説明

めっき処理装置、めっき処理方法および記録媒体

【課題】めっき膜からデフェクトを容易に除去することが可能なめっき処理装置を提供する。
【解決手段】めっき処理装置20は、基板2を回転保持する基板回転保持機構110と、基板回転保持機構110に保持された基板2に対してめっき液35を供給するめっき液供給機構30と、を備えている。また、基板回転保持機構110に保持された基板2に対して物理力を印加することにより基板2を洗浄する物理洗浄機構70が設けられている。物理洗浄機構70は、基板2が乾燥されるよりも前に基板2に対して物理力を印加することにより、基板2上のめっき膜からデフェクトを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にめっき液を供給してめっき処理を行うためのめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハや液晶基板などの基板には、表面に回路を形成するために配線が施されている。この配線は、アルミニウム素材に替わって電気抵抗が低く信頼性の高い銅素材によるものが利用されるようになっている。しかし、銅はアルミニウムと比較して酸化されやすいので、銅配線表面の酸化を防止するために、高いエレクトロマイグレーション耐性を有する金属によってめっき処理することが望まれる。
【0003】
従来より、銅配線表面にCoやNiのパーティクルが析出し、これらのパーティクルによって銅配線間が短絡するという問題が生じている。このような課題を解決するため、特許文献1において、Cu配線形成後のシリコン熱酸化膜上に存在する無電解めっきにより生じたCoやNiのパーティクルを除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−84056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、銅配線表面にめっきされる金属の金属イオンを含む無電解めっき液中においては、金属イオンと還元剤とが酸化還元反応し、金属膜が生成する一方、副生成物として水素が発生する。本発明者らは、このめっき液中に溶存する水素が上記金属イオンと反応した場合、水素還元反応により、金属のデフェクトが発生することを見出した。このようなデフェクトが発生すると、金属膜が短絡する等の問題が生じるおそれがあるため問題となる。
【0006】
このようにして発生したデフェクトは、めっき液や洗浄液等を乾燥する乾燥処理を経ることにより、金属膜に吸着(物理吸着と化学吸着の両方)される。これは、乾燥処理により金属膜とデフェクトとの間の溶媒が無くなるため、互いの距離が非常に近くなるためである。このように、一旦デフェクトが金属膜に吸着した場合、デフェクトを金属膜から除去することは容易ではない。
【0007】
一方、特許文献1においては、めっき処理エリア54で基板にめっき処理が行われた後、その基板を洗浄エリア52に搬送し、洗浄エリア52で基板を洗浄するようになっている。したがって、めっき処理エリア54でめっき処理された基板は、洗浄エリア52に搬送される前に乾燥し、このときデフェクトは金属膜に吸着してしまうと考えられる。このため、特許文献1に提案される方法を用いた場合、金属膜に吸着したデフェクトを十分に除去することは難しいと考えられる。
【0008】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得るめっき処理装置、めっき処理方法および記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、前記基板を収容する基板収容部と、前記基板収容部に収容された前記基板に対してめっき液を供給するめっき液供給機構と、前記基板収容部に収容された前記基板に対して物理力を印加することにより前記基板を洗浄する物理洗浄機構と、を備え、前記物理洗浄機構は、前記めっき液供給機構により前記基板に対してめっき液が供給された後、前記基板が乾燥されるよりも前に、前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄することを特徴とするめっき処理装置である。
【0010】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記物理洗浄機構は、洗浄液の液滴を吐出する液滴吐出手段を有してもよい。
【0011】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記液滴吐出手段は、純水と液滴生成用ガスとを混合して純水の液滴を生成し、この純水の液滴を前記基板に対して吐出する二流体ノズルを有しでもよい。
【0012】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記物理洗浄機構は、薬液と液滴生成用ガスとを混合して薬液の液滴を生成し、この薬液の液滴を前記基板に対して吐出する二流体ノズルを有してもよい。
【0013】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記物理洗浄機構は、前記基材に当接する刷毛部を含む洗浄ブラシを有してもよい。
【0014】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記めっき液供給機構により前記基板に対してめっき液が供給された後に、前記基板収容部に収容された前記基板に対して薬液を供給する薬液供給機構をさらに備え、前記物理洗浄機構は、前記薬液供給機構により前記基板に対して前記薬液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも前に、前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄してもよい。
【0015】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記薬液供給機構により前記基板に対して薬液が供給された後に、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構をさらに備え、前記物理洗浄機構は、前記リンス処理液供給機構により前記基板に対して前記リンス処理液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも前に前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄してもよい。
【0016】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記薬液供給機構により前記基板に対して薬液が供給された後に、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構をさらに備え、前記物理洗浄機構は、前記リンス処理液供給機構により前記基板に対して前記リンス処理液が供給される際、前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄してもよい。
【0017】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記めっき液供給機構は、前記基板に供給されるめっき液を貯留する供給タンクと、めっき液を前記基板に対して吐出する吐出ノズルと、前記供給タンクのめっき液を前記吐出用ノズルへ供給するめっき液供給管と、前記供給タンクに貯留されるめっき液中の溶存酸素および溶存水素を除去する供給タンク用脱気手段と、を有してもよい。
【0018】
第1の本発明によるめっき処理装置において、前記基板から飛散しためっき液を前記収容部から排出するめっき液排出機構と、前記めっき液排出機構から排出されためっき液を回収して前記めっき液供給機構の前記供給タンクに送るめっき液回収機構と、をさらに備え、前記めっき液回収機構は、前記めっき液排出機構から排出されためっき液を貯留する回収タンクと、前記回収タンクに貯留されるめっき液中の溶存酸素および溶存水素を除去する回収タンク用脱気手段と、を有してもよい。
【0019】
第2の本発明は、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、前記基板を基板収容部に収容することと、前記基板収容部に収容された前記基板に対してめっき液を供給することと、前記基板にめっき液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対して物理力を印加することにより前記基板を洗浄することと、前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄した後、前記基板収容部に収容された前記基板を乾燥させることと、を備えたことを特徴とするめっき処理方法である。
【0020】
第2の本発明によるめっき処理方法において、前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、二流体ノズルによって行われてもよい。
【0021】
第2の本発明によるめっき処理方法において、前記基板にめっき液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対して薬液を供給することをさらに備え、前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、前記基板に前記薬液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも前に行われてもよい。
【0022】
第2の本発明によるめっき処理方法において、前記基板に前記薬液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給することをさらに備え、前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、前記基板に前記リンス処理液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも行われてもよい。
【0023】
