めっき用導電性基材、その製造法、導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた電磁波遮蔽部材
【課題】導電性及び光透過性を有するようにパターニングされた導体層パターン付き基材を転写法を用いて生産性よく製造するためのめっき用導電性基材及びそのような導電性基材を用いた導体層パターン付き基材の製造法を提供する。
【解決手段】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部2を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2層以上の絶縁層8が形成されており、その絶縁層8の全部若しくは一部が2層以上からなり、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部2に絶縁層8を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材1。この基材上にめっきにより金属を析出させ、これを基材フィルムに転写する。
【解決手段】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部2を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2層以上の絶縁層8が形成されており、その絶縁層8の全部若しくは一部が2層以上からなり、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部2に絶縁層8を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材1。この基材上にめっきにより金属を析出させ、これを基材フィルムに転写する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき用導電性基材、その製造法、電性に優れかつ光透過性を有するようにパターニングされた導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた電磁波遮蔽部材に関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設、ホール、病院、学校、企業ビル、住宅等の壁面、ガラス窓、樹脂パネル、電磁波を発生するディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する方法は、従来種々提案されている。例えば、被遮蔽面上に電磁波遮蔽塗料を全面塗布する方法、被遮蔽面上に金属箔を貼り合わせる方法、金属めっきされた繊維メッシュを樹脂板に熱ラミネートしてなる電磁波遮蔽シートを、被遮蔽面に貼り合わせる方法、導電性繊維をメッシュ状に編んだものを被遮蔽面に貼り合わせる方法等が一般的に行われている。
【0003】
これらのうち、透明ガラス面、透明樹脂パネル面、陰極線管(CRT)やプラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する場合においては、電磁波遮蔽用部材がなるべく薄いことが要求されるとともに、光透過性(透明性)と、これに相反する電磁波遮蔽性とをバランスよく両立させることができるものとして、金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材が主流になっている。
【0004】
金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材の製造法として、特許文献1にはメッシュ状に金属電着が可能な電着基板上に金属電解液を使用して金属を電着し、接着剤を介して電磁波遮蔽基板に接着転写して電磁波遮蔽板を作製する方法(以下、転写法という)が記載されている。上記の電着基板は、金属板等の導電性基板の上に、電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ−ンと逆のパターンを形成し、この結果、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製される。特許文献2には、また、絶縁層支持体上に凸状の導電性メッシュ層を形成した電着基板を用いる方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、電子部品の回路パターンやセラミックコンデンサの電極パターンを作製するための金属層転写用ベースシートが開示される。金属層転写用ベースシートは、ベース金属層および電気絶縁層を備え、前記ベース金属層の表面には、転写金属層を電解めっきにより形成するための凸状パターンが形成されており、前記電気絶縁層が、前記ベース金属層の表面における前記凸状パターンが形成されていない部分に、形成されているものである。金属層転写用ベースシートのさせ製法法としては、まず、ベース金属層の表面に、ドライフィルムレジストなどを用いてエッチングレジストを凸状パターンと同一パターンで形成し、エッチングレジストで覆われず露出しているベース金属層の表面をエッチングして溝を形成し、この後、エッチングレジストを除去し、エッチングされたベース金属層の全表面に電気絶縁層を形成し、次いで、凸状パターンが露出するまで電気絶縁層を研磨する方法が開示される。このとき、電気絶縁層の表面とベース金属層の凸状パターンの表面は同一平面上に配置され面一となる。また、その作製方法の他の例として、めっきレジストからなる電気絶縁層を、ベース金属層の表面に、ドライフィルムレジストなどを用いて凸状パターンと逆パターン(反転パターン)で形成し、電気絶縁層の間から露出するベース金属層の表面に、電解めっき金属層を凸状パターンで形成するが、このとき、電解めっき金属層の厚みを、電気絶縁層よりも厚くする方法が記載される。電解めっき金属層の表面を、電気絶縁層の表面よりも高く形成することによって、凸状パターン上に電気めっきにより形成された転写金属層を粘着シートに転写するときに、上記電気絶縁層がこの粘着シートに損傷を与えることを防止することができる旨記載される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−26980号公報
【特許文献2】特開2004−186416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の転写法は、電磁波遮蔽部材の作製に当たりコスト低減をはかることができる方法として期待できる。電着基板は、金属板等の導電性基板の上に、電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ−ンを形成し、この結果、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製されている。この電着基板を用いた場合、数回〜数十回程度の繰り返し使用は可能であるが、数百回〜数千回繰り返し使用が出来ず量産レベルにはならないという問題がある。これは、電着基板上のメッシュパターンを形成する絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうためである。
また、特許文献1には、絶縁層支持体上に凸状の導電性メッシュ層を形成した電着基板を用いる方法が記載されているが、この方法によれば、実際は、導電性メッシュの側面にも金属が電着され、このことがメッシュ状電着金属層の接着転写に対する抵抗となり、剥離ができなかったり、剥離できたとしてもメッシュパターンに折れが発生し、電磁波シールド性が低下するといった不良が起こるという問題があることを、本発明者らは確認した。
【0008】
特許文献2において、電気絶縁層の表面とベース金属層の凸状パターンの表面が同一平面上に配置され面一となっている金属層転写用ベースシートを用いて凸状パターン上に形成された転写金属層を粘着シートに転写する場合、特許文献1についての上記説明と同様に、電着基板上の電気絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうという問題がある。
また、特許文献2において、電解めっき金属層からなる凸状パターンの表面を電気絶縁層の表面よりも高く形成した金属層転写用ベースシートを用いて凸状パターン上に形成された転写金属層を粘着シートに転写する場合、特許文献1についての上記説明と同様に、凸状パターンの側面にも転写金属層がめっきされ、このことが転写金属層の接着転写に対する抵抗となり、転写金属層を凸状パターンから剥離ができなかったり、剥離できたとしてもメッシュパターンに折れが発生し、電磁波シールド性が低下するといった不良が起こるという問題がある。さらに、凸状の導電性メッシュ層に析出した金属を転写する際に、電気絶縁層と凸状パターンの表面の高さの差が、最大でも数μm程度である場合には、転写用の接着フィルムに転写する際の圧力や、基材のたわみ等により、特許文献1についての上記説明と同様に、電着基板上の電気絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑み、導電性及び光透過性を有するようにパターニングされた導体層パターン付き基材を転写法を用いて生産性よく製造するためのめっき用導電性基材及びその製造法を提供するものである。また、本発明は、そのような導電性基材を用いた導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた電磁波遮蔽部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、次のものに関する。
1.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2層以上の絶縁層が形成されており、その絶縁層の全部又は一部が2層以上からなり、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材。
2.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2種類以上の絶縁層が形成されており、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材。
3.絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である項1又は2のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
4.凸部の間隔が100μm〜1000μmである項1〜3のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
5.一の絶縁層が炭素を主成分とする材料であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
6.第一の絶縁層がダイヤモンドライクカーボン(DLC)から成ることを特徴とする項5に記載のめっき用導電性基材。
7.導電性基材と絶縁層の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物あるいは炭化物の層を介在させてなる項6に記載のめっき用導電性基材。
8.第二の絶縁層が第一の絶縁層の微小の穴を塞ぐように形成されていることを特徴とする項1〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
9.第二の絶縁層が有機物を塗布してなることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
10.第二の絶縁層が電着塗料であることを特徴とする項1〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
11.第二の絶縁層が絶縁性の無機物を塗布してなることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
12.回転体(ロール)又は回転体(ロール)に巻き付けられるものである項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
13.フープ状である項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
14.凸部の導電性基材の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなっている項1〜13記載のめっき用導電性基材。
15.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30°〜80°に相当する項14記載のめっき用導電性基材。
16.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数1】
を満足する項14記載のめっき用導電性基材。
17.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に絶縁層をその全部若しくは一部が2層以上となるように、又は、2種類以上となるように形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、形成された絶縁層の上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去することにより凸部上端から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
18.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に中間層及びその表面に第一の絶縁層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる絶縁層を形成し、その上に第二の絶縁層を形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、DLCの層上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去し、さらにその下の中間層を除去することにより凸部上面から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
19.中間層をドライエッチングあるいは機械研磨により除去する項18に記載のめっき用導電性基材の製造法。
20.凸部の先端付近に形成されたマスク層の除去が、機械的な研磨により行われることを特徴とする項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
21.ドライエッチングが、少なくとも酸素プラズマを用いたエッチングを含む項17〜20のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
22.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部先端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材が、導電性基材の表面に所定のパターンでレジストマスクを形成する工程及びその後導電性基材にエッチングを施す工程を行うことにより作製されたものである項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
23.導電性基材表面に、凸部の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなるように導電性基材をエッチングする項22記載のめっき用導電性基材の製造法。
24.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30°〜80°に相当する項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
25.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数2】
を満足する項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
26.項1〜16のいずれかに記載のめっき用導電性基材上に電気めっきまたは無電解めっきにより金属を析出させる工程及び上記導電性基材の凸部の上面に析出させた金属を別の基材に転写する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
27.別の基材が、接着性を有する項26記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
28.別の基材が表面に接着剤層を有する項27に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
29.凸部の導電性基材の露出部分に析出させた金属を別の基材に転写する工程の前に、導電性基材の凸部の導電性基材の露出部分に析出された金属パターンを黒化処理する工程を含む項26〜28のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
30.項26〜29のいずれかに記載の製造方法を行った後、別の基材に転写された金属パターンを黒化処理する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
31.項26〜30のいずれかに記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
32.項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
33.項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明のめっき用導電性基材は、凹部に絶縁層を有し、その絶縁層が、凸部上端より特定の高さより低く設けられ、絶縁層最下部からの高さが一定以上であることにより、繰り返し転写した場合の絶縁層の剥離の問題を解決し、めっき用導電性基材の寿命を永くすることができる。
また、本発明のめっき用導電性基材は、絶縁層のうちの少なくとも一つをDLCからなる絶縁層とすることにより、上記寿命をさらに永くすることができる。中間層により導電性基材と絶縁層の間の密着性を向上させることができ、これにより、めっき用導電性基材の寿命を、さらに、確実に、寿命を長くすることができる。
さらに、本発明の第二の絶縁層の存在は、第一の絶縁層に存在するピンホールを埋めることにより、不要な部分への金属の析出及びその転写に起因する導体層パターン付基材の外観不良を防止することができる。
【0012】
本発明のめっき用導電性基材の製造法によれば、上記のめっき用導電性基材が容易に製造でき、特に、絶縁層上のマスク層を機械研磨により除去すること、絶縁層及び場合によりその下の中間層を酸素プラズマでドライエッチングすることにより除去し、精度良く製造することができる。中間層は機械研磨により行うこともできる。
本発明の導体層パターン付き基材の製造によれば、光透過性に優れた導体層パターン付き基材が容易に製造でき、また、電磁波シールド性又は導電性に優れた導体層パターン付き基材を容易に製造できる。さらにまた、このような導体層パターン付き基材を生産効率よく製造できる。
【0013】
本発明における電磁波遮蔽部材は、特定の導体層パターンを使用することにより、光透過性及び電磁波シールド性に優れ、また、生産効率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るめっき用導電性基材に用いられる導電性材料は、その表面に電気めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが特に好ましい。また、その基材は、その表面に電気めっきにより形成された金属層を接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層が剥離しやすいものであることが好ましい。このような導電性基材の材料としてはステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料、ニッケルなどのめっき剥離性のよい材料からなることが特に好ましい。
【0015】
上記の凸部が形成されている導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、シート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。
【0016】
上記導電性基材の凸部は、導体層パターン付き基材における導体層パターンに対応するものであり、その導体層パターンは、最終的に電磁波遮蔽部材を作製したときの電磁波シールド層に対応するものである。この凸部に対する凹部の幾何学図形(凸部によって描かれる平面形状としての凹部の幾何学図形)としては、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などを組み合わせた模様であり、これらの単位は、単独で又は2種類以上組み合わせて繰り返されることが可能である。
【0017】
電磁波遮蔽性の観点からは三角形が最も有効であり、可視光透過性の点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど導体層パターンの開口率が上がる。可視光透過性の点から開口率は50%以上が必要とされ、導体層パターンの開口率は50%以上であることがさらに好ましい。導体層パターンの開口率は、電磁波遮蔽材の有効面積(例えば、上記の幾何学図形が描かれている範囲の面積等電磁波遮蔽に有効に機能する範囲の面積)に対するその有効面積から導電層で覆われている面積を引いた面積の比の百分率である。
【0018】
導電性基材上に凸部に対する凹部の幾何学図形を形成する方法としては、表面が滑らかな導電性基材、例えば、平板状の導電性基材などに対して、上記の幾何学図形からなる凹部を形成するように加工する方法が最も簡便である。
図1は、凸部に対する凹部の幾何学図形が形成されている導電性基材の一例を示す斜視図である。図1で例示しているのは凹部2の幾何学図形としては正方形であり、導電性基材1に凹部2の幾何学図形が正方形になるように凸部3が格子状に形成されている。
図2及び図3は、図1のA−A断面を示し、図2では(a)〜(d)の4種、図3では(e)の1種を示す。凹部2及び凸部3の断面形状は適宜決定され、凸部3の側面5が、斜面((a)、(b)の場合)、曲面((c)の場合)、段階的斜面((d)の場合)等任意である。また、凹部2の底面も種々の形状がある。これらは、すべて、凸部の側面が少なくとも先端部分で傾斜角を有する。この傾斜角は、図中のαで、30ー〜80ーに相当することが好ましく、50ー以上であることがより好ましい。
凸部3の上面4は必ずしも平面でなくてもよく、上面全体又は上面の一部が平面から変形した形状であっても良いが、この場合、できるだけなめらかに湾曲していることが好ましい。ここで、凸部の先端部分とは、凸部の最先端から0.5〜5μm低い位置までの凸部の表面を意味する。
角度αの基準面は、凸部の上面又は水平面若しくは垂直面である。元の導電性基材として(ほぼ)均一な厚さのもの使用し、この一面に凸部パターンを施した場合には、他面を基準面とすることもできる。
また、断面観察の試料を水平面又は垂直面に載置又は固定し、これを観察することもできる。水平面又は垂直面は、適当な台などを使用して設定できる。
また、凸部を有する導電性基材の上にたわまない平板をのせてこの平板の面を基準面とすることもできる。また、導電性基材が円筒である場合は、その円筒より大きな断面が真円の円筒(基準円筒)を用意し、基準円筒を横にして、基準円筒の中に導電性基材を通してこれらの円筒を重ね、基準円筒の各断面円の頂点が水平になるようにし、この円筒の頂点に接する接面を基準面とすることもできる。
具体的には、導電性基材の断面の観察は、顕微鏡の倍率を適当にして、凸部の上面が観察できるようにし、導電性基材の他面(表面)が観察できるようにし、あるいは、基準となる物体が観察できるようにして基準面を確認し、適宜写真撮影後倍率を高くして詳細な断面(場合により倍率を低くして断面)を観察し、写真撮影することにより行い、角度αに関する測定を行うことができる。基準面の確認に際しては、定規等の基準になるものを同時に写し込むとよい。
以上で説明した基準面は、厚さ、高さ及び幅の測定の基準面にすることもできる。また、別の基材の表面は多くの場合変形することがなく、基準面として採用しやすい。
これに対し、図3に(e)として示すように凸部の側面5が垂直面の場合もあり得る。
【0019】
導電性基材に形成した凸部の先端部分の幅及びその間隔は、導体層パターンの開口率を50%以上とするために、凸部の先端部分の幅が1μm〜40μm、凸部の先端部分の中心間隔(ラインピッチ)が100μm〜1000μmであることが好ましい。
本発明おいて、凸部の先端部分の中心間隔(ラインピッチ)は、パターンが複雑な図形であったり、複数の図形の組み合わせであったりして簡単に決定できない場合は、パターンの繰り返し単位を基準としてその面積を正方形の面積に換算し、その一辺の長さであると定義する。
【0020】
導電性基材に形成した凸部3の高さを、凹部2の最も窪んだ部分から凸部3の先端までの高さと規定する。凸部3の高さは、11μm以上が好ましい。それは、凹部に絶縁層を形成しても凹部が十分な深さを有するためである。また、凸部3の高さの上限は、110μmが好ましい。凸部の高さを大きくしていくと、アスペクト比が大きくなるため、加工が難しくなり、加工費も高くなる。このことから、凸部の高さは60μm以下であることが特に好ましい。
【0021】
導電性基材上に凸部を形成させる方法としては、次のような方法をあげることができる。
(1)導電性基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)に、直接レーザ光を照射し、凹部を形成し、導電層パターンに対応した凸部を形成する方法、
(2)フォトリソグラフ法又は印刷法によって、導電性基材に光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂により幾何学図形状のパターン(レジストパターン)を形成する工程を行なった後、導電性基材をエッチングする方法、
(3)彫刻により導電性基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)を掘削する方法などがある。
導電性基材の材質が硬い場合、直接加工するには上記(1)方法(レーザ加工法)または(2)の方法(エッチング法)などを用いることが好ましいが、銅などの柔らかく加工性に優れた材料を用いる場合は、上記(3)の方法(彫刻法)により容易に加工することもでき、このとき、加工後に、クロム等の硬質のめっきを表面に施して、強度を上げることができる。
【0022】
上記(2)の方法において、印刷法を用いる場合には、レジストパターンの印刷方法としては様々な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凸版オフセット印刷、凸版反転オフセット印刷、凹版印刷、凹版オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いることができる。レジストとしては光硬化性又は熱硬化性の樹脂が使用できる。
また、フォトリソグラフ法を用いる場合には、ドライフィルムレジストなどをラミネートし、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来るし、液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥あるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来る。光硬化性の樹脂にマスクを介して活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。枚葉で版のサイズが大きい場合、あるいはロール・トゥ・ロール(Roll−to−Roll)で作製する場合などはドライフィルムレジストをラミネートしてマスクを介して露光する方法が生産性の観点からは好ましく、めっきドラムなどに直接加工する場合にはドライフィルムレジストを貼り合わせるあるいは液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザーなどでダイレクトに露光する方法が好ましい。
また、上記(2)の方法における導電性基材のエッチングは、エッチング液を用いて行うことができる。エッチング液としては導電性金属の材質によって様々な種類があり、それぞれの金属に対してエッチング液が市販されているのでそれらを使用することができる。例えば、導電性金属がステンレスであれば、塩化第二鉄を用いることが一般的であり、チタンであればふっ酸系のエッチング液がよく用いられる。ステンレスのエッチングに関しては、塩化第二鉄の比重が40°Be(ボーメ)〜60°Be(ボーメ)の範囲の液が好んで用いられる。比重が低いとエッチングスピードは速いが、サイドエッチングが大きくなるため、凹部が浅くなる傾向にあり、逆に比重が高いと、エッチングスピードは遅いが、サイドエッチングが少なく、凹部が深くなる傾向にある。したがって、エッチング液の比重は、45°Be(ボーメ)〜50°Beであることがさらに好ましい。また、エッチング温度は、低いとエッチンスピードが低下し生産性が低下するため、40℃以上であることが好ましい。さらに、エッチング温度が60℃を超えると、エッチング液の腐食性が大きくなるため、エッチング槽をチタン製にする等設備投資が大きくなるため、60℃以下であることが好ましい。
残存するレジストは、導電性基材のエッチング後に、剥離液等を使用して剥離することができる。
【0023】
本発明におけるめっき用導電性基材は、その凹部がその一部を残し絶縁層で被覆されている。
めっき用導電性基材にめっきした際、めっきは等方的に生長するため、凸部露出部分の近傍の絶縁層に覆い被さるように析出する。絶縁層に覆い被さっためっきは、剥離転写する度に毎回、絶縁層に応力がかかる原因となる。従って、凹部全面に絶縁層が形成されている場合、転写時に絶縁層にかかる応力は、凸部露出部分の近傍が最も大きいので、凸部の先端部分を露出させることで、剥離の際に絶縁層にかかる応力を低下させることができ、結果的に凹部が絶縁層で被覆されているめっき用導電性基材の寿命を向上させることができる。凸部の先端部分の露出が小さすぎると、寿命向上の効果が小さく、大きすぎると側面に深くめっきが析出し、転写不良が発生することがあるので、露出している凸部の先端部分は、凸部最先端から、0.5〜5μm低い位置までであることが好ましく、0.5〜3μm低い位置までであることが更に好ましい。
【0024】
また、凸部パターンの寿命を長くするためには、凸部の露出部分に析出した金属を別の基材に転写する際に、その別の基材の接着面と導電性基材の凹部に形成されている絶縁層の接触を低減させることが好ましい。したがって、絶縁層を施した後の凸部の高さが、十分であることが好ましい。絶縁層の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなるため作業効率が低下する。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層と導電性基材の密着性が低下すると共に、ピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。
【0025】
絶縁層を有するめっき用導電性基材の構造を、図面を用いて説明する。図4は、本発明における凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の一例を示す断面図である。ただし、凹部の形状は、図2(c)で記載されているもので説明する。図4において、(a)、(b)及び(c)の3形態を示すが、いずれにおいても、導電性基材1は、凸部3に対し凹部2を有する。凹部2には絶縁層6が形成されており、凸部の側面5に沿って絶縁層6が形成されているが、凸部3の先端部分には形成されておらず、従って、凸部の先端部分は露出している。
図中h′は、前記した凸部の高さである。hは凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さ(以下、「絶縁高さ」という)である。tは絶縁層の厚さを示す。凸部の高さh′は、11μm〜110μmが好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。絶縁高さhは、10〜100μmであることが好ましく、tは、h′がhより小さくなるように決定されるが、10μm以下が好ましく、特に、凸部3の側面5において、少なくとも絶縁層の端の部分では厚さが1〜10μmであることが好ましい。さらに、凸部の先端部分は、露出させる。凸部の先端部分の露出の程度は、幅dが1〜40μmであることが好ましく、凸部の最先端からの距離(高さ方向)sは、0.5〜5μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることが更に好ましい。この距離sのために、剥離の際に絶縁層にかかる応力を低減することができる。
絶縁層は、薄膜絶縁層であることが好ましく、強度の不均一性をなくすために均一な厚さであることが好ましい。
図5は、本発明における凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の一例を示す断面図である。
図5に示すように、凸部の側面が垂直面の場合も上記の態様で凹部に絶縁層が施され、しかも、凸部の先端部分が露出しているのであれば、好ましい態様として使用できる。
絶縁高さhが低すぎると、転写の際に転写用基材が導電性基材に接触して転写用基材を傷つけたり、転写用基材の接着面が導電性基材に設けた絶縁層に接触しやすくなって絶縁層に剥離応力がかかるため、繰り返し使用した際に絶縁層が剥離することがある。
【0026】
図6は、本発明における導電性基材の凸部の先端部分の近辺の一例を示す断面図である。図6中、凸部3の先端部分は露出しており、それより下の側面5は絶縁層6で覆われている。凸部3の少なくとも露出部分は先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっているのが好ましい。凸部の露出部分は、絶縁層の端付近、例えば、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)との高さ方向の距離にh10対する第1の位置と第2の位置との幅方向の距離d10との関係(図6で示すところの高さh10に対する幅d10の関係)d10/h10が、角度で30°〜80°に相当することが好ましく、50°以上であることがより好ましい。
また、d10は
【数3】
であることが好ましく、d10は0.839×h10以上であることがより好ましい。
図6(a)では、導電性基材の凸部3として、断面が台形上のものとして模式的に図示したが、(b)に示すように凸部3の表面が凸凹であってもよい。また、絶縁層の表面は、(a)では平面の組み合わせとして模式的に図示されているが、これも(b)に示すように凹凸のある面の組み合わせであってもよい。なお、図6では、上下方向を強調して引き延ばし気味に図示してある。
また、図6中、前記第2の位置は、先端部分の側面に位置するように図示されているが、場合により、第2の位置が凸部の上面に位置していてもよい。
【0027】
上記のように凸部の側面が傾斜を有していると、そうでないときよりも、めっき用導電性基材の凸部の露出部分に電気めっきにより析出しためっき(金属)をより容易に、剥離でき、転写が円滑に行われる。
また、導電性基材にめっきを施すと、めっきが等方的に生長するため、導電性基材の凸部側面も露出しているとそこにもめっきが析出するが、転写の際に、転写用基材の接着面をめっきに接触させた後転写用基材を剥離すると、めっき層には、斜め方向の応力がかかった場合には、凸部の角度が80°を超えると、剥離(転写)の際に抵抗が大きくなりすぎて、転写不良が発生することがありうる。このことから、凸部の角度は30°〜80°の範囲であることが好ましく、50°〜80°であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明で用いられる絶縁層のための絶縁材料は、金属との密着性が高く、耐薬品性が強い材料が好んで用いられる。電気めっきもしくは無電解めっきの工程では、前処理液やめっき液に浸漬されるため、耐酸性と耐アルカリ性双方に強い材料が特に好ましい。このような樹脂としては、たとえば、熱硬化性樹脂としては、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等が用いられ、これらは自己硬化性のものである(硬化触媒を使用してもよい)。
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものが使用できる。このようなものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。絶縁層の形成方法としては、例えば、刷毛塗りや、スプレー塗装、さらには、ディッピングした後にスキージやブレード等で樹脂を掻き取った後に乾燥させるなどの方法が挙げられる。
【0029】
さらに、絶縁材料としては、皮膜の均一性や、形成の簡便さ、さらに環境に対する負荷が少ないことから、電着塗料を用いてもよい。
電着塗料は、それ自体既知のカチオン型及びアニオン型のいずれでも使用でき、ここでは、使用できる電着塗料の一例を示す。
カチオン型電着塗料には、塩基性アミノ基をもつ樹脂のペーストを作製し、これを酸で中和、水溶化(水分散化)してなる陰極析出型の熱硬化性電着塗料が包含される。カチオン型電着塗料は前記導電性基材(被塗物)を陰極にして塗装される。
