説明

むくみ予防剤及び経口組成物

【課題】日常生活において自然発生的に生じる手足や顔のむくみ症状及びむくみ感を予防するための新規な素材を開発し、これを利用したむくみ予防剤及び経口組成物を提供することを課題とした。
【解決手段】
アカショウマ等のチダケサシ属に属する植物、より好ましくはその水及び/又は親水性有機溶剤抽出エキスを有効成分としてなるむくみ予防剤、該むくみ予防剤を含有してなる経口組成物、及び、前記植物又はエキスを経口投与することを特徴とするむくみ予防方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チダケサシ属に属する植物を有効成分としてなるむくみ予防剤及びこれを含有してなる経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
むくみ(浮腫)の症状は、身体の細胞内の水分や血液中の血漿水分等が細胞外間質に移行し、増加して貯留することにより発生する。この主な原因として栄養障害によるものと疾病によるものとがあり、又、女性の場合には更年期障害や妊娠中毒が誘因となることもあり、健常者であっても、日常生活において立位や座位の状態を長時間にわたり維持したり、過激な運動やスポーツ等をすることによって手足や顔にむくみを生じることもある。むくみを放置すると毛細血管や臓器組織を圧迫することになり、冷え性、体調不良、その他の疾病を誘発するリスクが高まる。
【0003】
むくみが栄養障害に起因する場合はナトリウム分の摂取を控え、ミネラルや栄養のバランスを保つように注意し、急性腎炎、急性又は慢性腎不全、ネフローゼ症候群、心不全、高血圧、肝不全、低アルブミン血症等の疾病に起因する場合には所定の治療を施すことにより改善される。しかしながら、日常的に体験する下肢等の自然発生的、一過性、局所性のむくみ症状や重い、だるい、腫れぼったいといったむくみ感に対しては、休養、入浴、マッサージ、貼付薬等により血液やリンパ液の循環を促して水分の代謝排泄を高めることによって解消することが多い。
【0004】
又、むくみを改善あるいは予防するために、L−アルギニン脂肪族アルコールエステル(特許文献1)、ウイキョウエキス(特許文献2)、α−グリコシル化ルチン(特許文献3)、アマランサス抽出物(特許文献4)、ヒハツ又はその抽出物(特許文献5)、卵白ペプチド(特許文献6)、わさび成分(特許文献7)等を有効成分とする経口摂取物が提案されているが、実用的に十分な効果を発揮するものは少なく、より一層強力なむくみ予防作用を有する素材が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特公昭63−42603号公報
【特許文献2】特開平6−279304号公報
【特許文献3】特開平10−182468号公報
【特許文献4】特開2000−143524号公報
【特許文献5】特開2006−104109号公報
【特許文献6】特開2007−51090号公報
【特許文献7】特開2007−197402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる現状に鑑み、本発明は、日常活動にともない自然発生的に出現する手、足、顔等のむくみ症状やむくみ感を顕著に予防し得る新規な素材を開発し、これを利用した飲食品等の経口組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明者らは、前述のむくみ感やむくみ症状を予防する作用のある各種素材について鋭意検討した結果、アカショウマ等のチダケサシ属に属する植物がむくみ症状の発現を極めて強力に予防し得ること、又、これを飲食品等の経口組成物として有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の特徴は、チダケサシ属に属する植物を有効成分としてなるむくみ予防剤にある。このむくみ予防剤において、チダケサシ属に属する植物はアカショウマであることが望ましく、又、アカショウマ等のチダケサシ属に属する植物を水及び/又は親水性有機溶剤を用いて抽出したエキスとして用いることがより一層望ましい。
【0009】
本発明の他の特徴は、前記むくみ予防剤を含有してなる経口組成物にある。この経口組成物は飲食品であることが望ましい。
【0010】
