説明

めっき装置およびめっき方法

【課題】 めっき液中の異物混入を防止してめっき不良率を低減すると共に、機構部分の腐食対策も行え、エア溜まりによるめっき未着を防止できるめっき装置を提供する。
【解決手段】 一側壁部が開口された処理槽31を有する処理ユニット34と、保持面32aに複数の被めっき物10が着脱可能に保持されるキャリアセットユニット32と、めっき液タンク38と、めっき液タンク38からめっき液を処理槽31内に供給するポンプ40と、処理槽31内に送り込まれるめっき液を濾過するフィルター40と、処理槽31内のめっき液をめっき液タンク38に戻す排出管41と、排出管41に介装されたバルブ42とを具備し、保持面32aに複数の被めっき物10が保持されたキャリアセットユニット32を、保持面32aに保持された被めっき物10が処理槽31内に臨むようにして処理槽31の開口された部分35を覆って装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の個片部品をめっきするめっき装置およびめっき方法に関し、より詳細にはベースと、ベースから突出するリードとを有する電子部品をめっきするめっき装置およびめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレーザダイオード等の端子として用いられる電子部品として、図9に示すような構成のものがある。
電子部品10は、金属製部材から成るベース11に貫通孔12,12が形成され、これら貫通孔12,12に、リード14,14が挿通されてガラス封着されている。また、金属製部材の一面側にはアースリード15が当接して接合されている。
そして、このような電子部品には、防錆等のためにめっき皮膜を形成する必要がある。
【0003】
上記の電子部品にめっきを施す際に用いられる、従来から知られているめっき治具を図10に示す。
めっき治具20は、複数個の電子部品10のリード14を収納する貫通孔17が形成されたガイド板16と、ガイド板16の下方に設けられた導電性不織布19と、導電性不織布19の下方に設けられた負電極21および負電極板22とを具備している。また、負電極板22内の電子部品10に対応する各位置には、電子部品10のリード14を確実に導電性不織布19に当接させるために、リード14を引きつけるマグネット23が設けられている。
このようなめっき治具20は、正電極を有するめっき液中に浸漬され、導電性不織布19を介して負電極21に当接している電子部品10にめっきが施される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−213497号公報(図4、図5等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来のめっき治具20では、電子部品10の各リード14やアースリード15の長さが正確に揃っていなくてもリード14が確実に負電極21側に接触できるという利点があった。
しかし、このめっき治具20では導電性不織布19や電子部品10を保持する機構部分ごとめっき液中に浸漬することとなるので、めっき液中に導電性不織布19あるいは機構部分に付着していた異物が分離して混入してしまい、製品に異物が付着するおそれがあるという課題がある。
また、電子部品10を保持する機構部分がめっき液中に浸漬されると、機構部分が腐食してしまうおそれもある。そこで、機構部分がめっき液中に浸漬しないように、めっき治具20全体を上下ひっくり返して電子部品10および導電性不織布19だけをめっき液中に浸漬することも考えられる。しかし、かかる場合には、電子部品10のベース11が邪魔になって、ベース11の上面(めっき液中では下面になっている)のエアが抜けにくく、めっき未着等のおそれがあるという課題もある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、めっき液中の異物混入を防止してめっき不良率を低減すると共に、機構部分の腐食対策も行え、エア溜まりによるめっき未着を防止できるめっき装置およびめっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、一側壁部が開口された処理槽を有する処理ユニットと、保持面に複数の被めっき物が着脱可能に保持されるキャリアセットユニットと、めっき液タンクと、該めっき液タンクからめっき液を前記処理槽内に供給するポンプと、前記処理槽内に送り込まれるめっき液を濾過するフィルタと、前記処理槽内のめっき液を前記めっき液タンクに戻す排出管と、該排出管に介装されたバルブとを具備し、前記保持面に複数の被めっき物が保持された前記キャリアセットユニットを、保持面に保持された被めっき物が処理槽内に臨むようにして前記処理槽の開口された部分を覆って装着することにより、前記キャリアセットユニットと前記処理ユニットとで密閉されためっき処理槽が形成されることを特徴としている。