第2の本発明によるめっき処理方法において、前記基板に前記薬液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給することをさらに備え、前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、前記基板に前記リンス処理液が供給される際に行われてもよい。
【0024】
第3の本発明は、めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、前記めっき処理方法は、前記基板を基板収容部に収容することと、前記基板収容部に収容された前記基板に対してめっき液を供給することと、前記基板にめっき液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対して物理力を印加することにより前記基板を洗浄することと、前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄した後、前記基板収容部に収容された前記基板を乾燥させることと、を有することを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、物理洗浄機構により、基板が乾燥されるよりも前に、非乾燥状態で基板に対して物理力を印加してデフェクトを除去している。すなわち、めっき液や洗浄液等によって濡れた状態の基板に対して物理力を印加することにより、基板を洗浄している。これにより、金属膜に吸着する前のデフェクトを効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるめっき処理システムの概略構成を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態におけるめっき処理装置を示す側面図。
【図3】図3は、図2に示すめっき処理装置の平面図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態におけるめっき液供給機構を示す図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態におけるめっき液供給機構を示す図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態における液滴吐出手段の二流体ノズルを示す図。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態における第1加熱機構を示す図。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態における第2加熱機構を示す図。
【図9】図9は、めっき処理方法を示すフローチャート。
【図10】図10は、図9のNiめっき工程を詳細に示すフローチャート。
【図11】図11は、第1加熱機構の変形例を示す図。
【図12】図12は、物理洗浄機構の変形例を示す図。
【図13】図13は、本発明の第2の実施の形態におけるめっき液回収機構を示す図。
【図14】図14は、本発明の第2の実施の形態におけるNiめっき工程を詳細に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図10を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず図1により、本実施の形態におけるめっき処理システム1全体について説明する。
【0028】
めっき処理システム
図1に示すように、めっき処理システム1は、基板2(ここでは、半導体ウエハ)を複数枚(たとえば、25枚)収容するキャリア3を載置し、基板2を所定枚数ずつ搬入及び搬出するための基板搬入出室5と、基板2のめっき処理や洗浄処理などの各種の処理を行うための基板処理室6と、を含んでいる。基板搬入出室5と基板処理室6とは、隣接して設けられている。
【0029】
(基板搬入出室)
基板搬入出室5は、キャリア載置部4、搬送装置8を収容した搬送室9、基板受渡台10を収容した基板受渡室11を有している。基板搬入出室5においては、搬送室9と基板受渡室11とが受渡口12を介して連通連結されている。キャリア載置部4は、複数の基板2を水平状態で収容するキャリア3を複数個載置する。搬送室9では、基板2の搬送が行われ、基板受渡室11では、基板処理室6との間で基板2の受け渡しが行われる。
【0030】
このような基板搬入出室5においては、キャリア載置部4に載置されたいずれか1個のキャリア3と基板受渡台10との間で、搬送装置8により基板2が所定枚数ずつ搬送される。
【0031】
(基板処理室)
また基板処理室6は、中央部において前後に伸延する基板搬送ユニット13と、基板搬送ユニット13の一方側および他方側において前後に並べて配置され、基板2にめっき液を供給してめっき処理を行う複数のめっき処理装置20と、を有している。
【0032】
このうち基板搬送ユニット13は、前後方向に移動可能に構成した基板搬送装置14を含んでいる。また基板搬送ユニット13は、基板受渡室11の基板受渡台10に基板搬入出口15を介して連通している。
【0033】
このような基板処理室6においては、各めっき処理装置20に対して、基板搬送ユニット13の基板搬送装置14により、基板2が、1枚ずつ水平に保持した状態で搬送される。そして、各めっき処理装置20において、基板2が、1枚ずつ洗浄処理及びめっき処理される。
【0034】
各めっき処理装置20は、用いられるめっき液などが異なるのみであり、その他の点は略同一の構成からなっている。そのため、以下の説明では、複数のめっき処理装置20のうち一のめっき処理装置20の構成について説明する。
【0035】
めっき処理装置
以下、図2および図3を参照して、めっき処理装置20について説明する。図2は、めっき処理装置20を示す側面図であり、図3は、めっき処理装置20を示す平面図である。
【0036】
めっき処理装置20は、図2および図3に示すように、ケーシング101の内部で基板2を回転保持するための基板回転保持機構(基板収容部)110と、基板2の表面にめっき液や洗浄液などを供給する液供給機構30,30A,90,90Aと、基板2から飛散しためっき液や洗浄液などを排出する液排出機構120,125,130と、基板2の表面に物理力を印加することにより基板2の表面を洗浄する物理洗浄機構70と、基板回転保持機構110、液供給機構30,30A,90,90A、液排出機構120,125,130および物理洗浄機構70を制御する制御機構160と、を備えている。
【0037】
(基板回転保持機構)
このうち基板回転保持機構110は、図2および図3に示すように、ケーシング101内で上下に伸延する中空円筒状の回転軸111と、回転軸111の上端部に取り付けられたターンテーブル112と、ターンテーブル112の上面外周部に設けられ、基板2を支持するウエハチャック113と、回転軸111を回転駆動する回転機構162と、を有している。このうち回転機構162は、制御機構160により制御され、回転機構162によって回転軸111が回転駆動され、これによって、ウエハチャック113により支持されている基板2が回転される。
【0038】
(液供給機構)
次に、基板2の表面にめっき液や洗浄液などを供給する液供給機構30,30A,90,90Aについて、図2乃至図5を参照して説明する。液供給機構30,30A,90,90Aは、基板2の表面にNiを含むめっき液を供給するめっき液供給機構30と、基板2の表面に後洗浄用の洗浄処理液(薬液)を供給する洗浄処理液供給機構(薬液供給機構)90と、基板2の表面にPdを含むめっき液を供給するめっき液供給機構30Aと、基板2の表面に前洗浄用の洗浄処理液(薬液)を供給する洗浄処理液供給機構(薬液供給機構)90Aと、を含んでいる。
【0039】
〔めっき液供給機構30〕
図4に示すように、めっき液供給機構30は、所定温度で基板2に供給されるめっき液35を貯留する供給タンク31と、めっき液35を基板2に対して吐出する吐出ノズル32と、供給タンク31のめっき液35を吐出ノズル32へ供給するめっき液供給管33と、供給タンク31に貯留されるめっき液35中の溶存酸素および溶存水素を除去する供給タンク用脱気手段34と、を有している。また図4に示すようにめっき液供給管33には、開閉自在なバルブ37bとが介挿されている。なお本実施の形態において、基板2に供給されるめっき液35の「所定温度」は、めっき液35内での自己反応が進行するめっき温度に等しい温度、または前記めっき温度よりも高温の温度となっている。めっき温度については後述する。
【0040】
供給タンク31には、Niなどのめっき液35の各種の成分が貯蔵されている複数の薬液供給源(図示せず)から各種薬液が供給されている。例えば、Niイオンを含むNiP金属塩、還元剤および添加剤などの薬液が供給されている。この際、供給タンク31内に貯留されるめっき液35の成分が適切に調整されるよう、各種薬液の流量が調整されている。
【0041】
吐出ノズル32は、ノズルヘッド104に取り付けられている。またノズルヘッド104は、アーム103の先端部に取り付けられており、このアーム103は、上下方向に延伸可能となっており、かつ、回転機構165により回転駆動される支持軸102に固定されている。このような構成により、めっき液を、吐出ノズル32を介して基板2の表面の任意の箇所に所望の高さから吐出することが可能となっている。
【0042】
なお図2においては、めっき液供給機構30が、アーム103の外側に配置されるように示されている。しかしながら、めっき液供給機構30の配置が特に限られることはなく、めっき液供給機構30がアーム103の内側に配置されていてもよい。後述する例においては、めっき液供給機構30のめっき液供給管がアーム103の内側に配置される場合について説明する。同様に、図2に示すめっき液供給機構30A、洗浄処理液供給機構90、洗浄処理液供給機構90Aまたは物理洗浄機構70についても、それらの配置が特に限られることはない。
【0043】
さらに図4に示すように、めっき液供給機構30の供給タンク31またはめっき液供給管33の少なくともいずれか一方に、めっき液35を第1温度に加熱する第1加熱機構50が取り付けられている。また第1加熱機構50よりも吐出ノズル32側において、めっき液供給管33に、めっき液35を第1温度よりも高温の第2温度に加熱する第2加熱機構60が取り付けられている。上記供給タンク用脱気手段34、第1加熱機構50および第2加熱機構60については、後に詳細に説明する。