塩基性アミノ基をもつ樹脂は、例えば、ビスフエノール型エポキシ樹脂、エポキシ基(またはグリシジル基)含有アクリル樹脂、アルキレングリコールのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリブタジエンならびにノボラツクフエノール樹脂のエポキシ化物などのエポキシ基含有樹脂のエポキシ基(オキシラン環)にアミン化合物を付加したもの、塩基性アミノ基をもつ不飽和化合物(例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−ビニルピラゾール、N−ジエチルアミノエチルアクリレートなど)を重合させたもの、第3級アミノ基含有グリコール(例えば、N−メチルジエタノールアミン)をグリコールの一成分とするグリコール成分とポリイソシアネート化合物との反応物、さらに、酸無水物とジアミン化合物との反応でイミノアミンが生成することによって、樹脂へアミノ基を導入したものなどがある。ここで、上記したアミン化合物としては、塩基性アミン化合物であって、脂肪族、脂環式もしくは芳香脂肪族系の第1級もしくは第2級アミン、アルカノールアミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン化合物が挙げられる。
また、カチオン電着塗料には、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、ブロツク化したポリイソシアネート化合物がよく知られているが、塗膜を加熱(約140℃以上)するとブロツク剤が解離して、イソシアネート基が再生し、上記の如きカチオン性樹脂中の水酸基などのイソシアネート基と反応性の基に対し架橋反応し硬化する。
さらに、カチオン型電着塗料には、顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料など。顔料の配合量は樹脂固形分100重量部あたり40重量部以下が好ましい)、親水性溶剤、水、添加剤などを必要に応じて配合することができる。
カチオン型電着塗料は、その固形分濃度を約5〜40重量%となるように脱イオン水などで希釈し、pHを5.5〜8.0の範囲内に調整することが好ましい。このようにして調製されたカチオン型電着塗料を用いてのカチオン電着塗料は、通常、浴温15〜35℃、負荷電圧100〜400Vの条件で被塗物を陰極として行うことができる。塗膜の焼付硬化温度は一般に100〜200℃の範囲が適している。
【0030】
アニオン型電着塗料は、カルボキシル基を持つ樹脂をベースとし、これを塩基性化合物で中和、水溶化(水分散化)してなる陽極析出型の電着塗料が好ましく、前記導電性基材(被塗物)を陽極として塗装される。
カルボキシル基を持つ樹脂としては、乾性油(あまに油、脱水ひまし油、桐油など)に無水マレイン酸を付加したマレイン化油樹脂、ポリブタジエン(1,2−型、1,4−型など)に無水マレイン酸を付加したマレイン化ポリブタジエン、エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルに無水マレイン酸を付加した樹脂、高分子量多価アルコール(分子量約1000以上で、エポキシ樹脂の部分エステルおよびスチレン−アリルアルコール共重合体なども含まれる)に多塩基酸(無水トリメリツト酸、マレイン化脂肪酸、マレイン化油など)を付加して得られる樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(脂肪酸変性したものも含む)、カルボキシル基含有アクリル樹脂、グリシジル基もしくは水酸基を含有する重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物を用いて形成された重合体もしくは共重合体に無水マレイン酸などを付加せしめた樹脂などがあげられ、カルボキシル基の含有量が、一般に、酸価で約30〜200の範囲のものが適している。
【0031】
また、アニオン型電着塗料には、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、ヘキサキスメトキシメチルメラミン、ブトキシ化メチルメラミン、エトキシ化メチルメラミンなどの低分子量メラミン樹脂を必要に応じて使用することができる。さらに、アニオン型電着塗料には顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料など。顔料の配合量は樹脂固形分100重量部あたり40重量部以下とすることが好ましい)、親水性溶剤、水、添加剤などを必要に応じて配合することができる。
【0032】
アニオン型電着塗料には、固形分濃度を約5〜40重量%に脱イオン水などで調整し、pH7〜9の範囲に保ってアニオン電着塗装に供することが好ましい。アニオン電着塗装は常法に従って行うことができ、例えば、浴温15〜35℃、負荷電圧100〜350Vの条件で、被塗物を陽極として実施することができる。アニオン電着塗膜は原則として100〜200℃、好ましくは140〜200℃の範囲に加熱して硬化せしめられるが、空気乾燥性の不飽和脂肪酸で変性した樹脂を用いた場合には室温で乾燥させることもできる。
【0033】
さらに、本発明で用いられる絶縁層として、絶縁層が炭素を主成分とする材料、たとえば、ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC薄膜とする)のうち、絶縁性を有するものにて形成させることもできる。DLC薄膜は、酸素プラズマでエッチングすることが可能であり、さらに、耐薬品性にも優れているため、特に好ましい。
【0034】
DLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波によるプラズマCVD法が特に好ましい。
上記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香属炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。上記ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして上記した炭素源と水素ガスとの混合物、上記した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0035】
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、金属板等の導電性基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
上記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
中間層は、前記したようなドライコーティング法により形成させることができる。
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
【0036】
本発明のめっき用導電性基材に施す絶縁層は、その全部又は一部を2層以上とするか又は2種類以上の層からなるようにする。これにより、絶縁層が一層である場合の塗装欠陥を容易に防止することができる。塗装欠陥の例としては、絶縁層のピンホール、塗装ムラがある。絶縁層に塗装欠陥があると、めっき用導電性基材にめっきしたとき、その欠陥部分からめっきが成長し、不必要な金属が析出することがある。2層以上又は2種類以上の絶縁層の材質は、互いの特性を生かすために、2種以上の別種の材料であることが好ましい。
【0037】
例えば、DLC膜はドライコーティング法で成膜するため、ピンホールの発生を防止するには膜厚を厚くすることが好ましいが、そうするとDLCの成膜に時間がかかり、成膜コストも増大する。また、膜厚を厚くしてもピンホールが発生することがある。
絶縁層中にピンホールが存在すると、導電性基材にめっきを施した際にそこからもめっきが析出する。ピンホールから析出しためっきが即座に転写工程において、転写用基材に転写されることは限らないが、めっき及び転写を複数回繰り返すと次第にピンホールから析出しためっきが成長し、ある程度大きくなったところで転写される。ピンホールに析出しためっきは本来所望のパターン以外の部分に析出しためっきであるため、得られた導体層パターン付基材の外観不良となるため好ましくない。
このピンホール発生問題を回避するため、DLC膜の上に同種又は別種の膜を積層することができる。互いの特性を生かすために、別種の膜を積層することが好ましい。
積層する膜は、塗料などを用いて有機被膜をDLC膜の上からコートしても良い。そのための絶縁材料は、DLC膜との密着性が高く、耐薬品性が強い材料が好んで用いられる。電気めっきもしくは無電解めっきの工程では、前処理液やめっき液に浸漬されるため、耐酸性と耐アルカリ性双方に強い材料が特に好ましい。このような樹脂としては、たとえば、熱硬化性樹脂としては、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等が用いられ、これらは自己硬化性のものである(硬化触媒を使用してもよい)。
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものが使用できる。このようなものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。絶縁層の形成方法としては、例えば、刷毛塗りや、スプレー塗装、さらには、ディッピングした後にスキージやブレード等で樹脂を掻き取った後に乾燥させるなどの方法が挙げられる。
【0038】
また、積層する膜として電着塗料を用いても良い。電着塗料は通電する箇所に析出するため、DLC膜の上から電着塗装を行うことにより、ピンホールの上にしか電着塗装膜が生成せず、塗膜の形成を必要最小限に抑えることができる。電着塗料としては、前述の記載と同様、アニオン型もカチオン型も同様に用いることができる。
【0039】
他に積層する膜として、絶縁性の無機膜をコーティングしても良い。無機材料としては、ウェットコーティング法を用いる場合にはアルカリ金属、オルガノポリ金属、オルガノアルコキシ金属、アルコキシ金属、変性アセチルアセトネート金属等からなる金属酸化物系ポリマーや、無機フィラーを含有した塗料を、アルコールや水などの溶剤を加えた状態でスプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。また、金属のフッ化物錯体を用いて液層析出法(LPD法)などにより絶縁層を形成させることもできる。また、ドライコーティング法で各種金属の酸化物を形成させることも可能である。コーティングする方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングといったPVD法や、プラズマCVD,熱CVDといったCVD法の他、溶射などの方法を用いて作製することができる。具体的には、Al2O3、Cr2O3、Fe2O3、MgO、SiO、SiO2、SnO2、TaO5、TiO2、WO3、Y2O3、ZnO、ZnO2、ZrO2等の皮膜が好ましく用いられる。
【0040】
また、有機被膜や無機被膜とDLC膜の密着性を向上させるために、コロナ処理、イトロ処理、プラズマ処理、フレーム処理などによりDLC膜の表面に親水性の官能基を導入し、その後に上述の有機被膜、無機被膜をコーティングしても良い。また、プライマやシランカップリング剤などを一層塗布してDLC膜と有機被膜、無機被膜との密着性の向上をはかることができる。
【0041】
本発明において絶縁層を2層以上形成させた後の合計の厚さが1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなるため作業効率が低下する。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層と導電性基材の密着性が低下すると共に、2層以上コーティングしてもやはりピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。
【0042】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造法を図面を用いて説明する。
図7〜図10は、めっき用導電性基材の作製方法を示す工程の一例を断面図で示したものである。これらにおいて、図2(c)で示す断面形状を有する導電性基材を用いて例示する。
まず、導電性基材1の両面に光硬化性樹脂層7を形成する(図7(a))。フォトリソグラフ法を用いて導電性基材1の一方の表面の光硬化性樹脂層7をパターン化する(図7(b))。パターン化された光硬化性樹脂層7をエッチングレジストとして導電性基材をエッチングすることにより、図に示すエッチングされた導電性基材が得られる(図7(c))。このとき、凸部2の側面5の傾斜角を調整することができる(少なくとも凸部の先端部分において)。傾斜角の調整は、エッチング液である塩化第二鉄溶液の比重とエッチング温度を最適化することなどにより行うことができる。次いで、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性の水溶液に浸漬して、エッチングレジストを剥離する(図7(d))。
【0043】
次いで、この導電性基材1の一方の面を剥離可能な粘着フィルム9を貼り合わせて保護し、エッチングした面の全面に第1の絶縁層8を被覆する(図8(e))。
その上に、同種又は別種の第2の絶縁層を前面に形成する。特に、第2の絶縁層を絶縁性の無機被膜で形成した場合、それがそのままドライエッチング時のマスク層となるため、マスク層除去の工程は不要である。第2の絶縁層として、マスク層10となる無機被膜を形成した場合の例、(図8(f))にしめす。
ついで、マスク層10が形成されている箇所では、絶縁層がエッチングされないため、導電性基材1の凸部3の先端部分に形成された絶縁層8の上のマスク層10を除去する(図8(g))。マスク層10のこの部分的な除去は凸部3の露出させる先端部分の幅を勘案して除去される。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、露出する絶縁層の幅が、上面の幅よりも広くなるようにすることが好ましい(図8(g))。これにより、次の絶縁層8の部分的な除去において、凸部3の上面付近の側面部の絶縁層の除去が行いやすくなる。特に、研磨によるマスク層10の除去を行うと図8(g)に示すようになる。
次いで、絶縁層にドライエッチングを施すことにより、凸部3の先端部分に形成された絶縁層8及びを除去することができ、これにより凸部3の先端部分を露出させることができる((図8(h))。
最後に、マスク層10の突出部を研磨等により除去することにより、本発明のめっき用導電性基材とすることができる((図8(i))。
【0044】
上記と同様に導電性基材1の一方の面を剥離可能な粘着フィルム9を貼り合わせて保護し、エッチングした面の全面に第1の絶縁層8を被覆する(図8(e))。ついで、その上に有機被膜等からなる第2の絶縁層8′を形成する(図8(f)と同様であるが、第2の絶縁層はマスク層でないものとする)。この後に、プラズマエッチングに対するマスク層10を第2の絶縁層の上に形成する(図9(j))。図9(j)では図8(e)の全面に第二の有機被膜絶縁層が形成された場合を例としてあげて図示している。
次いで、絶縁層8及び8′の上のマスク層11を除去する(図9(k))。マスク層10のこの部分的な除去は凸部3の露出させる先端部分の幅を勘案して除去される。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、露出する絶縁層の幅が、上面の幅よりも広くなるようにすることが好ましい(図8(e))。これにより、次の絶縁層8及び8′の部分的な除去において、凸部3の上面付近の側面部の絶縁層の除去が行いやすくなる。特に、研磨によるマスク層10の除去を行うと図9(k)に示すようになる。
次いで、絶縁層にドライエッチングを施すことにより、凸部3の先端部分に形成された絶縁層8及び8′を除去することができ、これにより凸部3の先端部分を露出させることができる((図9(m))。
特に、酸素ガスでプラズマエッチングを行った場合などには、導電性基材がストッパー層となる。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、凸部3の上面の幅を超えた部分の絶縁層を露出させておけば(図9(k))、絶縁層のドライエッチングによる除去が、凸部の側面部にまで及び、その結果、凸部の側面まで露出させることができる((図9(m))。側面部の絶縁層の除去の制御は、ドライエッチングの時間、出力によって行うことができる。
次いで、凹部3の絶縁層8及び8′上に形成されているマスク層10は、薬液浸漬等により除去される。このようにして本発明に係るめっき用導電性基材の一例を作製することができる(図9(n))。
【0045】
また、第2の絶縁層を絶縁性の無機被膜で形成した場合、それがそのままドライエッチング時のマスク層となるため、マスク層除去の工程は不要である。マスク層の最先端は導電性基材の凸部先端よりもつきだした形状になっており、実際の使用時に欠けやすくなるが、先端部が欠けてもピンホール抑制の効果は失われず、第2の絶縁層そのものが剥離しない限りは問題とならない。
【0046】
さらに、DLCからなる絶縁層と導電性基材の間に中間層を設けた場合、中間層が例えば有機材料である場合には、上記の酸素プラズマで、DLCからなる絶縁層の除去に引き続いて中間層の除去が行え、図8(f)に示すのと同様の構造のめっき用導電性基材とすることができる。中間層が炭素を主成分とする材料でない場合には、酸素プラズマによる中間層のエッチングが困難となるが、この場合には、絶縁層及び中間層の材料に合わせて、ガスを変更するかもしくは、中間層の厚みが0.5μm以下程度であれば、弱い力で機械研磨することにより凸部の先端部分の露出幅を太らせることなく、凸部の先端部分に形成された中間層を除去することが可能である。
【0047】
DLC薄膜をドライエッチングした際に、中間層が酸素プラズマでエッチングされない場合には、ガスを変更して中間層をドライエッチングするか、もしくは、機械研磨で除去することができる。中間層は薄い皮膜であるため、ラインを太らせること無く、軽い研磨で除去することができる。なお、中間層が導電性である場合には、通電して析出させためっきが中間層から容易に剥離させることができるなら、必ずしも中間層を除去する必要はなく、凸部の露出部分において、それ自体を導電性基材の一部とすることができる。
【0048】
前記において第2の絶縁層として有機被膜を形成させる場合に、電着塗料を用いた場合には、通電する部分のみがコーティングされるため、図10(a)の8′のように部分的にコーティングされる。これにより、第1の絶縁層のピンホール等の塗装欠陥部分のみを第2の絶縁層により補修することができる。この後は、前記と同様にして、マスク層の形成、プラズマエッチング及びマスク層の除去を行い、本発明のめっき用導電性基材とすることができる(図10(b))。
【0049】
本発明におけるマスク層は、無機系と有機系のマスク層に大別できる。
無機系のマスク層としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、金(Au)、チタン(Ti)等の金属が、特に酸素プラズマに対する耐性が強く好ましく用いられる。これらの膜は、スパッタ法、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電着法、無電解めっき法などの薄膜形成方法により形成される。これらの材料の中では、酸素プラズマに対する耐性が高く、廉価であり、蒸着が容易で、酸性物質に対しても塩基性物質に対しても可溶であることから、アルミニウム(Al)が好んで用いられる。アルミニウムは導電性であるため、ドライエッチング後に残しておくと導電性基材の全面にめっきが析出するので、除去する必要がある。アルミニウムのエッチング剤としては、塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム等、また酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸及びその塩等であるが、絶縁層の耐性を考慮して、適宜選択する。
さらに、酸素プラズマに対する耐性を持つ無機材料としては、ウェットコーティング法を用いる場合にはアルカリ金属、オルガノポリ金属、オルガノアルコキシ金属、アルコキシ金属、変性アセチルアセトネート金属等からなる金属酸化物系ポリマーや、無機フィラーを含有した塗料、さらに、セラミックコーティングと呼ばれるケイ素化合物フリット類による塗料を、アルコールや水などの溶剤を加えた状態でスプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。また、金属のフッ化物錯体を用いて液層析出法(LPD法)などにより絶縁層の上にマスク層として形成させることもできる。また、ドライコーティング法で各種金属の酸化物を形成させることも可能である。コーティングする方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングといったPVD法や、プラズマCVD,熱CVDといったCVD法の他、溶射などの方法を用いて作製することができる。具体的には、Al2O3、Cr2O3、Fe2O3、MgO、SiO、SiO2、SnO2、TaO5、TiO2、WO3、Y2O3、ZnO、ZnO2、ZrO2等の皮膜が好ましく用いられる。
また、有機系のマスク層としては、ドライエッチングに対する耐性があるもので、公知のものが使用できるが、特に酸素プラズマを用いる場合には、一般的にシリコンを含有するレジスト膜が酸素プラズマに対する耐性があるため、好んで用いられる。シリコンを含有するレジスト膜には、感光性があっても、なくてもよい。凸部の上面にあるマスク層を除去する方法として、凸部の上面にあるマスク層を現像して除去してから、現像した箇所をドライエッチングする場合には、レジスト膜が感光性を有していることが好ましいが、凸部の上面にあるマスク層を機械研磨で除去する場合には、必ずしも感光性は必要でない。用いるレジスト膜は、ネガ型でもポジ型でもよく、液状でもフィルム状でもよい。液状の場合は、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布でき、フィルムの場合は、加熱ラミネートして、凹部にレジストを追随させながら埋め込むことができる。
前記したシリコンを含有するレジスト膜について説明する。シリコンを含有するレジスト膜に使用されるシリコン含有感光性組成物としては、公知のものが使用できるが、好適なシリコン含有感光性組成物の代表例としては、主鎖にシリコン原子を有し、アセタール構造、3級エステル構造、t−ブチルオキシカルボニル構造等の酸分解性基を含有するシロキサンポリマーを用いた化学増幅型のシリコン含有感光性組成物、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドからなるレジスト組成物に、主鎖にシリコン原子を有し、分子内にシラノール構造を有するアルカリ可溶性ラダー型ポリシロキサンをブレンドした紫外線露光用のシリコン含有感光性組成物等が挙げられる。側鎖にシリコン原子を有し、かつ側鎖にアセタール構造、3級エステル構造、t−ブチルオキシカルボニル構造、又は、β−シリルエチルエステル構造等の酸分解性基を含有するビニルポリマーと光酸発生剤からなる化学増幅型の遠紫外線露光用のシリコン含有感光性組成物、さらに、メチルメタクリレートのシリコン誘導体を含有する単量体の重合によって形成される構造、アクリル酸エステルポリマーのエステル部にシリコンを含有する構造、トリメチルシリル基を2つ有するアクリル系モノマーから得られるポリマー、シリコン含有モノマー、無水マレイン酸、t−ブチルアクリレートからなるポリマーを有するレジスト組成物等が挙げられる。
【0050】
マスク層を部分的に除去する方法は、(イ)感光性を有するマスク層を用いて、フォトリソグラフプロセスで凸部の上面に形成されたマスク層を現像、除去する方法、(ロ)マスク層の除去部を機械研磨する方法などがある。上記(イ)の方法では、感光性を有するマスク層は、ポジ型であってもネガ型であってもよく、現像液は、後述するマスク層の剥離液と同様の液を用いることができる。また、上記(ロ)のマスク層を研磨して除去する方法としては、例えば、バフロールを回転させながら研磨する方法がある。バフは市販されている不織布、セラミックバフ、ダイヤモンドバフ等を用いることができる。
【0051】
本発明で用いられるドライエッチングとは、真空容器内にガスを導入し、ガスを高周波、マイクロ波などにより励起し、プラズマを発生させラジカル、イオンを生成させた後、プラズマにより生成されたラジカル、イオンと被エッチング物(絶縁層、中間層)と反応させ、反応生成物を揮発性ガスにし真空排気系により外部に排気することにより行われるエッチングのことである。ドライエッチングは被エッチング物を載置した電極に高周波電力を印加し、発生した負の自己バイアス電圧により、プラズマから生成されたイオンを加速して被エッチング物に衝撃させる反応性イオンエッチングとエッチング物にバイアスを印加せずにプラズマより生成したラジカルにより被エッチング物をエッチングするプラズマエッチングに大別される。反応性イオンエッチングには平行平板型、マグネトロン型、2周波型、ECR型、ヘリコン型、ICP型などがあり、使用する圧力は低圧であることが多く得られるエッチング形状は等方性である。また、プラズマエッチング装置にはバレル型、平行平板型、ダウンフロー型などがあり、使用する圧力は高圧であることが多く、得られるエッチング形状は等方性である。本発明では、上記のどちらの方式を用いてもよい。
【0052】
また、ドライエッチングにおけるガス組成としては、形成された絶縁層をエッチングできるとともに導電性基材をエッチングしずらいガスを適宜選択するが、代表的なガス組成としては、F原子含有プラズマを発生させる、F2、CF4−O2、C2F6−O2、C3F8−O2、SF6−O2、SiF4−O2、NF3、ClF3、さらに、不飽和種含有プラズマを発生させる、CF4、C2F6、CHF3、CF4−H2、CH4、さらに、Cl・Br原子を含有するプラズマを発生させる、Cl2、CCl4、CF3Cl、Cl2−CCl4、Br2、さらに酸素プラズマを発生させる、O2、O2−Ar等が用いられる。地球温暖化作用を有さず、腐食性もないことから、酸素プラズマを発生させるガス組成が好ましく、絶縁層も酸素プラズマでエッチングできる、炭素を主成分とする材料を選定することが好ましい。
絶縁層のドライエッチングに対するマスク層は、ドライエッチングにおけるエッチングレートが絶縁層のエッチングレートと同程度かもしくは、それ以下であるものが好ましい。ドライエッチングにおける絶縁層のエッチングレートよりもマスク層のエッチングレートが大きい場合には、絶縁層が厚くなると、マスク層も厚くしなければならないので非効率的であり、さらに、厚みのばらつきがあった場合にマスク層の下の絶縁層を、エッチングしてしまう可能性がある。したがって、マスク層のエッチングレートは、絶縁層のエッチングレートの1/2以下であることが特に好ましい。
上記有機系のマスク層の剥離液として、従来公知のアルカリ性水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。
また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、メチル−ピペ−メチル−ピペラジン、メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン等の環状アミン類等の水溶性アミンも好ましく用いられる。
【0053】
マスク層の剥離液として、第4級アンモニウム水酸化物も好ましく用いられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド〔=TMAH〕、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド〔=コリン〕、(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウムヒドロキシド、(1−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド等が例示される。中でもテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、コリン等が好ましい。第4級アンモニウム水酸化物は1種または2種以上を用いることができる。
【0054】
マスク層の剥離液として、有機アルカリ剤や、第4級アンモニウム水酸化物を用いる場合には、通常、レジスト膜の剥離性を向上させるために、水溶性有機溶媒と混合して用いることが多い。水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン〔=スルホラン〕等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール類およびその誘導体などが挙げられる。中でも、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル、スルホラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましく用いられる。水溶性有機溶媒は1種または2種以上を用いることができる。
【0055】
前記図7の(c)において、導電性基材1のエッチングは、凸部3の上面4の幅がレジストパターンの幅と同様にした場合を例示したが、図11の(a)に示すように、凸部3の上面4の幅がレジストパターンの幅よりも小さくなるようにオーバーエッチングしてもよい。この場合、オーバーエッチングを十分行って、引き続いて絶縁層を形成し、図11の(b)に示すようにし、続いてレジストパターンを剥離して図11の(c)のように絶縁層を有する導電性基材を作製してもよい。以上において、レジストパターンの形成法、エッチング法、第一及び第二の絶縁層の形成法、残存レジストの剥離法等は前記したのと同様である。なお、図10では、第二の絶縁層は図が煩雑になるため図示しない。
この後、凸部上面に絶縁層がないことを除けば、図9(j)以降と同様にして目的の図9(n)に示すようなめっき用導電性基材を作製することができる。
【0056】
本発明におけるめっき用導電性基材へのめっき法は公知の方法を採用することができる。めっき法としては、電気めっき法、無電解めっき法その他のめっき法を適用することができる。
電気めっきについてさらに説明する。例えば、電気銅めっきであれば、めっき用の電解浴には硫酸銅浴、ほうふっ化銅浴、ピロリン酸銅浴、または、シアン化銅浴などを用いることができる。このときに、めっき浴中に有機物等による応力緩和剤(光沢剤としての効果も有する)を添加すれば、より電着応力のばらつきを低下させることができることが知られている。また、電気ニッケルめっきであれば、ワット浴、スルファミン酸浴などを使用することができる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。さらに、電気金めっきの場合は、シアン化金カリウムを用いた合金めっきや、クエン酸アンモニウム浴やクエン酸カリウム浴を用いた純金めっきなどが用いられる。合金めっきの場合は、金−銅、金−銀、金−コバルトの2元合金や、金−銅−銀の3元合金が用いられる。他の金属に関しても同様に公知の方法を用いることができる。電気めっき法としては、例えば、非特許文献1第87〜504頁を参照することができる。
【0057】
次に、無電解めっきについてさらに説明する。無電解めっき法としては、銅めっき、ニッケルめっき、代表的であるが、その他、すずめっき、金めっき、銀めっき、コバルトめっき、鉄めっき、クロムめっき等が挙げられる。工業的に利用されている無電解めっきのプロセスでは、還元剤をめっき液に添加し、その酸化反応によって生ずる電子を金属の析出反応に利用するのであり、めっき液は、金属塩、錯化剤、還元剤、pH調整剤、pH緩衝材、安定剤等から成り立っている。無電解銅めっきの場合は、金属塩として硫酸銅、還元剤としてホルマリン、錯化剤としてロッセル塩やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好んで用いられる。また、pHは主として水酸化ナトリウムによって調整されるが、水酸化カリウムや水酸化リチウムなども使用でき、緩衝剤としては、炭酸塩やリン酸塩が用いられ、安定化剤としては、1価の銅と優先的に錯形成するシアン化物、チオ尿素、ビピリジル、O−フェナントロリン、ネオクプロイン等が用いられる。また、無電解ニッケルめっきの場合は、金属塩として硫酸ニッケル、還元剤には、次亜りん酸ナトリウムやヒドラジン、水素化ホウ素化合物等が好んで用いられる。次亜りん酸ナトリウムを用いた場合には、めっき皮膜中にりんが含有され、耐食性や耐摩耗性が優れている。また、緩衝剤としては、モノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩を使用する場合が多い。錯化剤は、めっき液中でニッケルイオンと安定な可溶性錯体を形成するものが使用され、酢酸、乳酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸、グリシン、アラニン、EDTA等が用いられ、安定化剤としては、硫黄化合物や鉛イオンが添加される。無電解めっき法については上記、「現場技術者のための実用めっき」、日本プレーティング協会編(1986年槇書店発行)の第505〜545頁を参照することができる。
【0058】
さらに、還元剤の還元作用を得るためには、金属表面の触媒活性化が必要になることがある。素地が鉄、鋼、ニッケルなどの金属の場合には、それらの金属が触媒活性を持つため、無電解めっき液に浸漬するだけで析出するが、銅、銀あるいはそれらの合金、ステンレスが素地となる場合には、触媒活性化を付与するために、塩化パラジウムの塩酸酸性溶液中に被めっき物を浸漬し、イオン置換によって、表面にパラジウムを析出させる方法が用いられる。
【0059】
本発明で利用できる無電解めっきは、例えば、前記した上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の凸部に、必要に応じてパラジウム触媒を付着させたあと、温度60〜90℃程度とした無電解銅めっき液に浸漬して、銅めっきを施す方法がある。
無電解めっきでは、基材は必ずしも導電性である必要はない。しかし、前記したように基材の凹部に絶縁層を電着により形成する場合には、基材は導電性である必要があり、また、無電解めっきの準備として、基材上に析出した金属を容易に剥離するための処理として、基材の無電解めっきされるべき箇所を、陽極酸化処理するような場合は、基材は導電性である必要がある。
特に、導電性基材の材質がNiである場合、無電解めっきするには、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材を陽極酸化した後、無電解銅めっき液に浸漬して、銅を析出させる方法がある。
【0060】
めっきによって出現又は析出する金属としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ニッケル、鉄、クロム等の導電性を有するものが使用されるが、20℃での体積抵抗率(比抵抗)が20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むことが望ましい。本発明により得られる構造体を電磁波遮蔽シートとして用いる場合には電磁波を電流としてアースするためにこれを構成する金属は導電性が高い方が電磁波遮蔽性に優れるためである。このような金属としては、銀(1.62μΩ/cm)、銅(1.72μΩ/cm)、金(2.4μΩ/cm)、アルミニウム(2.75μΩ/cm)、タングステン(5.5μΩ/cm)、ニッケル(7.24μΩ/cm)、鉄(9.0μΩ/cm)、クロム(17μΩ/cm、全て20℃での値)などがあるが特にこれらに限定するものではない。できれば体積抵抗率が10μΩ/cmであることがより好ましく、5μΩ/cmであることがさらに好ましい。金属の価格や入手の容易さを考慮すると銅を用いることが最も好ましい。これらの金属は単体で用いてもよく、さらに機能性を付与するために他の金属との合金でも構わないし、金属の酸化物であってもよい。ただし、体積抵抗率が20μΩ/cmである金属が成分として最も多く含まれていることが導電性の観点から好ましい。
【0061】
前記しためっき用導電性基材の凸部の露出部分にめっきにより形成される金属層の厚さ(めっき厚さ)は、十分な導電性を示す(このとき電磁波シールド性が十分に発現する)ためには、0.5μm以上であることが好ましく、導体層にピンホールが形成される(このとき、電磁波シールド性が低下する)可能性を小さくするためには、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、めっき厚さが大きすぎると、形成された金属層は幅方向にも広がるため、転写したラインの幅が広くなり、導体層付きパターン基材の開口率が低下し、透明性、非視認性が低下する。したがって、透明性、非視認性を確保するためには、形成された金属の厚みを20μm以下とすることが好ましく、さらに、めっきの時間を短縮し、生産効率をあげるためには、めっきの厚みは10μm以下であることがさらに好ましい。
【0062】
さらに、本発明により作製しためっき用導電性基材を用いて導電層パターン付き基材の作製方法の一例を、導電性基材に、断面形状が台形である凸部3(図2(c)参照)を形成した場合を例に、図12を用いて説明する。以下において、絶縁層8は2層以上からなるものとする。
