説明

めっき用ポッド及びめっき装置

【課題】 ワークに発生する不具合を効果的に低減できるめっき用ポッド及びめっき装置を提供すること。
【解決手段】 このめっき装置1は、めっき液Fを貯留するめっき槽10内に配されるポッド12に、ワークWを収容してめっき処理を行うものでる。ポッド12は、筒121と、めっき液Fを通過させ、ワークWを実質的に通過させない一対のメッシュ123とを含む。筒121の貫通空間の、貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積は、筒121の一方の端部から他方の端部に向けて同一である。また、めっき装置1は、一対のメッシュ123の一方を介してポッド12内からめっき液Fを流出させる液流動手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき用ポッド及びめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき装置の一例としてバレルめっき装置がある(例えば、下記特許文献1参照)。このバレルめっき装置は、被めっき物、通電媒介物およびめっき液を収納し回転するドラムと、このドラムの中心に設けられたセンター棒と、このセンター棒に取り付けられるカソードとを備えている。
【特許文献1】特開平9−137295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のバレルめっき装置においては、被めっき物が小さくなればなるほど、めっきが不完全に施される被めっき物が増加する傾向にある。また、ドラムの内壁には、被めっき物を効果的に攪拌するための凹凸が設けられる場合があり、被めっき物がこの凹凸に入り込んでしまう場合もある。また、回転するドラムの内壁によって被めっき物が掻き上げられるため、被めっき物に必要以上の外力が加わる場合も想定される。
【0004】
そこで本発明では、被めっき物に発生する不具合を効果的に低減できるめっき用ポッド及びめっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成するために、バレル内における被めっき物の挙動についてより詳細に検討を行った。その結果、バレル内に配された被めっき物周辺に気泡が残留し、この残留した気泡がめっき処理中にも消滅しないために不完全めっきが発生する可能性が高まっていることを見出した。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0006】
本発明に係るめっき用ポッドは、被めっき物を収容するめっき用ポッドであって、一方の端部から他方の端部まで伸びる貫通空間が形成された胴体と、胴体の両端部のそれぞれに配され、被めっき物の通過を規制する一対の篩部材と、一対の篩部材のうち一方の篩部材に配され、少なくとも一部が貫通空間に露出する電極と、を備え、貫通空間の、貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積が、一方の端部から他方の端部に向けて同一である、あるいは単純減少で変化する、あるいはこれらの組み合わせで変化することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るめっき用ポッドは、貫通空間が形成された胴体を備え、その両端部に配された篩部材を備える。そのため、これらのめっき用ポッドでは、一対の篩部材のいずれか一方を介してめっき液を流出させるので、その流出に応じて他方の篩部材を介してめっき液がポッド内に流入する。従って、ポッド内には液流が発生し、その液流によって被めっき物を舞い上げると共に、被めっき物近傍に存在する気泡が除去される。また、貫通空間の断面の断面積は、一方向に対して同一又は単純減少で変化又はこれらの組み合わせで変化するため、胴体内で液流が阻害されることがなく、さらには被めっき物が内壁に引っかかってしまうことが抑制される。その結果、ポッド内から気泡をより一層効果的に除去するとともに、めっきムラの発生を抑制することができる。また、被めっき物は液流によって舞い上がるので、被めっき物に必要以上に外力を加えずに攪拌される。
【0008】
貫通空間を画成する胴体の内壁には、貫通空間が伸びる方向に沿って稜線を形成する突起部が設けられていることが好ましい。突起部はめっき液を流出させる方向に沿って稜線を形成しているので、ポッド内に発生する液流を意図的に乱して渦流を効果的に発生させることができ、被めっき物の撹拌が促進される。
【0009】
貫通空間を画成する胴体の内壁には、胴体の一方の端部から他方の端部まで伸びる平面が形成されていることが好ましい。めっき液を流出させる方向に沿って平面部は形成されているので、ポッド内に発生する液流を意図的に乱して渦流を効果的に発生させることができ、被めっき物の撹拌が促進される。
