説明

むくみの予防又は改善作用を有する組成物

【課題】天然物に由来する成分を有効成分として含有する、むくみを予防又は改善する作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】成分(1)シトルリンと、成分(2)ケイ、シナモン、ニッケイ等のCinnamomum属植物とを含有する組成物は、相乗的にむくみを予防又は改善する効果を奏する。当該組成物は、経口摂取によりむくみを予防又は改善することができる飲食品及び医薬品として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、むくみの予防又は改善作用を有する、飲食品又は医薬品の形態で提供されうる組成物、並びに、むくみの予防又は改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
むくみは医学的には「浮腫」と呼ばれ、細胞、組織等における水状液の過剰な貯留を特徴とする症状である。長時間の立ち仕事、同じ姿勢での長時間労働等の後に足や顔にむくみ症状が生じることが多い。特に女性においてむくみ症状を感じる割合が高い。
【0003】
足や顔のむくみの原因として、血流の低下や利尿作用の低下が考えられている。しかしながら、血流を改善したからといって、必ずしもむくみ症状が改善されるわけではない。
【0004】
特許文献1には、血流の促進により冷え性を改善することを目的とした、血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンとを含有する組成物が記載されている。血流改善作用のある天然素材の抽出物としては、ウメの果実のエキス、アムラの果実もしくは種子のエキス、又はヘスペリジンが記載されている。本発明者らは、本明細書に記載の実験例3において、血流改善作用を有する特許文献1の組成物はむくみを改善する効果を有していないことを確認している。
【0005】
特許文献2には足のむくみを予防改善するための組成物として、分岐鎖アミノ酸と、クマリン類を含む植物とを含む組成物が記載されている。特許文献2には、クマリン類を含む植物としてセイヨウエビラハギ、セイヨウトチノキ、クルマバソウ及びヘンルーダが記載されている。特許文献2の比較例1によれば、セイヨウエビラハギ等のクマリン類を含む植物は、分岐鎖アミノ酸と組み合わせることなく単独で使用された場合には、むくみを改善することができない。
【0006】
特許文献3にはシナモン抽出物を含有する冷え性改善剤が記載されている。特許文献3における冷え性の改善は、シナモン抽出物による血流改善作用に基づく効果であると考えられる。血流改善作用を有する組成物がむくみを改善する効果を有するとは限らないことは特許文献1に関して上述した通りである。なお、シナモン抽出物のなかにはクマリン類を多く含むものが知られているが、クマリン類含有素材が単独ではむくみ改善作用を有していないことは特許文献2で確認されている通りである。
【0007】
特許文献4にはケイヒ等の六種類以上の生薬を組み合わせて含む薬膳調味栄養食品が記載されている。特許文献4には、当該食品の具体的な効能については一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−253148号公報
【特許文献2】特許第3310649号公報
【特許文献3】特開2009−106245号公報
【特許文献4】特開平11−243913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、天然物に由来する成分を有効成分として含有する、むくみを予防又は改善する作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、天然物に由来する、シトルリンと、シンナモマム(Cinnamomum)属植物とを含有する組成物が、むくみを予防又は改善する作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の発明を包含する。
(I)
(1)シトルリンと、
(2)シンナモマム(Cinnamomum)属植物と
を含有する組成物。
(II)
経口摂取される組成物であって、一回の経口摂取量当たり、成分(1)を200mg以上含有し、成分(2)を原生薬換算で100mg以上含有する、(I)記載の組成物。
(III)
成分(2)が、シンナモマム(Cinnamomum)属植物の抽出物である、(I)又は(II)の組成物。
(IV)
シンナモマム(Cinnamomum)属植物が、ケイ(Cinnamomum cassia、Cinnamomum burmannii、又はCinnamomum loureirii)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum、又はCinnamomum verum)、及びニッケイ(Cinnamomum sieboldii)から選択される少なくとも一種である、(I)〜(III)の何れか記載の組成物。
(V)
飲食品又は医薬品である、(I)〜(IV)の何れか記載の組成物。
