めっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体
【課題】基板を効率的かつ均一に加熱することができるとともに、排出されるめっき液に温調水等が混ざることを防止し、めっき液を容易に再利用することが可能となるめっき処理装置を提供する。
【解決手段】めっき処理装置20は、基板Wを保持して回転させる基板保持機構110と、基板保持機構110に保持された基板Wに向けてめっき液35を吐出する吐出機構21と、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスGを基板保持機構110に保持された基板Wに向けて送り出すガス送出機構190と、を備えている。ガス送出機構190は、基板Wの中心領域A1よりも基板Wの周縁領域A2に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。
【解決手段】めっき処理装置20は、基板Wを保持して回転させる基板保持機構110と、基板保持機構110に保持された基板Wに向けてめっき液35を吐出する吐出機構21と、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスGを基板保持機構110に保持された基板Wに向けて送り出すガス送出機構190と、を備えている。ガス送出機構190は、基板Wの中心領域A1よりも基板Wの周縁領域A2に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハや液晶基板などの基板には、表面に回路を形成するための配線が施されている。この配線は、アルミニウム素材に替わって、電気抵抗が低く信頼性の高い銅素材によるものが利用されるようになってきている。しかしながら、銅はアルミニウムと比較して酸化されやすいので、銅配線表面の酸化を防止するために、高いエレクトロマイグレーション耐性を有する金属によってめっき処理することが望まれる。
【0003】
めっき処理は、例えば、銅配線が形成された基板の表面に無電解めっき液を供給することによって行われる。例えば特許文献1において、基板を回転可能に保持する基板保持機構と、回転している基板上にめっき液を吐出するノズルと、を備えためっき処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−249679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、めっき処理中には基板の温度制御を行うことが必要となる。このように基板の温度制御を行う場合、高温に加熱しためっき液を基板に対して供給するほか、基板の裏面に裏面温調水を供給して加熱することが行われている。しかしながら、裏面温調水を使用する場合、めっき処理中およびめっき処理後に発生する廃液に、めっき液と裏面温調水とが両方混ざってしまう。一般に、めっき液は高価であるため、廃液からめっき液を分離して再利用することが望まれる。しかしながら、廃液にめっき液と裏面温調水とが両方混ざってしまうと、廃液からめっき液を分離して、めっき液を再利用することがむずかしくなるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1に記載のめっき処理装置のように回転している基板上にめっき液を供給する場合、めっき液は遠心力によって基板の中心側から周縁側に向かって流れていく。この場合、基板上のめっき液の温度は、基板の周縁側に向かうにつれて低くなっていくと考えられる。このため、めっき液の反応条件が、基板上の位置によって異なってしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、基板を効率的かつ均一に加熱することができるとともに、排出されるめっき液に温調水等が混ざることを防止し、めっき液を容易に再利用することが可能となるめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態による、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置は、前記基板を保持して回転させる基板保持機構と、前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて前記めっき液を吐出する吐出機構と、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出機構と、を備え、前記ガス送出機構は、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多くの前記加熱用ガスを送り出すよう構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施の形態による、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法は、基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、前記基板を回転させる工程と、前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出されることを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施の形態による、めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体は、前記めっき処理方法が、基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、前記基板を回転させる工程と、前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出される、方法からなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを基板保持機構に保持された基板に向けて送り出す。このため、基板を効率的に加熱することができるとともに、排出されるめっき液に温調水等が混ざることを防止し、めっき液を容易に再利用することができる。また加熱用ガスは、基板の中心領域よりも基板の周縁領域に向けて多く送り出される。このため、基板の中心領域よりも基板の周縁領域をより重点的に加熱することができる。従って、基板の周縁領域においてめっき液の熱が基板や周辺雰囲気によって奪われることを抑制することができ、これによって、基板の周縁領域におけるめっき液の温度と、基板の中心領域におけるめっき液の温度との間に差が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるめっき処理システムの全体構成を示す平面図。
【図2A】図2Aは、本発明の一実施の形態によるめっき処理装置を示す側面図。
【図2B】図2Bは、図2Aに示すバックプレートに設けられた下側送出口の一例を示す図。
【図2C】図2Cは、図2Aに示すバックプレートに設けられた下側送出口の一例を示す図。
【図2D】図2Dは、図2Aに示すバックプレートに設けられた下側送出口の一例を示す図。
【図3】図3は、図2Aに示すめっき処理装置の平面図。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態によるめっき処理装置におけるめっき液および加熱用ガスの流れを示す概略図。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態によるめっき処理方法を示すフローチャート。
【図6】図6は、めっき処理装置の変形例を示す概略図。
【図7】図7は、めっき処理装置の変形例を示す概略図。
【図8A】図8Aは、めっき処理装置の変形例を示す概略図。
【図8B】図8Bは、図8Aに示すトッププレートに設けられた上側送出口の一例を示す図。
【図8C】図8Cは、図8Aに示すトッププレートに設けられた上側送出口の一例を示す図。
【図8D】図8Dは、図8Aに示すトッププレートに設けられた上側送出口の一例を示す図。
【図9】図9(a)は、実施例および比較例において、基板上の温度分布の測定結果を示す図、図9(b)は、実施例および比較例において、基板上に形成されためっき層の厚みの分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。まず図1により、本実施の形態におけるめっき処理システム90の全体構成について説明する。
【0014】
めっき処理システム
図1に示すように、めっき処理システム90は、基板W(ここでは、半導体ウエハ)を複数枚(たとえば、25枚)収容するキャリア91を載置し、基板Wを所定枚数ずつ搬入及び搬出するための基板搬入出室92と、基板Wのめっき処理や洗浄処理などの各種の処理を行うための基板処理室93と、を含んでいる。基板搬入出室92と基板処理室93とは、互いに隣接して設けられている。
【0015】
(基板搬入出室)
基板搬入出室92は、キャリア載置部94と、搬送装置95を収容した搬送室96と、基板受渡台97を収容した基板受渡室98とを有している。基板搬入出室92においては、搬送室96と基板受渡室98とが受渡口99を介して連通連結されている。キャリア載置部94には、複数の基板Wを水平状態で収容するキャリア91が複数個載置されている。搬送室96では、基板Wの搬送が行われ、基板受渡室98では、基板処理室93との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0016】
このような基板搬入出室92においては、キャリア載置部94に載置されたいずれか1個のキャリア91と基板受渡台97との間で、搬送装置95により基板Wが所定枚数ずつ搬送される。
【0017】
(基板処理室)
また基板処理室93は、中央部において前後(図1の左右)に伸延する基板搬送ユニット87と、基板搬送ユニット87の一方側および他方側において前後に並べて配置され、基板Wにめっき液を供給してめっき処理を行う複数のめっき処理装置20と、を有している。
【0018】
このうち基板搬送ユニット87は、前後方向に移動可能に構成した基板搬送装置88を含んでいる。また基板搬送ユニット87は、基板受渡室98の基板受渡台97に基板搬入出口89を介して連通している。
【0019】
このような基板処理室93においては、各めっき処理装置20に対して、基板搬送ユニット87の基板搬送装置88により、基板Wが、1枚ずつ水平に保持した状態で搬送される。そして、各めっき処理装置20において、基板Wが、1枚ずつ洗浄処理及びめっき処理される。
【0020】
各めっき処理装置20は、用いられるめっき液などが異なるのみであり、その他の点は略同一の構成からなっている。そのため、以下の説明では、複数のめっき処理装置20のうち一のめっき処理装置20の構成について説明する。
【0021】
めっき処理装置
次に、図2Aおよび図3を参照して、めっき処理装置20について説明する。図2Aは、めっき処理装置20を示す側面図であり、図3は、めっき処理装置20を示す平面図である。
【0022】
めっき処理装置20は、図2Aおよび図3に示すように、ケーシング101の内部で基板Wを保持して回転させる基板保持機構110と、基板保持機構110に保持された基板Wの表面に向けてめっき液を吐出する吐出機構21と、吐出機構21に接続され、吐出機構21にめっき液を供給するめっき液供給機構30とを備えている。
【0023】
このうち基板保持機構110の周囲には、基板Wから飛散しためっき液等を排出する液排出機構140が配置されている。また、基板Wの下方(基板Wの裏面側)には、基板保持機構110に保持された基板Wの裏面に向けて、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスGを送り出すガス送出機構190が設けられている。またガス送出機構190には、加熱用ガスGを加熱してガス送出機構190に供給するガス供給機構170が接続されている。さらに、基板保持機構110、吐出機構21、めっき液供給機構30、液排出機構140、ガス供給機構170およびガス送出機構190を制御する制御機構160が設けられている。なお「高温の加熱用ガス」とは、基板W上に吐出されためっき液の温度が低下するのを防ぐことができる程度の温度に加熱された加熱用ガスのことを意味している。例えば、加熱用ガスの温度は、基板W上に吐出されるめっき液の温度とほぼ等しい温度や、めっき液の温度よりも若干高い温度に設定される。
【0024】
(基板保持機構)
基板保持機構110は、図2Aおよび図3に示すように、ケーシング101内で上下に伸延する中空円筒状の回転軸部材111と、回転軸部材111の上端部に取り付けられたターンテーブル112と、ターンテーブル112の上面外周部に設けられ、基板Wを支持するウエハチャック113と、回転軸部材111に連結され、回転軸部材111を回転駆動する回転機構162と、を有している。
【0025】
このうち回転機構162は、制御機構160により制御され、回転軸部材111を回転駆動させ、これによって、ウエハチャック113により支持されている基板Wが回転される。この場合、制御機構160は、回転機構162を制御することにより、回転軸部材111およびウエハチャック113を回転させ、あるいは停止させることができる。また、制御機構160は、回転軸部材111およびウエハチャック113の回転数を上昇させ、下降させ、あるいは一定値に維持させるように制御することが可能である。
【0026】
さらに、基板Wの裏面側であってターンテーブル112の上方に、基板Wから間隙Sを空けてバックプレート171が配置されている。バックプレート171は、ウエハチャック113に保持された基板Wの裏面に対向し、ウエハチャック113に保持された基板Wとターンテーブル112との間に配設されている。バックプレート171は、回転軸部材111の軸心を貫通するシャフト172に連結固定されている。なお、バックプレート171はヒータを内蔵していても良い。さらに、シャフト172の下端部には、エアシリンダ等の昇降機構179が連結されている。すなわち、バックプレート171は、昇降機構179およびシャフト172により、ウエハチャック113で保持された基板Wとターンテーブル112との間を昇降するように構成されている。
【0027】
バックプレート171の中には、その表面に設けられた複数の開口173に連通する第1の流路174が形成されており、この第1の流路174と、シャフト172の軸心を貫通する流体供給路175とが連通している。この流体供給路175は、バルブ146を介して基板Wの裏面に処理液を供給する裏面処理液供給機構145に接続されている。
【0028】
また、バックプレート171は、その表面に設けられた開口(下側送出口)191と、バックプレート171内部に形成された第2の流路192とを有している。このうち第2の流路192は、下側送出口191に連通するとともに、シャフト172を上下に貫通するガス供給路193に連通している。このガス供給路193は、後述するガス供給機構170にバルブ188を介して接続されている。すなわち、バックプレート171に設けられた下側送出口191は、ガス供給機構170によって加熱された高温の加熱用ガスGを基板Wの裏面に向けて供給する作用を有する。これら下側送出口191、第2の流路192およびガス供給路193は、基板Wの裏面に向けて高温の加熱用ガスGを送り出す上述のガス送出機構190の構成要素として機能する。ガス送出機構190の詳細については後述する。
【0029】
(吐出機構)
