説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】CMPプロセスのやりやすいめっき膜を形成して、次工程のCMPプロセスでの負担を軽減できるようにしためっき装置及びめっき方法を提供する。
【解決手段】基板Wを保持する基板保持部36と、基板保持部36で保持した基板Wと接触して通電させるカソード電極88を備えたカソード部と、基板Wの表面に対向する位置に配置されるアノード98と、基板保持部36で保持した基板Wとアノード98と間に基板Wと接離する方向に移動自在に配置され、該移動方向に沿って直線状に貫通して延びる貫通孔112aを有する接触材112を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっき装置及びめっき方法に係り、特に半導体基板などの基板の表面に形成された微細な配線用凹部(回路パターン)に銅等の金属(配線材料)を埋込んで配線を形成するのに使用されるめっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板上に配線回路を形成するための金属材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細な配線用凹部の内部に銅を埋込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、CVD、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜して、化学的機械的研磨(CMP)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1は、この種の銅配線基板の製造例を工程順に示す。先ず、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やLow−K材膜等の絶縁層2を堆積し、この絶縁層2の内部に、リソグラフィ・エッチング技術により、配線用凹部としてのコンタクトホール3とトレンチ4を形成する。その上にTaNやTiN等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてシード層7をスパッタリングやCVD等によって形成する。
【0004】
そして、図1(b)に示すように、基板Wのシード層7の表面に銅めっきを施すことで、コンタクトホール3及びトレンチ4内に銅を充填するとともに、絶縁層2上に銅膜6を堆積する。その後、化学的機械的研磨(CMP)により、絶縁層2上の銅膜6、シード層7及びバリア層5を除去して、コンタクトホール3及びトレンチ4内に充填させた銅膜6の表面と絶縁層2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁層2の内部に銅膜6からなる配線が形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内部に配線を形成する絶縁層として、誘電率が高いLow−K材を使用することで、微細化した配線の信頼性を向上させることができる。しかし、Low−K材は、一般に機械的な強度が弱い。そのため、Low−K材からなる絶縁層の内部に形成したトレンチ内にめっきによって銅を埋込み、しかる後、CMPプロセスにおいて、絶縁層上の不要な銅を除去しようとすると、絶縁層の表面にディッシングが生じ易く、ディッシングの発生を抑えようとすると、銅の削り残しが生じて、不要な銅を完全に除去することが困難となる。これらCMPプロセスにとっての負担を少しでも軽減するため、めっきプロセスにおいては、なるべくCMPプロセスに負担のかからないようなめっき膜を作ることが求められている。
【0006】
しかしながら、めっき膜の膜質を悪化させたり、めっき膜の表面にスクラッチが発生することを防止したりしつつ、CMPプロセスに負担のかからないようなめっき膜を作ることは一般に困難で、半導体製造プロセスとしては未完成であるのが現状である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、CMPプロセスのやりやすいめっき膜を形成して、次工程のCMPプロセスでの負担を軽減できるようにしためっき装置およびめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部で保持した基板と接触して通電させるカソード電極を備えたカソード部と、前記基板の表面に対向する位置に配置されるアノードと、前記基板保持部で保持した基板と前記アノードと間に前記基板と接離する方向に移動自在に配置され、該移動方向に沿って直線状に貫通して延びる貫通孔を有する接触材を有することを特徴とするめっき装置である。
【0009】
アノードと基板の間に、アノードと基板との間を直線状に貫通して延びる貫通孔を有する接触材を入れ、接触材を基板の表面に接触させてめっきを行うと、基板の表面の非配線形成部にあっては、接触材に設けた貫通孔に対向する部位を除き基板の表面が接触材に直接接触し、この接触部からめっき液が排除されるため、貫通孔に沿って成長した柱形状のめっき膜(柱形状部)が形成される。配線形成部にあっては、トレンチ等の配線用凹部の内部は接触材に接触しておらず、該凹部の内部がめっき液で満たされるため、めっき膜は、先ずトレンチ等の配線用凹部の内部を埋めるように成長し、接触材の接触面までめっき膜が到達すると、接触材の貫通孔に沿って柱形状に成長する。この時、非配線形成部及び配線形成部にできた柱形状のめっき膜(柱形状部)の根本は、同じ高さに揃っている。
【0010】
このような形状のめっき膜の表面をCMPで研磨することで、表面にある無数の柱形状のめっき膜を比較的微小な力で簡単に排除することができる。その結果、無数の柱形状のめっき膜を排除した後のめっき膜の表面は、凹凸の少ない平坦な表面となり、CMPにとっては従来の凹凸のあるめっき膜よりも研磨しやすい形状となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記接触材の前記基板保持部で保持した基板の表面と対向する接触面を該基板の表面に押当てる押当て機構を有することを特徴とする請求項1記載のめっき装置である。
これにより、押当て機構を介して、接触材の基板保持部で保持した基板の表面と対向する接触面を該基板の表面に押当てつつ接触させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記接触材と前記アノードとの間に、前記接触材の前記接触面を基板の表面に押当てる押当て材を配置したことを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置である。
これにより、押当て材を介して、接触材の接触面を基板の表面に押当てつつ接触させることができる。この押当て材は、電気を通すために、言いかえるとめっき液を通すため、例えば多孔質体から構成される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記接触材と前記アノードとの間に、前記接触材の前記接触面を基板の表面に均一に押付ける柔軟性を有するクッション材を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置である。
