めっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法
【課題】高品質で均一な厚さのめっき膜を得ることが可能なめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】めっき槽21の内側で、めっき液30の流れを発生させる発生手段26と、めっき液30の流れ方向を規定する案内手段28と、めっき液30の流れの途中に配置されるアノード電極29と、めっき液30の流れの途中に配置され、めっき液30と共に流れてくるめっき対象物10を一時的に滞留させる滞留手段31,32と、を有するめっき装置20であって、滞留手段31,32の少なくとも一部がカソード電極31d,32dで構成されていることを特徴とする。
【解決手段】めっき槽21の内側で、めっき液30の流れを発生させる発生手段26と、めっき液30の流れ方向を規定する案内手段28と、めっき液30の流れの途中に配置されるアノード電極29と、めっき液30の流れの途中に配置され、めっき液30と共に流れてくるめっき対象物10を一時的に滞留させる滞留手段31,32と、を有するめっき装置20であって、滞留手段31,32の少なくとも一部がカソード電極31d,32dで構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばチップ型電子部品のような小型部品に均一なめっき層を形成するために、従来では、バレルめっき装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のバレルめっき装置では、回転するバレルの内部で、多数のめっき対象物同士が無秩序に重なり合うために、めっき対象物同士の付着や、めっき対象物にめっき液中の泡が付着するなどの課題がある。めっき対象物同士の付着や、めっき対象物への泡の付着などが生じると、その部分に、めっき膜が形成されず、均一な品質で均一な厚さのめっき膜を形成することが困難になる。
【0004】
また、従来のバレルめっき装置およびめっき方法では、めっき液中でのアノード電極からカソード電極までの電力線が長いため、電力線の集中も起こりやすく、めっき膜厚のバラツキの原因にもなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−36249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、高品質で均一な厚さのめっき膜を得ることが可能なめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るめっき装置は、
めっき槽の内側で、めっき液の流れを発生させる発生手段と、
前記めっき液の流れ方向を規定する案内手段と、
前記めっき液の流れの途中に配置されるアノード電極と、
前記めっき液の流れの途中に配置され、前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を一時的に滞留させる滞留手段と、を有するめっき装置であって、
前記滞留手段の少なくとも一部がカソード電極で構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るめっき方法は、めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るチップ型電子部品の製造方法は、素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくる前記素子本体を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、めっき対象物(素子本体含む)は、まず、発生手段によって発生し案内手段によって規定されためっき液の流れ(噴流)に乗って、噴流の途中に配置されるアノード電極の付近まで流されると共に、めっき対象物同士がばらける。そして、個々のめっき対象物が個別に近い状態で、噴流の途中に配置された滞留手段の上で、一時的に滞留する。この時に、めっき対象物は、噴流の影響およびめっき対象物の自重の影響で、滞留手段のカソード電極が形成された部分を転がる。したがって、ばらけためっき対象物を個別に近い状態で電解めっきを行うことが可能である。各々のめっき対象物は、カソード電極に接触している間、電解めっきされる。また、噴流およびめっき対象物の自重により、めっき対象物が滞留手段の上で同じ箇所に留まり続けることもない。めっき対象物は、やがて滞留手段から落下し、再び噴流に乗って移動する。したがって、めっき対象物に対し、均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0011】
なお従来では、カソード電極において電解めっきが行われる際に、気泡が発生し、その気泡にめっき対象物が取り込まれることがある。しかし、本発明では、気泡に取り込まれためっき対象物が、発生手段による直接の噴流に流される際に、噴流の勢いで、めっき対象物から気泡が完全に分離する。気泡から分離しためっき対象物は、再度、滞留手段に形成されたカソード電極で電解めっきが行われる。したがって、めっき対象物がめっき液から分離することなく、めっき対象物に確実に電解めっきを行うことができ、めっき対象物のめっき品質を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、前記滞留手段が、内周端と外周端とを有する面状部材であり、前記面状部材が、前記内周端と前記外周端とを結ぶ滞留面を有する。また、好ましくは、前記面状部材の少なくとも前記めっき対象物に接触する部分がカソード電極で構成される。
【0013】
面状部材に形成された滞留面の表面積は広く、めっき対象物に接触する部分を広く確保することができるので、面状部材のめっき対象物に接触する部分にカソード電極が形成されていれば、ばらけためっき対象物を個別に近い状態で、確実に電解めっきを行うことが可能である。
【0014】
好ましくは、前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に前記めっき槽の内部で鉛直方向上方に案内する案内部材である。好ましくは、前記案内部材が筒状の案内筒であり、前記めっき液およびめっき対象物が前記案内筒の内側を案内されるように形成してある。この場合には、前記面状部材の前記内周端が、前記案内部材の外周に接していることが好ましい。また、前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に、前記めっき槽の内壁に沿って鉛直方向上方に案内する案内部材であっても良い。
【0015】
発生手段で発生した直接の噴流(上昇噴流)により、めっき対象物同士を適度にばらけさせることができ、面状部材には、めっき対象物が適度にばらけた状態で接触する。さらに、カソード電極で電解めっきが行われた際に発生するガスが、めっき対象物を取り込んでしまったとしても、上昇噴流により、めっき対象物とガスとを分離させることができる。
【0016】
好ましくは、前記滞留面が鉛直方向上側から鉛直方向下側に向けて傾斜している。滞留面が傾斜していることにより、噴流に乗って滞留面に到達しためっき対象物が、滞留面に沿って、自重で転がりやすくなる。したがって、滞留面の同じ箇所にめっき対象物が留まり続けることなく、めっき対象物に対し、より均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0017】
好ましくは、前記滞留面には、前記めっき対象物が前記面状部材から落下する落下孔が複数形成されている。滞留面に落下孔が形成されていることにより、めっき対象物が滞留面に到達した位置から落下孔までの距離だけ電解めっきが行われた後に、確実にめっき対象物を自重で落下させることができる。したがって、めっき対象物が滞留面に留まり続けることがない。
【0018】
前記落下孔の開口面積は、前記面状部材の鉛直方向下側に位置するほど大きくても良い。落下孔の開口面積を変化させるためには、面状部材の鉛直方向下側に位置するほど落下孔の孔径を大きくしても良いし、面状部材の鉛直方向下側に位置するほど落下孔の密度を大きくしても良い。
【0019】
これにより、仮に鉛直方向上側の落下孔からめっき対象物が落下しなかったとしても、より鉛直方向下部に位置する落下孔からめっき対象物が落下する確率が高まる。また、めっき対象物が転がってきた面状部材の内周端が、案内部材の外周に接している場合には、落下孔の開口面積は、面状部材の鉛直方向下側に位置するほど大きいことが好ましい。この場合には、内周端に沿って形成された落下孔で、確実にめっき対象物を落下させることができる。したがって、めっき対象物が滞留面に留まり続けることがない。
【0020】
好ましくは、前記面状部材が、鉛直方向に複数形成され、鉛直方向上側に位置する第1プレートと、鉛直方向下側に位置する第2プレートとを有している。
【0021】
複数の面状部材が配置されていることにより、めっき対象物が滞留面に接触する機会が高まり、めっき効率を高めることができる。
【0022】
好ましくは、前記第1プレートの前記滞留面と、前記第2プレートの前記滞留面とが互いに平行であり、前記第1プレートの前記内周端と、前記第2プレートの前記内周端とが鉛直方向下側に位置している。
【0023】
あるいは、前記第1プレートの第1内周端が、前記第1プレートの第1外周端よりも鉛直方向下側に位置し、前記第2プレートの第2内周端が、前記第2プレートの第2外周端よりも鉛直方向上側に位置し、前記第1内周端と前記第2内周端とを接触させても良い。
【0024】
この場合には、第1プレートの滞留面で落下しなかっためっき対象物が、第2プレートの第2内周端から転がり始める。したがって、めっき対象物の転がり距離を長く確保することができ、めっき効率をさらに高めることができる。
【0025】
好ましくは、前記アノード電極が、前記滞留面の近くで、前記滞留面に略平行に配置される。カソード電極が形成される滞留面とアノード電極との距離が近いので、電力線の集中も生じにくく、電流密度が均一になり、カソード電極においてめっき対象物の表面にめっき成分を均一に析出させることができ、めっき膜厚のばらつきを低減させることができる。また、アノード電極からカソード電極までの電力線を短くできるために、電力量に比較してめっき効率も向上させることができる。
【0026】
好ましくは、めっき装置は、少なくとも前記滞留手段を振動させる振動手段を有する。仮に滞留面から落下しないで留まっているめっき対象物があったとしても、少なくとも滞留面を振動させることにより、めっき対象物を確実に落下させることができる。
【0027】
前記面状部材は、複数の細線が組み合わされて形成されていても良い。たとえば、面状部材はメッシュにより形成されていても良い。
【0028】
前記発生手段は、新鮮なめっき液を前記めっき槽に導入する供給手段とは別に設けた撹拌手段でも良いが、供給手段を兼ねていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るめっき装置の概略外観図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るめっき方法により処理されるチップ型電子部品の断面図である。
【図3】図3は、図1に示すめっき装置の断面図である。
【図4】図4は、図1に示す第1プレートの平面図である。
