説明

めっき用部材、めっき処理品の製造方法、表示デバイス

【課題】ガラスや樹脂など、光透過性を有する難めっき材料の表面が処理されていることにより、難めっき材料を支持体として、高い光透過性を有し且つ表面に良好に無電解めっきを施すことが可能となるめっき用部材を提供する。
【解決手段】光透過性を有する支持体2と、該支持体2の表面に形成された下地膜3と、を有し、下地膜3は、光透過性を有する基材と、平均粒径が100nm以下のアルミナ粒子と、を有するめっき用部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき用部材、めっき処理品の製造方法、表示デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、材料表面の接触作用による還元を利用しためっき法である化学めっき(無電解めっき)が知られている。無電解めっきでは電気エネルギーを用いないため、不導体である樹脂材料やガラスなどに対してもめっきを施すことが可能である。
【0003】
このようにして得られるめっき皮膜が十分に機能を発揮するためには、めっき処理品の使用環境でめっき皮膜が剥離しないことが必要である。しかし、樹脂材料やガラスなどの難めっき材料は、形成されるめっき皮膜との間の密着力が弱く、めっき皮膜の内部応力によって簡単にめっきが剥がれ、膨れなどの剥離を生じてしまう。
【0004】
このような剥離を防止するため、樹脂材料にめっきを施す場合には、予め樹脂材料の表面にクロム酸溶液などを用いてエッチング処理を施し、表面を化学的に粗化することが行われている。これにより、形成されるめっき皮膜が、粗化された樹脂材料の凹凸に食い込むようにして形成されるため、密着力を得ることができる(アンカー効果)。
【0005】
すなわち、一般的な樹脂のめっき工程は、洗浄→エッチング→触媒付与→無電解めっきで示される。ここで、触媒付与は、無電解めっきの反応開始剤(触媒)となるパラジウム(Pd)などを表面に付着させる工程である。通常は、2価パラジウム塩と2価スズ(Sn)塩とのコロイド溶液を塗布し、その後アクセレーターと呼ばれる酸またはアルカリ溶液に浸漬することで、パラジウムを0価に還元して活性化する工程を含む。無電解めっきとしては、無電解Cuめっきや無電解NiPめっきが例示できる。
【0006】
また、ガラスにめっきする場合も樹脂のめっき工程と同様の工程となる。ガラスにめっきする場合には、フッ化水素酸などのエッチング処理でガラスの表面に凹凸を形成し、アンカー効果によって密着力を向上させる方法が一般的に用いられている。
【0007】
しかし、エッチングで粗化する処理を用いないで密着力の高いめっき皮膜を形成することが出来れば、工程の簡素・短縮化ができ望ましい。そこで、難めっき基板の表面上にSOG(Spin-on Glass)やポーラスSOGの下地膜を設け、その下地膜の上に無電解めっきを行う方法(特許文献1参照)や、基板表面上に微粉末シリカなどのフィラー成分と樹脂組成成分からなる下地膜を設け、その下地膜上に無電解めっきを行う方法(特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−2201号公報
【特許文献2】特開2008−208389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無電解めっきを用いて形成しためっき処理品は、種々の製品の構成材料として用いられる。例えば、ガラスや透明樹脂に対して金属めっきを施しためっき処理品は、高い光透過性を要求するディスプレーや太陽電池など、ガラスや透明樹脂が有する光透過性を利用することができる製品への応用が期待される。
【0010】
しかし上述の特許文献に示された方法は、光透過性という要求物性について着目したものではなく、得られるめっき処理品が光透過性を有するための技術が十分に開示されてはいなかった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ガラスや樹脂など光透過性を有する難めっき材料が処理されていることにより、高い光透過性を有し、且つ良好に無電解めっきを施すことが可能となるめっき用部材を提供することを目的とする。また、上述のめっき用部材を用いることにより、難めっき材料に対し良好にめっき処理を施しためっき処理品の製造方法を提供することをあわせて目的とする。さらに、上述のめっき用部材を用いることにより、難めっき材料に対してめっき処理を施して得られる配線層を備えた表示デバイスを提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の態様のめっき用部材は、光透過性を有する支持体と、該支持体の表面に形成された下地膜と、を有し、前記下地膜は、光透過性を有する基材と、平均粒径が100nm以下のアルミナ粒子と、を有することを特徴とする。
【0013】