(VI)
液体、錠剤、顆粒、又は半固形状の形態である、(V)記載の組成物。
(VII)
(1)シトルリンと、
(2)シンナモマム(Cinnamomum)属植物と
を有効成分として含有する、むくみの予防又は改善剤。
(VIII)
経口摂取される、むくみの予防又は改善剤であって、一回の経口摂取量当たり、成分(1)を200mg以上含有し、成分(2)を原生薬換算で100mg以上含有する、(VII)記載の、むくみの予防又は改善剤
(IX)
成分(2)が、シンナモマム(Cinnamomum)属植物の抽出物である、(VII)又は(VIII)記載の、むくみの予防又は改善剤。
(X)
シンナモマム(Cinnamomum)属植物が、ケイ(Cinnamomum cassia、Cinnamomum burmannii、又はCinnamomum loureirii)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum、又はCinnamomum verum)、及びニッケイ(Cinnamomum sieboldii)から選択される少なくとも一種である、(VII)〜(IX)の何れか記載の、むくみの予防又は改善剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物を経口摂取することにより、足や顔などにおけるむくみを効果的に予防又は改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実験例1(実施例1、比較例1、比較例2)の結果を示す。
【図2】図2は実験例2(実施例2、比較例1、比較例3)の結果を示す。
【図3】図3は実験例1(比較例1、比較例4)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.有効成分
成分(1)として用いられるシトルリンは、L−シトルリンであることが好ましい。L−シトルリンはタンパク質を構成するアミノ酸ではないが、生体内に天然に存在するアミノ酸である。L−シトルリンとしては市販の高純度品を用いることができる。
【0014】
成分(2)は、シンナモマム(Cinnamomum)属植物である。当該属に属する植物の少なくとも1種を成分(2)として用いることができる。特に、ケイ、シナモン、ニッケイ等の、シンナムアルデヒドを生成する能力を有するシンナモマム属植物が好ましい。
【0015】
ケイは、中国やベトナム北部に分布するクスノキ科の常緑高木であり、樹皮は桂皮(ケイヒ)、枝は桂枝(ケイシ)、果実は肉桂子(ニクケイシ)と呼ばれ漢方素材として利用されている。ケイはCinnamomum cassia、Cinnamomum burmannii、Cinnamomum loureirii等の学名が付与された植物を包含し、いずれも本発明に用いることができる。
【0016】
シナモン、及びニッケイは、ケイと同属の植物であり、成分が多少異なるが、一般にはケイと区別無く流通されている。シナモンはCinnamomum zeylanicum、Cinnamomum verum等の学名が付与された植物を包含し、いずれも本発明に用いることができる。ニッケイはCinnamomum sieboldiiの学名が付与された植物を包含する。
【0017】
成分(2)の具体例としては、シンナモマム属植物の樹皮、枝、果実等の部位(細片、粉末、これらの水中懸濁液等の形態で用いられる)、並びにその処理物(例えば抽出物)が挙げられる。
【0018】
成分(2)としては、前記植物の抽出物(「エキス」ともいう)が特に好ましい。本発明に用いる抽出物としては、前記植物の樹皮、枝、果実等の部位(特に樹皮)の細片又は粉末を乾燥させ、熱水、水・エタノール混合液、有機溶媒等を用いて有効成分を抽出したものを用いることができる。抽出物の調製に用いる水・エタノール混合液としてはエタノール30重量%以下の混合液を用いることが一般的である。有機溶媒の具体例としてはアセトン、ヘキサン、メタノール等が挙げられる。抽出物は、液状の形態で使用するか、或いは、抽出物にデキストリン等を混合して粉体状にして使用するのが一般的である。なお本明細書に記載の実施例で用いたケイヒエキスは、ケイヒを水・エタノール混合液で抽出し、デキストリン等の賦形剤を用いて粉体状にしたものである。
【0019】
本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤における成分(2)の含有量は、原生薬換算により示される。ここで原生薬換算とは、上記のとおり種々の形態で含まれ得る成分(2)の量を、それを得るのに必要であった植物原料の乾燥重量(例えば、前記植物の樹皮、枝、果実等の部位の乾燥重量、或いは、該部位の細片、粉末等の、物理的処理のみが施された加工物の乾燥重量)により表示することを意味する。例えば、ケイヒのエキス末10質量部をケイヒの乾燥物100質量部から得た場合、当該エキス末10mgは原生薬換算量で100mgと表される。
【0020】
