めっき用治具とこれを用いた電子部品のめっき方法
【課題】磁石を用いずに電子部品のリード線を電極に接触させた状態で保持すると共に、リード線の長さが異なっていたとしても、すべてのリード線を電極に接触させることが可能なめっき用治具を提供する。
【解決手段】電極板20表面に少なくとも1つ形成された凹穴22に、弾発材30とコマ材40とが互いに隣接する状態で収容され、弾発材30とコマ材40の凹穴22からの逸脱を防ぐカバー体50が電極板20表面を覆う配置で配設され、カバー体50には、凹穴22に対応する位置において、リード線64進入用の開口孔52が形成されていて、電子部品のリード線64を開口孔52から凹穴内壁面とコマ材40の壁面との間に弾発材30の弾発力に抗して進入させ、コマ材40の壁面と凹穴22の内壁面とによりリード線64を挟持することにより保持することを特徴とする。
【解決手段】電極板20表面に少なくとも1つ形成された凹穴22に、弾発材30とコマ材40とが互いに隣接する状態で収容され、弾発材30とコマ材40の凹穴22からの逸脱を防ぐカバー体50が電極板20表面を覆う配置で配設され、カバー体50には、凹穴22に対応する位置において、リード線64進入用の開口孔52が形成されていて、電子部品のリード線64を開口孔52から凹穴内壁面とコマ材40の壁面との間に弾発材30の弾発力に抗して進入させ、コマ材40の壁面と凹穴22の内壁面とによりリード線64を挟持することにより保持することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっき用治具とこれを用いた電子部品のめっき方法に関し、より詳細には、LDステム等のリード線を有する電子部品をめっき処理する際に用いて好適なめっき用治具とこれを用いた電子部品のめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LDステムに代表されるリード線を有する電子部品は、防錆のため表面にめっき処理が施される。従来、このようなリード線を有する電子部品をめっき処理する際には、バレルめっき方法が広く用いられていた。
しかしながらバレルめっき方法を用いると、めっき処理後において電子部品のリード線どうしが絡み合い、電子部品を個別に分離する際において非常に手間がかかるといった課題があった。
【0003】
そこで近年においては、このようなリード線を有する電子部品をめっき処理する際において、磁石が埋設された電極を形成し、磁石からの磁力によって電子部品のリード線を電極に接触させた状態で保持することで電子部品のめっきを行うめっき方法が提案されている。このようなめっき方法としては、例えば特許文献1や2に開示されているめっき方法が知られている。
特許文献1,2に開示されているめっき方法を用いることにより、リード線を有する電子部品のめっき処理を行えば、めっき処理後においても電子部品は当初に保持された電極の位置にとどまっているため、互いの電子部品におけるリード線どうしが絡み合うことがない。すなわち、めっき処理を終えた後の電子部品を個別に分離する作業がきわめて容易に行うことができるため好都合であるとされている。
【特許文献1】特開2006−183109号公報
【特許文献2】特許第3620531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1,2においては、電極に電子部品を接触させた状態で保持する機構として磁石を用いているので、電子部品が磁化され、めっき液に混在している磁性体微粒子が電子部品の表面に付着してしまうことがある。このように電子部品の表面に磁性体微粒子が付着すると、磁性体微粒子の上にめっきが盛り付けられてしまうことになり、めっき処理後における製品の外観形状が不良になってしまい、歩留まりが低下するという課題が明らかになった。
【0005】
また、めっき処理する電子部品のリード線の本数が3本までであれば、すべてのリード線を電極に接触させることができるものの、リード線の本数が4本以上になる電子部品においては、それぞれのリード線の長さが少しでも異なってしまうと、電極に接触しないリード線があらわれることになる。
このように、導通がとられていないリード線を有した状態で電子部品にめっき処理を行うと、電極に接触していないリード線に対するめっき処理が不良になってしまうという課題も明らかになった。
【0006】
そこで本願発明は、磁石を用いることなく電子部品のリード線を電極に接触させた状態で保持することにより、電子部品の表面に磁性体微粒子を付着させないようにしてめっき処理をすることが可能であると共に、電子部品に複数本のリード線が配設されている場合に、それぞれのリード線の長さが異なっていたとしても、すべてのリード線を電極に接触させた状態で保持することが可能なめっき用治具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リード線を有する電子部品をめっきする際に用いるめっき用治具であって、電極板表面に少なくとも1つ形成された凹穴に、弾発材とコマ材とが互いに隣接する状態で収容され、前記弾発材および前記コマ材の前記凹穴からの逸脱を防ぐカバー体が前記電極板表面を覆う配置で配設され、前記カバー体には、前記凹穴に対応する位置において、リード線進入用の開口孔が形成されていて、前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させ、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持することにより前記電子部品が保持されることを特徴とするめっき用治具である。
【0008】
また、1つの電子部品に対して、リード線の配列状態に対応して複数の凹穴が設けられていることを特徴とする。これにより、さまざまな配列のリード線に対しても確実に給電することができる。
【0009】
前記開口孔から前記リード線を進入させる際のガイド面として、前記リード線を挟持する前記コマ材の壁面および前記凹穴の内壁面のうちの少なくとも一方が傾斜面に形成されていることを特徴とする。これにより、リード線を凹穴とコマ材との間に円滑に進入させることができる。
【0010】
また、前記コマ材は、前記凹穴の内壁面側で前記リード線を挟持する部位が先細形状に形成されて前記リード線に点接触することを特徴とする。これによりリード線が挟持されている部分の範囲を狭くすることができるので、めっきが付着されない範囲を可及的に少なくすることができる。
【0011】
また、前記凹穴の底面には、前記電極板を貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とし、より好ましくは、貫通孔の径寸法を前記リード線の径寸法より径大で、前記リード線が貫通可能としたものである。これにより、めっき処理を所定時間行った後、リード線を治具にさらに差し込むことで、リード線の挟持位置が変わり、当初めっきが付着されていなかった部分をめっき処理することが可能になるため好都合である。また、貫通孔の存在によりめっき液槽内におけるめっき液の循環が良好になり、高品質のめっき処理が可能になる。