前記めっき用部材においては、前記アルミナ粒子は、羽毛状の形状を有していることが望ましい。
【0014】
前記めっき用部材においては、前記アルミナ粒子は、棒状の形状を有していることが望ましい。
【0015】
前記めっき用部材においては、前記基材の形成材料が、紫外線硬化性樹脂であることが望ましい。
【0016】
前記めっき用部材においては、前記支持体の形成材料が、ガラスであることが望ましい。
【0017】
前記めっき用部材においては、前記支持体の形成材料が、樹脂材料であることが望ましい。
【0018】
前記めっき用部材においては、前記支持体が、可撓性を有することが望ましい。
【0019】
また、本発明の態様のめっき処理品の製造方法は、上述のめっき用部材が有する下地膜の表面に無電解めっき用触媒を担持させる工程と、前記下地膜の表面に無電解めっき液を接触させ無電解めっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の態様の表示デバイスは、上述のめっき用部材と、前記めっき用部材が有する下地膜の表面に形成された無電解めっき層とを有し、前記無電解めっき層を配線層として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ガラスや樹脂などの難めっき材料が処理されていることにより、高い光透過性を有し、且つ良好に無電解めっきを施すことが可能となるめっき用部材を提供することができる。また、上述のめっき用部材を用いることにより、難めっき材料に対し良好にめっき処理を施しためっき処理品の製造方法を提供することができる。さらに、上述のめっき用部材を用いることにより、難めっき材料に対してめっき処理を施して得られる配線層を備えた表示デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態のめっき用部材を示す模式図である。
【図2】本実施形態のめっき用部材の製造工程を示す工程図である。
【図3】本実施形態のめっき処理品の製造方法を説明する工程図である。
【図4】参考例の結果を示す写真である。
【図5】参考例の結果を示す写真である。
【図6】実施例1の結果を示す写真である。
【図7】実施例1の結果を示す写真である。
【図8】比較例の結果を示す写真である。
【図9】実施例2の結果を示す写真である。
【図10】実施例2の結果を示す写真である。
【図11】実施例2の結果を示す図である。
【図12】実施例3の結果を示す写真である。
【図13】実施例3の結果を示す図である。
【図14】実施例3の結果を示す写真である。
【図15】実施例3の結果を示す表である。
【図16】実施例4の結果を示す図である。
【図17】実施例4の結果を示す表である。
【図18】実施例5の結果を示す図である。
【図19】実施例5の結果を示す表である。
【図20】実施例6の結果を示す写真である。
【図21】実施例6の結果を示す図である。
【図22】実施例6の結果を示す写真である。
【図23】実施例6の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施形態に係るめっき用部材およびめっき処理品の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0024】
図1は、本実施形態のめっき用部材1を示す模式図である。図に示すように、本実施形態のめっき用部材1は、難めっき性であり光透過性を有する支持体2と、支持体2の一面側に形成された親めっき層(下地膜)3と、を有する。
【0025】
支持体2としては、例えば、ガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)などのポリエステル樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。これらの材料は、光透過性を有し、且つ無電解めっきの結果形成される金属製のめっき皮膜と金属結合を形成しない。そのため、本実施形態においては、これらの材料を、直接めっき皮膜を形成しにくく、また形成されるめっき皮膜が剥離しやすい難めっき性の材料として取り扱う。同様の理由によりめっき皮膜が剥離しやすく光透過性を有する材料であれば、同様に支持体2の形成材料として用いることができる。
【0026】
親めっき層3は、平均粒径が100nm以下のアルミナ粒子を有している。アルミナ粒子としては、平均粒径が100nm以下であれば、粒状、棒状、羽毛状などの形状を採用することができる。ここで「平均粒径」とは、動的光散乱法など公知の方法を測定原理として、体積平均粒径、面積平均粒径、累積中位径(Median径)などを採用して求めることができる値である。また、アルミナ粒子が、棒状や羽毛状など異形の形状を有する場合には、一粒子のなかでの最大径(長手方向の大きさ)が上述の平均粒径であり、一粒子において短手方向の大きさは上述の平均粒径よりも小さい値を示す。