次に、基板Wに向けてめっき液などを吐出する吐出機構21について説明する。吐出機構21は、基板Wに向けてCoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を吐出する第1吐出ノズル45を含んでいる。化学還元タイプのめっき液は、めっき液供給機構30から第1吐出ノズル45に供給される。なお、図2Aでは1つの第1吐出ノズル45のみを示しているが、この第1吐出ノズル45に加えて、基板Wに向けてCoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を吐出する他の吐出ノズル(追加の吐出ノズル)が設けられていても良い。
【0030】
また吐出機構21は、図2Aに示すように、吐出口71および吐出口72を含む第2吐出ノズル70をさらに有していてもよい。図2Aおよび図3に示すように、第2吐出ノズル70は、アーム74の先端部に取り付けられており、このアーム74は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構165により回転駆動される支持軸73に固定されている。
【0031】
第2吐出ノズル70において、吐出口71は、置換タイプのめっき液、例えばPdめっき液を供給するめっき液供給機構76にバルブ76aを介して接続されている。また吐出口72は、洗浄処理液を供給する洗浄処理液供給機構77にバルブ77aを介して接続されている。このような第2吐出ノズル70を設けることにより、一のめっき処理装置20内において、化学還元タイプのめっき液によるめっき処理だけでなく、置換タイプのめっき液によるめっき処理、および洗浄処理を実施することが可能となる。
【0032】
また図2Aに示すように、第2吐出ノズル70の吐出口72に、めっき処理に先立って実施される前処理のための前処理液、例えば純水などのリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構78がバルブ78aを介してさらに接続されていてもよい。この場合、バルブ77aおよびバルブ78aの開閉を適切に制御することにより、第2吐出ノズル70から、洗浄処理液またはリンス処理液のいずれかが選択的に基板Wに吐出される。
【0033】
次に第1吐出ノズル45について説明する。図2Aおよび図3に示すように、第1吐出ノズル45は吐出口46を含んでいる。また第1吐出ノズル45は、アーム49の先端部に取り付けられており、このアーム49は、基板Wの半径方向(図2Aおよび図3において矢印Dにより示される方向)において進退自在となるよう構成されていてもよい。この場合、第1吐出ノズル45は、基板Wの中心部に近接する中心位置と、中心位置よりも周縁側にある周縁位置との間で移動可能となっている。
【0034】
(めっき液供給機構)
次に、吐出機構21の第1吐出ノズル45に、CoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を供給するめっき液供給機構30について説明する。図4は、めっき処理装置20におけるめっき液および加熱用ガスGの流れを示す概略図である。
【0035】
図4に示すように、めっき液供給機構30は、めっき液35を貯留するめっき液供給タンク31と、めっき液供給タンク31のめっき液35を吐出機構21の第1吐出ノズル45へ供給する供給管33とを有している。
【0036】
また図4に示すように、めっき液供給タンク31には、めっき液35を貯留温度に加熱するタンク用加熱手段50が取り付けられている。またタンク用加熱手段50と第1吐出ノズル45との間において、供給管33に、吐出機構21の第1吐出ノズル45へ向かうめっき液35を貯留温度よりも高温の吐出温度に加熱温調する加熱手段60が取り付けられている。
【0037】
めっき液供給タンク31には、めっき液35の各種の成分が貯蔵されている複数の薬液供給源(図示せず)から各種薬液が供給されている。例えば、Coイオンを含むCoSO4金属塩、還元剤(例えば、次亜リン酸など)、アンモニアおよび添加剤などの薬液が供給されている。この際、めっき液供給タンク31内に貯留されるめっき液35の成分が適切に調整されるよう、各種薬液の流量が調整されている。
【0038】
また、図4に示すように、加熱手段60は、タンク用加熱手段50によって貯留温度まで加熱されためっき液35を、さらに吐出温度まで加熱するためのものである。この加熱手段60は、温調水等の伝熱媒体66を吐出温度または吐出温度よりも高い温度に加熱する温度媒体供給手段61と、供給管33に取り付けられ、温度媒体供給手段61からの伝熱媒体66の熱を供給管33内のめっき液35に伝導させることにより温調する温調配管65とを有している。
【0039】
ところで、めっき液供給機構30によって加熱されためっき液を、吐出機構21を用いて、回転している基板Wの中心領域に向けて吐出する場合、めっき液は、遠心力によって基板Wの中心側から周縁側に向かって流れていく。この際、基板Wの温度または基板W周辺の雰囲気の温度がめっき液の温度よりも低くなっていると、めっき液の熱が基板Wまたは基板W周辺の雰囲気によって奪われ、この結果、基板Wの周縁側に向かって流れるにつれてめっき液の温度が低くなってしまう。このため、めっき液の反応条件が、基板上の位置によって異なってしまうことが考えられる。このような課題を解決するための方法の1つとして、基板W周辺の雰囲気の温度を一様に高くし、これによってめっき液の温度低下を防ぐことが考えられる。しかしながら、この場合、雰囲気の温度を高くし過ぎると、基板Wの周縁側に向かって流れるにつれてめっき液の温度が高くなり、結局、めっき液の反応条件が基板上の位置によって異なってしまうことになる。また、雰囲気の温度を一様に高くすることによって、めっき液やその他の部材が熱によって劣化してしまうことも考えられる。
【0040】
ここで本実施の形態におけるガス送出機構190によれば、基板W周辺の雰囲気の温度を一様に高くするのではなく、基板Wの周縁領域に対応する雰囲気の温度を重点的に高くすることができる。このため、容易かつ効率的に、基板W上のめっき液の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。以下、ガス送出機構190について詳細に説明する。
【0041】
本実施の形態によるガス送出機構190は、基板Wの中心領域よりも基板Wの周縁領域に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。例えば、上述の下側送出口191は、基板Wの中心領域において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量よりも基板Wの周縁領域において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量の方が大きくなるよう、バックプレート171に形成されている。これによって、基板Wの周縁領域に対応する雰囲気の温度を、基板Wの中心領域に対応する雰囲気の温度に比べて重点的に高くすることができる。なお図2Aにおいて符号A1,A2で示されているように、基板Wの半径の1/2の半径を有する円W’を基板Wと同心で描くことによって基板Wを区画した場合の、中心側の領域が中心領域A1と定義され、周縁側の領域が周縁領域A2と定義される。
【0042】
下側送出口191の具体的な構成が特に限られることはなく、「周縁領域A2の方が中心領域A1に比べて、単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量が多い」という条件が満たされる限りにおいて、様々な構成が採用され得る。以下、バックプレート171に形成される下側送出口191の例について、図2B乃至図2Dを参照して説明する。図2B乃至図2Dは各々、下側送出口191が形成されたバックプレート171の一例を示す平面図である。なお図2B乃至図2Dにおいて、バックプレート171の上方に配置される基板Wとの対応関係を示すため、基板Wが点線で示されている。
【0043】
例えば図2Bに示すように、基板Wの半径方向に沿って一列に、複数の円形の下側送出口191がバックプレート171に形成されていてもよい。また図2Cに示すように、基板Wの同心円上に並ぶ多数の円形の下側送出口191がバックプレート171に形成されていてもよい。若しくは図2Dに示すように、基板Wの円周方向に沿って延びるスリット状の下側送出口191がバックプレート171に形成されていてもよい。なお、各下側送出口191から送り出される加熱用ガスGの温度および圧力がそれぞれ等しい場合、上述の条件は、「バックプレート171のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域に形成された下側送出口191の面積の方が、基板Wの中心領域A1に対応する領域に形成された下側送出口191の面積よりも、基板Wの単位面積あたりで比べた場合に大きくなっている」という条件に等しい。
【0044】
なお図2B乃至図2Dにおいては、バックプレート171において、基板Wの周縁領域A2に対応する領域だけでなく基板Wの中心領域A1に対応する領域にも下側送出口191が形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、下側送出口191は、バックプレート171のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域にのみ形成されていてもよい。
【0045】
(ガス供給機構)
ガス供給機構170は、上述したように、空気より比熱容量が高い加熱用ガスGを加熱してガス送出機構190に供給するものである。このようなガス供給機構170は、図4に示すように、加熱用ガスGを貯留するガス供給タンク181と、ガス供給タンク181に貯留された加熱用ガスGをガス供給路193へ供給するガス供給管182とを有している。ガス供給タンク181には、加熱用ガスGを加熱温調するガス温調ユニット183が接続されており、これにより加熱用ガスGが所定の温度に加熱されるようになっている。
【0046】
このような加熱用ガスGは、空気(比熱容量1.0(J/g・K))より比熱容量が高いものであり、具体的には、例えば水蒸気(比熱容量2.1(J/g・K))およびヘリウム(比熱容量5.2(J/g・K))を挙げることができる。このうち水蒸気を用いることがコスト等の観点から好ましい。
【0047】
加熱用ガスGとして水蒸気が用いられる場合、ガス送出機構190のガス供給路193へ供給される加熱用ガスGは、必ずしもガス供給タンク181から供給されるものに限られない。図4に示すように、ガス供給管185を介してガス供給路193と加熱手段60の温度媒体供給手段61とを連結し、温度媒体供給手段61の気相に存在する水蒸気をガス供給路193へ供給しても良い。また、ガス供給管184を介してガス供給路193とめっき液供給機構30のめっき液供給タンク31とを連結し、めっき液供給タンク31の気相に存在する水蒸気をガス供給路193中の加熱用ガスGに供給しても良い。この場合、温度媒体供給手段61からの水蒸気、めっき液供給タンク31からの水蒸気、およびガス供給タンク181からの水蒸気のうちいずれか1つまたは2つを用いても良く、これら全て併用しても良い。
【0048】
また、図4に示すように、追加のガス供給ユニット187を設け、ガス供給管186を介してガス送出機構190のガス供給路193と追加のガス供給ユニット187とを接続しても良い。この場合、追加のガス供給ユニット187は、めっき液35に含まれる成分のうちの少なくとも一つ(例えばアンモニア)のガスをガス供給路193中の加熱用ガスGに供給し、これらの混合ガスを基板Wに供給しても良い。また、めっき液供給タンク31の気相に存在するめっき液35の成分(例えばアンモニア)を、ガス供給管184を介してガス供給路193中の加熱用ガスGに供給し、これらの混合ガスを基板Wに供給しても良い。なお、この場合、追加のガス供給ユニット187からの成分を単独で用いても良く、めっき液供給タンク31からの成分を単独で用いても良く、追加のガス供給ユニット187からの成分とめっき液供給タンク31からの成分とを併用しても良い。このように、めっき液35の成分を基板Wに向けて供給することにより、めっき処理中に当該成分がめっき液35から揮発することを防止し、または、めっき処理中にめっき液35から揮発する当該成分をめっき液35に対して補充することができる。
【0049】
(液排出機構)
次に、基板Wから飛散しためっき液や洗浄液などを排出する液排出機構140について、図2Aを参照して説明する。
【0050】
液排出機構140は、基板保持機構110の周囲に設けられ、排出口124、129、134を有するカップ105と、カップ105に連結され、カップ105を上下方向に昇降駆動させる昇降機構164と、カップ105に接続され、基板Wから飛散しためっき液等をそれぞれ排出口124、129、134に集めて排出する液排出路120、125、130とを有している。図2Aに示すように、カップ105の上部には開口105aが形成されている。
【0051】
この場合、基板Wから飛散した処理液は、液の種類ごとに排出口124、129、134を介して液排出路120、125、130により排出される。例えば、基板Wから飛散したCoPめっき液は、めっき液排出路120から排出され、基板Wから飛散したPdめっき液は、めっき液排出路125から排出され、基板Wから飛散した洗浄液およびリンス処理液は、処理液排出路130から排出される。このようにして排出されたCoPめっき液およびPdめっき液は、それぞれ回収された後、再利用されても良い。
【0052】
以上のように構成されるめっき処理装置20を複数含むめっき処理システム90は、制御機構160に設けた記憶媒体161に記録された各種のプログラムに従って制御機構160により駆動制御され、これにより基板Wに対する様々な処理が行われる。ここで、記憶媒体161は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体161としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリーや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0053】
めっき処理方法
本実施の形態において、めっき処理システム90およびめっき処理装置20は、記憶媒体161に記録されためっき処理プログラムに従って、基板Wにめっき処理を施すよう駆動制御される。以下の説明では、はじめに、一のめっき処理装置20で基板WにPdめっき処理を置換めっきにより施し、その後、Coめっき処理を化学還元めっきにより施す方法について、図5を参照して説明する。
【0054】
(基板保持工程)
まず、基板搬送ユニット87の基板搬送装置88を用いて、1枚の基板Wを基板受渡室98から一のめっき処理装置20に搬入する。
【0055】
めっき処理装置20においては、はじめに、カップ105が所定位置まで降下され、次に、搬入された基板Wが基板保持機構110のウエハチャック113によって保持される(基板保持工程S300)。その後、液排出機構140の排出口134と基板Wの外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により上昇させられる。
【0056】
(洗浄工程)
次に、リンス処理、前洗浄処理およびその後のリンス処理からなる洗浄工程が実行される(S301)。はじめに、リンス処理液供給機構78のバルブ78aが開かれ、これによって、リンス処理液が基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。
【0057】