【0012】
また、以上に示したいずれかのめっき用治具を用い、前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成することを特徴とするめっき方法も本願発明に含まれる。
【0013】
また、リード線よりも径大な径寸法を有する貫通孔が形成されている電極板を用いた場合には、前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成し、次いで、前記電子部品を前記電極板側に押圧して、前記リード線を前記貫通孔方向に押し込み、前記リード線の前記凹穴の内壁面および前記コマ材との接触部位をずらした後に再度めっきを施すことを特徴とする電子部品のめっき方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるめっき用治具の構成およびこれを用いためっき方法を採用することにより、電子部品をめっき処理する際に、磁力を用いることなくリード線を電極に接触保持させることができる。これにより、めっき液の中に磁性体微粒子が混在していたとしても、電子部品の表面に付着することがなく、めっき不良の発生を防止することができる。
また、複数本(特に4本以上)のリード線を有する電子部品において、互いのリード線の長さにばらつきがあったとしても、すべてのリード線を電極に導通させることができるため、電子部品の全体に対して均一なめっき処理をすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかるめっき用治具の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態においては、リード線を有する電子部品の一例としてLDステムを例示する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるめっき用治具の電極板の正面図および平面図である。図2は、図1中のA部分における拡大図とa−a線における断面図である。図3は、図1に示す電極板に装着して用いるカバー体の正面図および平面図である。図4は、図3中のB部分における拡大図と拡大図内のb−b線における断面図である。
【0017】
本実施形態におけるめっき用治具10は、電極板20と、電極板20に形成された凹穴22に配設された弾発体30およびコマ材40と、電極板20に重ねて装着するカバー体50とを有している(図5参照)。
電極板20は、図1に示すように正面視が矩形の板状に形成されている。電極板20の正面側には複数の凹穴22が配設されている。本実施形態においては、2つの凹穴22,22を横方向に並べて単位凹穴24としている。図2に示すように凹穴22,22の間には突出部26が設けられている。
【0018】
図2に示すように、単位凹穴24部分のa−a線における電極板20の断面形状は、略山の字状に形成されている。突出部26の上端部分は先細形状に形成されている。それぞれの凹穴22、22は、突出部26に隣接する浅底部22Aと、浅底部22Aに連続する深底部22Bと、を有する二段底に形成されている。本実施形態における電極板20は、ステンレス鋼板が用いられており、単位凹穴24と突出部26とはそれぞれ削り出しにより形成することができる。
【0019】
電極板20の正面側には、カバー体50を装着するためのネジ穴28Aが正面側全体に配設されている。4本のガイドピン28Bは、カバー体50を電極板20の正面に装着する際に用いられる。また、電極板20に設けられたネジ穴28Aとガイドピン28Bの位置に合わせた部位には、ネジ孔58Aとガイドピン挿通孔58Bとが配設されている。
電極板20の側縁部に形成された耳部29は通電部および/またはめっき液槽内のラック(図示せず)への取り付け部として用いられる。
【0020】
図3に示すようにカバー体50には正面側から背面側に(板厚方向)に貫通する複数の開口孔52が単位凹穴24に位置合わせされた配列で形成されている。具体的には、突出部26の先端部分の位置と開口孔52の中心部の位置とが互いに位置合わせされた状態となるように開口孔52が配設されている。開口孔52は、図4に示すようにカバー体50の正面側から背面側に向けて徐々に縮径するすり鉢状に形成されている。したがって開口部52は傾斜壁52aを有する。
カバー体50の背面側における開口孔52の開口寸法Wは、突出部26の幅寸法(W3)と、LDステム60のリード線64の径寸法(d)2本分の和(W3+2d)以上となるように形成されている(図2,図4参照)。
【0021】
図5は、電極板に弾発体とコマ材を収容した後電極板にカバー体を装着した状態を示す断面図である。図5は、図3と図4における断面位置と同位置における断面図を示している。図5に示すように、電極板の各凹穴22A,22Bには、弾発体30とコマ材40とがそれぞれ隣接した状態に配設されている。コマ材40は突出部26の垂直側壁26aに垂直側壁40aを当接させて浅底部22Aに配設され、コマ材40に隣り合わせて弾発材30が深底部22Bに配設されている。本実施形態においては、弾発体30とコマ材40の幅寸法W1,W2(図6参照)が略等しく形成されている。
【0022】
弾発体30は円柱状に形成されている。また、コマ材40は四角柱状に形成されると共に、突出部26の先細となる上端側の傾斜壁26bに対向する壁面は切り欠かれて傾斜壁26bとV字状の溝45を形成するように傾斜壁40bに形成されている。
本実施形態においては弾発体30としてフッ素ゴムを用い、コマ材40としてPPSU(ポリフェニルサルフォン)が好適に用いられる。弾発材30およびコマ材40はめっき液にさらされるので、どちらも耐薬品性、耐熱性に優れた素材が用いられる。
【0023】
電極板20には凹穴22に配設した弾発材30とコマ材40が逸脱しないように、カバー体50が配設される。カバー体50は、電極板20に設けられたガイドピン28Bをガイドピン挿通孔58Bに挿入させることにより互いに位置決めした状態で重ねられた状態で装着することができる。電極板20とカバー体50とは、電極板20の凹穴22形成面とカバー体50の開口孔52の縮径側とが互いに当接する配置で組み立てられる。電極板20とカバー体50とを重ね合わせた後、ネジ穴28Aとネジ孔58Aとに図示しないネジを締め付けることにより一体に取り付けることでめっき用治具10が組み立てられる。
【0024】
次に、本実施形態にかかるめっき用治具10を用いたLDステム60のめっき方法について説明する。図6は第1実施形態にかかるめっき用治具にLDステムを装着する直前の状態を示す断面図である。説明の便宜を図るため、LDステム60は断面図とせずに正面図を示している。
本実施形態において用いるLDステム60は、アイレット62から4本のリード線64が引き出されている。図6は正面図であるため2つの凹穴22に合わせて2本のリード線64しか現れていないが、紙面垂直方向にさらに2本のリード線64が存在している。すなわち、1つの凹穴22に2本のリード線64が存在するのである。