これにより、クッション材によって、接触材の接触面を該接触面の全面に亘って基板の表面により均一な押付け力で押付けつつ接触させて、接触材の接触面が基板の表面から局所的に浮いてしまうことを防止することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記接触材に設けられた貫通孔は、直径が12μm以下の横断面円形であり、かつ1.0×10〜1.0×10個/cmの密度で分布していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき装置である。
これにより、基板の表面に形成される柱形状のめっき膜は、直径が12μm以下で、1.0×10〜1.0×10個/cmの密度で分布する円柱状となり、後のCMPで円柱状のめっき膜を容易に落とすことができる。しかもトレンチ等の配線用凹部に比べて円柱状のめっき膜が大きすぎて、配線形成部に円柱状のめっき膜が形成されない状況が起こることを防止することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記接触材の前記接触面の表面粗さのRa値は、1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき装置である。
基板の表面と接触する接触材の接触面の表面粗さのRa値(中心線平均粗さ)を1μm以下とすることで、該接触面の基板の表面に対する密着性をよくして、該接触面を基板の表面に接触させた時に、両者の間に隙間ができるのを防止し、これによって、非配線形成部に余分なめっき膜が成膜されて、後のCMPプロセスに負担をかけることを防止することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記接触材は、絶縁体からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき装置である。
請求項8に記載の発明は、前記接触材は、ポリカーボネート、セラミックス、カーボン、ポリエステル、ガラス、シリコン、レジスト材またはフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項7記載のめっき装置である。
レジスト材としては、フォト・リソグラフィやX線リソグラフィ用のものが使用でき、例えばPMMA(アクリル樹脂)やSU−8(商品名、化薬マイクロケム(株)製)を使用することで、高アスペクト比での微細パターン加工が可能となり、微細な貫通孔を持つ厚膜のフィルム(接触材)を得ることができる。
フッ素樹脂製の接触材としては、PFAを素材となし、リソグラフィ技術を応用して微細な貫通孔を形成したものが挙げられる。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記基板の表面に形成されためっき膜をエッチングするエッチング機構を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のめっき装置である。
基板の表面に形成された柱形状のめっき膜をエッチング機構でエッチング除去することで、後のCMPプロセスの負担を更に軽減させることができる。このエッチング機構の具体例としては、例えば極性を反転できる電源、同等の回路または薬液によるエッチング(ケミカル・エッチング)が挙げられる。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記接触材に設けられる貫通孔は、前記接触面から離れる方向に向かって横断面積が徐々に減少するテーパ形状であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のめっき装置である。
これにより、基板の表面に先の尖った柱形状のめっき膜が形成されるようにして、例えば接触材に径の大きな貫通孔を設けて該貫通孔内にめっき膜を形成した場合に、めっき後にめっき膜を接触材の貫通孔から容易に引き抜くことができる。
【0019】
請求項11に記載の発明は、表面に配線用凹部を形成した基板を用意し、前記基板の表面に対向する位置にアノードを配置し、前記基板と前記アノードとの間に、内部に直線状に延びる貫通孔を有する接触材を該接触材の基板の表面と対向する接触面を該基板の表面に押当てて配置し、前記アノードと前記基板との間にめっき液を満たしつつ、前記アノードと前記基板の表面との間にめっき電流を流して基板の表面にめっきを行うことを特徴とするめっき方法である。
請求項12に記載の発明は、前記接触材を前記基板に対して静止させた状態で、基板の表面にめっきを行うことを特徴とする請求項11記載のめっき方法である。
【0020】
請求項13に記載の発明は、基板の表面にめっきを行った後、前記接触材の前記接触面の基板の表面に対する相対位置を変えて、基板の表面に再度めっきを行うことを特徴とする請求項11または12記載のめっき方法である。
これにより、例えばトレンチ等の配線用凹部の深さが深く、めっきに時間がかかる場合に、柱形状のめっき膜が成長しすぎて、接触材に設けた貫通孔から容易に抜けなくなってしまうことを防止することができる。
【0021】
請求項14に記載の発明は、前記接触材を前記基板の表面から離した後、前記接触材の前記接触面の基板の表面に対する相対位置を変えることを特徴とする請求項13記載のめっき方法である。
【0022】
これにより、接触材を基板の表面から離して再び押当てる時に、それまでに形成された柱形状のめっき膜を押し倒して、次のめっきでは押し倒しためっき膜の表面に柱形状のめっき膜を更に成長させることができる。これを繰り返すことによって、接触材を壊すことなく、めっき膜表面の凹凸の高低差を徐々に小さくし、最終的には、配線用凹部内を全て埋込んだ時に表面にできる柱形状のめっき膜が比較的低くなるようにして、接触材を壊すことなく、柱形状のめっき膜を孔質体から引き抜くことができる。相対位置を変える方法には、接触材や基板を能動的に動かすことは勿論、設計上の寸法誤差や遊びによって相対位置を変化させる場合も含まれる。
【0023】
請求項15に記載の発明は、基板の表面に再度めっきを行う前に、前記基板の表面に形成しためっき膜をエッチングすることを特徴とする請求項13または14記載のめっき方法である。
請求項16に記載の発明は、前記エッチングを、前記アノードと前記基板との間にめっきを満たしつつ、前記アノードと前記基板の表面の極性をめっき時と逆にして行うことを特徴とする請求項15記載のめっき方法である。
【0024】
請求項17に記載の発明は、前記接触材を前記基板の表面から離して前記エッチングを行うことを特徴とする請求項16記載のめっき方法である。