次に、前洗浄工程が実行される。はじめに、洗浄処理液供給機構77のバルブ77aが開かれ、これによって、洗浄処理液が基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。なお、洗浄処理液としては例えばリンゴ酸を用いることができ、リンス処理液としては例えば純水を用いることができる。その後、上述の場合と同様にして、リンス処理液が基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。処理後のリンス処理液や洗浄処理液は、カップ105の排出口134および処理液排出路130を介して廃棄される。なお洗浄工程S301および以下の各工程のいずれにおいても、特に言及しない限り、基板Wは基板保持機構110により第1回転方向R1(図3)に回転されている。
【0058】
(Pdめっき工程)
次に、Pdめっき工程が実行される(S302)。このPdめっき工程S302は、前洗浄工程後の基板Wが乾燥されていない状態の間に、置換めっき処理工程として実行される。このように、基板Wが乾燥していない状態で置換めっき処理工程を実行することで、基板Wの被めっき面の銅などが酸化してしまい良好に置換めっき処理できなくなることを防止することができる。
【0059】
Pdめっき工程においては、はじめに、液排出機構140の排出口129と基板Wの外周端縁とが対向する位置までカップ105を昇降機構164により下降させる。次に、めっき液供給機構76のバルブ76aが開かれ、これによって、Pdを含むめっき液が、基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口71を介して所望の流量で吐出される。このようにして、基板Wの表面にPdめっきが施される。処理後のめっき液は、カップ105の排出口129から排出される。排出口129から排出されためっき液は、液排出路125を介して、回収され再利用されるか、若しくは廃棄される。
【0060】
(リンス処理工程)
次に、Coめっき工程に先立って実施される前処理として、例えばリンス処理工程が実行される(S303)。このリンス処理工程S303においては、前処理液として例えばリンス処理液が基板Wの表面に供給される。なお、このリンス処理工程の後、薬液処理により基板Wを洗浄処理し、その後当該薬液を洗浄するためにリンス処理液を用いてリンス処理を行っても良い。
【0061】
(Coめっき工程)
その後、上述の工程S301〜303が実行されたのと同一のめっき処理装置20において、Coめっき工程が実行される(S304)。このCoめっき工程S304は、化学還元めっき処理工程として実行される。
【0062】
Coめっき工程S304においては、はじめに、制御機構160が基板保持機構110を制御することにより、基板保持機構110に保持された基板Wを回転させる。この状態で、加熱手段60によって吐出温度に加熱されためっき液35を、基板Wの表面に向けて第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出する。
【0063】
第1吐出ノズル45を用いて基板Wに向けてめっき液35を吐出することにより、基板W上に形成されたPdめっき層上に、Coめっき層が成膜される。Coめっき層が所定の厚み、例えば1μmに達した際、第1吐出ノズル45からのめっき液35の吐出が停止し、Coめっき工程S304が完了する。Coめっき工程S304に要する時間は、例えば20分〜40分程度とすることができる。
【0064】
なお、Coめっき工程S304においては、基板Wを常時一定の回転数で回転させる必要はなく、一時的に回転数を上昇または下降させたり、一時的に回転を止めたりしても良い。また、Coめっき工程S304において、第1吐出ノズル45を基板Wの中心側から基板Wの周縁側に向けて水平移動(スキャン)しても良い。
【0065】
また、Coめっき工程S304においては、排出口124と基板Wの外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により下降されている。このため、処理後のめっき液35は、カップ105の排出口124から排出される。排出された処理後のめっき液35は、液排出路120を介して、回収されて再利用されうる。
【0066】
ところで本実施の形態においては、Coめっき工程S304において、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するのと略同時に、制御機構160がガス送出機構190を制御して、高温の加熱用ガスG(例えば水蒸気)を基板Wの裏面に向けて送り出すようになっている。すなわち、ガス送出機構190は、ガス供給機構170のガス供給タンク181に貯留されてガス温調ユニット183によって加熱された加熱用ガスGを、ガス供給管182、ガス供給路193および第2の流路192を順次介して、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて送り出す。あるいは、ガス送出機構190は、めっき液供給タンク31または温度媒体供給手段61から供給された加熱用ガスGを、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて送り出す。
【0067】
ガス送出機構190による加熱用ガスGの送り出しは、第1吐出ノズル45からめっき液35が吐出している間連続して行われる。この間、加熱用ガスGは、基板Wとバックプレート171との間の間隙Sに存在し、基板Wを連続的に加熱する。さらに、加熱用ガスGにより、基板Wを介してめっき液35も加熱される。本実施の形態において、加熱用ガスGとして、空気より比熱容量が高いガス、例えば水蒸気を用いているので、基板Wを効率的に加熱することができる。また上述のように、ガス送出機構190は、基板Wの中心領域A1よりも基板Wの周縁領域A2に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。このため、基板Wの裏面側において、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度は、基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高くなっている。これによって、基板W上のめっき液35の温度が基板Wの周縁側に向かうにつれて低くなってしまうことを抑制することができ、このことにより、基板W上のめっき液35の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。従って、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。このように、基板Wの周縁領域A2に対応する雰囲気の温度を重点的に高くすることにより、めっき液35やその他の部材を過剰に加熱することなく、めっき液35が基板Wで流れることに起因するめっき液35の温度の低下を補償することができる。このため、基板W上におけるめっき液35の均一な温度分布を効率的に実現することができる。
【0068】
その後、第1吐出ノズル45からのめっき液35の吐出が停止した際、ガス供給機構170によるガス送出機構190への加熱用ガスGの供給を停止させ、これによって、ガス送出機構190による加熱用ガスGの送り出しを停止させる。あるいは、第1吐出ノズル45からのめっき液35の吐出が停止する前または後に、ガス供給機構170による加熱用ガスGの供給を停止しても良い。
【0069】
このように、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて、加熱された加熱用ガスGを送り出すことにより、基板W周辺の雰囲気温度を制御することができる。これによって、めっき液が基板Wの周縁側に向かって流れるにつれてめっき液の温度が低下することを防止することができる。これにより、めっき処理を一定の温度(例えば60〜90℃)に保った状態で行うことができ、Coめっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。しかも、基板Wに向けて供給する加熱用ガスGが気体からなっているので、カップ105の排出口124から排出されるめっき液35に加熱用の水等が混ざることが防止され、排出された処理後のめっき液35を容易に再利用することができる。とりわけCoめっき工程S304においては、めっき処理に要する時間が例えば20分〜40分と長くなる場合があるため、めっき液35を再利用することにより、より効率的に廃液の量を減らすことができる。
【0070】
なお、上述したように、加熱用ガスGにはめっき液35に含まれる成分のうちの少なくとも一つ(例えばアンモニア)が含まれていても良い。この場合、めっき処理中に当該成分がめっき液35から揮発することを防止し、あるいはめっき処理中にめっき液35から揮発する当該成分をめっき液35に対して補充することができる。
【0071】
(洗浄工程)
次に、Coめっき処理が施された基板Wの表面に対して、リンス処理、後洗浄処理およびその後のリンス処理からなる洗浄工程S305が実行される。この洗浄工程S305は、上述の洗浄工程S301と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
(乾燥工程)
その後、基板Wを乾燥させる乾燥工程が実行される(S306)。例えば、ターンテーブル112を回転させることにより、基板Wに付着している液体が遠心力により外方へ飛ばされ、これによって基板Wが乾燥される。すなわち、ターンテーブル112が、基板Wの表面を乾燥させる乾燥機構としての機能を備えていてもよい。
【0073】
このようにして、一のめっき処理装置20において、基板Wの表面に対して、はじめにPdめっきが置換めっきにより施され、次にCoめっきが化学還元めっきにより施される。
【0074】
その後、基板Wは、Auめっき処理用の他のめっき処理装置20に搬送されてもよい。この場合、他のめっき処理装置20において、基板Wの表面に、置換めっきによりAuめっき処理が施される。Auめっき処理の方法は、めっき液および洗浄液が異なる点以外は、Pdめっき処理のための上述の方法と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0075】
(本実施の形態の作用効果)
このように、本実施の形態によれば、上述のように、空気より比熱容量が高い高温の加熱用ガスG(例えば水蒸気)を基板保持機構110に保持された基板Wに向けて送り出すので、基板Wを効率的に加熱することができ、めっき液35によるめっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。また、液排出機構140から排出されるめっき液に水等が混ざることを防止し、めっき液を容易に再利用することができる。
【0076】
また本実施の形態によれば、ガス送出機構190は、基板Wの中心領域A1よりも基板Wの周縁領域A2に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。このため、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度を重点的に高くすることができ、このことにより、めっき液35やその他の部材を過剰に加熱することなく、めっき液35が基板Wで流れることに起因する温度の低下を補償することができる。このため、めっき液35の均一な温度分布を効率的に実現することができる。
【0077】
変形例
以下、本実施の形態の各変形例について説明する。
【0078】
上記実施の形態では、Coめっき工程S304において、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するのと略同時に、加熱された加熱用ガスG(例えば水蒸気)の基板Wの裏面に向けての送り出しを開始する態様を説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、Coめっき工程S304において、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するより前に、加熱用ガスG(例えば水蒸気)の基板Wの裏面に向けての送り出しを開始してもよい。
【0079】
この場合、追加のガス供給ユニット187(図4)は、不活性ガス(例えば窒素)をガス供給路193中の加熱用ガスGに供給しても良い。このように、加熱用ガスGとともに不活性ガス(例えば窒素)を混合して基板Wに向けて送り出すことにより、めっき液35が供給される前の基板Wが、加熱用ガスGによって酸化されることを防止することができる。
【0080】
また、上記実施の形態において、図2A乃至図2Dにおいて一点鎖線で示されているように、下側送出口191よりも基板Wの中心側に位置し、下側送出口191から送り出された加熱用ガスGを吸引する下側吸引口194がバックプレート171に形成されていてもよい。このような下側吸引口194を設けることにより、図2Aにおいて符号G’が付された矢印で示されているように、基板Wの周縁領域A2を加熱した後の加熱用ガスGは、基板Wに沿って基板Wの中心側に向かって流れ、そして下側吸引口194から排出される。この場合、基板Wの中心領域に至る加熱用ガスGの温度は、基板Wの周縁領域A2に向けて送り出された際の温度よりも低くなっている。従って、下側吸引口194を設けることにより、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度が基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高いという温度分布を安定に生成することができる。
【0081】
下側吸引口194によって吸引された加熱用ガスGは、例えば、シャフト172を上下に貫通するガス吸引路195を介して回収される。回収された加熱用ガスGは、外部に排出されてもよく、または、ガス供給機構170に戻されて再利用されてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、加熱用ガスGを基板Wの裏面に向けて送り出す態様を説明したが、これに限られることはなく、加熱用ガスGをさらに基板Wの表面に向けて送り出してもよい。例えば、図6に示すように、基板Wの表面側であって第1吐出ノズル45の側方にガスノズル196を設け、基板Wの裏面だけでなく基板Wの表面にも加熱用ガスGを送り出しても良い。この場合、ガスノズル196は、ガス供給機構170に接続されており、制御機構160がガス供給機構170を制御することにより、ガスノズル196が基板Wの表面に向けて高温の加熱用ガスGを送り出すようになっている。このガスノズル196は、バックプレート171に設けられた下側送出口191の場合と同様に、基板Wの中心領域A1において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量よりも基板Wの周縁領域A2においての単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量の方が大きくなるよう構成されている。これによって、基板Wの表面側において、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度を、基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高くすることができる。これによって、基板W上のめっき液35の温度が基板Wの周縁側に向かうにつれて低くなってしまうことを抑制することができ、このことにより、基板W上のめっき液35の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。従って、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。
【0083】
