説明

むくみ改善組成物およびそれを利用したむくみ改善方法

【課題】 より実用性が高く、長時間にわたり、優れたむくみ改善効果を示すむくみ改善剤を提供すること。
【解決手段】 浴湯中に溶解した際に、浴湯中の炭酸ガス濃度を30〜55ppmとすることのできる量の炭酸ガス発生剤と、無機塩類とを含有してなるむくみ改善組成物および浴湯に上記むくみ改善組成物を投入してむくみ改善用浴湯を調製し、次いで当該浴湯に入浴することを特徴とするむくみ改善方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、むくみの改善、治療に有用なむくみ改善組成物に関し、更に詳細には、浴湯に投入する浴用剤の形態で利用され、これを投入した浴湯に入浴することによりむくみを改善、治療できるむくみ改善組成物およびこれを利用したむくみ改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは、生活環境の中で、夕方になると下肢にむくみが生じたり、立位あるいはデスクワークなどの姿勢を長く続けると下肢にむくみが生じて、だるさ、はり、つかれ、いたみを生じることが知られている。このむくみは、血液などに含まれる水分が本来なら静脈を通って心臓や他の各器官に戻るはずなのに、うまく循環できずに細胞や血管の隙間にたまってしまった状態とされている。
【0003】
下肢のむくみは、長時間の立位あるいはデスクワーク等の座位により日常的に生じるものである。このむくみの原因は、重力により血液が心臓に戻りにくくなり下肢が鬱血状態となり、毛細血管の静水圧が上昇することによって毛細血管から水分が組織間へ漏出し、かつ毛細血管への再吸収、リンパ管へスムーズに回収されなくなることであると考えられる。このむくみを解消する方法として、マッサージ、ストレッチ、下肢を高く上げる、屈伸運動する、入浴する等が一般的に知られている。しかし、このような一般的なむくみの解消法は、時間的又は経済的に負担が大きく、また日常的に行なうことは難しく、または満足な結果が得られないなどの欠点があった。特に、入浴することによるむくみ解消効果は知られているが、長い時間の入浴が必要で、生体への負担が大きく、より簡便で有効な方法が望まれていた。
【0004】
ところで、炭酸ガスを60ppm以上含有する浴湯に入浴することにむくみ改善効果があることが知られている(特許文献1)。しかし、この方法では、浴湯中の炭酸ガスが高濃度でなければ効果が得られないが、通常の浴湯の温度では、炭酸ガスの濃度を高く維持するのが困難であり、また、その効果も短く、実用的なものとは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2005‐314298
【特許文献2】特開2004‐83584
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、より実用的で、長時間にわたり優れたむくみ改善効果を示すむくみ改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、炭酸ガスを含有する浴湯中での炭酸ガスのむくみ改善効果について鋭意検討を行っていたところ、入浴の場面において、毛細血管を拡張させる炭酸ガスに無機塩類を併用することにより、より優れたむくみ改善効果が得られること、さらに製剤投入後、時間が経過してから入浴しても、むくみ改善効果が持続的に得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、浴湯中に溶解した際に、浴湯中の炭酸ガス濃度を30〜55ppmとすることのできる量の炭酸ガス発生剤と、無機塩類とを含有してなるむくみ改善組成物である。
【0009】