このようにしてエッチングを行うと、電気は尖ったところに集中して流れるので、配線用凹部内に埋込んだめっき膜よりも柱形状のめっき膜が優先的にエッチングされる。そして、柱形状のめっき膜がなくなったところで次のめっきを行う操作を繰り返すことで、接触材を壊すことなく、めっき膜表面の凹凸の高低差を徐々に小さくし、最終的には、配線用凹部内を全て埋込んだ時に表面にできる柱形状のめっき膜が比較的低くなるようにして、接触材を壊すことなく、柱形状のめっき膜を接触材から引き抜くことができる。また、等方的にエッチングするような条件でアノードと基板の表面との間にめっき時とは逆の電解(逆電解)をかけて、柱形状のめっき膜の半分の厚さ相当する分だけエッチングすることで、柱形状のめっき膜をその高さに因ることなくエッチング除去することができる。
【0025】
請求項18に記載の発明は、請求項11乃至17のいずれかに記載のめっき方法によって基板にめっきした後、CMP装置にて基板表面を研磨し、配線部以外の余分なめっき膜を除去することを特徴とする、基板の処理方法である。
請求項19に記載の発明は、請求項11乃至17のいずれかに記載のめっき方法によって基板にめっきした後、エッチング装置にて基板表面の柱形状部を除去し、平坦な表面とした後、CMP装置にて基板表面を研磨し、配線部以外の余分なめっき膜を除去することを特徴とする、基板の処理方法である。
【0026】
請求項20に記載の発明は、内部に直線状に延びる貫通孔を有する接触材を基板の表面に接触させながら該表面にめっきを行うことで得られる、前記貫通孔に沿って直線状に成長した無数の柱形状部を有するめっき膜である。
請求項21に記載の発明は、前記柱形状は、直径が12μm以下の円柱状であることを特徴とする請求項20記載のめっき膜である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、トレンチ等の配線用凹部内にめっき膜を埋込みつつ、根元の高さが比較的平坦な面内にある柱形状のめっき膜を形成することができる。柱形状のめっき膜は、次工程のCMPプロセスで容易に落とすことができ、柱形状のめっき膜を除去した後のめっき膜表面は比較的平坦であり、これによって、次工程のCMPプロセスへの負担が軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。この実施の形態は、半導体基板の表面に設けた微細な配線用凹部内に銅を埋込んで銅からなる配線を形成するようにした例を示す。
図2は、本発明の実施の形態におけるめっき装置を備えた基板処理装置の全体配置図を示す。図2に示すように、この基板処理装置には、同一設備内に位置して、内部に複数の基板Wを収納する2基のロード・アンロード部10と、めっき処理を行う2基のめっき装置12と、ロード・アンロード部10とめっき装置12との間で基板Wの受渡しを行う搬送ロボット14と、めっき液タンク16を有するめっき液供給設備18が備えられている。
【0029】
めっき装置12には、図3に示すように、めっき処理及びその付帯処理を行う基板処理部20が備えられ、この基板処理部20に隣接して、めっき液を溜めるめっき液トレー22が配置されている。また、回転軸24を中心に揺動する揺動アーム26の先端に保持されて基板処理部20とめっき液トレー22との間を揺動する電極ヘッド28を有する電極アーム部30が備えられている。更に、基板処理部20の側方に位置して、プレコート・回収アーム32と、純水やイオン水等の薬液、または気体等を基板に向けて噴射する固定ノズル34が配置されている。この実施の形態にあっては、3個の固定ノズル34が備えられ、その内の1個を純水の供給用に用いている。
【0030】
基板処理部20には、図4に示すように、基板の表面(被めっき面)を上向きにして基板Wを保持する基板保持部36と、この基板保持部36の上方に該基板保持部36の周縁部を囲繞するように配置されたカソード部38が備えられている。更に、基板保持部36の周囲を囲繞して処理中に用いる各種薬液の飛散を防止する有底略円筒状のカップ40が、エアシリンダ(図示せず)を介して上下動自在に配置されている。
【0031】
基板保持部36は、エアシリンダ44によって、下方の基板受渡し位置Aと、上方のめっき位置Bと、これらの中間の前処理・洗浄位置Cとの間を昇降し、図示しない回転モータ及びベルトを介して、任意の加速度及び速度でカソード部38と一体に回転する。この基板受渡し位置Aに対向して、めっき装置12のフレーム側面の搬送ロボット14側には、基板搬出入口(図示せず)が設けられ、また基板保持部36がめっき位置Bまで上昇した時に、基板保持部36で保持された基板Wの周縁部に下記のカソード部38のシール材90とカソード電極88が当接する。一方、カップ40は、その上端が基板搬出入口の下方に位置し、図4に仮想線で示すように、上昇した時に基板搬出入口を塞いでカソード部38の上方に達する。
【0032】
めっき液トレー22は、めっき処理を実施していない時に、電極アーム部30の下記の押当て材110、クッション材111、接触材112及びアノード98をめっき液で湿潤させるためのもので、この押当て材110等が収容できる大きさに設定され、図示しないめっき液供給口とめっき液排水口を有している。また、フォトセンサがめっき液トレー22に取付けられており、めっき液トレー22内のめっき液の満水、即ちオーバーフローと排水の検出が可能になっている。
【0033】
電極アーム部30は、下記のように、この例では、サーボモータからなる上下動モータ132とボールねじ134を介して上下動し、旋回モータ(図示せず)を介して、めっき液トレー22と基板処理部20との間を旋回(揺動)するようになっている。モータの代わりに空気圧アクチュエータを使用しても良い。
【0034】
プレコート・回収アーム32は、図5に示すように、上下方向に延びる支持軸58の上端に連結されて、ロータリアクチュエータ60を介して旋回(揺動)し、エアシリンダ(図示せず)を介して上下動する。このプレコート・回収アーム32には、その自由端側にプレコート液吐出用のプレコートノズル64が、基端側にめっき液回収用のめっき液回収ノズル66がそれぞれ保持されている。プレコートノズル64は、例えばエアシリンダによって駆動するシリンジに接続されて、プレコート液がプレコートノズル64から間欠的に吐出される。また、めっき液回収ノズル66は、例えばシリンダポンプまたはアスピレータに接続されて、基板上のめっき液がめっき液回収ノズル66から吸引される。
【0035】
基板保持部36は、図6乃至図8に示すように、円板状の基板ステージ68を備え、この基板ステージ68の周縁部の円周方向に沿った6カ所に、上面に基板Wを水平に載置して保持する支持腕70が立設されている。この支持腕70の1つの上端には、基板Wの端面に当接して位置決めする位置決め板72が固着され、この位置決め板72を固着した支持腕70に対向する支持腕70の上端には、基板Wの端面に当接し回動して基板Wを位置決め板72側に押付ける押付け片74が回動自在に支承されている。また、他の4個の支持腕70の上端には、回動して基板Wをこの上方から下方に押付けるチャック爪76が回動自在に支承されている。
【0036】
ここで、押付け片74及びチャック爪76の下端は、コイルばね78を介して下方に付勢した押圧棒80の上端に連結されて、この押圧棒80の下動に伴って押付け片74及びチャック爪76が内方に回動して閉じるようになっており、基板ステージ68の下方には、押圧棒80に下面に当接してこれを上方に押上げる支持板82が配置されている。