まず、図12(a)は、本発明におけるめっき用導電性基材の一例を示す断面図である。凸部3のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部2を有する導電性基材1の凸部3を有する面の凹部2に絶縁層8を凸部3の側面3′を含む先端部分4′が露出するように形成されている。
次に、凸部3の先端部分4′(すなわち、凸部3の露出部分)が露出している導電性基材1にめっきを施して、凸部3の先端部分4′に金属11を析出させる。図12(b)は、この状態の断面図を示す。
次いで、粘着フィルム12(別の基材13に粘着剤層14を塗布したフィルム)を、導電性基材1の金属11が析出している面に貼り合わせる。図12(c)はこの状態の断面図を示す。粘着フィルム12の粘着剤層14を、金属11が析出している面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要なら加熱される。
そして、粘着フィルム12を剥離することにより、金属11が粘着層14に貼り付いて導電性基材1から剥離して、すなわち、別の基材13に転写されて、導体層パターン付き基材15を得る。この状態の断面図を図12(d)に示す。
【0063】
上記で得られた導体層パターン付き基材15の導体層パターン(金属11)を黒化処理して、黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材とすることができる。図13は、この導体層パターン付き基材の断面図を模式的に示す。図13において、別の基材13に粘着剤層14を介して、表面が黒化処理されて黒色層16となった導体層パターン(金属11)が貼り合わされている。
また、前記の図12(b)の状態で、導電性基材1の凸部3の先端部分4′に析出した金属10(めっき層)に黒化処理を施してから、その後の転写工程を行って得られる導体層パターン付き基材の断面図を図14に模式的に示す。図14において、別の基材13に粘着層14を介して、黒色層17を有する金属11からなる導体層パターンが貼り合わされているが、黒色層17は、導体層パターンの転写面側と側面に形成されている。
以上の黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材としてディスプレイの前面において利用するときは、一般に、黒色層を設けた方の面がディスプレイの視聴者側に向くようにして用いられる。
なお、上記の二つの黒化処理を両方行い、どちらの側から見ても黒色層が見えるようにすることもできる。
上記の黒化処理の方法の一つは、金属パターンに黒色層を形成する方法であるが、このためには、金属層にめっきや酸化処理、印刷などの様々な方法を用いることができる。
【0064】
本発明における導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽体として用いる場合は、そのまま、ディスプレイ画面に適宜別の接着剤を介して又は介さないで貼着して使用することができるが、他の基材に貼着してからディスプレイに適用してもよい。他の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波を遮断するために使用するには透明であることが必要である。
【0065】
図15に導体層パターン付き基材が他の基材に貼着されて得られた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。図15において、基材(別の基材)13に積層されている粘着剤層14上に金属18からなる導体層パターンが貼り付けられ、この上に他の基材19が積層されており、金属18は、粘着剤層14に埋設されている。これは、導体層パターン付き基材の導体層パターン側を他の基材19に加熱又は非加熱下に加圧することにより作製することができる。この場合、粘着剤層14が十分な流動性を有するものであるか十分な流動性を有するうちに、適度な圧力を加えることにより導体層パターンを粘着剤層14に埋設する。基材(別の基材)13及び基材(他の基材)19として、透明性を有し、しかもその表面の平滑性が優れるものを使用することにより、透明性が高い電磁波遮蔽部材を得ることができる。
図16に導体層パターン付き基材が保護樹脂で覆われた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。基材(別の基材)13に積層されている粘着剤層14上に金属18からなる導体層パターンが貼り付けられており、これらは、透明な保護樹脂20によって被覆されている。
【0066】
図17は、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。この電磁波遮蔽体は、図15の電磁波遮蔽部材が、基材13の導体層パターンがある面とは反対の面で、接着剤層21を介して他の基材22が貼り合わされたものである。
図18は、さらに、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。図18において、基材(別の基材)13に粘着剤層14を介して金属18からなる導体層パターンが接着されており、その上を透明樹脂からなる接着剤又は粘着剤23により被覆され、さらにその上に保護フィルム24が積層されている。基材13のもう一方の面には接着剤層21を介してガラス板等の他の基材22が貼着されている。この電磁波遮蔽部材では、基材(別の基材)13に粘着剤層14を介して接着されている導体層パターンを有する導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面を、透明樹脂23によりコーティングし、さらに保護フィルム24を積層し、ついで、得られた積層物の基材13のもう一方の面(何も積層されていない面)に接着剤を塗布して接着剤層21を形成し、これを他の基材22に押しつけて接着することにより作製することができる。上記の透明樹脂23としては、前記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほかに活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることもできる。活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることは、それが瞬時に又は短時間に硬化することから、生産性が高くなるので好ましい。
【0067】
前記した別の基材(導体層パターンが転写される基材)としては、ガラス、プラスチック等からなる板、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどがある。ガラスとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、強化ガラス等のガラスを使用することができる。
プラスチックとしては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチックの中では、透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。別の基材の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱い性から好ましい。
【0068】
本発明における別の基材は、プラスチックフィルムが好ましい。このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組合せた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが特に好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚さは特に制限はないが、1mm以下のものが好ましく、厚すぎると可視光透過率が低下しやすくなる傾向がある。また、薄く成りすぎると取扱い性が悪くなることを勘案すると、上記プラスチックフィルムの厚さは5〜500μmがより好ましく、50〜200μmとすることがさらに好ましい。
これらのプラスチックフィルム等の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波の漏洩を防ぐための電磁波シールドフィルムとして使用するためには、透明であるもの(すなわち、透明基材)が好ましい。
【0069】
上記の別の基材の導体層パターンが転写される面は、転写する際に粘着性を有していることが必要である。そのためには、基材自体が必要な粘着性を有していてもよいが、転写面に粘着層を積層するようにしておくことが好ましい。
上記の粘着層は、予め別の基材に積層するか転写されるべき金属(導体層パターン)に塗布又は積層しておくこともできる。上記の粘着層は、転写時に粘着性を有しているもの又は加熱若しくは加圧下に粘着性を示すものが好ましい。粘着性を有しているものとしては、ガラス転移温度が20℃以下の樹脂が好ましく、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂を用いることが最も好ましい。粘着層に用いる材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂等を使用することができる。加熱時に粘着性を示す場合、そのときの温度が高すぎると、透明基材にうねりやたるみ、カール等の変形が起こることがあるので、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂のガラス転移点は80℃以下であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂の重量平均分子量は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500未満では樹脂の凝集力が低すぎるために金属との密着性が低下するおそれがある。
【0070】
上記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのポリマを構成するモノマーは、必要に応じて、2種以上共重合させて得られるコポリマとして用いてもよいし、以上のポリマ又はコポリマを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
【0071】
活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能基として、アクリル基(アクリロイル基),メタクリル基(メタクリロイル基),ビニル基,アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が利用される。
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。また、上記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
【0072】
熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0073】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。
【0074】
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0075】
本発明で粘着性を有しているもの又は粘着性を示すもの(以下、これらを、「粘着剤」という)には、必要に応じて、架橋剤、硬化剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。
【0076】
粘着層の厚さは、薄すぎると十分な強度を得られないため、めっきで形成された金属層を転写する際に、金属が粘着層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着層の厚さが厚いと、粘着層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に、粘着層の変形量が多くなるため、薄膜絶縁層に接触する機会が増えるため、粘着層の厚みは30μm以下が好ましく、薄膜絶縁層と粘着層が接触する機会を低減させることから10μm以下がさらに好ましい。
別の基材に粘着剤を塗布して形成した粘着層を有するフィルムを、金属層が形成されている面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要ならば加熱される。
なお、他の基材としては、上記した別の基材と同様の材質の物を使用することができる。
【0077】
また、本発明で用いられる導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。
【0078】
回転体を用いて、電気めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図19を用いて説明する。図19は、導電性基材としてドラム電極を用いた場合に、ドラム電極を回転させつつ、金属を電気めっきにより連続的に析出させ、また、析出した金属を連続的に剥離する装置の概念を示す断面図(一部正面図)である。
【0079】
すなわち、電解浴100内の電解液101が陽極102とドラム電極などの回転体103の間のスペースに配管104とポンプ105により供給されるようになっている。陽極102と回転体103の間に電圧をかけ、回転体103を一定速度で回転させると、回転体103の表面に金属が電解析出し、電解液101の外で、回転体103表面の凸部の露出部分に析出した金属106に、粘着層を形成したフィルム107の粘着層を圧着ロール108で圧着し、連続的に回転体103から金属106を剥離しつつ粘着層を形成したフィルム107にその金属106を転写し、導体層パターン付き基材109とする。これはロール(図示せず)に巻き取ることができる。このようにして導体層パターン付き基材108を製造することができる。なお、上記の回転体103の表面には、凸部とそれにより描かれている幾何学図形状の凹部が形成されている。また、回転中の回転体103から、凸部の上面に析出した金属106が剥離させられた後で、電解液101に浸かる前に、回転体103表面をエッチング洗浄したり(図示せず)してもよい。なお、図示していないが陽極102の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水切りロールを設置しても良く、水切りロールによってせき止められた電解液は陽極102の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間に消費された銅イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する態様を加えることが好ましい。
【0080】
さらに、本発明で用いられる導電性基材として、フープ状の導電性基材を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。
フープ状の導電性基材に関しては、帯状の導電性基材の表面に凸部を形成した後、端部をつなぎ合わせるなどして作製できる。導電性基材の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的小さい材料を用いることが好ましい。フープ状の導電性基材を用いた場合には、黒化処理、防錆処理、転写等の工程を、1つの連続した工程で処理可能となるため導電性パターン付き基材の生産性が高く、また、導電性パターン付き基材を連続的に作製して巻物として製品とすることができる。フープ状の導電性基材の厚さは適宜決定すればよいが、100〜1000μmであることが好ましい。
【0081】
フープ状の導電性基材を用いて、電気めっきにより形成された導体層パターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図20を用いて説明する。図20は、導電性基材としてフープ状導電性基材を用いた場合に、連続的に導体層パターンを電気めっきにより析出させながら剥離する装置の概念図である。
【0082】
フープ状の導電性基材110を、搬送ロール111〜128を用い、前処理槽129、めっき槽130、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次とおり、周回運動するように設置する。前処理槽129で導電性基材110の脱脂もしくは酸処理等の前処理を行う。その後、めっき槽130で、導電性基材110上に金属を析出させる。この後に、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次通して、それぞれで、導電性基材110上に析出した金属の表面を黒化し、さらに防錆処理する。各処理工程後にある水洗槽は、1槽しか図示していないが、必要に応じて複数の槽を用いたり、各処理工程の前に他の前処理槽等があってもよい。次いで、接着層を積層したプラスチックフィルム基材136を導電性基材110の凸部の上面に析出した金属が転写されるように搬送ロール128上の導電性基材110と圧着ロール137の間を通し、上記金属をプラスチックフィルム基材136に転写して、導電層パターン付き基材138を連続的に製造することができる。得られる導電層パターン付き基材138は、ロール状に巻き取ることができる。必要に応じて、圧着ロール137を加熱することもできるし、図示はしないが、プラスチックフィルム基材136を圧着ロールを通過させる前にプレヒート槽を通して予備加熱してもよい。また、転写したフィルムの巻取りには、必要に応じて、離型PET等を挿入してもよい。さらに、金属が転写された後、フープ状導電性基材は、上記の工程を繰り返すこととなる。このようにして、連続的に、高い生産性で導体層パターン付き基材を製造することができる。
【0083】
また本発明は上記のようなめっき方法に限らず枚葉で作製することも可能である。枚葉で行った場合、めっき用導電性基材の作製時の取扱が容易であり、同一のめっき用導電性基材を繰り返し使用した後に一箇所だけ絶縁層が剥離した、といった場合でもドラム状やフープ状の基材であると特定部分だけの抜き取りあるいは交換は困難であるが、枚葉であれば不良が発生しためっき用導電性基材のみを抜き取りあるいは交換することが可能である。このように枚葉で作製することにより、めっき用導電性基材に不具合が発生したときの対応が容易である。枚葉状の導電性基材の厚みは適宜決定すればよいが、めっき槽内で液の攪拌等に左右されない十分な強度を持たせることを考慮すると厚みは20μm以上が好ましい。厚すぎると重量が増え取扱が困難であるため10μm以下の厚みであることが好ましい。
【0084】
導電性基材にめっきをする場合、めっきは等方的に成長するため、導電性基材が露出した部分に析出しためっきが、凸部側面に形成された絶縁層に覆い被さるように析出するため、剥離転写するたびに絶縁層に応力がかかる。特にライン幅が微細化されるほど、端部に電気力線が集中するため、析出しためっきの絶縁層への覆い被さりは顕著になる。この場合、繰り返し使用中における絶縁層の破壊のほとんどは、粘着剤の接触によるというよりも、絶縁層に覆い被さるように析出しためっきの剥離時の応力によるもので、特に絶縁層で凸部側面の最上部にまで絶縁層が形成されていると、絶縁層にかかる応力が大きくなるため、その部分を起点にして、絶縁層が破壊されることを確認した。しかし、本発明のように凸部の先端部分が露出するようにするとこの絶縁層の破壊が起こりにくくなり、結果として、本発明に係るめっき用導電性支持体の寿命を永くすることができる。
【0085】
以上で詳細に説明した凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凹部に絶縁層を有するめっき用導電性基材は、凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の絶縁層を有する凹部は、適当な広さで作製される。その領域を領域Aとすると、本発明に係るめっき用導電性支持体には、そのまわりに、電磁波遮蔽部材のアース部に対応する領域(領域Bという)を備えることができる。このとき、領域Aと領域Bは同一のパターンでもよい。また、領域Aにおける凹部の面積比率を、領域Bにおける凹部の面積比率と同じ又はそれよりも大きくすることが好ましく、10%以上大きくすることはさらに好ましい。凹部の面積比率は、平面図で見たときに、ただし、各領域の全面積に対する各領域の凸部における露出部分を除いた部分の面積の比率をいう。また、領域Bの凹部比率を0としてもよいが、この場合には、めっき用導電性支持体上にめっきによりベタの金属膜が周辺に形成される。ベタの金属膜は転写に際し、割れやすいので、望ましくは、領域Bの凹部の面積率は40%以上とすることが好ましく、また、97%未満であることが好ましい。
領域Bにおいて、凸部のパターンによって描かれる幾何学図形状は、前記説明したものが使用できるが、改めて例示すると、
(1)メッシュ状幾何学的模様
(2)所定間隔で規則的に配列された方形状幾何学的模様
(3)所定間隔で規則的に配列された平行四辺形模様
(4)円模様又は楕円模様
(5)三角形模様
(6)五角形以上の多角形模様
(7)星形模様
等がある。
また、領域Bにおける凸部の形成、絶縁層の形成等は、前記した領域Aと同様に行うことができる。さらに、凸部の露出部分の高さ、露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなるようにされること、d10/h10の関係等も領域Aと同様にされる。
【0086】
上記のようにして得られる導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材として用いる場合には、反射防止層、近赤外線遮蔽層等をさらに積層してもよい。導電性基材に析出した金属を転写する基材そのものが反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。さらに、導体層パターンに保護層を形成する際に用いられるカバーフィルム(例えば、図16又は図17の保護フィルム20)が、反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。
【実施例1】
【0087】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
レジストフィルム(フォテックH−Y920、20μm厚、日立化成工業株式会社製)を10cm角のステンレス板(SUS304、仕上げ3/4H、厚さ100μm、日新製鋼(株)製)の両面に貼り合わせた(図7(a)に対応する)。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が40μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45度(正四角形のなかに、ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で、格子状に形成したネガフィルムを、ステンレス板のレジストフィルムを貼り合わせた方の面上に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置したステンレス板の上下から、紫外線を120mJ/cm2照射した。さらに、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、SUS板の上にライン幅40μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45度のレジストマスクを形成した。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面露光されているため、現像されず、全面にレジスト膜が形成されている(図7(b)に対応する)。
次いで、40℃に加温した塩化第二鉄水溶液(45°Be‘、鶴見曹達株式会社製)を用いて、SUS板をエッチングした。エッチングは、SUS板のライン幅が約7μmになるまで行い、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材上にレジストマスクが残っているめっき用導電性基材を作製した。凸部上面の幅は5〜8μmであり、凸部上面の間隔(ピッチ)は300±2μm、凸部の高さは35〜38μmであった。凸部上面の幅は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率1000倍で観察して測定した。凸部上面は、エッチング液で粗化されていないため、顕微鏡観察では光沢感があった。この光沢感のある部分を凸部の上面とした。測定は、無作為の5点で行い、その最大値と最小値を採用した。凸部上面の間隔(ピッチ)の測定は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率200倍で観察して測定した。測定は、無作為の5点で行った。また、凸部の高さは、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、凸部の両側を測定したので計10点の値の最大値と最小値を採用した。これらの測定法は以下においても同様である。
なお、凸部パターンが形成された面の反対面は、全面にレジスト膜が形成されているため、エッチングされなかった(図7(c)に対応する)。次いで、めっき用導電性基材を、液温30℃で5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると、凸部パターンが形成された面及びその反対面に形成されたレジスト膜が除去された(図7(d)に対応する)。
【0088】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
RFプラズマCVD装置(NANOCOAT 400、ナノテック株式会社)によりDLC膜を形成する。RFプラズマCVD装置は上部電極、基板を乗せる下部電極及びガス導入口を備えた真空チャンバー、プラズマを発生するためのRF電源、スイッチ/マッチングボックス、マッチングボックス、真空ポンプなどから構成される。真空チャンバーは真空ポンプにより10−3torrの真空度に減圧される。最初にArガスによるプラズマを励起し基板のクリーニングを行なった後、ヘキサメチルジシラザンを4sccmの流量で導入し、RF出力500Wで膜厚0.3μmとなるように中間層としてSiを製膜した。次いで、アセチレンガスを15sccmの流量で導入し、RF出力500Wで膜厚が0.8〜1.0μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した(図8(e)に対応する。)。
【0089】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、上記の第一の絶縁層が形成された導電性基材の凸部パターンが形成された反対面に保護用の粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り合わせたものを陰極にして、陽極をステンレス(SUS304)板として、カチオン型電着塗料(Insuleed3020、ノボラックエポキシ系、日本ペイント(株)製)中で、30V10秒の条件で、格子模様状にエッチングされたステンレス板に電着塗装した。次いで、窒素気流下、230℃で40分間電着塗膜を焼付けて、絶縁層を形成した。炉内の酸素濃度は1%であった。電着塗料が析出した厚さは、4〜5μmであった。なお、測定は別途パターンのないステンレス板に同条件でコーティングし、その一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、測定値の最大値と最小値を採用した。このようにして、めっき用導電性基材の凸部パターン側に、電着塗装で電気絶縁樹脂による第二の絶縁膜を形成した(図8(f)に対応する。ただし、第2の絶縁膜はマスク層ではない。)。
【0090】
(酸素プラズマによるドライエッチング)
全面に第一及び第二の絶縁層が形成されているめっき用導電性基材において、凸部パターンが形成された面に、シリコン系のレジストDLR−501(NTTアドバンテステクノロジ(株)製)をスピンコートで塗布した。スピンコータの回転速度を500rpmとして、10秒間回転した後、1000rpmにして30秒間回転した。次いで、90℃に加熱したホットプレート上で、90秒間加熱乾燥した。絶縁層のTOP部におけるシリコン系レジストの厚みは1μmであった(図9(j)に対応する)。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面にある絶縁層の上にあるシリコンレジスト層を除去した(図9(k)に対応する)。
次いで、反応性イオンエッチング装置(CSE−1110(株式会社アルバック製))を用いて、凸部の上面にある絶縁層を酸素プラズマを用いてドライエッチングした(図9(m)に対応する)。
ガス組成は、酸素16sccm、アルゴン2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力300Wで6分間ドライエッチングした。その後、中間層を耐水研磨紙#4000で干渉色がなくなるまで研磨して除去した。次いで、50℃に加温したジプロピレングリコールモノメチルエーテル:モノイソプロパノールアミン=75:25の溶液に上記めっき用導電性基材を3分間浸漬し、絶縁皮膜上に形成されているシリコン系レジストを剥離した(図9(n)に対応する)。以上により、凸部先端部分のステンレスが露出し、その露出幅5.9〜10.0μm、絶縁高さ32〜36.7μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で1.5〜2.5μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、1.5〜2.5μmであった。また、ドライエッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅5〜8μmと変わらなかったが、中間層研磨後の凸部上面の幅は6〜11μmであった。以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.306〜0.404(68°〜73°に相当)であった。
凸部先端部分の露出部の幅、第1の位置、第2の位置における高さh10及び幅d10は、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は10000倍で断面をSEM観察することにより実測し、測定点は5点で、凸部の両側を測定したので計10点の値の最大値と最小値を採用した(以下同様)。絶縁高さの測定も、同様に行ったが、倍率は3000倍とした(以下同様)。
【0091】
(銅めっき)
次いで、粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として電解銅めっきを行った。電解銅めっき浴(硫酸銅(5水塩)230g/L、硫酸55g/L、キューブライト#1A(荏原ユージライト株式会社、添加剤)4ml/Lの水溶液、25℃)中に、上記めっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として浸した。両極に電圧をかけて、電流密度を5A/dm2として、めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した金属の厚さが5μmになるまでめっきした。
【0092】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、5mm□中にあるライン以外の銅の析出箇所を光学顕微鏡(接眼レンズ10倍、対物レンズ20倍)で実測した。この場合、析出した銅は銅粒として観測される。測定点は6点とした(以下同様)。測定した銅粒の数は38個であった。
【0093】
(転写用粘着フィルムの作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の表面にプライマー(HP―1、日立化成工業株式会社製)を厚さ1μm)に、粘着層としてアクリルポリマー(HTR−280、長瀬ケムテック(株)製)を厚さ10μmに順次塗布して転写用粘着フィルムを作製した。
【0094】
(転写)
上記転写用粘着フィルムの粘着層の面と、上記めっき用導電性基材の銅メッキを施した面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき転写用版に貼り合わせた粘着フィルムを剥離したところ、上記めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着フィルムに転写されていた。これにより、ライン幅15〜20μm、ラインピッチ300±2μm、導体厚さ4.5〜6μmの格子状金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。転写後のめっき用導電性基材の表面を観察した結果、絶縁膜が剥離している箇所はなかった。ライン幅、導体厚さの測定は、得られた導体層パターンを一部切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、凸部の両側を測定したので計10点の値の最大値と最小値を採用した(以下も同様)。ラインピッチの測定は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率200倍で観察して測定し、測定は、無作為の5点で行った(以下も同様)。
【0095】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、UV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングし、ポリカーボネートフィルム(マクロホールDE、バイエル株式会社製、75μm)でラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた後、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0096】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を光学顕微鏡(接眼レンズ10倍、対物レンズ20倍)で観察し、5mm□中にあるライン以外の銅粒の転写した数を実測した。測定点は6点とした(以下同様)。5mm□中に10個以上銅粒が観測された場合をNGと判定した(以下同様)。200回繰り返し行った後も、パターン異常は観察されなかった。
【実施例2】
【0097】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
10cm角のステンレス(SUS304、仕上げ3/4H、厚さ100μm、日新製鋼(株)製)に400メッシュのポリエステル製スクリーン版にライン幅が40μm、ラインピッチが225μm、バイアス角度が45度で、格子状のパターンを形成した版を用い、アルカリ除去型エッチングレジストインク(226Black、Nazdar Company製)を塗布した後、スキージで余分なレジストインクを50mm/minの速度でかき取った。また、もう一方の面には、上記レジストインクを全体に塗布した。乾燥炉を用いて120℃で5分乾燥させ、SUS板の一方の面上にライン幅40μm、ラインピッチ225μm、バイアス角度45度のレジストマスクを形成し、他方の面全体にレジスト膜を形成した(図7(b)に対応する)。さらに、40℃に加温した塩化第二鉄水溶液(45°Be‘、鶴見曹達株式会社製)を用いて、SUS板をエッチングした。エッチングは、SUS板に形成される凸部の上面の幅が25μmになるのを目安に行った。実際の凸部上面の幅は24〜27μmであり、凸部上面の間隔(ピッチ)は、225±2μm、凸部の高さは17〜22μmであった。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面にレジスト膜が形成されているため、エッチングされなかった(図7(c)に対応する)。次いで、めっき用導電性基材を、液温30℃で5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると、凸部パターンが形成された面及びその反対面に形成されたレジスト膜が除去された(図7(d)に対応する)。
【0098】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
膜厚が2.8〜3.2μmとなるようにDLC膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして第一の絶縁層を形成した。
【0099】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、上記の導電性基材の凸部パターンがある面と反対の面に保護用の粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り合わせたものを陽極にして、陰極をチタン板として、アニオン型電着塗料(AMG−5E/5W、(株)シミズ製エポキシ樹脂を主成分とする電着塗料)中で、10V60秒の条件で、上記めっき用導電性基材(中間体)に電着塗装した。水洗後100℃10分間乾燥した。次いで、180℃30分の条件で窒素気流下電着塗膜を焼付けて絶縁層を形成した。炉内の酸素濃度は0.5%であった。別途同条件で電着した電着塗料の厚さは、2.9〜3.5μmであった。
このようにして、凸部パターン面全面に第一及び第二の絶縁膜が施された導電性基材を得た(図8(f)に対応する。ただし、第2の絶縁膜はマスク層ではない。)。
【0100】