【0010】
電極の貫通空間に露出する部分の、貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積が、電極が配された一方の篩部材から離れるにしたがって単純減少で変化することが好ましい。この場合、胴体内で電極によって液流が阻害されること、及び被めっき物が電極の陰に入ることが抑制され、被めっき物に発生する不具合をより一層効果的に低減することが可能となる。
【0011】
この場合、電極の貫通空間に露出する部分が、凸面形状を有していることが好ましい。これにより、被めっき物が電極上に堆積すること、また被めっき物が電極と接触したまま電極上に停留することが抑制され、めっき不良の発生が抑制される。さらに、電流の一箇所への集中が抑制される。
【0012】
本発明に係るめっき用ポッドは、被めっき物を収容するめっき用ポッドであって、両端部が開口した筒と、互いに対向するように筒の両端部にそれぞれ配される一対の篩部材と、一対の篩部材のうち一方の篩部材に配され、少なくとも一部が筒の内部空間に露出する電極と、を備え、筒の内部空間の、一対の篩部材の対向方向に対して垂直な断面での断面積が、対向方向に沿って同一であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るめっき用ポッドは、上記筒を備えると共に、当該筒の両端部に配された篩部材を備える。そのため、これらのめっき用ポッドでは、一対の篩部材のいずれか一方を介してめっき液を流出させるので、その流出に応じて他方の篩部材を介してめっき液がポッド内に流入する。従って、ポッド内には液流が発生し、その液流によって被めっき物を舞い上げると共に、被めっき物近傍に存在する気泡が除去される。また、筒の内部空間の上記断面積は、対向方向に沿って同一であるため、筒内で液流が阻害されることがなく、さらには被めっき物が内壁に引っかかってしまうことが抑制される。その結果、ポッド内から気泡をより一層効果的に除去するとともに、めっきムラの発生を抑制することができる。また、被めっき物は液流によって舞い上がるので、被めっき物に必要以上に外力を加えずに攪拌される。
【0014】
また、本発明に係るめっき装置は、上記めっき用ポッドと、めっき用ポッドが配されるめっき槽と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るめっき装置は、上記めっき用ポッドを備えるので、めっきムラの発生を抑制することができる。また、被めっき物は、上記めっき用ポッド内において、液流によって舞い上がるので、被めっき物に必要以上に外力を加えずに攪拌されることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被めっき物に発生する不具合を効果的に低減できるめっき用ポッド及びめっき装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面とともに、本発明によるめっき用ポッド及びめっき装置の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
本発明の実施形態であるめっき装置について説明する。図1は、本発明の実施形態であるめっき装置1の断面図である。図1に示すように、めっき装置1は、めっき液Fを貯留するめっき槽10と、めっき槽10内に配されるポッド12と、ポッド12をその内部に配するシリンダ14とを備えている。めっき槽10内であってポッド12外にはアノード22が、ポッド12内にはカソード18がそれぞれ配されている。また、めっき槽10とシリンダ14とは2系統の管路によって接続されており、それぞれの管路には第1ポンプP1と第2ポンプP2とが設けられている。
【0019】
めっき槽10は、樹脂といった絶縁材料によって直方体形状に形成され、上部が開口した有底容器である。めっき槽10の内部はめっき液Fによって満たされている。めっき槽10の底を貫通するように棒状のカソード18が設けられている。
【0020】
カソード18がめっき槽10の底から延出する部分には、アノード22が設けられている。アノード22はリング状の電極であって、カソード18を囲繞するように設けられている。
【0021】
カソード18は、その軸線周りに回転可能なように構成されている。カソード18及びアノード22は、図示しない直流電圧印加手段(直流電源、整流器)によって電圧が印加されて、それぞれ陰極及び陽極として機能している。
【0022】