【0044】
〔めっき液供給機構30A〕
図5に示すように、めっき液供給機構30Aにおいて、吐出ノズル32にめっき液を供給するための構成要素は、用いられるめっき液35Aが異なるのみであり、他の構成要素はめっき液供給機構30における各構成要素と略同一になっている。図2に示すように、Pdを含むめっき液を基板2の表面に吐出する吐出ノズル32は、ノズルヘッド109に取り付けられている。またノズルヘッド109は、アーム104の先端部に取り付けられており、このアーム104は、上下方向に延伸可能であり、かつ回転機構163により回転駆動される支持軸107に固定されている。このような構成により、めっき液を、吐出ノズル32を介して基板2の表面の任意の箇所に所望の高さから吐出することが可能となっている。
【0045】
図5に示すめっき液供給機構30Aにおいて、めっき液供給機構30と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
〔洗浄処理液供給機構90〕
洗浄処理液供給機構(薬液供給機構)90は、後述するように基板2の後洗浄工程において用いられるものであり、図2に示すように、ノズルヘッド104に取り付けられたノズル92を含んでいる。また図4に示すように、洗浄処理液供給機構90は、基板2に供給される洗浄処理液(薬液)93を貯留するタンク91と、タンク91の洗浄処理液93をノズル92へ供給する供給管94と、供給管94に介挿されたポンプ96およびバルブ97aと、をさらに有している。なお図4に示すように、洗浄処理液供給機構90において、基板2の表面に純水などのリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構95との間で、供給管94およびノズル92が共用されていてもよい。この場合、バルブ97a,97bの開閉を適切に制御することにより、ノズル92から、洗浄処理液93またはリンス処理液のいずれかが選択的に基板2の表面に吐出される。
【0047】
〔洗浄処理液供給機構90A〕
洗浄処理液供給機構(薬液供給機構)90Aは、後述するように基板2の前洗浄工程において用いられるものであり、図2に示すように、ノズルヘッド109に取り付けられたノズル92を含んでいる。洗浄処理液供給機構90Aの構成要素は、図5に示すように、用いられる洗浄処理液(薬液)93Aが異なるのみであり、他の構成要素は洗浄処理液供給機構90における各構成要素と略同一になっている。図5に示す洗浄処理液供給機構90Aにおいて、洗浄処理液供給機構90と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
(液排出機構)
次に、基板2から飛散しためっき液や洗浄液などを排出する液排出機構120,125,130について、図2を参照して説明する。図2に示すように、ケーシング101内には、昇降機構164により上下方向に駆動され、排出口124,129,134を有するカップ105が配置されている。液排出機構120,125,130は、それぞれ排出口124,129,134に集められる液を排出するものとなっている。
【0049】
基板2から飛散した処理液は、種類ごとに排出口124,129,134を介して液排出機構120,125,130により排出することが可能となっている。例えば、液排出機構120は、めっき液35を排出するめっき液排出機構120となっており、液排出機構125は、めっき液35Aを排出するめっき液排出機構125となっており、液排出機構130は、洗浄液93,93Aおよびリンス処理液を排出する処理液排出機構130となっている。
【0050】
図2に示すように、めっき液排出機構120,125は、流路切換器121,126により切り替えられる回収流路122,127および廃棄流路123,128をそれぞれ有している。このうち回収流路122,127は、めっき液を回収して再利用するための流路であり、一方、廃棄流路123,128は、めっき液を廃棄するための流路である。回収流路122,127により回収しためっき液を再利用するためのめっき液回収機構については、後に第2の実施の形態において説明する。なお図2に示すように、処理液排出機構130には廃棄流路133のみが設けられている。
【0051】
(物理洗浄機構)
次に図2および図4を参照して、物理洗浄機構70について説明する。物理洗浄機構70は、基板2の表面に物理力を印加することにより基板2の表面を洗浄するものであり、例えば、洗浄液の液滴を吐出する液滴吐出手段71からなっている。この液滴吐出手段71は、後述するように、基板2の表面にめっき処理などが施された後、基板2の表面が乾燥されるよりも前に基板2の表面に液滴によって物理力を印加するよう、制御機構160により制御される。
【0052】
図4に示すように、物理洗浄機構70を構成する液滴吐出手段71は、洗浄液74の液滴を基板2の表面に吐出する二流体ノズル72と、洗浄液74を貯留するタンク76と、タンク76の洗浄液74を二流体ノズル72へ供給する供給管74aと、供給管74aに介挿されたポンプ77およびバルブ78aと、二流体ノズル72に窒素などの不活性ガスからなる液滴生成用ガス75を供給する供給管75aと、を有している。この二流体ノズル72は、ノズルヘッド104に取り付けられている。このノズルヘッド104は、上述のようにアーム103および回転機構165を介して移動可能となっており、このため、洗浄液74の液滴を、二流体ノズル72を介して基板2の表面の任意の箇所に吐出することが可能となっている。なお、供給管74aを介して二流体ノズル72に供給される洗浄液74が、純水などのリンス処理液からなっていてもよい。あるいは、二流体ノズル72に供給される洗浄液74が、後洗浄用の洗浄処理液(薬液)93からなっていても良い(図4の仮想線参照)。
【0053】
〔二流体ノズル〕
次に図6を参照して、二流体ノズル72の構成について具体的に説明する。二流体ノズルとは、一般的にガスと液体とを混合させることにより微小な液滴を生成し、この微小な液滴を吐出する方式のノズルのことをいう。図6において、二点鎖線で示される領域は、二流体ノズル72から噴霧される噴霧用洗浄液74の液滴72fの噴霧範囲を示している。
【0054】
二流体ノズル72は、略円柱状のノズル本体72aを有しており、このノズル本体72aの内部には、洗浄液74が供給される供給管74aに連通する洗浄液流路72bと、液滴生成用ガス75が供給される供給管75aに連通するガス流路72cとがそれぞれ設けられ、洗浄液74と液滴生成用ガス75とが混合部72dで衝突して混合される。これによって、混合部72dにおいて洗浄液74の液滴が形成され、そして、基板2に対して洗浄液74の液滴72fが吐出される。
【0055】
次に、めっき液供給機構30およびめっき液供給機構30Aに設けられている供給タンク用脱気手段34、第1加熱機構50および第2加熱機構60について説明する。
【0056】
(供給タンク用脱気手段)
はじめに供給タンク用脱気手段34について説明する。図7に示すように、供給タンク用脱気手段34は、窒素などの不活性ガスを供給タンク31内に供給するガス供給管34aを含んでいる。
【0057】
ガス供給管34aを介してめっき液35中に導入される窒素などの不活性ガスは、その一部がめっき液35中に溶解される。一般に、めっき液35中に溶存可能なガスの最大量は温度などに応じて決まっており、このため、めっき液35中に新たに窒素などの不活性ガスが溶解されると、既にめっき液35中に溶存している酸素や水素などのその他のガスがめっき液35の外部に排出される。このように、ガス供給管34aを含む供給タンク用脱気手段34は、いわゆるバブリングによってめっき液35中の溶存酸素および溶存水素を除去するためのものとなっている。めっき液3から排出された酸素や水素は、排気手段38によって供給タンク31から排出される。
【0058】
好ましくは、ガス供給管34aは、供給タンク31内に貯留されているめっき液35の液面近傍ではなく、供給タンク31の底面近傍まで挿入されている。これによって、供給タンク31内のめっき液35の全域にわたって溶存酸素および溶存水素を除去することができる。このことにより、基板2に供給されるめっき液35における溶存酸素および溶存水素の濃度をより低くすることができる。
【0059】
図示はしないが、供給タンク31の上端が何らかの封止手段により外部環境から封止され、かつ、封止手段とめっき液35の液面との間に窒素などの不活性ガスが充填されていてもよい。すなわち、供給タンク31内のめっき液35が窒素などの不活性ガス雰囲気下に置かれていてもよい。これによって、溶存酸素および溶存水素が除去された後のめっき液35が酸素および水素に曝されるのを防ぐことができる。
【0060】
(第1加熱機構)
次に第1加熱機構50について説明する。図7において、めっき液35を第1温度に加熱する供給タンク用循環加熱手段51を有する第1加熱機構50が示されている。なお第1温度は、めっき液35内での自己反応による金属イオンの析出が進行する温度(めっき温度)よりも低く、かつ常温よりも高い所定の温度となっている。例えば、Niを含むめっき液35において、そのめっき温度は約60度となっており、この場合、第1温度が40〜60度の範囲内に設定される。
【0061】
供給タンク用循環加熱手段51は、図7に示すように、供給タンク31の近傍でめっき液35を循環させる供給タンク用循環管52と、供給タンク用循環管52に取り付けられ、めっき液35を第1温度に加熱する供給タンク用ヒータ53と、を有している。また図7に示すように、供給タンク用循環管52には、めっき液35を循環させるためのポンプ56と、フィルター55とが介挿されている。このような供給タンク用循環加熱手段51を設けることにより、供給タンク31内のめっき液35を供給タンク31近傍で循環させながら第1温度まで加熱することができる。また図7に示すように、供給タンク用循環管52にはめっき液供給管33が接続されている。この場合、図7に示すバルブ37aが開放され、バルブ37bが閉鎖されているときは、供給タンク用ヒータ53を通っためっき液35が供給タンク31に戻される。一方、バルブ37aが閉鎖され、バルブ37bが開放されているときは、供給タンク用ヒータ53を通っためっき液35がめっき液供給管33を通って第2加熱機構60に到達する。
