説明

めっき処理方法及びファインピッチ配線基板の製造方法

【課題】めっき製品の品質向上を目的とする。特に、ファインピッチ配線基板の製造において、工程数とコストを削減しつつ、微細配線の形成を可能とする。
【解決手段】基材に対するオゾン処理、オゾン水処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理から選択される1種以上の表面処理を行なう前処理工程と、めっき工程と、マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきを行なうめっき工程とを含むことを特徴とするめっき処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき処理方法及びファインピッチ配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外の風雨に晒される自動車、オートバイ等の部品には、一般にその耐食性、優れた金属外観などの面からニッケル・クロムめっきが採用されている。通常のニッケル・クロムめっきにおいては、最表面のクロム層の不働態化により防食しているが、クロム皮膜の欠陥(クラック・ポア)の発生を完全に防ぐことはできず、また、たとえ可能となっても、めっき後のスリキズ等による欠陥の発生は防ぐことができないので、欠陥の部分から腐食が開始する。そして、素地まで達した腐食は、被めっき物の外観を著しく損ね、また、素地まで達しない腐食であっても表面に近いニッケルの腐食が、被めっき物の目立った外観の低下となり、商品価値を低下させていた。
【0003】
このような問題を解決し、ニッケルめっきの膜厚を低下させながら耐食性を持たせる高耐食ニッケルめっきプロセスとして、3重ニッケルプロセス及びマイクロポーラスクロムやマイクロクラッククロムプロセスがすでに開発されている。
【0004】
高耐食ニッケルめっきプロセスのうち、マイクロポーラスクロムあるいはマイクロクラッククロム法は、めっき面の最表面のクロムに微孔や微細なクラック等の欠陥を作成することにより、腐食電流密度を微小化し、腐食速度を遅らせる方法である。
【0005】
一方、3重ニッケル(トリニッケル)プロセスは、電位の貴なニッケルめっき層(半光沢ニッケルめっき層)の上に電位がこれより卑なニッケルめっき層(光沢ニッケルめっき層)を施す二重ニッケルプロセスを改良したもので、半光沢ニッケル層と光沢ニッケル層の間に、イオウ含量が高く、光沢ニッケル層より電位が卑なニッケルめっき(以下、これを「トリニッケルめっき」という)を施し、この電位が卑なトリニッケルめっき層を犠牲皮膜として利用して光沢ニッケル層と素地の防蝕をおこなうものである。しかし、この方法も、一度この犠牲皮膜であるトリニッケルめっき層に腐食が到達すると、トリニッケルめっき層の腐食が早く、目立つ大きなピットが発生するという問題があった。
【0006】
そこで、下記特許文献1には、優れた耐食性を有し、仮に腐食が発生してもめっき外観が低下しないニッケルめっきプロセスとして、被めっき物上に、(1)半光沢ニッケルめっきおよび二重ニッケルめっきから選ばれる下地ニッケルめっき、(2)ニッケルと、腐食電位列においてニッケルより卑な電位を有する金属とのニッケル合金めっき、(3)光沢ニッケルめっき、光沢ニッケル−マイクロポーラスニッケルめっきおよび光沢ニッケルめっき−マイクロクラックニッケルめっきから選ばれる仕上げニッケルめっきを順次施すことを特徴とする高耐食ニッケルめっき方法が開示されている。
【0007】
他方、めっき工程が重要な技術として配線基板がある。特に、近年、電子機器の多機能化、小型化により、多層配線プリント配線板は高密度配線を強く要求されるようになり、狭ピッチ配線の対応が必要となっている。従来、プリント配線板の配線形成は、金属層上にレジストパターニングを行い、エッチングで形成するサブトラクティブ法で行うのが一般的であった。しかし、サブトラクティブ法は、金属層厚分のエッチングが必要であるため配線側面が過激にエッチングされ、配線幅および間隙が50μm以下になると急激に歩留まりが低下する。
【0008】
このためサブトラクティブ法に代わり、セミアディティブ法が主流となって来た。セミアディティブ法は、樹脂上に薄い金属シード層を形成し、めっきレジストを形成、レジスト開口部のシード層上に電気めっきを行い、レジスト剥離、シード層エッチングを行う方法であり、配線の形成精度に優れている点で、採用されるようになった。また、微細配線形成を行うには、プロセス中のシード層エッチングを均一に行う観点から、シード層下の樹脂面は平滑である必要がある。この要求を満足するための手法として、めっき前処理にオゾン水処理を行う方法が知られている。
