説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】めっき槽内の電流密度分布を均一に調整し且つめっき液の流れを調整してめっき膜厚均一性とめっき表面の均一性を高めるめっき装置及びめっき方法を提供する。
【解決手段】めっきユニット30内に保持されるめっき液Qをアノード10側と基板W側に遮断するように設置され抵抗体Rを保持する抵抗体ホルダ60と、抵抗体Rを経由しない電気経路を遮断するシール170と、基板Wと抵抗体Rとの間の隙間S1にめっき液を噴射して流通させるめっき液噴射口183A,Bと、抵抗体R及び抵抗体ホルダ60で区画されたアノード領域A2及び基板領域A1内にそれぞれめっき液を循環させるめっき液循環系250,260とを具備する。オーバーフロー槽40に、基板領域A1とアノード領域A2からそれぞれオーバーフローするめっき液を遮断する仕切り部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば基板の表面(被めっき面)にめっきを施すめっき装置、特に半導体ウェーハ等の表面に設けられた微細なトレンチやビアホール、レジスト開口部にめっき膜を形成したり、半導体ウェーハの表面にパッケージの電源等と電気的に接続するバンプ(突起状接続電極)を形成したりするのに用いて好適なめっき装置及びめっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例えば、TAB(Tape Automated Bonding)やFC(フリップチップ)においては、配線が形成された半導体チップの表面の所定個所(電極)に金、銅、はんだ、或いは鉛フリーはんだやニッケル、更にはこれらを多層に積層した突起状接続電極(バンプ)を形成し、このバンプを介してパッケージの電極やTAB電極と電気的に接続することが広く行われている。このバンプの形成方法としては、めっき法、蒸着法、印刷法、ボールバンプ法といった種々の手法があるが、半導体チップのI/O数の増加、細ピッチ化に伴い、微細化が可能で性能が比較的安定しているめっき法が多く用いられるようになってきている。特に、電気めっきによって得られる金属膜は高純度で、膜形成速度が速く、膜厚制御方法が簡単であるという特徴がある。
【0003】
図16は、いわゆるディップ方式を使用した従来の電気めっき装置300の一例を示す概略構成図である。同図に示すようにこの電気めっき装置300は、内部にめっき液Qを保持するめっき槽301内に、基板Wと、基板Wの周縁部及び裏面を水密的にシールし表面(被めっき面)を露出させて着脱自在に保持する基板ホルダ310と、アノード340と、アノード340を保持して基板Wと対向させるアノードホルダ350と、アノード340と基板Wの間に設置され中央に中央孔330を有する誘電体からなる調整板(レギュレーションプレート)320とを浸漬して構成されている。そして導線370aを介してアノード340をめっき電源360の陽極に、導線370bを介して基板Wをめっき電源360の陰極にそれぞれ接続することで、基板Wとアノード340との電位差により、めっき液Q中の金属イオンが基板Wの表面より電子を受け取り、基板W上に金属が析出して金属膜が形成される。
【0004】
このめっき装置300によれば、アノード340と基板Wとの間に、中央孔330を有する調整板320を配置したので、この調整板320によってめっき槽301内の電位分布を調整することができ、基板Wの表面に形成される金属膜の膜厚分布をある程度調整することができる。
【0005】
一方半導体基板(ウェーハ)は、年々大面積となる傾向にあり、それに伴う弊害も生じてきた。つまり、大面積の基板の場合、基板の外周近傍に接続するカソードから基板の中央までの導電層の電気抵抗が大きくなり、基板の面内で電位差が生じて、基板各部のめっき速度に差が生じてしまう。図17は代表的な電解めっきの等価回路を示しており、回路中には、以下のような抵抗成分が存在する。
R1:電源360とアノード340との間の電源線抵抗及び各種接触抵抗
R2:アノード340における分極抵抗
R3:めっき液Qの抵抗
R4:カソード400における分極抵抗
R5:導電層の抵抗
R6:カソード400と電源360との間の電源線抵抗及び各種接触抵抗
【0006】
図17から明らかなように、導電層の抵抗R5が他の電気抵抗R1〜R4およびR6に比べて大きくなると、この抵抗R5の両端に生じる電位差が大きくなり、それに伴って基板各部でのめっき電流に差が生じる。このため、カソード400から遠い位置ではめっき膜の成長速度が低下する。これは、基板Wの面内で電流密度が異なることを意味し、めっき膜の特性自体(めっき膜の抵抗率、純度、埋め込み特性など)が面内で均一とならない。