本発明のさらに他の特徴は、チダケサシ属に属する植物、望ましくはアカショウマを水及び/又は親水性有機溶剤で抽出処理して得られるエキスを経口投与することを特徴とする、むくみ症状及び/又はむくみ感の発生を予防する方法にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアカショウマやトリアシショウマ等のチダケサシ属に属する植物、その抽出物とりわけ親水性成分を含む該抽出物は、これを経口摂取することにより、日々の活動にともない自然発生的に起きる手足等の局所的なむくみ症状やむくみ感を顕著に予防する効果を奏する。このため、本発明によれば、アカショウマ等のチダケサシ属に属する植物、その前記抽出物を有効物質として含有するむくみ予防剤が提供され、さらには該むくみ予防剤を配合した経口組成物が提供される。この経口組成物は飲食品、医薬品、医薬部外品、ペット及び家畜用飼料として利用することができる。又、前記のむくみ症状やむくみ感を予防するために、前記チダケサシ属植物、望ましくはアカショウマの水及び/又は親水性有機溶剤による抽出エキスを経口的に投与又は摂取する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明のむくみ予防剤は、チダケサシ属(Astilbe)に属する植物あるいはその抽出物を有効成分として含有してなるものである。チダケサシ属に属する植物はユキノシタ科に分類され、本発明に係るものは種々あるが、その代表例としてアカショウマ(学名:Astilbe thunbergii(SIEB.et ZUCC.)MIQ.)を挙げることができる。アカショウマは日本の山地にも自生する多年草で、その根茎を赤升麻とよび、古来より下熱や解毒等の目的で升麻(キンポウゲ科のサラシナショウマ:Cimicifuga simplex WORMSKJORD等)の代用品として利用されてきた。本発明では赤升麻あるいは紅升麻と称せられるものも包含する。
【0013】
チゲタサシ属に属する植物の例としてAstilbe chinensis、A.austrosinensis、A.thunbergii、A.thunbergii(SIEB.et ZUCC.)Miq.:アカショウマ、A.thunbergii(SIEB.et ZUCC.)MIQ.var.congesta BOISS.(=A.odontophylla MIQ.):トリアシショウマ、A.polyandra、A.grandis、A.rivularis、A.japonica(MORR.et DECNE.)A.GRAY:アワモリショウマ、A.microphylla KNOLL:チダケサシ、A.myriantha等を挙げることができる。本発明においてアカショウマ、トリアシショウマは好適な原料であり、アカショウマが最も望ましい。
【0014】
本発明で用いるアカショウマ等のチダケサシ属に属する植物の部位は根及び/又は根茎が望ましく、その態様は根及び/又は根茎に乾燥、細断あるいは粉砕等の加工処理を適宜に施したもの、これを溶媒で抽出処理したエキス液、該エキス液から溶媒を除いたエキス、該エキスにシリカゲル、ケイ酸マグネシウム、イオン交換樹脂、活性アルミナ、セルロース、活性炭等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフィーや溶剤分別等の精製処理を施した精製物のいずれでもよいが、後述する用途の利便性や本発明の効果の点から前記のエキスあるいはその精製物が望ましい。
【0015】
前記抽出処理にあたって、抽出溶媒としては水、親水性有機溶剤又はこれらの混合溶剤を用いるのがよい。親水性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級一価アルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、エーテル、石油エーテル、酢酸エチル及びこれらの含水物や混合物を例示することができる。本発明の所望の効果を奏するためのエキスを効率的に得るには、エタノール、アセトン、酢酸エチル及びこれらの含水物を抽出用溶媒とすることが望ましい。なお、該含水物の水分含量は、例えば、エタノールの場合では1〜99重量%、より好ましくは10〜50重量%であり、アセトンの場合には1〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%であり、酢酸エチルの場合は80〜99重量%、より好ましくは85〜95重量%である。これらの範囲を外れると本発明の所望の効果が減少し又はエキスの収量が低下する。又、本発明に係る精製物を簡便かつ効率的に得るには、例えば、含水エタノール又は含水アセトンで抽出し、該抽出物(エキス)をさらに酢酸エチルで分別してその可溶画分を採取するのがよい。
【0016】
抽出処理は前記原料に対して1〜100重量倍程度の抽出溶媒を加え、常圧もしくは加圧下、常温又は加熱状態で、適宜に攪拌して10分〜数日間抽出処理する。ついで不溶物を濾過又は遠心分離して除き本発明に係るエキス液を得ることができ、さらに該エキス液から減圧蒸留、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の手段で溶媒を除去することによって本発明に係るエキスを得ることができる。又、このエキスを吸着剤による分画、溶剤分別、これらの組み合わせ等の公知の精製処理に供することによって精製物を得ることができる。
【0017】
アカショウマ等のチゲタサシ属に属する植物の根と根茎には、デンプンやタンニンのほかにベルゲニン、アスチルビン、アスチルビン酸等のフラボノイド類が含まれていることが知られており、これらの成分が前述の薬理作用を示すといわれている。これに対して、本発明は、アカショウマ等のチダケサシ属の植物、その前記抽出エキス及び精製物がむくみ症状を顕著に予防することを見出したものである。
