説明

めっき装置、めっき方法及びめっき装置に用いるワゴン

【課題】基板ホルダへのアクセスが容易で、かつ、めっき装置でウェハの処理を行いながら、基板ホルダのメンテナンスが容易に行えるめっき装置、めっき方法及びめっき装置に用いるワゴンを提供する。
【解決手段】基板のめっき処理を行うめっき処理部130と、前記基板を保持する基板ホルダ110と、前記基板ホルダ110を保持して搬送する基板ホルダ搬送部140と、前記基板ホルダ110を収納するワゴン150と、前記ワゴン150を収納するワゴン設置部160とを有し、前記ワゴン150は、前記ワゴン150を前記ワゴン設置部160の内外に移動する移動手段を有することを特徴とするめっき装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の被めっき体(基板)の表面にめっきを行うめっき装置及びめっき方法に関し、特にウェハの表面に設けられた微細な配線用溝やホール、レジスト開口部にめっき膜を形成したり、半導体ウェハの表面にパッケージの電極等と電気的に接続するバンプ(突起状電極)を形成したりするのに好適なめっき装置及びめっき方法に関する。本発明のめっき装置及びめっき方法は、例えば内部に上下に貫通する多数のビアプラグを有し、半導体チップ等のいわゆる3次元実装に使用されるインターポーザまたはスペーサを製造する際にビアホールの埋め込みにも使用される。より詳細には、基板をホルダに設置し、そのホルダをめっき槽に浸漬させてめっきする(ディップ式の)めっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板へのめっきの方式は、フェースダウン式と、ディップ式とに大別することができる。
【0003】
フェースダウン式のめっきにおいては、基板、特にウェハは水平状態で、被処理面を下向きにヘッドにより保持され、めっきが行われる。一般的にヘッドは、めっき槽上部に配置され、各めっき槽に固定され使用される。めっき装置内の搬送ロボットがヘッドにウェハを受け渡す。一方、ディップ式のめっき装置はめっき槽のめっき液に基板ホルダで保持された基板を垂直に差し入れてめっきを行う。基板ホルダは、装置の運転前には基板ホルダを収納するためのストッカに収納され、運転を開始すると基板ホルダがストッカから取り出され、さらに処理すべきウェハが取り出した基板ホルダに保持される。基板を保持した基板ホルダは基板ホルダ搬送機によりめっき槽およびめっき処理に伴う各処理槽に搬送され、順次必要な処理が行われる。
【0004】
従来のディップ式のめっき装置においては、給電不良などのトラブルが発見された基板ホルダをメンテナンスするには装置の運転を中断しなければならず、装置の稼働率が落ちるという問題があった。給電不良が発見された基板ホルダは、ストッカに戻され、メンテナンスを行うまで使用が制限される。めっき処理中は安全を確保するために装置内へのアクセスが制限されているため、基板ホルダをメンテナンスする場合は、少なくとも直前に開始されためっき処理が終了するまで待つ必要があった。使用が制限された基板ホルダはめっき処理に用いることは出来ないため、結果として単位時間当たりのスループットの低下を招いていた。また、従来のディップ式のめっき装置においては、基板ホルダを収納するストッカは、めっき装置の一部として分離困難に組み込まれており、ストッカに収納された基板ホルダのメンテナンスが必要となった場合には、基板ホルダをストッカから手作業や専用のホイストで取り出していた。あるいは、基板ホルダをストッカから、外部からアクセス可能とした装置内にあるデリバリ槽やサービスエリアに搬送して、同様に手作業や専用のホイストで取り出すといった方法が用いられていた。そのような基板ホルダを装置から取り出したり、また、装置へ戻したりする作業は大変手間がかかっていた。基板の大型化により、手作業の労力が増大し、ホイストの大型化が必要となるなど、メンテナンスの手間がかかるという問題はますます顕著になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3979847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、基板ホルダへのアクセスが容易で、かつ、めっき装置でウェハの処理を行いながら、基板ホルダのメンテナンスが容易に行えるめっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るめっき装置は、基板のめっき処理を行うめっき処理部と、前記基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダを保持して搬送する基板ホルダ搬送部と、前記基板ホルダを収納するワゴンと、前記ワゴンを収納するワゴン設置部とを有し、前記ワゴンは、前記ワゴンを前記ワゴン設置部の内外に移動する移動手段を有することを特徴とする。
【0008】
前記めっき装置の前記ワゴンの移動手段はキャスタであってもよく、前記キャスタにより前記ワゴンを移動させてめっき装置から分離させてもよい。
【0009】
前記めっき装置の前記ワゴン設置部は、開閉可能な開閉部と、前記開閉部が開状態にある場合に、前記ワゴン設置部と前記めっき装置内部との雰囲気を遮断するための開閉自在なシャッタと、を有してもよい。
【0010】
前記めっき装置の前記基板ホルダ搬送部は、前記ワゴンにおける前記基板ホルダの有無及び/又は位置を検知するセンサを有してもよい。
【0011】
前記めっき装置は制御部と、前記制御部に対して前記ワゴンを移動させることを通知する通知手段を有してもよい。
【0012】
前記めっき装置の前記ワゴンは、前記ワゴン設置部において前記ワゴンを固定するラッチを有し、前記ワゴン設置部は、ラッチガイドを有してもよい。
【0013】
前記めっき装置の前記ワゴン設置部は、前記開閉部の開放を制限する開放部スイッチと、前記シャッタの開放を制限するシャッタスイッチとを有してもよく、前記開放部ロックスイッチと前記シャッタロックスイッチとは連動してもよい。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係るめっき方法は、ワゴンから基板ホルダを取り出し、基板を前記基板ホルダで保持し、前記基板を保持した前記基板ホルダを基板ホルダ搬送部によりめっき処理部に搬送し、前記めっき処理部においてめっき処理を行い、前記基板ホルダ搬送部が前記基板ホルダを前記ワゴンへ搬送し、前記基板ホルダを前記ワゴンに戻すこと、を自動で行うめっき装置の運転方法であって、前記めっき装置の自動運転中に前記ワゴンの移動手段により前記ワゴンを前記めっき装置外に移動可能なことを特徴とする。
【0015】
前記めっき方法において、前記ワゴンはキャスタを有し、前記ワゴンを前記キャスタにより移動させる際に前記ワゴンは、前記めっき装置から分離してもよい。
【0016】
前記めっき方法において、前記めっき装置の自動運転中、前記ワゴンを前記めっき装置外へ移動する前に、前記ワゴンの前記めっき装置外への移動を前記めっき装置の制御部に通知してもよい。
【0017】