【0025】
LDステム60は、めっき処理に入る前に既にアイレット62を整列用の治具(図示せず)に装着することで、LDステム60は配設方向が揃えられた状態で整列・保持されている。めっき用治具10における単位凹穴24の配列は、整列用の治具によって配列されたLDステム60の配列状態に合わせて配列されているので、整列用の治具から突出しているリード線64をめっき用治具10に対向させ、リード線64をめっき用治具10の開口孔52に差し込むだけで、LDステム60のそれぞれは、整列状態を維持してめっき用治具10に移動(転写)することができる。
【0026】
LDステム60のリード線64をめっき用治具10の開口孔52に進入させると、リード線64が突出部26とコマ材40との間のV字状の溝45内に進入する。すると、リード線64はコマ材40の傾斜壁40bに当接し、弾発材30の弾性力に抗してコマ材40を押圧し、コマ材40は、矢印Z方向にスライドし、リード線64の先端はコマ材40の垂直側壁40aと突出部26の垂直側壁26aとの間に進入し、両垂直側壁間に保持される。直方体状の深底部22Bに収容されている円柱状の弾発材30は、カバー体50との間および深底部22Bとの間に隙間があるため弾性変形するためのスペースは十分確保されている。
【0027】
このようにしてめっき用治具10にめっき対象物であるLDステム60が装着される。図7はめっき用治具10にLDステム60を装着した状態を示す断面図である。図7に示した状態で図示しないめっき液槽にめっき用治具10を装着し、通電することでLDステム60にめっきを施すことができる。
【0028】
本実施形態によれば、LDステム60を電極板20に保持させる際に、磁力を用いていないため、LDステム60が磁化するおそれがない。これによりめっき液中に磁性体微粒子が混在していたとしても、LDステム60の表面に磁性体微粒子が付着することが無いため、めっき表面に凹凸が形成されなくなり、めっき処理の歩留りを向上させることができる。また、各リード線64先端をコマ材40と突出部26との間に進入させて導通をとるようにしたので、リード線64が4本以上の複数本であってもすべてのリード線64への導通を確実にとることができる。
【0029】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。すなわち、第1実施形態における図7に該当する図である。本実施形態において先の実施形態と同じ構成部分については同じ番号を付すことにより詳細な説明を省略する。
先の実施形態においては、リード線64が突出部26とコマ材40とにより挟持されている部分(図8内における矢印Hの範囲)が挟持部に対して線接触となり、適切なめっき処理ができないおそれがあり、リード線64の先端部分を切除しなければならないことがある。
【0030】
これに対して本実施形態におけるめっき用治具は、凹穴22(22A)の底部におけるリード線64の当接位置から電極板20の背面側に貫通する貫通孔70を形成している点が特徴的である。電極板20の背面側から貫通孔70を通ってめっき液を流通させることができるので、めっき液の回りがよくなり、挟持部分(矢印Hの範囲)にもめっき処理を行うことができる。
もし、依然として挟持部分にめっき処理ができない場合には、図8に示す挟持状態で所定時間めっき処理した後、めっき用治具10を一旦めっき液槽から取り出して、リード線64をさらにめっき用治具10に押し込み、リード線64の挟持部分(先端部分)を電極板20の背面側から露出させた状態にする。図9は、リード線64を電極板20の背面側から突出させた状態を示す図である。
【0031】
図9に示す状態にした後、めっき用治具10を再度めっき液槽に装着し、めっき処理を行うことによりLDステム60の表面全体にわたって確実にめっき処理を施すことが可能になる。
このような構成のめっき用治具10を採用することにより、めっき処理後においてリード線64の先端部を切除する必要が無くなるので、工数を削減することができると共に、切除断面部分における未めっき処理部分もなくすことができ、LDステム60に高品質なめっき処理を低コストで施すことが可能になるため好都合である。
【0032】
(第3実施形態)
図10は第3実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。すなわち、第1実施形態における図7、第2実施形態における図8に該当する図である。本実施形態においては、リード線64を挟持するコマ材40の形状に特徴がある。
本実施形態におけるコマ材40は、リード線64との接触部分が点接触となるように、コマ材40がリード線64と接触する部分(突出部26側)の断面形状が先細形状となるように形成されている。このようなコマ材40を用いためっき用治具10を採用すれば、リード線64が挟持される部分の範囲を可及的に少なくすることができるため、未めっき処理部分が減るため好都合である。
本実施形態においても図11に示すように、凹穴22(22A)の内底面におけるリード線64の軸線延長線上にリード線64が貫通可能な大きさに形成された貫通孔70を設けるようにしてもよいのはもちろんである。
【0033】
また、リード線64の挟持範囲をさらに狭くするための他の方法として、図12に示すような突出部26の形態を採用することも考えられる。
図12は、コマ材40側から臨んだ突出部26の正面図である。この突出部26には縦方向と横方向に凹溝72,74が配設されているので、リード線64との接触面積を削減することができることに加え、めっき処理中において、めっき液が開口孔52側から貫通孔70に抜けやすくする効果が得られる点で有効である。
図10に示したコマ材の形状と図12に示したコマ材40の形状を組み合わせた形状を採用すれば、突出部26とコマ材40との接触部分をさらに少なくすることができるため好都合である。
【0034】
以上に、実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態であっても本願発明の技術的範囲に属することがあるのはもちろんである。
例えば、以上に説明した実施形態においては、深さが異なる凹穴22A,22Bにより1つの凹穴22をとしているが、凹穴22内の深さを等しくした形態とすることができる。また、2つの凹穴22,22を一組にして単位凹穴24を構成し、電極板20に単位凹穴24を所要間隔に配設した形態について説明しているが、深さが異なる凹穴22A,22Bによる凹穴22を一単位にする形態や単純な凹穴22を一単位とし、電極板20内に複数配設する形態を採用してもよいのはもちろんである。この場合、リード線64は、コマ材40と凹穴22の内壁面とにより挟持される。
【0035】