【図5】図5は、図3に示すV部の詳細を示す要部断面図である。
【図6】図6は、他の実施形態に係るめっき装置の要部断面図である。
【図7A】図7Aは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7B】図7Bは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7C】図7Cは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7D】図7Dは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7E】図7Eは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7F】図7Fは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7G】図7Gは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7H】図7Hは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7I】図7Iは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7J】図7Jは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7K】図7Kは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7L】図7Lは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図8】図8Aおよび図8Bは、案内筒の形状の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図9】図9Aおよび図9Bは、プレートの変形例を示す平面図である。
【図10】図10は、プレートの変形例を示す要部拡大図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態に係るめっき装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
(めっき対象物としての積層チップコンデンサ)
【0031】
まず、本発明の一実施形態に係る図1に示すめっき装置20を用いてめっき処理されるチップ型電子部品としての図2に示す積層チップコンデンサ2について説明する。図2に示すように、積層チップコンデンサ2は、内部電極層4,6と誘電体層8とが積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部11,13には、素子本体10の内部に配置された内部電極層4,6と各々導通する一対の外部端子電極12,14が形成してある。
【0032】
内部電極層4,6は、各端面が素子本体10の対向する両端部11,13の表面に露出するように積層してある。一対の外部端子電極12,14は、素子本体10の両端部に形成され、内部電極層4,6の露出端面にそれぞれ接続されて、コンデンサ回路を構成している。
【0033】
誘電体層8は、誘電性材料であれば特に限定されないが、たとえばチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、あるいはこれらの複合酸化物などを主成分とする誘電体材料で構成される。この誘電体材料には、シリコン酸化物、希土類酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、バナジウム酸化物、アルミニウム酸化物、クロム酸化物などの副成分が含まれていても良い。
【0034】
本発明に係るめっき対象物としての積層チップ部品は、チップコンデンサ2に限定されず、たとえばチップバリスタ、チップインダクタ、チップサーミスタであってもよく、その場合には、誘電体層8は、バリスタ材料層、インダクタ材料層、NTCサーミスタ材料層などで構成されてもよい。
【0035】
内部電極層4,6は、導電材を含んで構成される。内部電極層4,6に含まれる導電材としては、特に限定されないが、コンデンサ2として用いる場合には、ニッケル、もしくはニッケル合金などが好ましい。内部電極層4,6の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常0.2〜5μm程度である。
【0036】
外部端子電極12,14も導電材を含んで構成される。外部端子電極12,14に含まれる導電材としては、特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。本実施形態では、ペースト電極膜から成る下地電極層12p,14pの表面に、電気めっきにより、Ni及びSn膜などで構成されるめっき膜12c,14cが形成してある。下地電極層12p,14pの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常5〜50μm程度である。また、めっき膜12c,14cの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常3〜10μm程度である。
【0037】
素子本体10の形状は、特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて決定され、特に、図1に示すように、1005形状(縦LO=1.0mm×横WO=0.5mm×厚みHO=0.5mm)サイズ以下、たとえば、小さく軽く電極間距離が短い0603形状(縦LO=0.6mm×横WO=0.3mm×厚みHO=0.3mm)サイズ以下である場合にも本実施形態の装置および方法が適用できる。
【0038】
図2に示すように、素子本体10において、内部電極層4,6および誘電体層8の積層方向の両外側端部には、外側誘電体層18が配置してあり、素子本体10の内部を保護している。外側誘電体層18の材質は、誘電体層8の材質と同じであっても異なっていても良いが、通常、誘電体層8の材質とほぼ同じであり、誘電体材料で構成されている。
【0039】
一対の下地電極層12p,14pの外側にめっき膜12c,14cを形成する際には、そのめっき処理時に、外側誘電体層18の外表面(素子本体10の表面10α)には、めっき膜が形成されてショート不良となりやすい。そのため、その表面10αには、ガラスコートなどの保護膜16を形成しても良いが、必ずしも保護膜16は形成されていなくとも良い。保護膜16を形成する場合には、保護膜16の厚さは、好ましくは0.05〜0.2μm程度に薄い。保護膜16が厚すぎると、保護膜16を形成した後に、下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4および6と下地電極層12p,14pとのコンタクトが困難になる傾向にある。
【0040】
下地電極層12p,14pは、電極ペーストの焼付け処理により形成されている。下地電極ペースト膜12p,14pは、素子本体10の端面に位置する端面部分12γ,14γと、端面部分12γ,14γに連続して形成され、素子本体10の端面近傍の四側面にまで延びる側面部分12β,14βとを有している。
(積層チップコンデンサの製造方法)
【0041】
次に、図2に示す積層チップコンデンサ2の製造方法について説明する。
まず素子本体10を製造する。素子本体10を製造するために、印刷工法またはシート工法等により、内部電極層4,6が互い違いに両端部に露出するように、誘電体層8と内部電極層4,6を交互に積層し、その積層方向の両端に外側誘電体層18を積層し、積層体を形成する。
【0042】
次に、この積層体を切断し、グリーンチップを得る。次に、必要に応じて脱バインダー処理を行い、グリーンチップを焼成し、素子本体10を得る。次に、必要に応じて、素子本体10の研磨を行い、内部電極の端部を素子本体の両端面に露出させる。その後に、素子本体10の両端部に外部端子電極12,14を形成するための電極ペーストを塗布、焼き付けして下地電極層12p,14pを形成する。
【0043】
次に、下地電極層12p,14pの表面を、例えばバレル研磨により研磨して、下地電極層12p,14pの表面に導電性粒子を露出させ、その下地電極層12p,14pの表面にめっき膜12c,14cを均一に形成しやすくする。
【0044】
そのような研磨後に、図2に示す下地電極層12p,14pの表面に、めっき膜12c,14cを、図1に示すめっき装置を用いて電気めっき法により形成する。このようにして図2に示す積層チップコンデンサ2が製造される。
【0045】
なお、図2に示すガラスコートなどの保護膜16の形成は、めっき処理の前に行っても、下地電極層12p,14pの形成前に行っても良い。保護膜16は、十分に薄いので、素子本体10の端面に下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4,6との接続を確保することが可能である。
(めっき装置)
【0046】
次に、めっき処理を行うためのめっき装置について説明する。
図1に示すように、めっき装置20は、めっき槽21を有する。図3に示すように、めっき槽21は、めっき液30を貯留可能に構成され、少なくともめっき槽21の内面がプラスチック部材あるいはセラミック部材などの絶縁材料で構成されることが好ましい。この実施形態では、めっき槽21の鉛直方向上端部に、めっき中に発生したガスを排出可能なガス排出口24を持つ密閉型として説明を行うが、鉛直方向上部が開放型になっており、自由にガスを排出可能に構成されても良い。
【0047】
図3に示すように、めっき槽21は、上側ケーシング21aと下側ケーシング21bとを有し、接続部21cによって接続され、めっき槽21を鉛直方向上下に分割することが可能になっている。下側ケーシング21bには、新鮮なめっき液30をめっき槽21に導入可能な導入パイプ23(供給手段)が接続されており、めっき槽21内にめっき液30を供給する。めっき液30は、下側ケーシング21bに接続された排出パイプ25を通って、めっき槽21から排出可能になっている。めっき槽21内へのめっき液の供給は、バッチ式に行っても良いが、めっき処理中にも連続して行うことが好ましい。また、排出パイプ25から排出されためっき液30を、フィルターで濾過して、再循環させも良い。
【0048】
また、下側ケーシング21bの鉛直方向最下部には、支持台22が固定されている。支持台22には収容凹部22aが形成されており、収容凹部22aには、撹拌羽根26(発生手段)が不図示のモータ等によって回転可能に収容されている。撹拌羽根26の鉛直方向上方には、仕切り網27が配置されており、図1に示す素子本体10(めっき対象物)が撹拌羽根26に当たるのを防止している。
【0049】