また本発明は、浴湯に上記むくみ改善組成物を投入してむくみ改善用浴湯を調製し、次いで当該浴湯に入浴することを特徴とするむくみ改善方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のむくみ改善剤を用いれば、足の位置を高く保持する等の特別な操作なく、通常の足浴、半身浴、全身浴により、短時間にかつ容易にむくみの改善、治療を行うことができる。また、本発明のむくみ改善組成物は、製剤を投入後長時間にわたって、むくみ改善用浴湯のむくみ改善効果を維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のむくみ改善組成物において用いられる、炭酸ガス発生剤は、このものを浴湯中に投入した際に、浴湯中の炭酸ガス濃度を30〜55ppmの範囲にすることができるものである。このような炭酸ガス発生剤としては、酸と炭酸塩を組み合わせた炭酸ガス発生組成物や、炭酸ガスを含有するゼオライト、封入糖のようなものを挙げることができるが、酸と炭酸塩とを組み合わせたものが好ましい。
【0012】
上記炭酸ガス発生組成物における酸としては、有機酸および無機酸の何れでも使用できるが、水溶性で固体のものが好ましく、例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸などの有機酸等が好ましい。この中でも、反応性に優れているリンゴ酸、フマル酸が特に好ましい。無機酸としては、ホウ酸、メタケイ酸、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0013】
また、炭酸塩としては、特に限定されないが、好ましいものとして、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。その中でも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。
【0014】
上記酸の配合量としては、むくみ改善組成物中20〜60質量%が好ましく、特に、30〜50質量%であることが好ましい。また、炭酸塩の配合量は、むくみ改善組成物中20〜60質量%が好ましく、特に、30〜50質量%が好ましい。この範囲を外れると、充分な量の炭酸ガスが発生しない場合がある。
【0015】
本発明のむくみ改善組成物は、上記の炭酸ガス発生剤に加えて、更に無機塩類を配合する。配合される無機塩類としては、特に限定されないが、硫酸塩類、塩化物類が好ましい。硫酸塩類としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸鉄等が挙げられ、塩化物類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。その中でも硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムが特に好ましい。
【0016】
この無機塩類の配合量は、浴湯中の濃度が7.5ppm以上、好ましくは10〜60ppmとなる範囲が好ましい。この無機塩類の濃度が7.5ppm未満であると、満足なむくみ改善効果が得られず、60ppmを超えて配合するとむくみ改善効果は得られるが、製剤安定性が低下する場合がある。本発明のむくみ改善組成物中での含有量としては、むくみ改善組成物が30g/200L濃度使用で5〜40、100g/200L濃度使用で1.5〜12質量%程度である。
【0017】
なお、硫酸マグネシウム等の無機塩類を含有し、炭酸ガスを発生する入浴剤は既に知られているが(特許文献2)、このような入浴剤にむくみ改善効果があることは全く知られておらず、その作用もこの文献等から容易に類推できるものでない。
【0018】
本発明のむくみ改善組成物において、より高いむくみ改善効果を得るためには、上記必須成分に加え、更に血流促進成分を少なくとも1種配合することが好ましい。配合される血流促進成分は、特に限定されないが、好ましいものとして、リモネン、ピネン、シトラール、オイゲノール、テレビン油、メチルサリシレート、L‐メントール、カンフェン等が挙げられる。その中でも、リモネン、ピネン、L‐メントールが特に好ましい。
【0019】
この血流促進成分の配合量は、むくみ改善組成物全体の0.01〜5%、好ましくは0.1〜2%となる範囲が好ましい。血流促進成分の配合量が0.01未満であると、充分な血流促進効果が得られず、5%を超えて配合すると製剤安定性、香りの風味を損なう場合がある。