これにより、基板保持部36が図4に示す基板受渡し位置Aに位置する時、押圧棒80は支持板82に当接し上方に押上げられて、押付け片74及びチャック爪76が外方に回動して開き、基板ステージ68を上昇させると、押圧棒80がコイルばね78の弾性力で下降して、押付け片74及びチャック爪76が内方に回転して閉じる。
【0037】
カソード部38は、図9及び図10に示すように、支持板82(図8等参照)の周縁部に立設した支柱84の上端に固着した環状の枠体86と、この枠体86の下面に内方に突出させて取付けた、この例では6分割されたカソード電極88と、このカソード電極88の上方を覆うように枠体86の上面に取付けた環状のシール材90を有している。シール材90は、その内周縁部が内方に向け下方に傾斜し、かつ徐々に薄肉となって、内周端部が下方に垂下するように構成されている。
【0038】
これにより、図4に示すように、基板保持部36がめっき位置Bまで上昇した時に、この基板保持部36で保持した基板Wの周縁部にカソード電極88が押付けられて通電し、同時にシール材90の内周端部が基板Wの周縁部上面に圧接し、ここを水密的にシールして、基板の上面(被めっき面)に供給されためっき液が基板Wの端部から染み出すのを防止するとともに、めっき液がカソード電極88を汚染することを防止する。
なお、この例において、カソード部38は、上下動不能で基板保持部36と一体に回転するようになっているが、上下動自在で、下降した時にシール材90が基板Wの被めっき面に圧接するように構成しても良い。
【0039】
電極アーム部30の電極ヘッド28は、図11乃至図13に示すように、揺動アーム26の自由端にボールベアリング92を介して連結したハウジング94と、このハウジング94の下端開口部を塞ぐように配置された、多孔質体からなる平板状の押当て材110を有している。すなわち、このハウジング94の下部には、内方に突出した内方突出部94aが、押当て材110の上部にはフランジ部110aがそれぞれ設けられ、このフランジ部110aを内方突出部94aに引っ掛け、更にスペーサ96を介装することで、ハウジング94に押当て材110が保持されている。これによって、ハウジング94の内部に中空のめっき液室100が区画形成されている。
【0040】
押当て材110の下面には、多孔質体からなり、弾性を有する平板状のクッション材111が貼着等によって取付けられ、このクッション材111の下面には、多孔質体からなり、内部に上下に直線状に貫通して延びる多数の貫通孔112aを有する平板状の接触材112が貼着等によって取付けられている。これにより、押当て材110を介して、接触材112の基板保持部36で保持した基板Wの表面と対向する接触面(下面)112bを該基板Wの表面(上面)に押当てつつ接触させることができる。
【0041】
押当て材110は、例えばアルミナ、SiC、ムライト、ジルコニア、チタニア、コージライト等の多孔質セラミックスまたはポリプロピレンやポリエチレンの焼結体等の硬質多孔質体、あるいはこれらの複合体、更には織布や不織布で構成されている。例えば、アルミナ系セラミックスにあっては、ポア径30〜200μm、SiCにあっては、ポア径30μm以下、気孔率20〜95%、厚み1〜20mm、好ましくは5〜20mm、更に好ましくは8〜15mm程度のものが使用される。この例では、例えば気孔率30%、平均ポア径100μmでアルミナ製の多孔質セラミックス板から構成されている。そして、この内部にめっき液を含有させることで、つまり多孔質セラミックス板自体は絶縁体であるが、この内部にめっき液を複雑に入り込ませ、厚さ方向にかなり長い経路を辿らせることで、めっき液の電気伝導率より小さい電気伝導率を有するように構成されている。
【0042】
このように押当て材110をめっき液室100内に配置し、この押当て材110によって大きな抵抗を発生させることで、シード層7(図1参照)の抵抗の影響を無視できる程度となし、基板Wの表面の電気抵抗による電流密度の面内差を小さくして、めっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0043】
クッション材111は、例えばポリウレタン、ポリエチレンまたはポリビニルアルコールで構成されており、例えばアイオン(株)製のソフラスや、ニッタ(株)製のSUBAなどがクッション材111として使用される。押当て材110と接触材112との間に、柔軟性を有するクッション材111を介装することによって、接触材112の接触面112bを該接触面112bの全面に亘って基板Wの表面により均一な押付け力で押当てつつ接触させて、接触材112の接触面112bが基板Wの表面から局所的に浮いてしまうことを防止することができる。
【0044】
接触材112は、例えばポリカーボネート、セラミックス、カーボン、ポリエステル、ガラス、シリコン、レジスト材またはフッ素樹脂等の絶縁体で構成されており、ワットマンろ紙やオスモニクス社製のニュクリポアフィルタ等が接触材112として使用される。内部には、例えば横断面円形で、直径が12μm以下で1.0×10〜1.0×10個/cmの密度で分布する、上下に貫通する多数の貫通孔112aが設けられている。これにより、基板の表面に形成される柱形状のめっき膜は、直径が12μm以下の円柱状となり、後のCMPで円柱状のめっき膜を容易に落とすことができる。しかも、貫通孔の密度を1.0×10〜1.0×10個/cmとし、孔の直径と密度の適当な組み合わせを選ぶことにより、すべての配線用凹部にめっきをすることができる。
【0045】
接触材112としては、PMMAなどのレジスト材に、リソグラフィ技術によって、サブミクロンオーダでの微細加工(貫通孔の形成)を施したものを使用することもでき、この場合、膜厚が数百μm以下の接触材を作製することができる。
更に、接触材112の接触面112bの表面粗さのRa値(中心線平均粗さ)は、1μm以下に設定されている。これにより、接触材112の接触面112bの基板Wの表面に対する密着性をよくし、該接触面112bを基板Wの表面に接触させた時に、両者の間に間に隙間ができるのを防止して、非配線形成部に余分なめっき膜が成膜されて、後のCMPプロセスに負担をかけることを防止することができる。
【0046】
図示しないが、接触材に内部に設けられる貫通孔は、接触面から離れる方向に、つまり上方に向かって横断面積が徐々に減少するテーパ形状であってもよい。これにより、基板の表面に先の尖った柱形状のめっき膜が形成されるようにして、例えば接触材に径の大きな貫通孔を設けて該貫通孔内にめっき膜を形成した場合に、めっき後に柱形状のめっき膜を接触材の貫通孔から容易に引き抜くことができる。
【0047】
めっき液室100内には、押当て材110の上方に位置して、アノード98が、この上方に配置しためっき液導入管104の下面に取付けられて配置されている。そして、このめっき液導入管104には、めっき液導入口104aが設けられ、このめっき液導入口104aにめっき液供給設備18(図2参照)から延びるめっき液供給管102が接続されている。更に、ハウジング94の上面に設けられためっき液排出口94bにめっき液室100に連通するめっき液排出管106が接続されている。