撹拌羽根26の鉛直方向上側には、仕切り網27から所定距離の隙間を有して、筒状パイプ28(案内手段)が配置されている。筒状パイプ28は、図1に示すように円筒形をしているが、円筒に限らず多角筒形状でも良い。筒状パイプ28は、撹拌羽根26の回転によって発生しためっき液30の流れ(上昇噴流)が筒状パイプ28の内側を通り、上昇噴流が素子本体10と共にアノード電極29の近くまで案内可能に配置されている。筒状パイプ28は絶縁性を有しており、プラスチック部材あるいはセラミック部材などの絶縁材料で構成されることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、滞留手段は、図3に示すように、第1プレート31および第2プレート32で構成されている。図3および図4に示すように、第1プレート31は、第1内周端31aと第1外周端31bとを結ぶ滞留面31cを有する面状部材である。第2プレート32も、第2内周端32aと第2外周端32bとを有する面状部材であり、第2内周端32aと第2外周端32bとを結ぶ滞留面32cを有している。図3に示すように、第1プレート31の滞留面31cと、第2プレート32の滞留面32cとは互いに平行に配置されている。
【0051】
図3に示すように、第1プレート31の滞留面31cと第2プレート32の滞留面32cは、円錐側面形状を有し、筒状パイプ28の軸心に対して角度θで傾斜している。傾斜角度θは特に限定されないが、20〜160度であることが好ましい。さらに好ましくは、傾斜角度θは30〜60度である。
【0052】
図3に示すように、第1プレート31の第1内周端31aと第2プレート32の第2内周端32aは、筒状パイプ28の外周壁面28aに着脱可能に接続してある。また、第1プレート31の第1外周端31bと第2プレート32の第2外周端32bは、めっき槽21の内壁21dに対して着脱可能に接続してあることが好ましい。めっき装置20のメンテナンスを容易にするためである。
【0053】
図4に示すように、第1プレート31は、上昇噴流によって流されてきた素子本体10が、ばら状に滞留面31cに接触し、滞留面31cで滞留するように構成されている。図3および図5に示すように、第1プレート31の少なくとも素子本体10が接触する部分には、カソード電極31dが形成されている。また、第2プレート32の少なくとも素子本体10が接触する部分には、カソード電極32dが形成されており、第1プレートの落下孔35から落下してきた素子本体10を再び滞留させるように構成してある。本実施形態では第1プレート31および第2プレート32を、金属などの導電性プレートで構成してある。
【0054】
図1に示すように、第1プレート31の滞留面31cには、素子本体10が滞留面31cから落下可能な落下孔35が行列状に多数形成されている。本実施形態では、落下孔35は円形をしている。落下孔35同士の外周端同士の間隔C1,C2は、素子本体10の縦サイズLOに比較して、1.5倍以上の距離を有していることが好ましい。これにより、素子本体10の転がり距離を長く確保することができる。また、落下孔35の直径D1は、少なくとも、素子本体10の横幅WO,厚みHOよりも大きい。また、落下孔35の直径D1は、素子本体10の縦サイズLOより小さくてもよいが、大きくても良い。落下孔D1が、素子本体10を落下させる最小限の大きさであれば、素子本体10の転がり距離を長く確保することができる。
【0055】
また、図4に示すように、第1プレート31の滞留面31において、筒状パイプ28の外周壁面28aに沿って、最終落下孔31eが、内接円の直径が図1に示す素子本体の縦サイズLOより大きくなるように形成されている。最終落下孔31eの形状は、本実施形態では扇状をしているが、滞留面31cを転がってきた素子本体10を確実に落下させる大きさであれば、形状は特に限定されない。また、第2プレート32の滞留面32においても、筒状パイプ28の外周壁面28aに沿って、最終落下孔32eが、内接円の直径が図1に示す素子本体の縦サイズLOより大きくなるように形成されている。第1プレート31,第1プレート31の滞留面31c,32cは、本実施形態では円錐曲面で構成されているが、複数の平面を組み合わせることで構成されても良い。
【0056】
また、図3に示すように、棒状のアノード電極29が、第1プレート31の滞留面31cの近くで、第1プレート31の滞留面31cに略平行に配置されている。アノード電極29は、めっき槽21の内壁21dに着脱自在に固定されることが好ましい。アノード電極29は、たとえばNiなど、めっき液30中に溶け出し、めっき膜として析出する材料で構成されている。アノード電極の形状や構造は、特に限定されない。
【0057】
アノード電極29は、電源33のプラス端子に接続され、第1プレート31および第2プレート32は、電源33のマイナス端子に接続されている。さらに、本実施形態では、めっき槽21の全体が振動器34(振動手段)に接続され、振動可能に構成されているが、少なくとも第1プレート31および第2プレート32が、振動可能に構成されていれば良い。
【0058】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、まず、図2に示す下地電極層12p,14pが形成された素子本体10を、図3に示す上側ケーシング21aと下側ケーシング21bとが分離された状態で、下側ケーシング21bに多数投入する。投入される素子本体10の個数は、特に限定されず、たとえば1000個〜2000000個投入される。その前後に、供給パイプ23からめっき液30が供給される。
【0059】
素子本体10は、まず、撹拌羽根26によって発生し筒状パイプ28によって規定されためっき液の流れ(噴流)に乗って、噴流の途中に配置されるアノード電極29の付近まで流されると共に、素子本体10同士がばらける。そして、個々の素子本体10が個別に近い状態で、噴流の途中に配置された第1プレート31,第2プレート32の上で、一時的に滞留する。この時に、素子本体10は、噴流の影響および素子本体10の自重の影響で、第1プレート31,第2プレート32のカソード電極31d,32dが形成された部分を転がる。図5に示すように、素子本体10の両端に形成してある各下地電極層12pおよび14pが同時にカソード電極31dに接触した時に、めっき液30の存在下で、カソード電極31dに電気的に接続される。したがって、ばらけた素子本体10を個別に近い状態で電解めっきを行うことが可能である。また、噴流および素子本体10の自重により、素子本体10が滞留手段の上で同じ箇所に留まり続けることもない。素子本体10は、やがて第1プレート,第2プレートから落下し、再び噴流に乗って移動する。したがって、素子本体10に対し、均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0060】
なお従来では、カソード電極31d,32dにおいて電解めっきが行われる際に、気泡が発生し、その気泡に素子本体10が取り込まれることがある。しかし、本実施形態では、気泡に取り込まれた素子本体10が、撹拌羽根26による直接の噴流に流される際に、噴流の勢いで、素子本体10から気泡が完全に分離する。気泡から分離した素子本体10は、再度、第1プレート31,第2プレート32に形成されたカソード電極31d,32dで電解めっきが行われる。したがって、素子本体10がめっき液30から分離することなく、素子本体10の下地電極層12p,14pに確実に電解めっきを行うことができ、素子本体10の下地電極層12p,14pに形成されためっき膜のめっき品質を向上させることができる。
【0061】
第1プレート31,第2プレート32に形成された滞留面31c,32cの表面積は広く、素子本体10に接触する部分を広く確保することができる。第1プレート31,第2プレート32の素子本体10に接触する部分にカソード電極31d,32dが形成されているので、ばらけた素子本体10を個別に近い状態で、確実に電解めっきを行うことが可能である。
【0062】
また、撹拌羽根26で発生した直接の噴流(上昇噴流)により、素子本体10同士を適度にばらけさせることができ、第1プレート31,第2プレート32には、素子本体10が適度にばらけた状態で接触する。さらに、カソード電極31d,32dで電解めっきが行われた際に発生するガスは、上昇噴流により、素子本体10から分離され、ガス排出口24から排出される。
【0063】
また、第1プレート31,第2プレート32の滞留面31c,32cが傾斜していることにより、噴流に乗って滞留面31c,32cに到達した素子本体10が、滞留面31c,32cに沿って、自重で転がりやすくなる。したがって、滞留面31c,32cの同じ箇所に素子本体10が留まり続けることなく、素子本体10に対し、より均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0064】
本実施形態では、滞留面31c,32cに落下孔35が形成されていることにより、素子本体10が滞留面31c,32cに到達した位置から落下孔35までの距離だけ電解めっきが行われた後に、確実に素子本体10を自重で落下させることができる。したがって、素子本体10が滞留面31c,32cに留まり続けることがない。
【0065】
また、本実施形態では、仮に鉛直方向上側の落下孔35から素子本体10が落下しなかったとしても、より鉛直方向下部に位置する落下孔35から素子本体10が落下する。また、本実施形態では、筒状パイプ28の外周壁面28aに沿って形成された最終落下孔31eで、確実に素子本体10を落下させることができる。したがって、素子本体10が滞留面に留まり続けることがない。
【0066】
また、複数のプレート(第1プレート31,第2プレート32)が配置されていることにより、素子本体10が滞留面31c,32cに接触する機会が高まり、めっき効率を高めることができる。
【0067】
本実施形態では、第1プレート31のカソード電極31dが形成される滞留面31cとアノード電極29との距離が近いので、電力線の集中も生じにくく、電流密度が均一になり、カソード電極31dにおいて素子本体10の表面にめっき成分を均一に析出させることができ、めっき膜厚のばらつきを低減させることができる。また、アノード電極29からカソード電極31dまでの電力線を短くできるために、電力量に比較してめっき効率も向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、めっき装置20は、少なくとも第1プレート31,第2プレート32を振動させる振動器34を有するので、仮に滞留面31c,32cから落下しないで留まっている素子本体10があったとしても、滞留面31c,32cを振動させることにより、素子本体10を確実に落下させることができる。なお、めっき処理後に、撹拌羽根26の回転を止めて、上昇噴流が止まった際にも、第1プレート31と第2プレート32とを振動させ、図3に示すめっき槽21の底辺部に素子本体10を集めることにより、めっき膜が形成された素子本体10のみを残すことができる。
【0069】
なお、上述した実施形態に限定されず、以下に述べるように、めっき装置20が構成されてもよい。
【0070】
たとえばカソード電極が形成されたプレート31iの落下孔35aの開口面積は、プレート31iの鉛直方向下側に位置するほど大きくても良い。たとえば、図6に示すように、プレート31iの鉛直方向下側に位置するほど、落下孔35aの孔径を大きくしても良い。すなわち、鉛直方向上側に位置する落下孔35aの孔径D2よりも、鉛直方向下側に位置する落下孔35aの孔径D3のほうが大きくても良い。または、図示しないが、カソード電極が形成されたプレートにおける単位面積あたりの落下孔の形成個数(形成密度)を多くしても良い。
【0071】
なお、図7Aに示すように、第1プレート31,第2プレート32が、筒状パイプ28の鉛直方向上方にずれていても良い。
【0072】