【0027】
また、親めっき層3は、上記アルミナ粒子を分散させるバインダー(基材)を有している。バインダーは、光透過性を有する樹脂材料である。樹脂材料としては、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を好適に用いることができ、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、フェノール樹脂、エン・チオール樹脂、ポリシロキサンなどを例示することができる。なお、本明細書においてポリシロキサンとは、側鎖に有機基を有するものの他に、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランを加水分解させることにより生じるSiO(SOG、Spin-on Glass)も含むものとする。
【0028】
図2は、本実施形態のめっき用部材1の製造工程を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、支持体2の表面に、上述のアルミナ分子を上述の透明樹脂の前駆体に均一に分散させた塗布液3Aを塗布する。塗布の方法としては、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、ロールコート、刷毛塗り、フレキソ印刷やスクリーン印刷といった印刷法などの通常知られた方法を例示することができる。
【0029】
透明樹脂として紫外線硬化性樹脂を選択する場合、塗布液3Aに少量の光重合開始剤を添加することとしても良い。
【0030】
次いで、図2(b)に示すように、加熱または紫外線照射のいずれか一方または両方を行うことにより、前駆体を硬化させて親めっき層3を形成する。
【0031】
アルミナ粒子を分散させるバインダーとして紫外線硬化性樹脂を用いると、めっき用部材1の製造において硬化の工程を常温で行うことが可能となるため、できあがるめっき用部材1に残留応力が含まれにくい。したがって、例えば支持体2として弾性率が低い材料を用いる場合や、ロール状に巻き取ることが可能なほど薄いものを用いる場合において、残留応力によってめっき用部材1が歪んでしまう不具合が抑制され好ましい。
【0032】
なお、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線照射による硬化反応後に一定時間の加熱を行い、反応を完結させる(いわゆるポストベーク)こととしても良い。この場合であっても、ポストベーク前に前駆体の大半が硬化しているため、残留応力は生じにくく、紫外線硬化性樹脂を用いる利点を享受することができる。
【0033】
以上のようなめっき用部材1は、親めっき層3が有するアルミナ粒子の粒径が100nm以下であり、可視光領域の波長より短いためほとんど光を散乱しない。そのため、親めっき層3は透明な皮膜となり、めっき用部材1は透明な部材となる。
【0034】
ここで、親めっき層3に含まれるアルミナ粒子の形状が棒状や羽毛状である場合、粒子の長手方向と交差する方向に振動する光に対して、アルミナ粒子は、平均粒径よりも小さい粒径を有する粒子のようにふるまう。すなわち、親めっき層3を透過する可視光線の振動方向がアルミナ粒子の長手方向と交差する方向である場合には、該可視光線に対してアルミナ粒子は散乱源になりにくくなり、可視光線を透過しやすくなる。したがって、高い光透過性を示す。
【0035】
図3は、めっき用部材1に対して無電解めっきを行い、めっき処理品10を製造する工程図である。ここでは、めっき処理により金属配線を形成してめっき処理品10を製造することとして説明する。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、めっき用部材1の親めっき層3上にレジスト材料を塗布し、これをプリベークすることでレジスト層4を形成する。レジスト材料としては、ここではポジ型フォトレジストを用いる。
【0037】
その後、金属配線を形成する領域に対応する位置に開口部Maを備え、金属配線を形成しない領域に遮光部Mbを備えたマスクMを介し、レジスト層4に紫外線Lを照射することで、レジスト層4を露光する。
【0038】
次いで、図3(b)に示すように、紫外線が照射されたレジスト層を溶解する現像液で現像することにより、レジスト層4の一部を除去し、開口部4aを形成する。
【0039】
次いで、図3(c)に示すように、レジスト層4に形成された開口部4aに露出している親めっき層3に、無電解めっきに用いる触媒5を付与する。触媒5としては、金属パラジウムが挙げられる。具体的には、2価パラジウム塩と2価スズ(Sn)塩とのコロイド溶液を塗布し、その後アクセレーターと呼ばれる酸またはアルカリ溶液に浸漬して、パラジウムを0価に還元することで、金属パラジウムからなる触媒5を付与する。
【0040】
