説明

めっき用の改質ポリアセタール

酸エッチングおよびめっきされるポリアセタール物品に加工するためのポリアセタール混合物が、97〜99.9重量%のポリアセタールと0.1〜3重量%の分子量5,000〜50,000の半結晶質または非晶質熱可塑性非ポリアセタール樹脂とを含むポリアセタール樹脂ブレンドと、炭酸カルシウムなどの酸可溶性粒子とを含む。酸可溶性粒子はポリアセタールブレンドの2〜6重量%の量で存在し、酸可溶性粒子の少なくとも98%が、好ましくは0.1〜2マイクロメートルの粒度の範囲である。又、混合物が好ましくは、酸可溶性粒子の重量の1/5〜1/50の量で存在する、酸不溶性無機粒子、特にヒュームドシリカを含み、酸不溶性粒子の粒度が酸可溶性粒子の粒度の1/20〜1/100である。めっきされたポリアセタール物品が、良好なめっき付着力および化学的攻撃に対してポリアセタールの良好な耐性を保持したまま、すぐれた美的外観を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸エッチングおよびめっきされるポリアセタール物品に加工するためのポリアセタールのバルク改質、ならびに例えば成形によって得られたポリアセタール物品、およびめっき触媒、無電解金属めっき溶液の1つまたは複数でエッチングおよびめっきされた後、ガルバニック方法を実施された時のポリアセタール物品に関する。本発明は具体的に、良好なめっき付着力および化学的攻撃に対してポリアセタールの良好な耐性を保持したまますぐれた美的外観を有するめっきされたポリアセタール物品を得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール(アセタール樹脂と称されることもある)は、例えば米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)および米国特許公報(特許文献3)に記載されたポリオキシメチレン組成物のクラスである。ポリアセタール樹脂は、とりわけ本願特許出願人によって商標デルリン(DELRIN)(登録商標)として市販されている。
【0003】
ポリオキシメチレン組成物(ポリアセタール)としては一般に、ホルムアルデヒドのホモポリマーまたはホルムアルデヒドの環状オリゴマー、例えばトリオキサン、のホモポリマー(その末端基がエステル化またはエーテル化によってエンドキャップされる)、ならびに少なくとも2個の隣接した炭素原子を主鎖に有するオキシアルキレン基との、ホルムアルデヒドのコポリマーまたはホルムアルデヒドの環状オリゴマーのコポリマー(そのコポリマーの末端基がヒドロキシル末端基である場合があり、またはエステル化またはエーテル化によってエンドキャップされる場合がある)をベースとする組成物が挙げられると考えられる。
【0004】
比較的高い分子量、すなわち10,000〜100,000のポリオキシメチレンベースの組成物が、熱可塑性材料と共に一般に用いられる技術、例えば圧縮成形、射出成形、押出し、ブロー成形、回転成形、メルトスピニング、スタンピングおよび熱成形のどれかによって半−完成および完成物品を作製するのに有用である。かかる組成物から製造された完成製品は、高い剛性、強度、化学安定性および耐溶剤性などの非常に望ましい物理的性質を有する。
【0005】
ポリアセタールから製造された成形物品は、高度に化学的に安定性および結晶性であり、他の成形プラスチック材料よりも装飾またはオーバーモールドするのが難しく、特に、(真空蒸着によって)金属化したり、めっき(無電解めっきまたはガルバニめっき(galvanoplating)するか、または塗装するのがより難しいことは公知である。
【0006】
一般的に言って、プラスチックは化学的に非常に安定しており、射出成形等によって製造されたそれらの成形製品は平滑な表面を有し、このため、印刷、コーティング、堆積等によってそれらの表面を装飾するのが難しく、又、表面に接着剤によって接着などの加工を行なうことが難しい。ポリアセタール樹脂は、表面活性が特に低く、ポリアセタールに対する親和性を有する適切な溶剤が知られていないので、表面装飾およびその付着は、実施が困難であり、このため、ポリアセタール樹脂はこのような処理を必要とする用途にはめったに利用されない。
【0007】
しかしながら、プラスチックの適用は最近多様化しており、機能と外観または機能と付着性質などの多数の基準を同時に満たすためにしばしばより高クラスの使用法が必要とされる。従って、良好な表面加工性が、ポリアセタールについてはより重要になってきている。
【0008】
ポリアセタールの表面加工性は、酸性溶液または酸化体溶液で処理することによってある程度改良することができる。p−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、リン酸、酸硫酸アンモニウム等の酸性溶液が提案されているが、他方、酸化体溶液としてクロム酸−硫酸混合物が提案されている。電気めっきの改良された方法もまた、酸薬剤の溶液による上記の表面処理の前にキノリン、ピリジンまたはg−ブチロラクトンへの造形物品の浸漬によって提供される。
【0009】
これらの処理の目的は、粗面を形成し、同時に溶液の酸化作用によってポリアセタール分子の一部に反応性基を形成することである。しかしながら、このような手順によって表面処理の効果の増強が行なわれる場合、全体にわたるポリアセタール樹脂の劣化などの問題が生じ、強度の低下、亀裂の形成、または好ましくない表面仕上につながる。他方、ポリアセタールの劣化を起こさない条件を使用する処理が行われる場合、表面処理の効果が不十分である傾向があり、十分な表面加工を実施できない。
【0010】
それらの表面加工性を改良するためにポリアセタール物品を処理する場合、化学改質によって表面を活性化および粗くする傾向を制御するとき、およびその初期のバルク性質を保持するようにポリアセタール組成物を選択するときに大きな問題に直面する。ポリアセタール樹脂の表面を処理することの難しさは、特に、複合造形成形品が酸性溶液に浸漬される時の高い不良率、またはコーティングの不十分な付着によって明らかにされる。コーティングとは、成形ポリアセタール物品の酸エッチングされた表面の上に適用された装飾または機能性層を意味する。とりわけ、コーティングの良好な付着力ならびにすぐれた表面の美的外観を得ることが望ましい。
【0011】
ポリアセタール物品の金属化の難しさは例えば、(特許文献4)に記載されており、それは、例えば30〜60重量%の硫酸、5〜30重量%の塩酸および65〜10重量%の水、または20〜50重量%の硫酸、30〜50重量%のリン酸および50〜0重量%の水の混合物を用いて、酸エッチングによる予備表面処理を提案した。有機酸および無機酸の混合物もまた予想された。酸エッチングの後、物品を中和溶液中に浸し、ウレタン塗料で下塗りし、カソードスパッタリングによって金属化し、アクリルウレタン塗料またはアクリル酸エステル塗料系のトップコートで塗装した。
【0012】
(特許文献5)には、30容積%の硫酸(96/98%の純度)、20容積%のリン酸(85%の純度)、5容積%の塩酸(35/37%の純度)および45容積%の水の量の硫酸、リン酸および塩酸の混合酸浴でエッチングすることによって、めっきのために準備するポリアセタール物品の予備表面処理について記載されている。この方法は、ポリアセタールコポリマーから製造された物品のめっきのために小規模ではだいたい成功しているが、産業規模でのその実施は芳しくない。
【0013】