凸部パターン面全面に絶縁層が形成されているめっき用導電性基材において、絶縁層の上に、シリコン系のレジストDLR−501(NTTアドバンテステクノロジ(株)製)をスピンコートで塗布した。スピンコータの回転速度を500rpmとして、10秒間回転した後、1000rpmにして30秒間回転した。次いで、90℃に加熱したホットプレート上で、90秒間加熱乾燥した。絶縁層のTOP部におけるシリコン系レジストの厚みは1μmであった(図9(j)に対応する)。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面にある絶縁層の上にあるシリコンレジスト層を除去した(図9(k)に対応する)。
次いで、反応性イオンエッチング装置(CSE−1110(株式会社アルバック製))を用いて、凸部の上面にある絶縁層を酸素プラズマを用いてドライエッチングした(図9(h)に対応する)。ガス組成は、酸素16sccm、アルゴン2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力200Wで10分間ドライエッチングした(図9(m)に対応する)。
DLC膜を酸素プラズマでエッチングした後、PLASMA CHAMBER MODEL PC−101A、RFGENERATOR MODEL RFG−500A(共にヤマト科学株式会社製)のプラズマアッシャー装置を用いて、中間層をドライエッチングした。エッチングの際のガス組成は、CF4 10sccm、O2 2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力300Wで30分間ドライエッチングすることで、凸部の上面を露出させた。この際、シリコン系レジストは、上記ガス組成に対するエッチングレートが高いので、中間層と共にエッチングされたが、残渣が少量あったので、50℃に加温したジプロピレングリコールモノメチルエーテル:モノイソプロパノールアミン=75:25の溶液に上記めっき用導電性基材を3分間浸漬し、絶縁皮膜上に形成されているシリコン系レジストの残渣を剥離した(図9(n)に対応する)。
以上により、凸部先端部分のステンレスが露出し、その露出幅は、29.9〜35.0μm、絶縁高さ12.3〜14.0μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で0.5〜1.5μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、0.5〜1.5μmであった。また、エッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅24〜27μmは変わらなかった。
以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.870〜1.000(45〜49度に相当)であった。
【0101】
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材の凹凸のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸70g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、25℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を20A/dm2として、めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した金属の厚さが3μmになるまでめっきした。
【0102】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は3個であった。
【0103】
(転写)
次いで、実施例1で得たのと同一の転写用粘着フィルムをその粘着層が、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面に接するように、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき用導電性基材から粘着フィルムを剥離すると、上記めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着層表面に転写された。このようにして、ライン幅34〜38μm、ラインピッチ225±2μm、導体厚2.5〜3.5μmの格子状金属パターンが接着フィルム上に転写され、導体層パターン付き基材を得た。
【0104】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、実施例1と同様にしてUV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングした後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)の易接着処理を施していない面を、UV硬化型樹脂とでラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた。さらに、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させた後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)を剥離して、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0105】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。100回繰り返し行った後も、パターン異常は観察されなかった。
【実施例3】
【0106】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
ステンレスの種類を316Lに、サイズを314mm×150mmとしたこと及びレジスト膜のラインピッチを275μmとしたこと以外は全て実施例1と同様にして、SUS板をエッチングして形成された凸部上面の幅は5〜8μmであり、凸部上面の間(ピッチ)は、275±2μm、凸部の高さは35〜38μmであった。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面にレジスト膜が形成されているため、エッチングされなかった。次いで、めっき用導電性基材を、液温30℃で5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると、パターンが形成された面及びその反対面に形成されたレジスト膜が除去された(図7(d)に対応する)。
【0107】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
膜厚が2.6〜2.9μmとなるようにDLC膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして第一の絶縁層を形成した。
【0108】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、上記の第一の絶縁膜が形成された導電性基材の凸部パターンがある面に、バーコータを用いて、エポキシ系一液硬化型塗料CE−55S(日本ペルノックス(株)製)を塗布した後、150℃で30分硬化させた。導電性基材の一部を切り取り、断面の電子顕微鏡写真から測定した塗料の厚さは、8〜12μmであった。
このようにして、凸部パターン面全面に第1及び第2の絶縁膜が施された導電性基材を得た(図8(f)に対応する。ただし、第2の絶縁層はマスク層ではない)。
【0109】
(酸素プラズマによるドライエッチング)
さらに、全面に絶縁層が形成されているめっき用導電性基材において、パターンが形成された面に、シリコン系のレジストDLR−501(NTTアドバンテステクノロジ(株)製)をスピンコートで塗布した。スピンコータの回転速度を500rpmとして、10秒間回転した後、1000rpmにして30秒間回転した。次いで、90℃に加熱したホットプレート上で、90秒間加熱乾燥した。絶縁層のTOP部におけるシリコン系レジストの厚みは1μmであった(図9(k)に対応する)。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面にある絶縁層の上にあるシリコンレジスト層を除去した((図9(k)に対応する)。
【0110】
次いで、反応性イオンエッチング装置(CSE−1110(株式会社アルバック製))を用いて、凸部の上面にある絶縁層を酸素プラズマを用いてドライエッチングした(図9(h)に対応する。ただし、粘着フィルム9はない。)。ガス組成は、酸素16sccm、アルゴン2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力300Wで60分間ドライエッチングした。次いで、50℃に加温したジプロピレングリコールモノメチルエーテル:モノイソプロパノールアミン=75:25の溶液に上記めっき用導電性基材を3分間浸漬し、絶縁皮膜上に形成されているシリコン系レジストを剥離した(図9(m)に対応する)。
以上により、凸部先端部分のステンレスが露出し、その露出幅6.2〜11.1μm、絶縁高さ20.9〜22.9μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で2.0〜4.0μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、2.0〜4.0μmであった。また、エッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅5〜8μmは変わらなかった。
以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た((図9(n)に対応する)。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.424〜0.488(64°〜67°に相当)であった。
【0111】
(銅めっき)
φ100mm、幅200mmのステンレスロールに、前記で作製しためっき用導電性基材の背面とロールが接触するように、巻きつけて、つなぎ目を絶縁テープで貼り合わせた。さらに、側部からめっき液が染み込まないように、導電性基材の両端5mmを全周にわたって、絶縁テープで覆うように、ロールと導電性基材を貼り合わせ、一つの回転体とした。
次いで、図18に示すような装置構成で回転体103に電気銅めっきした。陽極102には白金でコーティングしたチタン製の不溶性電極を用いた。陰極には上記ステンレス製のロールをドラム電極とした。電解銅めっき用の電解浴100には、硫酸銅(5水塩)70g/L、硫酸180g/L、カパラシドHL(アトテックジャパン株式会社製、添加剤)20ml/Lの水溶液で25℃の電荷液101が収容され配管104を通じてポンプ105により、陽極102と回転体103の間に送られ、満たされている。回転体103の約半分がこの電解液に浸漬している。電流密度を7A/dm2となるように、両極に電圧をかけて上記導電性基材の領域Aの凸部の上面に析出する金属の厚みが2μm厚になるまでめっきした。このとき。上記のステンレスロールを1m/分の速度で回転させるようにした。
【0112】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は2個であった。
【0113】
(転写)
実施例1で作製した粘着フィルムを一旦ロール状で巻き取り、ロール状の粘着フィルムとした。このロール状の粘着フィルムから粘着フィルム107を巻き出し、その粘着剤層の面を上記回転体(ステンレスロール)の凸部の上面に析出した金属(銅)106に圧着ロール108により実施例1と同様のラミネート条件で、連続的に貼り合わせるとともに剥離することにより、金属106を粘着フィルムの粘着剤層に転写して、導体層パターン付き基材109を連続的に作製した。導体層パターン付き基材109はロール状に巻き取られた(図示せず)。また、このとき、粘着フィルムの導体層パターンが転写された面に離型PET(S−32、帝人デュポン株式会社製)をラミネートしながら巻き取ることにより、巻取り時のブロッキングを防止した。導体層パターンは、ライン幅9〜12μm、ラインピッチ275±2μm、導体厚1.5〜2.5μmであった。銅めっきが転写された粘着フィルムを30m巻き取った後も、ステンレスロール上への銅めっきとその転写性に変化が無く、絶縁膜の剥離箇所も観測されなかった。
【0114】
(保護膜の形成)
得られた導体層パターン付き基材の一部を切り取り、導体層パターンが形成されている面に、UV硬化型樹脂(アロニックスUV−3701、東亞合成株式会社製)をアプリケータ(ヨシミツ精機株式会社製、YBA型)を用いて15μm厚でコーティングし、PETフィルム(マイラーD、帝人デュポンフィルム株式会社製、75μm)をハンドロールを用いて気泡が入らないように静かにラミネートした後、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射して、保護膜を形成した。
【0115】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。めっき−転写を100回繰り返し行った(回転体を100回転させた)後も、パターン異常は観察されなかった。
【実施例4】
【0116】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
ロール状に巻いたSUS304箔(日新製鋼(株)製、仕上げ3/4H、幅200mm、厚さ100μm)と、PETフィルム(A−4100、東洋紡製)にバイロンUR−1350(接着剤、東洋紡(株)製)を乾燥塗布厚が20μmとなるように塗布して作製したロール状の接着フィルムをロールラミネータで貼りあわせて、ロール状のPETフィルム付きSUS箔(未加工)を作製した。ラミネート条件は、ロール温度120℃、プレヒート120℃30秒、圧力3MPa、ラインスピード0.5m/minとした。
次いで、上記で作製したロール状のPETフィルム付きSUS箔(未加工)及びロール状のレジストフィルム(フォテックH−Y920、20μm厚、日立化成工業株式会社製)をそれぞれ巻きだして、SUS304箔が露出している方の面にレジストフィルムをロールラミネータで連続的に貼り合わせ、ロール状に巻き取った。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が40μm、ラインピッチが400μm、バイアス角度が45ーで、格子状に形成したネガフィルムを、レジストフィルムを貼り合わせたステンレスを一部巻出し、その上に静置した。紫外線照射装置を用いてネガフィルムの上から紫外線を120mJ/cm2照射した。露光した部分を巻取り、露光していないレジストフィルムを貼り合わせた部分を巻きだして上と同様の条件でネガフィルムを静置して紫外線を照射した。この工程を10回繰り返してSUS304箔上に10パターンを露光した。これを1%炭酸ナトリウムを使用して現像機を通して現像することでSUS箔の上にライン幅40μm、ラインピッチが400μmのレジストマスクが一定間隔で配置されたPETフィルム付きSUS304箔を形成した。次いで、このPETフィルム付きSUS箔をエッチングラインに通し、SUS箔に格子模様状のパターン(凸部上面の幅9〜14μm、凸部上面の間隔(ピッチ)400±2μm、凸部の高さ18〜22μm)を一定間隔に配置した導電性基材を作製した。
【0117】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
次いで、エッチングしたPETフィルム付きSUS箔をパターン毎に切断した後、個々のPETフィルム付きSUS箔毎に、実施例2と同様にして、中間層、DLC膜の形成を行った。
【0118】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、第二の絶縁層の密着性向上のため、DLCの親水性をあげるため、第一の絶縁層の表面に酸素プラズマ処理を行った。PLASMA CHAMBER MODEL PC−101A、RFGENERATOR MODEL RFG−500A(共にヤマト科学株式会社製)のプラズマアッシャー装置を用いて、O2 20sccmのガスを用い、ガス圧は4Paとした。RFの出力300Wで1分間表面処理を行うことで、DLCの表面改質を行った。次いで、ポリシラザン溶液(アクアミカNP110、クラリアントジャパン(株)製)をスプレーで塗布し、180℃1時間大気中で加熱後、室温で7日放置してポリシラザンをシリカに転化させた。シリカ層の厚みは、導電性基材の一部を切り取って注型し、断面を電子顕微鏡で観察することにより確認したところ、1.5〜2.5μmであった。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面のシリカ層のみを除去した。
【0119】
さらに、実施例2と同条件でDLC及びSi層のドライエッチングを行い、凹部が絶縁層で覆われたPETフィルム付きめっき用導電性基材を合計で10枚製造した。この場合、第二の絶縁層がそのままドライエッチングのエッチングレジストの役割を果たしているため、剥離せずにそのまま次の工程に使用した。
以上の操作により得られた1枚のPETフィルム付きめっき用導電性基材を使用して次の項目を調べた。その結果は、凸部先端のステンレスが露出し、その露出幅11.0〜18.8μm、絶縁高さ14.2〜19.2μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で2.5〜4.5μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、2.5〜4.5μmであった。また、エッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅9〜14μmは変わらなかった。
以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.509〜0.601(59°〜63°に相当)であった。
【0120】
(フープ状導電性基材の作製)
次いで、幅200mm、長さ10mの粘着フィルム(SGA、日立化成工業(株)製)の粘着剤面に、上記で作製した10枚の凹部が絶縁層で覆われたPETフィルム付きめっき用導電性基材のPETフィルム面を、隙間無く貼り合わせて、長さ10mの凹部が絶縁層で覆われたPETフィルム付きめっき用導電性基材(以下、長尺のめっき用導電性基材という)を得た。次いで、図18に示すような装置に、上記長尺のめっき用導電性基材を通紙し、フープ状導電性基材を得た。つなぎ目は、市販のガムテープを用いて繋ぎ目の裏側から貼り合わせ、表側は銅テープ(CHO−FOIL、50mm幅、太陽金網株式会社製)で貼り合わせた。
【0121】
(導体層パターン付き基材の作製)
上記で得られたフープ状導電性基材を用い、図18に示す装置により導体層パターン付き基材を作製した。以下、図18を用いて説明する。
まず初めに、上記で得られたフープ状導電性基材110はロール111〜128により、前処理槽129、電解浴槽130、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を通って周回するように構成されている。
前処理槽129には、5%硫酸水溶液が収容されており、電解浴槽130には、硫酸銅(5水塩)150g/L、硫酸150g/L及びカパラシドHL(アトテックジャパン株式会社製、添加剤)70ml/Lの水溶液からなり温度が30℃に調整された電解液が収容されている。黒化処理槽132には、コパール(オーデック社製)の4倍希釈液が収容されている。また、防錆処理槽134には0.5%のベンゾトリアゾール水溶液が収容されている。
電解浴槽130では、フープ状導電性基材110を陰極とし、含燐銅を陽極として電流密度を30A/dm2で電解銅めっきされるように構成されている。本例では、凸部の露出部分に析出する金属の厚さが1μmになるのを目安にめっきして、導電性基材上に導体層パターン作製した。
水洗槽131における水洗後、導電性基材上の導体層パターンは、コパール液(オーデック社製)を用いて実施例1と同様に黒化処理が黒化処理層132で行われ、水洗槽132における水洗後、防錆処理槽134で防錆処理され、さらに、水洗槽135で水洗した後、ロール状で作製した実施例1で作製した粘着フィルム136を用いて、実施例1と同様の条件で、圧着ロール137を用い、導体層パターンを接着フィルム136上に連続的に転写して、導体層パターン付き基材138を連続的に得、これはロール状に巻き取られた。
凸部の露出部分に析出した銅めっきを、接着フィルムに転写して形成されたパターンは、ライン幅11〜16μm、ラインピッチ400μm、厚さ0.9〜1.5μmであった。
接着フィルムに転写後、転写されたラインを顕微鏡で観察した結果、全面で、ラインの割れは無かった。なお、導体層パターン付き基材138をロール状に巻き取る際には、導体層パターンの面に離型PET(S−32、帝人デュポン株式会社製)が接触するようにラミネートした。上記導体層パターン付き基材を50m巻き取った後も、導電性基材上に析出した銅めっきの転写性に変化が無く、導電性基材の凹部に形成された絶縁膜の剥離箇所も観測されなかった。
次いで、離型PETを剥離しながら、得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが形成されている面に、UV硬化型樹脂(アロニックスUV−3701、東亞合成株式会社製)を15μm厚でコーティングし、PETフィルム(マイラーD、帝人デュポンフィルム株式会社製、75μm)でラミネートした後、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射して、いわゆるロール・トゥ・ロール(roll−to−roll)で連続的に保護膜を形成して、保護槽を有する導体層パターン付き基材を得た。
導体層パターン付き基材の導体層パターンは、ライン幅11〜16μm、ラインピッチ400±2μm、導体厚0.9〜1.5μmであった。
【0122】
(初期ピンホール)
別途同様にして作製した導電性基材を用い、枚葉で含燐銅を陽極として電流密度を30A/dm2で凸部の露出部分に析出する金属の厚さが1μmになるまでめっきを行い、めっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は13個であった。
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。めっき−転写を50回繰り返し行った後も、パターン異常は観察されなかった。
【0123】
(比較例1)
(絶縁膜を有する導電性基材の作製)
実施例1と同様にしてパターニングし、第一の絶縁層すなわちDLC膜を2.8〜3.3μm厚形成させた。第二の絶縁層は形成せず、実施例1と同様にドライエッチング、中間層の除去を行い、絶縁膜を有する導電性基材を得た。
【0124】
(銅めっき)
上記で得られためっき用導電性基材の凹凸のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸50g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、30℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を20A/dm2として、めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した金属の厚さが3μmになるまでめっきした。
【0125】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は205個であった。
【0126】
(転写)
実施例1で得たのと同一の転写用粘着フィルムをその粘着層が、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面に接するように、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき用導電性基材から粘着フィルムを剥離すると、上記めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着層表面に転写された。このようにして、ライン幅11〜21μm、ラインピッチ300±2μm、導体厚2.5〜3.5μmの格子状金属パターンが接着フィルム上に転写され、導体層パターン付き基材を得た。
【0127】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、実施例1と同様にしてUV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングした後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)の易接着処理を施していない面を、UV硬化型樹脂とでラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた。さらに、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させた後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)を剥離して、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0128】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。絶縁層高さが高いので、1回目では銅粒は転写されず、またピンホールの場所によって転写される回数が異なるため、銅粒が密集した箇所はすぐには観察されなかった。しかし、19回目で5mm□中に12個銅粒が密集して転写されている箇所が観察されたため、NGと判定した。
【0129】
以上の実施例又は比較例で得られた導体層パターンのライン厚み、ライン幅、初期ピンホール、パターンの異常の有無を評価した結果を表1に示す。
なお、ライン幅、ピッチは顕微鏡写真を元に実測した。ライン厚みは得られた導体層パターンを一部切り取って樹脂で注型し、断面を顕微鏡観察することにより実測した。
【0130】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】凸部に対する凹部の幾何学図形が形成されている導電性基材の一例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図の一部。
【図3】図1のA−A断面図の一部であって図2とは別の例。
【図4】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その表面に絶縁層を形成した状態の導電性基材の断面図。
【図5】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その表面に絶縁層を形成した状態の導電性基材の他の例を示す断面図。
【図6】本発明における導電性基材の凸部のパターン及び凸部側面の絶縁層の構造の一例を示す断面図。
【図7】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製方法の一例を示す断面図。
【図8】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の一例を示す断面図。
【図9】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の一例を示す断面図。
【図10】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の一例を示す断面図。
【図11】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の他の例を示す断面図。
【図12】作製しためっき転写用版を用いた導体層パターン付き基材の作製方法の一例を示す断面図。
【図13】導体層パターンが黒化処理された金属パターンからなる導体層パターン付基材の断面図。
【図14】導体層パターンが黒化処理された金属パターンからなる導体層パターン付基材の断面図。
【図15】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図16】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図17】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図18】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図19】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【図20】フープ状のめっき用導電性基材を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【符号の説明】
【0132】
1:めっき用導電性基材
2:凹部
3:凸部
4:凸部の上面
4′:凸部の露出部分
5:凸部の側面
6:絶縁層
7:レジストフィルム
8:第一の絶縁膜
8′:第二の絶縁膜
9:粘着フィルム
10:マスク層
11:金属
12:粘着フィルム
13:別の基材
14:粘着層
15:導体層パターン付き基材
16、17:黒色層
18:金属
19:他の基材
20:保護樹脂
21:接着剤
22:他の基材
23:接着剤又は粘着剤
24:保護フィルム
100:電解浴
101:電解液
102:陽極
103:回転体
104:配管
105:ポンプ
106:金属
107:フィルム
108:圧着ロール
109:導体層パターン付き基材
110:フープ状の導電性基材
111〜128:搬送ロール
129:前処理槽
130:めっき槽(電解浴槽)
131:水洗槽
132:黒化処理槽
133:水洗槽
134:防錆処理槽
135:水洗槽
136:プラスチックフィルム基材(接着フィルム)
137:圧着ロール
138:導電層パターン付き基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき用導電性基材、その製造法、電性に優れかつ光透過性を有するようにパターニングされた導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた電磁波遮蔽部材に関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設、ホール、病院、学校、企業ビル、住宅等の壁面、ガラス窓、樹脂パネル、電磁波を発生するディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する方法は、従来種々提案されている。例えば、被遮蔽面上に電磁波遮蔽塗料を全面塗布する方法、被遮蔽面上に金属箔を貼り合わせる方法、金属めっきされた繊維メッシュを樹脂板に熱ラミネートしてなる電磁波遮蔽シートを、被遮蔽面に貼り合わせる方法、導電性繊維をメッシュ状に編んだものを被遮蔽面に貼り合わせる方法等が一般的に行われている。
【0003】
これらのうち、透明ガラス面、透明樹脂パネル面、陰極線管(CRT)やプラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイの表示面等を電磁波遮蔽する場合においては、電磁波遮蔽用部材がなるべく薄いことが要求されるとともに、光透過性(透明性)と、これに相反する電磁波遮蔽性とをバランスよく両立させることができるものとして、金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材が主流になっている。
【0004】
金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材の製造法として、特許文献1にはメッシュ状に金属電着が可能な電着基板上に金属電解液を使用して金属を電着し、接着剤を介して電磁波遮蔽基板に接着転写して電磁波遮蔽板を作製する方法(以下、転写法という)が記載されている。上記の電着基板は、金属板等の導電性基板の上に、電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ−ンと逆のパターンを形成し、この結果、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製される。特許文献2には、また、絶縁層支持体上に凸状の導電性メッシュ層を形成した電着基板を用いる方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、電子部品の回路パターンやセラミックコンデンサの電極パターンを作製するための金属層転写用ベースシートが開示される。金属層転写用ベースシートは、ベース金属層および電気絶縁層を備え、前記ベース金属層の表面には、転写金属層を電解めっきにより形成するための凸状パターンが形成されており、前記電気絶縁層が、前記ベース金属層の表面における前記凸状パターンが形成されていない部分に、形成されているものである。金属層転写用ベースシートのさせ製法法としては、まず、ベース金属層の表面に、ドライフィルムレジストなどを用いてエッチングレジストを凸状パターンと同一パターンで形成し、エッチングレジストで覆われず露出しているベース金属層の表面をエッチングして溝を形成し、この後、エッチングレジストを除去し、エッチングされたベース金属層の全表面に電気絶縁層を形成し、次いで、凸状パターンが露出するまで電気絶縁層を研磨する方法が開示される。このとき、電気絶縁層の表面とベース金属層の凸状パターンの表面は同一平面上に配置され面一となる。また、その作製方法の他の例として、めっきレジストからなる電気絶縁層を、ベース金属層の表面に、ドライフィルムレジストなどを用いて凸状パターンと逆パターン(反転パターン)で形成し、電気絶縁層の間から露出するベース金属層の表面に、電解めっき金属層を凸状パターンで形成するが、このとき、電解めっき金属層の厚みを、電気絶縁層よりも厚くする方法が記載される。電解めっき金属層の表面を、電気絶縁層の表面よりも高く形成することによって、凸状パターン上に電気めっきにより形成された転写金属層を粘着シートに転写するときに、上記電気絶縁層がこの粘着シートに損傷を与えることを防止することができる旨記載される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−26980号公報
【特許文献2】特開2004−186416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の転写法は、電磁波遮蔽部材の作製に当たりコスト低減をはかることができる方法として期待できる。電着基板は、金属板等の導電性基板の上に、電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ−ンを形成し、この結果、メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製されている。この電着基板を用いた場合、数回〜数十回程度の繰り返し使用は可能であるが、数百回〜数千回繰り返し使用が出来ず量産レベルにはならないという問題がある。これは、電着基板上のメッシュパターンを形成する絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうためである。
また、特許文献1には、絶縁層支持体上に凸状の導電性メッシュ層を形成した電着基板を用いる方法が記載されているが、この方法によれば、実際は、導電性メッシュの側面にも金属が電着され、このことがメッシュ状電着金属層の接着転写に対する抵抗となり、剥離ができなかったり、剥離できたとしてもメッシュパターンに折れが発生し、電磁波シールド性が低下するといった不良が起こるという問題があることを、本発明者らは確認した。
【0008】
特許文献2において、電気絶縁層の表面とベース金属層の凸状パターンの表面が同一平面上に配置され面一となっている金属層転写用ベースシートを用いて凸状パターン上に形成された転写金属層を粘着シートに転写する場合、特許文献1についての上記説明と同様に、電着基板上の電気絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうという問題がある。
また、特許文献2において、電解めっき金属層からなる凸状パターンの表面を電気絶縁層の表面よりも高く形成した金属層転写用ベースシートを用いて凸状パターン上に形成された転写金属層を粘着シートに転写する場合、特許文献1についての上記説明と同様に、凸状パターンの側面にも転写金属層がめっきされ、このことが転写金属層の接着転写に対する抵抗となり、転写金属層を凸状パターンから剥離ができなかったり、剥離できたとしてもメッシュパターンに折れが発生し、電磁波シールド性が低下するといった不良が起こるという問題がある。さらに、凸状の導電性メッシュ層に析出した金属を転写する際に、電気絶縁層と凸状パターンの表面の高さの差が、最大でも数μm程度である場合には、転写用の接着フィルムに転写する際の圧力や、基材のたわみ等により、特許文献1についての上記説明と同様に、電着基板上の電気絶縁膜が、接着転写により剥離応力を受け、少々の繰り返し使用で導電性基材から絶縁膜が剥離してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑み、導電性及び光透過性を有するようにパターニングされた導体層パターン付き基材を転写法を用いて生産性よく製造するためのめっき用導電性基材及びその製造法を提供するものである。また、本発明は、そのような導電性基材を用いた導体層パターン付き基材の製造法、導体層パターン付き基材及びそれを用いた電磁波遮蔽部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、次のものに関する。