また、以上の実施形態においては、1つの電子部品(LDステム60)に対してリード線の配列に対応させた2つの凹穴22を一組にして単位凹穴24とし、めっき用治具10に複数組の単位凹穴24を配設する形態について説明しているが、1つの電子部品に対して1つの凹穴22を対応させる形態や、リード線64の配列状態に合わせて3つ以上の凹穴22を1つの電子部品に対応させ、めっき用治具10に複数個の電子部品を同時に整列・保持させる形態としてもよいのはもちろんである。
【0036】
また、凹穴22に配設されている弾発体30とコマ材40は、それぞれ略等しい幅寸法で形成されたものが採用されているが、凹穴22に電子部品のリード線を挿入した際に、弾発体30の変形による弾発力がリード線を挟持するに十分な大きさを得ることができれば、弾発体30の幅寸法W1とコマ材40の幅寸法W2とをそろえる必要はない。また、弾発材30が変形するスペースが凹穴22B内に十分確保されていれば、弾発材30とカバー体50との間に隙間が形成されていなくてもよいのはもちろんである。
【0037】
また、以上の実施形態においては、突出部26とコマ材40の両方に傾斜面26b、40bを形成してリード線64の進入をガイドするV字状をなす溝45を構成しているが、突出部26およびコマ材40のうちのいずれか一方のみに傾斜面(26bまたは40b)を形成することによりV字状の溝45を形成しても良い。
【0038】
また、以上の実施形態においては、電極板20への通電は、電極板20の耳部29において行う形態について説明したが、耳部29の代わりにガイドピン28Bにより通電をとる形態を採用することもできる。この場合、ガイドピン28Bは電極板20と同等以上の伝導性を有する材料で形成されているのが好ましい。
【0039】
また、以上の実施形態においては、電子部品として4本のリード線64を有するLDステム60を例示しているが、リード線64の本数は単数本であっても複数本であっても本発明にかかるめっき用治具10を適用することができる。この場合、電極板20には凹穴22(単位凹穴24および突出部26),弾発体30,コマ材40を、カバー体50には開口孔52を、それぞれLDステム60に対するリード線64の配列状態に合わせて配設することで、いかなるリード線64の配列状態であっても柔軟に対応することができるのである。
さらには、本発明にかかるめっき用治具に用いられる電子部品としては、LDステム60に限定されるものではないのはもちろんである。例えば、他のリード線を有する電子部品として、端子部品、センサ部品、光通信部品、コネクター等をめっき処理する際においても本発明を適用することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態におけるめっき用治具の電極板の正面図および平面図である。
【図2】図1中のA部分における拡大図とa−a線における断面図である。
【図3】図1に示す電極板に装着して用いるカバー体の正面図および平面図である。
【図4】図3中のB部分における拡大図とb−b線における断面図である。
【図5】電極板に弾発体とコマ材を収容した後電極板にカバー体を装着した状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態にかかるめっき用治具にLDステムを装着する直前の状態を示す断面図である。
【図7】めっき用治具にLDステムを装着した状態を示す断面図である。
【図8】第2実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。
【図9】リード線を電極板の背面側から突出させた状態を示す図である。
【図10】第3実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。
【図11】第3実施形態における変形例を示す断面図である。
【図12】突出部の他の実施形態の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 めっき用治具
20 電極板
22,22A,22B 凹穴
24 単位凹穴
26 突出部
26a,40a,52a 垂直壁
26b,40b 傾斜壁
28A ネジ穴
28B ガイドピン
29 耳部
30 弾発体
40 コマ材
42 接触端縁部
45 溝
50 カバー体
52 開口孔
58A ネジ孔
58B ガイドピン挿通孔
60 LDステム
62 アイレット
64 リード線
70 貫通孔
72 縦凹溝
74 横凹溝
【技術分野】
【0001】
本発明はめっき用治具とこれを用いた電子部品のめっき方法に関し、より詳細には、LDステム等のリード線を有する電子部品をめっき処理する際に用いて好適なめっき用治具とこれを用いた電子部品のめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LDステムに代表されるリード線を有する電子部品は、防錆のため表面にめっき処理が施される。従来、このようなリード線を有する電子部品をめっき処理する際には、バレルめっき方法が広く用いられていた。
しかしながらバレルめっき方法を用いると、めっき処理後において電子部品のリード線どうしが絡み合い、電子部品を個別に分離する際において非常に手間がかかるといった課題があった。
【0003】
そこで近年においては、このようなリード線を有する電子部品をめっき処理する際において、磁石が埋設された電極を形成し、磁石からの磁力によって電子部品のリード線を電極に接触させた状態で保持することで電子部品のめっきを行うめっき方法が提案されている。このようなめっき方法としては、例えば特許文献1や2に開示されているめっき方法が知られている。
特許文献1,2に開示されているめっき方法を用いることにより、リード線を有する電子部品のめっき処理を行えば、めっき処理後においても電子部品は当初に保持された電極の位置にとどまっているため、互いの電子部品におけるリード線どうしが絡み合うことがない。すなわち、めっき処理を終えた後の電子部品を個別に分離する作業がきわめて容易に行うことができるため好都合であるとされている。
【特許文献1】特開2006−183109号公報
【特許文献2】特許第3620531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1,2においては、電極に電子部品を接触させた状態で保持する機構として磁石を用いているので、電子部品が磁化され、めっき液に混在している磁性体微粒子が電子部品の表面に付着してしまうことがある。このように電子部品の表面に磁性体微粒子が付着すると、磁性体微粒子の上にめっきが盛り付けられてしまうことになり、めっき処理後における製品の外観形状が不良になってしまい、歩留まりが低下するという課題が明らかになった。
【0005】
また、めっき処理する電子部品のリード線の本数が3本までであれば、すべてのリード線を電極に接触させることができるものの、リード線の本数が4本以上になる電子部品においては、それぞれのリード線の長さが少しでも異なってしまうと、電極に接触しないリード線があらわれることになる。