【0007】
この欠点を防止するため、図18に示すように、アノード340と基板Wの間に、めっき液Qの電気伝導率よりも小さい電気伝導率の高抵抗構造体430を配置することが行われている。このように構成すれば、図17に示す等価回路に比べて、高抵抗構造体430による抵抗Rpが追加されるため、高抵抗構造体430による抵抗Rpが大きな値になると、(R2+R3+Rp+R4)/(R2+R3+Rp+R4+R5)は1に近づき、抵抗R5、すなわち導電層による抵抗成分の影響を受けにくくなり、基板各部でのめっき電流に差があまり生じなくなる。
【0008】
ところで近年のSOC、WL‐CSPなどの高密度実装技術においては、基板の全面にわたって形成した金属膜の表面形状及び膜厚の高精度の均一性がますます要求されるようになってきている。しかしながら上記従来のめっき方法では、高精度の均一性に応えた金属膜を形成することは非常に困難であった。また、例えば基板の内部に設けた、直径10〜20μm、深さ70〜150μm程度の、アスペクト比が高く、深さの深いビアホールの内部に、内部にボイド等の欠陥が生じることを防止しつつ、めっきで金属膜を確実に埋め込むことは、かなり困難であるばかりでなく、多大の時間を要するのが現状であった。
【特許文献1】特開2004−225129号公報
【特許文献2】特開2003−268591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、めっき槽内の電流密度分布をより均一に調整し、さらにめっき液の流れを調整して、めっき膜厚均一性およびめっき表面の均一性をさらに高めることができるめっき装置及びめっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に記載の発明は、めっき液を保持し、このめっき液中に基板と抵抗体とアノードとをこの順番で収納し前記基板とアノード間に通電することで基板の被めっき面にめっきを施すめっきユニットと、このめっきユニットを内部に収納するオーバーフロー槽とを有するめっき槽と、前記基板を保持して基板の被めっき面を前記めっき液に接触させる基板ホルダと、前記めっきユニット内に保持されるめっき液をアノード側と基板側に遮断するように設置され、前記抵抗体を保持する開口部を有する抵抗体ホルダと、前記アノードと前記基板の間の電気経路のうち前記抵抗体を経由しない電気経路を遮断するシールと、前記基板と前記抵抗体との間の隙間にめっき液を噴射してこの隙間にめっき液を流通させる複数のめっき液噴射口を有するめっき液流通機構と、前記めっきユニット内の抵抗体及び抵抗体ホルダで区画されたアノード領域及び基板領域内にそれぞれめっき液を循環させるめっき液循環系と、を具備し、さらに前記オーバーフロー槽に、前記アノード領域からオーバーフローするめっき液と、基板領域からオーバーフローするめっき液とを遮断する仕切り部材を設けたことを特徴とするめっき装置にある。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、前記めっき液流通機構は、前記めっき液噴射口による前記基板と前記抵抗体の間の隙間へのめっき液の噴射と、前記隙間に満たされためっき液の排出により、この隙間にめっき液を流通させる構成であることを特徴とする請求項1に記載のめっき装置にある。
【0012】
本願請求項3に記載の発明は、前記複数のめっき液噴射口は、前記抵抗体ホルダの開口部の周囲または前記基板の外周部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のめっき装置にある。
【0013】
本願請求項4に記載の発明は、前記めっき液噴射口は、このめっき液噴射口から噴射されるめっき液が、前記基板ホルダに保持された基板の被めっき面の中央に向かって直線状又は扇状に広がって流れるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の内の何れかに記載のめっき装置にある。
【0014】
本願請求項5に記載の発明は、前記めっき液流通機構は、前記複数のめっき液噴射口を切り替えてこれら複数のめっき液噴射口の全部又は一部からめっき液を噴射させる切替機構を有することを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載のめっき装置にある。