【0018】
本発明のむくみ予防剤は、チダケサシ属植物の前記処理物を有効物質として用いて、これに必要に応じて公知の賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、希釈剤等、例えば、糖類、糖アルコール類、澱粉類、セルロース類、第二リン酸カルシウム、マイカ、タルク、精製水、エタノール等を適量混合して、固体状、粉末状、ペースト状又は液体状の形態に加工することができる。又、前述したような公知のむくみ改善作用のある物質や抽出物を適宜併用してもよい。本発明のむくみ予防剤におけるチダケサシ属植物の前記処理物の含量は、その形態の違い等により一律には規定し難いが、約0.1重量%〜100重量%であり、より好ましくは約10重量%〜約80重量%である。約0.1重量%を下回ると本発明のむくみ予防剤又は経口組成物において所望の効果を発現しなくなることがある。
【0019】
次に、本発明の経口組成物は、前記むくみ予防剤をそのまま経口組成物としても差し支えないが、適宜に、通常の飲食品、医薬品、医薬部外品、動物用飼料等に利用される公知の添加物を併用して、常法により含有せしめて組成物となすことが望ましい。ここで、公知の添加物としては、前記の各種製品に配合され得るものであって本発明の趣旨に反しないものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤剤、流動化剤、保存剤、界面活性剤、安定剤、希釈剤、溶解剤、等張化剤、殺菌剤、防腐剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料等の添加物質を使用することができる。
【0020】
本発明においては、前記むくみ予防剤をそのままの形態で飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料、その他産業分野の様々な製品として利用することができ、あるいは、かかる製品の配合原料の一部として使用する態様でも利用できる。とりわけ前述のむくみ症状やむくみ感を予防するための経口組成物として利用することが好ましく、この経口組成物の最も好適な態様は飲食品である。この例を以下に述べるが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0021】
飲食品の具体例としては、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、ふりかけ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。これらのうち、本発明に係る有効成分を高濃度に配合でき、本発明の効果をより確かに実感するためには、粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状、液体状等の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品又は健康食品が望ましい。
【0022】
これらの飲食品を製造するには、本発明のむくみ予防剤と公知の原材料を用い、あるいは公知の原材料の一部を本発明のむくみ予防剤で置き換え、常法によって製造すればよい。例えば、本発明のむくみ予防剤を、必要に応じてグルコース(ブドウ糖)、デキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般加工食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の被覆剤で被覆してソフトカプセルに成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。
【0023】
かかる飲食品における本発明のむくみ予防剤の含有量は、飲食品の形態、本発明のむくみ予防剤の形態及び有効成分の含量、併用する配合原料の種類、成分、配合量等のちがいにより一律に規定しがたいが、本発明に係るエキス(チダケサシ属に属する植物の水及び/又は親水性有機溶剤による抽出エキス)に換算して約0.01重量%〜約90重量%、より望ましくは約1重量%〜約50重量%である。約0.01重量%を下回るような飲食品では前記エキスによる所望効果を期待するために多量の当該飲食品を摂取しなければならず、一方、前記エキスの含量が約90重量%を超えると実用的な飲食品を製造することが困難になる場合がある。
【0024】
本発明の飲食品の利用にあたっては、ヒト成人の場合1日あたりの前記エキスの摂取量の目安を約10mg〜約1,000mg、望ましくは約30mg〜約500mg、更に望ましくは約50mg〜約300mgとして任意の方法、例えば、食事の摂取と同時又は前後に、経口摂取、経管投与等の方法で体内に取り込むことができる。
【0025】