前記めっき方法において、前記ワゴンを移動させる際に、前記ワゴンを前記めっき装置外に移動させる前に、シャッタを閉じて前記めっき装置内を外気から遮断し、前記ワゴンを前記めっき装置内に移動させた後に前記シャッタを開放して前記基板ホルダ搬送部が前記ワゴンにアクセス可能としてもよい。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係るめっき装置に用いられる基板ホルダを収納するワゴンは、基板ホルダを収納する基板ホルダ収納部と、移動手段とを有してもよく、前記移動手段により前記ワゴンを移動させてめっき装置から分離することを特徴とする。
【0019】
前記ワゴンは、底部にドレインパンを有してもよい。
【0020】
前記ワゴンは、アノードホルダを収納するアノードホルダ収納部をさらに有してもよい。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係るめっき装置に用いられるアノードホルダを収納するワゴンは、アノードホルダを収納するアノードホルダ収納部と、底部に設置されたドレインパンと、移動手段とを有し、前記移動手段により前記ワゴンを移動させてめっき装置から分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、めっき装置でウェハ処理を停止することなくストッカ(ワゴン)に収納された基板ホルダを取り出し可能となり、単位時間当たりのスループットを低下することなく、メンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るめっき装置の概要を示す側面図である。
【図2】図1のめっき装置の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板ホルダの構成を示す概要図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るワゴンの構成を示す概要図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るワゴンに切り欠き部を設けた一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るワゴン及びめっき装置に設けられたワゴン設置部との構成を示す概要図であり、(a)はワゴン設置部160の側面から見た図、(b)はワゴン設置部160をめっき装置の背面から見た図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るめっき装置のワゴンにローラを設け、ワゴン設置部にガイドレールを設けた一例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は、側面図である。
【図8】(a)は、本発明の一実施形態に係るめっき装置のワゴン150にラッチ159を設け、ワゴン設置部160の扉161にラッチガイド169を設けた例を示す概要図であり、(b)は、扉161のラッチガイド169を設けた面とラッチ159との関係を示す概要図であり、(c)は、ラッチガイド169を設けた扉161の側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るめっき装置の制御部200と基板搬送部140及びワゴン設置部160等との接続関係を示すブロックダイアグラムである。
【図10】本発明の一実施形態に係る基板ホルダ搬送部において、センサが設けられた例を示す概要図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るワゴンのワゴン設置部への設置及び取り出しの手順の概要を示す概要図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るワゴンのワゴン設置部への設置及び取り出しの手順の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係るめっき装置全体について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るめっき装置の概要を示す側面図であり、図2は図1のめっき装置の平面図である。
【0026】
本発明の一実施形態に係るめっき装置は、めっき装置フレーム100に、基板ホルダ110(図3参照)と、基板500を収納したFOUP(Front Opening Unified Pod)等の搬送容器を置くことができるロードポート170と、基板搬送ロボット180と、スピン・リンス・ドライヤ(SRD)190と、テーブル120と、めっき処理部130と、基板ホルダ搬送部140と、ワゴン150と、ワゴン設置部160と、アライナ195とを備える。
【0027】
基板搬送ロボット180は、搬送容器(図示せず)から基板500を取り出し、テーブル120へ搬送することができる。基板搬送ロボット180は、テーブル120から基板500を搬送し搬送容器に収納することもできる。基板搬送ロボット180は、好ましくは回転方向に動くことができ、ロードポート170とテーブル120とスピン・リンス・ドライヤ190とアライナ195との間で基板500を搬送することができる。スピン・リンス・ドライヤ190は、めっき処理された基板500をリンスしながら回転させ、最後に高速回転させて乾燥することができる。
【0028】
アライナ195は、基板500の円周方向の位置合わせを行う。すなわち、アライナ195は、基板500に設けられたノッチ(切り欠き)位置を検出し、指定された角度にノッチ位置を向けることにより、基板500を指定の位置に回転させる。また、アライナ195は基板500を回転させながら、基板500の中心の位置合わせを行う。
【0029】
なお、図1及び図2において、101は基板ホルダ搬送部を搬送するための走行軸であり、102は基板ホルダ開閉機構、103は制御部(基板ホルダ搬送部制御部を含む)である。
【0030】
基板ホルダ110は、基板500のめっき処理の際に、基板500の端部及び裏面をめっき液からシールし被めっき面を露出させて保持する。また、基板ホルダ110は、基板500の被めっき面の周縁部と接触し、外部電源から給電を与えるための接点を備えても良い。基板ホルダ110は、めっき処理前にワゴン150に収納され、めっき処理時には基板ホルダ搬送部140によりテーブル120、めっき処理部130の間を移動し、めっき処理後にワゴン150へと再び収納される。
【0031】
テーブル120には、基板ホルダ110を水平に載置することができる。テーブル120において、基板搬送ロボット180は、水平に載置された基板ホルダ110に対して、基板500の着脱を行う。
【0032】
図1及び図2に係るめっき装置においては、基板ホルダ110に保持された基板500をめっき槽のめっき液に垂直に浸漬し、めっき液をめっき槽の下から注入しオーバーフローさせつつめっきが行われる。めっき槽は、複数の区画を有することが好ましく、各々の区画では、1枚の基板500を保持した1つの基板ホルダ110がめっき液に垂直に浸漬され、めっきされる。各々の区画には基板ホルダ110の挿入部、基板ホルダ110への通電部、アノード、パドル攪拌装置、遮蔽板を備えていることが好ましい。アノードはアノードホルダに取り付けて使用し、基板500と対向するアノードの露出面は基板500と同心円状となっている。