1.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2層以上の絶縁層が形成されており、その絶縁層の全部又は一部が2層以上からなり、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材。
2.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2種類以上の絶縁層が形成されており、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材。
3.絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である項1又は2のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
4.凸部の間隔が100μm〜1000μmである項1〜3のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
5.一の絶縁層が炭素を主成分とする材料であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
6.第一の絶縁層がダイヤモンドライクカーボン(DLC)から成ることを特徴とする項5に記載のめっき用導電性基材。
7.導電性基材と絶縁層の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物あるいは炭化物の層を介在させてなる項6に記載のめっき用導電性基材。
8.第二の絶縁層が第一の絶縁層の微小の穴を塞ぐように形成されていることを特徴とする項1〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
9.第二の絶縁層が有機物を塗布してなることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
10.第二の絶縁層が電着塗料であることを特徴とする項1〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
11.第二の絶縁層が絶縁性の無機物を塗布してなることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
12.回転体(ロール)又は回転体(ロール)に巻き付けられるものである項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
13.フープ状である項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
14.凸部の導電性基材の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなっている項1〜13記載のめっき用導電性基材。
15.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30°〜80°に相当する項14記載のめっき用導電性基材。
16.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数1】
を満足する項14記載のめっき用導電性基材。
17.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に絶縁層をその全部若しくは一部が2層以上となるように、又は、2種類以上となるように形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、形成された絶縁層の上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去することにより凸部上端から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
18.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に中間層及びその表面に第一の絶縁層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる絶縁層を形成し、その上に第二の絶縁層を形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、DLCの層上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去し、さらにその下の中間層を除去することにより凸部上面から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
19.中間層をドライエッチングあるいは機械研磨により除去する項18に記載のめっき用導電性基材の製造法。
20.凸部の先端付近に形成されたマスク層の除去が、機械的な研磨により行われることを特徴とする項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
21.ドライエッチングが、少なくとも酸素プラズマを用いたエッチングを含む項17〜20のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
22.凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部先端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材が、導電性基材の表面に所定のパターンでレジストマスクを形成する工程及びその後導電性基材にエッチングを施す工程を行うことにより作製されたものである項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
23.導電性基材表面に、凸部の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなるように導電性基材をエッチングする項22記載のめっき用導電性基材の製造法。
24.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30°〜80°に相当する項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
25.凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数2】
を満足する項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
26.項1〜16のいずれかに記載のめっき用導電性基材上に電気めっきまたは無電解めっきにより金属を析出させる工程及び上記導電性基材の凸部の上面に析出させた金属を別の基材に転写する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
27.別の基材が、接着性を有する項26記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
28.別の基材が表面に接着剤層を有する項27に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
29.凸部の導電性基材の露出部分に析出させた金属を別の基材に転写する工程の前に、導電性基材の凸部の導電性基材の露出部分に析出された金属パターンを黒化処理する工程を含む項26〜28のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
30.項26〜29のいずれかに記載の製造方法を行った後、別の基材に転写された金属パターンを黒化処理する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
31.項26〜30のいずれかに記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
32.項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
33.項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明のめっき用導電性基材は、凹部に絶縁層を有し、その絶縁層が、凸部上端より特定の高さより低く設けられ、絶縁層最下部からの高さが一定以上であることにより、繰り返し転写した場合の絶縁層の剥離の問題を解決し、めっき用導電性基材の寿命を永くすることができる。
また、本発明のめっき用導電性基材は、絶縁層のうちの少なくとも一つをDLCからなる絶縁層とすることにより、上記寿命をさらに永くすることができる。中間層により導電性基材と絶縁層の間の密着性を向上させることができ、これにより、めっき用導電性基材の寿命を、さらに、確実に、寿命を長くすることができる。
さらに、本発明の第二の絶縁層の存在は、第一の絶縁層に存在するピンホールを埋めることにより、不要な部分への金属の析出及びその転写に起因する導体層パターン付基材の外観不良を防止することができる。
【0012】
本発明のめっき用導電性基材の製造法によれば、上記のめっき用導電性基材が容易に製造でき、特に、絶縁層上のマスク層を機械研磨により除去すること、絶縁層及び場合によりその下の中間層を酸素プラズマでドライエッチングすることにより除去し、精度良く製造することができる。中間層は機械研磨により行うこともできる。
本発明の導体層パターン付き基材の製造によれば、光透過性に優れた導体層パターン付き基材が容易に製造でき、また、電磁波シールド性又は導電性に優れた導体層パターン付き基材を容易に製造できる。さらにまた、このような導体層パターン付き基材を生産効率よく製造できる。
【0013】
本発明における電磁波遮蔽部材は、特定の導体層パターンを使用することにより、光透過性及び電磁波シールド性に優れ、また、生産効率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るめっき用導電性基材に用いられる導電性材料は、その表面に電気めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものであり、金属であることが特に好ましい。また、その基材は、その表面に電気めっきにより形成された金属層を接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層が剥離しやすいものであることが好ましい。このような導電性基材の材料としてはステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料、ニッケルなどのめっき剥離性のよい材料からなることが特に好ましい。
【0015】
上記の凸部が形成されている導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、シート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。
【0016】
上記導電性基材の凸部は、導体層パターン付き基材における導体層パターンに対応するものであり、その導体層パターンは、最終的に電磁波遮蔽部材を作製したときの電磁波シールド層に対応するものである。この凸部に対する凹部の幾何学図形(凸部によって描かれる平面形状としての凹部の幾何学図形)としては、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型などを組み合わせた模様であり、これらの単位は、単独で又は2種類以上組み合わせて繰り返されることが可能である。
【0017】
電磁波遮蔽性の観点からは三角形が最も有効であり、可視光透過性の点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど導体層パターンの開口率が上がる。可視光透過性の点から開口率は50%以上が必要とされ、導体層パターンの開口率は50%以上であることがさらに好ましい。導体層パターンの開口率は、電磁波遮蔽材の有効面積(例えば、上記の幾何学図形が描かれている範囲の面積等電磁波遮蔽に有効に機能する範囲の面積)に対するその有効面積から導電層で覆われている面積を引いた面積の比の百分率である。
【0018】
導電性基材上に凸部に対する凹部の幾何学図形を形成する方法としては、表面が滑らかな導電性基材、例えば、平板状の導電性基材などに対して、上記の幾何学図形からなる凹部を形成するように加工する方法が最も簡便である。
図1は、凸部に対する凹部の幾何学図形が形成されている導電性基材の一例を示す斜視図である。図1で例示しているのは凹部2の幾何学図形としては正方形であり、導電性基材1に凹部2の幾何学図形が正方形になるように凸部3が格子状に形成されている。
図2及び図3は、図1のA−A断面を示し、図2では(a)〜(d)の4種、図3では(e)の1種を示す。凹部2及び凸部3の断面形状は適宜決定され、凸部3の側面5が、斜面((a)、(b)の場合)、曲面((c)の場合)、段階的斜面((d)の場合)等任意である。また、凹部2の底面も種々の形状がある。これらは、すべて、凸部の側面が少なくとも先端部分で傾斜角を有する。この傾斜角は、図中のαで、30ー〜80ーに相当することが好ましく、50ー以上であることがより好ましい。
凸部3の上面4は必ずしも平面でなくてもよく、上面全体又は上面の一部が平面から変形した形状であっても良いが、この場合、できるだけなめらかに湾曲していることが好ましい。ここで、凸部の先端部分とは、凸部の最先端から0.5〜5μm低い位置までの凸部の表面を意味する。
角度αの基準面は、凸部の上面又は水平面若しくは垂直面である。元の導電性基材として(ほぼ)均一な厚さのもの使用し、この一面に凸部パターンを施した場合には、他面を基準面とすることもできる。
また、断面観察の試料を水平面又は垂直面に載置又は固定し、これを観察することもできる。水平面又は垂直面は、適当な台などを使用して設定できる。
また、凸部を有する導電性基材の上にたわまない平板をのせてこの平板の面を基準面とすることもできる。また、導電性基材が円筒である場合は、その円筒より大きな断面が真円の円筒(基準円筒)を用意し、基準円筒を横にして、基準円筒の中に導電性基材を通してこれらの円筒を重ね、基準円筒の各断面円の頂点が水平になるようにし、この円筒の頂点に接する接面を基準面とすることもできる。
具体的には、導電性基材の断面の観察は、顕微鏡の倍率を適当にして、凸部の上面が観察できるようにし、導電性基材の他面(表面)が観察できるようにし、あるいは、基準となる物体が観察できるようにして基準面を確認し、適宜写真撮影後倍率を高くして詳細な断面(場合により倍率を低くして断面)を観察し、写真撮影することにより行い、角度αに関する測定を行うことができる。基準面の確認に際しては、定規等の基準になるものを同時に写し込むとよい。
以上で説明した基準面は、厚さ、高さ及び幅の測定の基準面にすることもできる。また、別の基材の表面は多くの場合変形することがなく、基準面として採用しやすい。
これに対し、図3に(e)として示すように凸部の側面5が垂直面の場合もあり得る。
【0019】
導電性基材に形成した凸部の先端部分の幅及びその間隔は、導体層パターンの開口率を50%以上とするために、凸部の先端部分の幅が1μm〜40μm、凸部の先端部分の中心間隔(ラインピッチ)が100μm〜1000μmであることが好ましい。
本発明おいて、凸部の先端部分の中心間隔(ラインピッチ)は、パターンが複雑な図形であったり、複数の図形の組み合わせであったりして簡単に決定できない場合は、パターンの繰り返し単位を基準としてその面積を正方形の面積に換算し、その一辺の長さであると定義する。
【0020】
導電性基材に形成した凸部3の高さを、凹部2の最も窪んだ部分から凸部3の先端までの高さと規定する。凸部3の高さは、11μm以上が好ましい。それは、凹部に絶縁層を形成しても凹部が十分な深さを有するためである。また、凸部3の高さの上限は、110μmが好ましい。凸部の高さを大きくしていくと、アスペクト比が大きくなるため、加工が難しくなり、加工費も高くなる。このことから、凸部の高さは60μm以下であることが特に好ましい。
【0021】
導電性基材上に凸部を形成させる方法としては、次のような方法をあげることができる。
(1)導電性基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)に、直接レーザ光を照射し、凹部を形成し、導電層パターンに対応した凸部を形成する方法、
(2)フォトリソグラフ法又は印刷法によって、導電性基材に光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂により幾何学図形状のパターン(レジストパターン)を形成する工程を行なった後、導電性基材をエッチングする方法、
(3)彫刻により導電性基材の凹部を形成すべき部分(導体層パターン付き基材の導体層パターンの開口部に対応する部分)を掘削する方法などがある。
導電性基材の材質が硬い場合、直接加工するには上記(1)方法(レーザ加工法)または(2)の方法(エッチング法)などを用いることが好ましいが、銅などの柔らかく加工性に優れた材料を用いる場合は、上記(3)の方法(彫刻法)により容易に加工することもでき、このとき、加工後に、クロム等の硬質のめっきを表面に施して、強度を上げることができる。
【0022】
上記(2)の方法において、印刷法を用いる場合には、レジストパターンの印刷方法としては様々な方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷、凸版印刷、凸版オフセット印刷、凸版反転オフセット印刷、凹版印刷、凹版オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などを用いることができる。レジストとしては光硬化性又は熱硬化性の樹脂が使用できる。
また、フォトリソグラフ法を用いる場合には、ドライフィルムレジストなどをラミネートし、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来るし、液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥あるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光し、現像した後にレジストフィルムのエッチング工程を経ることも出来る。光硬化性の樹脂にマスクを介して活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。枚葉で版のサイズが大きい場合、あるいはロール・トゥ・ロール(Roll−to−Roll)で作製する場合などはドライフィルムレジストをラミネートしてマスクを介して露光する方法が生産性の観点からは好ましく、めっきドラムなどに直接加工する場合にはドライフィルムレジストを貼り合わせるあるいは液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザーなどでダイレクトに露光する方法が好ましい。
また、上記(2)の方法における導電性基材のエッチングは、エッチング液を用いて行うことができる。エッチング液としては導電性金属の材質によって様々な種類があり、それぞれの金属に対してエッチング液が市販されているのでそれらを使用することができる。例えば、導電性金属がステンレスであれば、塩化第二鉄を用いることが一般的であり、チタンであればふっ酸系のエッチング液がよく用いられる。ステンレスのエッチングに関しては、塩化第二鉄の比重が40°Be(ボーメ)〜60°Be(ボーメ)の範囲の液が好んで用いられる。比重が低いとエッチングスピードは速いが、サイドエッチングが大きくなるため、凹部が浅くなる傾向にあり、逆に比重が高いと、エッチングスピードは遅いが、サイドエッチングが少なく、凹部が深くなる傾向にある。したがって、エッチング液の比重は、45°Be(ボーメ)〜50°Beであることがさらに好ましい。また、エッチング温度は、低いとエッチンスピードが低下し生産性が低下するため、40℃以上であることが好ましい。さらに、エッチング温度が60℃を超えると、エッチング液の腐食性が大きくなるため、エッチング槽をチタン製にする等設備投資が大きくなるため、60℃以下であることが好ましい。
残存するレジストは、導電性基材のエッチング後に、剥離液等を使用して剥離することができる。
【0023】
本発明におけるめっき用導電性基材は、その凹部がその一部を残し絶縁層で被覆されている。
めっき用導電性基材にめっきした際、めっきは等方的に生長するため、凸部露出部分の近傍の絶縁層に覆い被さるように析出する。絶縁層に覆い被さっためっきは、剥離転写する度に毎回、絶縁層に応力がかかる原因となる。従って、凹部全面に絶縁層が形成されている場合、転写時に絶縁層にかかる応力は、凸部露出部分の近傍が最も大きいので、凸部の先端部分を露出させることで、剥離の際に絶縁層にかかる応力を低下させることができ、結果的に凹部が絶縁層で被覆されているめっき用導電性基材の寿命を向上させることができる。凸部の先端部分の露出が小さすぎると、寿命向上の効果が小さく、大きすぎると側面に深くめっきが析出し、転写不良が発生することがあるので、露出している凸部の先端部分は、凸部最先端から、0.5〜5μm低い位置までであることが好ましく、0.5〜3μm低い位置までであることが更に好ましい。
【0024】
また、凸部パターンの寿命を長くするためには、凸部の露出部分に析出した金属を別の基材に転写する際に、その別の基材の接着面と導電性基材の凹部に形成されている絶縁層の接触を低減させることが好ましい。したがって、絶縁層を施した後の凸部の高さが、十分であることが好ましい。絶縁層の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなるため作業効率が低下する。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層と導電性基材の密着性が低下すると共に、ピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。
【0025】
絶縁層を有するめっき用導電性基材の構造を、図面を用いて説明する。図4は、本発明における凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の一例を示す断面図である。ただし、凹部の形状は、図2(c)で記載されているもので説明する。図4において、(a)、(b)及び(c)の3形態を示すが、いずれにおいても、導電性基材1は、凸部3に対し凹部2を有する。凹部2には絶縁層6が形成されており、凸部の側面5に沿って絶縁層6が形成されているが、凸部3の先端部分には形成されておらず、従って、凸部の先端部分は露出している。
図中h′は、前記した凸部の高さである。hは凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さ(以下、「絶縁高さ」という)である。tは絶縁層の厚さを示す。凸部の高さh′は、11μm〜110μmが好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。絶縁高さhは、10〜100μmであることが好ましく、tは、h′がhより小さくなるように決定されるが、10μm以下が好ましく、特に、凸部3の側面5において、少なくとも絶縁層の端の部分では厚さが1〜10μmであることが好ましい。さらに、凸部の先端部分は、露出させる。凸部の先端部分の露出の程度は、幅dが1〜40μmであることが好ましく、凸部の最先端からの距離(高さ方向)sは、0.5〜5μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることが更に好ましい。この距離sのために、剥離の際に絶縁層にかかる応力を低減することができる。
絶縁層は、薄膜絶縁層であることが好ましく、強度の不均一性をなくすために均一な厚さであることが好ましい。
図5は、本発明における凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の一例を示す断面図である。
図5に示すように、凸部の側面が垂直面の場合も上記の態様で凹部に絶縁層が施され、しかも、凸部の先端部分が露出しているのであれば、好ましい態様として使用できる。
絶縁高さhが低すぎると、転写の際に転写用基材が導電性基材に接触して転写用基材を傷つけたり、転写用基材の接着面が導電性基材に設けた絶縁層に接触しやすくなって絶縁層に剥離応力がかかるため、繰り返し使用した際に絶縁層が剥離することがある。
【0026】
図6は、本発明における導電性基材の凸部の先端部分の近辺の一例を示す断面図である。図6中、凸部3の先端部分は露出しており、それより下の側面5は絶縁層6で覆われている。凸部3の少なくとも露出部分は先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっているのが好ましい。凸部の露出部分は、絶縁層の端付近、例えば、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)との高さ方向の距離にh10対する第1の位置と第2の位置との幅方向の距離d10との関係(図6で示すところの高さh10に対する幅d10の関係)d10/h10が、角度で30°〜80°に相当することが好ましく、50°以上であることがより好ましい。
また、d10は
【数3】
であることが好ましく、d10は0.839×h10以上であることがより好ましい。
図6(a)では、導電性基材の凸部3として、断面が台形上のものとして模式的に図示したが、(b)に示すように凸部3の表面が凸凹であってもよい。また、絶縁層の表面は、(a)では平面の組み合わせとして模式的に図示されているが、これも(b)に示すように凹凸のある面の組み合わせであってもよい。なお、図6では、上下方向を強調して引き延ばし気味に図示してある。
また、図6中、前記第2の位置は、先端部分の側面に位置するように図示されているが、場合により、第2の位置が凸部の上面に位置していてもよい。
【0027】
上記のように凸部の側面が傾斜を有していると、そうでないときよりも、めっき用導電性基材の凸部の露出部分に電気めっきにより析出しためっき(金属)をより容易に、剥離でき、転写が円滑に行われる。
また、導電性基材にめっきを施すと、めっきが等方的に生長するため、導電性基材の凸部側面も露出しているとそこにもめっきが析出するが、転写の際に、転写用基材の接着面をめっきに接触させた後転写用基材を剥離すると、めっき層には、斜め方向の応力がかかった場合には、凸部の角度が80°を超えると、剥離(転写)の際に抵抗が大きくなりすぎて、転写不良が発生することがありうる。このことから、凸部の角度は30°〜80°の範囲であることが好ましく、50°〜80°であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明で用いられる絶縁層のための絶縁材料は、金属との密着性が高く、耐薬品性が強い材料が好んで用いられる。電気めっきもしくは無電解めっきの工程では、前処理液やめっき液に浸漬されるため、耐酸性と耐アルカリ性双方に強い材料が特に好ましい。このような樹脂としては、たとえば、熱硬化性樹脂としては、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等が用いられ、これらは自己硬化性のものである(硬化触媒を使用してもよい)。
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものが使用できる。このようなものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。絶縁層の形成方法としては、例えば、刷毛塗りや、スプレー塗装、さらには、ディッピングした後にスキージやブレード等で樹脂を掻き取った後に乾燥させるなどの方法が挙げられる。
【0029】
さらに、絶縁材料としては、皮膜の均一性や、形成の簡便さ、さらに環境に対する負荷が少ないことから、電着塗料を用いてもよい。
電着塗料は、それ自体既知のカチオン型及びアニオン型のいずれでも使用でき、ここでは、使用できる電着塗料の一例を示す。
カチオン型電着塗料には、塩基性アミノ基をもつ樹脂のペーストを作製し、これを酸で中和、水溶化(水分散化)してなる陰極析出型の熱硬化性電着塗料が包含される。カチオン型電着塗料は前記導電性基材(被塗物)を陰極にして塗装される。
塩基性アミノ基をもつ樹脂は、例えば、ビスフエノール型エポキシ樹脂、エポキシ基(またはグリシジル基)含有アクリル樹脂、アルキレングリコールのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリブタジエンならびにノボラツクフエノール樹脂のエポキシ化物などのエポキシ基含有樹脂のエポキシ基(オキシラン環)にアミン化合物を付加したもの、塩基性アミノ基をもつ不飽和化合物(例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−ビニルピラゾール、N−ジエチルアミノエチルアクリレートなど)を重合させたもの、第3級アミノ基含有グリコール(例えば、N−メチルジエタノールアミン)をグリコールの一成分とするグリコール成分とポリイソシアネート化合物との反応物、さらに、酸無水物とジアミン化合物との反応でイミノアミンが生成することによって、樹脂へアミノ基を導入したものなどがある。ここで、上記したアミン化合物としては、塩基性アミン化合物であって、脂肪族、脂環式もしくは芳香脂肪族系の第1級もしくは第2級アミン、アルカノールアミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン化合物が挙げられる。
また、カチオン電着塗料には、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、ブロツク化したポリイソシアネート化合物がよく知られているが、塗膜を加熱(約140℃以上)するとブロツク剤が解離して、イソシアネート基が再生し、上記の如きカチオン性樹脂中の水酸基などのイソシアネート基と反応性の基に対し架橋反応し硬化する。
さらに、カチオン型電着塗料には、顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料など。顔料の配合量は樹脂固形分100重量部あたり40重量部以下が好ましい)、親水性溶剤、水、添加剤などを必要に応じて配合することができる。
カチオン型電着塗料は、その固形分濃度を約5〜40重量%となるように脱イオン水などで希釈し、pHを5.5〜8.0の範囲内に調整することが好ましい。このようにして調製されたカチオン型電着塗料を用いてのカチオン電着塗料は、通常、浴温15〜35℃、負荷電圧100〜400Vの条件で被塗物を陰極として行うことができる。塗膜の焼付硬化温度は一般に100〜200℃の範囲が適している。
【0030】
アニオン型電着塗料は、カルボキシル基を持つ樹脂をベースとし、これを塩基性化合物で中和、水溶化(水分散化)してなる陽極析出型の電着塗料が好ましく、前記導電性基材(被塗物)を陽極として塗装される。
カルボキシル基を持つ樹脂としては、乾性油(あまに油、脱水ひまし油、桐油など)に無水マレイン酸を付加したマレイン化油樹脂、ポリブタジエン(1,2−型、1,4−型など)に無水マレイン酸を付加したマレイン化ポリブタジエン、エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルに無水マレイン酸を付加した樹脂、高分子量多価アルコール(分子量約1000以上で、エポキシ樹脂の部分エステルおよびスチレン−アリルアルコール共重合体なども含まれる)に多塩基酸(無水トリメリツト酸、マレイン化脂肪酸、マレイン化油など)を付加して得られる樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(脂肪酸変性したものも含む)、カルボキシル基含有アクリル樹脂、グリシジル基もしくは水酸基を含有する重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物を用いて形成された重合体もしくは共重合体に無水マレイン酸などを付加せしめた樹脂などがあげられ、カルボキシル基の含有量が、一般に、酸価で約30〜200の範囲のものが適している。
【0031】
また、アニオン型電着塗料には、架橋剤を配合することができる。架橋剤としては、ヘキサキスメトキシメチルメラミン、ブトキシ化メチルメラミン、エトキシ化メチルメラミンなどの低分子量メラミン樹脂を必要に応じて使用することができる。さらに、アニオン型電着塗料には顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料など。顔料の配合量は樹脂固形分100重量部あたり40重量部以下とすることが好ましい)、親水性溶剤、水、添加剤などを必要に応じて配合することができる。
【0032】
アニオン型電着塗料には、固形分濃度を約5〜40重量%に脱イオン水などで調整し、pH7〜9の範囲に保ってアニオン電着塗装に供することが好ましい。アニオン電着塗装は常法に従って行うことができ、例えば、浴温15〜35℃、負荷電圧100〜350Vの条件で、被塗物を陽極として実施することができる。アニオン電着塗膜は原則として100〜200℃、好ましくは140〜200℃の範囲に加熱して硬化せしめられるが、空気乾燥性の不飽和脂肪酸で変性した樹脂を用いた場合には室温で乾燥させることもできる。
【0033】
さらに、本発明で用いられる絶縁層として、絶縁層が炭素を主成分とする材料、たとえば、ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、DLC薄膜とする)のうち、絶縁性を有するものにて形成させることもできる。DLC薄膜は、酸素プラズマでエッチングすることが可能であり、さらに、耐薬品性にも優れているため、特に好ましい。
【0034】
DLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波によるプラズマCVD法が特に好ましい。
上記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香属炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。上記ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして上記した炭素源と水素ガスとの混合物、上記した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0035】
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、金属板等の導電性基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
上記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
中間層は、前記したようなドライコーティング法により形成させることができる。
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
【0036】
本発明のめっき用導電性基材に施す絶縁層は、その全部又は一部を2層以上とするか又は2種類以上の層からなるようにする。これにより、絶縁層が一層である場合の塗装欠陥を容易に防止することができる。塗装欠陥の例としては、絶縁層のピンホール、塗装ムラがある。絶縁層に塗装欠陥があると、めっき用導電性基材にめっきしたとき、その欠陥部分からめっきが成長し、不必要な金属が析出することがある。2層以上又は2種類以上の絶縁層の材質は、互いの特性を生かすために、2種以上の別種の材料であることが好ましい。
【0037】
例えば、DLC膜はドライコーティング法で成膜するため、ピンホールの発生を防止するには膜厚を厚くすることが好ましいが、そうするとDLCの成膜に時間がかかり、成膜コストも増大する。また、膜厚を厚くしてもピンホールが発生することがある。
絶縁層中にピンホールが存在すると、導電性基材にめっきを施した際にそこからもめっきが析出する。ピンホールから析出しためっきが即座に転写工程において、転写用基材に転写されることは限らないが、めっき及び転写を複数回繰り返すと次第にピンホールから析出しためっきが成長し、ある程度大きくなったところで転写される。ピンホールに析出しためっきは本来所望のパターン以外の部分に析出しためっきであるため、得られた導体層パターン付基材の外観不良となるため好ましくない。
このピンホール発生問題を回避するため、DLC膜の上に同種又は別種の膜を積層することができる。互いの特性を生かすために、別種の膜を積層することが好ましい。
積層する膜は、塗料などを用いて有機被膜をDLC膜の上からコートしても良い。そのための絶縁材料は、DLC膜との密着性が高く、耐薬品性が強い材料が好んで用いられる。電気めっきもしくは無電解めっきの工程では、前処理液やめっき液に浸漬されるため、耐酸性と耐アルカリ性双方に強い材料が特に好ましい。このような樹脂としては、たとえば、熱硬化性樹脂としては、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等が用いられ、これらは自己硬化性のものである(硬化触媒を使用してもよい)。
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものが使用できる。このようなものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。絶縁層の形成方法としては、例えば、刷毛塗りや、スプレー塗装、さらには、ディッピングした後にスキージやブレード等で樹脂を掻き取った後に乾燥させるなどの方法が挙げられる。