また、図7Bに示すように、好ましくは、第1プレート31の第1内周端31aが、第1プレート31の第1外周端31bよりも鉛直方向下側に位置し、第2プレート32の第2内周端32aが、第2プレート32の第2外周端32bよりも鉛直方向上側に位置し、第1内周端31aと第2内周端32aとが接触している。この場合には、第1プレート31の第1滞留面31cで落下しなかった素子本体10が、第2プレート32の第2内周端32aから、第2滞留面32cを転がり始める。したがって、素子本体10の転がり距離を長く確保することができ、めっき効率をさらに高めることができる。
【0073】
また、図7Cに示すように、第2プレート32のみを水平方向に平行に配置しても良い。あるいは、図7D〜図7Fに示すように、第1プレート31を水平方向に平行に配置しても良い。この場合には、図7Dに示すように、第2プレート32の第2内周端32aが、第2外周端32bに比較して、鉛直方向下方に位置しても良い。また、図7Eに示すように、第2プレート32の第2内周端32aが、第2外周端32bに比較して、鉛直方向上方に位置しても良い。さらに、図7Fに示すように、第1プレート31,第2プレート32が、共に水平方向に対して平行に配置されても良い。
【0074】
また、図7G〜図7Iに示すように、第1プレート31の第1内周端31aが、第1外周端31bに比較して、鉛直方向上方に位置されても良い。この場合には、図7Gに示すように、第2プレート31の第2内周端31aが、第2外周端31bに比較して、鉛直方向下方に位置しても良い。また、図7Hに示すように、第2プレート32が水平方向に対して平行に配置されても良いし、図7Iに示すように、第2プレート32が、第1プレート31と平行であっても良い。
【0075】
また、図7J〜図7Lに示すように、面状部材が、第1プレートのみで構成されていても良い。この場合には、図7Jに示すように、第1プレート31の第1内周端31aが、第1外周端31bに比較して、鉛直方向下方に位置しても良いし、図7Kに示すように、第1プレート31が水平方向に対して平行に配置されても良い。また、図7Lに示すように、第1プレート31の第1内周端31aが、第1外周端31bに比較して、鉛直方向上方に位置しても良い。
【0076】
上述した実施形態では、筒状パイプ28の内径が、筒状パイプ28の鉛直方向最上端と鉛直方向最下端とで等しい場合について説明を行ったが、これに限定されない。すなわち、図8Aに示すように、筒状パイプ28の鉛直方向最上端における内径d1が、筒状パイプ28の鉛直方向最下端における内径d2に比較して大きくても良い。また、図8Bに示すように、筒状パイプ28の鉛直方向最上端における内径d1が、筒状パイプ28の鉛直方向最下端における内径d2に比較して小さくても良い。
【0077】
また、上述した実施形態では、面状部材がプレート状の場合について説明を行ったが、これに限定されない。たとえば、図9Aに示すように、面状部材が、複数の細線36を平行に配置することで構成されても良い。また、図9Bに示すように、面状部材が、複数の細線37を編んで構成されるメッシュ状であっても良い。
【0078】
上述した実施形態では、第1プレート31および第2プレート32の全体がカソード電極で構成される場合について説明を行ったが、これに限定されない。たとえば、図10に示すように、プレート31hが樹脂板31fを有しており、樹脂板31fの表面(素子本体10が接する部分)のみに、薄膜状にカソード電極31gが形成されていても良い。
【0079】
また、発生手段が、新鮮なめっき液30をめっき槽21に導入する導入パイプ23とは別に設けた撹拌羽根26で構成される例を示したが、これに限定されない。たとえば、発生手段が、新鮮なめっき液30をめっき槽21に導入する導入パイプ23で構成されていても良い。すなわち、導入パイプ23を、撹拌羽根26の位置に配置し、撹拌羽根26を設けなくても良い。
【0080】
さらに、落下孔35は円形でなくても良く、楕円形でも良いし、多角形をしていても良い。
第2実施形態
【0081】
以下に示す以外は、上述した第1実施形態と同様であり、重複する説明を省略する。
本実施形態では、図11に示すように、案内手段が、撹拌羽根26で発生しためっき液30の流れを、素子本体10と共に、めっき槽21の内壁21dに沿って鉛直方向上方に案内する案内部材48で構成される。
【0082】
案内部材48の下面は、曲面をした第1案内面48aを有しており、撹拌羽根26で発生しためっき液30の流れを直に受け、素子本体10と共に、めっき槽21の内壁21dに沿って鉛直方向上方に案内(上昇噴流)するように構成されている。案内面48aは、平面であってもよい。
【0083】
また、案内部材48の上面には、第1プレート41, 第2プレート42を通過してきためっき液30の流れ(下降噴流)を、素子本体10と共に上昇噴流に合流させる第2案内面48bが形成されている。
【0084】
本実施形態の第1プレート41および第2プレート42は、第1内周端42aおよび第2内周端42aの内側が、最終落下孔41e,42eで構成されている。本実施形態の最終落下孔41e,42eは、円形をしているが、形状はこれに限定されない。
【0085】
本実施形態では、最終落下孔41e,42eから、素子本体10が確実に落下するので、より均一に素子本体10にめっき膜を形成することができる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、上述した実施形態では、積層チップコンデンサを例に説明を行ったが、これに限定されず、本発明のめっき装置およびめっき方法が適用されるチップ型電子部品としては、チップバリスタ、チップインダクタ、チップNTCサーミスタなどであってもよい。また、本発明のめっき装置およびめっき方法が適用されるめっき対象物は、チップ型電子部品に限らず、たとえば粉体(5〜100μm)、コネクタ、リードスイッチ、釘、ボルト、ナット、ワッシャなどのような小物(小形部品)が例示される。
【符号の説明】
【0087】
2…積層チップコンデンサ
10…素子本体
12p,14p…下地電極層
12c,14c…めっき膜
21…めっき槽
23…導入パイプ
26…撹拌羽根
28…筒状パイプ
29…アノード電極
30…めっき液
31…第1プレート
31a…第1内周端
31b…第1外周端
31c…滞留面
31d…カソード電極
32…第2プレート
32a…第2内周端
32b…第2外周端
32c…滞留面
32d…カソード電極
34…振動器
35…落下孔
48…案内部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばチップ型電子部品のような小型部品に均一なめっき層を形成するために、従来では、バレルめっき装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のバレルめっき装置では、回転するバレルの内部で、多数のめっき対象物同士が無秩序に重なり合うために、めっき対象物同士の付着や、めっき対象物にめっき液中の泡が付着するなどの課題がある。めっき対象物同士の付着や、めっき対象物への泡の付着などが生じると、その部分に、めっき膜が形成されず、均一な品質で均一な厚さのめっき膜を形成することが困難になる。
【0004】
また、従来のバレルめっき装置およびめっき方法では、めっき液中でのアノード電極からカソード電極までの電力線が長いため、電力線の集中も起こりやすく、めっき膜厚のバラツキの原因にもなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−36249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、高品質で均一な厚さのめっき膜を得ることが可能なめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るめっき装置は、
めっき槽の内側で、めっき液の流れを発生させる発生手段と、
前記めっき液の流れ方向を規定する案内手段と、
前記めっき液の流れの途中に配置されるアノード電極と、
前記めっき液の流れの途中に配置され、前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を一時的に滞留させる滞留手段と、を有するめっき装置であって、
前記滞留手段の少なくとも一部がカソード電極で構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るめっき方法は、めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るチップ型電子部品の製造方法は、素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくる前記素子本体を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、めっき対象物(素子本体含む)は、まず、発生手段によって発生し案内手段によって規定されためっき液の流れ(噴流)に乗って、噴流の途中に配置されるアノード電極の付近まで流されると共に、めっき対象物同士がばらける。そして、個々のめっき対象物が個別に近い状態で、噴流の途中に配置された滞留手段の上で、一時的に滞留する。この時に、めっき対象物は、噴流の影響およびめっき対象物の自重の影響で、滞留手段のカソード電極が形成された部分を転がる。したがって、ばらけためっき対象物を個別に近い状態で電解めっきを行うことが可能である。各々のめっき対象物は、カソード電極に接触している間、電解めっきされる。また、噴流およびめっき対象物の自重により、めっき対象物が滞留手段の上で同じ箇所に留まり続けることもない。めっき対象物は、やがて滞留手段から落下し、再び噴流に乗って移動する。したがって、めっき対象物に対し、均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0011】
なお従来では、カソード電極において電解めっきが行われる際に、気泡が発生し、その気泡にめっき対象物が取り込まれることがある。しかし、本発明では、気泡に取り込まれためっき対象物が、発生手段による直接の噴流に流される際に、噴流の勢いで、めっき対象物から気泡が完全に分離する。気泡から分離しためっき対象物は、再度、滞留手段に形成されたカソード電極で電解めっきが行われる。したがって、めっき対象物がめっき液から分離することなく、めっき対象物に確実に電解めっきを行うことができ、めっき対象物のめっき品質を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、前記滞留手段が、内周端と外周端とを有する面状部材であり、前記面状部材が、前記内周端と前記外周端とを結ぶ滞留面を有する。また、好ましくは、前記面状部材の少なくとも前記めっき対象物に接触する部分がカソード電極で構成される。
【0013】
面状部材に形成された滞留面の表面積は広く、めっき対象物に接触する部分を広く確保することができるので、面状部材のめっき対象物に接触する部分にカソード電極が形成されていれば、ばらけためっき対象物を個別に近い状態で、確実に電解めっきを行うことが可能である。
【0014】