このように、導通がとられていないリード線を有した状態で電子部品にめっき処理を行うと、電極に接触していないリード線に対するめっき処理が不良になってしまうという課題も明らかになった。
【0006】
そこで本願発明は、磁石を用いることなく電子部品のリード線を電極に接触させた状態で保持することにより、電子部品の表面に磁性体微粒子を付着させないようにしてめっき処理をすることが可能であると共に、電子部品に複数本のリード線が配設されている場合に、それぞれのリード線の長さが異なっていたとしても、すべてのリード線を電極に接触させた状態で保持することが可能なめっき用治具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リード線を有する電子部品をめっきする際に用いるめっき用治具であって、電極板表面に少なくとも1つ形成された凹穴に、弾発材とコマ材とが互いに隣接する状態で収容され、前記弾発材および前記コマ材の前記凹穴からの逸脱を防ぐカバー体が前記電極板表面を覆う配置で配設され、前記カバー体には、前記凹穴に対応する位置において、リード線進入用の開口孔が形成されていて、前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させ、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持することにより前記電子部品が保持されることを特徴とするめっき用治具である。
【0008】
また、1つの電子部品に対して、リード線の配列状態に対応して複数の凹穴が設けられていることを特徴とする。これにより、さまざまな配列のリード線に対しても確実に給電することができる。
【0009】
前記開口孔から前記リード線を進入させる際のガイド面として、前記リード線を挟持する前記コマ材の壁面および前記凹穴の内壁面のうちの少なくとも一方が傾斜面に形成されていることを特徴とする。これにより、リード線を凹穴とコマ材との間に円滑に進入させることができる。
【0010】
また、前記コマ材は、前記凹穴の内壁面側で前記リード線を挟持する部位が先細形状に形成されて前記リード線に点接触することを特徴とする。これによりリード線が挟持されている部分の範囲を狭くすることができるので、めっきが付着されない範囲を可及的に少なくすることができる。
【0011】
また、前記凹穴の底面には、前記電極板を貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とし、より好ましくは、貫通孔の径寸法を前記リード線の径寸法より径大で、前記リード線が貫通可能としたものである。これにより、めっき処理を所定時間行った後、リード線を治具にさらに差し込むことで、リード線の挟持位置が変わり、当初めっきが付着されていなかった部分をめっき処理することが可能になるため好都合である。また、貫通孔の存在によりめっき液槽内におけるめっき液の循環が良好になり、高品質のめっき処理が可能になる。
【0012】
また、以上に示したいずれかのめっき用治具を用い、前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成することを特徴とするめっき方法も本願発明に含まれる。
【0013】
また、リード線よりも径大な径寸法を有する貫通孔が形成されている電極板を用いた場合には、前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成し、次いで、前記電子部品を前記電極板側に押圧して、前記リード線を前記貫通孔方向に押し込み、前記リード線の前記凹穴の内壁面および前記コマ材との接触部位をずらした後に再度めっきを施すことを特徴とする電子部品のめっき方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるめっき用治具の構成およびこれを用いためっき方法を採用することにより、電子部品をめっき処理する際に、磁力を用いることなくリード線を電極に接触保持させることができる。これにより、めっき液の中に磁性体微粒子が混在していたとしても、電子部品の表面に付着することがなく、めっき不良の発生を防止することができる。
また、複数本(特に4本以上)のリード線を有する電子部品において、互いのリード線の長さにばらつきがあったとしても、すべてのリード線を電極に導通させることができるため、電子部品の全体に対して均一なめっき処理をすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかるめっき用治具の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態においては、リード線を有する電子部品の一例としてLDステムを例示する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるめっき用治具の電極板の正面図および平面図である。図2は、図1中のA部分における拡大図とa−a線における断面図である。図3は、図1に示す電極板に装着して用いるカバー体の正面図および平面図である。図4は、図3中のB部分における拡大図と拡大図内のb−b線における断面図である。
【0017】
本実施形態におけるめっき用治具10は、電極板20と、電極板20に形成された凹穴22に配設された弾発体30およびコマ材40と、電極板20に重ねて装着するカバー体50とを有している(図5参照)。
電極板20は、図1に示すように正面視が矩形の板状に形成されている。電極板20の正面側には複数の凹穴22が配設されている。本実施形態においては、2つの凹穴22,22を横方向に並べて単位凹穴24としている。図2に示すように凹穴22,22の間には突出部26が設けられている。
【0018】
図2に示すように、単位凹穴24部分のa−a線における電極板20の断面形状は、略山の字状に形成されている。突出部26の上端部分は先細形状に形成されている。それぞれの凹穴22、22は、突出部26に隣接する浅底部22Aと、浅底部22Aに連続する深底部22Bと、を有する二段底に形成されている。本実施形態における電極板20は、ステンレス鋼板が用いられており、単位凹穴24と突出部26とはそれぞれ削り出しにより形成することができる。
【0019】
電極板20の正面側には、カバー体50を装着するためのネジ穴28Aが正面側全体に配設されている。4本のガイドピン28Bは、カバー体50を電極板20の正面に装着する際に用いられる。また、電極板20に設けられたネジ穴28Aとガイドピン28Bの位置に合わせた部位には、ネジ孔58Aとガイドピン挿通孔58Bとが配設されている。
電極板20の側縁部に形成された耳部29は通電部および/またはめっき液槽内のラック(図示せず)への取り付け部として用いられる。
【0020】
図3に示すようにカバー体50には正面側から背面側に(板厚方向)に貫通する複数の開口孔52が単位凹穴24に位置合わせされた配列で形成されている。具体的には、突出部26の先端部分の位置と開口孔52の中心部の位置とが互いに位置合わせされた状態となるように開口孔52が配設されている。開口孔52は、図4に示すようにカバー体50の正面側から背面側に向けて徐々に縮径するすり鉢状に形成されている。したがって開口部52は傾斜壁52aを有する。