米国特許公報(特許文献6)には、酸溶液でエッチングすることによる成形ポリアセタール物品の表面の粗面化が開示されている。それは、酸エッチングの間に完全に溶解され得る、金属炭酸塩などの物質をポリアセタール樹脂に添加することによる表面の粗面化方法について記載する。これらの方法は、所望の表面加工性を提供することが報告されているが、エッチング条件の高度なプロセス制御が、すぐれた表面特性を有する製品を得るために必要とされる。さらに、エッチング溶液の能力が時間とともに低下し、エッチング溶液が汚染され、これにより、ポリアセタール物品の表面加工性および物品に対するめっき層の付着力を低減した。米国特許公報(特許文献6)には、エッチング溶液中に添加剤、特にチオ尿素を含有することによってこれらの問題を緩和することが提案された。試験は、硫酸およびリン酸の混合物からなる混合酸浴中で、チオ尿素を添加しておよび添加せずに、0.01μ〜20μの粒度を有する炭酸カルシウム3重量%を含有するポリアセタール樹脂を用いて行なわれた。チオ尿素を添加することで、改良につながることがわかった。普通の添加剤を含有できることは明記されているが、ポリアセタール樹脂の具体的な詳細は記載されていなかった。
【0014】
今までに遭遇した困難にもかかわらず、ポリアセタールの良好な物理的−機械的性質を保持したまま、およびめっきの外観を改良して、特に表面の外観が重要である用途のためにポリアセタール物品を表面処理することが非常に望ましい。1つの特定の用途は、香水ビン用の金属めっきされたクロージャーキャップであり、その場合、ポリアセタールが、その著しい機械的性能、すなわちポリアセタールの剛性および靭性ならびに非晶質ポリマーと比べて特にアルコールに対するそのすぐれた耐化学薬品性のために、他のプラスチックより好ましい。しかしながら、香水ビン用のクロージャーキャップは、金属めっきの非常に良好な仕上を必要とし、これは、化学的攻撃に対して良好な耐性および良好なめっき付着性を保持したまま達成することは難しい。
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,318,813号明細書
【特許文献2】米国特許第5,344,882号明細書
【特許文献3】米国特許第5,286,807号明細書
【特許文献4】GB−A2091274号明細書
【特許文献5】FR−A−2,703,074号明細書
【特許文献6】米国特許第4,826,565号明細書
【特許文献7】米国特許第4,410,661号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、現在、溶融加工されたポリアセタール樹脂製品のめっきにおいて克服されなければならない多くの問題がある。特に、金属めっきされたポリアセタールから作製された高品質の香水キャップを製造することは、今日まで可能ではなかった。代わりに、他のめっきされた非晶質ポリマーが、例えば、ポリオレフィンのインサートと共に使用されている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、酸エッチングおよびめっきされるポリアセタール物品に加工するためのポリアセタール混合物を提供し、それによって、すぐれた機械的定着をもたらすために成形アセタール物品の表面の上に高密度の孔/細孔を形成してめっきプロセスの間に金属層を堆積させ、金属層のすぐれた最終付着力およびすぐれた美的外観を有する表面を提供することができる。孔/細孔は、ポリアセタール中の酸可溶性無機充填剤が溶解されて十分に制御された粒度分布の孔/細孔を残す、選択された化学エッチングによって形成される。これに重要なのは、エッチング溶液、孔の寸法および密度(孔によって覆われた領域)および孔の分散パターン(均質)である。エッチングが強すぎ、従って高密度の大きな孔を形成するか、または粒子の寸法が大きすぎ、好ましくない分散パターンおよび広い粒度分布を有する場合、めっきされた時に好ましくない表面の美的および/または弱い付着力を示す適切でない表面が生じる。次に、課題は、機械的定着点を形成するために表面を十分にエッチングし、表面様相を損なうことなく十分な付着力を生じさせることである。
【0018】
本発明は、1つの主な態様において、97〜99.9重量%のポリアセタールと0.1〜3重量%の分子量5,000〜50,000の半結晶質または非晶質熱可塑性非ポリアセタール樹脂とを含むポリアセタール樹脂ブレンドと、元素の周期表の第II族の少なくとも1つの金属の炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ケイ酸塩から選択される群からの酸可溶性粒子とを含む酸エッチングおよびめっきされるポリアセタール物品に加工するためのポリアセタール混合物を提供するものであり、前記酸可溶性粒子は前記ポリアセタールブレンドの2〜6重量%の量で存在し、前記酸可溶性粒子の少なくとも98%が0.1〜5マイクロメートルの寸法の範囲である。
【0019】
本発明によるポリアセタール混合物は、良好な加工性、例えば、製造された製品の欠陥を生じない成形を特徴とする。本発明による混合物から製造されたポリアセタール物品は、加工の欠陥、特にしわ、流れすじ、吹付けまたは噴射跡などの成形欠陥のないこと、改良されためっき適性(均一性および付着力)、改良された外観等級(めっきの外観)、および良好な保持された物理的−機械的性質、すなわち剛性および靭性を特徴とする。又、めっきされたポリアセタール物品は、光源下の反射画像の減衰に基づいて視覚的に判断された改良された表面仕上を特徴とする。
【0020】
本発明の重要な特徴は、得られためっきされたポリアセタール物品は、めっきの付着力またはポリアセタールの安定性を損なわずに一貫してすぐれた外観等級を維持することである。又、本発明による混合物から得られたポリアセタール物品は、酸エッチングおよびその後にめっきする間の改良された加工性を有する。この物品は、酸性エッチング溶液中に浸漬された時に低い不良率を有する。不良率は、酸エッチングの結果として破断する部分または(酸エッチングの間または後の加工工程の間のどちらかに)亀裂の形成のような表面の人為構造が観察される部分のパーセンテージである。
【0021】
本発明によるポリアセタール混合物、前記混合物から製造された物品、酸エッチングされた物品および最終めっきされたポリアセタール物品の利点は、多種多様である。
i)成形などによる混合物の物品への加工が改良され、加工の欠陥がほとんど除かれる。
ii)酸エッチングを低い不良率(エッチング欠陥がほとんど無い)で全酸浴(添加剤無し)内で達成することができ、均一な小さな細孔を有するエッチングされた表面を提供することができる。
iii)エッチングされた表面が、細孔径の非常に均一な分布を有する多くの小さな細孔の均一な分布を有する。
iv)エッチングされた表面の触媒作用を増強してめっき触媒の付着力および性能を改良することができる。
v)得られためっきされた物品が、一貫してすぐれた外観等級を有する。
vi)適用されためっきがすぐれた付着性を有する。
vii)ポリアセタールの物理的性質、特に化学的攻撃に対する安定性が保持される。
【0022】
加工、エッチングおよびめっきされるポリアセタール混合物を別として、本発明のさらに別の態様には、前記混合物から製造された容易にエッチングできるポリアセタール物品、これらの物品をエッチングすることによって得られた均一な多孔性表面を有するエッチングされたポリアセタール物品、およびめっき触媒、無電解金属めっき溶液およびガルバニックめっきの1つまたは複数、好ましくは3つ全ての組合せで、酸エッチングされたポリアセタール物品をめっきすることによって得られるめっきされたポリアセタール物品がある。本発明のさらに別の態様は、ポリアセタール物品の電気めっき方法、ならびに、適用されためっき触媒の付着力および効果を増強するための特定のポリアセタール混合物の調製方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、良好な付着性および良好な保持された物理的−機械的性質と組合せられた、すぐれた視覚的な外観等級を有するめっきされたポリアセタール物品を製造する、酸エッチングおよびめっきされるポリアセタール物品に加工するためのポリアセタール混合物を提供する。