好ましくは、前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に前記めっき槽の内部で鉛直方向上方に案内する案内部材である。好ましくは、前記案内部材が筒状の案内筒であり、前記めっき液およびめっき対象物が前記案内筒の内側を案内されるように形成してある。この場合には、前記面状部材の前記内周端が、前記案内部材の外周に接していることが好ましい。また、前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に、前記めっき槽の内壁に沿って鉛直方向上方に案内する案内部材であっても良い。
【0015】
発生手段で発生した直接の噴流(上昇噴流)により、めっき対象物同士を適度にばらけさせることができ、面状部材には、めっき対象物が適度にばらけた状態で接触する。さらに、カソード電極で電解めっきが行われた際に発生するガスが、めっき対象物を取り込んでしまったとしても、上昇噴流により、めっき対象物とガスとを分離させることができる。
【0016】
好ましくは、前記滞留面が鉛直方向上側から鉛直方向下側に向けて傾斜している。滞留面が傾斜していることにより、噴流に乗って滞留面に到達しためっき対象物が、滞留面に沿って、自重で転がりやすくなる。したがって、滞留面の同じ箇所にめっき対象物が留まり続けることなく、めっき対象物に対し、より均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0017】
好ましくは、前記滞留面には、前記めっき対象物が前記面状部材から落下する落下孔が複数形成されている。滞留面に落下孔が形成されていることにより、めっき対象物が滞留面に到達した位置から落下孔までの距離だけ電解めっきが行われた後に、確実にめっき対象物を自重で落下させることができる。したがって、めっき対象物が滞留面に留まり続けることがない。
【0018】
前記落下孔の開口面積は、前記面状部材の鉛直方向下側に位置するほど大きくても良い。落下孔の開口面積を変化させるためには、面状部材の鉛直方向下側に位置するほど落下孔の孔径を大きくしても良いし、面状部材の鉛直方向下側に位置するほど落下孔の密度を大きくしても良い。
【0019】
これにより、仮に鉛直方向上側の落下孔からめっき対象物が落下しなかったとしても、より鉛直方向下部に位置する落下孔からめっき対象物が落下する確率が高まる。また、めっき対象物が転がってきた面状部材の内周端が、案内部材の外周に接している場合には、落下孔の開口面積は、面状部材の鉛直方向下側に位置するほど大きいことが好ましい。この場合には、内周端に沿って形成された落下孔で、確実にめっき対象物を落下させることができる。したがって、めっき対象物が滞留面に留まり続けることがない。
【0020】
好ましくは、前記面状部材が、鉛直方向に複数形成され、鉛直方向上側に位置する第1プレートと、鉛直方向下側に位置する第2プレートとを有している。
【0021】
複数の面状部材が配置されていることにより、めっき対象物が滞留面に接触する機会が高まり、めっき効率を高めることができる。
【0022】
好ましくは、前記第1プレートの前記滞留面と、前記第2プレートの前記滞留面とが互いに平行であり、前記第1プレートの前記内周端と、前記第2プレートの前記内周端とが鉛直方向下側に位置している。
【0023】
あるいは、前記第1プレートの第1内周端が、前記第1プレートの第1外周端よりも鉛直方向下側に位置し、前記第2プレートの第2内周端が、前記第2プレートの第2外周端よりも鉛直方向上側に位置し、前記第1内周端と前記第2内周端とを接触させても良い。
【0024】
この場合には、第1プレートの滞留面で落下しなかっためっき対象物が、第2プレートの第2内周端から転がり始める。したがって、めっき対象物の転がり距離を長く確保することができ、めっき効率をさらに高めることができる。
【0025】
好ましくは、前記アノード電極が、前記滞留面の近くで、前記滞留面に略平行に配置される。カソード電極が形成される滞留面とアノード電極との距離が近いので、電力線の集中も生じにくく、電流密度が均一になり、カソード電極においてめっき対象物の表面にめっき成分を均一に析出させることができ、めっき膜厚のばらつきを低減させることができる。また、アノード電極からカソード電極までの電力線を短くできるために、電力量に比較してめっき効率も向上させることができる。
【0026】
好ましくは、めっき装置は、少なくとも前記滞留手段を振動させる振動手段を有する。仮に滞留面から落下しないで留まっているめっき対象物があったとしても、少なくとも滞留面を振動させることにより、めっき対象物を確実に落下させることができる。
【0027】
前記面状部材は、複数の細線が組み合わされて形成されていても良い。たとえば、面状部材はメッシュにより形成されていても良い。
【0028】
前記発生手段は、新鮮なめっき液を前記めっき槽に導入する供給手段とは別に設けた撹拌手段でも良いが、供給手段を兼ねていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るめっき装置の概略外観図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るめっき方法により処理されるチップ型電子部品の断面図である。
【図3】図3は、図1に示すめっき装置の断面図である。
【図4】図4は、図1に示す第1プレートの平面図である。
【図5】図5は、図3に示すV部の詳細を示す要部断面図である。
【図6】図6は、他の実施形態に係るめっき装置の要部断面図である。
【図7A】図7Aは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7B】図7Bは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7C】図7Cは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7D】図7Dは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7E】図7Eは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7F】図7Fは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7G】図7Gは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7H】図7Hは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7I】図7Iは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7J】図7Jは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7K】図7Kは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図7L】図7Lは、プレートの形状および位置の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図8】図8Aおよび図8Bは、案内筒の形状の組み合わせ例を示す概略断面図である。
【図9】図9Aおよび図9Bは、プレートの変形例を示す平面図である。
【図10】図10は、プレートの変形例を示す要部拡大図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施形態に係るめっき装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
(めっき対象物としての積層チップコンデンサ)
【0031】
まず、本発明の一実施形態に係る図1に示すめっき装置20を用いてめっき処理されるチップ型電子部品としての図2に示す積層チップコンデンサ2について説明する。図2に示すように、積層チップコンデンサ2は、内部電極層4,6と誘電体層8とが積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部11,13には、素子本体10の内部に配置された内部電極層4,6と各々導通する一対の外部端子電極12,14が形成してある。
【0032】
内部電極層4,6は、各端面が素子本体10の対向する両端部11,13の表面に露出するように積層してある。一対の外部端子電極12,14は、素子本体10の両端部に形成され、内部電極層4,6の露出端面にそれぞれ接続されて、コンデンサ回路を構成している。
【0033】
誘電体層8は、誘電性材料であれば特に限定されないが、たとえばチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、あるいはこれらの複合酸化物などを主成分とする誘電体材料で構成される。この誘電体材料には、シリコン酸化物、希土類酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、バナジウム酸化物、アルミニウム酸化物、クロム酸化物などの副成分が含まれていても良い。
【0034】
本発明に係るめっき対象物としての積層チップ部品は、チップコンデンサ2に限定されず、たとえばチップバリスタ、チップインダクタ、チップサーミスタであってもよく、その場合には、誘電体層8は、バリスタ材料層、インダクタ材料層、NTCサーミスタ材料層などで構成されてもよい。
【0035】
内部電極層4,6は、導電材を含んで構成される。内部電極層4,6に含まれる導電材としては、特に限定されないが、コンデンサ2として用いる場合には、ニッケル、もしくはニッケル合金などが好ましい。内部電極層4,6の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常0.2〜5μm程度である。
【0036】
外部端子電極12,14も導電材を含んで構成される。外部端子電極12,14に含まれる導電材としては、特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。本実施形態では、ペースト電極膜から成る下地電極層12p,14pの表面に、電気めっきにより、Ni及びSn膜などで構成されるめっき膜12c,14cが形成してある。下地電極層12p,14pの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常5〜50μm程度である。また、めっき膜12c,14cの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常3〜10μm程度である。
【0037】
素子本体10の形状は、特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて決定され、特に、図1に示すように、1005形状(縦LO=1.0mm×横WO=0.5mm×厚みHO=0.5mm)サイズ以下、たとえば、小さく軽く電極間距離が短い0603形状(縦LO=0.6mm×横WO=0.3mm×厚みHO=0.3mm)サイズ以下である場合にも本実施形態の装置および方法が適用できる。
【0038】
図2に示すように、素子本体10において、内部電極層4,6および誘電体層8の積層方向の両外側端部には、外側誘電体層18が配置してあり、素子本体10の内部を保護している。外側誘電体層18の材質は、誘電体層8の材質と同じであっても異なっていても良いが、通常、誘電体層8の材質とほぼ同じであり、誘電体材料で構成されている。
【0039】