カバー体50の背面側における開口孔52の開口寸法Wは、突出部26の幅寸法(W3)と、LDステム60のリード線64の径寸法(d)2本分の和(W3+2d)以上となるように形成されている(図2,図4参照)。
【0021】
図5は、電極板に弾発体とコマ材を収容した後電極板にカバー体を装着した状態を示す断面図である。図5は、図3と図4における断面位置と同位置における断面図を示している。図5に示すように、電極板の各凹穴22A,22Bには、弾発体30とコマ材40とがそれぞれ隣接した状態に配設されている。コマ材40は突出部26の垂直側壁26aに垂直側壁40aを当接させて浅底部22Aに配設され、コマ材40に隣り合わせて弾発材30が深底部22Bに配設されている。本実施形態においては、弾発体30とコマ材40の幅寸法W1,W2(図6参照)が略等しく形成されている。
【0022】
弾発体30は円柱状に形成されている。また、コマ材40は四角柱状に形成されると共に、突出部26の先細となる上端側の傾斜壁26bに対向する壁面は切り欠かれて傾斜壁26bとV字状の溝45を形成するように傾斜壁40bに形成されている。
本実施形態においては弾発体30としてフッ素ゴムを用い、コマ材40としてPPSU(ポリフェニルサルフォン)が好適に用いられる。弾発材30およびコマ材40はめっき液にさらされるので、どちらも耐薬品性、耐熱性に優れた素材が用いられる。
【0023】
電極板20には凹穴22に配設した弾発材30とコマ材40が逸脱しないように、カバー体50が配設される。カバー体50は、電極板20に設けられたガイドピン28Bをガイドピン挿通孔58Bに挿入させることにより互いに位置決めした状態で重ねられた状態で装着することができる。電極板20とカバー体50とは、電極板20の凹穴22形成面とカバー体50の開口孔52の縮径側とが互いに当接する配置で組み立てられる。電極板20とカバー体50とを重ね合わせた後、ネジ穴28Aとネジ孔58Aとに図示しないネジを締め付けることにより一体に取り付けることでめっき用治具10が組み立てられる。
【0024】
次に、本実施形態にかかるめっき用治具10を用いたLDステム60のめっき方法について説明する。図6は第1実施形態にかかるめっき用治具にLDステムを装着する直前の状態を示す断面図である。説明の便宜を図るため、LDステム60は断面図とせずに正面図を示している。
本実施形態において用いるLDステム60は、アイレット62から4本のリード線64が引き出されている。図6は正面図であるため2つの凹穴22に合わせて2本のリード線64しか現れていないが、紙面垂直方向にさらに2本のリード線64が存在している。すなわち、1つの凹穴22に2本のリード線64が存在するのである。
【0025】
LDステム60は、めっき処理に入る前に既にアイレット62を整列用の治具(図示せず)に装着することで、LDステム60は配設方向が揃えられた状態で整列・保持されている。めっき用治具10における単位凹穴24の配列は、整列用の治具によって配列されたLDステム60の配列状態に合わせて配列されているので、整列用の治具から突出しているリード線64をめっき用治具10に対向させ、リード線64をめっき用治具10の開口孔52に差し込むだけで、LDステム60のそれぞれは、整列状態を維持してめっき用治具10に移動(転写)することができる。
【0026】
LDステム60のリード線64をめっき用治具10の開口孔52に進入させると、リード線64が突出部26とコマ材40との間のV字状の溝45内に進入する。すると、リード線64はコマ材40の傾斜壁40bに当接し、弾発材30の弾性力に抗してコマ材40を押圧し、コマ材40は、矢印Z方向にスライドし、リード線64の先端はコマ材40の垂直側壁40aと突出部26の垂直側壁26aとの間に進入し、両垂直側壁間に保持される。直方体状の深底部22Bに収容されている円柱状の弾発材30は、カバー体50との間および深底部22Bとの間に隙間があるため弾性変形するためのスペースは十分確保されている。
【0027】
このようにしてめっき用治具10にめっき対象物であるLDステム60が装着される。図7はめっき用治具10にLDステム60を装着した状態を示す断面図である。図7に示した状態で図示しないめっき液槽にめっき用治具10を装着し、通電することでLDステム60にめっきを施すことができる。
【0028】
本実施形態によれば、LDステム60を電極板20に保持させる際に、磁力を用いていないため、LDステム60が磁化するおそれがない。これによりめっき液中に磁性体微粒子が混在していたとしても、LDステム60の表面に磁性体微粒子が付着することが無いため、めっき表面に凹凸が形成されなくなり、めっき処理の歩留りを向上させることができる。また、各リード線64先端をコマ材40と突出部26との間に進入させて導通をとるようにしたので、リード線64が4本以上の複数本であってもすべてのリード線64への導通を確実にとることができる。
【0029】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。すなわち、第1実施形態における図7に該当する図である。本実施形態において先の実施形態と同じ構成部分については同じ番号を付すことにより詳細な説明を省略する。
先の実施形態においては、リード線64が突出部26とコマ材40とにより挟持されている部分(図8内における矢印Hの範囲)が挟持部に対して線接触となり、適切なめっき処理ができないおそれがあり、リード線64の先端部分を切除しなければならないことがある。
【0030】
これに対して本実施形態におけるめっき用治具は、凹穴22(22A)の底部におけるリード線64の当接位置から電極板20の背面側に貫通する貫通孔70を形成している点が特徴的である。電極板20の背面側から貫通孔70を通ってめっき液を流通させることができるので、めっき液の回りがよくなり、挟持部分(矢印Hの範囲)にもめっき処理を行うことができる。
もし、依然として挟持部分にめっき処理ができない場合には、図8に示す挟持状態で所定時間めっき処理した後、めっき用治具10を一旦めっき液槽から取り出して、リード線64をさらにめっき用治具10に押し込み、リード線64の挟持部分(先端部分)を電極板20の背面側から露出させた状態にする。図9は、リード線64を電極板20の背面側から突出させた状態を示す図である。
【0031】
図9に示す状態にした後、めっき用治具10を再度めっき液槽に装着し、めっき処理を行うことによりLDステム60の表面全体にわたって確実にめっき処理を施すことが可能になる。
このような構成のめっき用治具10を採用することにより、めっき処理後においてリード線64の先端部を切除する必要が無くなるので、工数を削減することができると共に、切除断面部分における未めっき処理部分もなくすことができ、LDステム60に高品質なめっき処理を低コストで施すことが可能になるため好都合である。