【0062】
なお図7において一点鎖線で示されているように、供給タンク用循環管52に、めっき液35の特性をモニタするモニタ手段57が設けられていてもよい。モニタ手段57は、例えば、めっき液35の温度をモニタする温度モニタや、めっき液35のpHをモニタするpHモニタなどからなっている。
【0063】
(第2加熱機構)
次に、図8を参照して、第2加熱機構60について説明する。第2加熱機構60は、第1加熱機構50によって第1温度まで加熱されためっき液35を、さらに第2温度まで加熱するためのものである。なお第2温度とは、上述のめっき温度に等しいか、若しくはめっき温度よりも高い所定の温度となっている。例えば、Niを含むめっき液35において、そのめっき温度は上述のように約60度となっており、この場合、第2温度が60〜90度の範囲内に設定される。
【0064】
図8に示すように、第2加熱機構60は、所定の伝熱媒体を第2温度または第2温度よりも高い温度に加熱する第2温度媒体供給手段61と、第1加熱機構50よりも吐出ノズル32側においてめっき液供給管33に取り付けられ、第2温度媒体供給手段61からの伝熱媒体の熱をめっき液供給管33内のめっき液35に伝導させる温度調節器62と、を有している。また図8に示すように、アーム103に設けられ、アーム103内に位置するめっき液供給管33を通るめっき液35を第2温度で保持するための温度保持器65がさらに設けられていてもよい。なお図8において、めっき液供給管33のうち、温度調節器62内に位置するめっき液供給管が符号33aで表され、温度保持器65内(アーム103内)に位置するめっき液供給管が符号33bで表されている。
【0065】
〔温度調節器62〕
温度調節器62は、第2温度媒体供給手段61から供給される温度調節用の伝熱媒体(たとえば温水)を導入する供給口62aと、伝熱媒体を排出する排出口62bと、を有している。供給口62aから供給された伝熱媒体は、温度調節器62の内部の空間62cを流れる間にめっき液供給管33aと接触する。これによって、めっき液供給管33aを流れるめっき液35が第2温度まで加熱される。めっき液35の加熱に用いられた後の伝熱媒体は、排出口62bから排出される。
【0066】
好ましくは、温度調節器62内のめっき液供給管33aは、図8に示すようにらせん状に形成されている。これによって、伝熱媒体とめっき液供給管33aとの間の接触面積を大きくすることができ、このことにより、伝熱媒体の熱を効率良くめっき液35に伝えることができる。
【0067】
〔温度保持器65〕
温度調節器62と吐出ノズル32との間に配設される温度保持器65は、めっき液35が吐出ノズル32から吐出されるまでの間、温度調節器62により第2温度に加熱されためっき液35の温度を保持するためのものである。この温度保持器65は、図8に示すように、温度保持器65内でめっき液供給管33bに接触するよう延びる保温パイプ65cと、第2温度媒体供給手段61から供給される伝熱媒体を保温パイプ65cに導入する供給口65aと、伝熱媒体を排出する排出口65bと、を有している。保温パイプ65cは、めっき液供給管33bに沿って吐出ノズル32の直近まで延びており、これによって、吐出ノズル32から吐出される直前のめっき液35の温度を第2温度に保持することができる。
【0068】
保温パイプ65cは、図8に示すように、吐出ノズル32を収納するノズルヘッド104の内部で開放され、温度保持器65内の空間65dと通じていてもよい。この場合、温度保持器65は、その断面中心に位置するめっき液供給管33b、めっき液供給管33bの外周に熱的に接触させて配設された保温パイプ65c、および、保温パイプ65cの外周に位置する空間65dからなる三重構造(三重配管の構造)を有している。供給口65aから供給された伝熱媒体は、ノズルヘッド104に至るまで保温パイプ65cを通ってめっき液35を保温し、その後、温度保持器65内の空間65dを通って排出口65bから排出される。空間65dを流れる伝熱媒体は、保温パイプ65cを流れる伝熱媒体(およびその内側のめっき液供給管33bを流れるめっき液35)と温度保持器65の外側の雰囲気とを熱的に遮断する作用をする。したがって、保温パイプ65cを流れる伝熱媒体の熱損失を抑えるとともに、保温パイプ65cを流れる伝熱媒体からめっき液供給管33bを流れるめっき液35への熱伝達を効率的に行うことができる。
【0069】
なお図8においては、温度調節器62に供給される伝熱媒体と、温度保持器65に供給される伝熱媒体とがいずれも、第2温度媒体供給手段61から供給される伝熱媒体となっている例が示されている。しかしながら、これに限られることはなく、温度調節器62に供給される伝熱媒体と、温度保持器65に供給される伝熱媒体とが、それぞれ別個の伝熱媒体の供給源から供給されてもよい。
【0070】
〔第1温度媒体供給手段〕
また図8に示すように、第2加熱機構60は、伝熱媒体を第2温度に加熱して供給する第2温度媒体供給手段61に加えて、伝熱媒体を第1温度に加熱して供給する第1温度媒体供給手段63をさらに有していてもよい。この場合、第2加熱機構60は、吐出ノズル32からめっき液35が吐出されている間、第2温度媒体供給手段61からの伝熱媒体が温度調節器62および温度保持器65に送られるよう制御機構160により制御される。一方、吐出ノズル32からのめっき液35の吐出が停止された後において、第2加熱機構60は、第1温度媒体供給手段63からの第1温度の伝熱媒体が温度調節器62および温度保持器65に送られるよう制御機構160により制御される。これによって、吐出ノズル32からのめっき液35の吐出が停止された後、温度調節器62および温度保持器65に残っているめっき液35を第1温度まで冷却して保持することができる。このように、残っているめっき液35をめっき温度よりも低温の第1温度で保持することにより、めっき液35が熱により劣化するのを防ぐことができ、これによってめっき液35の寿命を長くすることができる。
【0071】
第1温度媒体供給手段63が設けられる場合、図8に示すように、伝熱媒体を温度調節器62および温度保持器65に送る伝熱媒体供給管66には、第2温度媒体供給手段61からの第2温度の伝熱媒体または第1温度媒体供給手段63からの第1温度の伝熱媒体のいずれかを選択的に伝熱媒体供給管66に連通させる流路切替機構66a,66bが設けられている。これによって、温度調節器62内および温度保持器65内のめっき液35の温度を選択的に第1温度または第2温度に制御することが可能となる。
【0072】
(その他の構成要素)
図2に示すように、めっき処理装置20は、基板2の裏面に処理液を供給する裏面処理液供給機構145と、基板2の裏面に気体を供給する裏面ガス供給機構150と、をさらに有していてもよい。
【0073】
以上のように構成されるめっき処理装置20を複数含むめっき処理システム1は、制御機構160に設けた記憶媒体161に記録された各種のプログラムに従って制御機構160で駆動制御され、これによって基板2に対する様々な処理が行われる。ここで、記憶媒体161は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体161としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリーや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0074】
本実施の形態において、めっき処理システム1およびめっき処理装置20は、記憶媒体161に記録されためっき処理プログラムに従って、基板2にめっき処理を施すよう駆動制御される。以下の説明では、はじめに、化学還元めっきで使用されるNiめっき液を脱気および加熱することにより、化学還元めっきの準備を行う方法について説明する。次に、一のめっき処理装置20で基板2にPdめっきを置換めっきにより施した後にNiめっきを化学還元めっきにより施し、その後、その他のめっき処理装置20で基板2に金めっきを置換めっきにより施す方法について説明する。
【0075】
化学還元めっきの準備
〔脱気工程〕
はじめに、供給タンク31内に貯留されているめっき液35中の溶存酸素および溶存水素を除去するための脱気工程(S313)について説明する。この場合、図7に示すように、ガス供給管34aを介して供給タンク31内に窒素を導入する。これによって、供給タンク31内に貯留されているめっき液35中の溶存酸素および溶存水素が溶存窒素に置換され、この結果、めっき液35中の溶存酸素および溶存水素が除去される。
【0076】
〔第1温度調整工程〕
次に、基板2の表面に吐出されるめっき液35の温度を調整する工程について説明する。はじめに、図7を参照して、基板2の表面に吐出されるめっき液35の温度を、基板2に供給されてめっき処理が行われる際の所定温度よりも低温の第1温度まで加熱する第1温度調整工程(S314)について説明する。まず、第1加熱機構50の供給タンク用ヒータ53の温度を第1温度または第1温度よりも高い温度まで上昇させる。次に、ポンプ56を用いることにより、めっき液35を供給タンク用循環管52内で循環させながら第1温度まで加熱する。この際、バルブ37aは開放され、バルブ37bは閉鎖されている。これによって、供給タンク31内に貯留されているめっき液35の温度が第1温度に制御される。
【0077】
〔第2温度調整工程〕
次に、めっき液35の温度を、基板2に供給されてめっき処理が行われる際の所定温度に等しい、または所定温度よりも高い第2温度まで加熱する第2温度調整工程(S315)について、図8を参照して説明する。まず、バルブ37aが閉鎖され、バルブ37bが開放される。これによって、第1温度に制御されているめっき液35が、めっき液供給管33を通って第2加熱機構60の温度調節器62に送られる。温度調節器62には、第2温度または第2温度よりも高い温度に加熱された伝熱媒体が第2温度媒体供給手段61から供給されている。このため、めっき液35は、温度調節器62の内部のめっき液供給管33aを通る間に第2温度まで加熱される。
【0078】