【0009】
しかしながら、平滑樹脂面上に金属シード層を形成すると、めっきレジスト形成後の電気めっき時に、レジスト下へのめっき染み込みやレジスト剥離が発生してしまう。これを改善すべく、めっきレジスト形成前に金属シード層表面に微小凹凸を形成する必要がある。これまでは、予め、金属シード層を厚めに形成し、金属エッチング液にてエッチングを行い、凹凸を形成していた。上述の方法では、微細配線形成が可能となったが、工数及びコストが増加する結果となった。
【0010】
レジスト下へのめっき染み込みやレジスト剥離の原因としては、従来の様に表面粗度が大きくないため、ウェット工程の液流の影響を受けやすいことや、アルカリ現像液がレジスト下に染み込みやすくなるため、次工程のめっき工程(酸処理)にてレジストヘストレスがかかることが考えられる。また、これまでは、プリント基板作製における金属シード層形成時に微小凹凸を同時形成する方法が過去の知見になかった。
【0011】
【特許文献1】特開平3−291395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、めっき製品の品質向上を目的とする。特に、ファインピッチ配線基板の製造において、工程数とコストを削減しつつ、微細配線の形成を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、(1)基材に対する特定の表面前処理と(2)マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきを組み合わせることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち、第1に、本発明は、めっき処理方法の発明であり、基材に対するオゾン処理、オゾン水処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理から選択される1種以上の表面処理を行なう前処理工程と、めっき工程と、マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきを行なうめっき工程とを含むことを特徴とする。(1)基材に対する特定の表面前処理と(2)マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきを組み合わせることによって、本発明のめっき処理方法は、工程数とコストを削減しつつ、めっき層の品質向上が達成される。
【0015】
マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっき工程で、めっきされる金属材料については特に制限されないが、ニッケル、ニッケル合金、銅、銀、クロム、クロム合金から選択される1種以上が一般的である。これらの中でもニッケル及びニッケル合金が好ましく例示される。
【0016】
第2に、本発明は、上記のめっき処理方法を配線基板の製造、特にセミアディティブ法に適用するものである。即ち、絶縁樹脂基板上に行うシード層形成をマイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきで行うことを特徴とするファインピッチ配線基板の製造方法である。表面が平滑で且つめっきとの密着が得られる樹脂上に対し、金属シート層形成時にマイクロポーラスメッキあるいはマイクロクラックめっきを行うことで、マイクロアンカー形状が容易に形成でき良好なめっきレジスト形成、化学Niエッチング等が可能となることから従来品よりも品質が向上し、工程数の低減が可能となる。
【0017】
本発明では、マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきの前に、基板に対して表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、基板に対するオゾン処理、オゾン水処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理から選択される1種以上の表面処理が好ましく例示される。
【0018】
本発明では、基板の樹脂表面粗度が、Rz=0〜5.0μmであることが好ましく、Rz=0〜2.0μmであることがより好ましい。
【0019】