このとき、親めっき層3には極微細な凹凸をもつアルミナ粒子が含まれているため、この極微細な凹凸にめっきの触媒である金属パラジウムが付着すると考えられる。これにより、親めっき層3と触媒5との界面の結合が強固になると考えられる。
【0041】
次いで、図3(d)に示すように、無電解めっき液に浸漬することにより、触媒5の表面で無電解めっき液に溶解する金属イオンを還元して析出させ、開口部4a内に選択的に金属配線6を形成することができる。
【0042】
次いで、図3(e)に示すように、残存するレジスト層の全面に紫外線を露光した後に、現像液でレジスト層を除去する。
以上のようにして、目的とするめっき処理品10を製造する。
【0043】
以上のようなめっき処理品の製造方法によれば、親めっき層3と触媒5との密着力が高いため、触媒5上に形成される金属配線6を剥離し難いものとすることができる。また、めっき用部材1は高い透明性を有しているため、めっき処理品10の金属配線6が形成されていない部分では、高い透明性を示す。したがって、光透過性を有する難めっき材料に対し良好にめっき処理を施しためっき処理品10の製造方法を提供することができる。
【0044】
このような金属配線は、TFT(薄膜トランジスタ)を用いて駆動される液晶パネルや有機ELパネルなど、周知の表示デバイスの配線層に用いることができる。この場合、本実施形態の親めっき層は高い光透過性を有するので、表示デバイスの表示部分に親めっき層を形成しても表示性能に与える影響が小さい。このため、本実施形態の方法によれば、親めっき層を表示デバイスの全面に一括して形成することが可能であり、親めっき層を配線パターンの形状に合わせてパターニングする工程が不要となるので、表示デバイスの製造工程を簡略化することができる。
【0045】
なお、本実施形態の方法によって製造されためっき処理品10は、必要に応じて更なる無電解めっきや電気めっきを施すことによって、厚さを増やすことや多層の金属膜を形成することも可能である。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、支持体としてPET基板を用いて、該基板上に親めっき層を形成しためっき用部材を複数用意し、複数のめっき用部材を搬送しながら搬送過程において上述のめっき処理品の製造方法を用いて無電解めっきを行うことで、形成されるめっき皮膜で金属配線を形成することにより、PET基板上に金属配線を形成することができる。
【0048】
さらに、支持体として長尺のPETフィルムを用い、該フィルム上に親めっき層を形成しためっき用部材をロール状に巻き取っておき、該めっき用部材を巻出しながら搬送し、上述のめっき処理品の製造方法を用いて連続的に金属配線を形成した後に、製造されるめっき処理品をロール状に巻き取る、所謂ロールトゥロール工程においてPETフィルム上に金属配線を形成することができる。
【0049】
このようなプロセスに用いて無電解めっきを行う場合、上述のめっき処理品の製造方法では、親めっき層に含まれるアルミナ粒子が100nm以下と小さいため、めっき用部材が高い透明性を示すとともに、フィルムをロール状に巻き取った場合に親めっき層が高い追随性を示し、親めっき層が亀裂や剥離を生じにくい。したがって、高品質なめっき処理品を高い生産性で製造することが可能となる。
【0050】
[実施例]
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
本明細書の実施例、比較例および参考例においては、親めっき層が形成された種々のめっき用部材、および親めっき層と対比される処理層が形成された比較例のめっき用部材に対して、以下に示す方法により無電解めっきを施した。
【0052】
[無電解めっき方法]
まず、めっき用部材の親めっき層が形成された面または処理層が形成された面に対し、レジスト材料(SUMIRESIST PFI-34A6、住友化学株式会社製)をスピンコートし、90℃にて30分間加熱(プリベーク)することにより、レジスト層を形成した。スピンコートの条件は1000rpmで10秒間であり、約1μmの厚さのレジスト層を形成した。
【0053】
次いで、フォトマスクを介して、30mW/cmの強度の紫外線を6秒間露光し、110℃で30分間加熱(ポストベーク)した後に、2.38%TMAH溶液に5分間浸漬することにより、レジスト層にマスクパターンを現像し開口部を形成した。
【0054】
次いで、レジスト層が形成されためっき用部材について、室温にて30秒間、超音波水洗を行った後に、無電解めっき用の触媒コロイド溶液(メルプレート アクチベーター7331、メルテックス社製)に、室温にて300秒間浸漬し、レジスト層の開口部に露出している親めっき層または処理層に触媒を付着させた。
【0055】
次いで、表面を水洗した後に、無電解めっきの触媒活性化剤(メルプレート PA−7340、メルテックス社製)に、室温にて300秒間浸漬し、レジスト層の開口部に付着している触媒を活性化させた。
【0056】
