説明

めっき処理装置

【課題】被処理材の表面に、部分的に所望の箇所にめっき被膜を効率的に形成することができるめっき処理装置を提供する。
【解決手段】上面に開口部が形成されためっき液収容槽と、開口部から周面の一部が露呈するようにめっき液収容槽の内部に配置されためっき用ローラ30と、めっき用ローラ30に対して開口部を挟んで並設された通電用ローラと、通電用ローラに負極を接続し、めっき用ローラ30に正極を接続した電源と、を備え、めっき用ローラ30と通電用ローラとの間に被処理材を搬送してめっき処理する装置であって、めっき用ローラ30は、その周面31の一部に、電源からの電流の通電を妨げる非通電部33A,33Bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄系材料等の導電性材料の被処理材の表面にめっき処理を行う装置であって、特に、表面に所望のめっきパターンを好適に得ることができるめっき処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、防食性、電気伝導性などを目的として、鉄系材料等の導電性材料の表面にめっき処理を行うことが一般的になされている。例えば、板状の被処理材の表面に対して電気めっき処理をする場合には、めっき用ローラと通電用ローラとの間に、双方のローラを回転させて被処理材を通過させる。このとき、めっき液を通電用ローラと被処理材の間に流入させ、通電用ローラとめっき用ローラとの間に電源を接続して電流を流すことにより、めっき液の金属が析出し、被処理材の表面にめっき被膜が形成される。
【0003】
また、電気めっき処理技術を利用したものとして、以下に示すリードフレームの製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この製造装置は、めっき液を収容しためっき液収容槽と、該めっき液収容槽内に配置され、めっき処理表面にリードフレームと逆の形状のパターンの絶縁性の突起を備えた電着ローラと、電着ローラの外周に沿って所定の間隔を以って配置された陽極と、電着ローラに電流を流すための給電ローラと、を備えている。このような装置を用いることにより、電着ローラの表面にめっき被膜が形成され、このめっき被膜を電着ローラから剥離することでリードフレームのパターンが付いた金属箔を作製し、これを使用してリードフレームを作製することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−088305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したように、めっき用ローラと通電用ローラとの間に、被処理材を通過させて、めっき処理を行った場合には、めっき用ローラと接触する被処理材の全面に、めっき被膜が形成される。このため、被処理材の表面に部分的にめっき被膜を形成したい場合には、被処理材の表面に、例えば絶縁性材料でマスキング等を行うことも可能であるが、めっき液に対して耐食性を有する材料を用いて行わなければならず、作業性もよいものであるとは言えない。
【0006】
また、特許文献1に記載の装置により、金属箔を製作後、基材に金属箔を接着することも可能であるが、直接的に基材の表面に金属箔を形成しないので、この場合も同様に作業性がよいものであるとはいえず、接着後の基材から金属箔の剥がれが発生することもありえる。
【0007】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被処理材の表面の所望の箇所に、部分的に安定しためっき被膜を効率良く形成することができるめっき処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すべく、本発明に係るめっき処理装置は、上面に開口部が形成されためっき液収容槽と、前記開口部から周面の一部が露呈するように前記めっき液収容槽の内部に配置されためっき用ローラと、該めっき用ローラに対して前記開口部を挟んで並設された通電用ローラと、該通電用ローラに負極を接続し、前記めっき用ローラに正極を接続した電源と、を備え、前記めっき用ローラと前記通電用ローラとの間に被処理材を搬送してめっき処理する装置であって、前記めっき用ローラは、その周面の一部に、前記電源からの電流の通電を妨げる非通電部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のめっき処理装置によれば、めっき液が収容されためっき液収容槽内で、めっき用ローラを回転させ、めっき用ローラと通電用ローラとの間に被処理材を搬送する。この際、めっき用ローラと被処理材との間にめっき液が流れ込むと共に、めっき用ローラと被処理材との通電により、被処理材の表面にめっき液の金属が析出し、被処理材の表面にめっき被膜が形成される。