その後、第2温度に加熱されためっき液35は、図8に示すようにアーム103を介して吐出ノズル32に送られる。このとき、アーム103には温度保持器65が設けられており、この温度保持器65には、第2温度に加熱された伝熱媒体が第2温度媒体供給手段61から供給されている。このため、めっき液35は、温度保持器65の内部のめっき液供給管33bを通って吐出ノズル32に到達するまで第2温度に保持される。
【0079】
なお、温度調節器62の内部のめっき液供給管33aを通る間にめっき液35が第2温度まで加熱される例を示したが、これに限られることはない。例えば、めっき液35が、温度調節器62の内部のめっき液供給管33aを通る間に第1温度よりも高くかつ第2温度よりも低い温度まで加熱され、その後、めっき液35が、温度保持器65の内部のめっき液供給管33bを通る間に第2温度まで加熱されてもよい。この場合、吐出ノズル32に到達する直前でめっき液35が第2温度まで加熱されることが好ましい。これによって、吐出ノズル32から吐出される前にめっき液35が第2温度で保持される期間をより短くすることができる。
【0080】
〔第1温度保持工程〕
好ましくは、基板2の表面のNiめっき処理が終了した後、温度調節器62および温度保持器65に残っているめっき液35は、第1温度まで冷却されて保持される(第1温度保持工程 S317)。この場合、第2加熱機構60は、第1温度媒体供給手段63からの第1温度の伝熱媒体が温度調節器62および温度保持器65に送られるよう制御機構160により制御される。
【0081】
めっき処理方法
次に、はじめに、一のめっき処理装置20で基板2にPdめっきを置換めっきにより施し、次に上述のようにして準備されたNiめっきを化学還元めっきにより施す方法について、図9を参照して説明する。
【0082】
(基板搬入工程および基板受取工程)
はじめに、基板搬入工程および基板受入工程が実行される。まず、基板搬送ユニット13の基板搬送装置14を用いて、1枚の基板2を基板受渡室11から一のめっき処理装置20に搬入する。めっき処理装置20においては、はじめに、カップ105が所定位置まで降下され、次に、搬入された基板2がウエハチャック113により支持され、その後、排出口134と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により上昇させられる。なお、以下の工程S302〜S309は、いずれも基板回転保持機構110に保持された状態の基板2に対して実行される。また、以下の各動作は、制御機構160によって制御される。
【0083】
(洗浄工程)
次に、リンス処理、前洗浄処理およびその後のリンス処理からなる洗浄工程が実行される。(S302)。はじめに、リンス処理液供給機構95Aのバルブ97bが開かれ、これによって、リンス処理液が基板2の表面にノズル92を介して供給される。次に、前洗浄工程が実行される。はじめに、洗浄処理液供給機構90Aのバルブ97aが開かれ、これによって、洗浄処理液93が基板2の表面にノズル92を介して供給される。その後、上述の場合と同様にしてリンス処理液が基板2の表面にノズル92を介して供給される。処理後のリンス処理液や洗浄処理液93は、カップ105の排出口134および処理液排出機構130の廃棄流路133を介して廃棄される。基板2の表面の前洗浄が終了すると、バルブ97aが閉じられる。
【0084】
(Pdめっき工程)
次に、Pdめっき工程が実行される(S303)。このPdめっき工程は、前洗浄工程後の基板2が乾燥されていない状態の間に、置換めっき処理工程として実行される。このように、基板2が乾燥していない状態で置換めっき処理工程を実行することで、基板2の被めっき面の銅などが酸化してしまい良好に置換めっき処理できなくなるのを防止することができる。
【0085】
Pdめっき工程においては、はじめに、排出口129と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105を昇降機構164により上昇させる。次に、めっき液供給機構30Aのバルブ37が開かれ、これによって、Pdを含むめっき液35Aが、基板2の表面に吐出ノズル32を介して所望の流量で吐出される。このことにより、基板2の表面に、置換めっきによってPdめっきが施される。処理後のめっき液35Aは、カップ105の排出口129から排出される。その後、処理後のめっき液35Aは、回収流路127を介して回収されるか、若しくは廃棄流路128を介して廃棄される。基板2の表面のPdめっき処理が終了すると、バルブ37が閉じられる。
【0086】
(リンス処理工程)
次に、リンス処理工程が実行される(S304)。このリンス処理工程S304は、上述の洗浄工程S302におけるリンス処理と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0087】
(Niめっき工程)
その後、上述の工程S302〜304が実行されたのと同一のめっき処理装置20において、Niめっき工程が実行される(S305)。このNiめっき工程は、化学還元めっき処理工程として実行される。
【0088】
Niめっき工程S305においては、図10に示すように、供給タンク用脱気手段34によって溶存酸素および溶存水素が除去され、かつ第2加熱機構60によって第2温度に加熱されためっき液35が吐出ノズル32から所望の流量で吐出される(吐出工程 S316)。このことにより、基板2の表面に、化学還元めっきによってNiめっきが施される。この際、排出口124と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により上昇されており、このため、処理後のめっき液35は、カップ105の排出口124から排出される。排出された処理後のめっき液35は、回収流路122を介して回収タンクに回収されるか、若しくは廃棄流路123を介して廃棄される。
【0089】
次に、リンス処理工程S306、後洗浄工程S307およびリンス処理工程S308からなる洗浄工程が実行される(S310)。
【0090】
(リンス処理工程)
まず、Niめっき処理が施された基板2の表面に対してリンス処理工程が実行される(S306)。この場合、リンス処理液供給機構95のバルブ97bが開かれ、これによって、リンス処理液が基板2の表面にノズル92を介して供給される。
【0091】
(後洗浄工程)
その後、後洗浄工程が実行される(S307)。はじめに、洗浄処理液供給機構90のバルブ97aが開かれ、これによって、洗浄処理液93が基板2の表面にノズル92を介して供給される。処理後のリンス処理液や洗浄処理液93は、カップ105の排出口134および処理液排出機構130の廃棄流路133を介して廃棄される。基板2の表面の後洗浄が終了すると、バルブ97aが閉じられる。
【0092】
(リンス処理工程)
次に、リンス処理工程が実行される(S308)。このリンス処理工程S308は、上述のリンス処理工程S306と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0093】
(乾燥工程)
その後、基板2を乾燥させる乾燥工程が実行される(S309)。例えば、ターンテーブル112を回転させることにより、基板2に付着している液体が遠心力により外方へ飛ばされ、これによって基板2が乾燥される。すなわち、ターンテーブル112が、基板2の表面を乾燥させる乾燥機構としての機能を備えていてもよい。
【0094】
このようにして、一のめっき処理装置20において、基板2の表面に対して、はじめにPdめっきが置換めっきにより施され、次にNiめっきが化学還元めっきにより施される。
【0095】
その後、金めっき処理用の他のめっき処理装置20に搬送される。そして、他のめっき処理装置20において、置換めっきにより基板2の表面にAuめっき処理が施される。金めっき処理の方法は、めっき液および洗浄液が異なる点以外は、Pdめっき処理のための上述の方法と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0096】
本実施の形態の作用効果
ここで本実施の形態によれば、上述のように、吐出ノズル32へ供給されるめっき液35を貯留する供給タンク31には、各種薬液の成分が調整された後のめっき液35中の溶存酸素および溶存水素を除去する供給タンク用脱気手段34が設けられている。このため、めっき液35中の溶存酸素の濃度を低減することができ、これによって、めっき液35の寿命を長くすることができる。また、めっき液35中の溶存水素の濃度を低減することができ、これによって、水素の還元作用によりめっき液中の金属イオンが還元されるのを防ぐことができ、還元された金属イオンが銅配線の近傍に析出するのを防ぐことができる。このことにより、プロセスの安定性を向上させることができる。
【0097】
また本実施の形態によれば、上述のように、めっき液35を第1温度に加熱する第1加熱機構50と、めっき液35を第2温度に加熱する第2加熱機構60とが設けられている。すなわち、めっき液35が二段階で第2温度まで加熱されている。このことによる効果を、比較例との対比に基づいて説明する。
【0098】
まず第1の比較例として、めっき液が供給タンク内で第2温度まで加熱される比較例を考える。この場合、第2温度まで加熱されためっき液が供給タンク内で長時間保持されることになる。一般に、めっき温度よりも高温の第2温度でめっき液35が保持される時間が長くなると、めっき液35中の金属イオンの酸化が進行し、これによって、めっき液35の寿命が短くなることが考えられる。また、めっき液が第2温度で保持されている間に、金属イオンの析出が進行してパーティクルが発生することが考えられる。これに対して本実施の形態によれば、めっき液35を二段階で第2温度に加熱することにより、めっき液35が第2温度で保持される時間を短くすることができ、これによって、めっき液35の寿命を長くすることができる。また、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0099】
次に第2の比較例として、めっき液が供給タンク内で常温にて保持されており、そして、吐出ノズルから吐出される前にアーム内などでめっき液が第2温度まで加熱される比較例を考える。この場合、アーム内でめっき液が常温から第2温度まで加熱されるため、加熱に要する時間が長くなっている。これに対して本実施の形態によれば、供給タンク31のめっき液35が予め第1温度まで加熱されている。このため、めっき液35を小さいエネルギーで素早く第2温度まで加熱することができる。このことにより、金属イオンの析出を抑制しつつプロセスのスループットを向上させることができる。