【0033】
基板ホルダ110に保持された基板500は、めっき処理部130の各処理槽内の処理流体で処理が行われる。
【0034】
めっき処理部130の各処理槽の配置は、例えば、図1に示すめっき液を2液使用するタイプのめっき装置とする場合には、工程順に、前水洗槽、前処理槽、リンス槽、第1めっき槽、リンス槽、第2めっき槽、リンス槽、ブロー槽、といった配置としてもよいし、別の構成としてもよい。各処理槽の配置は工程順(X→X’方向)に配置することが、余分な搬送経路をなくす上で好ましい。めっき装置内部の、槽の種類、槽の数、槽の配置は、基板の処理目的により自由に選択可能である。
【0035】
基板ホルダ搬送部140は基板ホルダを懸架するアーム141を有し、アーム141は基板ホルダ110を垂直姿勢で保持するためのリフター142を有する。基板ホルダ搬送部140は、走行軸に沿って、テーブル120、めっき処理部130、ワゴン150の間をリニアモーターなどの搬送機構(図示せず)により移動可能である。基板ホルダ搬送部140は、基板ホルダ110を垂直姿勢で保持し搬送する。
【0036】
ワゴン150は、基板ホルダを収納するストッカであり、複数の基板ホルダ110を垂直状態で収納することができる。少なくともめっき処理部130内の各処理槽の区画と同じ数量の基板ホルダ110を収納でき、さらに給電不良が発見された等のめっき処理に不具合のある基板ホルダ110の予備として使用する複数の基板ホルダ110も収納することができると好ましい。ワゴン150は、ワゴン設置部160内に設置される。図1においてワゴン150はロードポート170が配置される箇所を装置前面とした場合の装置背面に隣接したワゴン設置部160に設置されているが、ワゴン設置部160の位置、すなわちワゴン150の設置位置は、これに限られず、例えばテーブル120とめっき処理部130との間に配置してもよい。しかし図1のようにテーブル120、めっき処理部130、ワゴン設置部160と順に配置することが単位時間当たりのスループットが高くなることから効率的である。なぜならば、装置の連続運転時には、基板500の一連の処理を終えて基板を受け渡した基板ホルダ110はすぐに次の処理すべき基板の受け取り処理を続けるため、基板ホルダ110に給電不良などの異常が発生しない限り、ワゴン150内部は空の状態であることが多い。ワゴン150の上を基板ホルダ110が通過することは搬送時間のロスにつながるためである。すなわち、上記のような通常の連続運転中には、基板ホルダ110はX地点よりも右側に搬送されることはない。また、設置位置をテーブル120とめっき処理部130の間とすると、ワゴン150をワゴン設置部160から出し入れ可能とするためにはめっき装置の側面(図1において手前側)に開口部を設け、そこからワゴン150を引き出す必要がある。しかし、一般的に隣の装置との間隔は1m程度しかないのでワゴン150を引き出して作業するためのスペースが限られ、そのスペースを移動可能でかつ複数の基板ホルダ110を収納可能なワゴン150を製作するのは困難である。装置背面はスペースの制限を受けにくいので、ワゴン150の設置場所として好ましい。
【0037】
以下において、本発明の一実施形態に係るめっき装置の動作の一例を説明する。
【0038】
(a)まず、基板ホルダ搬送部140が、ワゴン150上へと移動し、ワゴン150に収納された基板ホルダ110を取り出し保持する。
【0039】
(b)次に、基板ホルダ搬送部140は、基板ホルダ110を保持したままテーブル120まで移動し、基板ホルダ110がテーブル120の上に水平に設置される。
【0040】
(c)基板ホルダ110に、基板500をセットする。
【0041】
(d)基板ホルダ搬送部140が、基板ホルダ110を垂直に保持してめっき処理部130の前水洗槽へと移動する。基板ホルダ110に保持された基板500に対して、めっき処理部130の各処理槽において、めっきの各工程を行う。めっき処理はXからX’方向へと順次行われる。
【0042】
(e)基板ホルダ搬送部140は、めっき処理部130における各工程完了後、基板ホルダ110を垂直に保持したままテーブル120まで移動し、基板ホルダ110がテーブル120の上に水平に設置される。
【0043】
(f)基板ホルダ110から、基板500が取り外される。
【0044】
(g)連続処理を行う場合には、次の未処理の基板500をセットし、(d)から工程を繰り返す。
【0045】
(h)処理が完了した後、基板ホルダ搬送部140は、基板500が取り外された基板ホルダ110を垂直に保持してワゴン150へと移動し、ワゴン150へと基板ホルダ110を垂直に収納する。
【0046】
なお、上記の動作説明において(c)で基板500を基板ホルダ110に保持してから(d)で基板ホルダ110をめっき処理部130の前水洗槽へと移動する例を示したが、あくまで例示であり、例えばこれと異なり、基板500を基板ホルダ110に保持してからワゴン150へ搬送し、ワゴン150に仮置きしても良い。
【0047】
次に、本発明の一実施形態に係る基板ホルダ110の構成を説明する。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態に係る基板ホルダ110の構成を示す概要図である。
【0049】
基板ホルダ110は、その一端にハンドルバー111を備える。ハンドルバー111は、基板ホルダ搬送部140により保持される。ハンドルバー111は、基板ホルダ110が垂直状態から水平状態または水平状態から垂直状態へ姿勢を変換する際に回転自在となるよう丸棒形状である。
【0050】
ハンドルバー111は、めっき液が付着する事態に備え腐食に強いステンレス製であることがのぞましい。また、ステンレスでもめっき液による腐食に耐えられない場合にはステンレスの表面にクロムめっきやTiC等のコーティングをして腐食耐性を高めることが推奨される。なお、ハンドルバー111には、腐食耐性の高いチタンを用いることもできるが、一般に表面の摩擦抵抗が大きく、摺動に適した仕上げが必要である。
【0051】
また、基板ホルダ110の上部両端に、直方体形状または立方体形状のハンガー部112が設けられる。ハンガー部112は、基板ホルダ110をめっき処理部130の各処理槽内に配置する際に、ハンガー受け部材(図示せず)の上に配置することにより、基板ホルダ110を懸架するための支持部として機能する。なお、めっき槽が電解めっき槽である場合は、ハンガー部112に設けられた給電接点114と、ハンガー受け部材の電気接点が互いに接触することにより、外部電源から基板500の被めっき面に電流が供給される。給電接点114は、ハンガー受け部材に基板ホルダ110が懸架された際に、めっき槽のめっき液に接触しない箇所に設けられる。また、ハンガー部112は、基板ホルダ110をワゴン150に収納する際に、後述するワゴン150のハンガー受け部材152に支持される。
【0052】