次いで、表面を水洗した後に、無電解めっき液(メルプレート NI−867、メルテックス社製)に、73℃にて180秒間浸漬し、レジスト層の開口部に付着している触媒上にニッケルを析出させてニッケルめっきを行った。
【0057】
次いで、表面を水洗した後に乾燥させ、残存するレジスト層を含む全面に、30mW/cmの強度の紫外線を2分間露光した後、50g/Lの濃度のNaOH水溶液に2分間浸漬することでレジスト層を除去し、めっき処理品の製造を行った。
【0058】
(参考例1)
図4は、50mm×50mm角のガラス板の表面に真空蒸着法によって形成した親めっき層または処理層を有するめっき用部材に対し、無電解めっきを施した参考例の結果を示す写真である。図4(a)は、Al層上に無電解めっきを施した結果、図4(b)は、SiO層上に無電解めっきを施した結果を示す写真である。
【0059】
なお、以下に示す写真において、文字や模様を表現している濃い色の部分(図中、符号Aで示す)が、無電解めっきによりめっき皮膜が形成されている部分である。
【0060】
図4(a)に示すように、Al層には金属めっきによるパターンが形成されているのに対し、図4(b)に示すように、SiO層上には金属めっきによるパターンが形成されていない。
【0061】
図5は、図4(a)に示すAl層上に無電解めっきを施した後の拡大写真であり、L/Sで3μm/3μmまで良好なパターンが形成できたことを確認した。
【0062】
(実施例1)
図6は、アルミナ粒子としてコロイダルアルミナ粒子(アルミナゾル−520、日産化学株式会社製)を用い、バインダーとしてSOGを用いた親めっき層を有するめっき用部材について、無電解めっきを施して得られるめっき処理品を示す写真であり、参考例の図4に対応する写真である。本実施例の親めっき層は、テトラエトキシシラン中にアルミナ粒子を分散させてガラス板状に塗布した後、硬化させることにより形成した。
【0063】
図6から、本実施例の親めっき層に対しては、良好に金属めっきによるパターンが形成できていることがわかる。
【0064】
図7は、図6に示すめっき処理品後の拡大写真であり、参考例の図5に対応する写真である。図7から、本実施例のめっき処理品では、L/Sで3μm/3μmまで良好なパターンが形成できたことを確認した。
【0065】
(比較例1)
図8は、バインダー中に分散させる粒子としてコロイダルシリカ粒子(メタノールシリカゾル、日産化学株式会社製)を用いて処理層を形成した他は、実施例1と同様にして無電解めっきを施して得られるめっき処理品を示す写真であり、図6に対応する写真である。図に示すように、コロイダルシリカ粒子を有する処理層上には、金属めっきは析出しなかった。
【0066】
(実施例2)
図9は、親めっき層を形成する支持体をPET基板とした他は、実施例1と同様にして無電解めっきを施して得られるめっき処理品を示す写真であり、図6に対応する写真である。
【0067】
図9(a)から、本実施例の親めっき層に対しては、良好に金属めっきによるパターンが形成できていることがわかる。また、図9(b)に示すように、本実施例のめっき処理品を湾曲させても金属めっきが剥離することなく、形成された金属めっきは良好に密着していることがわかる。
【0068】
図10は、図9に示すめっき処理品後の拡大写真であり、参考例の図5に対応する写真である。図10から、本実施例のめっき処理品では、L/Sで3μm/3μmまで良好なパターンが形成できたことを確認した。
【0069】
図11は、本実施例のめっき処理品における金属めっきを施していない部分での透光性を測定した結果である。図に示す結果は、用いたPET基板の光透過率を100%として比較した透光性を示しており、無電解めっきを施したことによって変化する透光性について示している。
【0070】
図に示すように、無電解めっき処理後であっても可視光領域において透過率の減少がほとんど無いことを確認した。
【0071】
(実施例3)
本実施例においては、支持体としてPET基板を用い、アルミナ粒子として実施例1で用いたアルミナ粒子を用い、バインダーとしてエポキシ樹脂を用いた親めっき層を有するめっき用部材において、親めっき層中でアルミナ粒子が占める体積を変化させたときの物性への影響を確認した。
【0072】
本実施例のめっき用部材では、エポキシ樹脂の前駆体中にアルミナ粒子を10vol%〜100vol%の間で変化させて分散させ、ガラス板状に塗布した後、硬化させることにより親めっき層を形成した。具体的には、アルミナ粒子の含有率として10vol%おきで10vol%〜90vol%、99vol%、99.9vol%、100vol%の12水準の親めっき層を有するめっき用部材を作成した。
【0073】
得られためっき用部材について、実施例1と同様にしてパターニングされた無電解めっきを施してめっき処理品を形成し、(1)配線めっき性能、(2)透光性、を測定した。また、得られためっき用部材について全面に無電解めっきを施してめっき処理品を形成し、(3)皮膜の密着力を評価した。