本発明のマイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきを用いたファインピッチ配線基板の製造方法は、単層又は両面配線基板にも適用可能であるが、特に多層配線基板の製造に適用することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のめっき処理方法は、(1)基材に対するオゾン処理、オゾン水処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理から選択される1種以上の表面前処理と(2)マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきを組み合わせることによって、工程数とコストを削減しつつ、めっき層の品質向上が達成される。
【0021】
同様に、上記のめっき処理方法をファインピッチ配線基板の製造に適用し、金属シート層形成時にマイクロポーラスメッキあるいはマイクロクラックめっきを行うことで、マイクロアンカー形状が容易に形成でき、良好なめっきレジスト形成、化学Niエッチング等が可能となることから従来品よりも品質が向上し、工程数の低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明で用いる、マイクロポーラスめっき法あるいはマイクロクラックめっき法は、めっき面の最表面のめっき金属層に微孔(マイクロポーラス)や微細なクラック(マイクロクラック)等の欠陥を作成することにより、腐食電流密度を微小化し、腐食速度を遅らせる方法である。
【0023】
より具体的には、マイクロポーラスめっき法は、非金属不活性微粒子を分散したニッケルめっき浴でめっきを行い、その微粒子をニッケルめっき層中に析出させて複合ニッケルめっき層としたのち、その上にクロムめっきやニッケルめっきを施してクロムめっき層やニッケルめっき層に多数の微孔を形成させることにより陽極の面積を増大させて腐食電流密度を小さくし、耐食性を向上させる。
【0024】
また、マイクロクラックめっき法は、基材の表面にベースコート層及び金属めっき層を形成した後、金属めっき層に冷熱処理又は超音波処理を行うことによってマイクロクラックを形成させることより陽極の面積を増大させて腐食電流密度を小さくし、耐食性を向上させる。
【0025】
本発明のめっき処理方法が適用される導電性素地としては、鉄、亜鉛、銅、アルミニウムなどの金属やこれらの合金、無電解めっきにより導電化処理された各種のセラミックスやプラスチックス例えばガラス、酸化鉄、陶磁器、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などが用いられる。
【0026】
上記導電性素地の表面に対して各種表面処理がおこなわれるが、その中で、オゾン処理又はオゾン水処理が好ましい。オゾン水中のオゾン濃度は、樹脂素材表面の活性化に大きく影響を及ぼし、10ppm程度から活性化の効果が見られるが、50ppm以上とすればその活性化の効果が飛躍的に高まり、100ppm以上ではより短時間の処理が可能である。オゾン濃度が低いと樹脂素材表面の活性化効果が弱く劣化の方が先行するので、オゾン濃度は高い方が好ましい。又、オゾン溶液処理の時間は2〜10分であることが好ましい。2分未満では樹脂素材の表面の活性化が充分ではなく、10分を超えると樹脂素材に劣化が生じるおそれがある。
【0027】
これらの導電性素地の上に設けられる金属電気めっき下地層としては、通常のマイクロポーラスクロムめっき製品の場合と同じく、光沢ニッケルめっき層と半光沢ニッケルめっき層との組合せが一般的に用いられる。
【0028】
この光沢ニッケルめっき層はその上の層や被覆に鏡面を付与するとともに、その下地層の半光沢ニッケルめっき層に対する陽極防食の役割を果すもので、通常のニッケル電気めっき浴例えばワット浴に光沢剤を添加して形成することができる。この際の光沢剤としては一次光沢剤として例えば1,5‐ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、1,3,6‐ナフタレントリスルホン酸ナトリウム、サッカリンなどと、二次光沢剤として例えば1,4‐ブチンジオール、プロパルギルアルコール、アリルスルホン酸ナトリウムなどの組み合わせを用いることができる。この光沢剤の含有量としては0.04〜1.0重量%の範囲が適当である。
【0029】
次に、半光沢ニッケルめっき層は素地の平滑性を向上させて、全体の外観性を改善するとともに、柔軟性に富むので素地の変形や熱膨張を吸収し、層剥離を抑制する役割を果たすものである。この半光沢ニッケルめっき層は実質的に硫黄を含まないものであり、この電位の貴な半光沢ニッケルめっき層を形成するには、例えばワット浴にクマリン、ホルマリン、抱水クロラールのような光沢剤を添加した電気めっき浴を用いる。
【0030】
この半光沢ニッケルめっき層と基体の導電性素地の間には、素地表面の平滑化に加え、半光沢ニッケルめっき層の電着応力の緩和及び素地の熱膨張の吸収のために、通常、銅層のような金属下地層を設けるが、この金属下地層は必ずしも必要ではなく、場合によっては省くこともできる。