ハンガー部112は直方体形状または立方体形状として、図3に示す矢印Aの方向から基板ホルダ搬送部140により力が加えられることにより、基板ホルダ110の移動時の振れが防止されるよう設計されてもよい。基板ホルダ110が垂直状態(図3に示す「下」方向に基板ホルダ110の下端部113が向く状態)のときに、ハンガー部112の上面は水平となる。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係るワゴン150の構成について、図面を参照して説明する。なお、ワゴン150は、装置の停止時(基板500の処理を行わない時)には基板ホルダ110をワゴン150にすべて収容し、運転時(基板500の処理を行う時)には必要な基板ホルダ110がワゴン150から取り出されると共に、使用しない基板ホルダ110または、給電不良が発見された等により基板500の処理に使用するには不具合がある基板ホルダ110もワゴン150に戻される。
【0054】
図4は、本発明の一実施形態に係るワゴン150の構成を示す概要図である。ワゴン150は、ワゴンの移動手段としてのキャスタ151と、複数の基板ホルダ110を収納するため、基板ホルダ110のハンガー部112を支持して基板ホルダ110を懸架するためのハンガー受け部材152と、ハンガー受け部材152に懸架された基板ホルダ110を振れ止めする基板ホルダ振れ止め部材153と、ワゴン設置部160内でワゴン110を固定するためのラッチなどで構成されるワゴン固定手段159と、フレーム155と、縦ローラ156と、横ローラ157と、ドレインパン158、ハンドル154とを有する。各構成の詳細については後述する。なお、ワゴン150において、複数の基板ホルダ110が収納される空間を、基板ホルダ収納部(図示せず)と呼ぶ。
【0055】
ワゴン150は移動手段としてキャスタ151を備えるため、ワゴン設置部160の内外、すなわちめっき装置の内外へと移動可能である。なお、図4においては、移動手段としてキャスタ151を示したが、例えば、移動手段としてワゴン150をスライドさせるレールを設けて、ワゴン150をワゴン設置部160の内外に、引き出しのように出し入れできるようにしても良い。めっき装置の側面(本実施例の場合は背面)の外側にまでワゴン150を引き出すことにより、めっき装置の内部のワゴン150から手やホイストで基板ホルダ110を持ち上げて取り出す場合に比べると、作業負担を軽くすることができる。さらに、図4に示すようにワゴン150にキャスタ151を設けることにより、めっき装置と完全に切り離すことができる。ワゴン150をめっき装置から切り離した後、そのまま工場内のメンテナンスを行う場所までワゴン150を移動させ、そこでメンテナンスを行うことができる。重量のある基板ホルダ110をワゴン150から引き出す際にも、メンテナンスエリアにある固定式のホイストを用いることができる。ワゴン150をめっき装置から切り離すことができないと、可搬式のホイストを装置の近くまで持ってくる必要があり、メンテナンス作業に手間がかかるが、本実施形態に係るめっき装置によれば、そうした手間がかからない。
【0056】
図5は、本発明の一実施形態に係るワゴンに切り欠き部を設けた一例を示す図である。
【0057】
ワゴン150は、図5に示すように、ハンガー受け部材152に懸架された基板ホルダ110をワゴン150から取り出しやすいように、また基板ホルダ110をワゴン150のハンガー受け部材152へと懸架しやすいように、フレーム155の側面の一部に切り欠き部155aを設けてもよい。これにより、ワゴン150から基板ホルダ110を出し入れする際に基板ホルダ110を高く持ち上げる必要がなくなり、基板ホルダ110の出し入れが容易となる。
【0058】
図6は、本発明の他の実施形態に係るワゴン150と、めっき装置に設けられたワゴン設置部160との構成を示す概要図であり、(a)はワゴン設置部160の側面から見た図、(b)はワゴン設置部160をめっき装置の背面から見た図である。
【0059】
図6のめっき装置は、装置背面付近に、ワゴン150を設置可能なワゴン設置部160を備える。
【0060】
ワゴン設置部160は、基板ホルダ搬送部140の走行軸の延伸方向でめっき装置背面に隣接する場所に設置されると、上述したように、空のワゴン150の上を基板ホルダ搬送部140がただ通り過ぎることによる搬送時間のロスがなくなり、タクトタイムが減少するので好ましい。ワゴン設置部160は、めっき装置背面に隣接した場所に限定されず、例えば図2のテーブル120とリンス槽・ブロー槽との間に設置しても良いが、ワゴン150をめっき装置外に引き出す場合にはめっき装置の側面に引き出すことになり、めっき装置の側面は、他の装置が隣接するなどしてスペースが制限される場合があるため、本実施例のように背面側に引き出せるようにすることが望ましい場合がある。
【0061】
ワゴン設置部160は、ワゴン150が出入する開口部に設けられた扉161、扉161が開けられたときにめっき装置内に外気が入り込む隙間を最小にするために、開閉部として機能するシャッタ162を有する。扉161には、シャッタ162と連動したロック機構を備え、シャッタ162が開状態の時に扉が開くことがないようにしても良い。
【0062】
ロック機構としては、例えばワゴン設置部160に、シャッタ162をロックするためのスイッチ165aと、扉161をロックするためのスイッチ165bの2つのスイッチ165を有しても良い。スイッチ165は、アクチュエータ付きのスイッチであることが望ましい。スイッチ165は、例えばシャッタ162あるいは扉161に取り付けられたアクチュエータ(図示せず)が挿入されることによりシャッタ162あるいは扉161が閉められたことを検知し、アクチュエータ(図示せず)が抜けないようにロックし、またロック解除信号によりロックを解除することができる。シャッタ162はスイッチ165aがロック状態では開けることは出来ず、また、扉161は扉ロックスイッチ165bがロック状態では開けることは出来ない。スイッチ165aとスイッチ165bは連動し、スイッチ165aがロック状態でなければ、スイッチ165bはロック解除できない。逆に、スイッチ165bがロック状態でなければ、スイッチ165aはロック解除できない。これにより、扉161及びシャッタ162のいずれかが開状態にある際には、必ずもう一方は閉状態となり、めっき処理部130や基板ホルダ搬送部140の領域への外気流入が最小化される。
【0063】
スイッチ165aとスイッチ165bは、例えばソレノイド付安全スイッチであってよい。
【0064】
なお、ワゴン設置部160に扉161を設ける代わりに、めっき装置の背面パネルをワゴン150と一体にして扉として用いても良い。
【0065】
シャッタ162はスペース効率を考慮して、シャッタ回転機構162aを設けて跳ね上げ式とすることが望ましい。また、ワゴン設置部160はシャッタ162の開閉をスイッチ165aにより検出する。
【0066】
ワゴン150をワゴン設置部160に対して強力に固定するラッチなどのワゴン固定手段159を設け、ワゴン150がワゴン設置部160に設置されている際は、ワゴン150が所定の位置から動かないようにすることが望ましい。ワゴン150の先端あるいはワゴン設置部160のワゴン150が突き当たる部分にワゴン150とワゴン設置部160との接触時の衝撃を緩和するためのゴム等の弾性体167を設けことが好ましい。ワゴン150をワゴン設置部160に設置する際はワゴン150を弾性体167に向かって押し込み、ワゴン固定手段159で固定するのが望ましい。
【0067】