あるいは、図7に示すように、ガスノズル196を用いることにより、基板Wの表面側からのみ基板Wの表面に向けて加熱用ガスGを送り出し、基板Wの裏面には加熱用ガスGを送り出さなくても良い。この場合においても、基板W表面におけるめっき液35の温度を制御することができ、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。
【0084】
さらに、図8Aに示すように、基板Wの上方に、基板Wから離間してトッププレート151を配置しても良い。この場合、トッププレート151は、カップ105の開口105aを覆うようカップ105上に配置されており、基板Wの表面の略全域を覆うようになっている。また、トッププレート151には、基板Wの表面に向けて加熱用ガスGを送り出す上側送出口197、および、第1吐出ノズル45の吐出口46および第2吐出ノズル70の吐出口71に対応する位置に形成された開口152が設けられている。ここで、上側送出口197は、基板Wの中心領域において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量よりも基板Wの周縁領域A2において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量の方が大きくなるようトッププレート151に形成されている。これによって、基板Wの表面の周縁領域A2に対応する雰囲気を、基板Wの表面の中心領域に対応する雰囲気に比べて重点的に加熱することができる。
【0085】
上側送出口197の具体的な構成が特に限られることはなく、「周縁領域A2の方が中心領域A1に比べて、単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量が多い」という条件が満たされる限りにおいて、様々な形状が採用され得る。以下、トッププレート151に形成される上側送出口197の例について、図8B乃至図8Dを参照して説明する。図8B乃至図8Dは各々、上側送出口197が形成されたトッププレート151の一例を示す平面図である。なお図8B乃至図8Dにおいて、トッププレート151の上方に配置される基板Wとの対応関係を示すため、基板Wが点線で示されている。
【0086】
例えば図8Bに示すように、基板Wの半径方向に沿って一列に、複数の円形の上側送出口197がトッププレート151に形成されていてもよい。また図8Cに示すように、基板Wの同心円上に並ぶ多数の円形の上側送出口197がトッププレート151に形成されていてもよい。若しくは図8Dに示すように、基板Wの円周方向に沿って延びるスリット状の上側送出口197がトッププレート151に形成されていてもよい。各上側送出口197には、ガス供給路198を介してガス供給機構170から加熱用ガスGが供給される。なお、各197から送り出される加熱用ガスGの温度および圧力がそれぞれ等しい場合、上述の条件は、「トッププレート151のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域に形成された上側送出口197の面積の方が、基板Wの中心領域A1に対応する領域に形成された上側送出口197の面積よりも、基板Wの単位面積あたりで比べた場合に大きくなっている」という条件に等しい。
【0087】
なお図8B乃至図8Dにおいては、トッププレート151において、基板Wの周縁領域A2に対応する領域だけでなく基板Wの中心領域A1に対応する領域にも上側送出口197が形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上側送出口197は、トッププレート151のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域にのみ形成されていてもよい。
【0088】
さらに、トッププレート151は、昇降機構154に連結されており、制御機構160によって制御されることにより、カップ105とともに昇降可能となっている。また、トッププレート151は、昇降機構154によりカップ105に対して独立して昇降可能にもなっている。これにより、上述した基板保持工程S300において、基板Wを基板保持機構110に対して搬入および搬出することが可能となる。
【0089】
このように、基板Wの上方に、基板Wの表面側の略全域を覆うトッププレート151を設けたことにより、バックプレート171の下側送出口191およびトッププレート151の上側送出口197から送り出される加熱用ガスG、あるいはめっき液35から発生したガス(例えば水蒸気)が基板Wとトッププレート151との間の空間に存在している。このことにより、基板Wおよびめっき液35をより効率的に加熱することができ、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることがより確実になる。
【0090】
また、図8A乃至図8Dにおいて一点鎖線で示すように、図2A乃至図2Dに示す実施の形態の場合と同様に、上側送出口197よりも基板Wの中心側に位置し、上側送出口197から送り出された加熱用ガスGを吸引する上側吸引口199がトッププレート151に形成されていてもよい。このような上側吸引口199を設けることにより、図8Aにおいて符号G’が付された矢印で示されているように、基板Wの周縁領域A2を加熱した後の加熱用ガスGは、基板Wに沿って基板Wの中心側に向かって流れ、そして上側吸引口199から排出される。この場合、基板Wの中心領域A1に至る加熱用ガスGの温度は、基板Wの周縁領域A2に向けて送り出された際の温度よりも低くなっている。従って、上側吸引口199を設けることにより、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度が基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高いという温度分布を安定に生成することができる。
【0091】
また、図8Aに示す形態において、図6に示す形態の場合と同様に、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて加熱用ガスGをさらに送り出してもよい。
【0092】
また、図6乃至図8Dにおいて、上記実施の形態と同様、追加のガス供給ユニット187(図4)を用いることにより、ガスノズル196または上側送出口197から送り出される加熱用ガスGに、めっき液35に含まれる成分(例えばアンモニア)および/または不活性ガス(例えば窒素)を混合しても良い。
【0093】
さらに、図6乃至図8Dに示す形態では、Coめっき工程S304において、ガスノズル196または上側送出口197からから基板Wの表面側に加熱用ガスGを送り出すタイミングは、必ずしも第1吐出ノズル45の吐出口46からめっき液35を吐出するタイミングと略同時とは限らない。基板W表面におけるめっき液35の温度が低下することを補償するのに十分であれば、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するよりも後に、加熱用ガスGをガスノズル196または上側送出口197から基板Wの表面に向けて送り出してもよい。
【0094】
なお、図6乃至図8Dにおいて、図1乃至図4に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0095】
さらに、上記各実施の形態においては、ガス送出機構190から鉛直方向に沿って基板Wに向けて加熱用ガスGが吹き付けられる例を示したが、これに限られるものではない。例えば、ガス送出機構190は、水平方向に沿って基板Wの周縁側から中心側に向かうよう加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出してもよい。この場合も、基板Wの周縁領域A2に対応する雰囲気の温度を重点的に高くすることができ、これによって、容易かつ効率的に、基板W上のめっき液の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。
【0096】
また、上記各実施形態においては、所定の温度に加熱された加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出す例を示したが、これに限られるものではない。例えば、めっき処理中に加熱用ガスGの温度を任意の温度に変化させてもよい。この場合はめっき処理中において指定した時間毎に温度を変化させてもよく、また、基板Wの回転数に応じて加熱用ガスGの温度が変化するようにしてもよい。一例として、基板W上に初期のめっき層が薄く形成される工程の際のめっき処理の温度と、初期のめっき層上にさらなるめっき層が積層されていく工程の際のめっき処理の温度と、がそれぞれ最適な温度となるよう、加熱用ガスGの温度を任意の温度に変化させることが考えられる。加熱用ガスGの温度の変化については、例えば、ガス送出機構190に新たに加熱手段(図示しない)を設け温度を変えるようにしてもよく、または、所定の温度に加熱された加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出す際のガス送出機構190と基板Wとの距離(例えば、ガスノズル196と基板との距離)を近づけたり離したりすることで加熱用ガスGの温度を変化させてもよい。これによって、基板W上のめっき液35の温度をより細かく制御することでき、このため、より適切な条件下でめっき液35の反応を進行させることができ、このことにより、めっき層の成長を基板Wの面内で略均一にすることができる。
【0097】
さらにまた、上記実施の形態において、第1吐出ノズル45から基板Wに向けて吐出される化学還元タイプのめっき液35として、CoPめっき液が用いられる例を示した。しかしながら、用いられるめっき液35はCoPめっき液に限られることはなく、様々なめっき液35が用いられ得る。例えば、化学還元タイプのめっき液35として、CoWBめっき液、CoWPめっき液、CoBめっき液またはNiPめっき液など、様々なめっき液35が用いられ得る。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
直径300mmの基板Wを回転させながら、約80度に加熱されたNiPめっき液を基板Wの表面の中心領域A1に向けて吐出した。これによって、約10分間にわたって、基板Wに対するめっき処理をほどこした。この際、基板Wを上方から覆うようトッププレート151を配置した。また、トッププレート151に設けられた上側送出口197を用いて、約90度に加熱された水蒸気からなる加熱用ガスGを基板Wの表面の周縁領域A2に向けて送り出した。
【0099】
めっき処理の間における、基板W上の温度分布を測定した。結果を図9(a)に示す。また、めっき処理の後に得られたNiPめっき層の厚みの分布を測定した。結果を図9(b)に示す。なお図9(a)(b)において、横軸は、基板Wの中心点からの位置を示している。具体的には、図9(a)(b)の横軸において、「0」が基板Wの中心点に対応しており、「±150」が基板Wの周縁に対応している。
【0100】
(比較例1)
加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出さなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、基板Wに対するめっき処理を実施した。この場合の、基板W上の温度分布の測定結果、および得られためっき層の厚みの分布の測定結果を、実施例1の結果と併せて図9(a)および図9(b)に示す。
【0101】
図9(a)に示すように、加熱用ガスGを基板Wの表面の周縁領域A2に向けて送り出すことにより、中心領域A1における基板Wの温度と周縁領域A2における基板Wの温度との差を小さくすることができた。この結果、図9(b)に示すように、めっき層の成長を基板Wの面内で略均一にすることができた。
【符号の説明】
【0102】
20 めっき処理装置
21 吐出機構
110 基板保持機構
190 ガス送出機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハや液晶基板などの基板には、表面に回路を形成するための配線が施されている。この配線は、アルミニウム素材に替わって、電気抵抗が低く信頼性の高い銅素材によるものが利用されるようになってきている。しかしながら、銅はアルミニウムと比較して酸化されやすいので、銅配線表面の酸化を防止するために、高いエレクトロマイグレーション耐性を有する金属によってめっき処理することが望まれる。
【0003】
めっき処理は、例えば、銅配線が形成された基板の表面に無電解めっき液を供給することによって行われる。例えば特許文献1において、基板を回転可能に保持する基板保持機構と、回転している基板上にめっき液を吐出するノズルと、を備えためっき処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−249679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、めっき処理中には基板の温度制御を行うことが必要となる。このように基板の温度制御を行う場合、高温に加熱しためっき液を基板に対して供給するほか、基板の裏面に裏面温調水を供給して加熱することが行われている。しかしながら、裏面温調水を使用する場合、めっき処理中およびめっき処理後に発生する廃液に、めっき液と裏面温調水とが両方混ざってしまう。一般に、めっき液は高価であるため、廃液からめっき液を分離して再利用することが望まれる。しかしながら、廃液にめっき液と裏面温調水とが両方混ざってしまうと、廃液からめっき液を分離して、めっき液を再利用することがむずかしくなるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1に記載のめっき処理装置のように回転している基板上にめっき液を供給する場合、めっき液は遠心力によって基板の中心側から周縁側に向かって流れていく。この場合、基板上のめっき液の温度は、基板の周縁側に向かうにつれて低くなっていくと考えられる。このため、めっき液の反応条件が、基板上の位置によって異なってしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、基板を効率的かつ均一に加熱することができるとともに、排出されるめっき液に温調水等が混ざることを防止し、めっき液を容易に再利用することが可能となるめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態による、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置は、前記基板を保持して回転させる基板保持機構と、前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて前記めっき液を吐出する吐出機構と、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出機構と、を備え、前記ガス送出機構は、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多くの前記加熱用ガスを送り出すよう構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施の形態による、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法は、基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、前記基板を回転させる工程と、前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出されることを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施の形態による、めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体は、前記めっき処理方法が、基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、前記基板を回転させる工程と、前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出される、方法からなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを基板保持機構に保持された基板に向けて送り出す。このため、基板を効率的に加熱することができるとともに、排出されるめっき液に温調水等が混ざることを防止し、めっき液を容易に再利用することができる。また加熱用ガスは、基板の中心領域よりも基板の周縁領域に向けて多く送り出される。このため、基板の中心領域よりも基板の周縁領域をより重点的に加熱することができる。従って、基板の周縁領域においてめっき液の熱が基板や周辺雰囲気によって奪われることを抑制することができ、これによって、基板の周縁領域におけるめっき液の温度と、基板の中心領域におけるめっき液の温度との間に差が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるめっき処理システムの全体構成を示す平面図。