本発明者らは、共に天然に存在する上述の成分(1)と成分(2)とを組み合わることにより、顕著なむくみの予防又は改善効果が奏されることを見出した。成分(2)が単独でむくみを改善する効果を奏することは従来技術からは示唆されない(背景技術の欄参照)。一方、成分(1)は単独でもむくみを予防又は改善する効果を僅かに有する(実験例1及び2の比較例1)ものの、その効果は必ずしも満足できるものではない。ところが、驚くべきことに、成分(1)に成分(2)を組み合わせることにより、むくみの予防、改善効果が顕著に高まる。この効果は成分(1)と成分(2)とが協働して奏される相乗効果である。
【0021】
本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤は、好ましくは、一回の経口摂取量当たり、成分(1)を200mg以上含有し、成分(2)を原生薬換算で100mg以上含有する。
【0022】
「一回の経口摂取量」とは、本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤が一度に経口摂取される量、或いは短い時間間隔(例えば10分以下、好ましくは5分以下の時間)をおいて連続的に複数回で経口摂取される総量を指し、本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤が液体組成物の形態である場合には例えば50〜500g(典型的には50g、100g、150g、200g、250g、300g、350g、400g、450g又は500g)がその量である。本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤が錠剤の形態である場合には例えば0.05〜5g(典型的には0.2〜1g)が、顆粒の形態である場合には例えば0.5〜10g(典型的には1〜5g)が、半固形状(ゼリー状等)である場合には例えば10〜300g(典型的には25〜200g)が、それぞれ「一回の経口摂取量」に相当する。以下でも「一回の経口摂取量」をこの意味で用いる。
【0023】
成分(1)の含有量は、一回の経口摂取量当たり、400mg以上であることがより好ましく、600mg以上であることが更に好ましく、700mg以上であることが更に好ましく、800mg以上であることが最も好ましい。成分(1)の含有量が600mg以上である場合に、むくみの予防又は改善効果がより一層顕著になる。
【0024】
成分(2)の原生薬換算での含有量は、一回の経口摂取量当たり、200mg以上であることが好ましく、300mg以上であることが更に好ましく、400mg以上であることが更に好ましく、500mg以上であることが最も好ましい。成分(2)の原生薬換算での含有量が300mg以上である場合に、むくみの予防又は改善効果がより一層顕著になる。
【0025】
本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤は、最も好ましくは、一回の経口摂取量当たり、成分(1)を600mg以上含有し、成分(2)を原生薬換算で300mg以上含有する。この配合では、上記相乗効果が特に顕著に奏され、むくみの予防又は改善作用が特に高い。
【0026】
成分(1)の含有量の上限は特に限定されない。典型的には、本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤中の成分(1)の含有量は、一回の経口摂取量当たり2500mg以下、より典型的には2000mg以下、より好ましくは1500mg以下である。
【0027】
成分(2)の含有量の上限は特に限定されない。成分(2)は香辛料としてそれ自体を単独で摂取することができる成分であるからである。ただし、成分(2)はクマリンを含有することがある。成分(2)中のクマリンの含有量は、原料植物の産地等の差により大きく変動する。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR:Bundesinstitut fur Risikobewertung)では、クマリンの耐用一日摂取量(TDI)を、0.1mg/kg体重/日と設定している。従って、本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤中の成分(2)の含有量は、クマリン摂取量が0.1mg/kg体重/日以下となるように設定することが好ましい。このようなクマリン摂取量の要件を満たすための、本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤中の成分(2)の原生薬換算での含有量の一例を挙げると、一回の経口摂取量当たり、5g以下、好ましくは3g以下である。
【0028】
本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤中の成分(1)の含有量は、アミノ酸自動測定器により測定することが出来る。
【0029】
本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤中の成分(2)の原生薬換算での含有量は、ケイ及びシナモン等の特徴的な成分であるシンナムアルデヒドやケイヒ酸などの標品を使用して、高速液体クロマトグラフィーなどを用いて原末及び組成物中の成分量を定量することにより類推することができる。