【0074】
図12は、各めっき処理品後の拡大写真であり、L/S=5μm/5μmの配線めっき性能の評価結果を示す写真である。図に示すように、アルミナ粒子の含有率が10vol%では配線めっき性が悪く、一方でアルミナ粒子の含有率が20vol%以上では良好な配線が形成されたことが分かる。
【0075】
図13は、各めっき処理品における金属めっきを施していない部分での透光性の評価結果を示す図であり、d線(587nm)に対する透過率を示している。図に示すように、20vol%以上のアルミナ粒子の含有率では透過率が98%以上であり、殆ど透過率の減少が無いことがわかる。
【0076】
図14は、全面に無電解めっきを施しためっき処理品について、めっき後の碁盤目テープ試験評価の評価結果を示す写真である。評価は、JISK5600−5−6(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準拠して行った。
【0077】
図14(a)に示すように、バインダー量が0.1vol%〜90vol%(すなわち、アルミナ粒子の含有率が10vol%〜99.9vol%)では十分な密着力が得られており、めっき皮膜の剥離が発生しないのに対して、図14(b)に示すように、バインダーを含まない場合(すなわち、アルミナ粒子の含有率が100vol%)では、めっき皮膜が剥離し、色が薄くなっている部分Xが確認でき、形成されためっき皮膜の密着力が悪いことがわかる。
【0078】
図15は、図12から図14に示した評価結果をまとめた表である。評価の結果、バインダーとしてエポキシ樹脂を用いる場合、アルミナ粒子の含有率は20vol%以上99.9%以下であると良いことが分かった。
【0079】
すなわち、バインダーとしてエポキシ樹脂を用いた親めっき層において、アルミナ粒子の含有率が20vol%未満となると、形成されるめっき皮膜の密着力は高いものの配線めっき性能および透光性が低下してしまう。対して、アルミナ粒子の含有率が100vol%となると形成されるめっき皮膜の密着力が弱く、剥離が生じやすいためである。
【0080】
(実施例4)
本実施例においては、バインダーとしてアクリル樹脂を用いた親めっき層を形成した以外は、実施例3と同様にしてめっき用部材を形成し、各めっき用部材について実施例3と同様にめっき処理品を作成して(1)配線めっき性能、(2)透光性、(3)皮膜の密着力、を評価した。
【0081】
図16は、各めっき処理品における金属めっきを施していない部分での透光性の評価結果を示す図であり、図13に対応する図である。図に示すように、20vol%以上のアルミナ粒子の含有率では透過率が98%以上であり、殆ど透過率の減少が無いことがわかる。
【0082】
図17は、本実施例のめっき処理品について(1)配線めっき性能、(2)透光性、(3)皮膜の密着力、を評価した結果をまとめた表であり、図15に対応する表である。評価の結果、バインダーとしてアクリル樹脂を用いる場合、アルミナ粒子の含有率は20vol%以上99.9%以下であると良いことが分かった。
【0083】
すなわち、バインダーとしてアクリル樹脂を用いた親めっき層において、アルミナ粒子の含有率が20vol%未満となると、形成されるめっき皮膜の密着力は高いものの配線めっき性能および透光性が低下してしまう。対して、アルミナ粒子の含有率が100vol%となると形成されるめっき皮膜の密着力が弱く、剥離が生じやすいためである。
【0084】
(実施例5)
本実施例においては、バインダーとしてエン・チオール樹脂を用いた親めっき層を形成した以外は、実施例3と同様にしてめっき用部材を形成し、各めっき用部材について実施例3と同様にめっき処理品を作成して(1)配線めっき性能、(2)透光性、(3)皮膜の密着力、を評価した。
【0085】
図18は、各めっき処理品における金属めっきを施していない部分での透光性の評価結果を示す図であり、図13に対応する図である。図に示すように、30vol%以上のアルミナ粒子の含有率では透過率が98%以上であり、殆ど透過率の減少が無いことがわかる。
【0086】
図19は、本実施例のめっき処理品について(1)配線めっき性能、(2)透光性、(3)皮膜の密着力、を評価した結果をまとめた表であり、図15に対応する表である。評価の結果、バインダーとしてエン・チオール樹脂を用いる場合、アルミナ粒子の含有率は30vol%以上99.9%以下であると良いことが分かった。
【0087】
すなわち、バインダーとしてエン・チオール樹脂を用いた親めっき層において、アルミナ粒子の含有率が30vol%未満となると、形成されるめっき皮膜の密着力は高く、且つ配線めっき性能も良いものの、透光性が低下してしまう。対して、アルミナ粒子の含有率が100vol%となると形成されるめっき皮膜の密着力が弱く、剥離が生じやすいためである。
【0088】
(実施例6)