【図2A】図2Aは、本発明の一実施の形態によるめっき処理装置を示す側面図。
【図2B】図2Bは、図2Aに示すバックプレートに設けられた下側送出口の一例を示す図。
【図2C】図2Cは、図2Aに示すバックプレートに設けられた下側送出口の一例を示す図。
【図2D】図2Dは、図2Aに示すバックプレートに設けられた下側送出口の一例を示す図。
【図3】図3は、図2Aに示すめっき処理装置の平面図。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態によるめっき処理装置におけるめっき液および加熱用ガスの流れを示す概略図。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態によるめっき処理方法を示すフローチャート。
【図6】図6は、めっき処理装置の変形例を示す概略図。
【図7】図7は、めっき処理装置の変形例を示す概略図。
【図8A】図8Aは、めっき処理装置の変形例を示す概略図。
【図8B】図8Bは、図8Aに示すトッププレートに設けられた上側送出口の一例を示す図。
【図8C】図8Cは、図8Aに示すトッププレートに設けられた上側送出口の一例を示す図。
【図8D】図8Dは、図8Aに示すトッププレートに設けられた上側送出口の一例を示す図。
【図9】図9(a)は、実施例および比較例において、基板上の温度分布の測定結果を示す図、図9(b)は、実施例および比較例において、基板上に形成されためっき層の厚みの分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。まず図1により、本実施の形態におけるめっき処理システム90の全体構成について説明する。
【0014】
めっき処理システム
図1に示すように、めっき処理システム90は、基板W(ここでは、半導体ウエハ)を複数枚(たとえば、25枚)収容するキャリア91を載置し、基板Wを所定枚数ずつ搬入及び搬出するための基板搬入出室92と、基板Wのめっき処理や洗浄処理などの各種の処理を行うための基板処理室93と、を含んでいる。基板搬入出室92と基板処理室93とは、互いに隣接して設けられている。
【0015】
(基板搬入出室)
基板搬入出室92は、キャリア載置部94と、搬送装置95を収容した搬送室96と、基板受渡台97を収容した基板受渡室98とを有している。基板搬入出室92においては、搬送室96と基板受渡室98とが受渡口99を介して連通連結されている。キャリア載置部94には、複数の基板Wを水平状態で収容するキャリア91が複数個載置されている。搬送室96では、基板Wの搬送が行われ、基板受渡室98では、基板処理室93との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0016】
このような基板搬入出室92においては、キャリア載置部94に載置されたいずれか1個のキャリア91と基板受渡台97との間で、搬送装置95により基板Wが所定枚数ずつ搬送される。
【0017】
(基板処理室)
また基板処理室93は、中央部において前後(図1の左右)に伸延する基板搬送ユニット87と、基板搬送ユニット87の一方側および他方側において前後に並べて配置され、基板Wにめっき液を供給してめっき処理を行う複数のめっき処理装置20と、を有している。
【0018】
このうち基板搬送ユニット87は、前後方向に移動可能に構成した基板搬送装置88を含んでいる。また基板搬送ユニット87は、基板受渡室98の基板受渡台97に基板搬入出口89を介して連通している。
【0019】
このような基板処理室93においては、各めっき処理装置20に対して、基板搬送ユニット87の基板搬送装置88により、基板Wが、1枚ずつ水平に保持した状態で搬送される。そして、各めっき処理装置20において、基板Wが、1枚ずつ洗浄処理及びめっき処理される。
【0020】
各めっき処理装置20は、用いられるめっき液などが異なるのみであり、その他の点は略同一の構成からなっている。そのため、以下の説明では、複数のめっき処理装置20のうち一のめっき処理装置20の構成について説明する。
【0021】
めっき処理装置
次に、図2Aおよび図3を参照して、めっき処理装置20について説明する。図2Aは、めっき処理装置20を示す側面図であり、図3は、めっき処理装置20を示す平面図である。
【0022】
めっき処理装置20は、図2Aおよび図3に示すように、ケーシング101の内部で基板Wを保持して回転させる基板保持機構110と、基板保持機構110に保持された基板Wの表面に向けてめっき液を吐出する吐出機構21と、吐出機構21に接続され、吐出機構21にめっき液を供給するめっき液供給機構30とを備えている。
【0023】
このうち基板保持機構110の周囲には、基板Wから飛散しためっき液等を排出する液排出機構140が配置されている。また、基板Wの下方(基板Wの裏面側)には、基板保持機構110に保持された基板Wの裏面に向けて、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスGを送り出すガス送出機構190が設けられている。またガス送出機構190には、加熱用ガスGを加熱してガス送出機構190に供給するガス供給機構170が接続されている。さらに、基板保持機構110、吐出機構21、めっき液供給機構30、液排出機構140、ガス供給機構170およびガス送出機構190を制御する制御機構160が設けられている。なお「高温の加熱用ガス」とは、基板W上に吐出されためっき液の温度が低下するのを防ぐことができる程度の温度に加熱された加熱用ガスのことを意味している。例えば、加熱用ガスの温度は、基板W上に吐出されるめっき液の温度とほぼ等しい温度や、めっき液の温度よりも若干高い温度に設定される。
【0024】
(基板保持機構)
基板保持機構110は、図2Aおよび図3に示すように、ケーシング101内で上下に伸延する中空円筒状の回転軸部材111と、回転軸部材111の上端部に取り付けられたターンテーブル112と、ターンテーブル112の上面外周部に設けられ、基板Wを支持するウエハチャック113と、回転軸部材111に連結され、回転軸部材111を回転駆動する回転機構162と、を有している。
【0025】
このうち回転機構162は、制御機構160により制御され、回転軸部材111を回転駆動させ、これによって、ウエハチャック113により支持されている基板Wが回転される。この場合、制御機構160は、回転機構162を制御することにより、回転軸部材111およびウエハチャック113を回転させ、あるいは停止させることができる。また、制御機構160は、回転軸部材111およびウエハチャック113の回転数を上昇させ、下降させ、あるいは一定値に維持させるように制御することが可能である。
【0026】
さらに、基板Wの裏面側であってターンテーブル112の上方に、基板Wから間隙Sを空けてバックプレート171が配置されている。バックプレート171は、ウエハチャック113に保持された基板Wの裏面に対向し、ウエハチャック113に保持された基板Wとターンテーブル112との間に配設されている。バックプレート171は、回転軸部材111の軸心を貫通するシャフト172に連結固定されている。なお、バックプレート171はヒータを内蔵していても良い。さらに、シャフト172の下端部には、エアシリンダ等の昇降機構179が連結されている。すなわち、バックプレート171は、昇降機構179およびシャフト172により、ウエハチャック113で保持された基板Wとターンテーブル112との間を昇降するように構成されている。
【0027】
バックプレート171の中には、その表面に設けられた複数の開口173に連通する第1の流路174が形成されており、この第1の流路174と、シャフト172の軸心を貫通する流体供給路175とが連通している。この流体供給路175は、バルブ146を介して基板Wの裏面に処理液を供給する裏面処理液供給機構145に接続されている。
【0028】
また、バックプレート171は、その表面に設けられた開口(下側送出口)191と、バックプレート171内部に形成された第2の流路192とを有している。このうち第2の流路192は、下側送出口191に連通するとともに、シャフト172を上下に貫通するガス供給路193に連通している。このガス供給路193は、後述するガス供給機構170にバルブ188を介して接続されている。すなわち、バックプレート171に設けられた下側送出口191は、ガス供給機構170によって加熱された高温の加熱用ガスGを基板Wの裏面に向けて供給する作用を有する。これら下側送出口191、第2の流路192およびガス供給路193は、基板Wの裏面に向けて高温の加熱用ガスGを送り出す上述のガス送出機構190の構成要素として機能する。ガス送出機構190の詳細については後述する。
【0029】
(吐出機構)
次に、基板Wに向けてめっき液などを吐出する吐出機構21について説明する。吐出機構21は、基板Wに向けてCoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を吐出する第1吐出ノズル45を含んでいる。化学還元タイプのめっき液は、めっき液供給機構30から第1吐出ノズル45に供給される。なお、図2Aでは1つの第1吐出ノズル45のみを示しているが、この第1吐出ノズル45に加えて、基板Wに向けてCoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を吐出する他の吐出ノズル(追加の吐出ノズル)が設けられていても良い。
【0030】
また吐出機構21は、図2Aに示すように、吐出口71および吐出口72を含む第2吐出ノズル70をさらに有していてもよい。図2Aおよび図3に示すように、第2吐出ノズル70は、アーム74の先端部に取り付けられており、このアーム74は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構165により回転駆動される支持軸73に固定されている。
【0031】
第2吐出ノズル70において、吐出口71は、置換タイプのめっき液、例えばPdめっき液を供給するめっき液供給機構76にバルブ76aを介して接続されている。また吐出口72は、洗浄処理液を供給する洗浄処理液供給機構77にバルブ77aを介して接続されている。このような第2吐出ノズル70を設けることにより、一のめっき処理装置20内において、化学還元タイプのめっき液によるめっき処理だけでなく、置換タイプのめっき液によるめっき処理、および洗浄処理を実施することが可能となる。
【0032】
また図2Aに示すように、第2吐出ノズル70の吐出口72に、めっき処理に先立って実施される前処理のための前処理液、例えば純水などのリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構78がバルブ78aを介してさらに接続されていてもよい。この場合、バルブ77aおよびバルブ78aの開閉を適切に制御することにより、第2吐出ノズル70から、洗浄処理液またはリンス処理液のいずれかが選択的に基板Wに吐出される。
【0033】
次に第1吐出ノズル45について説明する。図2Aおよび図3に示すように、第1吐出ノズル45は吐出口46を含んでいる。また第1吐出ノズル45は、アーム49の先端部に取り付けられており、このアーム49は、基板Wの半径方向(図2Aおよび図3において矢印Dにより示される方向)において進退自在となるよう構成されていてもよい。この場合、第1吐出ノズル45は、基板Wの中心部に近接する中心位置と、中心位置よりも周縁側にある周縁位置との間で移動可能となっている。
【0034】
(めっき液供給機構)
次に、吐出機構21の第1吐出ノズル45に、CoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を供給するめっき液供給機構30について説明する。図4は、めっき処理装置20におけるめっき液および加熱用ガスGの流れを示す概略図である。
【0035】
図4に示すように、めっき液供給機構30は、めっき液35を貯留するめっき液供給タンク31と、めっき液供給タンク31のめっき液35を吐出機構21の第1吐出ノズル45へ供給する供給管33とを有している。
【0036】
また図4に示すように、めっき液供給タンク31には、めっき液35を貯留温度に加熱するタンク用加熱手段50が取り付けられている。またタンク用加熱手段50と第1吐出ノズル45との間において、供給管33に、吐出機構21の第1吐出ノズル45へ向かうめっき液35を貯留温度よりも高温の吐出温度に加熱温調する加熱手段60が取り付けられている。
【0037】
めっき液供給タンク31には、めっき液35の各種の成分が貯蔵されている複数の薬液供給源(図示せず)から各種薬液が供給されている。例えば、Coイオンを含むCoSO4金属塩、還元剤(例えば、次亜リン酸など)、アンモニアおよび添加剤などの薬液が供給されている。この際、めっき液供給タンク31内に貯留されるめっき液35の成分が適切に調整されるよう、各種薬液の流量が調整されている。
【0038】
また、図4に示すように、加熱手段60は、タンク用加熱手段50によって貯留温度まで加熱されためっき液35を、さらに吐出温度まで加熱するためのものである。この加熱手段60は、温調水等の伝熱媒体66を吐出温度または吐出温度よりも高い温度に加熱する温度媒体供給手段61と、供給管33に取り付けられ、温度媒体供給手段61からの伝熱媒体66の熱を供給管33内のめっき液35に伝導させることにより温調する温調配管65とを有している。
【0039】
ところで、めっき液供給機構30によって加熱されためっき液を、吐出機構21を用いて、回転している基板Wの中心領域に向けて吐出する場合、めっき液は、遠心力によって基板Wの中心側から周縁側に向かって流れていく。この際、基板Wの温度または基板W周辺の雰囲気の温度がめっき液の温度よりも低くなっていると、めっき液の熱が基板Wまたは基板W周辺の雰囲気によって奪われ、この結果、基板Wの周縁側に向かって流れるにつれてめっき液の温度が低くなってしまう。このため、めっき液の反応条件が、基板上の位置によって異なってしまうことが考えられる。このような課題を解決するための方法の1つとして、基板W周辺の雰囲気の温度を一様に高くし、これによってめっき液の温度低下を防ぐことが考えられる。しかしながら、この場合、雰囲気の温度を高くし過ぎると、基板Wの周縁側に向かって流れるにつれてめっき液の温度が高くなり、結局、めっき液の反応条件が基板上の位置によって異なってしまうことになる。また、雰囲気の温度を一様に高くすることによって、めっき液やその他の部材が熱によって劣化してしまうことも考えられる。