一対の下地電極層12p,14pの外側にめっき膜12c,14cを形成する際には、そのめっき処理時に、外側誘電体層18の外表面(素子本体10の表面10α)には、めっき膜が形成されてショート不良となりやすい。そのため、その表面10αには、ガラスコートなどの保護膜16を形成しても良いが、必ずしも保護膜16は形成されていなくとも良い。保護膜16を形成する場合には、保護膜16の厚さは、好ましくは0.05〜0.2μm程度に薄い。保護膜16が厚すぎると、保護膜16を形成した後に、下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4および6と下地電極層12p,14pとのコンタクトが困難になる傾向にある。
【0040】
下地電極層12p,14pは、電極ペーストの焼付け処理により形成されている。下地電極ペースト膜12p,14pは、素子本体10の端面に位置する端面部分12γ,14γと、端面部分12γ,14γに連続して形成され、素子本体10の端面近傍の四側面にまで延びる側面部分12β,14βとを有している。
(積層チップコンデンサの製造方法)
【0041】
次に、図2に示す積層チップコンデンサ2の製造方法について説明する。
まず素子本体10を製造する。素子本体10を製造するために、印刷工法またはシート工法等により、内部電極層4,6が互い違いに両端部に露出するように、誘電体層8と内部電極層4,6を交互に積層し、その積層方向の両端に外側誘電体層18を積層し、積層体を形成する。
【0042】
次に、この積層体を切断し、グリーンチップを得る。次に、必要に応じて脱バインダー処理を行い、グリーンチップを焼成し、素子本体10を得る。次に、必要に応じて、素子本体10の研磨を行い、内部電極の端部を素子本体の両端面に露出させる。その後に、素子本体10の両端部に外部端子電極12,14を形成するための電極ペーストを塗布、焼き付けして下地電極層12p,14pを形成する。
【0043】
次に、下地電極層12p,14pの表面を、例えばバレル研磨により研磨して、下地電極層12p,14pの表面に導電性粒子を露出させ、その下地電極層12p,14pの表面にめっき膜12c,14cを均一に形成しやすくする。
【0044】
そのような研磨後に、図2に示す下地電極層12p,14pの表面に、めっき膜12c,14cを、図1に示すめっき装置を用いて電気めっき法により形成する。このようにして図2に示す積層チップコンデンサ2が製造される。
【0045】
なお、図2に示すガラスコートなどの保護膜16の形成は、めっき処理の前に行っても、下地電極層12p,14pの形成前に行っても良い。保護膜16は、十分に薄いので、素子本体10の端面に下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4,6との接続を確保することが可能である。
(めっき装置)
【0046】
次に、めっき処理を行うためのめっき装置について説明する。
図1に示すように、めっき装置20は、めっき槽21を有する。図3に示すように、めっき槽21は、めっき液30を貯留可能に構成され、少なくともめっき槽21の内面がプラスチック部材あるいはセラミック部材などの絶縁材料で構成されることが好ましい。この実施形態では、めっき槽21の鉛直方向上端部に、めっき中に発生したガスを排出可能なガス排出口24を持つ密閉型として説明を行うが、鉛直方向上部が開放型になっており、自由にガスを排出可能に構成されても良い。
【0047】
図3に示すように、めっき槽21は、上側ケーシング21aと下側ケーシング21bとを有し、接続部21cによって接続され、めっき槽21を鉛直方向上下に分割することが可能になっている。下側ケーシング21bには、新鮮なめっき液30をめっき槽21に導入可能な導入パイプ23(供給手段)が接続されており、めっき槽21内にめっき液30を供給する。めっき液30は、下側ケーシング21bに接続された排出パイプ25を通って、めっき槽21から排出可能になっている。めっき槽21内へのめっき液の供給は、バッチ式に行っても良いが、めっき処理中にも連続して行うことが好ましい。また、排出パイプ25から排出されためっき液30を、フィルターで濾過して、再循環させも良い。
【0048】
また、下側ケーシング21bの鉛直方向最下部には、支持台22が固定されている。支持台22には収容凹部22aが形成されており、収容凹部22aには、撹拌羽根26(発生手段)が不図示のモータ等によって回転可能に収容されている。撹拌羽根26の鉛直方向上方には、仕切り網27が配置されており、図1に示す素子本体10(めっき対象物)が撹拌羽根26に当たるのを防止している。
【0049】
撹拌羽根26の鉛直方向上側には、仕切り網27から所定距離の隙間を有して、筒状パイプ28(案内手段)が配置されている。筒状パイプ28は、図1に示すように円筒形をしているが、円筒に限らず多角筒形状でも良い。筒状パイプ28は、撹拌羽根26の回転によって発生しためっき液30の流れ(上昇噴流)が筒状パイプ28の内側を通り、上昇噴流が素子本体10と共にアノード電極29の近くまで案内可能に配置されている。筒状パイプ28は絶縁性を有しており、プラスチック部材あるいはセラミック部材などの絶縁材料で構成されることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、滞留手段は、図3に示すように、第1プレート31および第2プレート32で構成されている。図3および図4に示すように、第1プレート31は、第1内周端31aと第1外周端31bとを結ぶ滞留面31cを有する面状部材である。第2プレート32も、第2内周端32aと第2外周端32bとを有する面状部材であり、第2内周端32aと第2外周端32bとを結ぶ滞留面32cを有している。図3に示すように、第1プレート31の滞留面31cと、第2プレート32の滞留面32cとは互いに平行に配置されている。
【0051】
図3に示すように、第1プレート31の滞留面31cと第2プレート32の滞留面32cは、円錐側面形状を有し、筒状パイプ28の軸心に対して角度θで傾斜している。傾斜角度θは特に限定されないが、20〜160度であることが好ましい。さらに好ましくは、傾斜角度θは30〜60度である。
【0052】
図3に示すように、第1プレート31の第1内周端31aと第2プレート32の第2内周端32aは、筒状パイプ28の外周壁面28aに着脱可能に接続してある。また、第1プレート31の第1外周端31bと第2プレート32の第2外周端32bは、めっき槽21の内壁21dに対して着脱可能に接続してあることが好ましい。めっき装置20のメンテナンスを容易にするためである。
【0053】
図4に示すように、第1プレート31は、上昇噴流によって流されてきた素子本体10が、ばら状に滞留面31cに接触し、滞留面31cで滞留するように構成されている。図3および図5に示すように、第1プレート31の少なくとも素子本体10が接触する部分には、カソード電極31dが形成されている。また、第2プレート32の少なくとも素子本体10が接触する部分には、カソード電極32dが形成されており、第1プレートの落下孔35から落下してきた素子本体10を再び滞留させるように構成してある。本実施形態では第1プレート31および第2プレート32を、金属などの導電性プレートで構成してある。
【0054】
図1に示すように、第1プレート31の滞留面31cには、素子本体10が滞留面31cから落下可能な落下孔35が行列状に多数形成されている。本実施形態では、落下孔35は円形をしている。落下孔35同士の外周端同士の間隔C1,C2は、素子本体10の縦サイズLOに比較して、1.5倍以上の距離を有していることが好ましい。これにより、素子本体10の転がり距離を長く確保することができる。また、落下孔35の直径D1は、少なくとも、素子本体10の横幅WO,厚みHOよりも大きい。また、落下孔35の直径D1は、素子本体10の縦サイズLOより小さくてもよいが、大きくても良い。落下孔D1が、素子本体10を落下させる最小限の大きさであれば、素子本体10の転がり距離を長く確保することができる。
【0055】
また、図4に示すように、第1プレート31の滞留面31において、筒状パイプ28の外周壁面28aに沿って、最終落下孔31eが、内接円の直径が図1に示す素子本体の縦サイズLOより大きくなるように形成されている。最終落下孔31eの形状は、本実施形態では扇状をしているが、滞留面31cを転がってきた素子本体10を確実に落下させる大きさであれば、形状は特に限定されない。また、第2プレート32の滞留面32においても、筒状パイプ28の外周壁面28aに沿って、最終落下孔32eが、内接円の直径が図1に示す素子本体の縦サイズLOより大きくなるように形成されている。第1プレート31,第1プレート31の滞留面31c,32cは、本実施形態では円錐曲面で構成されているが、複数の平面を組み合わせることで構成されても良い。
【0056】
また、図3に示すように、棒状のアノード電極29が、第1プレート31の滞留面31cの近くで、第1プレート31の滞留面31cに略平行に配置されている。アノード電極29は、めっき槽21の内壁21dに着脱自在に固定されることが好ましい。アノード電極29は、たとえばNiなど、めっき液30中に溶け出し、めっき膜として析出する材料で構成されている。アノード電極の形状や構造は、特に限定されない。
【0057】
アノード電極29は、電源33のプラス端子に接続され、第1プレート31および第2プレート32は、電源33のマイナス端子に接続されている。さらに、本実施形態では、めっき槽21の全体が振動器34(振動手段)に接続され、振動可能に構成されているが、少なくとも第1プレート31および第2プレート32が、振動可能に構成されていれば良い。
【0058】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、まず、図2に示す下地電極層12p,14pが形成された素子本体10を、図3に示す上側ケーシング21aと下側ケーシング21bとが分離された状態で、下側ケーシング21bに多数投入する。投入される素子本体10の個数は、特に限定されず、たとえば1000個〜2000000個投入される。その前後に、供給パイプ23からめっき液30が供給される。
【0059】
素子本体10は、まず、撹拌羽根26によって発生し筒状パイプ28によって規定されためっき液の流れ(噴流)に乗って、噴流の途中に配置されるアノード電極29の付近まで流されると共に、素子本体10同士がばらける。そして、個々の素子本体10が個別に近い状態で、噴流の途中に配置された第1プレート31,第2プレート32の上で、一時的に滞留する。この時に、素子本体10は、噴流の影響および素子本体10の自重の影響で、第1プレート31,第2プレート32のカソード電極31d,32dが形成された部分を転がる。図5に示すように、素子本体10の両端に形成してある各下地電極層12pおよび14pが同時にカソード電極31dに接触した時に、めっき液30の存在下で、カソード電極31dに電気的に接続される。したがって、ばらけた素子本体10を個別に近い状態で電解めっきを行うことが可能である。また、噴流および素子本体10の自重により、素子本体10が滞留手段の上で同じ箇所に留まり続けることもない。素子本体10は、やがて第1プレート,第2プレートから落下し、再び噴流に乗って移動する。したがって、素子本体10に対し、均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0060】