なお、本発明のむくみ予防剤及びこれを含む経口組成物は、前述のように、長時間の立位や座位の維持、過剰な運動やスポーツ等の日常活動により自然発生的におきるむくみ症状やむくみ感を予防するものであるから、かかる活動に先立って予め摂取若しくは投与することが望ましい。
【実施例】
【0026】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。各例において、%、部及び比率はいずれも重量基準である。
【0027】
製造例1
アカショウマ(Astilbe thunbergii(SIEB.etZUCC.)MIQ.)の根茎を水洗し、長さ1〜2cm、幅3〜5mmにみじん切りした後、天日干しで乾燥してアカショウマ乾燥物(試料1とする)を調製した。
【0028】
製造例2
製造例1に記載のアカショウマ乾燥物1Kgをステンレス製抽出釜に仕込み、含水率45%の含水エタノール9Lを加え、適宜に撹拌しながら70℃で6時間抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮処理に供して溶媒を除き赤褐色のエキス(試料2とする)82gを得た。
【0029】
製造例3
製造例1に記載のアカショウマ乾燥物1Kgをステンレス製抽出釜に仕込み、含水率25%の含水アセトン10Lを加えて還流下で4時間抽出処理した後、濾過してエキス液と残渣に分けた。該残渣に再び前記含水アセトン5Lを添加して同様に処理してエキス液を得た。両エキス液をあわせて減圧下に溶媒を留去して赤褐色のエキス(試料3とする)93gを得た。
【0030】
製造例4
製造例2で得たアカショウマ根茎のエキス(試料2)40gをイオン交換水1Lに懸濁させ、該懸濁液に酢酸エチル300mLを加えて撹拌後、酢酸エチル層を採取し、水層に同量の酢酸エチルを添加して同様に処理する溶剤分別を3回繰り返した。各酢酸エチル層を合わせて溶媒を減圧留去して精製物である酢酸エチル可溶画分(試料4とする)20gを得た。
【0031】
製造例5
トリアシショウマ(Astilbe odontophylla MIQ.)の根茎を日干し乾燥した後、この破砕片1Kgを製造例2と同様に処理して赤茶色の抽出物(試料5とする)76gを得た。
【0032】
製造例6
セイヨウエビラハギ(Melilotus (L)Pall.)の花、茎、葉等の地上部の乾燥物1Kgを粉砕した後、ステンレス製抽出釜に仕込み、含水率30%の含水エタノール9Lを加え、適宜に撹拌しながら80℃で3時間抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮処理に供して溶媒を除き黄褐色のエキス(試料6とする)152gを得た。
【0033】
オリーブ(Olea europaea)の乾燥葉1Kgを粉砕した後、ステンレス製抽出釜に仕込み、水9Lを加え、適宜に撹拌しながら90℃で3時間抽出処理した。この後、不溶の残渣を濾別してエキス液を採取し、該エキス液を減圧濃縮処理に供して溶媒を除き茶褐色のエキス(試料7とする)180gを得た。
【0034】
試験例
前記の試料1から試料7のいずれか1種を200mg/粒含むゼラチンハードカプセル製剤を常法により作成した。25歳から40歳までのボランティア(男性7名及び女性8名、平均年齢31.5歳)を平均年齢がほぼ同等になるように3グループ(各グループ5名)に分け、Aグループの被験者に対してほとんど静止の立位状態を断続的に6時間続ける作業(機械部品組み立て作業)を、Bグループの被験者に対して同じく座位状態を断続的に6時間続ける作業(デスクワーク)を、又、Cグループの被験者に対して平地歩行を断続的に6時間続ける作業(運動)をそれぞれ課し、かかる作業後に生じる下肢のむくみ度合い並びに該むくみ度合いに及ぼす前記カプセル製剤摂取の影響を試験評価した。
【0035】
下肢のむくみの度合いは次の方法により測定した。すなわち、水を満たした容器に、右足又は左足の足裏から脹脛(ふくらはぎ)及び向こう脛を含む膝関節下方の所定位置までを静かに浸け、溢れ出た水の重量を測定することにより、下腿部の当該所定位置までの容積量とした。この測定を前記作業開始前である朝食前及び前記作業終了時から30分後に実施し、両測定結果の差異を下肢のむくみ容積相当量とみなし、初期値(朝食前の測定値)に対するむくみ容積相当量の比率(百分率)をむくみ率とした。このむくみ率は腫れをともなうものを含むことがある。むくみ(%)={(作業後の下肢の容積量)−(作業前の下肢の容積量)}/(作業前の下肢の容積量)×100。なお、本試験中、前記カプセル製剤は各グループとも朝食後及び昼食後に同種類のものを1粒ずつ摂取してもらい、水分補給は任意とした。
【0036】
この結果を表1に示す。表1において、数値は前記定義のむくみ率(n=5の平均値)を、各グループの対照(カプセル製剤を摂取しない場合)の平均値を100としたときの相対値で示したものである。なお、各グループの対照の実測値(平均値±標準誤差)は、(A)グループ:1.92±0.44%、(B)グループ:0.82±0.32%、(C)グループ:0.75±0.49%であった。
【0037】
【表1】

【0038】