【0040】
ここで本実施の形態におけるガス送出機構190によれば、基板W周辺の雰囲気の温度を一様に高くするのではなく、基板Wの周縁領域に対応する雰囲気の温度を重点的に高くすることができる。このため、容易かつ効率的に、基板W上のめっき液の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。以下、ガス送出機構190について詳細に説明する。
【0041】
本実施の形態によるガス送出機構190は、基板Wの中心領域よりも基板Wの周縁領域に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。例えば、上述の下側送出口191は、基板Wの中心領域において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量よりも基板Wの周縁領域において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量の方が大きくなるよう、バックプレート171に形成されている。これによって、基板Wの周縁領域に対応する雰囲気の温度を、基板Wの中心領域に対応する雰囲気の温度に比べて重点的に高くすることができる。なお図2Aにおいて符号A1,A2で示されているように、基板Wの半径の1/2の半径を有する円W’を基板Wと同心で描くことによって基板Wを区画した場合の、中心側の領域が中心領域A1と定義され、周縁側の領域が周縁領域A2と定義される。
【0042】
下側送出口191の具体的な構成が特に限られることはなく、「周縁領域A2の方が中心領域A1に比べて、単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量が多い」という条件が満たされる限りにおいて、様々な構成が採用され得る。以下、バックプレート171に形成される下側送出口191の例について、図2B乃至図2Dを参照して説明する。図2B乃至図2Dは各々、下側送出口191が形成されたバックプレート171の一例を示す平面図である。なお図2B乃至図2Dにおいて、バックプレート171の上方に配置される基板Wとの対応関係を示すため、基板Wが点線で示されている。
【0043】
例えば図2Bに示すように、基板Wの半径方向に沿って一列に、複数の円形の下側送出口191がバックプレート171に形成されていてもよい。また図2Cに示すように、基板Wの同心円上に並ぶ多数の円形の下側送出口191がバックプレート171に形成されていてもよい。若しくは図2Dに示すように、基板Wの円周方向に沿って延びるスリット状の下側送出口191がバックプレート171に形成されていてもよい。なお、各下側送出口191から送り出される加熱用ガスGの温度および圧力がそれぞれ等しい場合、上述の条件は、「バックプレート171のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域に形成された下側送出口191の面積の方が、基板Wの中心領域A1に対応する領域に形成された下側送出口191の面積よりも、基板Wの単位面積あたりで比べた場合に大きくなっている」という条件に等しい。
【0044】
なお図2B乃至図2Dにおいては、バックプレート171において、基板Wの周縁領域A2に対応する領域だけでなく基板Wの中心領域A1に対応する領域にも下側送出口191が形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、下側送出口191は、バックプレート171のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域にのみ形成されていてもよい。
【0045】
(ガス供給機構)
ガス供給機構170は、上述したように、空気より比熱容量が高い加熱用ガスGを加熱してガス送出機構190に供給するものである。このようなガス供給機構170は、図4に示すように、加熱用ガスGを貯留するガス供給タンク181と、ガス供給タンク181に貯留された加熱用ガスGをガス供給路193へ供給するガス供給管182とを有している。ガス供給タンク181には、加熱用ガスGを加熱温調するガス温調ユニット183が接続されており、これにより加熱用ガスGが所定の温度に加熱されるようになっている。
【0046】
このような加熱用ガスGは、空気(比熱容量1.0(J/g・K))より比熱容量が高いものであり、具体的には、例えば水蒸気(比熱容量2.1(J/g・K))およびヘリウム(比熱容量5.2(J/g・K))を挙げることができる。このうち水蒸気を用いることがコスト等の観点から好ましい。
【0047】
加熱用ガスGとして水蒸気が用いられる場合、ガス送出機構190のガス供給路193へ供給される加熱用ガスGは、必ずしもガス供給タンク181から供給されるものに限られない。図4に示すように、ガス供給管185を介してガス供給路193と加熱手段60の温度媒体供給手段61とを連結し、温度媒体供給手段61の気相に存在する水蒸気をガス供給路193へ供給しても良い。また、ガス供給管184を介してガス供給路193とめっき液供給機構30のめっき液供給タンク31とを連結し、めっき液供給タンク31の気相に存在する水蒸気をガス供給路193中の加熱用ガスGに供給しても良い。この場合、温度媒体供給手段61からの水蒸気、めっき液供給タンク31からの水蒸気、およびガス供給タンク181からの水蒸気のうちいずれか1つまたは2つを用いても良く、これら全て併用しても良い。
【0048】
また、図4に示すように、追加のガス供給ユニット187を設け、ガス供給管186を介してガス送出機構190のガス供給路193と追加のガス供給ユニット187とを接続しても良い。この場合、追加のガス供給ユニット187は、めっき液35に含まれる成分のうちの少なくとも一つ(例えばアンモニア)のガスをガス供給路193中の加熱用ガスGに供給し、これらの混合ガスを基板Wに供給しても良い。また、めっき液供給タンク31の気相に存在するめっき液35の成分(例えばアンモニア)を、ガス供給管184を介してガス供給路193中の加熱用ガスGに供給し、これらの混合ガスを基板Wに供給しても良い。なお、この場合、追加のガス供給ユニット187からの成分を単独で用いても良く、めっき液供給タンク31からの成分を単独で用いても良く、追加のガス供給ユニット187からの成分とめっき液供給タンク31からの成分とを併用しても良い。このように、めっき液35の成分を基板Wに向けて供給することにより、めっき処理中に当該成分がめっき液35から揮発することを防止し、または、めっき処理中にめっき液35から揮発する当該成分をめっき液35に対して補充することができる。
【0049】
(液排出機構)
次に、基板Wから飛散しためっき液や洗浄液などを排出する液排出機構140について、図2Aを参照して説明する。
【0050】
液排出機構140は、基板保持機構110の周囲に設けられ、排出口124、129、134を有するカップ105と、カップ105に連結され、カップ105を上下方向に昇降駆動させる昇降機構164と、カップ105に接続され、基板Wから飛散しためっき液等をそれぞれ排出口124、129、134に集めて排出する液排出路120、125、130とを有している。図2Aに示すように、カップ105の上部には開口105aが形成されている。
【0051】
この場合、基板Wから飛散した処理液は、液の種類ごとに排出口124、129、134を介して液排出路120、125、130により排出される。例えば、基板Wから飛散したCoPめっき液は、めっき液排出路120から排出され、基板Wから飛散したPdめっき液は、めっき液排出路125から排出され、基板Wから飛散した洗浄液およびリンス処理液は、処理液排出路130から排出される。このようにして排出されたCoPめっき液およびPdめっき液は、それぞれ回収された後、再利用されても良い。
【0052】
以上のように構成されるめっき処理装置20を複数含むめっき処理システム90は、制御機構160に設けた記憶媒体161に記録された各種のプログラムに従って制御機構160により駆動制御され、これにより基板Wに対する様々な処理が行われる。ここで、記憶媒体161は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体161としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリーや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0053】
めっき処理方法
本実施の形態において、めっき処理システム90およびめっき処理装置20は、記憶媒体161に記録されためっき処理プログラムに従って、基板Wにめっき処理を施すよう駆動制御される。以下の説明では、はじめに、一のめっき処理装置20で基板WにPdめっき処理を置換めっきにより施し、その後、Coめっき処理を化学還元めっきにより施す方法について、図5を参照して説明する。
【0054】
(基板保持工程)
まず、基板搬送ユニット87の基板搬送装置88を用いて、1枚の基板Wを基板受渡室98から一のめっき処理装置20に搬入する。
【0055】
めっき処理装置20においては、はじめに、カップ105が所定位置まで降下され、次に、搬入された基板Wが基板保持機構110のウエハチャック113によって保持される(基板保持工程S300)。その後、液排出機構140の排出口134と基板Wの外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により上昇させられる。
【0056】
(洗浄工程)
次に、リンス処理、前洗浄処理およびその後のリンス処理からなる洗浄工程が実行される(S301)。はじめに、リンス処理液供給機構78のバルブ78aが開かれ、これによって、リンス処理液が基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。
【0057】
次に、前洗浄工程が実行される。はじめに、洗浄処理液供給機構77のバルブ77aが開かれ、これによって、洗浄処理液が基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。なお、洗浄処理液としては例えばリンゴ酸を用いることができ、リンス処理液としては例えば純水を用いることができる。その後、上述の場合と同様にして、リンス処理液が基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。処理後のリンス処理液や洗浄処理液は、カップ105の排出口134および処理液排出路130を介して廃棄される。なお洗浄工程S301および以下の各工程のいずれにおいても、特に言及しない限り、基板Wは基板保持機構110により第1回転方向R1(図3)に回転されている。
【0058】
(Pdめっき工程)
次に、Pdめっき工程が実行される(S302)。このPdめっき工程S302は、前洗浄工程後の基板Wが乾燥されていない状態の間に、置換めっき処理工程として実行される。このように、基板Wが乾燥していない状態で置換めっき処理工程を実行することで、基板Wの被めっき面の銅などが酸化してしまい良好に置換めっき処理できなくなることを防止することができる。
【0059】
Pdめっき工程においては、はじめに、液排出機構140の排出口129と基板Wの外周端縁とが対向する位置までカップ105を昇降機構164により下降させる。次に、めっき液供給機構76のバルブ76aが開かれ、これによって、Pdを含むめっき液が、基板Wの表面に第2吐出ノズル70の吐出口71を介して所望の流量で吐出される。このようにして、基板Wの表面にPdめっきが施される。処理後のめっき液は、カップ105の排出口129から排出される。排出口129から排出されためっき液は、液排出路125を介して、回収され再利用されるか、若しくは廃棄される。
【0060】
(リンス処理工程)
次に、Coめっき工程に先立って実施される前処理として、例えばリンス処理工程が実行される(S303)。このリンス処理工程S303においては、前処理液として例えばリンス処理液が基板Wの表面に供給される。なお、このリンス処理工程の後、薬液処理により基板Wを洗浄処理し、その後当該薬液を洗浄するためにリンス処理液を用いてリンス処理を行っても良い。
【0061】
(Coめっき工程)
その後、上述の工程S301〜303が実行されたのと同一のめっき処理装置20において、Coめっき工程が実行される(S304)。このCoめっき工程S304は、化学還元めっき処理工程として実行される。
【0062】
Coめっき工程S304においては、はじめに、制御機構160が基板保持機構110を制御することにより、基板保持機構110に保持された基板Wを回転させる。この状態で、加熱手段60によって吐出温度に加熱されためっき液35を、基板Wの表面に向けて第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出する。
【0063】
第1吐出ノズル45を用いて基板Wに向けてめっき液35を吐出することにより、基板W上に形成されたPdめっき層上に、Coめっき層が成膜される。Coめっき層が所定の厚み、例えば1μmに達した際、第1吐出ノズル45からのめっき液35の吐出が停止し、Coめっき工程S304が完了する。Coめっき工程S304に要する時間は、例えば20分〜40分程度とすることができる。
【0064】
なお、Coめっき工程S304においては、基板Wを常時一定の回転数で回転させる必要はなく、一時的に回転数を上昇または下降させたり、一時的に回転を止めたりしても良い。また、Coめっき工程S304において、第1吐出ノズル45を基板Wの中心側から基板Wの周縁側に向けて水平移動(スキャン)しても良い。
【0065】
また、Coめっき工程S304においては、排出口124と基板Wの外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により下降されている。このため、処理後のめっき液35は、カップ105の排出口124から排出される。排出された処理後のめっき液35は、液排出路120を介して、回収されて再利用されうる。
【0066】
ところで本実施の形態においては、Coめっき工程S304において、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するのと略同時に、制御機構160がガス送出機構190を制御して、高温の加熱用ガスG(例えば水蒸気)を基板Wの裏面に向けて送り出すようになっている。すなわち、ガス送出機構190は、ガス供給機構170のガス供給タンク181に貯留されてガス温調ユニット183によって加熱された加熱用ガスGを、ガス供給管182、ガス供給路193および第2の流路192を順次介して、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて送り出す。あるいは、ガス送出機構190は、めっき液供給タンク31または温度媒体供給手段61から供給された加熱用ガスGを、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて送り出す。
【0067】