本実施例においては、親めっき層に含まれるアルミナ粒子の粒径を変化させて親めっき層を形成した以外は、実施例4と同様にしてめっき用部材を形成し、各めっき用部材について実施例3と同様にめっき処理品を作成して(1)配線めっき性能、(2)透光性、(3)皮膜の密着力、を評価した。
【0089】
本実施例のめっき用部材では、アクリル樹脂の前駆体に分散させるアルミナ粒子の大きさを、平均粒径10nm〜100nmの間で変化させ、ガラス板状に塗布した後、硬化させることにより、親めっき層を形成した。具体的には、アルミナ粒子の平均粒径として10nm、20nm、50nm、100nmの4水準の親めっき層を有するめっき用部材を作成した。
【0090】
10nm、20nmのアルミナ粒子については、棒状の粒子と粒状の粒子とが混合したもの(アルミナゾル−520、日産化学株式会社製)を用いた。
50nmのアルミナ粒子については、棒状の粒子と粒状の粒子とが混合したコロイダルアルミナ粒子(酸化アルミニウム分散液、Aldrich社製)を用いた。
100nmのアルミナ粒子については、羽毛状で100nm×10nmの粒子(アルミナゾル−200、日産化学株式会社製)を用いた。
【0091】
図20は、各めっき処理品後の拡大写真であり、L/S=5μm/5μmの配線めっき性能の評価結果を示す写真である。図に示すように、粒子径の異なる4種のコロイダルアルミナ全てで良好な配線が形成されたことがわかる。
【0092】
図21は、各めっき処理品における金属めっきを施していない部分での透光性の評価結果を示す図であり、図13に対応する図である。図に示すように、透過率が98%以上であり、殆ど透過率の減少が無いことがわかる。
【0093】
図22は、全面に無電解めっきを施しためっき処理品について、めっき後の碁盤目テープ試験評価の評価結果を示す写真であり、図14に対応する写真である。評価の結果、いずれの水準においても剥離は認められず、十分な密着力が得られることが分かった。
【0094】
図23は、本実施例のめっき処理品について(1)配線めっき性能、(2)透光性、(3)皮膜の密着力、を評価した結果をまとめた表である。評価の結果、用いたアルミナ粒子では全てにおいて良好な性能が得られた。
【0095】
以上の結果より、本発明の有用性が確かめられた。
【符号の説明】
【0096】
1…めっき用部材、2…支持体、3…親めっき層(下地膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する支持体と、該支持体の表面に形成された下地膜と、を有し、
前記下地膜は、光透過性を有する基材と、平均粒径が100nm以下のアルミナ粒子と、を有することを特徴とするめっき用部材。
【請求項2】
前記アルミナ粒子は、羽毛状の形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のめっき用部材。
【請求項3】
前記アルミナ粒子は、棒状の形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のめっき用部材。
【請求項4】
前記基材の形成材料が、紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のめっき用部材。
【請求項5】
前記支持体の形成材料が、ガラスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のめっき用部材。
【請求項6】
前記支持体の形成材料が、樹脂材料であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のめっき用部材。
【請求項7】
前記支持体が、可撓性を有することを特徴とする請求項6に記載のめっき用部材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のめっき用部材が有する下地膜の表面に無電解めっき用触媒を担持させる工程と、
前記下地膜の表面に無電解めっき液を接触させ無電解めっきを行う工程と、を有することを特徴とするめっき処理品の製造方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載のめっき用部材と、前記めっき用部材が有する下地膜の表面に形成された無電解めっき層とを有し、
前記無電解めっき層を配線層として用いることを特徴とする表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図23】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図20】
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【図22】
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