【0031】
マイクロポーラスめっき法は、非金属不活性微粒子を分散したニッケルめっき浴でめっきを行うが、その非金属不活性微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウムなどが好ましく用いられる。
【0032】
めっき液中に分散している状態での非金属不活性微粒子の粒径は0.01〜20μm、最頻粒径は1〜9μmが好ましい。20μmを超えると、めっき層に曇りを生じたり、梨地状のめっきとなり光沢外観の装飾用として好ましくない。
【0033】
非金属不活性微粒子の添加量は0.001〜30g/リットルの範囲であり、該微粒子の種類と粒径により添加量を調整する。一般的に0.001g/リットル未満であると顕著な耐食性の向上効果が少なく、また30g/リットルを超えると、曇りを生じたり、撹拌で均一な濃度に維持するのが困難になる。
【0034】
マイクロポーラスめっき層あるいはマイクロクラックめっき層の上に施されるクロム被覆やニッケル被覆は、従来のマイクロポーラスめっき製品の場合と全く同様にして形成される。そして、このクロム被覆やニッケル被覆のめっき膜厚は0.01〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲である。0.5μmを超えて厚くなると、クラックを生じてむしろ耐食性が悪くなる場合があり、また0.01μm未満では耐摩耗性の点で問題がある。
【0035】
また、本発明のめっき処理方法を多層配線基板に適用する場合、セミアディティブ法によるビルドアップ型多層配線基板に好ましく適用される。このセミアディティブ法によるビルドアップ型多層配線基板は、まず、絶縁体基板の表裏両面または片面に銅箔を設けた銅張り積層板の銅箔を選択エッチングすることにより内層配線層を形成した内層回路基板を製造し、このコア基板表面へ絶縁樹脂層を形成した後、レーザー加工により絶縁樹脂層に層間接続用のマイクロビアを形成し、続いてこのマイクロビアのスミアをプラズマを用いて除去した後、イオンプレーティング等のプラズマにより銅導電層を形成し、次に、フォトリソグラフィー技法によって銅導電層表面にレジストパターンニングを行った後、露出した銅導電層表面に電気銅めっきによって必要な厚さの銅配線を形成し、最後にレジストを除去した後、露出した銅導電層を除去する。以上の工程を必要回数繰り返すことにより、高密度多層配線板を得ることができる。
【0036】
図1に、セミアディティブ法による配線形成の従来法(1)として、基材1表面を過マンガン酸で表面処理し、化学ニッケルめっきで金属シード層2を形成する場合を説明する。図1に示すように、めっきレジスト3形成、パターンめっき4、レジスト剥離/シード層エッチングすると、配線層間の凹み部に金属が残り、ショート等の不良原因となる。
【0037】
図2に、セミアディティブ法による配線形成の従来法(2)として、基材1表面をオゾン水で表面処理し、化学ニッケルめっき1.5mm形成後、該化学ニッケルめっき0.5mmエッチングして金属シード層2を形成する場合を説明する。図2に示すように、めっきレジスト3形成、パターンめっき4、レジスト剥離/シード層エッチングすると、図1の場合よりは配線層のパターン形成は可能だが、一部でショートやパターン倒れが発生する。
【0038】
図3に、セミアディティブ法による配線形成の本発明によるめっき方法として、基材1表面をオゾン水で表面処理し、化学ニッケルめっき0.4mm形成後、該化学ニッケルめっき層5上に、マイクロポーラスめっき法あるいはマイクロクラックめっき法でニッケルめっき0.6mmを形成6して、金属シード層(5,6)を形成する場合を説明する。図3に示すように、めっきレジスト3形成、パターンめっき4、レジスト剥離/シード層エッチングすると、図1、図2の場合に比べて、ファインピッチ配線が形成されており、品質のバラツキが少なく、工程数が少なく、コスト低減が可能となる。
【0039】
本発明において、上記効果が奏される理由は必ずしも明確ではないが、マイクロポーラスめっき層やマイクロクラックめっき層表面の表面積が大きいため、レジストとの接着性が向上するためと考えられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例と比較例を説明する。
[実施例1]
本実施例では、基板に対するオゾン水処理と、無電解ニッケルめっきと、マイクロポーラスニッケルめっきを行なった。
【0041】