なお従来では、カソード電極31d,32dにおいて電解めっきが行われる際に、気泡が発生し、その気泡に素子本体10が取り込まれることがある。しかし、本実施形態では、気泡に取り込まれた素子本体10が、撹拌羽根26による直接の噴流に流される際に、噴流の勢いで、素子本体10から気泡が完全に分離する。気泡から分離した素子本体10は、再度、第1プレート31,第2プレート32に形成されたカソード電極31d,32dで電解めっきが行われる。したがって、素子本体10がめっき液30から分離することなく、素子本体10の下地電極層12p,14pに確実に電解めっきを行うことができ、素子本体10の下地電極層12p,14pに形成されためっき膜のめっき品質を向上させることができる。
【0061】
第1プレート31,第2プレート32に形成された滞留面31c,32cの表面積は広く、素子本体10に接触する部分を広く確保することができる。第1プレート31,第2プレート32の素子本体10に接触する部分にカソード電極31d,32dが形成されているので、ばらけた素子本体10を個別に近い状態で、確実に電解めっきを行うことが可能である。
【0062】
また、撹拌羽根26で発生した直接の噴流(上昇噴流)により、素子本体10同士を適度にばらけさせることができ、第1プレート31,第2プレート32には、素子本体10が適度にばらけた状態で接触する。さらに、カソード電極31d,32dで電解めっきが行われた際に発生するガスは、上昇噴流により、素子本体10から分離され、ガス排出口24から排出される。
【0063】
また、第1プレート31,第2プレート32の滞留面31c,32cが傾斜していることにより、噴流に乗って滞留面31c,32cに到達した素子本体10が、滞留面31c,32cに沿って、自重で転がりやすくなる。したがって、滞留面31c,32cの同じ箇所に素子本体10が留まり続けることなく、素子本体10に対し、より均一な膜厚でめっき膜を形成することが可能である。
【0064】
本実施形態では、滞留面31c,32cに落下孔35が形成されていることにより、素子本体10が滞留面31c,32cに到達した位置から落下孔35までの距離だけ電解めっきが行われた後に、確実に素子本体10を自重で落下させることができる。したがって、素子本体10が滞留面31c,32cに留まり続けることがない。
【0065】
また、本実施形態では、仮に鉛直方向上側の落下孔35から素子本体10が落下しなかったとしても、より鉛直方向下部に位置する落下孔35から素子本体10が落下する。また、本実施形態では、筒状パイプ28の外周壁面28aに沿って形成された最終落下孔31eで、確実に素子本体10を落下させることができる。したがって、素子本体10が滞留面に留まり続けることがない。
【0066】
また、複数のプレート(第1プレート31,第2プレート32)が配置されていることにより、素子本体10が滞留面31c,32cに接触する機会が高まり、めっき効率を高めることができる。
【0067】
本実施形態では、第1プレート31のカソード電極31dが形成される滞留面31cとアノード電極29との距離が近いので、電力線の集中も生じにくく、電流密度が均一になり、カソード電極31dにおいて素子本体10の表面にめっき成分を均一に析出させることができ、めっき膜厚のばらつきを低減させることができる。また、アノード電極29からカソード電極31dまでの電力線を短くできるために、電力量に比較してめっき効率も向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、めっき装置20は、少なくとも第1プレート31,第2プレート32を振動させる振動器34を有するので、仮に滞留面31c,32cから落下しないで留まっている素子本体10があったとしても、滞留面31c,32cを振動させることにより、素子本体10を確実に落下させることができる。なお、めっき処理後に、撹拌羽根26の回転を止めて、上昇噴流が止まった際にも、第1プレート31と第2プレート32とを振動させ、図3に示すめっき槽21の底辺部に素子本体10を集めることにより、めっき膜が形成された素子本体10のみを残すことができる。
【0069】
なお、上述した実施形態に限定されず、以下に述べるように、めっき装置20が構成されてもよい。
【0070】
たとえばカソード電極が形成されたプレート31iの落下孔35aの開口面積は、プレート31iの鉛直方向下側に位置するほど大きくても良い。たとえば、図6に示すように、プレート31iの鉛直方向下側に位置するほど、落下孔35aの孔径を大きくしても良い。すなわち、鉛直方向上側に位置する落下孔35aの孔径D2よりも、鉛直方向下側に位置する落下孔35aの孔径D3のほうが大きくても良い。または、図示しないが、カソード電極が形成されたプレートにおける単位面積あたりの落下孔の形成個数(形成密度)を多くしても良い。
【0071】
なお、図7Aに示すように、第1プレート31,第2プレート32が、筒状パイプ28の鉛直方向上方にずれていても良い。
【0072】
また、図7Bに示すように、好ましくは、第1プレート31の第1内周端31aが、第1プレート31の第1外周端31bよりも鉛直方向下側に位置し、第2プレート32の第2内周端32aが、第2プレート32の第2外周端32bよりも鉛直方向上側に位置し、第1内周端31aと第2内周端32aとが接触している。この場合には、第1プレート31の第1滞留面31cで落下しなかった素子本体10が、第2プレート32の第2内周端32aから、第2滞留面32cを転がり始める。したがって、素子本体10の転がり距離を長く確保することができ、めっき効率をさらに高めることができる。
【0073】
また、図7Cに示すように、第2プレート32のみを水平方向に平行に配置しても良い。あるいは、図7D〜図7Fに示すように、第1プレート31を水平方向に平行に配置しても良い。この場合には、図7Dに示すように、第2プレート32の第2内周端32aが、第2外周端32bに比較して、鉛直方向下方に位置しても良い。また、図7Eに示すように、第2プレート32の第2内周端32aが、第2外周端32bに比較して、鉛直方向上方に位置しても良い。さらに、図7Fに示すように、第1プレート31,第2プレート32が、共に水平方向に対して平行に配置されても良い。
【0074】
また、図7G〜図7Iに示すように、第1プレート31の第1内周端31aが、第1外周端31bに比較して、鉛直方向上方に位置されても良い。この場合には、図7Gに示すように、第2プレート31の第2内周端31aが、第2外周端31bに比較して、鉛直方向下方に位置しても良い。また、図7Hに示すように、第2プレート32が水平方向に対して平行に配置されても良いし、図7Iに示すように、第2プレート32が、第1プレート31と平行であっても良い。
【0075】
また、図7J〜図7Lに示すように、面状部材が、第1プレートのみで構成されていても良い。この場合には、図7Jに示すように、第1プレート31の第1内周端31aが、第1外周端31bに比較して、鉛直方向下方に位置しても良いし、図7Kに示すように、第1プレート31が水平方向に対して平行に配置されても良い。また、図7Lに示すように、第1プレート31の第1内周端31aが、第1外周端31bに比較して、鉛直方向上方に位置しても良い。
【0076】
上述した実施形態では、筒状パイプ28の内径が、筒状パイプ28の鉛直方向最上端と鉛直方向最下端とで等しい場合について説明を行ったが、これに限定されない。すなわち、図8Aに示すように、筒状パイプ28の鉛直方向最上端における内径d1が、筒状パイプ28の鉛直方向最下端における内径d2に比較して大きくても良い。また、図8Bに示すように、筒状パイプ28の鉛直方向最上端における内径d1が、筒状パイプ28の鉛直方向最下端における内径d2に比較して小さくても良い。
【0077】
また、上述した実施形態では、面状部材がプレート状の場合について説明を行ったが、これに限定されない。たとえば、図9Aに示すように、面状部材が、複数の細線36を平行に配置することで構成されても良い。また、図9Bに示すように、面状部材が、複数の細線37を編んで構成されるメッシュ状であっても良い。
【0078】
上述した実施形態では、第1プレート31および第2プレート32の全体がカソード電極で構成される場合について説明を行ったが、これに限定されない。たとえば、図10に示すように、プレート31hが樹脂板31fを有しており、樹脂板31fの表面(素子本体10が接する部分)のみに、薄膜状にカソード電極31gが形成されていても良い。
【0079】
また、発生手段が、新鮮なめっき液30をめっき槽21に導入する導入パイプ23とは別に設けた撹拌羽根26で構成される例を示したが、これに限定されない。たとえば、発生手段が、新鮮なめっき液30をめっき槽21に導入する導入パイプ23で構成されていても良い。すなわち、導入パイプ23を、撹拌羽根26の位置に配置し、撹拌羽根26を設けなくても良い。
【0080】
さらに、落下孔35は円形でなくても良く、楕円形でも良いし、多角形をしていても良い。
第2実施形態
【0081】
以下に示す以外は、上述した第1実施形態と同様であり、重複する説明を省略する。
本実施形態では、図11に示すように、案内手段が、撹拌羽根26で発生しためっき液30の流れを、素子本体10と共に、めっき槽21の内壁21dに沿って鉛直方向上方に案内する案内部材48で構成される。
【0082】
案内部材48の下面は、曲面をした第1案内面48aを有しており、撹拌羽根26で発生しためっき液30の流れを直に受け、素子本体10と共に、めっき槽21の内壁21dに沿って鉛直方向上方に案内(上昇噴流)するように構成されている。案内面48aは、平面であってもよい。
【0083】
また、案内部材48の上面には、第1プレート41, 第2プレート42を通過してきためっき液30の流れ(下降噴流)を、素子本体10と共に上昇噴流に合流させる第2案内面48bが形成されている。
【0084】
本実施形態の第1プレート41および第2プレート42は、第1内周端42aおよび第2内周端42aの内側が、最終落下孔41e,42eで構成されている。本実施形態の最終落下孔41e,42eは、円形をしているが、形状はこれに限定されない。
【0085】
本実施形態では、最終落下孔41e,42eから、素子本体10が確実に落下するので、より均一に素子本体10にめっき膜を形成することができる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、上述した実施形態では、積層チップコンデンサを例に説明を行ったが、これに限定されず、本発明のめっき装置およびめっき方法が適用されるチップ型電子部品としては、チップバリスタ、チップインダクタ、チップNTCサーミスタなどであってもよい。また、本発明のめっき装置およびめっき方法が適用されるめっき対象物は、チップ型電子部品に限らず、たとえば粉体(5〜100μm)、コネクタ、リードスイッチ、釘、ボルト、ナット、ワッシャなどのような小物(小形部品)が例示される。
【符号の説明】
【0087】
2…積層チップコンデンサ
10…素子本体
12p,14p…下地電極層
12c,14c…めっき膜
21…めっき槽
23…導入パイプ
26…撹拌羽根
28…筒状パイプ
29…アノード電極
30…めっき液
31…第1プレート
31a…第1内周端
31b…第1外周端
31c…滞留面
31d…カソード電極
32…第2プレート