【0048】
めっき液導入管104は、基板Wの表面(被めっき面)に均一にめっき液を供給できるように、マニホールド構造が採用されている。即ち、その長手方向に沿った所定の位置に、この内部に連通する多数の細管116を連結している。そして、アノード98のこの細管116に対応する位置には細孔が設けられ、細管116は、これらの細孔内を下方に延びている。
【0049】
これにより、めっき液供給管102からめっき液導入管104に導入されためっき液は、細管116を通過して押当て材110の上方に達し、めっき液室100内を満たしてアノード98をめっき液中に浸漬させるとともに、押当て材110、クッション材111及び接触材112の内部を通過して、該接触材112の下面に達し、めっき液排出管106を吸引することで、めっき液排出管106から排出される。
【0050】
ここで、アノード98は、スライムの生成を抑制するため、含有量が0.03〜0.05%のリンを含む銅(含リン銅)で構成されている。白金、チタン等の不溶解性金属あるいは金属上に白金等をめっきした不溶解性電極であってもよく、交換等が不要なことから、不溶解性金属あるいは不溶解性電極であることが好ましい。更に、めっき液の流通のしやすさ等から、網状であってもよい。が、不溶解のものを使用してもよい。
【0051】
めっきを行うに際して、カソード電極88はめっき電源114のカソードに、アノード98はめっき電源114のアノードにそれぞれ電気的に接続される。この例では、めっき電源114は、流れる電流の向きを任意に変更でき、これによって、めっき装置がめっき膜をエッチングするエッチング機能を有するように構成されている。つまり、めっき液の存在下で、めっき電源114を介して、カソード電極88がアノードに、アノード98がカソードになるようにして、めっき膜をエッチングすることができる。
【0052】
ボールベアリング92と揺動アーム26との間には、接触材112の接触面112bを基板Wの表面に向けて押当る押当て機構122が設けられている。つまり、この押当て機構122は、互いに離間した位置に配置される一対の板体124,126間に配置される圧縮コイルばね128と、一端を一方の板体124に固着し、他端に設けた頭部130aを他方の板体126に当接させて、一対の板体124,126間の間隔が拡がることを規制するストッパ130とを有している。一方、揺動アーム26は、サーボモータからなる上下動モータ132とボールねじ134を介して上下動するように構成されている。この上下機構は空気圧アクチュエータであってもよい。
【0053】
これにより、接触材112が基板Wの表面に当接しない間は、圧縮コイルばね128の弾性力を介して、電極ヘッド28は、揺動アーム26と一体に上下動(及び揺動)し、接触材112が基板Wの表面に当接した後、揺動アーム26を更に下降させると、この下降に伴って、圧縮コイルばね128が更に縮み、この圧縮コイルばね128の弾性力を、クッション材111を介して接触材112に作用させて、接触材112の接触面112bを基板Wの表面に押当て、しかも圧縮コイルばね128の縮み量(変位量)を制御することで、この押当て力を調整できるようになっている。
【0054】
次に、この実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の操作について説明する。
先ず、ロード・アンロード部10からめっき処理前の基板Wを搬送ロボット14で取出し、表面(被めっき面)を上向きにした状態で、フレームの側面に設けられた基板搬出入口から一方のめっき装置12の内部に搬送する。この時、基板保持部36は、下方の基板受渡し位置Aにあり、搬送ロボット14は、そのハンドが基板ステージ68の真上に到達した後に、ハンドを下降させることで、基板Wを支持腕70上に載置する。そして、搬送ロボット14のハンドを基板搬出入口を通って退去させる。
【0055】
搬送ロボット14のハンドの退去が完了した後、カップ40を上昇させ、同時に基板受渡し位置Aにあった基板保持部36を前処理・洗浄位置Cに上昇させる。この時、この上昇に伴って、支持腕70上に載置された基板は、位置決め板72と押付け片74で位置決めされ、チャック爪76で確実に把持される。
【0056】
一方、電極アーム部30の電極ヘッド28は、この時点ではめっき液トレー22上の通常位置にあって、接触材112等がめっき液トレー22内に位置しており、この状態でカップ40の上昇と同時に、めっき液トレー22及び電極ヘッド28にめっき液の供給を開始する。そして、基板のめっき工程に移るまで、新しいめっき液を供給し、併せてめっき液排出管106を通じた吸引を行って、押当て材110、クッション材111及び接触材112に含まれるめっき液の交換と泡抜きを行う。なお、カップ40の上昇が完了すると、フレーム側面の基板搬出入口はカップ40で塞がれて閉じ、フレーム内外の雰囲気が遮断状態となる。
【0057】
カップ40が上昇するとプレコート処理に移る。即ち、基板Wを受取った基板保持部36を回転させ、待避位置にあったプレコート・回収アーム32を基板と対峙する位置へ移動させる。そして、基板保持部36の回転速度が設定値に到達したところで、プレコート・回収アーム32の先端に設けられたプレコートノズル64から、例えば界面活性剤からなるプレコート液を基板の表面に間欠的に吐出する。この時、基板保持部36が回転しているため、プレコート液は基板Wの表面の全面に行き渡る。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板保持部36の回転速度を増して、遠心力により基板Wの表面のプレコート液を振り切って乾燥させる。
【0058】
プレコート完了後にめっき処理に移る。先ず、基板保持部36を、この回転を停止、若しくは回転速度をめっき時速度まで低下させた状態で、めっきを施すめっき位置Bまで上昇させる。すると、基板Wの周縁部は、カソード電極88に接触して通電可能な状態となり、同時に基板Wの周縁部上面にシール材90が圧接して、基板Wの周縁部が水密的にシールされる。
【0059】
一方、搬入された基板Wのプレコート処理が完了したという信号に基づいて、電極アーム部30をめっき液トレー22上方から電解処理を施す位置の上方に電極ヘッド28が位置するように水平方向に旋回させ、この位置に到達した後に、電極ヘッド28をカソード部38に向かって下降させる。そして、接触材112の接触面112bが基板Wの表面に接触することなく、例えば0.1mm〜3mm程度に近接した時に、電極ヘッド28を停止させる。次に、めっき液供給管102からめっき液を電極ヘッド28の内部に供給して、図12に示すように、押当て材110、クッション材及び接触材112にめっき液を含ませながら、基板Wの上面(被めっき面)からめっき液室100の内部をめっき液で満たす。
【0060】