【0010】
このときに、めっき用ローラの非通電部と、被処理材との間は電流が流れないので、非通電部に接触した被処理材の表面には、めっき液の金属が析出することはない。これにより、めっき用ローラの非通電部以外の周面と接触した被処理材の表面のみがめっき処理され、被処理材の表面に所望のパターンのめっき被膜を効率的に形成することができる。
【0011】
また、前記非通電部は、絶縁材料が被覆された絶縁部、又は凹部であることが好ましい。本発明によれば、非通電部を絶縁材料が被覆された絶縁部とすることにより、絶縁部に接触する被処理材の表面の通電を防止し、絶縁部と接触する部分以外の表面に、効率的に部分めっき処理を行うことができる。また、非通電部を凹部とすることにより、凹部は、被処理材の表面に接触しないので、めっき用ローラと非接触の部分以外の表面に、効率良く部分めっき処理を行うことができる。
【0012】
さらに、本発明に係るめっき処理装置は、非通電部が、めっき用ローラの軸芯に沿って等間隔に形成されていることがより好ましい。本発明によれば、非通電部が、めっき用ローラの軸芯に沿った方向に形成されることにより、被処理材の表面に、所定の間隔を有した縞状のめっき被膜を形成することができる。
【0013】
また、別の態様としては、本発明に係るめっき処理装置は、非通電部が、燃料電池のセパレータ内を流れるガス流路の形状に合わせて形成されていることがより好ましい。本発明によれば、被処理材がセパレータである場合には、セパレータのガスが流れるガス流路以外のめっき処理が必要な箇所にのみ、めっき被膜が形成され、効率的なめっき処理を行うにことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被処理材の表面に、部分的に所望の箇所にめっき被膜を効率的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明に係るめっき処理装置のいくつかの実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1は、第一実施形態に係るめっき処理装置の全体構成図を示している。図1に示すように、第一実施形態に係るめっき処理装置1は、めっき液収容槽20と、めっき用ローラ30と、通電用ローラ40と、電源50とを少なくとも備えている。めっき液収容槽20は、被処理材80の表面をめっきするためのめっき液Lを収容しており、その上面には、開口部21が形成されている。めっき液収容槽の内部には、めっき用ローラ30が配置されており、軸芯を中心として回転可能にモータなどの駆動装置(図示せず)に連結されている。
【0017】
めっき用ローラ30は、めっき液収容槽20の開口部21から、その周面31が露呈するように配置されており、このような配置により、平板状の被処理材80が開口部21を通過したときに、被処理材80の表面にその周面31が接触可能となる。
【0018】
また、通電用ローラ40は、めっき用ローラ30と被処理材80との間を通電することと、被処理材80をめっき用ローラ30に向かって押圧して、被処理材80を搬送するためのローラである。この通電用ローラ40は、めっき液収容槽20の開口部21を挟んで、めっき用ローラに対して並設されており、めっき用ローラ30の回転と同調するように、モータ等の駆動装置に連結されている。なお、めっき用ローラ30と通電用ローラ40は、変速機を介して同一の駆動装置に接続されていてもよく、被処理材80を搬送することができるのであれば、一方のローラにみに、駆動装置が接続されていてもよい。
【0019】
電源50は、被処理材80の表面を通電することにより、電気めっき処理を行うための通電装置であり、電源50の正極51には、めっき用ローラ30が接続されており、電源50の負極52には、通電用ローラ40が接続されている。このような接続とすることにより、被処理材80が、通電用ローラ40と、めっき用ローラ30との間を通過するときに、電源50の電流は、正極51→めっき用ローラ30→被処理材80→通電用ローラ40→負極52に流れる。
【0020】
図2は、図1に示すめっき用ローラの斜視図であり、図2(a)は、めっき用ローラの非通電部が絶縁材料を被覆した絶縁部となった図、図2(b)は、その変形例として、めっき用ローラの非通電部が、凹部となった図である。図3は、第一実施形態に係るめっき処理装置を用いて、被処理材80の表面をめっき処理した図である。
【0021】