【0024】
本発明は、溶融加工(射出成形などによる)した後に硫酸、リン酸、塩酸および有機酸の群から少なくとも3つの酸を含有する、好ましくは4つの酸、硫酸、リン酸、塩酸および酢酸を含有する混合酸浴からエッチングを実施する特定のポリアセタール組成物に関する。前記ポリアセタール組成物が、めっきされたポリアセタールの良好な外観の保持およびポリアセタールの物理的性質の維持を助ける(以下に記載された)機能性改質剤の少量を含有する。
【0025】
必要とされる高性能(良好な付着、剛性、靭性および表面の美観)は、以下により詳細に示すように、本発明によって、樹脂組成物、表面処理、および適用されためっき方法を用いて達成される。
【0026】
(ポリアセタール)
用語「ポリアセタール」は本明細書中で用いるとき、ホルムアルデヒドのホモポリマーまたはホルムアルデヒドの環状オリゴマーのホモポリマー(その末端基がエステル化またはエーテル化によってエンドキャップされる)、およびホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドの環状オリゴマーと少なくとも2個の隣接した炭素原子を主鎖に有するオキシアルキレン基を与える他のモノマーとのコポリマー(そのコポリマーの末端基がヒドロキシル末端基である場合があり、またはエステル化またはエーテル化によってエンドキャップされる場合がある)などを含める。
【0027】
本発明の組成物中で用いられたポリアセタールは、分枝状または直鎖状であってもよく、概して、数平均分子量が10,000〜100,000、好ましくは20,000〜75,000の範囲である。前記分子量は、60Åおよび100Åの公称細孔径を有する本願特許出願人のPSM二方式カラムキットを用いて160℃のm−クレゾール中でゲル浸透クロマトグラフィーすることによって測定できるのが便利である。所望の物理的性質および加工性質に応じて、より高いまたはより低い分子量の平均値を有するポリアセタールを用いることができるが、上述のポリアセタールの分子量の平均値が、組成物中に溶融ブレンドされる様々な成分の十分な混合をもたらし、かかる組成物から製造された成形物品に物理的性質の最も望ましい組合せを提供する。
【0028】
上記のように、ポリアセタールは、ホモポリマー、コポリマー、またはそれらの混合物のいずれであってもよい。コポリマーは、ポリアセタール組成物の調製において一般に用いられるコモノマーなど、1つまたは複数のコモノマーを含有することができる。より一般的に用いられるコモノマーには、2〜12個の炭素原子のアルキレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのそれらの環状付加生成物がある。コモノマーの量は、20重量パーセントを超えず、好ましくは15重量パーセント以下であり、最も好ましくは約2重量パーセントである。最も好ましいコモノマーはエチレンオキシドである。概してポリアセタールホモポリマーは、その比較的大きな剛性および強度のために、コポリマーより好ましい。好ましいポリアセタールホモポリマーには、化学反応によってエンドキャップされてエステルまたはエーテル基、好ましくはそれぞれアセテートまたはメトキシ基を形成するホモポリマーがある。
【0029】
ポリアセタールは通常、約170℃〜260℃、好ましくは185℃〜240℃、最も好ましくは200℃〜230℃の溶融温度において溶融加工される。
【0030】
(機能性改質剤)
改良されためっき適性および良好に保持された物理的−機械的性質を有する組成物にポリアセタールを調合できることがわかった。保持された性質によって、例えばISO527/1−2に従って引張下でまたはISO179/1eAに従って衝撃試験下で試験された時に、改質されないおよび/または処理されない成形されたポリアセタール成形品に比べて物理的−機械的性質の劣化はごくわずかであると理解している。
【0031】
ポリアセタールの「機能性改質剤」または「安定剤」は、概して少なくとも1つの窒素含有有機材料を含む半結晶質または非晶質熱可塑性非ポリアセタール樹脂であり、典型的にポリアミドである。少なくとも1つの半結晶質または非晶質非アセタール熱可塑性ポリマーは、押出および射出成形方法において、概してそれらだけで、または他のものと組合わせて使用されるそれらの熱可塑性ポリマーから選択されてもよい。これらのポリマーは、ポリマー組成物中で少量成分(すなわち、加工助剤、耐衝撃性改良剤、安定剤)として使用することで公知のそれらの樹脂とは対照的に、押出および射出成形銘柄樹脂として当業者に公知である。
【0032】
ポリアセタール混合物が、少なくとも1つの非アセタール熱可塑性ポリマー約0.1〜3重量パーセントまでを含むことが本発明には重要であるが、しかしながら、少なくとも1つの非アセタール熱可塑性ポリマー0.5〜2重量パーセントが好ましい。非ポリアセタール熱可塑性ポリマーの量が多くなると、エッチングされたポリアセタール物品の細孔の粒度分布が大きくなり、従って、めっきされた物品の好ましくない表面様相につながる。
【0033】
ヒドロキシル、カルボニル、メタクリレート、アミド、および/またはアミン基および/またはそれらの組合せを含有する機能性改質剤は、ポリアセタールが加工される温度において溶融性である。「溶融性」という用語によって、機能性改質剤または異なった機能性改質剤の組合せが、ポリアセタールが溶融加工される温度より低い主融点を有し、それ故、液体であり好ましくは低粘度であり、加工温度において著しい溶融流動をすることが意味される。いわゆる「低融点−低粘度」機能性改質剤の表面富化を定量的に示すことはほとんど不可能であるが、それらは、成形プロセスの間に表面に向かって移動し、それ故、(ESCA測定によって裏づけられるように)加工されたポリアセタール成形品のいわゆる表皮ミクロ構造においてかまたはすぐ下に存在する官能価をもたらすと推測される。さらに、これらの「低融点−低粘度」機能性改質剤を添加することによって、酸化溶液を用いてまたは用いずに酸エッチングする間、亀裂が低減される。上述の機能性改質剤を調合物に添加するとき、内部応力または残留応力が部分的に緩和され、増強された機械的性能を有する加工ポリアセタール成形品を提供すると思われる。
【0034】
例えば、比較的低い融点を有するポリアミドは或るレベルの結晶度を保持するが、それらの低い粘度、高い極性および水素結合はそれらを本発明の目的のために有用にする。ポリオレフィン、好ましくはエチレン−ビニルアセテートコポリマー(EVA)およびエチレンブチルアクリレート一酸化炭素ターポリマー(EBACO)などの極性コポリマーおよびターポリマーは、ポリオキシメチレン基材と様々な表面処理との間の表面付着を生じさせるために有用であることがわかった。又、ポリカプロラクトンなどのポリアセタールの融点付近かまたはそれよりも低い融点を有する半結晶質ポリエステルを用いてもよい。非アセタール熱可塑性ポリマーを、1つの熱可塑性ポリマーとしてかまたは1つより多い熱可塑性ポリマーのブレンドとして組成物中に混入することができる。熱可塑性ポリマーのブレンドを使用して、例えば、靭性または主な樹脂とポリオキシメチレンとの相溶性などの性質を調節してもよい。しかしながら、好ましくは、基材は、1つの付加的なまたは代替のポリマー、例えば非晶質熱可塑性ポリマーまたは半結晶質ポリマーを含む。