【0030】
本発明の組成物、或いはむくみの予防又は改善剤中のクマリンの含有量は、同じく高速液体クロマトグラフィーにて、定量することが可能である。
【0031】
2.組成物及びその用途
本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤は、経口摂取によりむくみの予防又は改善効果を奏する飲食品組成物又は医薬品組成物として使用することができる。
【0032】
本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤の形態は特に限定されないが、経口摂取に適した液体、固形状又は半固形状の組成物が好ましく、液体、錠剤、又は顆粒の形態の組成物が特に好ましい。
【0033】
液体の形態の組成物は、液状食品(飲料)として提供されてもよいし、液状の経口投与用の医薬品として提供されてもよいが、好ましくは飲料である。液体形態の組成物は、水を基調とする組成物であり、例えば水を90重量%以上含有する。かかる組成物は、瓶やアルミ製やスチール製の容器、或いはペットボトル等の容器に充填して製品とすることができる。
【0034】
錠剤又は顆粒の形態の組成物は、サプリメント食品として提供されてもよいし、経口投与用の医薬品として提供されてもよい。錠剤及び顆粒は定法に従い調製することができ、適宜容器に収容して製品とすることができる。
【0035】
3.他の成分
本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤は他の成分を更に含んでいても構わない。他の成分は飲食品、医薬品などの最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分である限り特に限定されない。
【0036】
例えば、液体の形態である本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤は、水中に、成分(1)及び(2)以外の成分として、果糖ブドウ糖液糖、環状オリゴ糖、酸味料、増粘剤、イノシトール、香料、ナイアシン、酸化防止剤、ビタミン類、甘味料等を添加することにより調製することができる。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、或いはこれらの塩等が挙げられる。増粘剤としては、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。甘味料としては、果糖、ブドウ糖、液糖等の糖類、はちみつ、スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム等の高甘味度甘味料が挙げられる。酸化防止剤としては、ビタミンC、酵素処理ルチン等が挙げられる。ビタミン類としては、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンE等が挙げられる。
【0037】
錠剤の形態である本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤は、成分(1)及び(2)以外の成分として、澱粉、糖アルコール、乳化剤、香料等の、錠剤の製造に通常用いられる成分を含有することができる。錠剤は、これらの成分と成分(1)及び(2)とを組み合わせた混合物を打錠することにより製造することができる。
【0038】
顆粒の形態である本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤は、成分(1)及び(2)以外の成分として、糖類、澱粉、酸味料、甘味料、香料等の、顆粒の製造に通常用いられる成分を含有することができる。顆粒は、これらの成分並びに成分(1)及び(2)に適量の水を加えた混合物を、押出造粒機等の通常の造粒手段に供して造粒することにより製造することができる。
【0039】
半固形状(ゼリー状等)の形態である本発明の組成物或いはむくみの予防又は改善剤は、成分(1)及び(2)以外の成分として、糖類、増粘剤、酸味料、甘味料、香料等の、ゼリー等の製造に通常用いられる成分を含有することができる。
【0040】
錠剤、顆粒又は半固形状の状態の組成物を製造するために用いられる上記他の成分の具体例を以下に挙げる。糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、マルトトール、キシリトールなどが挙げられる。糖類としては、ショ糖、ブドウ糖などが挙げられる。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、或いはこれらの塩等が挙げられる。甘味料としては、果糖、ブドウ糖、液糖等の糖類、糖アルコール(ソルビトール、エリスリトール、マルトトール、キシリトールなど)はちみつ、スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム等の高甘味度甘味料が挙げられる。増粘剤としては、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に示す実験例1〜3(実施例1〜2及び比較例1〜4)及び実施例3〜5において以下の材料を用いた。