ガス送出機構190による加熱用ガスGの送り出しは、第1吐出ノズル45からめっき液35が吐出している間連続して行われる。この間、加熱用ガスGは、基板Wとバックプレート171との間の間隙Sに存在し、基板Wを連続的に加熱する。さらに、加熱用ガスGにより、基板Wを介してめっき液35も加熱される。本実施の形態において、加熱用ガスGとして、空気より比熱容量が高いガス、例えば水蒸気を用いているので、基板Wを効率的に加熱することができる。また上述のように、ガス送出機構190は、基板Wの中心領域A1よりも基板Wの周縁領域A2に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。このため、基板Wの裏面側において、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度は、基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高くなっている。これによって、基板W上のめっき液35の温度が基板Wの周縁側に向かうにつれて低くなってしまうことを抑制することができ、このことにより、基板W上のめっき液35の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。従って、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。このように、基板Wの周縁領域A2に対応する雰囲気の温度を重点的に高くすることにより、めっき液35やその他の部材を過剰に加熱することなく、めっき液35が基板Wで流れることに起因するめっき液35の温度の低下を補償することができる。このため、基板W上におけるめっき液35の均一な温度分布を効率的に実現することができる。
【0068】
その後、第1吐出ノズル45からのめっき液35の吐出が停止した際、ガス供給機構170によるガス送出機構190への加熱用ガスGの供給を停止させ、これによって、ガス送出機構190による加熱用ガスGの送り出しを停止させる。あるいは、第1吐出ノズル45からのめっき液35の吐出が停止する前または後に、ガス供給機構170による加熱用ガスGの供給を停止しても良い。
【0069】
このように、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて、加熱された加熱用ガスGを送り出すことにより、基板W周辺の雰囲気温度を制御することができる。これによって、めっき液が基板Wの周縁側に向かって流れるにつれてめっき液の温度が低下することを防止することができる。これにより、めっき処理を一定の温度(例えば60〜90℃)に保った状態で行うことができ、Coめっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。しかも、基板Wに向けて供給する加熱用ガスGが気体からなっているので、カップ105の排出口124から排出されるめっき液35に加熱用の水等が混ざることが防止され、排出された処理後のめっき液35を容易に再利用することができる。とりわけCoめっき工程S304においては、めっき処理に要する時間が例えば20分〜40分と長くなる場合があるため、めっき液35を再利用することにより、より効率的に廃液の量を減らすことができる。
【0070】
なお、上述したように、加熱用ガスGにはめっき液35に含まれる成分のうちの少なくとも一つ(例えばアンモニア)が含まれていても良い。この場合、めっき処理中に当該成分がめっき液35から揮発することを防止し、あるいはめっき処理中にめっき液35から揮発する当該成分をめっき液35に対して補充することができる。
【0071】
(洗浄工程)
次に、Coめっき処理が施された基板Wの表面に対して、リンス処理、後洗浄処理およびその後のリンス処理からなる洗浄工程S305が実行される。この洗浄工程S305は、上述の洗浄工程S301と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
(乾燥工程)
その後、基板Wを乾燥させる乾燥工程が実行される(S306)。例えば、ターンテーブル112を回転させることにより、基板Wに付着している液体が遠心力により外方へ飛ばされ、これによって基板Wが乾燥される。すなわち、ターンテーブル112が、基板Wの表面を乾燥させる乾燥機構としての機能を備えていてもよい。
【0073】
このようにして、一のめっき処理装置20において、基板Wの表面に対して、はじめにPdめっきが置換めっきにより施され、次にCoめっきが化学還元めっきにより施される。
【0074】
その後、基板Wは、Auめっき処理用の他のめっき処理装置20に搬送されてもよい。この場合、他のめっき処理装置20において、基板Wの表面に、置換めっきによりAuめっき処理が施される。Auめっき処理の方法は、めっき液および洗浄液が異なる点以外は、Pdめっき処理のための上述の方法と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0075】
(本実施の形態の作用効果)
このように、本実施の形態によれば、上述のように、空気より比熱容量が高い高温の加熱用ガスG(例えば水蒸気)を基板保持機構110に保持された基板Wに向けて送り出すので、基板Wを効率的に加熱することができ、めっき液35によるめっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。また、液排出機構140から排出されるめっき液に水等が混ざることを防止し、めっき液を容易に再利用することができる。
【0076】
また本実施の形態によれば、ガス送出機構190は、基板Wの中心領域A1よりも基板Wの周縁領域A2に向けて多くの加熱用ガスGを送り出すよう構成されている。このため、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度を重点的に高くすることができ、このことにより、めっき液35やその他の部材を過剰に加熱することなく、めっき液35が基板Wで流れることに起因する温度の低下を補償することができる。このため、めっき液35の均一な温度分布を効率的に実現することができる。
【0077】
変形例
以下、本実施の形態の各変形例について説明する。
【0078】
上記実施の形態では、Coめっき工程S304において、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するのと略同時に、加熱された加熱用ガスG(例えば水蒸気)の基板Wの裏面に向けての送り出しを開始する態様を説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、Coめっき工程S304において、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するより前に、加熱用ガスG(例えば水蒸気)の基板Wの裏面に向けての送り出しを開始してもよい。
【0079】
この場合、追加のガス供給ユニット187(図4)は、不活性ガス(例えば窒素)をガス供給路193中の加熱用ガスGに供給しても良い。このように、加熱用ガスGとともに不活性ガス(例えば窒素)を混合して基板Wに向けて送り出すことにより、めっき液35が供給される前の基板Wが、加熱用ガスGによって酸化されることを防止することができる。
【0080】
また、上記実施の形態において、図2A乃至図2Dにおいて一点鎖線で示されているように、下側送出口191よりも基板Wの中心側に位置し、下側送出口191から送り出された加熱用ガスGを吸引する下側吸引口194がバックプレート171に形成されていてもよい。このような下側吸引口194を設けることにより、図2Aにおいて符号G’が付された矢印で示されているように、基板Wの周縁領域A2を加熱した後の加熱用ガスGは、基板Wに沿って基板Wの中心側に向かって流れ、そして下側吸引口194から排出される。この場合、基板Wの中心領域に至る加熱用ガスGの温度は、基板Wの周縁領域A2に向けて送り出された際の温度よりも低くなっている。従って、下側吸引口194を設けることにより、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度が基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高いという温度分布を安定に生成することができる。
【0081】
下側吸引口194によって吸引された加熱用ガスGは、例えば、シャフト172を上下に貫通するガス吸引路195を介して回収される。回収された加熱用ガスGは、外部に排出されてもよく、または、ガス供給機構170に戻されて再利用されてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、加熱用ガスGを基板Wの裏面に向けて送り出す態様を説明したが、これに限られることはなく、加熱用ガスGをさらに基板Wの表面に向けて送り出してもよい。例えば、図6に示すように、基板Wの表面側であって第1吐出ノズル45の側方にガスノズル196を設け、基板Wの裏面だけでなく基板Wの表面にも加熱用ガスGを送り出しても良い。この場合、ガスノズル196は、ガス供給機構170に接続されており、制御機構160がガス供給機構170を制御することにより、ガスノズル196が基板Wの表面に向けて高温の加熱用ガスGを送り出すようになっている。このガスノズル196は、バックプレート171に設けられた下側送出口191の場合と同様に、基板Wの中心領域A1において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量よりも基板Wの周縁領域A2においての単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量の方が大きくなるよう構成されている。これによって、基板Wの表面側において、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度を、基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高くすることができる。これによって、基板W上のめっき液35の温度が基板Wの周縁側に向かうにつれて低くなってしまうことを抑制することができ、このことにより、基板W上のめっき液35の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。従って、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。
【0083】
あるいは、図7に示すように、ガスノズル196を用いることにより、基板Wの表面側からのみ基板Wの表面に向けて加熱用ガスGを送り出し、基板Wの裏面には加熱用ガスGを送り出さなくても良い。この場合においても、基板W表面におけるめっき液35の温度を制御することができ、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることができる。
【0084】
さらに、図8Aに示すように、基板Wの上方に、基板Wから離間してトッププレート151を配置しても良い。この場合、トッププレート151は、カップ105の開口105aを覆うようカップ105上に配置されており、基板Wの表面の略全域を覆うようになっている。また、トッププレート151には、基板Wの表面に向けて加熱用ガスGを送り出す上側送出口197、および、第1吐出ノズル45の吐出口46および第2吐出ノズル70の吐出口71に対応する位置に形成された開口152が設けられている。ここで、上側送出口197は、基板Wの中心領域において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量よりも基板Wの周縁領域A2において単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量の方が大きくなるようトッププレート151に形成されている。これによって、基板Wの表面の周縁領域A2に対応する雰囲気を、基板Wの表面の中心領域に対応する雰囲気に比べて重点的に加熱することができる。
【0085】
上側送出口197の具体的な構成が特に限られることはなく、「周縁領域A2の方が中心領域A1に比べて、単位面積あたりに吹き付けられる加熱用ガスGの量が多い」という条件が満たされる限りにおいて、様々な形状が採用され得る。以下、トッププレート151に形成される上側送出口197の例について、図8B乃至図8Dを参照して説明する。図8B乃至図8Dは各々、上側送出口197が形成されたトッププレート151の一例を示す平面図である。なお図8B乃至図8Dにおいて、トッププレート151の上方に配置される基板Wとの対応関係を示すため、基板Wが点線で示されている。
【0086】
例えば図8Bに示すように、基板Wの半径方向に沿って一列に、複数の円形の上側送出口197がトッププレート151に形成されていてもよい。また図8Cに示すように、基板Wの同心円上に並ぶ多数の円形の上側送出口197がトッププレート151に形成されていてもよい。若しくは図8Dに示すように、基板Wの円周方向に沿って延びるスリット状の上側送出口197がトッププレート151に形成されていてもよい。各上側送出口197には、ガス供給路198を介してガス供給機構170から加熱用ガスGが供給される。なお、各197から送り出される加熱用ガスGの温度および圧力がそれぞれ等しい場合、上述の条件は、「トッププレート151のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域に形成された上側送出口197の面積の方が、基板Wの中心領域A1に対応する領域に形成された上側送出口197の面積よりも、基板Wの単位面積あたりで比べた場合に大きくなっている」という条件に等しい。
【0087】
なお図8B乃至図8Dにおいては、トッププレート151において、基板Wの周縁領域A2に対応する領域だけでなく基板Wの中心領域A1に対応する領域にも上側送出口197が形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上側送出口197は、トッププレート151のうち基板Wの周縁領域A2に対応する領域にのみ形成されていてもよい。
【0088】
さらに、トッププレート151は、昇降機構154に連結されており、制御機構160によって制御されることにより、カップ105とともに昇降可能となっている。また、トッププレート151は、昇降機構154によりカップ105に対して独立して昇降可能にもなっている。これにより、上述した基板保持工程S300において、基板Wを基板保持機構110に対して搬入および搬出することが可能となる。
【0089】
このように、基板Wの上方に、基板Wの表面側の略全域を覆うトッププレート151を設けたことにより、バックプレート171の下側送出口191およびトッププレート151の上側送出口197から送り出される加熱用ガスG、あるいはめっき液35から発生したガス(例えば水蒸気)が基板Wとトッププレート151との間の空間に存在している。このことにより、基板Wおよびめっき液35をより効率的に加熱することができ、めっき層の成長を基板Wの面内で均一にすることがより確実になる。
【0090】
また、図8A乃至図8Dにおいて一点鎖線で示すように、図2A乃至図2Dに示す実施の形態の場合と同様に、上側送出口197よりも基板Wの中心側に位置し、上側送出口197から送り出された加熱用ガスGを吸引する上側吸引口199がトッププレート151に形成されていてもよい。このような上側吸引口199を設けることにより、図8Aにおいて符号G’が付された矢印で示されているように、基板Wの周縁領域A2を加熱した後の加熱用ガスGは、基板Wに沿って基板Wの中心側に向かって流れ、そして上側吸引口199から排出される。この場合、基板Wの中心領域A1に至る加熱用ガスGの温度は、基板Wの周縁領域A2に向けて送り出された際の温度よりも低くなっている。従って、上側吸引口199を設けることにより、基板Wの周縁領域A2の周辺の雰囲気の温度が基板Wの中心領域A1の周辺の雰囲気の温度よりも高いという温度分布を安定に生成することができる。