【0035】
1つの熱可塑性ポリマーとして混入されるかまたは1つより多い熱可塑性ポリマーのブレンドとして混入されるかにかかわらず、組成物中の全ての非アセタール熱可塑性ポリマーの重量パーセントは、上に記載された重量パーセントの範囲を超えないものとする。
【0036】
用語「熱可塑性」は、ポリマーが加熱された時に流動性の状態に軟化し、加圧下でそれを圧入するかまたは加熱されたキャビティから冷たい型に移すことができ、型内で冷却した時に、それが固化して型の形状をとることを意味する。熱可塑性ポリマーは、「プラスチックおよびエラストマーのハンドブック(“Handbook of Plastics and Elastomers”)」(マグロ−ヒル(McGraw−Hill))出版)においてこのように定義されている。
【0037】
用語「非晶質」は、ポリマーがはっきりした結晶融点を持たず、測定可能な融解熱も持たない(しかし、溶融体から非常に緩慢に冷却することによって、または十分なアニールによって、若干の結晶度が生じる場合がある)ことを意味するものとする。融解熱は、示差走査熱量計(DSC)で確認されるのが便利である。適した熱量計は、本願特許出願人の990熱分析器、製品番号990000およびセルベースII、製品番号990315およびDSCセル、製品番号900600である。この計測器によって、融解熱を毎分20℃の加熱速度において測定することができる。試料を期待融点を超える温度まで加熱し、液体窒素で試料ジャケットを冷却することによって急速に冷却することを交互に繰り返す。融解熱は、第1のサイクルの後の任意の加熱サイクルで確認され、実験誤差内の一定値であるのがよい。非晶質ポリマーは、この方法によって、融解熱が1cal/g未満であると本明細書において定義される。参考のために言うと、分子量が約17,000の半結晶質66ナイロンポリアミドは、融解熱が約16cal/gである。
【0038】
当該組成物において有用である熱可塑性ポリマーは、ポリオキシメチレンが溶融加工される温度において溶融加工性でなければならない。ポリオキシメチレンは通常、約170℃〜260℃、好ましくは185℃〜240℃、および最も好ましくは200℃〜230℃の溶融温度において溶融加工される。
【0039】
用語「溶融加工性」は、熱可塑性ポリマーが軟化し、ポリオキシメチレンの特定の溶融加工温度においてそれを溶融配合できるように、十分な流動性を有しなければならないことを意味するものとする。
【0040】
相溶性、熱安定性を確保して鎖の交絡によって機械的性能を保持するために熱可塑性ポリマーの最低分子量(1000)が必要とされるが、ただし、前記ポリマーは少なくとも10の重合度を有し、又、前記ポリマーは、ポリオキシメチレンが溶融加工される温度において溶融加工性である(すなわち、それは加圧下で流動する)。熱可塑性ポリマーの最大分子量は、熱可塑性ポリマーがそれだけで、当該標準技術によって射出成形可能でないほど高くないのがよい。射出成形方法のために用いられるポリマーの最大分子量(50,000)は、個々の特定の熱可塑性ポリマーによって変化する。しかしながら、射出成形方法に用いるための最大分子量は、当業者には容易に認識できる。
【0041】
本明細書において有用である非晶質または半結晶質熱可塑性ポリアミドは、本技術分野において公知である。それらは、米国特許公報(特許文献7)に記載されている。具体的には、これらの非晶質または半結晶質熱可塑性ポリアミドは、8〜18個の炭素原子を含有する少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸と、(i)2〜12個の炭素のノルマル脂肪族直鎖ジアミン、(ii)4〜18個の炭素の分枝状脂肪族ジアミン、および(iii)少なくとも1つの脂環式部分、好ましくはシクロヘキシル部分を含有する8〜20の炭素の脂環式ジアミンからなるクラスから選択される少なくとも1つのジアミンとから得られ、任意選択的に、ポリアミドの50重量パーセントまでが、4〜12個の炭素原子を含有するラクタムまたはオメガ−アミノ酸から得られた単位、または4〜12個の炭素原子を含有する脂肪族ジカルボン酸と2〜12個の炭素原子を含有する脂肪族ジアミンとの重合塩から得られた単位からなってもよい。
【0042】
用語「芳香族ジカルボン酸」は、カルボキシ基がフェニレンナフタレンなどの芳香環に直接に結合していることを意味するものとする。
【0043】
用語「脂肪族ジアミン」は、アミン基がアルキレンなどの非芳香族含有鎖に結合していることを意味するものとする。
【0044】
用語「脂環式ジアミン」は、アミン基が3〜15個の炭素原子からなる脂環式環に結合していることを意味するものとする。6個または12個の炭素の脂環式環が好ましい。
【0045】
熱可塑性ポリアミドの好ましい例には、ナイロン6、610、612等のコポリマーおよびターポリマーなど、約180℃未満の融点を有する熱可塑性ポリアミドが挙げられる。ポリアミドは、環状モノマー(例えばe−カプロラクタム)および/またはジアミン/二酸、例えばヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸から重合されると定義され、ナイロン6、10、11、12、46、66、69、610、612、1212、および6Tなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリアミドには、1つまたは複数のジカルボン酸を1つまたは複数のジアミンで縮合することによって製造された様々なコポリマー、ターポリマー、テトラポリマーおよびインターポリマー、モノアミノカルボン酸の縮合ポリマー、およびラクタムのポリマーがある。
【0046】
非晶質または半結晶質熱可塑性ポリアミドは、105ダイン/cmの剪断応力において測定された200℃においての溶融粘度が、50,000ポアズ未満、好ましくは20,000ポアズ未満である。非晶質または半結晶質ポリアミドは商業的に入手可能であり、または上述の組成物の比において公知のポリマー縮合方法によって調製されてもよい。高ポリマーを形成するために、使用された二酸の全モルは、使用されたジアミンの全モルにほぼ等しいのがよい。
【0047】
さらに、遊離ジカルボン酸、塩化物などのそれらの誘導体を用いて熱可塑性ポリアミドを調製してもよい。
【0048】
非晶質または半結晶質熱可塑性ポリアミドを調製するための重合は、溶融重合、溶液重合および界面重合技術などの公知の重合技術によって行なわれてもよいが、溶融重合の手順によって重合を行なうのが好ましい。この手順により、高分子量のポリアミドを製造する。重合において、ジアミンおよび酸または環状アミドは、ジアミン成分とジカルボン酸成分の比がほとんど等モルであるような量において混合される。溶融重合において、成分は、得られたポリアミドの融点より高いがその分解温度より低い温度において加熱される。加熱温度は約170℃〜300℃の範囲である。圧力は、真空〜300psi(約2MPa)の範囲であってもよい。出発モノマーの添加方法は重要ではない。例えば、ジアミンと酸との組合せの塩を製造し、混合することができる。ジアミンの混合物を水に分散させ、高温において酸の混合物の規定された量を分散系に添加してナイロン塩の混合物の溶液を形成し、溶液に重合を起こすことも可能である。
【0049】
必要ならば、一価アミンまたは、好ましくは、有機酸を粘度調節剤として出発塩の混合物またはその水溶液に添加してもよい。
【0050】