【0100】
なお本実施の形態によれば、上述のように、めっき液35中の溶存酸素の濃度が低減されており、さらに、供給タンク31のめっき液35を第1温度で保持するようにしている。従って本実施の形態によれば、これらの組合せに基づく相乗効果により、めっき液35の寿命を著しく改善することが可能となっている。
【0101】
(物理洗浄工程)
ところで、上述のように供給タンク用脱気手段34が設けられていても、めっき液35中の溶存水素を完全に除去することが困難である場合が考えられる。この場合、水素の還元作用によりめっき液35中の金属イオンが還元され、この際、還元された金属イオンが銅配線の近傍に球形状で析出することが考えられる。このような場合であっても、上述の本実施の形態のように、基板2の表面に物理力を印加する物理洗浄機構70を用いて基板2を洗浄するのが有効であることを本発明者は発見した。以下、物理洗浄機構70を用いることにより、銅配線の近傍に析出した球状の金属(以下、デフェクト)を除去する方法について説明する。
【0102】
デフェクトは、形成されためっき膜の近傍に集まる傾向を有している。めっき処理工程の途中または直後においては、めっき膜とデフェクトとの間にめっき液や洗浄処理液などの液体が介在していると考えられる。
【0103】
仮に、このようなデフェクトが形成されたままの状態で基板2が乾燥された場合、めっき膜とデフェクトとの間の液体が除去され、この際、デフェクトが金属膜に吸着されることが考えられる。このようにデフェクトがめっき膜に吸着されると、めっき膜とデフェクトとの間の距離が短くなり、このため、めっき膜からデフェクトを除去するのが困難になることが考えられる。従って、本実施の形態においては、めっき膜とデフェクトとの間にめっき液や洗浄処理液などの液体が介在して濡れている間に物理洗浄機構70を用いてデフェクトを除去している。
【0104】
すなわち本実施の形態においては、図9に実線で示すように、リンス処理工程(S308)が物理洗浄工程(S320)として実行されるよう、物理洗浄機構70が制御機構160によって制御される。このとき、物理洗浄機構70は、リンス処理液供給機構95により基板2に対してリンス処理液が供給される際、基板2に対して物理力を印加する。この場合、物理洗浄工程(S320)で用いられる洗浄液74として、リンス処理工程(S308)で用いられる純水などのリンス処理液が使用される。このリンス処理液の液滴が、二流体ノズル72から基板2に対して吐出され、同時に液滴生成用ガス75が供給管75aを介して二流体ノズル72に供給される。これによって純水の液滴を生成し、この液滴を基板2に向けて吐出する。このようにして、基板2がリンス処理され、かつ、めっき膜からデフェクトが除去される。
【0105】
このように本実施の形態によれば、基板2の表面に物理力を印加する物理洗浄機構70が設けられている。また、物理洗浄機構70は、基板2の表面が乾燥されるよりも前のめっき膜とデフェクトとの間に液体が介在している状態の基板2の表面に物理力を印加するよう、制御機構160によって制御される。このため、めっき膜とデフェクトとの間に液体が介在されている間に、デフェクトに対して物理力を加えることができる。このことにより、めっき膜からデフェクトを容易に除去することができる。
【0106】
(物理洗浄工程の変形例)
なお本実施の形態において、リンス処理工程(S308)が物理洗浄工程(S320)として実行される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、基板2の表面が乾燥されるよりも前の様々なタイミングにおいて、物理洗浄工程(S320)を実行することができる。
【0107】
例えば、後洗浄工程(S307)が実行された後であって、リンス処理工程(S308)が実行される前に物理洗浄工程(S320)を実行されるよう、物理洗浄機構70が制御機構160によって制御されてもよい。この場合、物理洗浄工程(S320)で用いられる洗浄液74として、純水などが使用される。この間、まずバルブ78aが開かれ、これによって純水などの洗浄液74が供給管74aを介して二流体ノズル72に供給される。同時に、液滴生成用ガス75が供給管75aを介して二流体ノズル72に供給される。これによって洗浄液74の液滴が生成され、この液滴が基板2に向けて吐出されて、めっき膜からデフェクトが除去される。
【0108】
また、リンス処理工程(S308)が実行された後であって、乾燥工程(S309)が実行される前に物理洗浄工程(S320)を実行してもよい。この場合も、物理洗浄工程(S320)で用いられる洗浄液74として、純水などが使用される。この純水などの洗浄液74と液滴生成用ガス75とが二流体ノズル72に供給され、洗浄液74の液滴が生成される。この液滴が基板2に向けて吐出されることにより、めっき膜からデフェクトが除去される。いずれの場合でも、めっき膜とデフェクトとの間にはリンス処理液や洗浄液が介在されており、このため、めっき膜からデフェクトを容易に除去することができる。
【0109】
なお、めっき膜とデフェクトとの間に洗浄液でなくリンス処理液が介在されているときに物理洗浄工程(S320)を実行した場合、洗浄液が物理力によって飛散するのを防ぐことができる。
【0110】
若しくは、後洗浄工程(S307)が物理洗浄工程(S320)として実行されてもよい。すなわち、物理洗浄工程(S320)で用いられる洗浄液74として、後洗浄工程(S307)で用いられる洗浄処理液(薬液)93が使用されてもよい。この場合、洗浄処理液93の液滴が、二流体ノズル72から基板2に対して吐出される。これによって、基板2が後洗浄処理され、かつ、めっき膜からデフェクトが除去される。
【0111】
(供給タンク用脱気手段の変形例)
また本実施の形態において、供給タンク用脱気手段34が、バブリングによってめっき液35中の溶存酸素および溶存水素を除去するものである例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、液中の溶存ガスを除去するための様々な手段が、供給タンク用脱気手段34として採用され得る。例えば、めっき液35をいったん低温にし、これによってめっき液35中に溶存可能なガスの量を低減させ、これによってめっき液35中の溶存ガスを除去する手段が用いられてもよい。
【0112】
(加熱機構の変形例)
また本実施の形態において、第1加熱機構50の供給タンク用循環加熱手段51により、めっき液35が供給タンク31近傍で第1温度まで加熱される例を示した。しかしながら、供給タンク31近傍でめっき液35を第1温度まで加熱する手段が供給タンク用循環加熱手段51に限られることはなく、様々な手段が用いられ得る。例えば、供給タンク31内に、めっき液35を第1温度まで加熱するヒータが設けられていてもよい。
【0113】
また本実施の形態において、供給タンク31近傍においてめっき液35が第1温度まで加熱される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2加熱機構60近傍に至るまでめっき液35が第1温度に加熱されていてもよい。具体的には、図11に示すように、供給タンク用循環加熱手段51の供給タンク用循環管52が、第2加熱機構60の近傍でめっき液供給管33に接続されていてもよい。このように、めっき液35を第1温度まで加熱するための循環流路をより第2加熱機構60近傍に配置することにより、第2加熱機構60に至るまでにめっき液35の温度が低下してしまうことを防止することができる。このことにより、小さなエネルギーで素早くめっき液35を第2温度まで加熱するということをより確実にすることができる。なお「第2加熱機構60の近傍」とは、例えば、供給タンク用循環管52から第2加熱機構60までの距離w(図11参照)が1m以下となっていることを意味している。
【0114】
若しくは、第2加熱機構60に至るまでにめっき液35の温度が低下してしまうことを防止するため、図7において一点鎖線で示されているように、めっき液供給管33を通るめっき液35を第1温度で保持するための供給管用加熱手段54が設けられていてもよい。この供給管用加熱手段54は、めっき液供給管33に取り付けられ、第1温度に加熱されたラバーヒータであってもよい。若しくは、供給管用加熱手段54は、めっき液供給管33に接するよう設けられ、第1温度に加熱された温水などの伝熱媒体を通す加熱用配管であってもよい。
【0115】
なお、供給管用加熱手段54として、第1温度に加熱された伝熱媒体を通す加熱用配管が用いられる場合、供給管用加熱手段54に第1温度の伝熱媒体を供給する媒体供給手段として、第2加熱機構60の第1温度媒体供給手段63が利用されてもよい。すなわち図8において一点鎖線で示すように、第2加熱機構60の近傍に配置されている供給管用加熱手段54に対して、第1温度の伝熱媒体が第1温度媒体供給手段63により供給管59を介して供給されてもよい。すなわち、吐出ノズル32からのめっき液35の吐出が停止された後に温度調節器62および温度保持器65の温度を第1温度に制御するために設けられている第1温度媒体供給手段63が、めっき液35の吐出中に供給管用加熱手段54に第1温度の伝熱媒体を供給するために利用されてもよい。これによって、第2加熱機構60に至るまでにめっき液35の温度が低下してしまうことを防止するとともに、めっき処理装置20の構成要素をより少なくすることができる。
【0116】
なお、吐出ノズル32からのめっき液35の吐出が停止された後に、第1温度の伝熱媒体が第1温度媒体供給手段63により供給管59を介して供給管用加熱手段54に供給されてもよい。これによって、吐出ノズル32からのめっき液35の吐出が停止された後、第2加熱機構60よりも供給タンク31側に位置するめっき液供給管33内に残っているめっき液35を第1温度で保持することができる。この場合、めっき液35の吐出が再開された直後であっても、第2加熱機構60に到達するめっき液35が第1温度に加熱されていることになる。このため、めっき液35の吐出が再開された直後であっても、めっき液35を第2加熱機構60により容易に素早く第2温度まで加熱することができる。このことにより、第2温度に到達する前に吐出ノズル32から吐出されてしまう無駄なめっき液35の量を低減することができる。これによって、めっき処理を開始できるようになるまでの時間を短縮することができ、このことにより、プロセスのスループットを向上させることができる。