32a…第2内周端
32b…第2外周端
32c…滞留面
32d…カソード電極
34…振動器
35…落下孔
48…案内部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき槽の内側で、めっき液の流れを発生させる発生手段と、
前記めっき液の流れ方向を規定する案内手段と、
前記めっき液の流れの途中に配置されるアノード電極と、
前記めっき液の流れの途中に配置され、前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を一時的に滞留させる滞留手段と、を有するめっき装置であって、
前記滞留手段の少なくとも一部がカソード電極で構成されていることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記滞留手段が、内周端と外周端とを有する面状部材であり、
前記面状部材が、前記内周端と前記外周端とを結ぶ滞留面を有することを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記面状部材の少なくとも前記めっき対象物に接触する部分がカソード電極で構成されることを特徴とする請求項2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記滞留面が鉛直方向上側から鉛直方向下側に向けて傾斜していることを特徴とする請求項2または3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記滞留面には、前記めっき対象物が前記面状部材から落下する落下孔が複数形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記落下孔の開口面積は、前記面状部材の鉛直方向下側に位置するほど大きいことを特徴とする請求項5に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記面状部材が、鉛直方向に複数形成され、鉛直方向上側に位置する第1プレートと、鉛直方向下側に位置する第2プレートとを有することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
前記第1プレートの前記滞留面と、前記第2プレートの前記滞留面とが互いに平行であり、
前記第1プレートの前記内周端と、前記第2プレートの前記内周端とが鉛直方向下側に位置していることを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記第1プレートの第1内周端が、前記第1プレートの第1外周端よりも鉛直方向下側に位置し、
前記第2プレートの第2内周端が、前記第2プレートの第2外周端よりも鉛直方向上側に位置し、
前記第1内周端と前記第2内周端とが接していることを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。
【請求項10】
前記面状部材は、複数の細線が組み合わされて形成されることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項11】
前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に前記めっき槽の内部で鉛直方向上方に案内する案内部材であることを特徴とする請求項2〜10のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項12】
前記案内部材が筒状の案内筒であり、前記めっき液およびめっき対象物が前記案内筒の内側を案内されるように形成してあることを特徴とする請求項11に記載のめっき装置。
【請求項13】
前記面状部材の前記内周端が、前記案内部材の外周に接していることを特徴とする請求項12に記載のめっき装置。
【請求項14】
前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に、前記めっき槽の内壁に沿って鉛直方向上方に案内する案内部材であることを特徴とする請求項11に記載のめっき装置。
【請求項15】
前記アノード電極が、前記滞留面の近くで、前記滞留面に略平行に配置されることを特徴とする請求項2〜14のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項16】
前記発生手段が、新鮮なめっき液を前記めっき槽に導入する供給手段を兼ねていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項17】
少なくとも前記滞留手段を振動させる振動手段を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項18】
めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とするめっき方法。
【請求項19】
素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくる前記素子本体を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とするチップ型電子部品の製造方法。
【請求項1】
めっき槽の内側で、めっき液の流れを発生させる発生手段と、
前記めっき液の流れ方向を規定する案内手段と、
前記めっき液の流れの途中に配置されるアノード電極と、
前記めっき液の流れの途中に配置され、前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を一時的に滞留させる滞留手段と、を有するめっき装置であって、
前記滞留手段の少なくとも一部がカソード電極で構成されていることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記滞留手段が、内周端と外周端とを有する面状部材であり、
前記面状部材が、前記内周端と前記外周端とを結ぶ滞留面を有することを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記面状部材の少なくとも前記めっき対象物に接触する部分がカソード電極で構成されることを特徴とする請求項2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記滞留面が鉛直方向上側から鉛直方向下側に向けて傾斜していることを特徴とする請求項2または3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記滞留面には、前記めっき対象物が前記面状部材から落下する落下孔が複数形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記落下孔の開口面積は、前記面状部材の鉛直方向下側に位置するほど大きいことを特徴とする請求項5に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記面状部材が、鉛直方向に複数形成され、鉛直方向上側に位置する第1プレートと、鉛直方向下側に位置する第2プレートとを有することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
前記第1プレートの前記滞留面と、前記第2プレートの前記滞留面とが互いに平行であり、
前記第1プレートの前記内周端と、前記第2プレートの前記内周端とが鉛直方向下側に位置していることを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記第1プレートの第1内周端が、前記第1プレートの第1外周端よりも鉛直方向下側に位置し、
前記第2プレートの第2内周端が、前記第2プレートの第2外周端よりも鉛直方向上側に位置し、
前記第1内周端と前記第2内周端とが接していることを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。
【請求項10】
前記面状部材は、複数の細線が組み合わされて形成されることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項11】
前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に前記めっき槽の内部で鉛直方向上方に案内する案内部材であることを特徴とする請求項2〜10のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項12】
前記案内部材が筒状の案内筒であり、前記めっき液およびめっき対象物が前記案内筒の内側を案内されるように形成してあることを特徴とする請求項11に記載のめっき装置。
【請求項13】
前記面状部材の前記内周端が、前記案内部材の外周に接していることを特徴とする請求項12に記載のめっき装置。
【請求項14】
前記案内手段が、前記発生手段で発生した前記めっき液の流れを、前記めっき対象物と共に、前記めっき槽の内壁に沿って鉛直方向上方に案内する案内部材であることを特徴とする請求項11に記載のめっき装置。
【請求項15】
前記アノード電極が、前記滞留面の近くで、前記滞留面に略平行に配置されることを特徴とする請求項2〜14のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項16】
前記発生手段が、新鮮なめっき液を前記めっき槽に導入する供給手段を兼ねていることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項17】
少なくとも前記滞留手段を振動させる振動手段を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項18】
めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくるめっき対象物を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とするめっき方法。
【請求項19】
素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
めっき槽の内側で、アノード電極の付近を通過させるめっき液の流れを発生させ、
前記めっき液と共に流れてくる前記素子本体を、少なくとも一部がカソード電極で構成される滞留手段で一時的に滞留させることを特徴とするチップ型電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図7I】
【図7J】
【図7K】
【図7L】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図7I】
【図7J】
【図7K】
【図7L】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−208204(P2011−208204A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75951(P2010−75951)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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