OH基を有する機能性改質剤は、ビニルアルコールおよび/またはフェノール基を有するポリマーおよび/または他のヒドロキシル含有コ−インターポリマー(2、3、4以上のモノマー単位を意味するインターポリマー)によって定義される。
【0051】
機能性改質剤は、ヒドロキシル基、アミド、イミド、カルボン酸およびまたはそれらの塩を含有してもよいアクリレートまたはメチルアクリレート(MA)およびスチレン(sytrene)、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなどの反応性がより小さいまたは官能価がより小さいモノマーとの組合せであってもよい。組成物に用いられたポリマー安定剤は、ホルムアルデヒド反応性窒素基、ホルムアルデヒド反応性ヒドロキシル基、またはホルムアルデヒド反応性窒素基とホルムアルデヒド反応性ヒドロキシル基との両方を含有するホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。「ホルムアルデヒド反応性」によって意味されるのは、ヒドロキシル基が酸素とそれに結合した水素原子を含有し、窒素基が窒素とそれに結合した1個または2個の水素原子を含有することである。ホルムアルデヒドが、安定剤ポリマーの−OHまたは−NH結合と反応する。これらの反応性部位は、本明細書中でホルムアルデヒド反応性部位と称される。ポリマー安定剤が、最大数のホルムアルデヒド反応性部位を有するホルムアルデヒド反応性窒素またはヒドロキシル基を含有することが好ましい。例えば、2個の水素原子が窒素原子に直接に結合しているホルムアルデヒド反応性窒素基を含有するポリマー安定剤が、1個だけの水素原子が窒素原子に直接に結合しているホルムアルデヒド反応性窒素基を含有するポリマー安定剤よりも好ましい。
【0052】
(酸可溶性粒状添加剤)
本発明のポリアセタール混合物が、酸エッチングの間に塩を除去することによって均一な微孔性の粗面化された表面の形成を容易にする、周期表の第II族に属する金属の塩の粒子を含有する。そして次に、粗面化された表面は表面加工を容易にし、特にめっき触媒を適用した後、無電解金属めっき溶液およびガルバニック方法の実施を容易にする。
【0053】
酸可溶性粒状添加剤は、元素の周期表の第II族の少なくとも1つの金属、ごく普通にはカルシウムおよびマグネシウムの炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ケイ酸塩から選択されてもよい。好ましい酸可溶性粒子は炭酸カルシウムから製造される。これらの粒子は、ステレエート(stereate)などの分散剤でコーティングされるか、またはされなくてもよい。
【0054】
これらの酸可溶性粒子は前記ポリアセタールブレンドの2〜6重量%の量で存在し、前記酸可溶性粒子の少なくとも98%が0.1〜5マイクロメートルの寸法の範囲である。好ましくは前記酸可溶性粒子が前記ポリアセタールブレンドの3〜5重量%の量で存在し、前記酸可溶性粒子の少なくとも98%(通常99%)が0.1〜2マイクロメートルの寸法の範囲である。後者の場合、前記酸可溶性粒子の平均一次粒度は、約0.7マイクロメートルである。これらの粒子は、ポリアセタール樹脂を劣化させずにそれと相溶性であり、所定の寸法の範囲は、十分に制御された粒度分布を有する最適な分散系をもたらす。
【0055】
以下に示すように、非ポリアセタール改質剤3%未満を有するポリアセタールブレンドと組合わせてこの狭い粒度分布の酸可溶性粒子を用いることによって、エッチングされた成形ポリアセタール物品は、非常に微細および均一な極小多孔度を示し、良好なめっき付着力および化学的攻撃に対してポリアセタールの良好な耐性を保持したまま、めっきされた物品のすぐれた表面様相をもたらす。
【0056】
(酸不溶性粒状添加剤)
本発明によるポリアセタール混合物の好ましい実施態様は、ガラス粉末、カオリンおよびケイ酸塩、好ましくはヒュームドシリカから選択される酸不溶性無機粒状添加剤をさらに含有する。これらの酸不溶性粒子、特にヒュームドシリカは、前記酸可溶性粒子の重量の1/5〜1/50の量で存在し、前記酸不溶性粒子の寸法が前記酸可溶性粒子の寸法の1/20〜1/100である。
【0057】
前記酸可溶性粒子がポリアセタールブレンドの3重量%〜5重量%の好ましい量で存在するとき、前記酸不溶性粒子がポリアセタールブレンドの0.1重量%〜0.5重量%の好ましい量で存在する。
【0058】
酸不溶性粒子は、前記酸可溶性粒子よりかなり小さい。好ましくは、酸不溶性粒子は、5〜40ナノメートル、より好ましくは10〜20ナノメートルの寸法の範囲(一次非凝集粒度)である。これらの粒子はさらに、100〜300m/g、好ましくは175〜225m/gの大きな比表面積を特徴とする。
【0059】
これらの酸不溶性粒子の機能は、パラジウムなどの適用されためっき触媒の活性および効果を増強することである。このように、ヒュームドシリカが、酸エッチングによって形成された孔(機械的定着部位)への触媒の堆積を改良するために添加される。化学エッチングが炭酸塩粒子を溶解した後に、小さなシリカ粒子が表面に示され、めっき触媒作用を促進すると考えられる。主な効果として、付着力が改良され、金属めっき層がより均質に形成され、本発明による実施例によって以下に示されるように著しい表面の美観を提供する。
【0060】
ポリアセタール物品が酸可溶性および酸不溶性粒子を含有する混合物から成形されるとき、成形ポリアセタール物品が、ポリアセタール(polyacatal)の表面に均一に分散された酸可溶性粒子と、酸可溶性粒子の表面の周りのポリアセタールブレンド中に定着された酸不溶性粒子とを含む。この成形ポリアセタール物品を酸エッチングすることによって得られた酸エッチングされたポリアセタール物品において、酸可溶性粒子が除去され、酸不溶性粒子を個々にまたは最大寸法、数百ナノメートルまでと考えられる凝集塊として、酸可溶性粒子の除去によって残された開放細孔の周りのポリアセタールブレンド中に定着されたままにする。
【0061】
(ポリアセタールのさらに別の成分)
ポリアセタール樹脂は通常、他の無機充填剤を含有しないが、本発明の混合物は、ポリアセタールと安定剤ポリマーの限られた量、および前述の酸可溶性および酸不溶性粒子のほかに、他の成分、例えば酸化防止剤、顔料、着色剤、紫外線安定剤、強化剤、核剤、および充填剤など、ポリアセタール成形樹脂中で一般に用いられるような改質剤および添加剤を含有してもよい。
【0062】
(溶融加工)
ポリアセタール混合物は、熱可塑性材料と共に一般に用いられる技術のどれか、例えば圧縮成形、射出成形、押出、ブロー成形、回転成形、メルトスピニング、スタンピングおよび熱成形によって溶融加工される。
【0063】
上述のように、ポリアセタール原樹脂の粘度は、通常ゲート位置において強力剪断が表面仕上に悪影響を与える場合がある成形段階の間、重要な役割を果たす。ポリアセタール樹脂などの半結晶質エンジニアリングポリマーを成形した時に適用される設計コンセプトおよび規則を別として、低粘度樹脂は、充填剤の均質な分散を促進し、ゲートにおいて欠陥の生じる傾向が少なくなる。さらに、成形品の壁厚さがかなり小さい場合、低粘度樹脂(約20〜40グラム/10分のメルトフローインデックス、ISO1133)はまた、より良い結果をもたらし、欠陥が少なくなる。同様な問題は他の溶融加工方法にも当てはまる。
【0064】