【0038】
また、積層する膜として電着塗料を用いても良い。電着塗料は通電する箇所に析出するため、DLC膜の上から電着塗装を行うことにより、ピンホールの上にしか電着塗装膜が生成せず、塗膜の形成を必要最小限に抑えることができる。電着塗料としては、前述の記載と同様、アニオン型もカチオン型も同様に用いることができる。
【0039】
他に積層する膜として、絶縁性の無機膜をコーティングしても良い。無機材料としては、ウェットコーティング法を用いる場合にはアルカリ金属、オルガノポリ金属、オルガノアルコキシ金属、アルコキシ金属、変性アセチルアセトネート金属等からなる金属酸化物系ポリマーや、無機フィラーを含有した塗料を、アルコールや水などの溶剤を加えた状態でスプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。また、金属のフッ化物錯体を用いて液層析出法(LPD法)などにより絶縁層を形成させることもできる。また、ドライコーティング法で各種金属の酸化物を形成させることも可能である。コーティングする方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングといったPVD法や、プラズマCVD,熱CVDといったCVD法の他、溶射などの方法を用いて作製することができる。具体的には、Al2O3、Cr2O3、Fe2O3、MgO、SiO、SiO2、SnO2、TaO5、TiO2、WO3、Y2O3、ZnO、ZnO2、ZrO2等の皮膜が好ましく用いられる。
【0040】
また、有機被膜や無機被膜とDLC膜の密着性を向上させるために、コロナ処理、イトロ処理、プラズマ処理、フレーム処理などによりDLC膜の表面に親水性の官能基を導入し、その後に上述の有機被膜、無機被膜をコーティングしても良い。また、プライマやシランカップリング剤などを一層塗布してDLC膜と有機被膜、無機被膜との密着性の向上をはかることができる。
【0041】
本発明において絶縁層を2層以上形成させた後の合計の厚さが1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなるため作業効率が低下する。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層と導電性基材の密着性が低下すると共に、2層以上コーティングしてもやはりピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。
【0042】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造法を図面を用いて説明する。
図7〜図10は、めっき用導電性基材の作製方法を示す工程の一例を断面図で示したものである。これらにおいて、図2(c)で示す断面形状を有する導電性基材を用いて例示する。
まず、導電性基材1の両面に光硬化性樹脂層7を形成する(図7(a))。フォトリソグラフ法を用いて導電性基材1の一方の表面の光硬化性樹脂層7をパターン化する(図7(b))。パターン化された光硬化性樹脂層7をエッチングレジストとして導電性基材をエッチングすることにより、図に示すエッチングされた導電性基材が得られる(図7(c))。このとき、凸部2の側面5の傾斜角を調整することができる(少なくとも凸部の先端部分において)。傾斜角の調整は、エッチング液である塩化第二鉄溶液の比重とエッチング温度を最適化することなどにより行うことができる。次いで、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性の水溶液に浸漬して、エッチングレジストを剥離する(図7(d))。
【0043】
次いで、この導電性基材1の一方の面を剥離可能な粘着フィルム9を貼り合わせて保護し、エッチングした面の全面に第1の絶縁層8を被覆する(図8(e))。
その上に、同種又は別種の第2の絶縁層を前面に形成する。特に、第2の絶縁層を絶縁性の無機被膜で形成した場合、それがそのままドライエッチング時のマスク層となるため、マスク層除去の工程は不要である。第2の絶縁層として、マスク層10となる無機被膜を形成した場合の例、(図8(f))にしめす。
ついで、マスク層10が形成されている箇所では、絶縁層がエッチングされないため、導電性基材1の凸部3の先端部分に形成された絶縁層8の上のマスク層10を除去する(図8(g))。マスク層10のこの部分的な除去は凸部3の露出させる先端部分の幅を勘案して除去される。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、露出する絶縁層の幅が、上面の幅よりも広くなるようにすることが好ましい(図8(g))。これにより、次の絶縁層8の部分的な除去において、凸部3の上面付近の側面部の絶縁層の除去が行いやすくなる。特に、研磨によるマスク層10の除去を行うと図8(g)に示すようになる。
次いで、絶縁層にドライエッチングを施すことにより、凸部3の先端部分に形成された絶縁層8及びを除去することができ、これにより凸部3の先端部分を露出させることができる((図8(h))。
最後に、マスク層10の突出部を研磨等により除去することにより、本発明のめっき用導電性基材とすることができる((図8(i))。
【0044】
上記と同様に導電性基材1の一方の面を剥離可能な粘着フィルム9を貼り合わせて保護し、エッチングした面の全面に第1の絶縁層8を被覆する(図8(e))。ついで、その上に有機被膜等からなる第2の絶縁層8′を形成する(図8(f)と同様であるが、第2の絶縁層はマスク層でないものとする)。この後に、プラズマエッチングに対するマスク層10を第2の絶縁層の上に形成する(図9(j))。図9(j)では図8(e)の全面に第二の有機被膜絶縁層が形成された場合を例としてあげて図示している。
次いで、絶縁層8及び8′の上のマスク層11を除去する(図9(k))。マスク層10のこの部分的な除去は凸部3の露出させる先端部分の幅を勘案して除去される。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、露出する絶縁層の幅が、上面の幅よりも広くなるようにすることが好ましい(図8(e))。これにより、次の絶縁層8及び8′の部分的な除去において、凸部3の上面付近の側面部の絶縁層の除去が行いやすくなる。特に、研磨によるマスク層10の除去を行うと図9(k)に示すようになる。
次いで、絶縁層にドライエッチングを施すことにより、凸部3の先端部分に形成された絶縁層8及び8′を除去することができ、これにより凸部3の先端部分を露出させることができる((図9(m))。
特に、酸素ガスでプラズマエッチングを行った場合などには、導電性基材がストッパー層となる。凸部に平面的な又はほぼ平面的な上面がある場合、凸部3の上面の幅を超えた部分の絶縁層を露出させておけば(図9(k))、絶縁層のドライエッチングによる除去が、凸部の側面部にまで及び、その結果、凸部の側面まで露出させることができる((図9(m))。側面部の絶縁層の除去の制御は、ドライエッチングの時間、出力によって行うことができる。
次いで、凹部3の絶縁層8及び8′上に形成されているマスク層10は、薬液浸漬等により除去される。このようにして本発明に係るめっき用導電性基材の一例を作製することができる(図9(n))。
【0045】
また、第2の絶縁層を絶縁性の無機被膜で形成した場合、それがそのままドライエッチング時のマスク層となるため、マスク層除去の工程は不要である。マスク層の最先端は導電性基材の凸部先端よりもつきだした形状になっており、実際の使用時に欠けやすくなるが、先端部が欠けてもピンホール抑制の効果は失われず、第2の絶縁層そのものが剥離しない限りは問題とならない。
【0046】
さらに、DLCからなる絶縁層と導電性基材の間に中間層を設けた場合、中間層が例えば有機材料である場合には、上記の酸素プラズマで、DLCからなる絶縁層の除去に引き続いて中間層の除去が行え、図8(f)に示すのと同様の構造のめっき用導電性基材とすることができる。中間層が炭素を主成分とする材料でない場合には、酸素プラズマによる中間層のエッチングが困難となるが、この場合には、絶縁層及び中間層の材料に合わせて、ガスを変更するかもしくは、中間層の厚みが0.5μm以下程度であれば、弱い力で機械研磨することにより凸部の先端部分の露出幅を太らせることなく、凸部の先端部分に形成された中間層を除去することが可能である。
【0047】
DLC薄膜をドライエッチングした際に、中間層が酸素プラズマでエッチングされない場合には、ガスを変更して中間層をドライエッチングするか、もしくは、機械研磨で除去することができる。中間層は薄い皮膜であるため、ラインを太らせること無く、軽い研磨で除去することができる。なお、中間層が導電性である場合には、通電して析出させためっきが中間層から容易に剥離させることができるなら、必ずしも中間層を除去する必要はなく、凸部の露出部分において、それ自体を導電性基材の一部とすることができる。
【0048】
前記において第2の絶縁層として有機被膜を形成させる場合に、電着塗料を用いた場合には、通電する部分のみがコーティングされるため、図10(a)の8′のように部分的にコーティングされる。これにより、第1の絶縁層のピンホール等の塗装欠陥部分のみを第2の絶縁層により補修することができる。この後は、前記と同様にして、マスク層の形成、プラズマエッチング及びマスク層の除去を行い、本発明のめっき用導電性基材とすることができる(図10(b))。
【0049】
本発明におけるマスク層は、無機系と有機系のマスク層に大別できる。
無機系のマスク層としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、金(Au)、チタン(Ti)等の金属が、特に酸素プラズマに対する耐性が強く好ましく用いられる。これらの膜は、スパッタ法、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電着法、無電解めっき法などの薄膜形成方法により形成される。これらの材料の中では、酸素プラズマに対する耐性が高く、廉価であり、蒸着が容易で、酸性物質に対しても塩基性物質に対しても可溶であることから、アルミニウム(Al)が好んで用いられる。アルミニウムは導電性であるため、ドライエッチング後に残しておくと導電性基材の全面にめっきが析出するので、除去する必要がある。アルミニウムのエッチング剤としては、塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム等、また酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸及びその塩等であるが、絶縁層の耐性を考慮して、適宜選択する。
さらに、酸素プラズマに対する耐性を持つ無機材料としては、ウェットコーティング法を用いる場合にはアルカリ金属、オルガノポリ金属、オルガノアルコキシ金属、アルコキシ金属、変性アセチルアセトネート金属等からなる金属酸化物系ポリマーや、無機フィラーを含有した塗料、さらに、セラミックコーティングと呼ばれるケイ素化合物フリット類による塗料を、アルコールや水などの溶剤を加えた状態でスプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。また、金属のフッ化物錯体を用いて液層析出法(LPD法)などにより絶縁層の上にマスク層として形成させることもできる。また、ドライコーティング法で各種金属の酸化物を形成させることも可能である。コーティングする方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングといったPVD法や、プラズマCVD,熱CVDといったCVD法の他、溶射などの方法を用いて作製することができる。具体的には、Al2O3、Cr2O3、Fe2O3、MgO、SiO、SiO2、SnO2、TaO5、TiO2、WO3、Y2O3、ZnO、ZnO2、ZrO2等の皮膜が好ましく用いられる。
また、有機系のマスク層としては、ドライエッチングに対する耐性があるもので、公知のものが使用できるが、特に酸素プラズマを用いる場合には、一般的にシリコンを含有するレジスト膜が酸素プラズマに対する耐性があるため、好んで用いられる。シリコンを含有するレジスト膜には、感光性があっても、なくてもよい。凸部の上面にあるマスク層を除去する方法として、凸部の上面にあるマスク層を現像して除去してから、現像した箇所をドライエッチングする場合には、レジスト膜が感光性を有していることが好ましいが、凸部の上面にあるマスク層を機械研磨で除去する場合には、必ずしも感光性は必要でない。用いるレジスト膜は、ネガ型でもポジ型でもよく、液状でもフィルム状でもよい。液状の場合は、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布でき、フィルムの場合は、加熱ラミネートして、凹部にレジストを追随させながら埋め込むことができる。
前記したシリコンを含有するレジスト膜について説明する。シリコンを含有するレジスト膜に使用されるシリコン含有感光性組成物としては、公知のものが使用できるが、好適なシリコン含有感光性組成物の代表例としては、主鎖にシリコン原子を有し、アセタール構造、3級エステル構造、t−ブチルオキシカルボニル構造等の酸分解性基を含有するシロキサンポリマーを用いた化学増幅型のシリコン含有感光性組成物、ノボラック樹脂とナフトキノンジアジドからなるレジスト組成物に、主鎖にシリコン原子を有し、分子内にシラノール構造を有するアルカリ可溶性ラダー型ポリシロキサンをブレンドした紫外線露光用のシリコン含有感光性組成物等が挙げられる。側鎖にシリコン原子を有し、かつ側鎖にアセタール構造、3級エステル構造、t−ブチルオキシカルボニル構造、又は、β−シリルエチルエステル構造等の酸分解性基を含有するビニルポリマーと光酸発生剤からなる化学増幅型の遠紫外線露光用のシリコン含有感光性組成物、さらに、メチルメタクリレートのシリコン誘導体を含有する単量体の重合によって形成される構造、アクリル酸エステルポリマーのエステル部にシリコンを含有する構造、トリメチルシリル基を2つ有するアクリル系モノマーから得られるポリマー、シリコン含有モノマー、無水マレイン酸、t−ブチルアクリレートからなるポリマーを有するレジスト組成物等が挙げられる。
【0050】
マスク層を部分的に除去する方法は、(イ)感光性を有するマスク層を用いて、フォトリソグラフプロセスで凸部の上面に形成されたマスク層を現像、除去する方法、(ロ)マスク層の除去部を機械研磨する方法などがある。上記(イ)の方法では、感光性を有するマスク層は、ポジ型であってもネガ型であってもよく、現像液は、後述するマスク層の剥離液と同様の液を用いることができる。また、上記(ロ)のマスク層を研磨して除去する方法としては、例えば、バフロールを回転させながら研磨する方法がある。バフは市販されている不織布、セラミックバフ、ダイヤモンドバフ等を用いることができる。
【0051】
本発明で用いられるドライエッチングとは、真空容器内にガスを導入し、ガスを高周波、マイクロ波などにより励起し、プラズマを発生させラジカル、イオンを生成させた後、プラズマにより生成されたラジカル、イオンと被エッチング物(絶縁層、中間層)と反応させ、反応生成物を揮発性ガスにし真空排気系により外部に排気することにより行われるエッチングのことである。ドライエッチングは被エッチング物を載置した電極に高周波電力を印加し、発生した負の自己バイアス電圧により、プラズマから生成されたイオンを加速して被エッチング物に衝撃させる反応性イオンエッチングとエッチング物にバイアスを印加せずにプラズマより生成したラジカルにより被エッチング物をエッチングするプラズマエッチングに大別される。反応性イオンエッチングには平行平板型、マグネトロン型、2周波型、ECR型、ヘリコン型、ICP型などがあり、使用する圧力は低圧であることが多く得られるエッチング形状は等方性である。また、プラズマエッチング装置にはバレル型、平行平板型、ダウンフロー型などがあり、使用する圧力は高圧であることが多く、得られるエッチング形状は等方性である。本発明では、上記のどちらの方式を用いてもよい。
【0052】
また、ドライエッチングにおけるガス組成としては、形成された絶縁層をエッチングできるとともに導電性基材をエッチングしずらいガスを適宜選択するが、代表的なガス組成としては、F原子含有プラズマを発生させる、F2、CF4−O2、C2F6−O2、C3F8−O2、SF6−O2、SiF4−O2、NF3、ClF3、さらに、不飽和種含有プラズマを発生させる、CF4、C2F6、CHF3、CF4−H2、CH4、さらに、Cl・Br原子を含有するプラズマを発生させる、Cl2、CCl4、CF3Cl、Cl2−CCl4、Br2、さらに酸素プラズマを発生させる、O2、O2−Ar等が用いられる。地球温暖化作用を有さず、腐食性もないことから、酸素プラズマを発生させるガス組成が好ましく、絶縁層も酸素プラズマでエッチングできる、炭素を主成分とする材料を選定することが好ましい。
絶縁層のドライエッチングに対するマスク層は、ドライエッチングにおけるエッチングレートが絶縁層のエッチングレートと同程度かもしくは、それ以下であるものが好ましい。ドライエッチングにおける絶縁層のエッチングレートよりもマスク層のエッチングレートが大きい場合には、絶縁層が厚くなると、マスク層も厚くしなければならないので非効率的であり、さらに、厚みのばらつきがあった場合にマスク層の下の絶縁層を、エッチングしてしまう可能性がある。したがって、マスク層のエッチングレートは、絶縁層のエッチングレートの1/2以下であることが特に好ましい。
上記有機系のマスク層の剥離液として、従来公知のアルカリ性水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。
また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、メチル−ピペ−メチル−ピペラジン、メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン等の環状アミン類等の水溶性アミンも好ましく用いられる。
【0053】
マスク層の剥離液として、第4級アンモニウム水酸化物も好ましく用いられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド〔=TMAH〕、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド〔=コリン〕、(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウムヒドロキシド、(1−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド等が例示される。中でもテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、コリン等が好ましい。第4級アンモニウム水酸化物は1種または2種以上を用いることができる。
【0054】
マスク層の剥離液として、有機アルカリ剤や、第4級アンモニウム水酸化物を用いる場合には、通常、レジスト膜の剥離性を向上させるために、水溶性有機溶媒と混合して用いることが多い。水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン〔=スルホラン〕等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール類およびその誘導体などが挙げられる。中でも、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル、スルホラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましく用いられる。水溶性有機溶媒は1種または2種以上を用いることができる。
【0055】
前記図7の(c)において、導電性基材1のエッチングは、凸部3の上面4の幅がレジストパターンの幅と同様にした場合を例示したが、図11の(a)に示すように、凸部3の上面4の幅がレジストパターンの幅よりも小さくなるようにオーバーエッチングしてもよい。この場合、オーバーエッチングを十分行って、引き続いて絶縁層を形成し、図11の(b)に示すようにし、続いてレジストパターンを剥離して図11の(c)のように絶縁層を有する導電性基材を作製してもよい。以上において、レジストパターンの形成法、エッチング法、第一及び第二の絶縁層の形成法、残存レジストの剥離法等は前記したのと同様である。なお、図10では、第二の絶縁層は図が煩雑になるため図示しない。
この後、凸部上面に絶縁層がないことを除けば、図9(j)以降と同様にして目的の図9(n)に示すようなめっき用導電性基材を作製することができる。
【0056】
本発明におけるめっき用導電性基材へのめっき法は公知の方法を採用することができる。めっき法としては、電気めっき法、無電解めっき法その他のめっき法を適用することができる。
電気めっきについてさらに説明する。例えば、電気銅めっきであれば、めっき用の電解浴には硫酸銅浴、ほうふっ化銅浴、ピロリン酸銅浴、または、シアン化銅浴などを用いることができる。このときに、めっき浴中に有機物等による応力緩和剤(光沢剤としての効果も有する)を添加すれば、より電着応力のばらつきを低下させることができることが知られている。また、電気ニッケルめっきであれば、ワット浴、スルファミン酸浴などを使用することができる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。さらに、電気金めっきの場合は、シアン化金カリウムを用いた合金めっきや、クエン酸アンモニウム浴やクエン酸カリウム浴を用いた純金めっきなどが用いられる。合金めっきの場合は、金−銅、金−銀、金−コバルトの2元合金や、金−銅−銀の3元合金が用いられる。他の金属に関しても同様に公知の方法を用いることができる。電気めっき法としては、例えば、非特許文献1第87〜504頁を参照することができる。
【0057】
次に、無電解めっきについてさらに説明する。無電解めっき法としては、銅めっき、ニッケルめっき、代表的であるが、その他、すずめっき、金めっき、銀めっき、コバルトめっき、鉄めっき、クロムめっき等が挙げられる。工業的に利用されている無電解めっきのプロセスでは、還元剤をめっき液に添加し、その酸化反応によって生ずる電子を金属の析出反応に利用するのであり、めっき液は、金属塩、錯化剤、還元剤、pH調整剤、pH緩衝材、安定剤等から成り立っている。無電解銅めっきの場合は、金属塩として硫酸銅、還元剤としてホルマリン、錯化剤としてロッセル塩やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好んで用いられる。また、pHは主として水酸化ナトリウムによって調整されるが、水酸化カリウムや水酸化リチウムなども使用でき、緩衝剤としては、炭酸塩やリン酸塩が用いられ、安定化剤としては、1価の銅と優先的に錯形成するシアン化物、チオ尿素、ビピリジル、O−フェナントロリン、ネオクプロイン等が用いられる。また、無電解ニッケルめっきの場合は、金属塩として硫酸ニッケル、還元剤には、次亜りん酸ナトリウムやヒドラジン、水素化ホウ素化合物等が好んで用いられる。次亜りん酸ナトリウムを用いた場合には、めっき皮膜中にりんが含有され、耐食性や耐摩耗性が優れている。また、緩衝剤としては、モノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩を使用する場合が多い。錯化剤は、めっき液中でニッケルイオンと安定な可溶性錯体を形成するものが使用され、酢酸、乳酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸、グリシン、アラニン、EDTA等が用いられ、安定化剤としては、硫黄化合物や鉛イオンが添加される。無電解めっき法については上記、「現場技術者のための実用めっき」、日本プレーティング協会編(1986年槇書店発行)の第505〜545頁を参照することができる。
【0058】
さらに、還元剤の還元作用を得るためには、金属表面の触媒活性化が必要になることがある。素地が鉄、鋼、ニッケルなどの金属の場合には、それらの金属が触媒活性を持つため、無電解めっき液に浸漬するだけで析出するが、銅、銀あるいはそれらの合金、ステンレスが素地となる場合には、触媒活性化を付与するために、塩化パラジウムの塩酸酸性溶液中に被めっき物を浸漬し、イオン置換によって、表面にパラジウムを析出させる方法が用いられる。
【0059】
本発明で利用できる無電解めっきは、例えば、前記した上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の凸部に、必要に応じてパラジウム触媒を付着させたあと、温度60〜90℃程度とした無電解銅めっき液に浸漬して、銅めっきを施す方法がある。
無電解めっきでは、基材は必ずしも導電性である必要はない。しかし、前記したように基材の凹部に絶縁層を電着により形成する場合には、基材は導電性である必要があり、また、無電解めっきの準備として、基材上に析出した金属を容易に剥離するための処理として、基材の無電解めっきされるべき箇所を、陽極酸化処理するような場合は、基材は導電性である必要がある。
特に、導電性基材の材質がNiである場合、無電解めっきするには、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材を陽極酸化した後、無電解銅めっき液に浸漬して、銅を析出させる方法がある。
【0060】
めっきによって出現又は析出する金属としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ニッケル、鉄、クロム等の導電性を有するものが使用されるが、20℃での体積抵抗率(比抵抗)が20μΩ/cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むことが望ましい。本発明により得られる構造体を電磁波遮蔽シートとして用いる場合には電磁波を電流としてアースするためにこれを構成する金属は導電性が高い方が電磁波遮蔽性に優れるためである。このような金属としては、銀(1.62μΩ/cm)、銅(1.72μΩ/cm)、金(2.4μΩ/cm)、アルミニウム(2.75μΩ/cm)、タングステン(5.5μΩ/cm)、ニッケル(7.24μΩ/cm)、鉄(9.0μΩ/cm)、クロム(17μΩ/cm、全て20℃での値)などがあるが特にこれらに限定するものではない。できれば体積抵抗率が10μΩ/cmであることがより好ましく、5μΩ/cmであることがさらに好ましい。金属の価格や入手の容易さを考慮すると銅を用いることが最も好ましい。これらの金属は単体で用いてもよく、さらに機能性を付与するために他の金属との合金でも構わないし、金属の酸化物であってもよい。ただし、体積抵抗率が20μΩ/cmである金属が成分として最も多く含まれていることが導電性の観点から好ましい。
【0061】
前記しためっき用導電性基材の凸部の露出部分にめっきにより形成される金属層の厚さ(めっき厚さ)は、十分な導電性を示す(このとき電磁波シールド性が十分に発現する)ためには、0.5μm以上であることが好ましく、導体層にピンホールが形成される(このとき、電磁波シールド性が低下する)可能性を小さくするためには、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、めっき厚さが大きすぎると、形成された金属層は幅方向にも広がるため、転写したラインの幅が広くなり、導体層付きパターン基材の開口率が低下し、透明性、非視認性が低下する。したがって、透明性、非視認性を確保するためには、形成された金属の厚みを20μm以下とすることが好ましく、さらに、めっきの時間を短縮し、生産効率をあげるためには、めっきの厚みは10μm以下であることがさらに好ましい。
【0062】
さらに、本発明により作製しためっき用導電性基材を用いて導電層パターン付き基材の作製方法の一例を、導電性基材に、断面形状が台形である凸部3(図2(c)参照)を形成した場合を例に、図12を用いて説明する。以下において、絶縁層8は2層以上からなるものとする。
まず、図12(a)は、本発明におけるめっき用導電性基材の一例を示す断面図である。凸部3のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部2を有する導電性基材1の凸部3を有する面の凹部2に絶縁層8を凸部3の側面3′を含む先端部分4′が露出するように形成されている。
次に、凸部3の先端部分4′(すなわち、凸部3の露出部分)が露出している導電性基材1にめっきを施して、凸部3の先端部分4′に金属11を析出させる。図12(b)は、この状態の断面図を示す。
次いで、粘着フィルム12(別の基材13に粘着剤層14を塗布したフィルム)を、導電性基材1の金属11が析出している面に貼り合わせる。図12(c)はこの状態の断面図を示す。粘着フィルム12の粘着剤層14を、金属11が析出している面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要なら加熱される。
そして、粘着フィルム12を剥離することにより、金属11が粘着層14に貼り付いて導電性基材1から剥離して、すなわち、別の基材13に転写されて、導体層パターン付き基材15を得る。この状態の断面図を図12(d)に示す。
【0063】
上記で得られた導体層パターン付き基材15の導体層パターン(金属11)を黒化処理して、黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材とすることができる。図13は、この導体層パターン付き基材の断面図を模式的に示す。図13において、別の基材13に粘着剤層14を介して、表面が黒化処理されて黒色層16となった導体層パターン(金属11)が貼り合わされている。
また、前記の図12(b)の状態で、導電性基材1の凸部3の先端部分4′に析出した金属10(めっき層)に黒化処理を施してから、その後の転写工程を行って得られる導体層パターン付き基材の断面図を図14に模式的に示す。図14において、別の基材13に粘着層14を介して、黒色層17を有する金属11からなる導体層パターンが貼り合わされているが、黒色層17は、導体層パターンの転写面側と側面に形成されている。
以上の黒化処理された導体層パターンを有する導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材としてディスプレイの前面において利用するときは、一般に、黒色層を設けた方の面がディスプレイの視聴者側に向くようにして用いられる。
なお、上記の二つの黒化処理を両方行い、どちらの側から見ても黒色層が見えるようにすることもできる。
上記の黒化処理の方法の一つは、金属パターンに黒色層を形成する方法であるが、このためには、金属層にめっきや酸化処理、印刷などの様々な方法を用いることができる。
【0064】
本発明における導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽体として用いる場合は、そのまま、ディスプレイ画面に適宜別の接着剤を介して又は介さないで貼着して使用することができるが、他の基材に貼着してからディスプレイに適用してもよい。他の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波を遮断するために使用するには透明であることが必要である。
【0065】
図15に導体層パターン付き基材が他の基材に貼着されて得られた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。図15において、基材(別の基材)13に積層されている粘着剤層14上に金属18からなる導体層パターンが貼り付けられ、この上に他の基材19が積層されており、金属18は、粘着剤層14に埋設されている。これは、導体層パターン付き基材の導体層パターン側を他の基材19に加熱又は非加熱下に加圧することにより作製することができる。この場合、粘着剤層14が十分な流動性を有するものであるか十分な流動性を有するうちに、適度な圧力を加えることにより導体層パターンを粘着剤層14に埋設する。基材(別の基材)13及び基材(他の基材)19として、透明性を有し、しかもその表面の平滑性が優れるものを使用することにより、透明性が高い電磁波遮蔽部材を得ることができる。
図16に導体層パターン付き基材が保護樹脂で覆われた電磁波遮蔽部材の断面図を示す。基材(別の基材)13に積層されている粘着剤層14上に金属18からなる導体層パターンが貼り付けられており、これらは、透明な保護樹脂20によって被覆されている。
【0066】
図17は、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。この電磁波遮蔽体は、図15の電磁波遮蔽部材が、基材13の導体層パターンがある面とは反対の面で、接着剤層21を介して他の基材22が貼り合わされたものである。
図18は、さらに、別の態様の電磁波遮蔽体の断面図を示す。図18において、基材(別の基材)13に粘着剤層14を介して金属18からなる導体層パターンが接着されており、その上を透明樹脂からなる接着剤又は粘着剤23により被覆され、さらにその上に保護フィルム24が積層されている。基材13のもう一方の面には接着剤層21を介してガラス板等の他の基材22が貼着されている。この電磁波遮蔽部材では、基材(別の基材)13に粘着剤層14を介して接着されている導体層パターンを有する導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面を、透明樹脂23によりコーティングし、さらに保護フィルム24を積層し、ついで、得られた積層物の基材13のもう一方の面(何も積層されていない面)に接着剤を塗布して接着剤層21を形成し、これを他の基材22に押しつけて接着することにより作製することができる。上記の透明樹脂23としては、前記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほかに活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることもできる。活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることは、それが瞬時に又は短時間に硬化することから、生産性が高くなるので好ましい。
【0067】
前記した別の基材(導体層パターンが転写される基材)としては、ガラス、プラスチック等からなる板、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどがある。ガラスとしては、ソーダガラス、無アルカリガラス、強化ガラス等のガラスを使用することができる。
プラスチックとしては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチックの中では、透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。別の基材の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱い性から好ましい。
【0068】
本発明における別の基材は、プラスチックフィルムが好ましい。このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組合せた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが特に好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚さは特に制限はないが、1mm以下のものが好ましく、厚すぎると可視光透過率が低下しやすくなる傾向がある。また、薄く成りすぎると取扱い性が悪くなることを勘案すると、上記プラスチックフィルムの厚さは5〜500μmがより好ましく、50〜200μmとすることがさらに好ましい。
これらのプラスチックフィルム等の基材は、ディスプレイの前面からの電磁波の漏洩を防ぐための電磁波シールドフィルムとして使用するためには、透明であるもの(すなわち、透明基材)が好ましい。
【0069】
上記の別の基材の導体層パターンが転写される面は、転写する際に粘着性を有していることが必要である。そのためには、基材自体が必要な粘着性を有していてもよいが、転写面に粘着層を積層するようにしておくことが好ましい。
上記の粘着層は、予め別の基材に積層するか転写されるべき金属(導体層パターン)に塗布又は積層しておくこともできる。上記の粘着層は、転写時に粘着性を有しているもの又は加熱若しくは加圧下に粘着性を示すものが好ましい。粘着性を有しているものとしては、ガラス転移温度が20℃以下の樹脂が好ましく、ガラス転移温度が0℃以下である樹脂を用いることが最も好ましい。粘着層に用いる材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂等を使用することができる。加熱時に粘着性を示す場合、そのときの温度が高すぎると、透明基材にうねりやたるみ、カール等の変形が起こることがあるので、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂のガラス転移点は80℃以下であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線の照射で硬化する樹脂の重量平均分子量は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500未満では樹脂の凝集力が低すぎるために金属との密着性が低下するおそれがある。
【0070】
上記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのポリマを構成するモノマーは、必要に応じて、2種以上共重合させて得られるコポリマとして用いてもよいし、以上のポリマ又はコポリマを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