シリンダ14は、めっき槽10の開口からめっき液Fに没入されている。シリンダ14は、その一端がめっき槽10の底部に当接するまでめっき液Fに没入されても、他端はめっき液Fの外に突出するように十分な長さが確保されている。また、シリンダ14のめっき槽10に没入されない方の端部は閉じられており、シリンダ14内部はめっき液Fによって満たされている。
【0023】
第1ポンプP1が設けられている管路は、めっき槽10から第1ポンプP1を経由してシリンダ14へとめっき液Fを循環させることができる。従って、第1ポンプP1を作動させている場合には、シリンダ14内においては、図1の上方から下方へとめっき液Fが流動する。
【0024】
第2ポンプP2が設けられている管路は、シリンダ14から第2ポンプP2を経由してめっき槽10へとめっき液Fを循環させることができる。従って、第2ポンプP2を作動させている場合には、シリンダ14内においては、図1の下方から上方へとめっき液Fが流動する。
【0025】
シリンダ14は、その内部にポッド12を収納するように配置されている。ポッド12について図2を参照しながら説明する。図2は、ポッド12の分解斜視図である。ポッド12は、筒121と、一対のメッシュ123(篩部材)とから構成されている。筒121は円筒形状を成している。メッシュ123は、筒121の両端に配されるものである。一方のメッシュ123にはカソード18が取り付けられており、メッシュ123を筒に配した場合に、カソード18が筒121内部に突出するように形成されている。
【0026】
メッシュ123は網状の部材であって、ポッド12内に配されるワークW(被めっき物)が実質的に通過しないように構成されている。例えば、メッシュ123の網の目を個々のワークWよりも小さく構成したり、網状部材を複数積層させることでワークWが通過できないように構成したりしてもよい。また、メッシュ123の代わりに、シート状部材や板状部材にレーザ加工などによって微細孔を形成して同様の機能を果たす部材を用いてもよい。メッシュ123をこのような構成にすることで、ポッド12内に収容されるワークW(被めっき物)は、メッシュ123を実質的に通過しない。尚、ワークWとしては、チップコンデンサ、チップバリスタ、チップインダクタ、チップビーズといった積層型電子部品が用いられる。
【0027】
カソード18は一方のメッシュ123に固定されている。従って、図示しないモータ等(回転機構)によってカソード18(回転機構)をその軸線周りに回転させると、ポッド12もその回転に応じて自転する。ポッド12内のめっき液Fには、この回転に応じて渦流が発生する。
【0028】
本実施形態においては、第1ポンプP1及び第2ポンプP2を交互に作動させることで、シリンダ14内及びポッド12内のめっき液Fを上下方向に交互に流動させることができる。この場合、めっき液Fは、メッシュ123の一方を介してポッド12から流出し、そのメッシュ123を介してポッド12内に流入するので、第1ポンプP1が設けられた管路及び第2ポンプP2が設けられた管路が液流動手段として機能する。
【0029】
液流動手段としては図1に示した第1ポンプP1と第2ポンプP2との組み合わせ以外にも様々なものが採用可能である。液流動手段を変更する観点からの本実施形態の変形例を図3及び図4を参照しながら説明する。図3は第1の変形例を示す図であり、図4は第2の変形例を示す図である。
【0030】
図3に示す第1の変形例に係るめっき装置2は、めっき液Fを貯留するめっき槽10と、めっき槽10内に配されるポッド12と、ポッド12をその内部に配するシリンダ14とを備えている。めっき槽10内であってポッド12外にはアノード22が、ポッド12内にはカソード18がそれぞれ配されている。また、めっき槽10とシリンダ14とは1系統の管路によって接続されている。
【0031】
めっき槽10、ポッド12、シリンダ14、アノード22については既に説明した通りである。めっき槽10の底を貫通するようにシャフト20が設けられており、カソード18は、このシャフト20の先端に設けられている。
【0032】
シャフト20には、スクリュー201が設けられている。スクリュー201は、シリンダ14内に位置するように設けられている。スクリュー201はシャフト20の回転に応じて回転し、その回転方向に応じてシリンダ14内におけるめっき液Fを図3の上下方向に流動させることができる。シリンダ14内はめっき液Fで満たされており、シリンダ14とめっき槽10とは管路で接続されているので、めっき液Fはめっき装置2内を循環する。従って、スクリュー201と管路が液流動手段として機能する。
【0033】
図4に示す第2の変形例に係るめっき装置2は、めっき液Fを貯留するめっき槽10と、めっき槽10内に配されるポッド12と、ポッド12をその内部に配するシリンダ14とを備えている。めっき槽10内であってポッド12外にはアノード22が、ポッド12内にはカソード18がそれぞれ配されている。