特許請求されるような本発明によるポリアセタールブレンドおよびその添加剤の組成の選択は、変化させられた物品中の不要な人為構造の低減に実質的に寄与する。表面の欠陥を避けるために、ポリアセタールブレンドの粘度は、成形などによる十分な加工を確実にするように選択されるのがよい。このために、2.16kg下で190℃においてISO1133に従って測定されたメルトフローインデックスは、特に約0.5〜5mmの小さな壁厚さを有する成形品については、2〜40グラム/10分、好ましくは20〜30グラム/10分であるのがよい。
【0065】
ポリアセタール原樹脂の粘度は、配合段階の間だけではなく、通常、型のゲート位置において強力剪断が表面仕上に悪影響を与える場合がある成形段階の間にも、無機充填剤の分散において重要な役割を果たす。ゲートにおいて、剪断は一般に最大になり、これが、成形欠陥が生じる可能性が最も高い箇所である。低粘度樹脂は通常、充填剤の均質な分散を促進し、ゲートにおいて欠陥の生じる傾向が少なくなる。さらに、成形品の壁厚さがかなり小さい場合、低粘度樹脂はまた、より良い結果をもたらし、欠陥が少なくなる。
【0066】
(酸エッチング)
めっきされるポリアセタールの表面は、硫酸、リン酸、塩酸および有機酸の群から少なくとも3つの酸を含有する混合酸浴、特に、硫酸、リン酸、塩酸および酢酸を含有する混合酸浴からエッチングすることによって処理される。例として与えられた以下の組成物の混合酸エッチング浴は、下記の比較用試験のために調製された。すなわち、硫酸34.5重量%、リン酸29.0重量%、塩酸4.5重量%、酢酸8.5重量%および水23.5重量%。この実施例において、硫酸の、リン酸に対する重量比は1.18であり、塩酸の、酢酸に対する重量比は0.52である。
【0067】
このような表面処理が、機能性改質剤を含有しないポリアセタール物品に適用される場合、全体にわたってポリアセタール樹脂の劣化などの問題が生じ、強度の低下および亀裂の形成につながる。
【0068】
他方、適した機能性改質剤を有するポリアセタールを利用して処理が実施される場合、良好な物理的−機械的性質を維持するポリアセタール物品の劣化を防止または低減したまま、表面改質が達成可能であり、めっきされた金属の改良された付着性につながる。
【0069】
酸可溶性粒子の存在は、均一な表面極小多孔度の形成に寄与し、めっき前駆物質および金属めっきの機械的定着をもたらす。ここにおいて規定された範囲内で作用することによって、この極小多孔度は、すぐれた美的外観を有する表面を提供する。
【0070】
(ポリアセタール物品のエッチングおよびめっき)
めっきされる成形ポリアセタール物品は、それらを弱アルカリ性pHの洗浄剤浴に漬けることによって、2〜3分間、50℃までの温度において界面活性剤(例えば、フランス、パリ(Paris,France)のシプレイ(Shipley)SASから入手可能なPM900)で清浄にされ、次いで、エッチングする前に水で洗浄される。
【0071】
上述のような混合酸浴中でのエッチングは、10〜30分間、25〜35℃において行なわれるのが便利である。より低温の条件は、より長い処理を必要とする。溶液を撹拌してポリアセタール表面のエッチングを均一化することができる。エッチングの間、安全および空気制御のために煙霧が排気される。
【0072】
エッチング浴から除去した後、物品を水洗浄し、そこにおいて、酸のすくい出し(drag−out)を逆浸透によって補うことができる。次に、撹拌しながら約1分間、共に室温の20ml/lのアンモニウム溶液または10g/lの水酸化ナトリウム溶液のどちらかで物品を中和する。次いで、物品を水で洗浄し、無電解めっきする前に1分間、室温の10%HClの溶液に漬ける。
【0073】
次に、1〜5分間、25〜28℃の温度のパラジウム50〜100ppmを含有する溶液中で、パラジウムコロイド、例えばシプレイSASから入手可能な触媒9Fで表面を触媒する。本技術分野において公知であるように、異なった触媒を使用するとき、条件を調節する。例えばシプレイSASから入手可能な触媒DPについては処理は35〜40℃の温度において行なわれる。この処理は、機械的撹拌またはかきまぜによって行なわれる。
【0074】
次いで、物品を水で再び洗浄し、シプレイSAS製の調合物PM964などの促進剤で処理して第一錫化合物を除去し、パラジウムの触媒力を増強する。この処理は、2〜4分、または必要ならばそれ以上の時間、40〜45℃において行なわれ、その後、また水洗浄を実施する。
【0075】
次に、物品をニッケル70%または2.4g/lの濃度および25〜35℃の温度のシプレイSASから入手可能な浴PM980などの無電解ニッケルめっき浴中に、アンモニアゴム(ammoniac)を添加して8.8〜9のpHを維持したまま浸漬する。8〜12分の時間によって、0.25〜0.3ミクロンのニッケル層をもたらす。無電解ニッケル堆積物の品質を拡大鏡を用いて検査することができ、条件を必要に応じて調節することができる。
【0076】
無電解ニッケルめっきを有する物品は、通常のワッツ(Watts)浴を用いて例えばニッケルにより、または同様に通常の浴を用いてクロムによりすぐにガルバニめっきできる。あるいは、無電解ニッケルコーティングを無電解銅コーティングに代えることができ、その後に、ニッケル、クロムまたはいずれかの他の金属によるガルバニめっきを行なうことができる。直接めっきについては、上述のように、触媒DPおよび促進剤で前に処理された試料を5重量%の硫酸などの脱不動態化溶液(depassivating solution)中に浸漬し、次いで通常の電気めっきで直接にコーティングする。
【0077】
長時間運転の間、例えばその比重を毎日測定することによって、エッチング浴を定期的に検査する。新たな濃縮酸を定期的に添加し、「すくい出し」減損を補償する。関連ジグからの金属(ステンレス鋼および銅またはニッケル)による浴の汚染を定期的に、例えば毎月測定する。
【0078】
溶解された炭酸カルシウムの除去は、酸エッチングの間に形成された塩の大部分が洗浄段階の間に洗い流されるという意味において無視してよく、それ故、エッチング浴からのすくい出しについてもいえる。この効果は、例えば沈降する傾向の小さい酢酸カルシウムのような、多数の可溶性塩を生じる4種酸浴の選択によって増強される。(特許文献5)の先行技術のエッチング浴と比較して、このエッチング浴は、同じかまたはより長い処理時間、より低い温度において運転可能であり、同じ温度で運転されたとき、この方法でのより大きな融通性/許容度(より広い加工手段)および/または処理された物品のより良い制御につながる。
【0079】
(比較用試験)
香水を含有するビンに使用する成形品、すなわちビンのキャップを、以下に記載したように、商用の非改質または改質ポリアセタール樹脂を用いて射出成形した。全ての成形品に、上述のように混合酸エッチング浴内で上述の表面処理を実施した。
【0080】
処理された成形品の品質を確認するために異なった評価基準を選択した。それらには、成形適性、付着力および表面仕上または美観がある。
【0081】
成形適性とは、代表的な成形品を成形した後に得られた表面仕上のレベルを意味する。この場合、かなり小さな壁厚さ(0.8mm)を有する香水キャップを成形した。最適な成形部品は、例えば、しわ、流れすじ、吹付け、点蝕または噴射跡などであるがそれらに限定されないどんな表面欠陥をも含んではならない。成形適性を確認する方法は、無電解ニッケルに浸漬した後に、成形されたエッチングされた成形品の表面仕上を観察することである。
【0082】
図1aは、無電解Niに浸漬した後の不良なエッチングされた成形部品を示し、しわがゲート位置に観察される。これらのしわは典型的には、高粘度アセタール原樹脂および/または非常に低い射出速度を用いた時に生じる。これらはまた、小さなゲート寸法によって強調される。
【0083】