また、ワゴン150の出し入れの際にワゴン150の位置調整及び高さ調整を行うため、ワゴン設置部160は、ガイドレール163を有してもよい。
【0068】
図7は、本発明の一実施形態に係るワゴン150にローラを設け、ワゴン設置部160にガイドレール163を設けた一例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は、側面図である。図7に示すように、ワゴン150がキャスタ151とは別の車輪として縦ローラ156を有し、ワゴン設置部160にはガイドレール163を設けて、ワゴン150をワゴン設置部160に押し入れたときに縦ローラ156がガイドレール163に乗り上げるようにすることが望ましい。このとき、キャスタ151は床面を離れる。ガイドレール163を設けずにキャスタ151が床に接したままの場合、床面と装置本体の高さはめっき装置一台一台で差があるのが通例であるため、あるめっき装置に適した高さに調整したワゴン150をワゴン設置部160を有する別のめっき装置で使うことができなくなる場合がある。ガイドレール163を設け、ガイドレール163とめっき装置本体各部の高さを共通にしておけば、ワゴン150をガイドレール163に乗り上げさせることにより、ワゴン150を複数のめっき装置で共通に使用できる。また、複数のワゴン150を同じめっき装置で使用できる。
【0069】
ワゴン150の出し入れをスムーズに行うためにガイドレール163はガイド163aを有し、ワゴン150はガイド163aに対して側面方向に接触しながら転がる複数の横ローラ157を有してもよい。横ローラ157が、ガイド163aと接触し、キャスタ151の側面方向への移動を規制することにより、キャスタ151の位置を調整することができる。
【0070】
ガイドレール163には、ワゴン150を乗り上げやすいように、スロープ163bを設けてもよい。また、ワゴン150がガイドレール163へ乗り上げる際に、横ローラ157がスムーズにガイド163aと接することができるよう、スロープ163cを設けてもよい。ガイド163aの幅を、スロープ163cから離れる方向に延伸するに従って広くすることにより、横ローラ157とガイド163aとのクリアランスを徐々に狭くしてもよい。これにより、横ローラ157がスムーズにガイド163aに接することができるようにしつつ、ワゴン150の位置をより正確な位置に固定調整できる。
【0071】
なお、図7と異なり、ワゴン150に縦ローラ156を設ける代わりに、ガイドレール163上にボールキャスタ(図示せず)を設けて、ワゴン150をワゴン設置部160に押し入れたときにボールキャスタ上をワゴン150が移動するように構成してワゴン150がガイドレール163に乗り上げるようにしてもよい。このとき、ワゴン150側にローラを設けるとともにワゴン設置部160にガイドを設けて、ワゴン150のワゴン設置部160での位置調整を行えるようにしてもよい。
【0072】
ガイドレール163の下部には、ワゴン150の重さを支えるための支柱164を設けてもよい。支柱164は高さ調整のためのアジャスタ機能を備えてもよい。めっき装置全体の床面からの高さはめっき装置のアジャスタ168により調整される。図6においてガイドレール163の左端はめっき装置本体に固定され、支柱164のアジャスタ機能により、ガイドレール163は平行になるように調整される。
【0073】
なお、ワゴン設置部160は、ワゴン150の有無、およびワゴン150が正しい位置に固定されたことを判別するための、赤外線センサやカメラなどのワゴン検知手段(図示せず)を有してもよい。また、ワゴン150の有無を作業者に知らせるためのランプ等の表示手段を有してもよい。
【0074】
ワゴン検知手段によりワゴン150がワゴン設置部160において正しい位置に設置され、なおかつ扉161をロックするためのスイッチ165bがロック状態であることが確認できなければ、シャッタ162をロックするためのスイッチ165aにロック解除信号を送らない、すなわちシャッタ162が開かないように制御する。これにより、ワゴン150が正しくない位置に設置されたことによる基板ホルダ110の搬送トラブルや、外気の流入を防ぐことができる。
【0075】
ワゴン150は、図8に示すように、扉161側となる側面に、ラッチハンドル159aを有する。ラッチハンドル159aとワゴン設置部160のラッチ受け159bでラッチ(ワゴン固定手段)159を構成し、ワゴン150をワゴン設置部160に対して固定する。さらに、扉161のワゴン150と対向する面には、ラッチハンドル159aに対応するラッチガイド169を有しても良い。
【0076】
図8(a)は、本発明の一実施形態に係るめっき装置のワゴン150にラッチハンドル159aを設け、ワゴン設置部160の扉161にラッチガイド169を設けた例を示す概要図であり、(b)は、扉161のラッチガイド169を設けた面とラッチハンドル159aとの関係を示す概要図であり、(c)は、ラッチガイド169を設けた扉161の側面図である。
【0077】
ラッチハンドル159aを、ラッチ受け159bへと引っ掛けることにより、ワゴン150をワゴン設置部160の所定位置へと固定することができる。なお、弾性体167の圧縮反力によりラッチハンドル159aがラッチ受け159bに押されながら掛けられる。
【0078】
ラッチガイド169は、扉161の内側、すなわちワゴン150がワゴン設置部160に設置されている際にワゴン150と対向する面に形成される。ラッチガイド169は、図8においては、扉161からせり出した略水平方向に延伸する板状の凸部であり、その間にラッチハンドル159aが収まる形状となっている。ワゴン150を、ワゴン設置部160に設置し、扉161を閉めるためには、ラッチハンドル159aを略水平方向に向いた状態にし、ラッチガイド169の間に収まるようにしなければならない。ラッチハンドル159aを略水平方向に向いた状態とするには、ワゴン150をワゴン設置部160の所定の位置まできちんと押しこみ収納する必要がある。このとき、ラッチ159により、ワゴン150はワゴン設置部160の所定の位置に固定される。そして、ラッチハンドル159aを略水平方向に向いた状態としないと、ラッチハンドル159aとラッチガイド169とが干渉して、扉161が閉まらない。そのため、ワゴン150を所定の位置まで押し込まないと、扉161が閉まらない構造となっている。これにより、ワゴン150をワゴン設置部160の所定位置に必ず設置することができ、固定することができる構造となっている。なお、ラッチハンドル159aがラッチ受け159bの正しい位置に掛けられたことを検出するスイッチ(図示せず)を設け、さらにラッチハンドル159aが動かないように固定するアクチュエータ(図示せず)を設置しても良い。
【0079】
ワゴン150は、図4及び図6に示すように、下部にドレインパン158を有する。図6に示すように、めっき処理部130とワゴン設置部160との間で基板ホルダ搬送部140に保持された基板ホルダ110を出し入れするための開口部166が、ワゴン設置部160の上方に設けられている。開口部166は、ワゴン150のドレインパン158の大きさよりも小さくなっている。これにより、シャッタ162が開いている際に、上方から滴が垂れた場合であっても、ワゴン150のドレインパン158が受け皿となって滴を受けるため、滴が床面に落ちて床面を汚染することはない。