この構成を採用することにより、処理槽の側面から被めっき物を進入させて浸漬させることになるので、機構部分全体をめっき液中に浸漬させなくともよく機構部分の腐食防止を図れる。また、めっき終了後は一旦めっき液をめっき液タンクに戻し、新たな被めっき物にめっきを施す場合には、フィルタを通して異物を濾過しためっき液を処理槽内に導入してめっきを施すので、異物が被めっき物に付着するのを防止でき、不良率の低減を図ることができる。さらに、被めっき物に対するエア抜きも確実であり、めっき未着を防止できる。
【0008】
また、前記キャリアセットユニットは、前記複数の被めっき物を着脱する際には、被めっき物を保持する保持面が上方を向くように位置し、保持した複数の被めっき物を前記処理槽内に臨ませる際には、前記保持面が側方を向いて前記処理槽の開口された部分と対峙するようにキャリアセットユニット全体を回動させる回動手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、保持面が上方を向いている状態で被めっき物を着脱できるので、被めっき物のキャリアセットユニットへの着脱が容易となる。
【0009】
さらに、前記被めっき物は、ベースと、該ベースから突出するリードとを有する電子部品であり、前記キャリアセットユニットは、前記ベースが上方に位置するように、リードを保持するガイド板と、該ガイド板の下方に設けられ、リードの先端部が当接する金属製のメッシュ状陰極と、該メッシュ状陰極の下方に設けられ、該メッシュ状陰極を挟んで各被めっき物のリードの先端部を吸着し、各被めっき物を当該キャリアセットユニットに固定する複数のマグネットと、該複数のマグネットを保持するマグネットホルダと、前記複数の被めっき物を当該キャリアセットユニットに固定する際には、前記マグネットホルダを前記メッシュ状陰極方向に移動させ、前記複数の被めっき物を当該キャリアセットユニットから着脱する際には、前記マグネットホルダを前記メッシュ状陰極から離間させるように動作するマグネット接離動手段とを設けていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、予めガイド板に電子部品である被めっき物を載置しておき、ガイド板ごとキャリアセットユニットへ着脱する場合、被めっき物のマグネットによる保持が容易且つ確実なものとなる。
【0010】
また、前記キャリアセットユニットは、前記ガイド板が前記被めっき物のリードの中途部に位置するように、ガイド板をリードの軸線方向に移動させる移動手段を設けていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、ガイド板が電子部品のベースに近づきすぎて、ベースのガイド板側がめっき未着になってしまう不具合を防止することができる。
なお、特許請求の範囲でいうリードとは、実施例におけるリードおよびアースリードを含めた概念である。
【0011】
さらに、前記メッシュ状陰極は長尺状に形成されており、前記被めっき物をめっきする際には新たなメッシュ状陰極を用いることができるように、前記キャリアセットユニットにメッシュ状陰極を供給する供給手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、目詰まり等がないメッシュ状陰極を用いることができるので、リードの陰極への接触が確実になると共に、メッシュ状陰極からの異物の分離を防止し、めっき不良率の低減にさらに寄与する。
【0012】
なお、前記供給手段は、少なくとも前記キャリアセットユニットを前記回動手段が回動させる際には、前記供給手段と前記キャリアセットユニットとの間のメッシュ状陰極を弛ませることを特徴としてもよい。
この構成によれば、キャリアセットユニットが回動して上面に位置していた被めっき物を側面に位置するようにして、処理槽の開口された部分から処理槽内に進入させる際にメッシュ状陰極の破損等を防止し、またキャリアセットユニットの回動をスムーズに行なわせることができる。
【0013】
本発明にかかるめっき方法によれば、請求項1〜請求項6のうちいずれか1項記載のめっき装置を用い、複数の被めっき物が保持されたキャリアセットユニットを、被めっき物が処理槽内に臨むようにして処理槽の開口された部分を覆うように装着し、ポンプによって処理槽内にめっき液タンクからめっき液を供給して被めっき物にめっきを実行し、めっき終了後、バルブを開いてめっき後のめっき液をめっき液タンクに排出し、キャリアセットユニットを処理槽の開口された部分から取り外して、被めっき物を処理槽内から取り出すことを特徴としている。
この方法によれば、フィルタを通して異物を濾過しためっき液を処理槽内に導入してめっきを施すので、異物が被めっき物に付着するのを防止でき、不良率の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるめっき装置およびめっき方法によれば、被めっき物にめっきを施すごとにめっき液中の異物を濾過するのでめっき不良率を低減させることができ、またエア溜まりによるめっき未着の防止も図ることができる。さらに、被めっき物を保持している機構部分をめっき液中に浸漬せずに済むので機構部分の腐食も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2はめっき装置全体の概略構成を説明する説明図である。