シトルリン:L−シトルリン(純度98.5%以上(乾燥物基準))
ケイヒエキス:水・エタノール混合溶媒によるケイヒ抽出物をデキストリンにより粉末状にしたもの(Cinnamomum cassia由来)。当該ケイヒエキス10質量部は、原料生薬換算量で100質量部に相当する。
ヘスペリジン:柑橘類などの果皮に含まれており、ビタミンPとも呼ばれる。水溶性を高める為に、酵素処理を施した「酵素処理ヘスペリジン」が一般に流通しており、本発明及び特許文献1もこの「酵素処理ヘスペリジン」を使用した。
【0042】
実験例1
(被験者)
20〜40歳代の健康な女性で、普段の生活でむくみを感じている人13名。
(実験内容)
(1) 各処方(実施例1、比較例1、2)の原料を混合して飲用の組成物を作った。次表に各処方の一回摂取量(一本)当たりの原料配合量を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
(2) 被験者に実施例1、比較例1、2の組成物について、各々、実験期間中の別の日に評価させた。
【0045】
測定日の14時頃に、むくみに対する体感性について、Visual Analogue Scale(以下VASとする)アンケートに記入させた。その後に、組成物を摂取させ、17時頃(摂取後約3時間)に、同じ項目について、VASアンケートに記入させた。
【0046】
VASアンケート項目は「下肢部のむくみ」、「下肢部のだるさ、重さ」、「下肢部のはり」、「手のむくみ」、「顔のむくみ」、「靴のきつさ」の6項目とした。
【0047】
(3) 摂取前後の被験者全員のVAS記入値を集計した。
各組成物について、アンケート項目ごとに、摂取後の記入値から摂取前の記入値を引いた値の平均値(VAS値変化量という)を求めた。各項目とも数値が低いほど、むくみに対する体感性の改善効果があるということになる。
【0048】
(4) また、VAS値変化量に基づいて、実施例1と比較例1との間、実施例1と比較例2との間、及び比較例2と比較例1との間でt検定を実施した。p<0.001、p<0.01、p<0.05を有意差あり、p<0.1を改善傾向ありと判定し、これらの検定値となるものを求めた。p値が低いほど統計的有意と看做される。
【0049】
(5) さらに、VAS値変化量に基づいて、多重比較検定(Tukey法)を実施した。p<0.1を改善傾向ありと判定し、当該検定値となるものを求めた。
【0050】
(実験結果)
(a) 体感性に関するアンケートでは、実施例1及び比較例2の組成物について、摂取後のむくみの体感性に改善が見られた。改善の度合いは実施例1>比較例2であった。(次表及び図1参照)
(b) t検定の結果、「下肢部のむくみ」について、実施例1と比較例1との間にp<0.001、比較例2と比較例1との間にp<0.05の有意差が認められた。また、「顔のむくみ」について、実施例1と比較例1との間と、比較例2と比較例1との間に、各々p<0.01の有意差が認められた。(図1参照)
(c) 上記(b)の通り下肢部のむくみに実施例1と比較例1、比較例2と比較例1には、いずれもt検定で有意な差が見られたが、有意水準に大きな違いがあった。そこで、多重比較検定(Tukey法)を実施した結果、「下肢部のむくみ」について、実施例1と比較例1との間にのみp<0.1の改善傾向が認められた。
(d) 以上より、シトルリンとケイヒエキスとを含む組成物について、上記成分の相乗効果によるむくみに対する体感性の改善効果が最も顕著に認められた。
【0051】
【表2】

【0052】
実験例2
(被験者)
20〜40歳代の健康な女性で、普段の生活でむくみを感じている人8名。
(実験内容)
(1) 各処方(実施例2、比較例1、3)の原料を混合して飲用の組成物を作った。比較例1は実験例1で用いたものと同じ組成物である。次表に各処方の一回摂取量(一本)当たりの原料配合量を示す。
【0053】
【表3】

【0054】
(2) 実験例1とは別の実験期間に、被験者に実施例1、比較例1、3の組成物について、実験例1と同様にして評価させ、多重比較検定を実施しなかった以外は、実験例1の(2)(3)(4)と同様にして検定を実施した。
【0055】
(実験結果)
(a) 体感性に関するアンケートでは、実施例2及び比較例3の組成物について、摂取後のむくみの体感性に改善が見られた。改善の度合いは実施例2>比較例3であった。(次表及び図2参照)
(b) t検定の結果、「下肢部のだるさ、重さ」について、実施例2と比較例3との間にp<0.05の有意差が認められ、実施例2と比較例1との間にp<0.1の改善傾向が認められた。また、「下肢部のはり」について、実施例2と比較例1との間にp<0.05の有意差が認められ、「靴のきつさ」について、実施例2と比較例1との間にp<0.1の改善傾向が認められた。(図2参照)