【0080】
ワゴン設置部160は、ワゴン150を内部に設置できる大きさであれば良いが、シャッタ162が開状態の時に、外気を無駄に吸気しないよう、ワゴン150を設置した際にワゴン150とワゴン設置部160との間に大きなスペースが空かない大きさであることが好ましい。ワゴン150が設置されているか否かにかかわらずめっき装置内に外気を吸い込む口の面積変化を最小にするため、また、内部の空気や飛沫がめっき装置の外に飛び出さないようにするため、ワゴン150の周囲を閉止する仕切り(図示せず)を設けてもよい。
【0081】
本発明の一実施形態に係るめっき装置は、めっき装置の運転中であってもめっき装置の運転を中断することなく、ワゴン150を少なくともめっき装置の外(外面パネルの外側)に引き出すことができることを特徴とする。これにより、めっき装置の稼働率を落とすことなく、ワゴン150を取り出し、基板ホルダ110のメンテナンスを行うことができる。めっき装置の運転中にワゴン150を引き出す(あるいは戻す)ためには、概して言うと、めっき装置を運転する際の安全面の配慮と、ワゴン150にアクセスすることによるめっき装置内部の気流の乱れを最小化するための工夫をすることが望ましい。これらの安全面や気流設計上の配慮は、めっき装置の非運転中にワゴン150にアクセスする場合にも求められるが、めっき装置の運転中に行う場合により強く求められる。
【0082】
基板ホルダ搬送部140がまさに基板ホルダ110をワゴン150に収納しようとしている場合や、基板ホルダ110をワゴン150から取り出そうとしている場合には、ワゴン150をめっき装置外に引き出すことができないようにめっき装置を制御することが望ましい。そのため、めっき装置は、基板ホルダ搬送部制御部210を有し、基板ホルダ搬送部制御部210を通じて基板ホルダ搬送部140の動作状況を把握し制御することが望ましい。
【0083】
図9は、本発明の一実施形態に係るめっき装置の制御部200と基板搬送部140及びワゴン設置部160等との接続関係を示すブロックダイアグラムである。
【0084】
本発明の一実施形態に係るめっき装置においては、図9に示すように、制御部200と、制御部200内に基板ホルダ搬送部制御部210と、ワゴン設置部制御部220と、通知制御部230と、表示制御部240とを有する。
【0085】
基板ホルダ搬送部制御部210は、基板ホルダ搬送部140を監視制御し、また、基板ホルダ搬送部140に取り付けられたセンサ140aの検知内容を受け取る。
【0086】
ワゴン設置部制御部220は、ワゴン設置部160の各構成の監視制御、すなわち扉161、扉161をロックするためのスイッチ165b、シャッタ162、シャッタ162をロックするためのスイッチ165a等の状況を把握するとともに各構成の動作を制御する。
【0087】
通知制御部230は、ワゴンアクセス通知手段250からの、アクセス通知を受け取る。
【0088】
表示制御部240は、ワゴン設置部制御部220や基板ホルダ搬送部制御部210から受領したワゴン設置部160へのアクセスの可否についての情報に基づき、アクセス可否表示手段260に対して、ワゴン設置部160へのアクセスの可否の判断を表示させる。
【0089】
本発明の一実施形態に係るめっき装置は、ワゴン取り出し作業を開始すること、及びワゴンを戻す作業が終了したことを通知制御部230に通知し、基板ホルダ搬送部制御部210を通じて、基板ホルダ搬送部140のワゴン設置部160へのアクセスを制限するためのワゴンアクセス通知手段250(以下、通知手段250と称する)を有してもよい。通知手段250は、処理命令を入力するタッチパネルのボタンであってもよく、めっき装置の背面近傍に専用のボタンを設けても良い。通知手段250により、通知制御部230へワゴン150へのアクセスについての通知がなされ、通知制御部230は基板ホルダ搬送部制御部210へと通知を伝達し、基板ホルダ搬送部制御部210は基板ホルダ搬送部140の基板ホルダ設置部160へのアクセスを制限する。
【0090】
通知手段250により、これからワゴン150にアクセスすることを通知制御部230に通知すると、通知制御部230はワゴン設置部制御部220へと通知を伝達し、ワゴン設置部制御部220は、ワゴン設置部160の状況や、基板ホルダ搬送部制御部210により把握された基板ホルダ搬送部140の動作状況に応じて前記ワゴン設置部160へのアクセスの可否を判断し、アクセス可否表示手段260により、アクセス可否の判断結果を作業者に通知する。
【0091】
アクセス可否表示手段260は、例えば、ランプ、GUI画面、ブザーなどであり、これらの表示手段により、装置使用者へとアクセスの可否を通知する。また、アクセス可否表示手段260は、ワゴン150のワゴン設置部160への設置の有無等を表示してもよく、これにより、装置使用者が容易にワゴン設置部160へのアクセスの可否等、ワゴン設置部160の状況を把握することができる。
【0092】
基板ホルダ搬送部140が基板ホルダ110をワゴン150に収納する動作中などは、ワゴン150へのアクセスは禁止され、アクセス不可とワゴン設置部制御部220が判断する。アクセス不可と装置が判断した場合には、扉161が開くことがないように扉161は確実にロックされる。
【0093】
ロックの方法としては、前述したシャッタ162をロックするためのスイッチ165aと、扉161をロックするためのスイッチ165bで構成されるスイッチ165が用いられる。
【0094】
扉161をロックするためのスイッチ165bの不具合などの何らかの理由で、例えばシャッタ162が開いているにも関わらず扉161が開いたなどの事態に備え、扉161に開閉センサ(図示せず)を設け、これにより扉161の開閉を検知してエラーを出すインターロックを設けてもよい。
【0095】
また、基板ホルダ搬送部140は、図10に示すように、ワゴン150内の基板ホルダ110の数及び位置を検出するセンサ140aを有してもよい。めっき装置の電源を入れて、初期化動作を行うと、センサ140aはワゴン150内に収納された基板ホルダ110の数及び位置を検出する。その後めっき処理等の命令に従い、基板ホルダ搬送部140が基板ホルダ110を取り出す。装置の制御部は、ワゴン150内のどの位置の基板ホルダ110を取り出して使用しているかを常に把握している。従って、ワゴン150を装置から取り出す直前にも、ワゴン150内にいくつ基板ホルダ110が入っているかを装置の制御部に認識させておくことができる。ただしワゴン150を装置から取り出す直前にも再度基板ホルダ110を検出してチェックしても良い。次にワゴン150を取り出して基板ホルダ110をメンテナンスし、再びワゴン150をワゴン設置部160に戻す。ワゴン150がワゴン設置部160に戻されると、センサ140aがワゴン150内の基板ホルダ110を検出する。この時、ワゴン150を取り出す前にワゴン150内にあった基板ホルダ110の数よりも、ワゴン150を戻した後で検出した基板ホルダの数の方が多い場合、警告を発しても良い。なぜならば、基板ホルダの数が増えることで、装置が使用している基板ホルダ110を戻す場所がなくなるためである。さらに、ワゴン150を装置から取り出して基板ホルダ110をメンテナンスし、メンテナンスした基板ホルダ110をワゴン150に戻す場合は、基板ホルダ110を元と違う場所に戻すことを許容しても良い。そのためには、上述したようにワゴン150を戻した際に基板ホルダ110を検出し、ワゴン150内の基板ホルダ110の場所情報を更新するようにする。もちろん、基板ホルダ搬送部140が基板ホルダ110をワゴン150内に戻す際に、何かの理由で、基板ホルダ110がすでにある位置に戻そうとした場合も、すでにある基板ホルダ110をセンサ140aが検出し、動作を中止させることができる。なお、センサ140aの設置箇所は、基板ホルダ搬送部140に限られず、ワゴン150内の基板ホルダ110の数及び位置を把握できる箇所に設置されればよい。