エポキシ樹脂基板(150×50mm)に20℃、10〜80ppmのオゾン水に浸漬し、脱脂、触媒化、還元処理によるめっ前処理を実施した。その後、硫酸/硫酸ニッケル浴を用いて15分間浸潰し0.4μmの無電解Niめっき膜を形成した。形成後、硫酸硫酸ニッケル/ケイフッ化カリウムを含む電解液を用いて電解ニッケルめっき(マイクロポーラスめっき)を5分間行い、0.6μm電解ニッケルめっき膜を形成した。形成後、めっきレジストとなるドライフィルムレジスト(DFR、レジスト厚み15μm)をめっき皮膜上にラミネートした。ラミネート後、配線パターンが描写された露光マスクを介し紫外線露光を行い、露光未硬化部分を炭酸ソーダにて現像、溶解した。現像後、硫酸/硫酸銅、添加剤、光沢材を含んだ電解浴にて電解銅めき(パターンめっき)を行い12μm厚にめっきした。めっき後、DFRを苛性ソーダで剥離、ニッケルエッチング液(メルテッス社製:商品名メルストリップ)によりニッケルシード層(0.4μm+0.6μm=1.0μm分)エッチングを行い、L/S=15/15μm配線を形成した。
【0042】
[実施例2]
本実施例では、基板に対するオゾン水処理と、無電解ニッケルめっきと、マイクロクラックニッケルめっきを行なった。
実施例1同様、エポキシ樹脂基板に同条件にてオゾン水に浸漬し、めっき前処理を実施後、0.4μmの無電解ニッケルめっき膜を形成した。形成後、電解ニッケルめっき(マイクロクラックめっき)を5分間行い、0.6μmの電解ニッケルめっき膜を形した。形成後、DFRをめっき皮膜上にラミネートし、紫外線露光・現像によるパタ一二ングを実施した。パターニン後、電解銅めっき(パターンめっき)を行い12μmめっきした。めっき後、DFR剥離、ニッケルシード層エッチングを行い、L/S=15/15μm配線を形成した。
【0043】
[比較例1]
本比較例では、基板に対する過マンガン酸処理と、化学ニッケルめっきを行なった。
エポキシ樹脂基板に、デスミア処理(膨満、過マンガン酸カリウム溶液による樹脂エッチング、中和)を行った。処理後、硫酸/硫酸ニッケル浴を用いて40分間浸漬し1.0μmの無電解ニッケルめっき膜を形成した。形成後、実施例1と同様、DFRをめっき皮膜上にラミネートし、紫外線露光・現像によるパターニングを実施した。パターニング後、電解銅めっき(パターンめっき)を行い12μm厚にめっきした。めっき後、DFR剥離、ニッケルシード層エッチングを行い、)L/S=15/15μm配線を形成した。
【0044】
[比較例2]
本比較例では、基板に対するオゾン水処理と、化学ニッケルめっきを行なった。
実施例1と同様、エポキシ樹脂基板に同条件にてオゾン水に浸漬し、比較例1と同様、硫酸/硫酸ニッケル浴を用いて40分間浸漬し1.0μmの無電解ニッケルめっき膜を形成した。形成後、実施例1と同様、DFRをめっき皮膜上にラミネートし、紫外線露光・現像によるパターニングを実施した。パターニング後、電解銅めっき(パターンめっき)を行い12μm厚にめっきした。めっき後、DFR剥離、ニッケルシード層エッチングを行い、L/S=15/15μm配線を形成した。
【0045】
[比較例3]
本比較例では、基板に対するオゾン水処理と、化学ニッケルめっき(めっき後に銅エッチングによるマイクロアンカー形成)を行なった。
【0046】
比較例2と同様、エポキシ樹脂基板に同条件でオゾン水に浸漬し、硫酸/硫酸ニッケル浴を用いて70分間浸漬し1.5μmの無電解ニッケルめっき膜を形成した。形成後、硫酸/過酸化水素系の銅エッチング液にて0.5μm分エッチングし、実施例1,2と同等の表面粗度を持たせる様、整面化処理を行った。その後、DFRをめっき皮膜上にラミネートし、紫外線露光・現像によるパターニングを実施した。パタ一二ング後、電解銅めっき(パターンめっき)を行い12μmめっきした。めっき後、DFR剥離、ニッケルシード層エッチングを行い、L/S=15/15μm配線を形成した。
【0047】
[判定・評価]
外観検査は、L/S=15/15μm絶縁信頼性評価パターン形成の可否を、断線、剥れ、ショートの有無を外観観察にて検査した。結果は、面内30パターン割付け中の良好数で求めた。更に、印火電圧:100V、1min後に絶縁抵抗値が1.0E+7(Ω)以上を有することを可とし、断線、剥れ、ショートの有無を確認した。更に、工数は、所定工数時間とコストで評価した。判定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1の結果等より以下のことが分かった。
実施例1に見られるマイクロポーラスめっき法の使用により、化学ニッケルめっき上に選択的に微小めっき粒子付与を行うことにより、DFRとの密着性は十分得られており、容易に配線形成することが出来た。
【0050】
実施例2に見られるマイクロクラックめっき法の使用においても、化学ニッケルめっき上に選択的にクラック部(凹凸部)を形成することにより、DFRとの密着性は十分得られており、容易に配線形成する事が出来た。
