸送コストを要することなく、最終的に有機肥料等として圃場Fに還元して安全な穀物や野菜等の農作物を生産することができる。しかも、みみずコンポスト5に含まれる多量の養分及び大量の微生物を含む液肥を余すことなく圃場Fの土壌に供給することができ、土壌の養分を豊かに維持し、農作物の成育を促進することができる。
【0052】
なお、箱体2内のみみずコンポスト5を収穫するには、箱体2の内部を2つに分割し、その一半部のみに食物残渣4を供給する(図4(b)参照)。これにより、箱体2の他半部のみみずは、食物残渣4のある一半部側に移動することから、箱体2の他半部側のみみずコンポスト5を収穫することができる(図4(c)参照)。次いで、箱体2のみみずコンポスト5が取り出された他半部に再びみみず飼育床3を敷きつめた後(図4(d)参照)、再び敷きつめたみみず飼育床3側、すなわち、箱体2の他半部側のみに食物残渣4を散布し、箱体2の一半部側のみみずを他半部側に移動させる(図4(e)参照)。そして、同様に、箱体2の一半部側のみみずコンポスト5を収穫した後(図4(f)参照)、みみずコンポスト5が取り出された箱体2の一半部側をみみず飼育床3で敷きつめ、再び曜日ごとに食物残渣4を各分割されたみみず飼育床3上に順に散布すればよい。
【0053】
以下、前述したように、箱体2の内部に再び敷きつめられたみみず飼育床3に食物残渣4を定期的に供給することを繰り返してみみずコンポスト5に転換すればよい。
【0054】
ところで、前述した実施形態においては、圃場Fの周囲各辺に沿ってみみずファーム1を設置した場合を例示したが、図5及び図6に示すように、隣接する二つの圃場Fに跨がってみみずファーム1を設置してもよい。この場合、みみずファーム1を構成する箱体2の底壁22は、幅方向の略中間部から対向する一側壁及び他側壁に向かってそれぞれ下り勾配に傾斜する山形状傾斜面に形成され、また、対向する一側壁及び他側壁の下端部には、それぞれ底壁面に連通する複数個の開口21aが形成されている。
【0055】
また、果樹等の樹木Tにおいても、みみずファーム1を設置することができる。例えば、図7及び図8に示すように、複数本の果樹等の樹木Tが列状に植設された樹木林において、みみずファーム1の箱体2における底壁22の傾斜面に連通する複数個の開口21aを形成した一側壁が、各樹木Tの枝張りwを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にほぼ面するように、箱体2を樹木林に沿って設置した後、みみず飼育床3を敷きつめてみみずファーム1を形成すればよい。
【0056】
この場合、複数本の果樹等の樹木Tが列をなして植設されている樹木林が複数列ある場合には、図9及び図10に示すように、隣接する樹木林間にみみずファーム1を形成すればよい。すなわち、みみずファーム1の箱体2の底壁22を山形状傾斜面に形成するとともに、対向する一側壁及び他側壁の各下端部に底壁面に連通する複数個の開口21aをそれぞれ形成し、これらの対向する一側壁及び他側壁が、各樹木Tの枝張りwを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にそれぞれほぼ面するように、隣接する樹木林の間に位置して箱体2を設置すればよい。
【0057】
さらに、果樹等の樹木Tにおいては、例えば、扇形状の単位箱体2Aを複数個組み合わせてリング状の箱体2に形成し、樹木Tの周囲に設置してもよい。例えば、図11及び図12に示すように、みみずファーム1の箱体2は、半円扇形状の周壁21及び底壁22から形成され、底壁22を対向する半周状の外周壁から内周壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成されるとともに、半周状の内周壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口21aが形成された単位箱体2Aを2個組み合わせてリング状に形成されている。そして、単位箱体2Aの内周壁を、樹木Tの枝張りwを直径とし、幹を中心とする円を含む直円筒面にほぼ面するように、2個の単位箱体2Aを設置し、リング状の箱体2を形成すればよい。
【0058】
なお、前述した実施形態においては、みみずファーム1の箱体2をFRPで形成し、一部地中に埋設する場合を例示したが、底壁22の傾斜を維持するように支持して地上に設置してもよい。箱体2を地上に設置する場合は、底壁22のみにFRPを用い、周壁21には木材を利用することもできる。これにより、箱体2の通気性を確保することができるとともに、みみずの天敵であるモグラによる被害を防止することができる他、肥料や土壌改良が必要な圃場F等に簡単に移動させることができる。
【0059】
また、前述した実施形態においては、生ゴミ等の食物残渣をみみずコンポストに転換する場合を例示したが、食品工場から発生する食品由来の廃棄物や、農産物の生産過程及び収穫過程で発生する廃棄野菜等を食物残渣としてみみずの餌に利用し、みみずコンポストを得るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 みみずファーム
2 箱体
3 みみず飼育床
4 食物残渣(有機物)
5 みみずコンポスト(みみず糞土)
F 圃場
T 樹木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を対向する他側壁から一側壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成するとともに、一側壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁が圃場の一辺にほぼ面するように、圃場の少なくとも一辺に沿って設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を圃場に導くことを特徴とするみみずを利用した食物残渣等の処理方法。
【請求項2】
方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を中間部から対向する一側壁及び他側壁に向かってそれぞれ下り勾配に傾斜する山形状傾斜面に形成するとともに、一側壁及び他側壁の各下端部にそれぞれ底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁及び他側壁がそれぞれ各圃場の一辺にほぼ面するように、隣接する圃場の間に設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を隣接する圃場にそれぞれ導くことを特徴とするみみずを利用した食物残渣等の処理方法。
【請求項3】
方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を対向する他側壁から一側壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成するとともに、一側壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁が列をなす複数本の樹木からなる樹木林における各樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にほぼ面するように、樹木林に沿って設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を樹木林に導くことを特徴とするみみずを利用した食物残渣等の処理方法。
【請求項4】
方形状の周壁及び底壁からなり、底壁を中間部から対向する一側壁及び他側壁に向かってそれぞれ下り勾配に傾斜する山形状傾斜面に形成するとともに、一側壁及び他側壁の各下端部にそれぞれ底壁面に連通する複数個の開口を形成した箱体を、その一側壁及び他側壁がそれぞれ列をなす複数本の樹木からなる2列の樹木林における各列の樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする円に略接する線分を含む垂直面にそれぞれほぼ面するように、2列の樹木林の間に設置するとともに、箱体内にみみず飼育床を敷きつめた後、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を各列の樹木林にそれぞれ導くことを特徴とするみみずを利用した食物残渣等の処理方法。
【請求項5】
設定された中心角の地紙状周壁及び底壁からなり、底壁を対向する弧状の外周壁から内周壁に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面に形成するとともに、内周壁の下端部に底壁面に連通する複数個の開口を形成した複数個の単位箱体を、その内周壁が樹木の枝張りを直径とし、幹を中心とする直円筒面にほぼ面するように、樹木の周囲に設置するとともに、各単位箱体内にみみず飼育床を敷きつめてなり、みみず飼育床上に食物残渣等を散布し、散布された食物残渣等を分解消化してみみずコンポストに転換する一方、みみずコンポストに転換する過程で生成される液肥を樹木に導くことを特徴とするみみずを利用した食物残渣等の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−67534(P2013−67534A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207530(P2011−207530)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(595138971)
【Fターム(参考)】