【0034】
めっき槽10、ポッド12、カソード18、アノード22については既に説明した通りである。シリンダ14は、図示しない上下動手段によって図4の上下方向に往復運動が可能なように構成されている。シリンダ14内には、ポッド12が浸漬可能な程度にめっき液Fが満たされている。シリンダ14の上下方向への往復運動に応じて、シリンダ14内のめっき液Fが図4の上下方向に流動する。従って、シリンダ14と上下動手段が液流動手段として機能する。
【0035】
引き続いて、めっき装置1〜3を用いるめっき方法について説明し、併せてめっき装置1〜3の動作についても説明する。図5は、めっき方法の手順を示す図である。図1〜5を適宜参照しながら説明する。
【0036】
まず、ポッド12を準備し(図2参照)、ポッド12の筒121内部にワークWを収容する。続いて、シリンダ14の内部にポッド12を収容し、カソード18とシャフト20とを固定する(図1、図3参照)。ポッド12及びシリンダ14をめっき槽10内に配した状態で、めっき槽10にめっき液Fを貯留する(図5の準備工程S01)。
【0037】
ステップS01の準備段階から、シリンダ14内のめっき液を流動させる(図5の液流動工程S02)。図1に示しためっき装置1では、第2ポンプP2を作動させて、シリンダ14内のめっき液Fを図1の上方向に流動させ、ワークWを舞い上げる。また、図3に示しためっき装置2では、スクリュー201を順回転させて、シリンダ14内のめっき液Fを図3の上方向に流動させ、ワークWを舞い上げる。また、図4に示しためっき装置3では、シリンダ14を図4の上方向に動かして、ワークWを舞い上げる。
【0038】
その後、ポッド12内に舞い上がったワークWを沈降させる。具体的には、図1に示しためっき装置1では、第2ポンプP2を停止させ、第1ポンプP1を作動させて、シリンダ14内のめっき液Fを図1の下方向に流動させ、ワークWを沈降させる。また、図3に示しためっき装置2では、スクリュー201を逆回転させて、シリンダ14内のめっき液Fを図3の下方向に流動させ、ワークWを沈降させる。また、図4に示しためっき装置3では、シリンダ14を図4の下方向に動かして、ワークWを沈降させる。
【0039】
このように、ポッド12内にめっき液Fが流入し、収容されているワークWがポッド12の底部に沈降してカソード18と接触する。この状態で、カソード18及びアノード22に所定の電圧を印加し、ワークWに対するめっき処理を行う(図5の流入工程、めっき工程S03)。このように、ワークWが沈降堆積した状態でめっき処理を行うので、めっき処理時にカソード18にワークWが的確に接触する。従って、通電効率を向上させることが可能となり、めっき効率が向上する。また、カソード18にめっき膜が形成されてしまうことを抑制できる。
【0040】
本実施形態では電気めっきについて例示したけれども、無電解めっき法によってめっきを行ってもよい。また、本実施形態ではポッド12内にメディア(導電性媒体)を用いていないけれども、必要に応じてこのようなメディアをワークWと共にポッド12内に投入してもよい。
【0041】
続いて、他の実施形態であるめっき用ポッド及びめっき装置について説明する。図6は、他の実施形態に係るめっき装置1の断面図である。図6に示すように、めっき装置1は、めっき液Fを貯留するめっき槽10と、ポッド12と、シリンダ14と、アノード22と、カソード18とを備えている。
【0042】
カソード18は、めっき槽10の底を貫通するように設けられたシャフト20の先端に配されている。カソード18は後述するように、突出部及び棒状の延伸部を有する電極であって、延伸部がシャフト20の軸線に沿うように設けられている。シャフト20は、その軸線周りに回転可能なように構成されており、シャフト20の回転に応じてカソード18も同調回転するように構成されている。
【0043】
ここで、ポッド12の詳細な構成について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、ポッド12の分解斜視図である。図8は、図7に示したポッド12のI−I矢印断面図である。
【0044】
ポッド12は、筒121と、上部リング122と、一対のメッシュ123(篩部材)と、下部リング124から構成されている。筒121は、円筒形状を成している。筒121は、図7に示されるように、両端部が開口している。すなわち、一方の端部から他方の端部まで伸びる貫通空間が形成された胴体である。メッシュ123は、筒121の両端部のそれぞれに配されるものである。一方のメッシュ123にはカソード18が取り付けられており、図8に示されるように、メッシュ123を筒に配した場合にカソード18が筒121内部に突出するように形成されている。すなわち、カソード18は、少なくとも一部が筒の内部空間として伸びる貫通空間に露出している。