【0096】
ワゴン150をワゴン設置部160に出し入れする動作を確実にするために、基板ホルダ搬送部制御部210により、ワゴン150をワゴン設置部160へと出し入れする際には基板ホルダ搬送部140のワゴン設置部160上方への移動を制限しても良い。基板ホルダ搬送部140のワゴン設置部160上方への移動制限は、例えば基板ホルダ搬送部140を移動させるサーボモータのドライバにより行われる。
【0097】
以下において、図11を参照して、ワゴン150のワゴン設置部160への設置及び取り出しの手順の概略を説明する。
【0098】
図11は、本発明の他の実施形態に係るワゴン150のワゴン設置部160への設置及び取り出しの手順を示す概要図である。
【0099】
図11(A)において、ワゴン150をワゴン設置部160の扉161付近へと移動する。
【0100】
図11(B)において、扉161が開く。扉161は、手動で開いても良いし、ワゴン150の接近を検知して自動で開くようにしても良い。
【0101】
図11(C)において、ワゴン150を移動させて、ワゴン設置部160内の所定の位置に収納する。
【0102】
図11(D)において、ワゴン150がワゴン設置部160内の所定の位置に収納されていることを確認し、扉161を閉じる。
【0103】
図11(E)において、ワゴン150がワゴン設置部160内の所定の位置に収納されて、扉161を閉じたことが確認されると、ワゴン設置部160のシャッタ162が開く。
【0104】
シャッタ162が開いたことを確認して、ワゴン150のめっき処理に用いる準備が完了したことを表示する表示手段を備えても良い。ワゴン
【0105】
また、ワゴン150をワゴン設置部160から取り出す処理は、以下の通りである。
【0106】
図11(E)において、扉161が閉じていることを確認してシャッタ162を閉じる。
【0107】
図11(D)において、扉161を開ける。
【0108】
図11(C)において、ワゴン150のワゴン設置部160の外への移動を開始する。
【0109】
図11(B)において、ワゴン150の全体がワゴン設置部160の外へと移動し、ワゴン150とワゴン設置部160との分離が完了する。
【0110】
図11(A)において、ワゴン150がワゴン設置部160との分離を完了したことを確認して、扉161を閉じる。
【0111】
次に、図12を参照して、運転中にワゴンを取り出し、戻す動作をより詳細に説明する。
【0112】
S101は、通常運転時の状態を示す。S101においては、ワゴン150がワゴン設置部160に設置され、扉161は閉状態で、扉161はロックされ、シャッタ162は開状態にある。
【0113】
基板ホルダ110にメンテナンスの必要が生じた場合など、ワゴン150をワゴン設置部160より取り出す必要が生じた場合、通知手段250により、取出し開始が通知され、通知制御部230は、取出し開始通知を受領する(S102)。
【0114】
通知制御部230が取出し開始通知を受領すると、基板ホルダ搬送部制御部210は、基板ホルダ搬送部140の状態を確認する。ワゴン設置部制御部220は、基板ホルダ搬送部制御部210が確認した基板ホルダ搬送部140の状況、例えば、ワゴン150から基板ホルダ110を取出し中であるか、または、ワゴン150へ基板ホルダ110を収納中であるか等から、ワゴン150へのアクセスの可否を、判断する(S103)。
【0115】
ワゴン設置部制御部220がワゴン150へアクセスできないと判断すると、表示制御部240により、アクセス可否表示手段260には、アクセスが不可である旨が表示される(S104)。この場合、扉161はロックされたままであり、扉161を開けることは出来ないが、そのまま待機し、基板ホルダ搬送部140の状況が変化するなどして状況が変化したことにより、ワゴン150へのアクセスが可能と判断されると、S105へと移行する。
【0116】
ワゴン設置部制御部220がワゴン150へアクセス可能であると判断すると、表示制御部240により、アクセス可否表示手段260には、アクセスが可である旨が表示される(S105)。シャッタ162は閉じられ、スイッチ165aがロック状態となり、扉161のスイッチ165bがロック解除状態となり、インターロックが解除される。
【0117】
これにより、ワゴン設置部制御部220は、扉161の開放を許可する(S106)。
【0118】
扉161が開放され、ワゴン150へのアクセスが可能となると、手動によりラッチ159を解除することが可能となる。ワゴン設置部160から、ワゴン150が取り出される動作は、ワゴン設置部160に設けたセンサ等を通じ、ワゴン設置部制御部220により検知される(S107)。
【0119】
ワゴン150をワゴン設置部160より取り出し後、扉161が閉められ、ワゴン設置部制御部220により、扉閉め動作が検知される(S108)。
【0120】
ワゴン設置部160から取り出されたワゴン150に収納された基板ホルダ110を、ワゴン150から取り出し、メンテナンスを行う(S109)。
【0121】
メンテナンス完了後、ワゴン150をワゴン設置部160へと設置するため、扉161を開ける。ワゴン設置部制御部220により、扉開け動作が検知される。(S110)
【0122】
ワゴン150をワゴン設置部160へと設置し、ラッチ159により固定する。ラッチ159でワゴン150がワゴン設置部160内に固定されたことを、ワゴン設置部制御部220により検知する。(S111)
【0123】
ワゴン150をワゴン設置部160へと設置し、ラッチ159により固定した後に、扉161を閉める。扉閉め動作が、ワゴン設置部制御部220により検知される(S112)。
【0124】
通知手段250により、ワゴン150の設置が通知されると、通知制御部230は、ワゴン設置完了通知を受領する(S113)。
【0125】
ワゴン設置部制御部により、スイッチ165bがロック状態となり、扉161がインターロックされ、スイッチ165aがロック解除状態となり、シャッタ162が開かれる(S114)。S105でシャッタ162が閉じられた後、シャッタ162はステップS114に至るまで、外気を遮断するために閉じられたままである。
【0126】