【0051】
一方、比較例1では、過マンガン酸処理により、樹脂表面粗度が大きくなり、DFR密着性は向上したが、ニッケルエッチング時に樹脂凹み部に析出したニッケルめっきが腐食せず、その結果、配線間ショート不良あるいは所定幅にて配線形成することが出来なかった。
【0052】
又、比較例2では、DFRラミネート前に表面粗化処理を実施しなかったため、DFR現像後の電解銅めっき(パターンめっき)時に、DFR下にめっきが染み込み、これに起因するパターンショートが多数認められた。
【0053】
比較例3では、化学ニッケルめっき厚を1.5μm成膜した際の膜厚バラツキの影響や0.5μm分の表面粗化エッチングを行うため、膜厚バラツキが更に大きくなるため、DFR剥離後の1.0μm分の化学ニッケルめっきをエッチングすると、エッチングが完了しても依然ニッケルが残っている場所では配線ショートを引き起こし、又、完全にエッチングを完了させようとすると既にエッチングが完了したパターンについては、さらにニッケルがエッチングされるため、パターン銅めっき下の化学ニッケルがアンダーカットされ、パターン倒れが発生する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のめっき処理方法は、工程数とコストを削減しつつ、めっき層の品質向上が達成される。また、該めっき処理方法をファインピッチ配線基板の製造に適用することで、従来品よりも品質が向上し、工程数の低減が可能となる。これにより、各種めっき処理の品質向上とコスト低減に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】セミアディティブ法による配線形成の従来法(1)を示す概念図。
【図2】セミアディティブ法による配線形成の従来法(2)を示す概念図。
【図3】セミアディティブ法による配線形成の本発明の方法を示す概念図。
【符号の説明】
【0056】
1:基材、2:金属シード層、3:めっきレジスト、4:パターンめっき、5:化学ニッケルめっき層、6:マイクロポーラスめっき層又はマイクロクラックめっき層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対するオゾン処理、オゾン水処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理から選択される1種以上の表面処理を行なう前処理工程と、めっき工程と、マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきを行なうめっき工程とを含むことを特徴とするめっき処理方法。
【請求項2】
前記マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっき工程で使用される金属材料が、ニッケル、ニッケル合金、銅、銀、クロム、クロム合金から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のめっき処理方法。
【請求項3】
絶縁樹脂基板上に行うシード層形成をマイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきで行うことを特徴とするファインピッチ配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記マイクロポーラスめっき及び/又はマイクロクラックめっきの前に、基板に対するオゾン処理、オゾン水処理、紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理から選択される1種以上の表面処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のファインピッチ配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板の樹脂表面粗度が、Rz=0〜5.0μmであることを特徴とする請求項3又は4に記載のファインピッチ配線基板の製造方法。
【請求項6】
多層配線基板であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のファインピッチ配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−50673(P2008−50673A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230685(P2006−230685)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】