【0091】
また、図8Aに示す形態において、図6に示す形態の場合と同様に、バックプレート171の下側送出口191から基板Wの裏面に向けて加熱用ガスGをさらに送り出してもよい。
【0092】
また、図6乃至図8Dにおいて、上記実施の形態と同様、追加のガス供給ユニット187(図4)を用いることにより、ガスノズル196または上側送出口197から送り出される加熱用ガスGに、めっき液35に含まれる成分(例えばアンモニア)および/または不活性ガス(例えば窒素)を混合しても良い。
【0093】
さらに、図6乃至図8Dに示す形態では、Coめっき工程S304において、ガスノズル196または上側送出口197からから基板Wの表面側に加熱用ガスGを送り出すタイミングは、必ずしも第1吐出ノズル45の吐出口46からめっき液35を吐出するタイミングと略同時とは限らない。基板W表面におけるめっき液35の温度が低下することを補償するのに十分であれば、めっき液35を第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出するよりも後に、加熱用ガスGをガスノズル196または上側送出口197から基板Wの表面に向けて送り出してもよい。
【0094】
なお、図6乃至図8Dにおいて、図1乃至図4に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0095】
さらに、上記各実施の形態においては、ガス送出機構190から鉛直方向に沿って基板Wに向けて加熱用ガスGが吹き付けられる例を示したが、これに限られるものではない。例えば、ガス送出機構190は、水平方向に沿って基板Wの周縁側から中心側に向かうよう加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出してもよい。この場合も、基板Wの周縁領域A2に対応する雰囲気の温度を重点的に高くすることができ、これによって、容易かつ効率的に、基板W上のめっき液の温度分布を位置に依らず略均一にすることができる。
【0096】
また、上記各実施形態においては、所定の温度に加熱された加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出す例を示したが、これに限られるものではない。例えば、めっき処理中に加熱用ガスGの温度を任意の温度に変化させてもよい。この場合はめっき処理中において指定した時間毎に温度を変化させてもよく、また、基板Wの回転数に応じて加熱用ガスGの温度が変化するようにしてもよい。一例として、基板W上に初期のめっき層が薄く形成される工程の際のめっき処理の温度と、初期のめっき層上にさらなるめっき層が積層されていく工程の際のめっき処理の温度と、がそれぞれ最適な温度となるよう、加熱用ガスGの温度を任意の温度に変化させることが考えられる。加熱用ガスGの温度の変化については、例えば、ガス送出機構190に新たに加熱手段(図示しない)を設け温度を変えるようにしてもよく、または、所定の温度に加熱された加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出す際のガス送出機構190と基板Wとの距離(例えば、ガスノズル196と基板との距離)を近づけたり離したりすることで加熱用ガスGの温度を変化させてもよい。これによって、基板W上のめっき液35の温度をより細かく制御することでき、このため、より適切な条件下でめっき液35の反応を進行させることができ、このことにより、めっき層の成長を基板Wの面内で略均一にすることができる。
【0097】
さらにまた、上記実施の形態において、第1吐出ノズル45から基板Wに向けて吐出される化学還元タイプのめっき液35として、CoPめっき液が用いられる例を示した。しかしながら、用いられるめっき液35はCoPめっき液に限られることはなく、様々なめっき液35が用いられ得る。例えば、化学還元タイプのめっき液35として、CoWBめっき液、CoWPめっき液、CoBめっき液またはNiPめっき液など、様々なめっき液35が用いられ得る。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
直径300mmの基板Wを回転させながら、約80度に加熱されたNiPめっき液を基板Wの表面の中心領域A1に向けて吐出した。これによって、約10分間にわたって、基板Wに対するめっき処理をほどこした。この際、基板Wを上方から覆うようトッププレート151を配置した。また、トッププレート151に設けられた上側送出口197を用いて、約90度に加熱された水蒸気からなる加熱用ガスGを基板Wの表面の周縁領域A2に向けて送り出した。
【0099】
めっき処理の間における、基板W上の温度分布を測定した。結果を図9(a)に示す。また、めっき処理の後に得られたNiPめっき層の厚みの分布を測定した。結果を図9(b)に示す。なお図9(a)(b)において、横軸は、基板Wの中心点からの位置を示している。具体的には、図9(a)(b)の横軸において、「0」が基板Wの中心点に対応しており、「±150」が基板Wの周縁に対応している。
【0100】
(比較例1)
加熱用ガスGを基板Wに向けて送り出さなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、基板Wに対するめっき処理を実施した。この場合の、基板W上の温度分布の測定結果、および得られためっき層の厚みの分布の測定結果を、実施例1の結果と併せて図9(a)および図9(b)に示す。
【0101】
図9(a)に示すように、加熱用ガスGを基板Wの表面の周縁領域A2に向けて送り出すことにより、中心領域A1における基板Wの温度と周縁領域A2における基板Wの温度との差を小さくすることができた。この結果、図9(b)に示すように、めっき層の成長を基板Wの面内で略均一にすることができた。
【符号の説明】
【0102】
20 めっき処理装置
21 吐出機構
110 基板保持機構
190 ガス送出機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、
前記基板を保持して回転させる基板保持機構と、
前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて前記めっき液を吐出する吐出機構と、
空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出機構と、を備え、
前記ガス送出機構は、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多くの前記加熱用ガスを送り出すよう構成されていることを特徴とするめっき処理装置。
【請求項2】
前記加熱用ガスは、水蒸気からなることを特徴とする請求項1記載のめっき処理装置。
【請求項3】
前記ガス送出機構は、前記基板の裏面側から前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項1または2記載のめっき処理装置。
【請求項4】
前記基板の裏面側に前記基板から間隙を空けて配置されたバックプレートをさらに備え、
前記ガス送出機構は、前記バックプレートに設けられた下側送出口から前記基板の裏面に向けて前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項3記載のめっき処理装置。
【請求項5】
前記バックプレートに、前記下側送出口よりも前記基板の中心側に位置し、前記下側送出口から送り出された前記加熱用ガスを吸引する下側吸引口が形成されていることを特徴とする請求項4記載のめっき処理装置。
【請求項6】
前記ガス送出機構は、前記基板の表面側から前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のめっき処理装置。
【請求項7】
前記基板の表面側に前記基板から間隙を空けて配置されたトッププレートをさらに備え、
前記ガス送出機構は、前記トッププレートに設けられた上側送出口から前記基板の表面に向けて前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項6記載のめっき処理装置。
【請求項8】
前記トッププレートに、前記上側送出口よりも前記基板の中心側に位置し、前記上側送出口から送り出された前記加熱用ガスを吸引する上側吸引口が形成されていることを特徴とする請求項7記載のめっき処理装置。
【請求項9】
前記基板保持機構の周囲に配置され、上部に開口を有し、前記基板から飛散した前記めっき液を排出する液排出機構をさらに備え、
前記トッププレートは、前記基板に前記めっき液が供給される際、前記液排出機構の前記開口を上方から覆うよう配置されることを特徴とする請求項7または8記載のめっき処理装置。
【請求項10】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、
基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、
前記基板を回転させる工程と、
前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、
前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、
前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出されることを特徴とするめっき処理方法。
【請求項11】
前記加熱用ガスは、水蒸気からなることを特徴とする請求項10記載のめっき処理方法。
【請求項12】
前記基板の周縁領域に向けて送り出された前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域に対応する位置に設けられた吸引口によって吸引されることを特徴とする請求項10または11記載のめっき処理方法。
【請求項13】
めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記めっき処理方法は、
基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、
前記基板を回転させる工程と、
前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、
前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、
前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出される、方法からなっていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、
前記基板を保持して回転させる基板保持機構と、
前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて前記めっき液を吐出する吐出機構と、
空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出機構と、を備え、
前記ガス送出機構は、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多くの前記加熱用ガスを送り出すよう構成されていることを特徴とするめっき処理装置。
【請求項2】
前記加熱用ガスは、水蒸気からなることを特徴とする請求項1記載のめっき処理装置。
【請求項3】
前記ガス送出機構は、前記基板の裏面側から前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項1または2記載のめっき処理装置。
【請求項4】
前記基板の裏面側に前記基板から間隙を空けて配置されたバックプレートをさらに備え、
前記ガス送出機構は、前記バックプレートに設けられた下側送出口から前記基板の裏面に向けて前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項3記載のめっき処理装置。
【請求項5】
前記バックプレートに、前記下側送出口よりも前記基板の中心側に位置し、前記下側送出口から送り出された前記加熱用ガスを吸引する下側吸引口が形成されていることを特徴とする請求項4記載のめっき処理装置。
【請求項6】
前記ガス送出機構は、前記基板の表面側から前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のめっき処理装置。
【請求項7】
前記基板の表面側に前記基板から間隙を空けて配置されたトッププレートをさらに備え、
前記ガス送出機構は、前記トッププレートに設けられた上側送出口から前記基板の表面に向けて前記加熱用ガスを送り出すことを特徴とする請求項6記載のめっき処理装置。
【請求項8】
前記トッププレートに、前記上側送出口よりも前記基板の中心側に位置し、前記上側送出口から送り出された前記加熱用ガスを吸引する上側吸引口が形成されていることを特徴とする請求項7記載のめっき処理装置。
【請求項9】
前記基板保持機構の周囲に配置され、上部に開口を有し、前記基板から飛散した前記めっき液を排出する液排出機構をさらに備え、
前記トッププレートは、前記基板に前記めっき液が供給される際、前記液排出機構の前記開口を上方から覆うよう配置されることを特徴とする請求項7または8記載のめっき処理装置。
【請求項10】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、
基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、
前記基板を回転させる工程と、
前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、
前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、
前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出されることを特徴とするめっき処理方法。
【請求項11】
前記加熱用ガスは、水蒸気からなることを特徴とする請求項10記載のめっき処理方法。
【請求項12】
前記基板の周縁領域に向けて送り出された前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域に対応する位置に設けられた吸引口によって吸引されることを特徴とする請求項10または11記載のめっき処理方法。
【請求項13】
めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記めっき処理方法は、
基板保持機構によって前記基板を保持する保持工程と、
前記基板を回転させる工程と、
前記基板に向けて吐出機構から前記めっき液を吐出するめっき工程と、を備え、
前記めっき工程は、空気より比熱容量が高い気体からなる高温の加熱用ガスを前記基板保持機構に保持された前記基板に向けて送り出すガス送出工程を含み、
前記ガス送出工程において、前記加熱用ガスは、前記基板の中心領域よりも前記基板の周縁領域に向けて多く送り出される、方法からなっていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【公開番号】特開2013−112846(P2013−112846A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259395(P2011−259395)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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