【0020】
本発明のむくみ改善組成物には、上記各成分の他に、必要に応じて任意成分として、植物成分、無水ケイ酸等の安定剤、結合剤、滑沢剤、香料、着色剤、油性成分、白濁剤、アスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸、保湿剤、溶解剤等を適宜添加することができる。
【0021】
本発明のむくみ改善組成物は、固形浴用剤として利用することが好ましく、その使用は、全身入浴スタイルのみでなく、足浴、半身浴など使用者により様々とすることができる。なお、本発明のむくみ改善組成物は、固形浴用剤のうちでも、錠剤よりブリケット、フレーク状が好ましく、中でもブリケットは適量使用ができ利便性が高く、成形する際の圧力が比較的低いため、成形性の向上の面から特に好ましい。
【0022】
以下、ブリケットの形状を例に取り、本発明のむくみ改善組成物の製造方法について説明する。
【0023】
まず、リンゴ酸とフマル酸を混合した有機酸、炭酸塩、無機塩および目的に応じた任意成分を充分に混合し、混合物を得る。次いで、この混合物を、ブリケッティングマシンに通し、ピロー状で、3mm〜6mmのブリケットを製造する。
【0024】
なお、ブリケッティングマシンとは、同速で互いに反対方向に回転する2本のロール間で原料粉体を圧縮し成型する乾式圧縮造粒機の一つであり、このロールの表面には、ブリケットの母型であるポケットが刻まれている。そのポケットの形状や大きさを変更することによって、種々の形状や大きさのブリケットを得ることが可能となる。通常、ブリケット製造においては、ロール間のクリアランスの大きさやロール同士の押さえ圧、フィードスクリューの押圧力などを調整することによりシート状一次成形体が得られる。ブリケットは、更にこの複数のブリケット粒子が連結部を介してシート状に成形されたシート状一次成形体を解砕することにより、得ることができるのである。
【0025】
得られた浴用剤の一回当たりの使用量は、家庭用浴槽(150〜200L)に投入した場合、湯中の炭酸ガス濃度は30ppm以上、好ましくは30〜55ppmとなる範囲とすることが好ましい。濃度が30ppm未満であると、満足なむくみ改善効果が得られず、55ppmを超えて配合するとむくみ改善効果は得られるが、製剤安定性の低下、入浴中むせるなど不快になる場合がある。
【0026】
本発明のむくみ改善組成物を用いて高いむくみ改善効果を得る方法としては、この組成物を浴湯中に投入して35〜42℃のむくみ改善用浴湯を調製し、ついで、全身入浴、半身入浴または足湯として入浴する方法が挙げられる。この入浴は、好ましくは37〜41℃、更に好ましくは、39〜40℃のむくみ改善用浴湯を利用することが望ましい。また、入浴する時間は、1分以上であり、好ましくは10分程度である。
【0027】
なお、本発明のむくみ改善組成物の、むくみ改善効果が持続する時間は、炭酸ガスのみを利用するものに比べ、充分に長い。すなわち、後記実施例でも示すように、炭酸ガスのみを利用するものでは、投与後30分はむくみ改善効果が維持されるが、2時間経過後では全く効果を失ってしまう。これに対し、無機塩類を配合した本発明では、投与後2時間経過しても優れたむくみ改善効果が認められ、3時間経過後でもある程度の効果が認められている。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および試験例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【0029】
実 施 例 1〜5 および 比 較 例 1〜4
表1に実施例1〜5および比較例1〜4として示される処方により、ブリケット状のむくみ防止用組成物を調製した。ブリケットは、各処方5kgを万能攪拌混合機にて均一になるまで混合した後、ブリケットマシーンを用い、3〜6mmのブリケットとして得た。なお、表1中には、家庭用浴槽(200L)の浴湯(39℃)に対する投与量と、投与後の浴湯中の炭酸ガス濃度も併せて示した。
【0030】
【表1】