【0032】
(第3実施形態)
図10は第3実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。すなわち、第1実施形態における図7、第2実施形態における図8に該当する図である。本実施形態においては、リード線64を挟持するコマ材40の形状に特徴がある。
本実施形態におけるコマ材40は、リード線64との接触部分が点接触となるように、コマ材40がリード線64と接触する部分(突出部26側)の断面形状が先細形状となるように形成されている。このようなコマ材40を用いためっき用治具10を採用すれば、リード線64が挟持される部分の範囲を可及的に少なくすることができるため、未めっき処理部分が減るため好都合である。
本実施形態においても図11に示すように、凹穴22(22A)の内底面におけるリード線64の軸線延長線上にリード線64が貫通可能な大きさに形成された貫通孔70を設けるようにしてもよいのはもちろんである。
【0033】
また、リード線64の挟持範囲をさらに狭くするための他の方法として、図12に示すような突出部26の形態を採用することも考えられる。
図12は、コマ材40側から臨んだ突出部26の正面図である。この突出部26には縦方向と横方向に凹溝72,74が配設されているので、リード線64との接触面積を削減することができることに加え、めっき処理中において、めっき液が開口孔52側から貫通孔70に抜けやすくする効果が得られる点で有効である。
図10に示したコマ材の形状と図12に示したコマ材40の形状を組み合わせた形状を採用すれば、突出部26とコマ材40との接触部分をさらに少なくすることができるため好都合である。
【0034】
以上に、実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態であっても本願発明の技術的範囲に属することがあるのはもちろんである。
例えば、以上に説明した実施形態においては、深さが異なる凹穴22A,22Bにより1つの凹穴22をとしているが、凹穴22内の深さを等しくした形態とすることができる。また、2つの凹穴22,22を一組にして単位凹穴24を構成し、電極板20に単位凹穴24を所要間隔に配設した形態について説明しているが、深さが異なる凹穴22A,22Bによる凹穴22を一単位にする形態や単純な凹穴22を一単位とし、電極板20内に複数配設する形態を採用してもよいのはもちろんである。この場合、リード線64は、コマ材40と凹穴22の内壁面とにより挟持される。
【0035】
また、以上の実施形態においては、1つの電子部品(LDステム60)に対してリード線の配列に対応させた2つの凹穴22を一組にして単位凹穴24とし、めっき用治具10に複数組の単位凹穴24を配設する形態について説明しているが、1つの電子部品に対して1つの凹穴22を対応させる形態や、リード線64の配列状態に合わせて3つ以上の凹穴22を1つの電子部品に対応させ、めっき用治具10に複数個の電子部品を同時に整列・保持させる形態としてもよいのはもちろんである。
【0036】
また、凹穴22に配設されている弾発体30とコマ材40は、それぞれ略等しい幅寸法で形成されたものが採用されているが、凹穴22に電子部品のリード線を挿入した際に、弾発体30の変形による弾発力がリード線を挟持するに十分な大きさを得ることができれば、弾発体30の幅寸法W1とコマ材40の幅寸法W2とをそろえる必要はない。また、弾発材30が変形するスペースが凹穴22B内に十分確保されていれば、弾発材30とカバー体50との間に隙間が形成されていなくてもよいのはもちろんである。
【0037】
また、以上の実施形態においては、突出部26とコマ材40の両方に傾斜面26b、40bを形成してリード線64の進入をガイドするV字状をなす溝45を構成しているが、突出部26およびコマ材40のうちのいずれか一方のみに傾斜面(26bまたは40b)を形成することによりV字状の溝45を形成しても良い。
【0038】
また、以上の実施形態においては、電極板20への通電は、電極板20の耳部29において行う形態について説明したが、耳部29の代わりにガイドピン28Bにより通電をとる形態を採用することもできる。この場合、ガイドピン28Bは電極板20と同等以上の伝導性を有する材料で形成されているのが好ましい。
【0039】
また、以上の実施形態においては、電子部品として4本のリード線64を有するLDステム60を例示しているが、リード線64の本数は単数本であっても複数本であっても本発明にかかるめっき用治具10を適用することができる。この場合、電極板20には凹穴22(単位凹穴24および突出部26),弾発体30,コマ材40を、カバー体50には開口孔52を、それぞれLDステム60に対するリード線64の配列状態に合わせて配設することで、いかなるリード線64の配列状態であっても柔軟に対応することができるのである。
さらには、本発明にかかるめっき用治具に用いられる電子部品としては、LDステム60に限定されるものではないのはもちろんである。例えば、他のリード線を有する電子部品として、端子部品、センサ部品、光通信部品、コネクター等をめっき処理する際においても本発明を適用することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態におけるめっき用治具の電極板の正面図および平面図である。
【図2】図1中のA部分における拡大図とa−a線における断面図である。
【図3】図1に示す電極板に装着して用いるカバー体の正面図および平面図である。
【図4】図3中のB部分における拡大図とb−b線における断面図である。
【図5】電極板に弾発体とコマ材を収容した後電極板にカバー体を装着した状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態にかかるめっき用治具にLDステムを装着する直前の状態を示す断面図である。
【図7】めっき用治具にLDステムを装着した状態を示す断面図である。
【図8】第2実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。
【図9】リード線を電極板の背面側から突出させた状態を示す図である。
【図10】第3実施形態におけるめっき用治具における単位凹穴部分の断面図である。
【図11】第3実施形態における変形例を示す断面図である。
【図12】突出部の他の実施形態の一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 めっき用治具
20 電極板
22,22A,22B 凹穴
24 単位凹穴
26 突出部
26a,40a,52a 垂直壁
26b,40b 傾斜壁
28A ネジ穴
28B ガイドピン
29 耳部
30 弾発体
40 コマ材
42 接触端縁部
45 溝
50 カバー体
52 開口孔
58A ネジ孔
58B ガイドピン挿通孔
60 LDステム
62 アイレット
64 リード線
70 貫通孔