まず、めっき装置30全体の概略構成について説明する。
めっき装置30は、被めっき物(図1,図2では図示せず)が保持されているキャリアセットユニット32と、処理槽31が形成されている処理ユニット34とを具備している。
処理槽31の一方側の側壁部には開口部35が形成されている。また処理槽31内には陽極36が配置されている。
【0016】
処理槽31には、処理槽31内にめっき液をめっき液タンク38から導入するための導入管39が接続されており、導入管39の中途部にはめっき液を送り込むためのポンプ40が設けられている。このポンプ40は、フィルタポンプでありポンプ内部にフィルタが設けられている。このポンプ40をめっき液が通過することで、処理槽31内に導入される前に異物が濾過される。
また、処理槽31には、処理槽31からめっき後のめっき液をめっき液タンク38に排出するための排出管41が接続されている。排出管41の中途部にはめっき液の排出を制御するための排出バルブ42が設けられている。
【0017】
次いで、図1,図2および図3に基づき、めっき装置30を用いためっき方法を説明する。
キャリアセットユニット32は、図1に示す場合には、被めっき物を保持する保持面32aが上方を向いている。作業者は、この状態で被めっき物をキャリアセットユニット32に装着させる(ステップS100)。
キャリアセットユニット32の回動手段(図1〜図3では図示せず)は、保持面32aが側方を向くように、紙面に対して垂直方向を軸線としてキャリアセットユニット32全体を90度回転させる(ステップS102)。
【0018】
キャリアセットユニット32は、被めっき物の保持面32aが側方を向くように全体を回動させた後、処理槽31の開口部35から処理槽31内に被めっき物を進入させるように移動する(ステップS104)。キャリアセットユニット32を処理槽31へ進退動させるのは、シリンダ等から成る図示しない進退動手段である。
キャリアセットユニット32が処理槽31の開口部35に装着されると、処理槽31の開口部35の外方側端面に設けられたシール部材37と、キャリアセットユニット32の保持面32a側の処理槽当接面33とが密着して処理槽31を密閉してめっき処理槽が形成される。
【0019】
キャリアセットユニット32に保持された被めっき物が処理槽31内に進入すると、ポンプ40(フィルタポンプ)が作動し、めっき液タンク38からめっき液を処理槽31内に送り込む(ステップS106)。処理槽31内にめっき液が所定量貯留されると、ポンプ40の動作が停止し、めっき液の送り込みが終了する。
【0020】
めっき液が送り込まれると、被めっき物にめっきが施され(ステップS108)、めっき終了後には排出バルブ42が作動して排出管41を開き、処理槽31内のめっき後のめっき液をめっき液タンク38に排出する(ステップS110)。処理槽31内のめっき液が全て排出されると、排出バルブ42が排出管41を閉塞する。
【0021】
処理槽31内のめっき液が全て排出された後、キャリアセットユニット32の進退動手段が被めっき物を処理槽31から退出させるように、キャリアセットユニット32全体を処理槽31から離間させる(ステップS112)。
そして、回動手段が、保持面32aが上方を向くように、紙面に対して垂直方向を軸線としてキャリアセットユニット32全体を90度回転させる(ステップS114)。
保持面32aが上方に向いた後、キャリアセットユニット32からめっき済みの被めっき物が取り外される(ステップS116)。
これで、1回のめっき工程が終了する。さらに他の被めっき物をめっきする場合には、ステップS100に戻り、未めっきの被めっき物をキャリアセットユニット32に装着する。
【0022】
以下、めっき装置30を構成する処理ユニット34と、キャリアセットユニット32の具体的な構成を詳細に説明する。なお、上述した概略構成において既に説明した構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する場合もある。
まず、処理ユニット34について、図4,図5に基づいて説明する。
処理槽31内にめっき液を導入する導入管39は、処理ユニット34に設けられた処理槽31の下部側面に接続されている。導入管39は処理槽31内に配設された複数の孔が形成されたパイプ46に接続されており、パイプ46からめっき液が処理槽31内に導入される。
なお、処理槽31からめっき液を排出する排出管41は2本設けられており、それぞれ処理槽31の下面に接続されている。
【0023】
処理槽31内の下部と上部には、それぞれにフロートセンサ47,49が設けられている。下部に設けられたフロートセンサ47によって、めっき液が処理槽31内から排出されたか否かを検出可能であり、上部に設けられたフロートセンサ49によって、めっき液が所定量まで導入されたか否かを検出することができる。