【0117】
(物理洗浄機構の変形例)
また本実施の形態において、物理洗浄機構70として、洗浄液74の液滴を吐出する液滴吐出手段71が用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、その他の方法により基板2の表面に物理力を印加する手段が用いられてもよい。例えば図12に示すように、物理洗浄機構70として、二流体ノズル72を有する液滴吐出手段71の代わりに、基板2の表面に当接する刷毛部79aを有する洗浄ブラシ79や高圧ノズルや超音波ノズルが用いられてもよい。いずれの場合であっても、液滴吐出手段71が用いられる場合と同様に、めっき膜とデフェクトとの間にめっき液35などの液体が介在されている間に、物理洗浄機構70がデフェクトに対して物理力を印加する。これによって、めっき膜からデフェクトを容易に除去することができる。
【0118】
(その他の変形例)
また本実施の形態において、めっき処理装置20により、Niを含むめっき液35が化学還元めっきにより基板2の表面に施される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、めっき処理装置20により、様々なめっき液を化学還元めっきにより基板2の表面に施すことができる。例えば、Coを含むめっき液(CoWB、CoWP、CoB、CoPなどのめっき液)が化学還元めっきにより基板2の表面に施され得る。これらのめっき液が用いられる場合においても、供給タンク用脱気手段34による溶存酸素および溶存水素の除去や、第1加熱機構50および第2加熱機構60によるめっき液35の二段階加熱が実施されてもよい。この場合、第1温度および第2温度の具体的な値は、めっき液のめっき温度に応じて適宜設定される。例えばめっき液35としてCoPのめっき液が用いられる場合、そのめっき温度は50〜70度となっており、そして、第1温度が40度〜上記めっき温度の範囲内に設定され、第2温度が上記めっき温度〜90度の範囲内に設定される。
【0119】
また本実施の形態において、めっき液供給機構30Aにも、めっき液供給機構30の場合と同様に第1加熱機構50および第2加熱機構60が設けられ、また、Pdを含むめっき液35Aに対しても、第1加熱機構50および第2加熱機構60による二段階加熱が実施されてもよい。
【0120】
また本実施の形態において、一のめっき処理装置20におけるめっき処理として、基板2にPdめっきが置換めっきにより施され、次にNiめっきが化学還元めっきにより施される例を示した(図9のS302〜S309参照)。しかしながら、これに限られることはなく、一のめっき処理装置20におけるめっき処理として、化学還元めっきのみが実施されてもよい。この場合、図9に示す各工程のうち、S303およびS304を除く工程が実施されることになる。この際、化学還元めっきのためのめっき液が特に限られることはなく、CoWB、CoWP、CoB、CoPおよびNiPなど、化学還元めっきのための様々なめっき液が用いられ得る。
【0121】
第2の実施の形態
次に図13および図14を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図13および図14に示す第2の実施の形態は、めっき液排出機構から排出されためっき液の成分を調整し、成分が調整されためっき液をめっき液供給機構の供給タンクに供給するめっき液回収機構がさらに設けられている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図12に示す第1の実施の形態と略同一である。図13および図14に示す第2の実施の形態において、図1乃至図12に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0122】
本実施の形態においては、めっき液排出機構120の回収流路122により回収されたNiを含む処理後のめっき液が再利用される。以下、図13を参照して、処理後のめっき液を再利用するためのめっき液回収機構80について説明する。
【0123】
めっき液回収機構
図13に示すように、めっき液回収機構80は、めっき液排出機構120から排出された処理後のめっき液85を貯留する回収タンク81と、回収タンク81に貯留されるめっき液85中の溶存酸素および溶存水素を除去する回収タンク用脱気手段84と、を有している。このうち回収タンク用脱気手段84は、上述の供給タンク用脱気手段34と同様に、窒素などの不活性ガスを回収タンク88内に供給するガス供給管84aを含んでいる。すなわち回収タンク用脱気手段84は、いわゆるバブリングによってめっき液85中の溶存酸素および溶存水素を除去するためのものとなっている。回収タンク用脱気手段84およびガス供給管84aの構成および作用効果は、供給タンク用脱気手段34およびガス供給管34aの構成および作用効果と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0124】
まためっき液回収機構80は、めっき液排出機構120から排出された処理後のめっき液85に不足している成分を追加する補充手段88aと、回収タンク88に貯留されるめっき液85を撹拌する撹拌手段81と、をさらに有していてもよい。このうち補充手段81は、Niイオンを含むNiP金属塩、還元剤および添加剤などの薬液をめっき液85に補充して、めっき液85の成分を適切に調整するためのものである。なお、このような成分調整をより正確に行うため、図13において一点鎖線で示されているように、回収タンク88に、めっき液85の特性をモニタするモニタ手段87bが設けられていてもよい。モニタ手段87bは、例えば、めっき液85のpHをモニタするpHモニタなどからなっている。
【0125】
撹拌手段81は、例えば図13に示すように、回収タンク88近傍でめっき液85を循環させることによりめっき液85を撹拌するものとなっている。このような撹拌手段81は、図13に示すように、その一端82aおよび他端82bが回収タンク88に接続された回収タンク用循環管82と、回収タンク用循環管82に介挿されたポンプ86およびフィルター89と、を有している。このような撹拌手段81を設けることにより、めっき液85を撹拌しながら、めっき液内に含まれる様々な不純物を除去することができる。例えば、めっき液から金属イオンが析出する際の核となり得る不純物(パーティクル)を除去することができる。なお撹拌手段81には、めっき液85を供給タンク31に供給するための接続管83が取り付けられている。
【0126】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、基板2の表面にNiめっきを行う方法について、図14を参照して説明する。なお図14のフローチャートに示される各工程において、図9および図10に示す第1の実施の形態のフローチャートの各工程と同一工程には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0127】
〔回収工程〕
基板2に対するNiめっき処理を実施するために用いられた後の処理後のめっき液85が、基板2から飛散して排出口124に到達する。排出口124に到達した処理後のめっき液85は、液排出機構120の回収流路122を介して回収タンク88に送られる(S321)。
【0128】
〔成分調整工程〕
次に、上述の補充手段を用いて、処理後のめっき液85に不足している成分を追加する(S322)。この際、追加された成分と処理後のめっき液85とが十分に混合されるよう、撹拌手段81を用いてめっき液85を撹拌する。
【0129】
〔脱気工程〕
その後、または成分調整工程(S322)と同時に、回収タンク88内に貯留されているめっき液85中の溶存酸素および溶存水素を除去する(S323)。具体的には、図13に示すように、ガス供給管84aを介して回収タンク88内に窒素を導入する。これによって、回収タンク88内に貯留されているめっき液85中の溶存酸素および溶存水素が溶存窒素に置換され、この結果、めっき液85中の溶存酸素および溶存水素が除去される。
【0130】
溶存酸素および溶存水素が除去されためっき液85は、図13に示すように、接続管83を介して供給タンク31に送られる。
【0131】
回収し再生しためっき液を含むめっき液を使用して実施されるNiめっき処理方法の工程S313〜S317は、図10に示す第1の実施の形態における工程S313〜S317と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0132】
本実施の形態の作用効果
このように本実施の形態によれば、処理後のめっき液85がめっき液回収機構80により再利用される。このため、めっき液をより有効に活用することができ、この結果、めっき液に要するコストを低減することができる。まためっき液回収機構80は、めっき液85中の溶存酸素および溶存水素を除去する回収タンク用脱気手段84を有している。このため、めっき液85中の溶存酸素の濃度を低減することができ、これによって、めっき液85の寿命を長くすることができる。また、めっき液85中の溶存水素の濃度を低減することができ、これによって、水素の還元作用によりめっき液中の金属イオンが還元されるのを防ぐことができる。このことにより、還元された金属イオンが銅配線の近傍に析出するのを防ぐことができる。
【0133】
また本実施の形態によれば、図13に示すように、供給タンク31にも供給タンク用脱気手段34が設けられている。このため、めっき液35中の溶存酸素および溶存水素の濃度をさらに低減することができる。このことにより、めっき液35の寿命をさらに長くすることができ、かつ、水素の還元作用によりめっき液中の金属イオンが還元されるのをより強固に防ぐことができる。また、めっき液35の寿命を長くする効果は、第1加熱機構50および第2加熱機構60を利用してめっき液35を二段階で加熱することによってさらに促進され得る(図13参照)。
【0134】