72 縦凹溝
74 横凹溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード線を有する電子部品をめっきする際に用いるめっき用治具であって、
電極板表面に少なくとも1つ形成された凹穴に、弾発材とコマ材とが互いに隣接する状態で収容され、
前記弾発材および前記コマ材の前記凹穴からの逸脱を防ぐカバー体が前記電極板表面を覆う配置で配設され、
前記カバー体には、前記凹穴に対応する位置において、リード線進入用の開口孔が形成されていて、
前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させ、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持することにより前記電子部品が保持されることを特徴とするめっき用治具。
【請求項2】
1つの電子部品に対して、リード線の配列状態に対応して複数の凹穴が設けられていることを特徴とする請求項1記載のめっき用治具。
【請求項3】
前記開口孔から前記リード線を進入させる際のガイド面として、前記リード線を挟持する前記コマ材の壁面および前記凹穴の内壁面のうちの少なくとも一方が傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のめっき用治具。
【請求項4】
前記コマ材は、前記凹穴の内壁面側で前記リード線を挟持する部位が先細形状に形成されて前記リード線に点接触することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のめっき用治具。
【請求項5】
前記凹穴の底面には、前記電極板を貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のめっき用治具。
【請求項6】
前記貫通孔の径寸法は前記リード線の径寸法より径大で、前記リード線が貫通可能であることを特徴とする請求項5記載のめっき用治具。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のめっき用治具を用い、
前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、
前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、
前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成することを特徴とする電子部品のめっき方法。
【請求項8】
請求項6記載のめっき用治具を用い、
前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、
前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、
前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成し、
次いで、前記電子部品を前記電極板側に押圧して、前記リード線を前記貫通孔方向に押し込み、前記リード線の前記凹穴の内壁面および前記コマ材との接触部位をずらした後に再度めっきを施すことを特徴とする電子部品のめっき方法。
【請求項1】
リード線を有する電子部品をめっきする際に用いるめっき用治具であって、
電極板表面に少なくとも1つ形成された凹穴に、弾発材とコマ材とが互いに隣接する状態で収容され、
前記弾発材および前記コマ材の前記凹穴からの逸脱を防ぐカバー体が前記電極板表面を覆う配置で配設され、
前記カバー体には、前記凹穴に対応する位置において、リード線進入用の開口孔が形成されていて、
前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させ、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持することにより前記電子部品が保持されることを特徴とするめっき用治具。
【請求項2】
1つの電子部品に対して、リード線の配列状態に対応して複数の凹穴が設けられていることを特徴とする請求項1記載のめっき用治具。
【請求項3】
前記開口孔から前記リード線を進入させる際のガイド面として、前記リード線を挟持する前記コマ材の壁面および前記凹穴の内壁面のうちの少なくとも一方が傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のめっき用治具。
【請求項4】
前記コマ材は、前記凹穴の内壁面側で前記リード線を挟持する部位が先細形状に形成されて前記リード線に点接触することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のめっき用治具。
【請求項5】
前記凹穴の底面には、前記電極板を貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のめっき用治具。
【請求項6】
前記貫通孔の径寸法は前記リード線の径寸法より径大で、前記リード線が貫通可能であることを特徴とする請求項5記載のめっき用治具。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のめっき用治具を用い、
前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、
前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、
前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成することを特徴とする電子部品のめっき方法。
【請求項8】
請求項6記載のめっき用治具を用い、
前記電子部品のリード線を前記開口孔から前記凹穴内壁面と前記コマ材の壁面との間に前記弾発材の弾発力に抗して進入させることにより、前記コマ材の壁面と前記凹穴の内壁面とにより前記リード線を挟持して前記電子部品をめっき用治具に保持させ、
前記電子部品が保持されためっき用治具をめっき液槽に装着し、
前記電極板に給電し、前記電子部品の表面に金属被膜を形成し、
次いで、前記電子部品を前記電極板側に押圧して、前記リード線を前記貫通孔方向に押し込み、前記リード線の前記凹穴の内壁面および前記コマ材との接触部位をずらした後に再度めっきを施すことを特徴とする電子部品のめっき方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−197283(P2009−197283A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41258(P2008−41258)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
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