図2(a)に示すように、本実施形態に係るめっき用ローラ30の周面31は、電源50からの電流を通電する通電部32A,32Bと、電源50からの電流の通電を妨げる非通電部33Aが、形成されている。非通電部33Aは、たとえば、高分子樹脂等からなる絶縁性材料がローラの周面に被覆された絶縁部である。また、非通電部33Aが形成された周面の中央には、楕円又は円状の通電部32Bが形成されている。
【0022】
めっき用ローラ30を備えためっき処理装置1を用いて、被処理材80のめっき処理を行う。まず、めっき液Lを、めっき液収容槽20内に収容する。このとき、めっき用ローラ30の回転により、めっき液Lがめっき用ローラの周面を覆う程度のめっき液Lを、めっき液収容槽20に収容する。
【0023】
そして、めっき液Lが収容されためっき液収容槽20内で、めっき用ローラ30を回転させ、めっき用ローラ30と通電用ローラ40との間に被処理材80を送り込む。この際、通電用ローラ40により、被処理材80は押圧されるので、めっき用ローラ30と通電用ローラ40の回転により、被処理材80は、搬送される。
【0024】
また、これらのめっき用ローラ30の回転に伴って、めっき用ローラ30と被処理材80との間にめっき液Lが流れ込むとともに、めっき用ローラ30と被処理材80との通電により、被処理材80の表面にめっき液の金属が析出し、被処理材80の表面にめっき被膜が形成される。
【0025】
このときに、めっき用ローラ30の非通電部33Aと、被処理材80との間は電流が流れないので、非通電部33Aに接触した被処理材80の表面には、めっき液の金属が析出することはない。これにより、めっき用ローラ30の非通電部33A以外の周面(通電部32A,33A)と接触した被処理材80の表面のみがめっき処理され、被処理材80の表面に、図3に示すような、被処理材80の半分の領域にめっき被膜が形成された部分82Aが形成され、残り半分の領域には、めっき被膜が形成されていない部分83Aに、楕円又は円状のめっき被膜が形成された部分82Bが、被処理材80の搬送方向に沿って所定の間隔(めっき用ローラ30の周長の間隔)で形成された、めっき処理材80Aを得ることができる。
【0026】
また、図2(b)に示すように、図2(a)の絶縁部の代替として、めっき用ローラ30Aの非通電部33Bを凹部としてもよい。このような凹部を設けることにより、めっき処理時には、凹部は、被処理材80の表面に接触せず、通電部32A,32Bのみが接触するので、めっき用ローラ30Aと非接触の部分以外の被処理材80の表面に、部分めっき処理が成され、図2(a)に示すめっき用ローラを用いた場合と同様に、図3に示す部分めっき処理を行っためっき処理材80Aを得ることができる。
【0027】
図4(a)は、本発明に係る第二実施形態のめっき処理装置のめっき用ローラ30Bを示しており、(b)は、(a)に示すめっき用ローラ30Bを用いて被処理材をめっき処理しためっき処理材80Cを示した図である。なお、めっき処理装置のその他の構成は、第一実施形態のめっき処理装置と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
図4(a)に示すように、めっき用ローラ30Bの軸芯に沿って、非通電部(絶縁部)33Cが形成されている。なお、この絶縁部33Cは、第一実施形態に示すのと同様に、絶縁材料が被覆された部分である。このようなめっき用ローラを用いることにより、図4(b)に示すように、搬送方向と垂直方向に沿って、被処理材の表面に、等間隔にめっき処理によりめっき被膜が形成された部分82Cと、等間隔に形成されためっき被膜が形成されていない部分83Cと、を有しためっき処理材80Bを得ることができる。なお、この非通電部33Cを第一実施形態に示すように凹部としても、同様のめっき処理材80Bを得ることができる。
【0029】
図5(a)は、本発明に係る第三実施形態のめっき処理装置のめっき用ローラ30Cを示しており、(b)は、(a)に示すめっき用ローラ30Cを用いて被処理材をめっき処理しためっき処理材80Cを示した図である。図6は、図5(b)のめっき処理材80Cを燃料電池用のセパレータに用いた図である。なお、めっき処理装置のその他の構成は、第一実施形態のめっき処理装置と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0030】
図5(a)に示すように、燃料電池のセパレータ内を流れるガス流路の形状(ガス流路のサーペンタイン形状に合わせた形状)に合わせて、非通電部(絶縁部)33Dが形成されている。すなわち、この非通電部33Dは、めっき用ローラの軸芯方向に沿って、等間隔に第一絶縁部33Fが形成されると共に、この第一絶縁部33Fの端部同士を、周方向に沿って、1つ間隔で繋ぐように形成された第二の絶縁部33Gとからなる。なお、この絶縁部33D(33F,33G)は、第一実施形態に示すのと同様に、絶縁材料が被覆された部分である。