【0031】
試 験 例 1
実施例1〜5および比較例1〜4で得られた各ブリケットについて、以下に示す評価試験法により、足脹脛部のむくみ改善状態を評価した。
【0032】
足脹脛部のむくみ改善状態の評価は、足にむくみを感じる健常者6名を、被験者としておこなった。まず、被験者を人工気候室(25℃50%RH)に入室してもらい、馴化させた。次いで、椅子に着座し、足むくみ誘発のため、着座5分以内に水道水(500ml)を経口摂取してもらった。経口摂取後、2時間着座位を維持し、足むくみの誘発を確認した。その後、各被検組成物(ブリケット)を、表1に示す量投入した39℃の浴湯で10分間の全身入浴を行い、入浴後の足むくみ度合いの改善度を評価した。対照として、さら湯の入浴を同一被験者で別の日に行った。足のむくみ度合いの改善度については、被験者の主観により、下記3段階で評価した。
【0033】
評価基準
◎ : 脹脛周囲径によるむくみ度合いが改善し、有効である。
○ : 脹脛周囲径によるむくみ度合いが少し改善し、やや有効である。
× : 脹脛周囲径によるむくみ度合いが改善せず、有効でない。
【0034】

【表2】

【0035】
表2から明らかなように、むくみ改善には実施例1〜5および比較例4の組成物が有効であった。しかし、比較例4の組成物には、入浴中むせるなどのデメリットがあった。なお、血流促進成分を配合しない実施例1と比べると、血流促進成分を配合する実施例2から5は効果感がさらによいものであった。
【0036】
試 験 例 2
実施例1〜5および比較例1〜4で得られた各ブリケットについて、以下に示す方法により、むくみの抑制効果の持続性を評価した。
【0037】
すなわち、試験例1と同様、足にむくみを感じる健常者5名を被験者とした。この被験者を、人工気候室(25℃50%RH)に入室してもらい、馴化させた。次いで、椅子に着座し、足むくみ誘発のため、着座5分以内に水道水(500ml)を経口摂取してもらった。経口摂取後、2時間着座位を維持し、足むくみの誘発を確認した。その後、各ブリケットを表1に示す量で投入した39℃の浴湯に10分間、全身入浴してもらい、入浴後の足むくみの改善感を、被験者の主観により下の3段階で評価してもらった。評価は、製剤投入後、30分後、2時間後、3時間経過後の浴湯について行った。この結果を表3に示す。
【0038】
評価基準
◎ : 足むくみ改善感が有効であった。
○ : 足むくみ改善感がやや有効であった。
× : 足むくみ改善感が有効でなかった。
【0039】
【表3】

【0040】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜5のブリケット(むくみ改善組成物)は、浴剤投入後3時間経過した浴湯を用いた場合にもむくみ改善感が有効に維持されたが、比較例1〜3のブリケットでは30分経過後は効果がみられず、比較例4は、2時間経過以降はむくみ改善感が得られなかった。
【0041】
以上より、浴湯中の炭酸ガス濃度を30〜55ppmとすることができ、かつ無機塩類を含有する組成物は、足むくみ改善作用が長時間維持できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の、むくみ改善組成物を利用して調製するむくみ改善用浴湯は、足むくみ等のむくみを有効に改善するものであり、同時に、足の痛みがとれる、足が軽くなる、こり感がへる、つかれにくい、寝つきがよくなる等の自覚症状の改善が感じられるものである。また、その効果も長時間維持できる。
【0043】
従って、本発明組成物は、通常の足浴、半身浴、全身浴を利用したむくみ改善に極めて有効なものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴湯に溶解した際に、浴湯中の炭酸ガス濃度を30〜55ppmとすることのできる量の炭酸ガス発生剤と、無機塩類とを含有してなるむくみ改善組成物。
【請求項2】
無機塩類が硫酸塩類および/または塩化物類である請求項第1記載のむくみ改善組成物。
【請求項3】
形状が、ブリケット、フレーク、顆粒、タブレットまたは粉末状である請求項第1又は2のむくみ改善組成物。
【請求項4】
リモネン、ピネン、シトラール、オイゲノール、テレビン油、メチルサリシレート、L-メントールおよびカンフェンからなる群より選ばれる血流促進成分の少なくとも1種を有効成分として含有する請求項第1〜3の何れかに記載のむくみ改善組成物。
【請求項5】
浴湯に、請求項第1〜4の何れかに記載のむくみ改善組成物を投入してむくみ改善用浴湯を調製し、ついで当該浴湯に入浴することを特徴とするむくみ改善方法。
【請求項6】
浴湯の温度が35〜42℃であり、入浴が、足、半身又は全身を浸漬するものである請求項第5記載のむくみ改善方法。
【請求項7】
浴湯に1分以上入浴するものである請求項第5又は6記載のむくみ改善方法。

【公開番号】特開2010−24184(P2010−24184A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188030(P2008−188030)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月27日 社団法人日本薬学会主催の「日本薬学会第128年会」に発表
【出願人】(308040638)ツムラライフサイエンス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】