【0045】
筒121の貫通空間の、貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積は、筒121の一方の端部から他方の端部に向けて同一である。すなわち、筒121の内壁によって画成され、筒121の両端部の対向方向に対して垂直な筒121の貫通空間の断面の断面積は、当該対向方向について同一である。筒121の両端近傍の外壁には、螺旋溝が形成されている。筒121の両端近傍とは、筒121にリング122、124を取り付けた際に、リング122,124によって覆われる領域をいう。
【0046】
メッシュ123は網状の部材であって、ポッド12内に配されるワークW(被めっき物)が実質的に通過しないように構成されている。すなわち、メッシュ123は、篩部材として、めっき液Fの通過を許容し、且つ被めっき物の通過を規制するように構成されている。
【0047】
上部リング122及び下部リング124はいずれも、筒121との間にメッシュ123を保持するための部材である。リング122、124の内壁には螺旋溝が形成されている。メッシュ123を挟み込んで、リング122,124の内壁に形成された螺旋溝と筒121の外壁に形成された螺旋溝とを螺合させることにより、リング122、124は筒121に取り付けられる。このように、メッシュ123を筒121とリング122、124とで挟み込む構造をとることによって、筒121にメッシュ123が固定される。筒121の両端にメッシュ123を配し、リング122、124を筒121の両端に螺合すると、筒121と一対のメッシュ123とによって郭定される空間が形成される。
【0048】
カソード18は、筒121の貫通空間に露出する突出部18aと延伸部18bとを有する。突出部18aは、筒121の一端に配されるメッシュ123を、当該突出部18aと下部リング124との間に挟み込むことにより固定する。カソード18の突出部18aの、筒121の貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積は、カソード18が配されたメッシュ123から離れるにしたがって単純減少で変化する。さらに、突出部18aは、角部を有さず、凸面形状を有している。
【0049】
延伸部18bは、突出部18aからポッド12外に向かって延び、シャフト20の軸線に沿うようにしてシャフト20の先端に設けられる。
【0050】
従って、図示しないモータ等(回転機構)によってシャフト20(回転機構)をその軸線周りに回転させ、その回転に応じて棒状のカソード18の延伸部18bをその軸線周りに回転させると、ポッド12もその回転に応じて自転する。ポッド12内のめっき液Fには、この回転に応じて渦流が発生する。
【0051】
図9に、カソード18が取り付けられた状態における下部リング124の斜視図を示す。図10に、カソード18が取り付けられた状態における下部リング124の上面図を示す。図11には、同じく図10における下部リング124のII−II矢印断面図を示す。
【0052】
図9に示されるように、下部リング124は、内壁に螺旋溝が形成されたリング本体部124aと、支持部124bと、取付部124cとを有する。支持部124bは、リング本体部124aの一端に位置しカソード18の突出部18aを支えるランド状部材と、当該ランド状部材から放射状に延びる複数(本実施形態では4つ)の棒状部材とからなり、メッシュ123がたわむことを抑制する構成になっている。取付部124cは、支持部124bのランド状部材からポッド12の外部に向かって延び、カソード18の延伸部18bを覆う。
【0053】
図10及び図11に示すように、下部リング124の棒状部材は、断面形状が三角形である三角柱の部材である。下部リング124は、三角柱の側面と側面との境界辺が一対のメッシュ123の対向方向で筒121内部を向くように、筒121に装着されることが好ましい。
【0054】
本実施形態においても、第1ポンプP1が設けられた管路及び第2ポンプP2が設けられた管路が液流動手段として機能する。液流動手段としては図6に示した第1ポンプP1と第2ポンプP2との組み合わせ以外にも様々なものが採用可能である。液流動手段を変更する観点からの本実施形態の変形例を図12及び図13を参照しながら説明する。図12及び図13は、上述した他の実施形態の変形例を示す図である。
【0055】