そして、電極ヘッド28を更に下降させて、図13に示すように、接触材112の接触面112bを基板Wの表面に密着させる。これにより、図14に詳細に示すように、接触材112の接触面112bは、基板Wに堆積させた絶縁層2を覆うシード層7の表面に密着する。この時、押当て材110と接触材112との間に、柔軟性を有するクッション材111を介装することで、接触材112の接触面112bが基板Wの表面(シード層7)から局部的に浮いてしまうことを防止しつつ、接触材112の接触面112bを基板Wの表面に隙間なく密着させることができる。この状態で、カソード電極88をめっき電源114のカソードに、アノード98をめっき電源114のアノードにそれぞれ接続して基板Wの表面(シード層7の表面)にめっきを行う。
【0061】
このように、上下に貫通する多数の貫通孔112aを有する接触材112の接触面112bを基板Wの表面のシード層7に密着させつつめっきを行うと、基板Wの表面の非配線形成部にあっては、図15(a)に示すように、接触材112に設けた貫通孔112aに対向する部位を除き、シード層7の表面が接触材112の接触面112bに直接接触し、この接触部からめっき液が排除される。このため、図15(b)〜(c)に示すように、貫通孔112aに沿って成長した柱形状のめっき膜(柱形状部)6aが形成されて成長する。そして、めっき後、図15(d)に示すように、柱形状のめっき膜6aを接触材112の貫通孔112aから引抜き、シード層7の表面に柱形状のめっき膜6aが残るようにする。
【0062】
一方、例えば基板Wの表面の配線形成部にあっては、図16(a)に示すように、絶縁層2に形成したトレンチ4等の配線用凹部の内部は接触材112の接触面112bに接触しておらず、トレンチ4等の内部がめっき液で満たされる。このため、図16(b)に示すように、先ずトレンチ4等の配線用凹部の内部を埋めるように成長しためっき膜(銅膜)6bが形成される。このめっき膜6bが接触材112の接触面112bまで到達すると、図16(c)に示すように、めっき膜6bの表面に、接触材112の貫通孔112aに沿って成長した柱形状のめっき膜(柱形状部)6cが形成される。そして、めっき後、図16(d)に示すように、柱形状のめっき膜6cを接触材112の貫通孔112aから引抜き、これによって、トレンチ4等の配線用凹部の内部に埋込んだめっき膜6bの表面に柱形状のめっき膜6cが残るようにする。
【0063】
この時、基板の非配線形成部及び配線形成部にできた柱形状のめっき膜(柱形状部)6a,6cの根本は、同じ高さに揃っている。また、接触材112の内部に、直径が12μm以下の横断面円形の貫通孔112aを設けることで、基板の表面に形成される柱形状のめっき膜6a,6cは、直径が12μm以下の円柱状となる。これにより、後のCMPで円柱状のめっき膜6a,6cを容易に落とすことができ、しかもトレンチ4等の配線用凹部に比べて円柱状のめっき膜6cが大きすぎて、配線形成部に円柱状のめっき膜6cが形成されない状況が起こることを防止することができる。
【0064】
図23及び図24に、前述のように、内部に直線状に延びる貫通孔を有する接触材を基板の表面に接触させながら該表面にめっきを行って、基板の表面にめっき膜を形成した時の模式図を示す。この図23及び図24から、多数の円柱状のめっき膜(柱形状部)が林立しためっき膜が得られることが判る。
【0065】
めっき処理が完了すると、電極アーム部30を上昇させ旋回させてめっき液トレー22上方へ戻し、通常位置へ下降させる。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置から基板Wに対峙する位置へ移動させて下降させ、めっき液回収ノズル66から基板W上のめっき液の残液を回収する。この残液の回収が終了した後、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板のめっき面のリンスのために、純水用の固定ノズル34から基板Wの中央部に純水を吐出し、同時に基板保持部36をスピードを増して回転させて基板Wの表面の被めっき液を純水に置換する。このように、基板Wのリンスを行うことで、基板保持部36をめっき位置Bから下降させる際に、めっき液が跳ねて、カソード部38のカソード電極88が汚染されることが防止される。
【0066】
リンス終了後に水洗工程に入る。即ち、基板保持部36をめっき位置Bから前処理・洗浄位置Cへ下降させ、純水用の固定ノズル34から純水を供給しつつ基板保持部36及びカソード部38を回転させて水洗を実施する。この時、カソード部38に直接供給した純水、または基板Wの面から飛散した純水によってシール材90及びカソード電極88も基板と同時に洗浄することができる。
【0067】
水洗完了後にドライ工程に入る。即ち、固定ノズル34からの純水の供給を停止し、更に基板保持部36及びカソード部38の回転スピードを増して、遠心力により基板表面の純水を振り切って乾燥させる。併せて、シール材90及びカソード電極88も乾燥される。ドライ工程が完了すると基板保持部36及びカソード部38の回転を停止させ、基板保持部36を基板受渡し位置Aまで下降させる。すると、チャック爪76による基板Wの把持が解かれ、基板Wは、支持腕70の上面に載置された状態となる。これと同時に、カップ40も下降させる。
【0068】
以上でめっき処理及びそれに付帯する前処理や洗浄・乾燥工程の全て工程を終了し、搬送ロボット14は、そのハンドを基板搬出入口から基板Wの下方に挿入し、そのまま上昇させることで、基板保持部36から処理後の基板Wを受取る。そして、搬送ロボット14は、この基板保持部36から受取った処理後の基板Wをロード・アンロード部10に戻す。
【0069】
その後、基板WをCMP装置に搬送し、CMP装置で基板Wの表面を研磨することで、先ず図17(a)に示す無数の柱形状のめっき膜(柱形状部)6a,6cを落とし、これによって、図17(b)に示すように、基板Wの表面を平坦にする。この柱形状の無数のめっき膜6a,6bの根本は同じ高さに揃っており、このため、比較的微小な力で簡単に、つまり低圧且つ高速なCMPプロセスでめっき膜6a,6bを排除することができる。その結果、無数の柱形状のめっき膜6a,6cを排除した後のめっき膜の表面は、凹凸の少ない平坦な表面となり、CMPにとっては従来の凹凸のあるめっき膜よりも研磨しやすい形状となる。
【0070】
上記の例は、トレンチ4等の配線用凹部の深さが比較的小さい場合に適用した例を示している。しかし、トレンチ4等の配線用凹部の深さが比較的大きい場合、配線用凹部の内部を銅等で埋めるまでの間に柱形状のめっき膜がかなりの高さに成長し、アンカー効果が強くなって接触材と基板の表面との密着が強くなるため、接触材から柱形状のめっき膜を引き抜く際に接触材を壊してしまうことがある。
【0071】
図18は、トレンチ4等の配線用凹部の深さが比較的大きい場合でも、配線用凹部の内部を銅等で埋め、しかも接触材を壊してしまうことなく接触材から柱形状のめっき膜を引き抜くことができるようにした例を工程順に示す。
【0072】