さらに、処理槽31からめっき液がオーバーフローしてしまった場合、オーバーフローしためっき液をめっき液タンク38に戻すためのオーバーフロー配管48が、処理槽31の下面に接続されている。
【0024】
次に、キャリアセットユニット32について、図6〜図8に基づいて説明する。以下の説明における上下方向は、図6〜図8に示すように被めっき物10が上面側に位置しているときの方向である。
なお、本実施形態における被めっき物10は、従来の技術で説明したものと同様に、レーザダイオード等の端子として用いられる電子部品であり、金属製部材から成るベース11に貫通孔12,12が形成され、これら貫通孔12,12に、リード14,14が挿通されてガラス封着されている。また、金属製部材の一面側にはアースリード15が当接して接合されて構成されているものであるとする。
【0025】
キャリアセットユニット32の上面には、被めっき物10のリード14およびアースリード15(以下、リード14とアースリード15を含めて単にリード14と称する場合もある)を収納する貫通孔51が形成された平板状のガイド板50が設けられている。ガイド板50は平面視するとほぼ長方形状の部材であり、複数の被めっき物10のリード14を収納できるように、複数の貫通孔51,51,51・・が形成されている。なお、本実施形態によるガイド板50は、上方に位置する上ガイド板50aと下方に位置する下ガイド板50bとが積層されて構成されており、下ガイド板50bの四隅が上ガイド板50aの上方に突出している。かかるガイド板50の側縁部が、処理槽31の開口部35の外方側端面に当接する処理槽当接面33に該当する。
【0026】
ガイド板50の下方には、メッシュ状陰極52が配置される。メッシュ状陰極52は、被めっき物10のリード14の長さが不揃いであっても全てのリード14を確実に陰極に接触させるために設けられているものである。メッシュ状陰極52としては、不織布にめっきを施したもの、あるいは導電性の材料を不織布として形成したもの等、様々な態様が考えられる。
【0027】
なお、メッシュ状陰極52は、長尺状であって、一端側が供給ローラ54に巻回され、他端側が巻取ローラ55に巻回されている。これら供給ローラ54および巻取ローラ55が特許請求の範囲でいう供給手段に該当し、巻取ローラ55がめっき終了後にメッシュ状陰極52を巻き取り、供給ローラ54から新たなメッシュ状陰極52を引き出し、使用後の部分を巻き取るように動作する。
【0028】
図面ではメッシュ状陰極52は弛まずに張りつめた状態で図示されているが、供給ローラ54および巻取ローラ55は、メッシュ状陰極52を弛ませた状態で保持していると好適である。後述する回動手段によって被めっき物10を側方に向けるようにキャリアセットユニット32全体を回動させたときに、メッシュ状陰極52が張りつめていると回動自体困難であると共に、無理に回動させるとメッシュ状陰極52がちぎれたり破損するおそれがある。この点、メッシュ状陰極52を弛ませることで、回動も自在にできると共にメッシュ状陰極52の破損も防止できる。
ただし、メッシュ状陰極52は、通常張りつめた状態にしておいて、キャリアセットユニット32の回動時にのみ弛ませるようにしてもよい。
【0029】
メッシュ状陰極52の下方に設けられている部材が、上ベース部材56である。上ベース部材56は、上下方向に延びる柱状部材58,58の上端部に固定されている。また柱状部材58,58の下端部は、下ベース部材60に固定されている。このように、下ベース部材60と上ベース部材56とは、柱状部材58,58によって固定されている。
【0030】
メッシュ状陰極52の下方には、各被めっき物10が配置される箇所に対応する位置に複数のマグネット62,62,・・が配置されている。マグネット62は、メッシュ状陰極52の下面に当接し、メッシュ状陰極52を挟んで被めっき物10のリード14を吸着して固定する。
【0031】
各マグネット62は、マグネットホルダ64に固定されている。マグネットホルダ64は、メッシュ状陰極52に対して接離動可能に設けられている。すなわち、マグネットホルダ64の下面には、下ベース部材60に設けられたシリンダ66のロッド69の先端部が取り付けられており、またマグネットホルダ64から下方に向けて突出するガイドロッド67,67が設けられている。ガイドロッド67,67は、下ベース部材60に設けられた軸受70に挿入され、下ベース部材60に対して上下動可能に設けられている。
シリンダ66が作動すると、マグネットホルダ64は、ガイドロッド67にガイドされて下ベース部材60に対して上下動する。このように、シリンダ66によってマグネットホルダ64がメッシュ状陰極52に対して接離動する。
【0032】
また、ガイド板50のずれを防止するために、ガイド板50の各長辺の上面を押える押え用部材72が2本設けられている。押え用部材72は、上下方向に延びる板状または棒状の部材であり、上端部にはガイド板50方向に突出する爪部74が、ガイド板50の長辺側の上面に当接するように設けられている。