表1のデータから次のことが確認された。本試験において、本発明に係る試料を含むカプセル製剤を摂取しない場合では、全てのグループで下肢のむくみ症状が発生し、その程度は立位作業を続けた(A)グループが最も大きかった。なお、試験結果の記載は省略するが、被験者がむくみ感(足が疲れた、張る、だるい、火照り等の感じ)を訴求した割合は(A)グループでは100%、(B)グループでは67%、(C)グループでは35%であった。これに対して、前記カプセル製剤を摂取した場合は、むくみ症状の発生がいずれのグループでも低減しており、とりわけエキス配合カプセル製剤(試料2〜試料5)の摂取により各種作業後のむくみ症状の発生が抑制され、精製物配合カプセル製剤(試料4)のとき最も顕著であった。又、被験者がむくみ感を訴求した割合は(A)グループでは12%、(B)グループでは4%、(C)グループでは7%に低下した。一方、比較のためのカプセル製剤(試料6又は試料7を含有)の場合は、本試験ではむくみ予防の効果が認められなかった。したがって、本発明に係る植物、エキスや精製物を予め摂取することにより、日常的な作業にともなうむくみ症状やむくみ感を予防し得ることが確認された。
【0039】
試作例1
試料1をカプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が250mgのゼラチン被覆ハードカプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は経口摂取できる栄養補助食品として利用できる。
【0040】
試作例2
試料2:150部、ミツロウ:40部及び月見草油(英国エファモール社製):80部を約50℃に加熱混合して均質にした後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が200mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は経口摂取可能なむくみ予防用栄養補助食品として利用することができる。
【0041】
試作例3
試料4:50部、コエンザイムQ10(日清ファルマ(株)製):40部、ビタミンB1:30部、ビタミンB6:20部、ビタミンB12:20部、ビタミンE:40部、結晶セルロース:80部、マルチトール(東和化成(株)製):50部、及び、リン酸三カルシウム:70部を混合機に仕込み、20分間攪拌混合した。この混合物を直打式打錠機に供して直径7mm、高さ4mm、重量150mg/個の素錠を作成し、次いでコーティング機でシェラック被膜を形成させて錠剤形状の経口用組成物を試作した。この組成物はヒト、家畜又はペットを対象にしたむくみ予防用経口投与物として利用することができる。
【0042】
試作例4
市販のグレープジュース1Lに試料2:20を加えて十分に混合し均質なグレープ風味飲料を試作した。これは冷蔵庫で3週間保存しても外観及び風味に何ら異状及び違和感は認められなかった。この飲料は運動等による手足のむくみ予防のために事前に飲用することが望ましい。
【0043】
試作例5
試料1と市販の緑茶葉とを等量混合して茶葉代替物を試作した。この代替物を急須に入れて熱湯を注ぐことにより、手軽にむくみ予防用の緑茶様飲料として利用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0044】
アカショウマ等のチダケサシ属に属する植物の乾燥物又はエキスは、これを経口摂取することにより日常活動にともなって生じる手足や顔等のむくみ症状やむくみ感を予防する効果を奏するため、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の分野においてむくみ予防用経口組成物として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チダケサシ属に属する植物を有効成分としてなるむくみ予防剤。
【請求項2】
チダケサシ属に属する植物がアカショウマである請求項1に記載のむくみ予防剤。
【請求項3】
チダケサシ属に属する植物を水及び/又は親水性有機溶剤を用いて抽出したエキスを用いる請求項1又は2に記載のむくみ予防剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のむくみ予防剤を含有してなる経口組成物。
【請求項5】
チダケサシ属に属する植物、望ましくはアカショウマの水及び/又は親水性有機溶剤による抽出エキスを経口投与することを特徴とするむくみ予防方法。

【公開番号】特開2010−1279(P2010−1279A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186547(P2008−186547)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(500081990)ビーエイチエヌ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】