【0071】
活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能基として、アクリル基(アクリロイル基),メタクリル基(メタクリロイル基),ビニル基,アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が利用される。
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。また、上記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
【0072】
熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0073】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。
【0074】
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0075】
本発明で粘着性を有しているもの又は粘着性を示すもの(以下、これらを、「粘着剤」という)には、必要に応じて、架橋剤、硬化剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。
【0076】
粘着層の厚さは、薄すぎると十分な強度を得られないため、めっきで形成された金属層を転写する際に、金属が粘着層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着層の厚さが厚いと、粘着層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に、粘着層の変形量が多くなるため、薄膜絶縁層に接触する機会が増えるため、粘着層の厚みは30μm以下が好ましく、薄膜絶縁層と粘着層が接触する機会を低減させることから10μm以下がさらに好ましい。
別の基材に粘着剤を塗布して形成した粘着層を有するフィルムを、金属層が形成されている面に貼り合わせる際には、粘着剤の特性に応じて、必要ならば加熱される。
なお、他の基材としては、上記した別の基材と同様の材質の物を使用することができる。
【0077】
また、本発明で用いられる導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。
【0078】
回転体を用いて、電気めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図19を用いて説明する。図19は、導電性基材としてドラム電極を用いた場合に、ドラム電極を回転させつつ、金属を電気めっきにより連続的に析出させ、また、析出した金属を連続的に剥離する装置の概念を示す断面図(一部正面図)である。
【0079】
すなわち、電解浴100内の電解液101が陽極102とドラム電極などの回転体103の間のスペースに配管104とポンプ105により供給されるようになっている。陽極102と回転体103の間に電圧をかけ、回転体103を一定速度で回転させると、回転体103の表面に金属が電解析出し、電解液101の外で、回転体103表面の凸部の露出部分に析出した金属106に、粘着層を形成したフィルム107の粘着層を圧着ロール108で圧着し、連続的に回転体103から金属106を剥離しつつ粘着層を形成したフィルム107にその金属106を転写し、導体層パターン付き基材109とする。これはロール(図示せず)に巻き取ることができる。このようにして導体層パターン付き基材108を製造することができる。なお、上記の回転体103の表面には、凸部とそれにより描かれている幾何学図形状の凹部が形成されている。また、回転中の回転体103から、凸部の上面に析出した金属106が剥離させられた後で、電解液101に浸かる前に、回転体103表面をエッチング洗浄したり(図示せず)してもよい。なお、図示していないが陽極102の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水切りロールを設置しても良く、水切りロールによってせき止められた電解液は陽極102の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間に消費された銅イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する態様を加えることが好ましい。
【0080】
さらに、本発明で用いられる導電性基材として、フープ状の導電性基材を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。
フープ状の導電性基材に関しては、帯状の導電性基材の表面に凸部を形成した後、端部をつなぎ合わせるなどして作製できる。導電性基材の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的小さい材料を用いることが好ましい。フープ状の導電性基材を用いた場合には、黒化処理、防錆処理、転写等の工程を、1つの連続した工程で処理可能となるため導電性パターン付き基材の生産性が高く、また、導電性パターン付き基材を連続的に作製して巻物として製品とすることができる。フープ状の導電性基材の厚さは適宜決定すればよいが、100〜1000μmであることが好ましい。
【0081】
フープ状の導電性基材を用いて、電気めっきにより形成された導体層パターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図20を用いて説明する。図20は、導電性基材としてフープ状導電性基材を用いた場合に、連続的に導体層パターンを電気めっきにより析出させながら剥離する装置の概念図である。
【0082】
フープ状の導電性基材110を、搬送ロール111〜128を用い、前処理槽129、めっき槽130、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次とおり、周回運動するように設置する。前処理槽129で導電性基材110の脱脂もしくは酸処理等の前処理を行う。その後、めっき槽130で、導電性基材110上に金属を析出させる。この後に、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を順次通して、それぞれで、導電性基材110上に析出した金属の表面を黒化し、さらに防錆処理する。各処理工程後にある水洗槽は、1槽しか図示していないが、必要に応じて複数の槽を用いたり、各処理工程の前に他の前処理槽等があってもよい。次いで、接着層を積層したプラスチックフィルム基材136を導電性基材110の凸部の上面に析出した金属が転写されるように搬送ロール128上の導電性基材110と圧着ロール137の間を通し、上記金属をプラスチックフィルム基材136に転写して、導電層パターン付き基材138を連続的に製造することができる。得られる導電層パターン付き基材138は、ロール状に巻き取ることができる。必要に応じて、圧着ロール137を加熱することもできるし、図示はしないが、プラスチックフィルム基材136を圧着ロールを通過させる前にプレヒート槽を通して予備加熱してもよい。また、転写したフィルムの巻取りには、必要に応じて、離型PET等を挿入してもよい。さらに、金属が転写された後、フープ状導電性基材は、上記の工程を繰り返すこととなる。このようにして、連続的に、高い生産性で導体層パターン付き基材を製造することができる。
【0083】
また本発明は上記のようなめっき方法に限らず枚葉で作製することも可能である。枚葉で行った場合、めっき用導電性基材の作製時の取扱が容易であり、同一のめっき用導電性基材を繰り返し使用した後に一箇所だけ絶縁層が剥離した、といった場合でもドラム状やフープ状の基材であると特定部分だけの抜き取りあるいは交換は困難であるが、枚葉であれば不良が発生しためっき用導電性基材のみを抜き取りあるいは交換することが可能である。このように枚葉で作製することにより、めっき用導電性基材に不具合が発生したときの対応が容易である。枚葉状の導電性基材の厚みは適宜決定すればよいが、めっき槽内で液の攪拌等に左右されない十分な強度を持たせることを考慮すると厚みは20μm以上が好ましい。厚すぎると重量が増え取扱が困難であるため10μm以下の厚みであることが好ましい。
【0084】
導電性基材にめっきをする場合、めっきは等方的に成長するため、導電性基材が露出した部分に析出しためっきが、凸部側面に形成された絶縁層に覆い被さるように析出するため、剥離転写するたびに絶縁層に応力がかかる。特にライン幅が微細化されるほど、端部に電気力線が集中するため、析出しためっきの絶縁層への覆い被さりは顕著になる。この場合、繰り返し使用中における絶縁層の破壊のほとんどは、粘着剤の接触によるというよりも、絶縁層に覆い被さるように析出しためっきの剥離時の応力によるもので、特に絶縁層で凸部側面の最上部にまで絶縁層が形成されていると、絶縁層にかかる応力が大きくなるため、その部分を起点にして、絶縁層が破壊されることを確認した。しかし、本発明のように凸部の先端部分が露出するようにするとこの絶縁層の破壊が起こりにくくなり、結果として、本発明に係るめっき用導電性支持体の寿命を永くすることができる。
【0085】
以上で詳細に説明した凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凹部に絶縁層を有するめっき用導電性基材は、凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の絶縁層を有する凹部は、適当な広さで作製される。その領域を領域Aとすると、本発明に係るめっき用導電性支持体には、そのまわりに、電磁波遮蔽部材のアース部に対応する領域(領域Bという)を備えることができる。このとき、領域Aと領域Bは同一のパターンでもよい。また、領域Aにおける凹部の面積比率を、領域Bにおける凹部の面積比率と同じ又はそれよりも大きくすることが好ましく、10%以上大きくすることはさらに好ましい。凹部の面積比率は、平面図で見たときに、ただし、各領域の全面積に対する各領域の凸部における露出部分を除いた部分の面積の比率をいう。また、領域Bの凹部比率を0としてもよいが、この場合には、めっき用導電性支持体上にめっきによりベタの金属膜が周辺に形成される。ベタの金属膜は転写に際し、割れやすいので、望ましくは、領域Bの凹部の面積率は40%以上とすることが好ましく、また、97%未満であることが好ましい。
領域Bにおいて、凸部のパターンによって描かれる幾何学図形状は、前記説明したものが使用できるが、改めて例示すると、
(1)メッシュ状幾何学的模様
(2)所定間隔で規則的に配列された方形状幾何学的模様
(3)所定間隔で規則的に配列された平行四辺形模様
(4)円模様又は楕円模様
(5)三角形模様
(6)五角形以上の多角形模様
(7)星形模様
等がある。
また、領域Bにおける凸部の形成、絶縁層の形成等は、前記した領域Aと同様に行うことができる。さらに、凸部の露出部分の高さ、露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなるようにされること、d10/h10の関係等も領域Aと同様にされる。
【0086】
上記のようにして得られる導体層パターン付き基材を電磁波遮蔽部材として用いる場合には、反射防止層、近赤外線遮蔽層等をさらに積層してもよい。導電性基材に析出した金属を転写する基材そのものが反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。さらに、導体層パターンに保護層を形成する際に用いられるカバーフィルム(例えば、図16又は図17の保護フィルム20)が、反射防止層、近赤外線遮蔽層等の機能層を兼ねていてもよい。
【実施例1】
【0087】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
レジストフィルム(フォテックH−Y920、20μm厚、日立化成工業株式会社製)を10cm角のステンレス板(SUS304、仕上げ3/4H、厚さ100μm、日新製鋼(株)製)の両面に貼り合わせた(図7(a)に対応する)。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が40μm、ラインピッチが300μm、バイアス角度が45度(正四角形のなかに、ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で、格子状に形成したネガフィルムを、ステンレス板のレジストフィルムを貼り合わせた方の面上に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置したステンレス板の上下から、紫外線を120mJ/cm2照射した。さらに、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、SUS板の上にライン幅40μm、ラインピッチ300μm、バイアス角度45度のレジストマスクを形成した。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面露光されているため、現像されず、全面にレジスト膜が形成されている(図7(b)に対応する)。
次いで、40℃に加温した塩化第二鉄水溶液(45°Be‘、鶴見曹達株式会社製)を用いて、SUS板をエッチングした。エッチングは、SUS板のライン幅が約7μmになるまで行い、上面を有する凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材上にレジストマスクが残っているめっき用導電性基材を作製した。凸部上面の幅は5〜8μmであり、凸部上面の間隔(ピッチ)は300±2μm、凸部の高さは35〜38μmであった。凸部上面の幅は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率1000倍で観察して測定した。凸部上面は、エッチング液で粗化されていないため、顕微鏡観察では光沢感があった。この光沢感のある部分を凸部の上面とした。測定は、無作為の5点で行い、その最大値と最小値を採用した。凸部上面の間隔(ピッチ)の測定は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率200倍で観察して測定した。測定は、無作為の5点で行った。また、凸部の高さは、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、凸部の両側を測定したので計10点の値の最大値と最小値を採用した。これらの測定法は以下においても同様である。
なお、凸部パターンが形成された面の反対面は、全面にレジスト膜が形成されているため、エッチングされなかった(図7(c)に対応する)。次いで、めっき用導電性基材を、液温30℃で5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると、凸部パターンが形成された面及びその反対面に形成されたレジスト膜が除去された(図7(d)に対応する)。
【0088】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
RFプラズマCVD装置(NANOCOAT 400、ナノテック株式会社)によりDLC膜を形成する。RFプラズマCVD装置は上部電極、基板を乗せる下部電極及びガス導入口を備えた真空チャンバー、プラズマを発生するためのRF電源、スイッチ/マッチングボックス、マッチングボックス、真空ポンプなどから構成される。真空チャンバーは真空ポンプにより10−3torrの真空度に減圧される。最初にArガスによるプラズマを励起し基板のクリーニングを行なった後、ヘキサメチルジシラザンを4sccmの流量で導入し、RF出力500Wで膜厚0.3μmとなるように中間層としてSiを製膜した。次いで、アセチレンガスを15sccmの流量で導入し、RF出力500Wで膜厚が0.8〜1.0μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した(図8(e)に対応する。)。
【0089】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、上記の第一の絶縁層が形成された導電性基材の凸部パターンが形成された反対面に保護用の粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り合わせたものを陰極にして、陽極をステンレス(SUS304)板として、カチオン型電着塗料(Insuleed3020、ノボラックエポキシ系、日本ペイント(株)製)中で、30V10秒の条件で、格子模様状にエッチングされたステンレス板に電着塗装した。次いで、窒素気流下、230℃で40分間電着塗膜を焼付けて、絶縁層を形成した。炉内の酸素濃度は1%であった。電着塗料が析出した厚さは、4〜5μmであった。なお、測定は別途パターンのないステンレス板に同条件でコーティングし、その一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、測定値の最大値と最小値を採用した。このようにして、めっき用導電性基材の凸部パターン側に、電着塗装で電気絶縁樹脂による第二の絶縁膜を形成した(図8(f)に対応する。ただし、第2の絶縁膜はマスク層ではない。)。
【0090】
(酸素プラズマによるドライエッチング)
全面に第一及び第二の絶縁層が形成されているめっき用導電性基材において、凸部パターンが形成された面に、シリコン系のレジストDLR−501(NTTアドバンテステクノロジ(株)製)をスピンコートで塗布した。スピンコータの回転速度を500rpmとして、10秒間回転した後、1000rpmにして30秒間回転した。次いで、90℃に加熱したホットプレート上で、90秒間加熱乾燥した。絶縁層のTOP部におけるシリコン系レジストの厚みは1μmであった(図9(j)に対応する)。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面にある絶縁層の上にあるシリコンレジスト層を除去した(図9(k)に対応する)。
次いで、反応性イオンエッチング装置(CSE−1110(株式会社アルバック製))を用いて、凸部の上面にある絶縁層を酸素プラズマを用いてドライエッチングした(図9(m)に対応する)。
ガス組成は、酸素16sccm、アルゴン2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力300Wで6分間ドライエッチングした。その後、中間層を耐水研磨紙#4000で干渉色がなくなるまで研磨して除去した。次いで、50℃に加温したジプロピレングリコールモノメチルエーテル:モノイソプロパノールアミン=75:25の溶液に上記めっき用導電性基材を3分間浸漬し、絶縁皮膜上に形成されているシリコン系レジストを剥離した(図9(n)に対応する)。以上により、凸部先端部分のステンレスが露出し、その露出幅5.9〜10.0μm、絶縁高さ32〜36.7μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で1.5〜2.5μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、1.5〜2.5μmであった。また、ドライエッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅5〜8μmと変わらなかったが、中間層研磨後の凸部上面の幅は6〜11μmであった。以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.306〜0.404(68°〜73°に相当)であった。
凸部先端部分の露出部の幅、第1の位置、第2の位置における高さh10及び幅d10は、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は10000倍で断面をSEM観察することにより実測し、測定点は5点で、凸部の両側を測定したので計10点の値の最大値と最小値を採用した(以下同様)。絶縁高さの測定も、同様に行ったが、倍率は3000倍とした(以下同様)。
【0091】
(銅めっき)
次いで、粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として電解銅めっきを行った。電解銅めっき浴(硫酸銅(5水塩)230g/L、硫酸55g/L、キューブライト#1A(荏原ユージライト株式会社、添加剤)4ml/Lの水溶液、25℃)中に、上記めっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として浸した。両極に電圧をかけて、電流密度を5A/dm2として、めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した金属の厚さが5μmになるまでめっきした。
【0092】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、5mm□中にあるライン以外の銅の析出箇所を光学顕微鏡(接眼レンズ10倍、対物レンズ20倍)で実測した。この場合、析出した銅は銅粒として観測される。測定点は6点とした(以下同様)。測定した銅粒の数は38個であった。
【0093】
(転写用粘着フィルムの作製)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A−4100、東洋紡績株式会社製)の表面にプライマー(HP―1、日立化成工業株式会社製)を厚さ1μm)に、粘着層としてアクリルポリマー(HTR−280、長瀬ケムテック(株)製)を厚さ10μmに順次塗布して転写用粘着フィルムを作製した。
【0094】
(転写)
上記転写用粘着フィルムの粘着層の面と、上記めっき用導電性基材の銅メッキを施した面を、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき転写用版に貼り合わせた粘着フィルムを剥離したところ、上記めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着フィルムに転写されていた。これにより、ライン幅15〜20μm、ラインピッチ300±2μm、導体厚さ4.5〜6μmの格子状金属パターンからなる導体層パターン付き基材が得られた。転写後のめっき用導電性基材の表面を観察した結果、絶縁膜が剥離している箇所はなかった。ライン幅、導体厚さの測定は、得られた導体層パターンを一部切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、凸部の両側を測定したので計10点の値の最大値と最小値を採用した(以下も同様)。ラインピッチの測定は、顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−500、キーエンス(株)製)を用いて、倍率200倍で観察して測定し、測定は、無作為の5点で行った(以下も同様)。
【0095】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、UV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングし、ポリカーボネートフィルム(マクロホールDE、バイエル株式会社製、75μm)でラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた後、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0096】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を光学顕微鏡(接眼レンズ10倍、対物レンズ20倍)で観察し、5mm□中にあるライン以外の銅粒の転写した数を実測した。測定点は6点とした(以下同様)。5mm□中に10個以上銅粒が観測された場合をNGと判定した(以下同様)。200回繰り返し行った後も、パターン異常は観察されなかった。
【実施例2】
【0097】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
10cm角のステンレス(SUS304、仕上げ3/4H、厚さ100μm、日新製鋼(株)製)に400メッシュのポリエステル製スクリーン版にライン幅が40μm、ラインピッチが225μm、バイアス角度が45度で、格子状のパターンを形成した版を用い、アルカリ除去型エッチングレジストインク(226Black、Nazdar Company製)を塗布した後、スキージで余分なレジストインクを50mm/minの速度でかき取った。また、もう一方の面には、上記レジストインクを全体に塗布した。乾燥炉を用いて120℃で5分乾燥させ、SUS板の一方の面上にライン幅40μm、ラインピッチ225μm、バイアス角度45度のレジストマスクを形成し、他方の面全体にレジスト膜を形成した(図7(b)に対応する)。さらに、40℃に加温した塩化第二鉄水溶液(45°Be‘、鶴見曹達株式会社製)を用いて、SUS板をエッチングした。エッチングは、SUS板に形成される凸部の上面の幅が25μmになるのを目安に行った。実際の凸部上面の幅は24〜27μmであり、凸部上面の間隔(ピッチ)は、225±2μm、凸部の高さは17〜22μmであった。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面にレジスト膜が形成されているため、エッチングされなかった(図7(c)に対応する)。次いで、めっき用導電性基材を、液温30℃で5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると、凸部パターンが形成された面及びその反対面に形成されたレジスト膜が除去された(図7(d)に対応する)。
【0098】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
膜厚が2.8〜3.2μmとなるようにDLC膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして第一の絶縁層を形成した。
【0099】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、上記の導電性基材の凸部パターンがある面と反対の面に保護用の粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り合わせたものを陽極にして、陰極をチタン板として、アニオン型電着塗料(AMG−5E/5W、(株)シミズ製エポキシ樹脂を主成分とする電着塗料)中で、10V60秒の条件で、上記めっき用導電性基材(中間体)に電着塗装した。水洗後100℃10分間乾燥した。次いで、180℃30分の条件で窒素気流下電着塗膜を焼付けて絶縁層を形成した。炉内の酸素濃度は0.5%であった。別途同条件で電着した電着塗料の厚さは、2.9〜3.5μmであった。
このようにして、凸部パターン面全面に第一及び第二の絶縁膜が施された導電性基材を得た(図8(f)に対応する。ただし、第2の絶縁膜はマスク層ではない。)。
【0100】
凸部パターン面全面に絶縁層が形成されているめっき用導電性基材において、絶縁層の上に、シリコン系のレジストDLR−501(NTTアドバンテステクノロジ(株)製)をスピンコートで塗布した。スピンコータの回転速度を500rpmとして、10秒間回転した後、1000rpmにして30秒間回転した。次いで、90℃に加熱したホットプレート上で、90秒間加熱乾燥した。絶縁層のTOP部におけるシリコン系レジストの厚みは1μmであった(図9(j)に対応する)。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面にある絶縁層の上にあるシリコンレジスト層を除去した(図9(k)に対応する)。
次いで、反応性イオンエッチング装置(CSE−1110(株式会社アルバック製))を用いて、凸部の上面にある絶縁層を酸素プラズマを用いてドライエッチングした(図9(h)に対応する)。ガス組成は、酸素16sccm、アルゴン2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力200Wで10分間ドライエッチングした(図9(m)に対応する)。
DLC膜を酸素プラズマでエッチングした後、PLASMA CHAMBER MODEL PC−101A、RFGENERATOR MODEL RFG−500A(共にヤマト科学株式会社製)のプラズマアッシャー装置を用いて、中間層をドライエッチングした。エッチングの際のガス組成は、CF4 10sccm、O2 2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力300Wで30分間ドライエッチングすることで、凸部の上面を露出させた。この際、シリコン系レジストは、上記ガス組成に対するエッチングレートが高いので、中間層と共にエッチングされたが、残渣が少量あったので、50℃に加温したジプロピレングリコールモノメチルエーテル:モノイソプロパノールアミン=75:25の溶液に上記めっき用導電性基材を3分間浸漬し、絶縁皮膜上に形成されているシリコン系レジストの残渣を剥離した(図9(n)に対応する)。
以上により、凸部先端部分のステンレスが露出し、その露出幅は、29.9〜35.0μm、絶縁高さ12.3〜14.0μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で0.5〜1.5μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、0.5〜1.5μmであった。また、エッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅24〜27μmは変わらなかった。
以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.870〜1.000(45〜49度に相当)であった。
【0101】
(銅めっき)
さらに、上記で得られためっき用導電性基材の凹凸のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸70g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、25℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を20A/dm2として、めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した金属の厚さが3μmになるまでめっきした。
【0102】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は3個であった。
【0103】
(転写)
次いで、実施例1で得たのと同一の転写用粘着フィルムをその粘着層が、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面に接するように、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき用導電性基材から粘着フィルムを剥離すると、上記めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着層表面に転写された。このようにして、ライン幅34〜38μm、ラインピッチ225±2μm、導体厚2.5〜3.5μmの格子状金属パターンが接着フィルム上に転写され、導体層パターン付き基材を得た。
【0104】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、実施例1と同様にしてUV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングした後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)の易接着処理を施していない面を、UV硬化型樹脂とでラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた。さらに、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させた後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)を剥離して、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0105】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。100回繰り返し行った後も、パターン異常は観察されなかった。
【実施例3】
【0106】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
ステンレスの種類を316Lに、サイズを314mm×150mmとしたこと及びレジスト膜のラインピッチを275μmとしたこと以外は全て実施例1と同様にして、SUS板をエッチングして形成された凸部上面の幅は5〜8μmであり、凸部上面の間(ピッチ)は、275±2μm、凸部の高さは35〜38μmであった。なお、パターンが形成された面の反対面は、全面にレジスト膜が形成されているため、エッチングされなかった。次いで、めっき用導電性基材を、液温30℃で5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すると、パターンが形成された面及びその反対面に形成されたレジスト膜が除去された(図7(d)に対応する)。
【0107】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
膜厚が2.6〜2.9μmとなるようにDLC膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして第一の絶縁層を形成した。
【0108】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、上記の第一の絶縁膜が形成された導電性基材の凸部パターンがある面に、バーコータを用いて、エポキシ系一液硬化型塗料CE−55S(日本ペルノックス(株)製)を塗布した後、150℃で30分硬化させた。導電性基材の一部を切り取り、断面の電子顕微鏡写真から測定した塗料の厚さは、8〜12μmであった。
このようにして、凸部パターン面全面に第1及び第2の絶縁膜が施された導電性基材を得た(図8(f)に対応する。ただし、第2の絶縁層はマスク層ではない)。
【0109】
(酸素プラズマによるドライエッチング)
さらに、全面に絶縁層が形成されているめっき用導電性基材において、パターンが形成された面に、シリコン系のレジストDLR−501(NTTアドバンテステクノロジ(株)製)をスピンコートで塗布した。スピンコータの回転速度を500rpmとして、10秒間回転した後、1000rpmにして30秒間回転した。次いで、90℃に加熱したホットプレート上で、90秒間加熱乾燥した。絶縁層のTOP部におけるシリコン系レジストの厚みは1μmであった(図9(k)に対応する)。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面にある絶縁層の上にあるシリコンレジスト層を除去した((図9(k)に対応する)。
【0110】
次いで、反応性イオンエッチング装置(CSE−1110(株式会社アルバック製))を用いて、凸部の上面にある絶縁層を酸素プラズマを用いてドライエッチングした(図9(h)に対応する。ただし、粘着フィルム9はない。)。ガス組成は、酸素16sccm、アルゴン2sccmの混合ガスを用い、ガス圧は4Paとした。さらに、RFの出力300Wで60分間ドライエッチングした。次いで、50℃に加温したジプロピレングリコールモノメチルエーテル:モノイソプロパノールアミン=75:25の溶液に上記めっき用導電性基材を3分間浸漬し、絶縁皮膜上に形成されているシリコン系レジストを剥離した(図9(m)に対応する)。
以上により、凸部先端部分のステンレスが露出し、その露出幅6.2〜11.1μm、絶縁高さ20.9〜22.9μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で2.0〜4.0μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、2.0〜4.0μmであった。また、エッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅5〜8μmは変わらなかった。
以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た((図9(n)に対応する)。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.424〜0.488(64°〜67°に相当)であった。
【0111】
(銅めっき)
φ100mm、幅200mmのステンレスロールに、前記で作製しためっき用導電性基材の背面とロールが接触するように、巻きつけて、つなぎ目を絶縁テープで貼り合わせた。さらに、側部からめっき液が染み込まないように、導電性基材の両端5mmを全周にわたって、絶縁テープで覆うように、ロールと導電性基材を貼り合わせ、一つの回転体とした。