(c) 以上より、シトルリンとケイヒエキスとを含む組成物について、上記成分の相乗効果によるむくみに対する体感性の改善効果が認められた。
【0056】
【表4】

【0057】
実験例3
(被験者)
20〜40歳代の健康な女性で、普段の生活でむくみを感じている人13名。
(実験内容)
(1) 各処方(比較例1、4)の原料を混合して飲用の組成物を作った。比較例1は実験例1で用いたものと同じ組成物である。次表に各処方の一回摂取量(一本)当たりの原料配合量を示す。
【0058】
【表5】

【0059】
(2) 実験例1、2とは別の実験期間に、被験者に比較例1、4の組成物について、実験例1と同様にして評価させ、多重比較検定を実施しなかった以外は、実験例1の(2)(3)(4)と同様にして検定を実施した。
【0060】
(実験結果)
(a) 体感性に関するアンケートでは、比較例1及び比較例4の組成物について、摂取後のむくみの体感性に差は見られなかった。(次表及び図3参照)
(b) t検定の結果、いずれの項目についても、比較例1と比較例4との間に有意差及び改善傾向は認められなかった。
(c) 以上より、シトルリンとへスペリジン(ケイヒエキス以外の天然素材の抽出物)とを含む組成物について、むくみに対する体感性の改善効果が認められなかった。
【0061】
【表6】

【0062】
しかも、ヘスペリジン250mgを配合した比較例4は、特有の苦味が強く、飲料にするには不適な風味であった。一方ケイヒエキス500mgを配合した実施例1及び2は、特有の好ましい香りがあり、苦味等もわずかであり、良好な風味であった。
【0063】
実施例3(嗜好性飲料)
次の処方の原料を混合して嗜好性飲料を製造した。
【0064】
【表7】

【0065】
実施例4(錠剤)
次の処方の原料を常法により打錠して錠剤を製造した。
【0066】
【表8】

【0067】
実施例5(顆粒)
次の処方の原料を常法により押出造粒して顆粒を製造した。
【0068】
【表9】

【0069】
実施例6(ゼリー)
次の処方の原料を常法により混合し、容器に入れ冷所においてゼリーを製造した。
【0070】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シトルリンと、
(2)シンナモマム(Cinnamomum)属植物と
を含有する組成物。
【請求項2】
経口摂取される組成物であって、一回の経口摂取量当たり、成分(1)を200mg以上含有し、成分(2)を原生薬換算で100mg以上含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
成分(2)が、シンナモマム(Cinnamomum)属植物の抽出物である、請求項1又は2の組成物。
【請求項4】
シンナモマム(Cinnamomum)属植物が、ケイ(Cinnamomum cassia、Cinnamomum burmannii、又はCinnamomum loureirii)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum、又はCinnamomum verum)、及びニッケイ(Cinnamomum sieboldii)から選択される少なくとも一種である、請求項1〜3の何れか1項記載の組成物。
【請求項5】
飲食品又は医薬品である、請求項1〜4の何れか1項記載の組成物。
【請求項6】
液体、錠剤、顆粒、又は半固形状の形態である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
(1)シトルリンと、
(2)シンナモマム(Cinnamomum)属植物と
を有効成分として含有する、むくみの予防又は改善剤。
【請求項8】
経口摂取される、むくみの予防又は改善剤であって、一回の経口摂取量当たり、成分(1)を200mg以上含有し、成分(2)を原生薬換算で100mg以上含有する、請求項7記載の、むくみの予防又は改善剤。
【請求項9】
成分(2)が、シンナモマム(Cinnamomum)属植物の抽出物である、請求項7又は8記載の、むくみの予防又は改善剤。
【請求項10】
シンナモマム(Cinnamomum)属植物が、ケイ(Cinnamomum cassia、Cinnamomum burmannii、又はCinnamomum loureirii)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum、又はCinnamomum verum)、及びニッケイ(Cinnamomum sieboldii)から選択される少なくとも一種である、請求項7〜9の何れか1項記載の、むくみの予防又は改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111421(P2011−111421A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270397(P2009−270397)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】