また、押え用部材72は、爪部74がガイド板50の側面方向から上面に進入および退出するように移動可能である。具体的には、2本の押え用部材72,72のうちの一方の下部にシリンダ76が取り付けられ、他方の下部にシリンダ76のロッド77の先端部が取り付けられている。このような構成を有しているので、シリンダ76が作動することにより、下ベース部材60に対して両押え用部材72,72が互いに接離動する方向に移動可能となっている。
なお、図7においては、押え用部材72,72が互いに外方に移動して爪部74がガイド板50の押えを解除したところを2点鎖線で示している。
【0033】
ガイド板50を上下方向(被めっき物10のリード14の軸線方向)に移動させる移動手段80,80が2箇所に設けられている。各移動手段80は、ガイド板50の四隅の上面に配置されてガイド板50を上方から押圧する押圧部82と、押圧部82を上下方向に駆動させるように下ベース部材60に固定されたシリンダ84を具備している。
押圧部82は、ガイド板50の短辺に沿って設けられている取り付け板85の両端に設けられており、取り付け板85はシリンダ84のロッド86の先端が固定されてロッド86の動作に合わせて上下に移動可能な連結部材87の上端部に取り付けられている。
このような構成の移動手段80を設けたことにより、シリンダ84の動作によって下ベース部材60に対して押圧部82が上下方向に移動する。
【0034】
かかる移動手段80は、被めっき物10の装着時に、ガイド板50の上面が被めっき物10のべース11の下面に接触しているかまたは近づきすぎている場合に、ガイド板50を被めっき物10のリード14の軸線方向に沿ってガイド板50を押し下げるように動作する。ガイド板50を被めっき物10のベース11から引き離してリード14の中途部に位置するように設けたことで、ガイド板50が邪魔になることを要因とするベース11のめっき未着等の不具合を防止することができる。
【0035】
なお、上述した押え用部材72と移動手段80とは処理槽31の開口部35よりも外側に位置するように配置され、これらの部分にめっき液が接触することはないように設けられている。
【0036】
キャリアセットユニット32を回動させる回動手段は、モータ等の駆動手段(図示せず)と、一端側が該駆動手段に取り付けられ他端側がキャリアセットユニット32内の上ベース部材56,柱状部材58または下ベース部材60の全てまたはいずれかに固定された回動シャフト88と、一端側が回転自在になるように軸受等により保持され他端側がキャリアセットユニット32内の上ベース部材56,柱状部材58または下ベース部材60の全てまたはいずれかに固定されたガイドシャフト89とを具備して成る。
【0037】
回動シャフト88とガイドシャフト89とは、互いの軸線が一致し、且つキャリアセットユニット32のそれぞれ対向する位置であって、両軸線が水平方向に向かうように設けられている。
駆動手段が、回動シャフト88を軸線方向を中心に所定角度だけ回動させるように駆動すると、回動シャフト88がキャリアセットユニット32を所定角度だけ回動させる。ガイドシャフト89は、キャリアセットユニット32の回動シャフト88の反対側を支承する。
【0038】
なお、回動シャフトは、キャリアセットユニット32を貫通する程長尺であって、一端側が駆動手段に取り付けられ、他端側が回転自在になるように軸受等により保持され、中途部においてキャリアセットユニット32内の上ベース部材56,柱状部材58または下ベース部材60の全てまたはいずれかに固定される構成であってもよい。
この構成であれば、回動シャフトがキャリアセットユニット32の反対側も支承することとなり、回動シャフトおよびガイドシャフトを設ける形態よりも部品点数の削減ができる。
【0039】
なお、上述してきた実施例においては被めっき物として従来の技術で説明した電子部品の場合について説明してきた。本発明のめっき対象である被めっき物としては、このような構造の電子部品に限定するものではない。
【0040】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】めっき装置の概略全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1のめっき装置においてキャリアセットユニットを回動させて保持面を側方に向けたところを示すブロック図である。
【図3】めっき方法について説明するフローチャートである。
【図4】処理ユニットの側面図である。
【図5】処理ユニットの背面図である。
【図6】キャリアセットユニットの正面図である。
【図7】キャリアセットユニットの側面図である。
【図8】キャリアセットユニットの平面図である。
【図9】被めっき物について説明する説明図である。
【図10】従来のめっき治具について説明する説明図である。
【符号の説明】
【0042】