他方、図1bは、充填剤を非常に高配合した調合物、より具体的には炭酸カルシウムのような無機充填剤を10%以上含有する調合物に典型的に観察される、噴射跡または高剪断帯域を示す。これらのマーキングは典型的に、めっきされた層の不均質な付着力をもたらし、ある程度、表面仕上の不均一性にもつながる。
【0084】
図1cは、無電解ニッケルでコーティングされた、本発明による成形部品の相応する写真を示す。表面が上述の欠陥、すなわちしわおよび噴射跡を有さない。観察された表面は均質であり、欠陥がない。この段階において観察されたどんな欠陥も、通常、後の加工において欠陥を目立たせることにつながる。
【0085】
めっき処理の均一性を目視検査によって評価することができる。成形部品は、無電解ニッケルに浸漬された後、化学ニッケルによって均一にコーティングされなければならない。図2aは、白い跡がコーティングされない領域に相応する、不良な成形品を示す。これらの跡の起源は多様であり得るが、示された跡は、無機充填剤の不十分な分散の結果であり、および/または特許請求された組成物の範囲外の組成物の範囲を用いて配合および成形プロセスの間に生成されたミクロ構造の不均一性に関連づけられる。
【0086】
図2bは、細部の減衰の少ない画像のすぐれた反射を意味するすぐれたDOI(画像の明瞭さ)を示す本発明による銅めっきされた成形部品の相応する写真を示す。さらに、それは、表面外観および化学的不活性を維持したまま銅めっきの良好な付着力を有する。
【0087】
付着力は、ISO標準2409によって測定される。0の等級がすぐれているのに対し、5は弱い付着力をあらわす。図2aの場合、付着力が均一でなく、5の値が含まれ、そこにおいてはコーティングが存在しない。図2bの場合、付着力の等級は0〜1(すぐれている)である。
【0088】
表面仕上または美観。ガルバニック銅に浸漬した後の表面の品質を注意深く観察し、画像の明瞭さ(DOI)を評価する。照明下、画像の反射は、細部の減損が最小で最適でなければならない。図2aの試験体は、この試験による評価について非常に好ましくない。
【0089】
図4aおよび4bは、比較用ポリアセタール調合物および本発明によるポリアセタール調合物の銅めっきされた表面のそれぞれのSEM観察である。図4aに示された跡または帯域は、連続金属層の不十分なレベリングの結果であり、好ましくない表面の美観につながる。他方、図4bは、表面に見える人為構造がなく、均質に見え、本発明による銅めっきされた表面の改良された表面外観を反映し、もたらす。
【0090】
異なった実験が、アセタール原樹脂の粘度、安定剤の量、無機充填剤のタイプおよび量、ならびにヒュームドシリカの量を変えて行なわれる。
【0091】
試験調合物がどんな無機充填剤も含有しないとき、良好な表面仕上が得られる場合があるが付着力は全くない。
【0092】
異なったCaCO粒度分布を有するポリアセタール調合物については、0.7〜15ミクロンまでの充填剤の平均一次粒度粒子を増加させるとき、成形品上の強力な点蝕の出現によって様相が悪影響を及ぼされた。狭い粒度分布、最も好ましくは平均して0.7ミクロンの一次粒度粒子を有し、2ミクロンのトップカット(粒子の99%が2ミクロン未満の粒度を有することを意味する)を有する炭酸カルシウムによって最良の結果が得られた。
【0093】
又、好ましいCaCO含有量および粒度分布を有するアセタール調合物は、異なったレベルのポリアセタール安定剤を用いて試験された。
【0094】
図3aおよび3bは、好ましい酸エッチング(20分)後に得られた成形部品の表面のSEM観察である。両方の顕微鏡写真は、同様な含有量の炭酸カルシウム(スペシャルティ・ミネラルズ社(Specialty Minerals Inc.)から入手可能な「スーパープフレックス(superPflex)200」)を有するが異なった量の安定剤およびヒュームドシリカを有する調合物から得られた。図3aが低レベルの安定剤(0.8%)を有する調合物を示し、図3bがより高レベルの安定剤(5%)を示す。図3bに示されるように、安定剤のレベルが5%まで増加すると、金属めっきによって均一にコーティングされない大きな孔/細孔の形成の結果、表面の美観を損なう。
【0095】
図3aおよび3bのSEM顕微鏡写真を用いて表面分析を行なった。図3aの孔/細孔の平均寸法は1.7ミクロンであり、および最大寸法が5.6ミクロンである。孔の寸法分布が狭く、めっきされた層の表面様相と付着力との間の最適条件を成形品に与える。図3aにおいて、孔の総数は2337であり、孔/細孔が表面の4%を覆った。
【0096】
反対に、図3bの試料については、粒度分布はずっと広く、平均粒度粒子2.8ミクロンおよび最大21.4ミクロンである。大きな粒度の結果として、表面の上に点蝕が観察される。孔の寸法分布は広い。図3bにおいて、孔の総数は2599であり、孔/細孔は、表面の15%を覆った。この試料は、許容範囲の付着力を有するが好ましくない表面の美観を有するめっきされた物品をもたらした。
【0097】
めっきの改良された表面加工性を提供する試験された改質ポリアセタール物品の最良の実施態様としては、以下の通り、挙げられる。
a)元素の周期表の第II族の金属の酸可溶性無機塩、好ましくは、0.1〜5ミクロンおよび最も好ましくは0.1〜2ミクロンの範囲の、平均して比較的小さな寸法の粒子を有する炭酸カルシウムであり、粒子の99%が、2ミクロンより小さい(狭い粒度分布)。
b)0.1〜1%のレベルにおいて、好ましくは0.15〜0.5%の範囲において添加された、約12〜15ナノメートル(100nmよりかなり小さい)の平均一次粒度粒子を有する高度に分散されたヒュームドシリカからなる酸不溶性無機化合物。
c)硫酸、リン酸、塩酸および酢酸を含有する混合酸浴による、上述のような酸エッチング。
【0098】
これらの結果は明らかに、特許請求された発明によって選択されるパラメータによる改質ポリアセタールについてだけ本発明の有利な効果が得られることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1a】比較用ポリアセタール調合物による無電解ニッケルめっきされたポリアセタール物品上に観察された代表的な表面人為構造を示す写真である。
【図1b】比較用ポリアセタール調合物による無電解ニッケルめっきされたポリアセタール物品上に観察された代表的な表面人為構造を示す写真である。
【図1c】本発明による無電解ニッケルめっきされたポリアセタール物品の相応する写真である。
【図2a】3つの比較用成形ポリアセタール成形品上の不均一な銅めっきを示す写真である。
【図2b】本発明によって製造された銅めっきされたポリアセタール物品の相応する写真である。
【図3a】本発明によるポリアセタール調合物の成形およびエッチングされた表面のSEM写真である。
【図3b】比較用ポリアセタール調合物の成形およびエッチングされた表面のSEM写真である。
【図4a】比較用ポリアセタール調合物の銅めっきされた表面のSEM写真である。図4a上に存在する帯または跡が、反射画像の品質を低下させ、より好ましくない表面外観の成形品をもたらす。
【図4b】本発明によるポリアセタール調合物の銅めっきされた表面のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
97〜99.9重量%のポリアセタールと0.1〜3重量%の分子量5,000〜50,000の半結晶質または非晶質熱可塑性非ポリアセタール樹脂とを含むポリアセタール樹脂ブレンドと、