【0015】
本願請求項6に記載の発明は、前記基板ホルダは、クランパにより、抵抗体ホルダに密着して取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5の内の何れかに記載のめっき装置にある。
【0016】
本願請求項7に記載の発明は、基板ホルダに保持した基板の被めっき面をめっきユニット内のめっき液に接触させて配置すると共に、前記基板の被めっき面に対向させてアノードを前記めっきユニット内のめっき液に浸漬して配置し、開口部を有しこの開口部に抵抗体を保持した抵抗体ホルダを、前記基板と前記アノードとの間に、前記めっきユニット内のめっき液を遮断するように配置し、さらに前記基板と前記抵抗体との間の隙間にめっき液を噴射して流通させる複数のめっき液噴射口を配置し、前記めっき液噴射口から基板の被めっき面の中央へ向けてめっき液を噴射すると同時に前記隙間に満たされためっき液を隙間の外部に排出しながら、前記アノードと前記基板との間にめっき電流を通電して基板の被めっき面にめっきを行うことを特徴とするめっき方法にある。
【0017】
本願請求項8に記載の発明は、前記複数のめっき液噴射口を、前記抵抗体ホルダの開口部の周囲、または前記基板の外周部に沿って配置することを特徴とする請求項7に記載のめっき方法にある。
【0018】
本願請求項9に記載の発明は、前記めっき液噴射口から噴射されるめっき液を、前記基板ホルダに保持された基板の被めっき面の中央に向かって直線状又は扇状に流すことを特徴とする請求項7又は8に記載のめっき方法にある。
【0019】
本願請求項10に記載の発明は、めっき液を噴射する前記複数のめっき液噴射口を切り替えることによって、これら複数のめっき液噴射口の全部又は一部からめっき液を噴射させることを特徴とする請求項7乃至9の内の何れかに記載のめっき方法にある。
【0020】
本願請求項11に記載の発明は、前記基板ホルダを、クランパにより、前記抵抗体ホルダに一体に密着して取り付けることを特徴とする請求項7乃至10の内の何れかに記載のめっき方法にある。
【発明の効果】
【0021】
本願請求項1に記載の発明によれば、電流の整流作用の高い抵抗体を用いたので、基板の被めっき面上の電流密度の均一化が図れ、めっき膜厚の均一化が図れる。
まためっき液噴射口から基板と抵抗体の間の隙間にめっき液を噴射してこの隙間のめっき液を攪拌・流通するので、例え基板と抵抗体間の隙間が狭くても、容易にめっき液を攪拌・流通させることができ、めっき表面の均一性が図れる。特に基板と抵抗体との間隔が6mm未満の場合、有効である。
また抵抗体ホルダによってめっきユニット内に保持されているめっき液をアノード側と基板側に遮断し、且つ抵抗体を経由しない電気経路をシールによって遮断し、さらにめっきユニット内のアノード領域及び基板領域内にそれぞれめっき液を循環させるめっき液循環系を設けるとともにオーバーフロー槽に仕切り部材を設けることによりアノード側のめっき液とカソード側のめっき液を絶縁したので、抵抗体以外の電流経路への電流のリークが遮断でき、この点からも基板の被めっき面上の電流密度の均一化が図れ、めっき膜厚の均一化が図れる。
【0022】
本願請求項2に記載の発明によれば、めっき液噴射口から基板と抵抗体の間の隙間へ噴射されためっき液をスムーズにその外部ヘ排出することができ、この隙間へのめっき液の流通が良好になる。
【0023】
本願請求項3,請求項4に記載の発明によれば、めっき液噴射口から噴射されためっき液が基板の被めっき面の周囲から中央に向かうので、抵抗体の周囲を回り込むことなく、基板と抵抗体間の隙間に確実にめっき液を流し込むことができ、基板の被めっき面全面にわたってよどむことなくめっき液を流通させることができる。
【0024】
本願請求項5に記載の発明によれば、めっき液にランダムな流れを与えることができ、めっき表面の均一性をさらに高めることができる。
【0025】
本願請求項6に記載の発明によれば、抵抗体ホルダに基板ホルダを簡便に着脱でき、また抵抗体に対する基板の位置決めが容易に行える。また両者を密着・一体化することで、容易に基板ホルダと抵抗体ホルダの間に形成される隙間を密閉構造又は密閉状態に近い構造に構成でき、めっき液の抵抗体周囲への回り込みを防止でき、めっき液を確実に基板と抵抗体間に通過させることができる。
【0026】
本願請求項7に記載の発明によれば、電流の整流作用の高い抵抗体を用いたので、基板の被めっき面上の電流密度の均一化が図れ、めっき膜厚の均一化が図れる。