図12に示す変形例に係るめっき装置2は、めっき槽10と、ポッド12と、シリンダ14と、アノード22と、カソード18とを備える。めっき槽10とシリンダ14とは1系統の管路によって接続されている。
【0056】
シャフト20には、スクリュー201が設けられている。スクリュー201は、シリンダ14内に位置するように設けられている。スクリュー201はシャフト20の回転に応じて回転し、その回転方向に応じてシリンダ14内におけるめっき液Fを図12の上下方向に流動させることができる。シリンダ14内はめっき液Fで満たされており、シリンダ14とめっき槽10とは管路で接続されているので、めっき液Fはめっき装置2内を循環する。従って、スクリュー201と管路が液流動手段として機能する。
【0057】
図13に示す変形例に係るめっき装置3は、めっき槽10と、ポッド12と、シリンダ14と、アノード22と、カソード18とを備える。シリンダ14は、図示しない上下動手段によって図13の上下方向に往復運動が可能なように構成されている。シリンダ14内には、ポッド12が浸漬可能な程度にめっき液Fが満たされている。シリンダ14の上下方向への往復運動に応じて、シリンダ14内のめっき液Fが図13の上下方向に流動する。従って、シリンダ14と上下動手段が液流動手段として機能する。
【0058】
図6〜図13に示された実施形態におけるめっき装置1〜3を用いためっき方法は、図1〜図4に示された実施形態におけるめっき装置1〜3を用いた上記めっき方法と同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0059】
本実施形態によれば、めっき槽10内に配されたポッド12が有する一対のメッシュ123の内、上方に配置されているメッシュ123を介してめっき液Fをポッド12内から流出させるので、その流出に応じて下方のメッシュ123を介して代わりのめっき液Fがポッド12内に流入する。従って、ポッド12内には液流が発生し、その液流によってワークWが舞い上げられると共に、ワークW近傍に存在する気泡が除去される。これにより、被めっき物に発生する不具合を抑制することができる。
【0060】
また、筒121の貫通空間の、貫通空間が伸びる方向(本実施形態においては、一対のメッシュ123の対向方向)に対して垂直な断面での断面積が、一方の端部から他方の端部に向けて同一であるため、液流が筒121内でその流れを阻害されることは抑制され、ポッド12内から気泡をより一層効果的に除去することができる。従って、被めっき物に発生する不具合をより一層効果的に抑制することができる。
【0061】
また、ポッド12内のめっき液Fは入れ替えられるので、ポッド12内における金属イオン濃度の減少を抑制できる。これにより、めっきムラ(めっき膜のばらつき)の発生が低減される。
【0062】
また、ポッド12を構成する筒121の両端に一対のメッシュ123を設けているので、ポッド12をめっき液Fに投入する際にポッド12内の気泡を容易に抜くことが可能となる。また、ポッド12をめっき液Fから取り出す際には、メッシュ123を介してポッド12内のめっき液Fを抜き取ることができるので、めっき槽10外へのめっき液Fの持ち出しをより少なくできる。
【0063】
また、ワークWは液流によって舞い上がるので、ワークWに必要以上に外力を加えずに攪拌できる。特に、スクリュー201の回転や、ポッド12の自転によってポッド12内に渦流を発生させる場合には、より効果的にワークWを攪拌して舞い上げることができる。
【0064】
また、筒121の貫通空間の、一対のメッシュ123の対向方向に垂直な断面の断面積は対向方向について同一であるから、撹拌されたワークWがポッド12内の内壁に引っかかってしまうことが抑制される。ポッド12内の内壁に引っかかったワークWには十分通電されず、不完全にめっきが施されるめっきムラが発生するおそれがある。したがって、ポッド12のように、筒121がワークWの引っかかりを抑制する構造になっている場合、めっきムラの発生が好適に抑制され、めっき品質を向上することが可能となる。
【0065】
さらに、筒121の貫通空間がワークWの引っかかりを抑制する構造になっていることにより、ポッド12ではより一層効率良くワークWを撹拌することが可能となる。これにより、より一層効率良くめっき処理を行うことが可能となる。
【0066】
また、メッシュ123は、筒121とリング122、124との間に挟み込まれることによって固定されている。したがって、メッシュ123を固定するのに接着剤を用いる必要はない。そのため、ポッド12では、撹拌されたワークWが接着剤に引っかかってしまうことがない点においても、めっきムラの発生が好適に抑制される。
【0067】