元素の周期表の第II族の少なくとも1つの金属の少なくとも1つの塩から選択された群からの酸可溶性粒子であって、前記酸可溶性粒子は前記ポリアセタールブレンドの2〜6重量%の量で存在し、前記酸可溶性粒子の少なくとも98%が0.1〜5マイクロメートルの粒度の範囲である酸可溶性粒子と、
ガラス粉末、カオリンおよびケイ酸塩からなる群からの酸不溶性無機粒子と
を含むことを特徴とする、酸エッチングおよびめっきされるポリアセタール物品に加工するためのポリアセタール混合物。
【請求項2】
前記酸不溶性粒子がヒュームドシリカであることを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール混合物。
【請求項3】
前記酸不溶性粒子が前記酸可溶性粒子の重量の1/5〜1/50の量で存在し、前記酸不溶性粒子の平均一次粒度が前記酸可溶性粒子の粒度の1/20〜1/100であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアセタール混合物。
【請求項4】
前記酸可溶性粒子が、前記ポリアセタールブレンドの3重量%〜5重量%の量で存在し、前記酸不溶性粒子が、前記ポリアセタールブレンドの0.1重量%〜0.5重量%の量で存在することを特徴とする請求項1、2または3のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項5】
前記酸不溶性粒子が5〜40ナノメートルの粒度の範囲(一次非凝集粒度)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項6】
前記酸不溶性粒子が10〜20ナノメートルの粒度の範囲(一次非凝集粒度)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項7】
前記酸不溶性粒子が100〜300m/gの範囲の大きな比表面積を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項8】
前記酸不溶性粒子が175〜225m/gの範囲の大きな比表面積を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項9】
前記ポリアセタールブレンドが98〜99.5重量%のポリアセタールと0.5〜2重量%の前記半結晶質または非晶質熱可塑性非ポリアセタール樹脂とを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項10】
前記半結晶質または非晶質熱可塑性非ポリアセタール樹脂が、少なくとも1つの窒素含有有機材料を含むことを特徴とする請求項9に記載のポリアセタール混合物。
【請求項11】
前記酸可溶性粒子が前記ポリアセタールブレンドの3〜5重量%の量で存在し、前記酸可溶性粒子の少なくとも98%が0.1〜2マイクロメートルの粒度の範囲であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項12】
前記酸可溶性粒子が炭酸カルシウムから製造されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物。
【請求項13】
その表面に前記ポリアセタールブレンド中の前記酸可溶性粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載されたポリアセタール混合物から製造された、酸エッチングおよびめっきされるポリアセタール物品。
【請求項14】
前記酸可溶性粒子より小さい酸不溶性粒子をさらに含み、前記酸不溶性粒子が、前記酸不溶性粒子の表面の周りの前記ポリアセタールブレンド中に定着されることを特徴とする請求項13に記載のポリアセタール物品。
【請求項15】
請求項14に記載のポリアセタール物品を酸エッチングして前記酸可溶性粒子を除去し、前記酸可溶性粒子の除去によって残された開放細孔の周りの前記ポリアセタールブレンド中に前記酸不溶性粒子を定着されたままにすることによって得られる、酸エッチングされたポリアセタール物品。
【請求項16】
請求項15に記載の酸エッチングされたポリアセタール物品をめっき触媒、無電解金属めっきおよびガルバニめっきの少なくとも1つでめっきすることによって得られることを特徴とするめっきされたポリアセタール物品。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリアセタール混合物から前記酸可溶性粒子が物品表面に存在するポリアセタール物品を製造する工程と、
前記ポリアセタール物品を酸エッチングして前記酸可溶性粒子を除去する工程と、
エッチングされた表面にめっき触媒を適用する工程と、
無電解金属めっきを適用する工程と、
ガルバニめっきを適用する工程と
を含むことを特徴とする、ポリアセタール物品の電気めっき方法。
【請求項18】
前記酸不溶性無機粒子が、前記酸不溶性粒子が前記酸可溶性粒子の重量の1/5〜1/50の量で存在し、前記酸不溶性粒子の平均一次粒度が前記酸可溶性粒子の粒度の1/20〜1/100であり、前記酸不溶性粒子が、酸で除去可能な粒子の除去によって形成されたエッチングされたポリアセタール物品中の細孔の表面の上に存在することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸不溶性粒子がヒュームドシリカであるであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリアセタール物品が、硫酸、リン酸、塩酸および酢酸から選択される少なくとも3つの酸を含有する、特に4つ全ての前記酸を含有する混合酸浴中でエッチングされることを特徴とする請求項17、18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリアセタール物品が、成形、押出または熱成形によって提供されることを特徴とする請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ポリアセタール樹脂を分子量5,000〜50,000の半結晶質または非晶質熱可塑性非ポリアセタール樹脂と、前記ポリアセタール樹脂97〜99.9重量%および前記非ポリアセタール樹脂0.1〜3重量%の量においてブレンドすることによってポリアセタールブレンドを調製する工程と、
酸可溶性粒子と酸不溶性粒子との混合物を調製する工程であって、前記酸可溶性粒子が、元素の周期表の第II族の少なくとも1つの金属の少なくとも1つの塩から選択され、前記酸不溶性粒子が、ガラス粉末、カオリンおよびケイ酸塩からなる群から選択され、前記酸可溶性粒子の少なくとも98%が0.1〜5マイクロメートルの粒度の範囲であり、前記酸不溶性粒子が前記酸可溶性粒子の重量の1/5〜1/50の量で存在し、前記酸不溶性粒子の前記粒度が前記酸可溶性粒子の粒度の1/20〜1/100である工程と、
粒子の前記混合物を前記ポリアセタールブレンド中に混合し、前記酸可溶性粒子が、前記ポリアセタールブレンドの2〜6重量%の量で存在する工程と
を含むことを特徴とする、ポリアセタール混合物の調製方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2007−521363(P2007−521363A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517118(P2006−517118)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/015071
【国際公開番号】WO2005/000950
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】