次いで、図18に示すような装置構成で回転体103に電気銅めっきした。陽極102には白金でコーティングしたチタン製の不溶性電極を用いた。陰極には上記ステンレス製のロールをドラム電極とした。電解銅めっき用の電解浴100には、硫酸銅(5水塩)70g/L、硫酸180g/L、カパラシドHL(アトテックジャパン株式会社製、添加剤)20ml/Lの水溶液で25℃の電荷液101が収容され配管104を通じてポンプ105により、陽極102と回転体103の間に送られ、満たされている。回転体103の約半分がこの電解液に浸漬している。電流密度を7A/dm2となるように、両極に電圧をかけて上記導電性基材の領域Aの凸部の上面に析出する金属の厚みが2μm厚になるまでめっきした。このとき。上記のステンレスロールを1m/分の速度で回転させるようにした。
【0112】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は2個であった。
【0113】
(転写)
実施例1で作製した粘着フィルムを一旦ロール状で巻き取り、ロール状の粘着フィルムとした。このロール状の粘着フィルムから粘着フィルム107を巻き出し、その粘着剤層の面を上記回転体(ステンレスロール)の凸部の上面に析出した金属(銅)106に圧着ロール108により実施例1と同様のラミネート条件で、連続的に貼り合わせるとともに剥離することにより、金属106を粘着フィルムの粘着剤層に転写して、導体層パターン付き基材109を連続的に作製した。導体層パターン付き基材109はロール状に巻き取られた(図示せず)。また、このとき、粘着フィルムの導体層パターンが転写された面に離型PET(S−32、帝人デュポン株式会社製)をラミネートしながら巻き取ることにより、巻取り時のブロッキングを防止した。導体層パターンは、ライン幅9〜12μm、ラインピッチ275±2μm、導体厚1.5〜2.5μmであった。銅めっきが転写された粘着フィルムを30m巻き取った後も、ステンレスロール上への銅めっきとその転写性に変化が無く、絶縁膜の剥離箇所も観測されなかった。
【0114】
(保護膜の形成)
得られた導体層パターン付き基材の一部を切り取り、導体層パターンが形成されている面に、UV硬化型樹脂(アロニックスUV−3701、東亞合成株式会社製)をアプリケータ(ヨシミツ精機株式会社製、YBA型)を用いて15μm厚でコーティングし、PETフィルム(マイラーD、帝人デュポンフィルム株式会社製、75μm)をハンドロールを用いて気泡が入らないように静かにラミネートした後、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射して、保護膜を形成した。
【0115】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。めっき−転写を100回繰り返し行った(回転体を100回転させた)後も、パターン異常は観察されなかった。
【実施例4】
【0116】
(凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製)
ロール状に巻いたSUS304箔(日新製鋼(株)製、仕上げ3/4H、幅200mm、厚さ100μm)と、PETフィルム(A−4100、東洋紡製)にバイロンUR−1350(接着剤、東洋紡(株)製)を乾燥塗布厚が20μmとなるように塗布して作製したロール状の接着フィルムをロールラミネータで貼りあわせて、ロール状のPETフィルム付きSUS箔(未加工)を作製した。ラミネート条件は、ロール温度120℃、プレヒート120℃30秒、圧力3MPa、ラインスピード0.5m/minとした。
次いで、上記で作製したロール状のPETフィルム付きSUS箔(未加工)及びロール状のレジストフィルム(フォテックH−Y920、20μm厚、日立化成工業株式会社製)をそれぞれ巻きだして、SUS304箔が露出している方の面にレジストフィルムをロールラミネータで連続的に貼り合わせ、ロール状に巻き取った。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、光透過部のライン幅が40μm、ラインピッチが400μm、バイアス角度が45ーで、格子状に形成したネガフィルムを、レジストフィルムを貼り合わせたステンレスを一部巻出し、その上に静置した。紫外線照射装置を用いてネガフィルムの上から紫外線を120mJ/cm2照射した。露光した部分を巻取り、露光していないレジストフィルムを貼り合わせた部分を巻きだして上と同様の条件でネガフィルムを静置して紫外線を照射した。この工程を10回繰り返してSUS304箔上に10パターンを露光した。これを1%炭酸ナトリウムを使用して現像機を通して現像することでSUS箔の上にライン幅40μm、ラインピッチが400μmのレジストマスクが一定間隔で配置されたPETフィルム付きSUS304箔を形成した。次いで、このPETフィルム付きSUS箔をエッチングラインに通し、SUS箔に格子模様状のパターン(凸部上面の幅9〜14μm、凸部上面の間隔(ピッチ)400±2μm、凸部の高さ18〜22μm)を一定間隔に配置した導電性基材を作製した。
【0117】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製1)
次いで、エッチングしたPETフィルム付きSUS箔をパターン毎に切断した後、個々のPETフィルム付きSUS箔毎に、実施例2と同様にして、中間層、DLC膜の形成を行った。
【0118】
(絶縁膜を有する導電性基材の作製2)
次いで、第二の絶縁層の密着性向上のため、DLCの親水性をあげるため、第一の絶縁層の表面に酸素プラズマ処理を行った。PLASMA CHAMBER MODEL PC−101A、RFGENERATOR MODEL RFG−500A(共にヤマト科学株式会社製)のプラズマアッシャー装置を用いて、O2 20sccmのガスを用い、ガス圧は4Paとした。RFの出力300Wで1分間表面処理を行うことで、DLCの表面改質を行った。次いで、ポリシラザン溶液(アクアミカNP110、クラリアントジャパン(株)製)をスプレーで塗布し、180℃1時間大気中で加熱後、室温で7日放置してポリシラザンをシリカに転化させた。シリカ層の厚みは、導電性基材の一部を切り取って注型し、断面を電子顕微鏡で観察することにより確認したところ、1.5〜2.5μmであった。さらに、#4000の研磨紙で、全面を軽く研磨し、凸部の上面のシリカ層のみを除去した。
【0119】
さらに、実施例2と同条件でDLC及びSi層のドライエッチングを行い、凹部が絶縁層で覆われたPETフィルム付きめっき用導電性基材を合計で10枚製造した。この場合、第二の絶縁層がそのままドライエッチングのエッチングレジストの役割を果たしているため、剥離せずにそのまま次の工程に使用した。
以上の操作により得られた1枚のPETフィルム付きめっき用導電性基材を使用して次の項目を調べた。その結果は、凸部先端のステンレスが露出し、その露出幅11.0〜18.8μm、絶縁高さ14.2〜19.2μmであった。絶縁層は、凸部の上端から高さ方向で2.5〜4.5μmまで除去されていた。すなわち、凸部の露出している部分の高さは、2.5〜4.5μmであった。また、エッチング後のめっき用導電性基材の凸部の上面の幅9〜14μmは変わらなかった。
以上のようにして、保護用の粘着フィルムが付着している、転写用のめっき用導電性基材を得た。
このめっき用導電性基材の凸部の露出部分は、先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として凸部の下部よりも上部で幅が小さくなっていることを断面の電子顕微鏡写真で確かめた。また、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより高い位置(第2の位置)までの高さの差に対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差(減少幅)との関係は、図6で示すところでは、高さh10に対する幅d10の関係、は、すなわち、d10/h10は、0.509〜0.601(59°〜63°に相当)であった。
【0120】
(フープ状導電性基材の作製)
次いで、幅200mm、長さ10mの粘着フィルム(SGA、日立化成工業(株)製)の粘着剤面に、上記で作製した10枚の凹部が絶縁層で覆われたPETフィルム付きめっき用導電性基材のPETフィルム面を、隙間無く貼り合わせて、長さ10mの凹部が絶縁層で覆われたPETフィルム付きめっき用導電性基材(以下、長尺のめっき用導電性基材という)を得た。次いで、図18に示すような装置に、上記長尺のめっき用導電性基材を通紙し、フープ状導電性基材を得た。つなぎ目は、市販のガムテープを用いて繋ぎ目の裏側から貼り合わせ、表側は銅テープ(CHO−FOIL、50mm幅、太陽金網株式会社製)で貼り合わせた。
【0121】
(導体層パターン付き基材の作製)
上記で得られたフープ状導電性基材を用い、図18に示す装置により導体層パターン付き基材を作製した。以下、図18を用いて説明する。
まず初めに、上記で得られたフープ状導電性基材110はロール111〜128により、前処理槽129、電解浴槽130、水洗槽131、黒化処理槽132、水洗槽133、防錆処理槽134、水洗槽135を通って周回するように構成されている。
前処理槽129には、5%硫酸水溶液が収容されており、電解浴槽130には、硫酸銅(5水塩)150g/L、硫酸150g/L及びカパラシドHL(アトテックジャパン株式会社製、添加剤)70ml/Lの水溶液からなり温度が30℃に調整された電解液が収容されている。黒化処理槽132には、コパール(オーデック社製)の4倍希釈液が収容されている。また、防錆処理槽134には0.5%のベンゾトリアゾール水溶液が収容されている。
電解浴槽130では、フープ状導電性基材110を陰極とし、含燐銅を陽極として電流密度を30A/dm2で電解銅めっきされるように構成されている。本例では、凸部の露出部分に析出する金属の厚さが1μmになるのを目安にめっきして、導電性基材上に導体層パターン作製した。
水洗槽131における水洗後、導電性基材上の導体層パターンは、コパール液(オーデック社製)を用いて実施例1と同様に黒化処理が黒化処理層132で行われ、水洗槽132における水洗後、防錆処理槽134で防錆処理され、さらに、水洗槽135で水洗した後、ロール状で作製した実施例1で作製した粘着フィルム136を用いて、実施例1と同様の条件で、圧着ロール137を用い、導体層パターンを接着フィルム136上に連続的に転写して、導体層パターン付き基材138を連続的に得、これはロール状に巻き取られた。
凸部の露出部分に析出した銅めっきを、接着フィルムに転写して形成されたパターンは、ライン幅11〜16μm、ラインピッチ400μm、厚さ0.9〜1.5μmであった。
接着フィルムに転写後、転写されたラインを顕微鏡で観察した結果、全面で、ラインの割れは無かった。なお、導体層パターン付き基材138をロール状に巻き取る際には、導体層パターンの面に離型PET(S−32、帝人デュポン株式会社製)が接触するようにラミネートした。上記導体層パターン付き基材を50m巻き取った後も、導電性基材上に析出した銅めっきの転写性に変化が無く、導電性基材の凹部に形成された絶縁膜の剥離箇所も観測されなかった。
次いで、離型PETを剥離しながら、得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが形成されている面に、UV硬化型樹脂(アロニックスUV−3701、東亞合成株式会社製)を15μm厚でコーティングし、PETフィルム(マイラーD、帝人デュポンフィルム株式会社製、75μm)でラミネートした後、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射して、いわゆるロール・トゥ・ロール(roll−to−roll)で連続的に保護膜を形成して、保護槽を有する導体層パターン付き基材を得た。
導体層パターン付き基材の導体層パターンは、ライン幅11〜16μm、ラインピッチ400±2μm、導体厚0.9〜1.5μmであった。
【0122】
(初期ピンホール)
別途同様にして作製した導電性基材を用い、枚葉で含燐銅を陽極として電流密度を30A/dm2で凸部の露出部分に析出する金属の厚さが1μmになるまでめっきを行い、めっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は13個であった。
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。めっき−転写を50回繰り返し行った後も、パターン異常は観察されなかった。
【0123】
(比較例1)
(絶縁膜を有する導電性基材の作製)
実施例1と同様にしてパターニングし、第一の絶縁層すなわちDLC膜を2.8〜3.3μm厚形成させた。第二の絶縁層は形成せず、実施例1と同様にドライエッチング、中間層の除去を行い、絶縁膜を有する導電性基材を得た。
【0124】
(銅めっき)
上記で得られためっき用導電性基材の凹凸のパターンが形成されていない面(裏面)に粘着フィルム(ヒタレックスK−3940B、日立化成工業(株)製)を貼り付けた。この粘着フィルムを貼り付けためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)250g/L、硫酸50g/L、キューブライトAR(荏原ユージライト株式会社製、添加剤)4ml/Lの水溶液、30℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を20A/dm2として、めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した金属の厚さが3μmになるまでめっきした。
【0125】
(初期ピンホール)
第一回目の金属がめっきされた状態で、銅の析出箇所を実施例1と同条件で実測した。測定した銅粒の数は205個であった。
【0126】
(転写)
実施例1で得たのと同一の転写用粘着フィルムをその粘着層が、上記めっき用導電性基材の銅めっきを施した面に接するように、ロールラミネータを用いて貼り合わせた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、圧力0.1MPa、ラインスピード1m/minとした。次いで、めっき用導電性基材から粘着フィルムを剥離すると、上記めっき用導電性基材の凸部の上面に析出した銅が粘着層表面に転写された。このようにして、ライン幅11〜21μm、ラインピッチ300±2μm、導体厚2.5〜3.5μmの格子状金属パターンが接着フィルム上に転写され、導体層パターン付き基材を得た。
【0127】
(保護膜の形成)
上記で得られた導体層パターン付き基材の導体層パターンが存在する面に、実施例1と同様にしてUV硬化型樹脂ヒタロイド7983AA3(日立化成工業(株)製)をコーティングした後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)の易接着処理を施していない面を、UV硬化型樹脂とでラミネートして導体層パターンをUV硬化型樹脂中に埋没させた。さらに、紫外線ランプを用いて1J/cm2の紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させた後、PETフィルム(A−4100、東洋紡(株)製、75μm)を剥離して、保護膜を有する導体層パターン付き基材を得た。
【0128】
(パターン異常)
上記で得られた保護膜を有する導体層パターン付き基材を実施例1と同条件で銅粒の転写した数を実測した。絶縁層高さが高いので、1回目では銅粒は転写されず、またピンホールの場所によって転写される回数が異なるため、銅粒が密集した箇所はすぐには観察されなかった。しかし、19回目で5mm□中に12個銅粒が密集して転写されている箇所が観察されたため、NGと判定した。
【0129】
以上の実施例又は比較例で得られた導体層パターンのライン厚み、ライン幅、初期ピンホール、パターンの異常の有無を評価した結果を表1に示す。
なお、ライン幅、ピッチは顕微鏡写真を元に実測した。ライン厚みは得られた導体層パターンを一部切り取って樹脂で注型し、断面を顕微鏡観察することにより実測した。
【0130】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】凸部に対する凹部の幾何学図形が形成されている導電性基材の一例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図の一部。
【図3】図1のA−A断面図の一部であって図2とは別の例。
【図4】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その表面に絶縁層を形成した状態の導電性基材の断面図。
【図5】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材において、その表面に絶縁層を形成した状態の導電性基材の他の例を示す断面図。
【図6】本発明における導電性基材の凸部のパターン及び凸部側面の絶縁層の構造の一例を示す断面図。
【図7】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材の作製方法の一例を示す断面図。
【図8】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の一例を示す断面図。
【図9】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の一例を示す断面図。
【図10】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の一例を示す断面図。
【図11】凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有する導電性基材に絶縁層を形成する工程の他の例を示す断面図。
【図12】作製しためっき転写用版を用いた導体層パターン付き基材の作製方法の一例を示す断面図。
【図13】導体層パターンが黒化処理された金属パターンからなる導体層パターン付基材の断面図。
【図14】導体層パターンが黒化処理された金属パターンからなる導体層パターン付基材の断面図。
【図15】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図16】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図17】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図18】導体層パターン付基材が他の基材に貼着された電磁波遮蔽部材の一例を示す断面図。
【図19】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【図20】フープ状のめっき用導電性基材を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【符号の説明】
【0132】
1:めっき用導電性基材
2:凹部
3:凸部
4:凸部の上面
4′:凸部の露出部分
5:凸部の側面
6:絶縁層
7:レジストフィルム
8:第一の絶縁膜
8′:第二の絶縁膜
9:粘着フィルム
10:マスク層
11:金属
12:粘着フィルム
13:別の基材
14:粘着層
15:導体層パターン付き基材
16、17:黒色層
18:金属
19:他の基材
20:保護樹脂
21:接着剤
22:他の基材
23:接着剤又は粘着剤
24:保護フィルム
100:電解浴
101:電解液
102:陽極
103:回転体
104:配管
105:ポンプ
106:金属
107:フィルム
108:圧着ロール
109:導体層パターン付き基材
110:フープ状の導電性基材
111〜128:搬送ロール
129:前処理槽
130:めっき槽(電解浴槽)
131:水洗槽
132:黒化処理槽
133:水洗槽
134:防錆処理槽
135:水洗槽
136:プラスチックフィルム基材(接着フィルム)
137:圧着ロール
138:導電層パターン付き基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の全部又は一部が2層以上からなり、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが10μm以上であるめっき用導電性基材。
【請求項2】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2種類以上の絶縁層が形成されており、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材。
【請求項3】
絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である請求項1又は2のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項4】
凸部の間隔が100μm〜1000μmである請求項1〜3のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項5】
一の絶縁層が炭素を主成分とする材料を含む請求項1〜4のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項6】
炭素を主成分とする材料がダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなることを特徴とする請求項5に記載のめっき用導電性基材。
【請求項7】
導電性基材とダイヤモンドライクカーボン(DLC)を含む絶縁層の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物あるいは炭化物の層を介在させてなる請求項6に記載のめっき用導電性基材。
【請求項8】
第二の絶縁層が第一の絶縁層の微小の穴を塞ぐように形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項9】
第二の絶縁層が有機物を塗布してなるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項10】
第二の絶縁層が電着塗料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項11】
第二の絶縁層が絶縁性の無機物を塗布してなるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項12】
回転体(ロール)又は回転体(ロール)に巻き付けられるものである請求項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項13】
フープ状である請求項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項14】
凸部の導電性基材の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなっている請求項1〜13記載のめっき用導電性基材。
【請求項15】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30度〜80度に相当する請求項14記載のめっき用導電性基材。
【請求項16】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数1】
を満足する請求項14記載のめっき用導電性基材。
【請求項17】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に絶縁層をその全部若しくは一部が2層以上となるように又は2種類以上となるように形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、形成された絶縁層の上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去することにより凸部上端から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
【請求項18】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に中間層及びその表面に第一の絶縁層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる絶縁層を形成し、その上に第二の絶縁層を形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、DLCの層上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去し、さらにその下の中間層を除去することにより凸部上端から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
【請求項19】
中間層をドライエッチングあるいは機械研磨により除去する請求項18に記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項20】
凸部の先端付近に形成されたマスク層の除去が、機械的な研磨により行われることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項21】
ドライエッチングが、少なくとも酸素プラズマを用いたエッチングを含む請求項17〜20のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項22】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材が、導電性基材の表面に所定のパターンでレジストマスクを形成する工程及びその後導電性基材にエッチングを施す工程を行うことにより作製されたものである請求項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項23】
導電性基材表面に、凸部の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなるように導電性基材をエッチングする請求項22記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項24】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30度〜80度に相当する請求項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項25】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数2】
を満足する請求項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項26】
請求項1〜16のいずれかに記載のめっき用導電性基材上に電気めっきまたは無電解めっきにより金属を析出させる工程及び上記導電性基材の凸部の上面に析出させた金属を別の基材に転写する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項27】
別の基材が、接着性を有する請求項26記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項28】
別の基材が表面に接着剤層を有する請求項27に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項29】
凸部の導電性基材の露出部分に析出させた金属を別の基材に転写する工程の前に、導電性基材の凸部の導電性基材の露出部分に析出された金属パターンを黒化処理する工程を含む請求項26〜28のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項30】
請求項26〜29のいずれかに記載の製造方法を行った後、別の基材に転写された金属パターンを黒化処理する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項31】
請求項26〜30のいずれかに記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
【請求項32】
請求項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
【請求項33】
請求項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。
【請求項1】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の全部又は一部が2層以上からなり、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが10μm以上であるめっき用導電性基材。
【請求項2】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部の上端から0.5〜5μm低い位置よりも低い位置の凹部表面に2種類以上の絶縁層が形成されており、凸部の露出部分の幅が1μm〜40μmであって、凹部に絶縁層を施した後の凸部の高さが、10μm以上であるめっき用導電性基材。
【請求項3】
絶縁層の厚さが凸部側面におけるその端付近では10μm以下である請求項1又は2のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項4】
凸部の間隔が100μm〜1000μmである請求項1〜3のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項5】
一の絶縁層が炭素を主成分とする材料を含む請求項1〜4のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項6】
炭素を主成分とする材料がダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなることを特徴とする請求項5に記載のめっき用導電性基材。
【請求項7】
導電性基材とダイヤモンドライクカーボン(DLC)を含む絶縁層の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物あるいは炭化物の層を介在させてなる請求項6に記載のめっき用導電性基材。
【請求項8】
第二の絶縁層が第一の絶縁層の微小の穴を塞ぐように形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項9】
第二の絶縁層が有機物を塗布してなるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項10】
第二の絶縁層が電着塗料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項11】
第二の絶縁層が絶縁性の無機物を塗布してなるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項12】
回転体(ロール)又は回転体(ロール)に巻き付けられるものである請求項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項13】
フープ状である請求項1〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項14】
凸部の導電性基材の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなっている請求項1〜13記載のめっき用導電性基材。
【請求項15】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30度〜80度に相当する請求項14記載のめっき用導電性基材。
【請求項16】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数1】
を満足する請求項14記載のめっき用導電性基材。
【請求項17】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に絶縁層をその全部若しくは一部が2層以上となるように又は2種類以上となるように形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、形成された絶縁層の上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去することにより凸部上端から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
【請求項18】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材の表面に中間層及びその表面に第一の絶縁層としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる絶縁層を形成し、その上に第二の絶縁層を形成し、絶縁層形成後の凸部の高さが少なくとも10μmであるように絶縁層を形成する工程、DLCの層上にマスク層を形成する工程、めっき用導電性基材の凸部の上端付近の絶縁層上に形成されたマスク層を除去する工程、露出した絶縁層をドライエッチングにより除去し、さらにその下の中間層を除去することにより凸部上端から0.5〜3μm低い位置までの導電性基材の凸部を露出させる工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造法。
【請求項19】
中間層をドライエッチングあるいは機械研磨により除去する請求項18に記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項20】
凸部の先端付近に形成されたマスク層の除去が、機械的な研磨により行われることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項21】
ドライエッチングが、少なくとも酸素プラズマを用いたエッチングを含む請求項17〜20のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項22】
凸部のパターン及びそれによって描かれる幾何学図形状の凹部を有し、凸部上端から0.5〜5μm低い位置での凸部の幅が1〜40μmであり、凸部の高さが10μmを超える導電性基材が、導電性基材の表面に所定のパターンでレジストマスクを形成する工程及びその後導電性基材にエッチングを施す工程を行うことにより作製されたものである請求項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項23】
導電性基材表面に、凸部の露出部分が先端方向に進むにつれて幅が広がっておらず、全体として下部よりも上部で幅が小さくなるように導電性基材をエッチングする請求項22記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項24】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、角度で30度〜80度に相当する請求項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項25】
凸部の導電性基材の露出部分において、凸部の側面の絶縁層の端(第1の位置)とそれより凸部の露出幅の10%に相当する分だけ幅方向に内側における凸部表面の位置(第2の位置)までの高さの差h10対する第1の位置と第2の位置での幅方向の差d10との関係d10/h10が、
【数2】
を満足する請求項23記載のめっき用導電性基材の製造法。
【請求項26】
請求項1〜16のいずれかに記載のめっき用導電性基材上に電気めっきまたは無電解めっきにより金属を析出させる工程及び上記導電性基材の凸部の上面に析出させた金属を別の基材に転写する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項27】
別の基材が、接着性を有する請求項26記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項28】
別の基材が表面に接着剤層を有する請求項27に記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項29】
凸部の導電性基材の露出部分に析出させた金属を別の基材に転写する工程の前に、導電性基材の凸部の導電性基材の露出部分に析出された金属パターンを黒化処理する工程を含む請求項26〜28のいずれかに記載の導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項30】
請求項26〜29のいずれかに記載の製造方法を行った後、別の基材に転写された金属パターンを黒化処理する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
【請求項31】
請求項26〜30のいずれかに記載の方法により製造された導体層パターン付き基材。
【請求項32】
請求項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを有する面を透明基板に貼りあわせてなる透光性電磁波遮蔽部材。
【請求項33】
請求項31に記載の導体層パターン付き基材の導体層パターンを樹脂で被覆してなる透光性電磁波遮蔽部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−1936(P2008−1936A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171630(P2006−171630)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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