なお、本発明の一実施形態に係るワゴン150は基板ホルダ110を収納するものとして記載したが、電解めっきを行うめっき装置において用いる場合、めっき槽に設置されるアノードホルダを収納するものであっても良いし、また基板ホルダ110とアノードホルダの両方を収納するものであっても良い。ワゴン150において、アノードホルダ110が収納される空間を、アノードホルダ収納部(図示せず)と呼ぶ。基板ホルダ110とアノードホルダの両方を収容する場合、基板ホルダ収納部が、アノードホルダ収納部としても機能し、アノードホルダをも収納することとなる。アノードホルダは、アノードを保持し、めっき液を保有するめっき槽内に、アノードと、基板ホルダ110に保持した基板500とが両者の面が平行になるように対向して配置され、めっき電源によりアノードと基板500との間に通電することで基板ホルダ110から露出している基板500の被めっき面に電気めっきを行うよう構成される。アノードホルダの形状は、例えば、図3で示した基板ホルダ110と外形は類似しており、ハンガー部とハンドルバーを有し、本体にアノードを保持する。アノードは、アノードホルダの内部で図3と同様にハンガー部に設けられた給電接点と電気的に接続されている。
【0127】
アノードホルダのワゴンへの収納は、以下のように行う。まず、アノードホルダをめっき槽から引き上げる。アノードホルダには通常、陽極スライム拡散等を防ぐため、アノードバックが付けられているが、アノードホルダを引き上げたときはアノードホルダのアノードバックから何分間にもわたってめっき液が滴り落ち続ける。めっき液の滴下の間隔が広がってからリンス槽ですすぎ洗いし充分に水が落ちてからワゴンに移す。ワゴン移動後も液の滴下が続くため、床を汚染しないよう、ドレインパンがワゴン下部に設置される。
【0128】
これにより、基板ホルダを本発明の一実施形態に係るワゴン150に基板ホルダ110を収納する場合と同様、めっき装置の外側にまでワゴン150を引き出すことにより、めっき装置の内部のワゴン150から手やホイストで基板ホルダ110を持ち上げて取り出す場合に比べると、作業負担を軽くすることができ、アノードホルダのメンテナンスを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0129】
100 めっき装置フレーム
110 基板ホルダ
120 テーブル
130 めっき処理部
140 基板ホルダ搬送部
150 ワゴン
160 ワゴン設置部
500 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のめっき処理を行うめっき処理部と、
前記基板を保持する基板ホルダと、
前記基板ホルダを保持して搬送する基板ホルダ搬送部と、
前記基板ホルダを収納するワゴンと、
前記ワゴンを収納するワゴン設置部とを有し、
前記ワゴンは、前記ワゴンを前記ワゴン設置部の内外に移動する移動手段を有する
ことを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記移動手段はキャスタであり、前記キャスタにより前記ワゴンを移動させてめっき装置から分離させることを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記ワゴン設置部は、開閉可能な開閉部と、前記開閉部が開状態にある場合に、前記ワゴン設置部と前記めっき装置内部との雰囲気を遮断するための開閉自在なシャッタと、を有することを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置。
【請求項4】
前記基板ホルダ搬送部は、前記ワゴンにおける前記基板ホルダの有無及び/又は位置を検知するセンサを有することを特徴とする請求項1または2に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記基板ホルダ搬送部及び前記ワゴン設置部の状態を監視制御する制御部と、前記制御部に対して前記ワゴンを移動させることを通知する通知手段を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記ワゴンは、前記ワゴン設置部において前記ワゴンを固定するラッチハンドルを有し、前記ワゴン設置部は、ラッチ受けを有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項7】
前記ワゴン設置部は、前記開閉部の開放を制限する開放部スイッチと、前記シャッタの開放を制限するシャッタスイッチとを有し、前記開放部ロックスイッチと前記シャッタロックスイッチとは連動していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
ワゴンから基板ホルダを取り出し、
基板を前記基板ホルダで保持し、
前記基板を保持した前記基板ホルダを基板ホルダ搬送部によりめっき処理部に搬送し、
前記めっき処理部においてめっき処理を行い、
前記基板ホルダ搬送部が前記基板ホルダを前記ワゴンへ搬送し、前記基板ホルダを前記ワゴンに戻すこと
を自動で行うめっき方法であって、
前記めっき装置の自動運転中に前記ワゴンの移動手段により前記ワゴンを前記めっき装置外に移動可能なことを特徴とするめっき方法。
【請求項9】
前記ワゴンはキャスタを有し、前記ワゴンを前記キャスタにより移動させる際に前記ワゴンは、前記めっき装置から分離することを特徴とする請求項8記載のめっき方法。
【請求項10】
前記めっき装置の自動運転中、前記ワゴンを前記めっき装置外へ移動する前に、前記ワゴンの前記めっき装置外への移動を前記めっき装置の制御部に通知すること、をさらに含むことを特徴とする請求項8または9に記載のめっき方法。
【請求項11】
前記ワゴンを移動させる際に、前記ワゴンを前記めっき装置外に移動させる前に、シャッタを閉じて前記めっき装置内を外気から遮断し、前記ワゴンを前記めっき装置内に移動させた後に前記シャッタを開放して前記基板ホルダ搬送部が前記ワゴンにアクセス可能とすることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載のめっき方法。
【請求項12】
めっき装置に用いられる基板ホルダを収納するワゴンであって、
基板ホルダを収納する基板ホルダ収納部と、
移動手段とを有し、
前記移動手段により前記ワゴンを移動させてめっき装置から分離することを特徴とするワゴン。
【請求項13】
底部にドレインパンをさらに有することを特徴とする請求項12に記載のワゴン。
【請求項14】
前記基板ホルダ収納部は、アノードホルダを収納可能であることを特徴とする請求項12または13に記載のワゴン。
【請求項15】
めっき装置に用いられるアノードホルダを収納するワゴンであって、
アノードホルダを収納するアノードホルダ収納部と、
底部に設置されたドレインパンと、
移動手段とを有し、
前記移動手段により前記ワゴンを移動させてめっき装置から分離することを特徴とするワゴン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−112026(P2012−112026A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264648(P2010−264648)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)