30 めっき装置
31 処理槽
32 キャリアセットユニット
32a 保持面
33 処理槽当接面
34 処理ユニット
35 開口部
36 陽極
37 シール部材
38 めっき液タンク
39 導入管
40 フィルタポンプ
41 排出管
42 排出バルブ
46 パイプ
47,49 フロートセンサ
48 オーバーフロー配管
50 ガイド板
51 貫通孔
52 メッシュ状陰極
54 供給ローラ
55 巻取ローラ
56 上ベース部材
58 柱状部材
60 下ベース部材
62 マグネット
64 マグネットホルダ
66,76,84 シリンダ
67 ガイドロッド
69,77,86 ロッド
70 軸受
72 押え用部材
74 爪部
80 移動手段
82 押圧部
85 取り付け板
87 連結部材
88 回動シャフト
89 ガイドシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側壁部が開口された処理槽を有する処理ユニットと、
保持面に複数の被めっき物が着脱可能に保持されるキャリアセットユニットと、
めっき液タンクと、
該めっき液タンクからめっき液を前記処理槽内に供給するポンプと、
前記処理槽内に送り込まれるめっき液を濾過するフィルタと、
前記処理槽内のめっき液を前記めっき液タンクに戻す排出管と、
該排出管に介装されたバルブとを具備し、
前記保持面に複数の被めっき物が保持された前記キャリアセットユニットを、保持面に保持された被めっき物が処理槽内に臨むようにして前記処理槽の開口された部分を覆って装着することにより、前記キャリアセットユニットと前記処理ユニットとで密閉されためっき処理槽が形成されることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記キャリアセットユニットは、
前記複数の被めっき物を着脱する際には、被めっき物を保持する保持面が上方を向くように位置し、保持した複数の被めっき物を前記処理槽内に臨ませる際には、前記保持面が側方を向いて前記処理槽の開口された部分と対峙するようにキャリアセットユニット全体を回動させる回動手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記被めっき物は、ベースと、該ベースから突出するリードとを有する電子部品であり、
前記キャリアセットユニットは、
前記ベースが上方に位置するように、リードを収納する貫通孔が形成されたガイド板と、
該ガイド板の下方に設けられ、リードの先端部が当接する金属製のメッシュ状陰極と、
該メッシュ状陰極の下方に設けられ、該メッシュ状陰極を挟んで各被めっき物のリードの先端部を吸着し、各被めっき物を当該キャリアセットユニットに固定する複数のマグネットと、
該複数のマグネットを保持するマグネットホルダと、
前記複数の被めっき物を当該キャリアセットユニットに固定する際には、前記マグネットホルダを前記メッシュ状陰極方向に移動させ、前記複数の被めっき物を当該キャリアセットユニットから着脱する際には、前記マグネットホルダを前記メッシュ状陰極から離間させるように動作するマグネット接離動手段とを設けていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のめっき装置。
【請求項4】
前記キャリアセットユニットは、
前記ガイド板が前記被めっき物のリードの中途部に位置するように、ガイド板をリードの軸線方向に移動させる移動手段を設けていることを特徴とする請求項3記載のめっき装置。
【請求項5】
前記メッシュ状陰極は長尺状に形成されており、
前記被めっき物をめっきする際には新たなメッシュ状陰極を用いることができるように、前記キャリアセットユニットにメッシュ状陰極を供給する供給手段が設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4記載のめっき装置。
【請求項6】
前記供給手段は、
少なくとも前記キャリアセットユニットを前記回動手段が回動させる際には、前記供給手段と前記キャリアセットユニットとの間のメッシュ状陰極を弛ませることを特徴とする請求項5記載のめっき装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちいずれか1項記載のめっき装置を用い、
複数の被めっき物が保持されたキャリアセットユニットを、被めっき物が処理槽内に臨むようにして処理槽の開口された部分を覆うように装着し、
ポンプによって処理槽内にめっき液タンクからめっき液を供給して被めっき物にめっきを実行し、
めっき終了後、バルブを開いてめっき後のめっき液をめっき液タンクに排出し、
キャリアセットユニットを処理槽の開口された部分から取り外して、被めっき物を処理槽内から取り出すことを特徴とするめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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