【0031】
このようなめっき用ローラ30Cを用いることにより、図5(b)に示すように、ガス流路が流れる部分をめっき被膜が形成されていない部分83Dとし、それ以外の部分を、めっき被膜が形成された部分82Dとした、めっき処理材80Cを得ることができる。なお、この非通電部33Dを第一実施形態に示すように凹部としても、同様のめっき処理材80Bを得ることができる。
【0032】
そして、図6に示すように、めっき処理材80Cをセパレータ90のベース材とし、このベース材であるめっき処理材80Cのめっき被膜が形成された部分83Dに、ガス流路83の側壁を形成するリブ84を配置し、ガス拡散層を含む膜電極接合体70を配置する。これにより、めっき処理が不要なガス流路85には、めっき処理がされないので、より安価にセパレータ90を製造することができる。なお、めっき処理材80Cの替わりに、図4(b)に示すめっき処理材80Bのめっき被膜が形成された部分83Cがガス流路となるように、めっき用ローラの非通電部を形成してもよい。
【0033】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0034】
例えば、第二実施形態では、めっき用ローラの非通電部が、めっき用ローラの軸芯に沿って等間隔に形成されたが、この非通電部が、周方向に沿って等間隔に配置に形成されていても、同様のめっき処理材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第一実施形態に係るめっき処理装置の全体構成図。
【図2】図1に示すめっき用ローラの斜視図であり、(a)は、めっき用ローラの非通電部が絶縁材料を被覆した絶縁部となった図、(b)は、その変形例として、めっき用ローラの非通電部が、凹部となった図。
【図3】第一実施形態に係るめっき処理装置を用いて、被処理材の表面をめっき処理しためっき処理材を示した図。
【図4】(a)は、本発明に係る第二実施形態のめっき処理装置のめっき用ローラを示しており、(b)は、(a)に示すめっき用ローラを用いて被処理材をめっき処理しためっき処理材を示した図。
【図5】(a)は、本発明に係る第三実施形態のめっき処理装置のめっき用ローラを示しており、(b)は、(a)に示すめっき用ローラを用いて被処理材をめっき処理しためっき処理材を示した図。
【図6】図5(b)のめっき処理材80Cを燃料電池用のセパレータに用いた図。
【符号の説明】
【0036】
20:めっき液収容槽、21:開口部、30,30A,30B,30C:めっき用ローラ、31:周面、32A,32B:通電部、33A,33C,33F:絶縁部(非通電部)、33B:凹部(非通電部)、40:通電用ローラ40:電源、51:正極、52:負極、80:被処理材、80A〜80C:めっき処理材、L:めっき液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部が形成されためっき液収容槽と、前記開口部から周面の一部が露呈するように前記めっき液収容槽の内部に配置されためっき用ローラと、該めっき用ローラに対して前記開口部を挟んで並設された通電用ローラと、該通電用ローラに負極を接続し、前記めっき用ローラに正極を接続した電源と、を備え、前記めっき用ローラと前記通電用ローラとの間に被処理材を搬送して、該被処理材をめっき処理する装置であって、
前記めっき用ローラは、その周面の一部に、前記電源からの電流の通電を妨げる非通電部が形成されていることを特徴とするめっき処理装置。
【請求項2】
前記非通電部は、絶縁材料が被覆された絶縁部、又は凹部であることを特徴とする請求項1に記載のめっき処理装置。
【請求項3】
前記非通電部は、めっき用ローラの軸芯に沿って等間隔に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のめっき処理装置。
【請求項4】
前記非通電部は、燃料電池のセパレータ内を流れるガス流路の形状に合わせて形成されている請求項1又は2に記載のめっき処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−53389(P2010−53389A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218420(P2008−218420)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】