まためっき液噴射口から基板と抵抗体の間の隙間にめっき液を噴射してこの隙間のめっき液を攪拌・流通するので、例え基板と抵抗体間の隙間が狭くても、容易にめっき液を攪拌・流通させることができ、めっき表面の均一性が図れる。
【0027】
本願請求項8,請求項9に記載の発明によれば、めっき液噴射口から噴射されためっき液が基板の被めっき面の周囲から中央に向かうので、抵抗体の周囲を回り込むことなく、基板と抵抗体間の隙間に確実にめっき液を流し込むことができ、基板の被めっき面全面にわたってよどむことなくめっき液を流通させることができる。
【0028】
本願請求項10に記載の発明によれば、めっき液にランダムな流れを与えることができ、めっき表面の均一性をさらに高めることができる。
【0029】
本願請求項11に記載の発明によれば、抵抗体ホルダに基板ホルダを簡便に着脱でき、また抵抗体に対する基板の位置決めが容易に行える。また両者を密着・一体化することで、容易に基板ホルダと抵抗体ホルダの間に形成される隙間を密閉構造又は密閉状態に近い構造に構成で、めっき液の抵抗体周囲への回り込みを防止でき、めっき液を確実に基板と抵抗体間に通過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるめっき装置1−1の全体概略構成図であり、図2はめっき装置1−1を構成する各部品の内のアノード10とめっきユニット30とオーバーフロー槽40と基板ホルダ50と抵抗体ホルダ60とをその上方から見た概略平面図である。この実施形態では本発明をディップ式バンプめっき装置へ適用している。図1に示すようにめっき装置1−1は、めっき液Qを保持しこのめっき液Q中に基板Wとアノード10を抵抗体Rを挟んで収納するめっきユニット30と、基板Wとアノード10間に接続される電源20と、前記基板Wを保持して基板Wの被めっき面W1を前記めっき液Qに接触させる基板ホルダ50と、前記めっきユニット30内に保持されるめっき液Qをアノード10側と基板W側に遮断するように設置され、中央に前記抵抗体Rを保持する開口部61を有する抵抗体ホルダ60と、前記アノード10と前記基板Wの間の電気経路のうち前記抵抗体Rを経由しない電気経路を遮断するシール(絶縁シール)170と、前記めっきユニット30内の抵抗体R及び抵抗体ホルダ60で区画された基板領域A1にめっき液Qを循環させるめっき液循環系250及びアノード領域A2にめっき液Qを循環させるめっき液循環系260と、前記基板Wと抵抗体Rとの間の隙間S1にめっき液Qを噴射してこの隙間S1にめっき液Qを流通させる複数のめっき液噴射口183を有するめっき液流通機構180と、前記めっきユニット30を内部に収納し、前記アノード領域A2からオーバーフローするめっき液Qと、基板領域A1からオーバーフローするめっき液Qとを遮断する仕切り部材220(図2参照)を具備するオーバーフロー槽40と、前記基板ホルダ50を抵抗体ホルダ60に取り付けるクランパ240と、前記基板領域A1内のめっき液Qと、アノード領域A2内のめっき液Qとをそれぞれ所定の温度に維持する温度制御手段270,280と、を有して構成されている。なおめっきユニット30とオーバーフロー槽40全体をめっき槽5とする。以下各構成部品について詳細に説明する。
【0031】
基板ホルダ50は、基板Wの外周部及び裏面(被めっき面W1の反対側の面)を気密的にシールした状態で基板Wの被めっき面W1を露出させて保持し、この被めっき面W1だけをめっきユニット30内のめっき液Qに接触させる構造に構成されている。基板ホルダ50の基板Wを保持したその周囲の部分は抵抗体ホルダ60側に突出する当接部51となっている。
【0032】
抵抗体Rとしてこの実施形態では略円板状のセラミック製の多孔質体を用いており、具体的には気孔率30%以下の多孔質構造体であり、炭化ケイ素、表面を酸化処理した炭化ケイ素、アルミナ又はプラスチックの1つ、又はそれらの組み合わせによって構成されている。
【0033】