なお本実施の形態においても、上述の第1の形態の場合と同様に、物理洗浄機構70を用いることにより、銅配線の近傍に析出し得る球状の金属(デフェクト)を除去している。これによって、仮にめっき液35中の溶存水素を完全に除去することが困難であり、銅配線の近傍にデフェクトが発生する場合であっても、そのようなデフェクトを除去することができる。
【0135】
なお本実施の形態において、回収タンク88内に貯留されているめっき液85の溶存酸素および溶存水素が回収タンク用脱気手段84により除去され、さらに、供給タンク31内に貯留されているめっき液35の溶存酸素および溶存水素が供給タンク用脱気手段34により除去される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば回収タンク用脱気手段84によりめっき液の溶存酸素および溶存水素が十分に除去される場合、供給タンク用脱気手段34が設けられていなくてもよい。
【0136】
また、上述の第1の実施の形態において説明した変形例が、本実施の形態において採用されてもよい。例えば、供給タンク用循環加熱手段51の供給タンク用循環管52が第2加熱機構60の近傍でめっき液供給管33に接続されていてもよい。若しくは、図13において一点鎖線で示されるように、めっき液供給管33を通るめっき液35を第1温度で保持するための供給管用加熱手段54が設けられていてもよい。また、供給管用加熱手段54として、第1温度に加熱された伝熱媒体を通す加熱用配管が用いられる場合、供給管用加熱手段54に第1温度の伝熱媒体を供給する媒体供給手段として、第2加熱機構60の第1温度媒体供給手段63が利用されてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 めっき処理システム
2 基板
20 めっき処理装置
30 めっき液供給機構
31 供給タンク
32 吐出ノズル
33 めっき液供給管
34 供給タンク用脱気手段
34a ガス供給管
35 めっき液
40 めっき液回収機構
41 回収タンク
42 回収タンク用脱気手段
43 補充手段
44 撹拌手段
50 第1加熱機構
51 供給タンク用循環加熱手段
52 供給タンク用循環管
53 供給タンク用ヒータ
54 供給管用加熱手段
60 第2加熱機構
61 第2温度媒体供給手段
62 温度調節器
63 第1温度媒体供給手段
64 保温器
65 温度保持器
70 物理洗浄機構
71 液滴吐出手段
72 二流体ノズル
74 洗浄液
74a 供給管
75 液滴生成用ガス
75a 供給管
79a 刷毛部
80 めっき液回収機構
81 撹拌手段
82 回収タンク用循環管
84 回収タンク用脱気手段
85 処理後のめっき液
88 回収タンク
88a 補充手段
90 洗浄処理液供給機構
95 リンス処理液供給機構
110 基板回転保持機構
161 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、
前記基板を収容する基板収容部と、
前記基板収容部に収容された前記基板に対してめっき液を供給するめっき液供給機構と、
前記基板収容部に収容された前記基板に対して物理力を印加することにより前記基板を洗浄する物理洗浄機構と、を備え、
前記物理洗浄機構は、前記めっき液供給機構により前記基板に対してめっき液が供給された後、前記基板が乾燥されるよりも前に、前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄することを特徴とするめっき処理装置。
【請求項2】
前記物理洗浄機構は、洗浄液の液滴を吐出する液滴吐出手段を有することを特徴とする請求項1に記載のめっき処理装置。
【請求項3】
前記液滴吐出手段は、純水と液滴生成用ガスとを混合して純水の液滴を生成し、この純水の液滴を前記基板に対して吐出する二流体ノズルを有することを特徴とする請求項2に記載のめっき処理装置。
【請求項4】
前記物理洗浄機構は、薬液と液滴生成用ガスとを混合して薬液の液滴を生成し、この薬液の液滴を前記基板に対して吐出する二流体ノズルを有することを特徴とする請求項2に記載のめっき処理装置。
【請求項5】
前記物理洗浄機構は、前記基材に当接する刷毛部を含む洗浄ブラシを有することを特徴とする請求項1に記載のめっき処理装置。
【請求項6】
前記めっき液供給機構により前記基板に対してめっき液が供給された後に、前記基板収容部に収容された前記基板に対して薬液を供給する薬液供給機構をさらに備え、
前記物理洗浄機構は、前記薬液供給機構により前記基板に対して前記薬液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも前に、前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のめっき処理装置。
【請求項7】
前記薬液供給機構により前記基板に対して薬液が供給された後に、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構をさらに備え、
前記物理洗浄機構は、前記リンス処理液供給機構により前記基板に対して前記リンス処理液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも前に前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄することを特徴とする請求項6に記載のめっき処理装置。
【請求項8】
前記薬液供給機構により前記基板に対して薬液が供給された後に、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構をさらに備え、
前記物理洗浄機構は、前記リンス処理液供給機構により前記基板に対して前記リンス処理液が供給される際、前記基板に対して物理力を印加して前記基板を洗浄することを特徴とする請求項6に記載のめっき処理装置。
【請求項9】
前記めっき液供給機構は、前記基板に供給されるめっき液を貯留する供給タンクと、めっき液を前記基板に対して吐出する吐出ノズルと、前記供給タンクのめっき液を前記吐出用ノズルへ供給するめっき液供給管と、前記供給タンクに貯留されるめっき液中の溶存酸素および溶存水素を除去する供給タンク用脱気手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のめっき処理装置。
【請求項10】
前記基板から飛散しためっき液を前記収容部から排出するめっき液排出機構と、
前記めっき液排出機構から排出されためっき液を回収して前記めっき液供給機構の前記供給タンクに送るめっき液回収機構と、をさらに備え、
前記めっき液回収機構は、前記めっき液排出機構から排出されためっき液を貯留する回収タンクと、前記回収タンクに貯留されるめっき液中の溶存酸素および溶存水素を除去する回収タンク用脱気手段と、を有することを特徴とする請求項9に記載のめっき処理装置。
【請求項11】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、
前記基板を基板収容部に収容することと、
前記基板収容部に収容された前記基板に対してめっき液を供給することと、
前記基板にめっき液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対して物理力を印加することにより前記基板を洗浄することと、
前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄した後、前記基板収容部に収容された前記基板を乾燥させることと、を備えたことを特徴とするめっき処理方法。
【請求項12】
前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、二流体ノズルによって行われることを特徴とする請求項11に記載のめっき処理方法。
【請求項13】
前記基板にめっき液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対して薬液を供給することをさらに備え、
前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、前記基板に前記薬液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも前に行われることを特徴とする請求項11または12に記載のめっき処理方法。
【請求項14】
前記基板に前記薬液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給することをさらに備え、
前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、前記基板に前記リンス処理液が供給された後であって、前記基板が乾燥されるよりも行われることを特徴とする請求項13に記載のめっき処理方法。
【請求項15】
前記基板に前記薬液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対してリンス処理液を供給することをさらに備え、
前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄することは、前記基板に前記リンス処理液が供給される際に行われることを特徴とする請求項13に記載のめっき処理方法。
【請求項16】
めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記めっき処理方法は、
前記基板を基板収容部に収容することと、
前記基板収容部に収容された前記基板に対してめっき液を供給することと、
前記基板にめっき液が供給された後、前記基板収容部に収容された前記基板に対して物理力を印加することにより前記基板を洗浄することと、
前記基板に物理力を印加して前記基板を洗浄した後、前記基板収容部に収容された前記基板を乾燥させることと、を有することを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−153934(P2012−153934A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13443(P2011−13443)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】