先ず、前述の例と同様に、多数の貫通孔112aを有する接触材112の接触面112bを基板Wの表面のシード層7に密着させつつめっきを行い、これによって、図18(a)に示すように、非配線形成部に柱形状のめっき膜(柱形状部)6aを、トレンチ4等の配線用凹部の内部に該凹部を埋めるめっき膜6bを形成する。そして、必要に応じて、カソード電極88及びアノード98をめっき電源114から切り離し、しかる後、図18(b)に示すように、電極ヘッド28を上昇させて、柱形状のめっき膜6aを接触材112から引き抜く。そして、例えば、電極ヘッド28または基板保持部36の少なくとも一方を回転させて、接触材112の接触面112bと基板Wの表面との相対位置を変える。
【0073】
次に、図18(c)に示すように、電極ヘッド28を再度下降させ、接触材112の接触面112bを再度基板Wの表面のシード層7に密着させ、これによって、柱形状のめっき膜6aを接触材112で押し倒す。この状態で、カソード電極88及びアノード98をめっき電源114に接続してめっきを行い、これによって、図18(d)に示すように、押し倒された柱形状のめっき膜6aの表面に柱形状の第2のめっき膜(柱形状部)6dを形成し、同時に、トレンチ4等の配線用凹部の内部に埋めためっき膜6bを成長させる。この例では、柱形状のめっき膜6aを接触材112で押し倒し、更にめっきを行う操作を1回行うようにしているが、この操作を、必要に応じて複数回繰り返すようにしてもよい。これによって、接触材112を壊すことなく、めっき膜表面の凹凸の高低差を徐々に小さくして行くことができる。
【0074】
そして、図18(d)に示すように、トレンチ4等の配線用凹部内に形成されるめっき膜6bが接触材112の表面まで到達し、更に、このめっき膜6bの表面に、接触材112の貫通孔112aに沿って成長した柱形状のめっき膜6cが形成された時に、めっきを終了する。そして、めっき後、図18(e)に示すように、柱形状のめっき膜6c,6dを接触材112の貫通孔112aから引き抜く。
【0075】
この方法によれば、トレンチ4等の配線用凹部内を銅膜等のめっき膜で全て埋め込んだ時に、めっき膜の表面にできる柱形状のめっき膜6c,6dの高さは、比較的低くなり、接触材112を壊すことなく柱形状のめっき膜6c,6dを接触材112から引き抜くことができる。この方法の場合、トレンチ4等の配線用凹部内に形成されるめっき膜6bは緻密となり、非配線形成部に形成されるめっき膜6a,6dは、柱形状のめっき膜6aを倒した際に多少の隙間ができるため、ボイドを含む可能性がある。しかし、非配線形成部に形成されるめっき膜は、次工程のCMPプロセスによって削り落とされてしまうので問題はない。
【0076】
この実施の形態のめっき装置にように、流れる電流の向きを任意に変更できるようにしためっき電源114を使用し、めっき膜をエッチングするエッチング機能を有するように構成した場合には、めっきを数回に分け、1回のめっきが終了する度にめっき膜をエッチング除去するようにしてもよい。
【0077】
つまり、例えば、図18(b)に示すように、電極ヘッド28を上昇させて、柱形状のめっき膜6aを接触材112から引き抜いた状態で、図19(a)に示すように、めっき液の存在下で、めっき電源114を介して、カソード電極88がアノードに、アノード98がカソードになるようにして、めっき膜6a,6bをエッチングする。このようにしてエッチングを行うと、電気は尖ったところに集中して流れるので、トレンチ4等の配線用凹部内に埋込んだめっき膜6bよりも柱形状のめっき膜6aの方が優先的にエッチングされ、これによって、図19(b)に示すように、柱形状のめっき膜6aがなくなっても、トレンチ4等の配線用凹部内に埋込んだめっき膜6bの大部分は残る。
【0078】
そして、柱形状のめっき膜6aがなくなったところで次のめっきを行う処理を、必要に応じて複数回繰り返すことによって、接触材112を壊すことなく徐々にめっき膜表面の凹凸の高低差を小さくして行き、トレンチ4等の配線用凹部内を銅膜等のめっき膜で全て埋め込んだ時に、めっき膜の表面にできる柱形状のめっき膜の高さが比較的低くなるようにして、接触材を壊すことなく柱形状のめっき膜を接触材から引き抜くことができる。
【0079】
図20(a)に示すように、例えば柱形状のめっき膜6aが直径dの円柱形状の場合に、めっき膜を等方的にエッチングするような条件で、アノードと基板表面のめっき膜との間にめっき時とは逆の電解(逆電解)をかけ、柱形状のめっき膜6aの半分の厚さ相当する分、つまりd/2だけめっき膜をエッチングすることで、図20(b)に示すように、柱形状のめっき膜6aをその高さに因ることなくエッチング除去することができる。
【0080】
図21は、本発明の他の実施の形態のめっき装置の要部を示す。この例のめっき装置は、図21(a)に示すように、内部に多数の貫通孔112aを有する接触材112を単独で使用してアノード98と基板Wとの間に位置させ、図21(b)に示すように、接触材112の接触面(下面)112bを基板Wの表面、つまり絶縁層2を覆うシード層7の表面に密着させてめっきを行うようにしている。
【0081】
図22は、本発明の更に他の実施の形態のめっき装置の要部を示す。この例のめっき装置は、内部に多数の貫通孔112aを有する接触材112を、クッション材を介することなく、押当て材110の下面に直接取付けている。
なお、上記の例では、配線材料として、銅を使用しているが、銅の代わりに、銅合金、銀または銀合金を使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】めっき処理によって銅配線を形成する例を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の全体を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態のめっき装置を示す平面図である。
【図4】図3に示すめっき装置の基板保持部及び電極部の拡大断面図である。
【図5】図3に示すめっき装置のプレコート・回収アームを示す正面図である。
【図6】図3に示すめっき装置の基板保持部の平面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図6のC−C線断面図である。
【図9】図3に示すめっき装置の電極部の平面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】図3に示すめっき装置の電極アーム部の平面図である。
【図12】図3に示すめっき装置の電極ヘッド及び基板保持部を概略的に示す電解めっき時における断面図である。
【図13】図3に示すめっき装置の電極ヘッド及び基板保持部を概略的に示す電解エッチング時における断面図である。
【図14】図14の要部を拡大して示す要部拡大図である。
【図15】本発明の実施の形態のめっき方法によって非配線形成部にめっき膜が形成される過程を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態のめっき方法によって配線形成部にめっき膜が形成される過程を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態のめっき方法によって形成された柱形状のめっき膜をCMPプロセスによって除去する過程を示す図である。