図3は抵抗体ホルダ60を基板W側から見た概略図である。同図及び図1に示すように、抵抗体ホルダ60は絶縁性部材で構成され、前記抵抗体Rをちょうど収納・保持する外形寸法形状の円形の開口部61をそのほぼ中央に設けている。抵抗体ホルダ60は図2に示すように、めっきユニット30内に保持されるめっき液Qをアノード10側と基板W側とに遮断するように設置されており、これによってめっきユニット30内を前述の基板領域A1とアノード領域A2とに区画している。抵抗体Rの外周と抵抗体ホルダ60の開口部61の内周の隙間は、絶縁性の材料で構成されたシール170によって密閉され、この隙間から電流がリークしないようにしている。抵抗体ホルダ60の開口部61の周囲には、複数本のめっき液噴射管181が取り付けられ、それらの先端はめっき液噴射口183(183A,183B)となっている。これらめっき液噴射管181とめっき液噴射口183と下記する切替機構190とによってめっき液流通機構180が構成されている。各めっき液噴射口183(183A,183B)は、略等間隔で抵抗体ホルダ60の開口部61の周囲に開口している。これら各めっき液噴射口183は図3に実線及び点線の矢印で示すように、各めっき液噴射口183から噴射されるめっき液Qが基板ホルダ50に保持された基板Wの被めっき面W1の中央に向かって流れていくように構成されている。また図3に示す右側の各めっき液噴射口183Aと、左側の各めっき液噴射口183Bは、図1に示す切替機構190によって分岐したそれぞれの分岐管251A,251Bが接続されている。また図3に示すように、抵抗体ホルダ60の基板W側を向く抵抗体Rの周囲の面は、前記基板ホルダ50の当接部51を当接して基板ホルダ50と抵抗体ホルダ60から形成される隙間(空間)S1を密閉状態(密閉空間)又はそれに近い状態にする当接面63となっており、当接面63には開口部61の内周から抵抗体ホルダ60の外周に至る上下左右四本の溝状のめっき液排出部210が設けられている。
【0034】
図4はクランパ240の概略正面図である。同図に示すようにクランパ240は、抵抗体ホルダ60の基板W側を向く面の下部の左右両側に軸支部243によって回動自在に取り付けられ、また抵抗体ホルダ60の基板W側を向く面の上部の左右両側に一対のクランパ保持部245を設けて構成されている。クランパ240はその上部がクランパ保持部245に保持された際に図1に示すように基板ホルダ50の背面を押圧・支持し、抵抗体ホルダ60の当接面63を基板ホルダ50の当接部51に当接(圧接)し、これによって基板ホルダ50を抵抗体ホルダ60に一体に取り付けるものである。基板ホルダ50を抵抗体ホルダ60に着脱する場合は、クランパ240を図4に点線で示す位置まで左右に回動して開く。抵抗体ホルダ60の下部中央には、抵抗体ホルダ60に基板ホルダ50を取り付ける際に基板ホルダ50の下辺部を当接して抵抗体ホルダ60に対する基板ホルダ50の上下方向の位置合せを行うためのストッパー247が設置されている。
【0035】
めっき液循環系250は基板領域A1側のめっきユニット30からオーバーフローする側のオーバーフロー槽40の底部と抵抗体ホルダ60の各めっき液噴射管181間を連結するめっき液循環用配管251中に、ポンプ110とフィルタ130と流量計150とを取り付けて構成され、さらに切替機構190を取り付けている。切替機構190はめっき液循環用配管251を2本の分岐管251A,251Bに分岐するものであり、一方の分岐管251Aは前記各めっき液噴射口183Aに、他方の分岐管251Bは前記各めっき液噴射口183Bにそれぞれ接続されている。
【0036】
めっき液循環系260はアノード領域A2側のめっきユニット30からオーバーフローする側のオーバーフロー槽40の底部とアノード領域A2側のメッキ層30の底部間を連結するめっき液循環用配管261中に、ポンプ120とフィルタ140と流量計160とを取り付けて構成されている。
【0037】
温度制御手段270は、基板領域A1側のめっきユニット30からオーバーフローする側のオーバーフロー槽40から配管271を引き出し、この配管271中にポンプ90と温度調整ユニット70を接続し、再び前記オーバーフロー槽40に接続するように構成されている。
【0038】
温度制御手段280は、アノード領域A2側のめっきユニット30からオーバーフローする側のオーバーフロー槽40から配管281を引き出し、この配管281中にポンプ100と温度調整ユニット80を接続し、再び前記オーバーフロー槽40に接続するように構成されている。
【0039】
次に上記めっき装置1−1によって基板Wにめっきを行う方法について説明する。まず基板Wを保持した基板ホルダ50と、抵抗体Rを保持した抵抗体ホルダ60とをクランパ240によって一体化する。このとき前述のように基板ホルダ50の当接部51が抵抗体ホルダ60の当接面63に当接することで、基板ホルダ50と抵抗体ホルダ60の間に形成される隙間S1の周囲が覆われ、この隙間S1が密閉状態又はそれに近い状態になる。この隙間S1は前記めっき液排出部210(図3参照)によって外部に連通している。
【0040】