また、下部リング124の支持部124bは、三角柱である。したがって、三角柱の側面と側面との境界辺がメッシュ123の対向方向で筒121内部を向くように下部リング124を筒121に装着することで、めっき液を下部リング124側から筒121外部に流出させる際に、めっき液が下部リング124の支持部124b上に停留することが抑制される。これにより、ポッド12からめっき液Fを抜き取ることが好適に行われる。
【0068】
カソード18の突出部18aの、一対のメッシュ123の対向方向に対して垂直な断面での断面積は、カソード18が配されたメッシュ123から離れるにしたがって単純減少で変化する。そのため、液流がカソード18によって筒121内でその流れを阻害されることは抑制され、撹拌されたワークWがカソード18の陰に入ってしまいそこに停留してしまうことが抑制される。その結果、めっきムラの発生が抑制され、めっき品質の向上が実現される。
【0069】
また、カソード18の突出部18aは、凸面形状を有するように形成されている。この場合、ワークWがカソード18上に堆積すること、またワークWがカソード18と接触したままカソード18上に停留することが抑制され、めっき不良の発生が抑制される。
【0070】
カソード18の先端が尖った尖頭状に形成されている場合、尖塔部分に電流が集中してしまい、めっきムラを引き起こしてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態に係るポッド12では、カソード18の突出部18aが凸面形状に形成されているため、電流の集中を抑制することができる。これにより、めっきムラの発生を好適に抑制することが可能となる。
また、ポッド12は、その構造から、洗浄及び乾燥の効率に優れている。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0072】
例えば、筒121の貫通空間を画成する筒121の内壁には、貫通空間が伸びる方向に沿って稜線を形成する突起部が設けられていてもよい。筒121の内壁に突起部を設けた変形例に係る筒125を図14に示す。図14に示す例では、筒125の内壁に等間隔で複数(本変形例では、8つ)の突起部125aが設けられている。突起部125aは、筒125の貫通空間が伸びる方向、すなわちメッシュ123の対向方向に沿って稜線を形成するように形成されている。隣り合う突起部125aは、筒125の内側から外側に向けて湾曲している内壁125bによって繋がれている。従って、筒125の外壁125cと内壁125bとの間は、厚肉部分と薄肉部分とが円周方向に沿って交互に配置されている。従って筒125は、突起部125aと湾曲している内壁125bとが交互に配置されているので、筒125が回転した場合に、ポッド12内に発生する液流を意図的に乱して渦流を効果的に発生させることができ、被めっき物の撹拌が促進される点で好適である。
【0073】
また、筒121の貫通空間を画成する筒121の内壁には、筒121の一方の端部から他方の端部まで伸びる平面が形成されていてもよい。筒121の内壁に平面部を設けた変形例に係る筒126を図15に示す。図15に示す例では、筒126の内壁に複数(本変形例では、8つ)の平面部126aが設けられている。各平面部126aは、筒121の一端から他端に向けて延びるように形成されている。各平面部126aの円周方向の幅は等しく、筒126の内壁によって画成される筒121の貫通空間の断面形状は正八角形となる。隣り合う平面部126aとその境界線126bとによって、筒126内の貫通空間は外側に突出する稜線を形成するので、筒126が回転した場合に、ポッド12内に発生する液流を意図的に乱して渦流を効果的に発生させることができ、被めっき物の撹拌が促進される点で好適である。
【0074】
また、筒121の貫通空間の、貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積が、一方の端部から他方の端部に向けて単純減少で変化してもよく(図16中の(a)を参照)、あるいは一方の端部から他方の端部に向けて同一の部分と単純減少する部分との組み合わせで変化してもよい(図16中の(b)を参照)。これらの場合であっても、上記実施形態に係るポッド12によって得られる効果を得ることができる。すなわち、液流が筒内でその流れを阻害されることは抑制され、ポッド内から気泡をより一層効果的に除去することができる。さらに、撹拌されたワークがポッド内の内壁に引っかかってしまうことが抑制され、めっきムラの発生が好適に抑制され、めっき品質の向上が実現される。加えて、より一層効率良くワークを撹拌することが可能となり、めっき処理効率のさらなる向上が可能となる。
【0075】