【図18】本発明の他の実施の形態のめっき方法によって基板の表面にめっき膜が形成される過程を示す図である。
【図19】柱形状のめっき膜をめっきの途中でエッチングによって除去する過程を示す図である。
【図20】柱形状のめっき膜をめっきの途中で等方的エッチングによって除去する過程を示す図である。
【図21】本発明の他の実施の形態のめっき装置の要部を示す断面図である。
【図22】本発明の更に他の実施の形態のめっき装置の要部を示す断面図である。
【図23】内部に直線状に延びる貫通孔を有する接触材を基板の表面に接触させながら該表面にめっきを行って得られためっき膜を斜め上方から見た模式図である。
【図24】内部に直線状に延びる貫通孔を有する接触材を基板の表面に接触させながら該表面にめっきを行って得られためっき膜を正面から見た模式図である。
【符号の説明】
【0083】
2 絶縁層
4 トレンチ(配線用凹部)
5 バリア層
6a〜6d めっき膜
6 銅膜
7 シード層
12 めっき装置
16 めっき液タンク
18 めっき液供給設備
20 基板処理部
22 めっき液トレー
28 電極ヘッド
30 電極アーム部
32 プレコート・回収アーム
34 固定ノズル
36 基板保持部
38 カソード部
68 基板ステージ
70 支持腕
76 チャック爪
88 カソード電極
90 シール材
94 ハウジング
94b めっき液排出口
98 アノード
100 めっき液室
102 めっき液供給管
104a めっき液導入口
104 めっき液導入管
106 めっき液排出管
110 押当て材
111 クッション材
112 接触材
112a 貫通孔
114 めっき電源
122 押当て機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部で保持した基板と接触して通電させるカソード電極を備えたカソード部と、
前記基板の表面に対向する位置に配置されるアノードと、
前記基板保持部で保持した基板と前記アノードと間に前記基板と接離する方向に移動自在に配置され、該移動方向に沿って直線状に貫通して延びる貫通孔を有する接触材を有することを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記接触材の前記基板保持部で保持した基板の表面と対向する接触面を該基板の表面に押当てる押当て機構を有することを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記接触材と前記アノードとの間に、前記接触材の前記接触面を基板の表面に押当てる押当て材を配置したことを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置。
【請求項4】
前記接触材と前記アノードとの間に、前記接触材の前記接触面を基板の表面に均一に押付ける柔軟性を有するクッション材を配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項5】
前記接触材に設けられた貫通孔は、直径が12μm以下の横断面円形であり、かつ1.0×10〜1.0×10個/cmの密度で分布していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記接触材の前記接触面の表面粗さのRa値は、1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項7】
前記接触材は、絶縁体からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
前記絶縁体は、ポリカーボネート、セラミックス、カーボン、ポリエステル、ガラス、シリコン、レジスト材またはフッ素樹脂であることを特徴とする請求項7記載のめっき装置。
【請求項9】
前記基板の表面に形成されためっき膜をエッチングするエッチング機構を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項10】
前記接触材に設けられる貫通孔は、前記接触面から離れる方向に向かって横断面積が徐々に減少するテーパ形状であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項11】
表面に配線用凹部を形成した基板を用意し、
前記基板の表面に対向する位置にアノードを配置し、
前記基板と前記アノードとの間に、内部に直線状に延びる貫通孔を有する接触材を該接触材の基板の表面と対向する接触面を該基板の表面に押当てて配置し、
前記アノードと前記基板との間にめっき液を満たしつつ、前記アノードと前記基板の表面との間にめっき電流を流して基板の表面にめっきを行うことを特徴とするめっき方法。
【請求項12】
前記接触材を前記基板に対して静止させた状態で、基板の表面にめっきを行うことを特徴とする請求項11記載のめっき方法。
【請求項13】
基板の表面にめっきを行った後、前記接触材の前記接触面の基板の表面に対する相対位置を変えて、基板の表面に再度めっきを行うことを特徴とする請求項11または12記載のめっき方法。
【請求項14】
前記接触材を前記基板の表面から離した後、前記接触材の前記接触面の基板の表面に対する相対位置を変えることを特徴とする請求項13記載のめっき方法。
【請求項15】
基板の表面に再度めっきを行う前に、基板の表面に形成しためっき膜をエッチングすることを特徴とする請求項13または14記載のめっき方法。
【請求項16】
前記エッチングを、前記アノードと前記基板との間にめっきを満たしつつ、前記アノードと前記基板の表面の極性をめっき時と逆にして行うことを特徴とする請求項15記載のめっき方法。
【請求項17】
前記接触材を前記基板の表面から離して前記エッチングを行うことを特徴とする請求項16記載のめっき方法。
【請求項18】
請求項11乃至17のいずれかに記載のめっき方法によって基板にめっきした後、CMP装置にて基板表面を研磨し、配線部以外の余分なめっき膜を除去することを特徴とする、基板の処理方法。
【請求項19】
請求項11乃至17のいずれかに記載のめっき方法によって基板にめっきした後、エッチング装置にて基板表面の柱形状部を除去し、平坦な表面とした後、CMP装置にて基板表面を研磨し、配線部以外の余分なめっき膜を除去することを特徴とする、基板の処理方法。
【請求項20】
内部に直線状に延びる貫通孔を有する接触材を基板の表面に接触させながら該表面にめっきを行うことで得られる、前記貫通孔に沿って直線状に成長した無数の柱形状部を有するめっき膜。
【請求項21】
前記柱形状は、直径が12μm以下の円柱状であることを特徴とする請求項20記載のめっき膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−9241(P2007−9241A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188311(P2005−188311)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】