本実施形態では電気めっきについて例示したけれども、無電解めっき法によってめっきを行ってもよい。また、本実施形態ではポッド12内にメディア(導電性媒体)を用いていないけれども、必要に応じてこのようなメディアをワークWと共にポッド12内に投入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態であるめっき装置の構成を説明するための図である。
【図2】図1に示すポッドの分解構成図である。
【図3】図1に示すめっき装置の変形例を示す図である。
【図4】図1に示すめっき装置の変形例を示す図である。
【図5】図1に示すめっき装置を用いるめっき方法の手順を示す図である。
【図6】他の実施形態に係るめっき装置の構成を説明するための図である。
【図7】他の実施形態に係るポッドの分解構成図である。
【図8】図7に示したポッドのI−I矢印断面図である。
【図9】カソードが取り付けられた状態における下部リングの斜視図を示す。
【図10】カソードが取り付けられた状態における下部リングの上面図を示す。
【図11】カソードが取り付けられた状態における下部リングの断面図を示す。
【図12】他の実施形態に係るめっき装置の変形例の構成を説明するための図である。
【図13】他の実施形態に係るめっき装置の変形例の構成を説明するための図である。
【図14】他の実施形態に係るポッドの変形例を示す図である。
【図15】他の実施形態に係るポッドの変形例を示す図である。
【図16】他の実施形態に係るポッドに含まれる筒の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1…めっき装置、10…めっき槽、12…ポッド、14…シリンダ、16…ピストン、18…カソード、20…シャフト、22…アノード、121、125、126…筒、122…上部リング、123…メッシュ、124…下部リング、F…めっき液、W…ワーク。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物を収容するめっき用ポッドであって、
一方の端部から他方の端部まで伸びる貫通空間が形成された胴体と、
前記胴体の前記両端部のそれぞれに配され、被めっき物の通過を規制する一対の篩部材と、
前記一対の篩部材のうち一方の篩部材に配され、少なくとも一部が前記貫通空間に露出する電極と、を備え、
前記貫通空間の、前記貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積が、前記一方の端部から前記他方の端部に向けて同一である、あるいは単純減少で変化する、あるいはこれらの組み合わせで変化することを特徴とするめっき用ポッド。
【請求項2】
前記貫通空間を画成する前記胴体の内壁には、前記貫通空間が伸びる方向に沿って稜線を形成する突起部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のめっき用ポッド。
【請求項3】
前記貫通空間を画成する前記胴体の内壁には、前記胴体の前記一方の端部から前記他方の端部まで伸びる平面が形成されていることを特徴とする請求項1記載のめっき用ポッド。
【請求項4】
前記電極の前記貫通空間に露出する部分の、前記貫通空間が伸びる方向に対して垂直な断面での断面積が、前記電極が配された前記一方の篩部材から離れるにしたがって単純減少で変化することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載のめっき用ポッド。
【請求項5】
前記電極の前記貫通空間に露出する部分が、凸面形状を有していることを特徴とする請求項4記載のめっき用ポッド。
【請求項6】
被めっき物を収容するめっき用ポッドであって、
両端部が開口した筒と、
互いに対向するように前記筒の前記両端部にそれぞれ配される一対の篩部材と、
前記一対の篩部材のうち一方の篩部材に配され、少なくとも一部が前記筒の内部空間に露出する電極と、を備え、
前記筒の内部空間の、前記一対の篩部材の対向方向に対して垂直な断面での断面積が、前記対向方向に沿って同一であることを特徴とするめっき用ポッド。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項記載のめっき用ポッドと、
前記めっき用ポッドが配されるめっき槽と、を備えることを特徴とするめっき装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−56360(P2007−56360A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91457(P2006−91457)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)