そして前記一体化した基板ホルダ50と抵抗体ホルダ60も及びアノード10を、めっきユニット30内のめっき液Q中に浸漬する。そしてめっき液循環系250のポンプ110を駆動することで、基板領域A1側のオーバーフロー槽40内のめっき液Qを分岐管251A又は分岐管251Bを介してそれぞれに接続されためっき液噴射口183A又はめっき液噴射口183Bから基板Wと抵抗体Rの間の密閉状態に近い隙間S1内に噴射させ、この隙間S1内のめっき液Qを満遍なくランダムに流通・攪拌させ、その後抵抗体ホルダ60に設けためっき液排出部210(図3参照)からめっきユニット30内に排出して、めっきユニット30をオーバーフローさせ、オーバーフローしためっき液Qを再びポンプ110によって循環させる。同様にめっき液循環系260のポンプ120を駆動することで、アノード領域A2側のオーバーフロー槽40内のめっき液Qをめっきユニット30のアノード領域A2内に導入してめっきユニット30をオーバーフローさせ、オーバーフローしためっき液Qを再びポンプ120によって循環させる。また同時に温度制御手段270のポンプ90と、温度制御手段280のポンプ100を駆動することで、それぞれ基板領域A1側のめっき液Qとアノード領域A2側のめっき液Qの温度を所定温度(管理温度範囲内)に制御する。この実施形態では両者の温度を同一としている。そしてこの状態で電源20によって基板Wとアノード10間にめっき液Qを通して電流を流すと、基板Wの被めっき面W1上に所望のめっき膜が形成されていく。
【0041】
ところで基板ホルダ50と抵抗体ホルダ60の間の密閉状態に近い隙間S1にめっき液Qを満遍なくランダムに流通・攪拌させる方法としてこの実施形態では、切替機構190をまず分岐管251Aに切り替えることで、図3に示す実線の矢印のように、右側半分のめっき液噴射口183Aからめっき液Qを噴射させてめっき液排出部210から排出させ、所定時間経過後に切替機構190を分岐管251Bに切り替えることで点線矢印のように左側半分のめっき液噴射口183Bからめっき液Qを噴射させてめっき液排出部210から排出させ、この動作を繰り返すこととした。
【0042】
なおめっき液噴射口183から噴出させるめっき液Qの噴射・排出方法には、種々の方法が考えられる。例えば図5(a)に実線矢印で示すように、一方のめっき液噴射口183Aからめっき液Qを噴射させる際は他方のめっき液噴射口183Bからめっき液Qを排出し、点線矢印で示すように他方のめっき液噴射口183Bからめっき液Qを噴射させる際は一方のめっき液噴射口183Aからめっき液Qを排出するようにしても良い。この場合めっき液排出部210は不要となる。また図5(b)に示すように、めっき液噴射口183A,183Bを1又は複数個ずつ交互に配置しても良い。また前記図3を用いて説明したのと同様に、図6(a)に実線矢印で示すように、一方のめっき液噴射口183Aからめっき液Qを噴射させる際は他方のめっき液噴射口183Bからのめっき液Qの噴射は停止してめっき液排出部210から排出し、点線矢印で示すように他方のめっき液噴射口183Bからめっき液Qを噴射させる際は一方のめっき液噴射口183Aからのめっき液Qの噴射は停止してめっき液排出部210から排出しても良い。この場合も図6(b)に示すように、めっき液噴射口183A,183Bを1又は複数個ずつ交互に配置しても良い。また図7(a)に示すように、めっき液噴射口183を3以上の複数組(この例では4組)に分割し(183A,183B,183C,183D)、これら各めっき液噴射口183A,B,C,Dを順番に切り替えてめっき液Qを順番に噴射させるようにしても良い。
【0043】
そして上記本実施形態を用いれば、被めっき面W1に形成されるめっき膜の膜厚の均一性及びめっき表面の均一性が、従来に比べてより向上する。以下その理由を述べる。
〔抵抗体Rと攪拌〕
即ちまず上記めっき装置1−1においては、アノード10と基板Wの間に抵抗体Rを配置しているが、前記図16,図17を用いて説明したように、抵抗体Rは前記図15に示す誘電体からなる調整板320に比べて電流の整流効果が高い。このため調整板320を用いた方法では基板とカソードの接点近傍(基板の外周近傍)のめっき膜厚が厚くなるのに比べ、めっき膜厚の均一化を図ることができる。なお抵抗体Rによる効果(基板W上の電流密度均一性)を高めるためには、抵抗体Rと基板Wの被めっき面W1間の間隔を狭く(6mm未満)する必要がある。
【0044】
一方例えばバンプめっきにおいて、バンプ高さの面内均一性及びバンプ表面の均一性を向上させるためには、基板Wの被めっき面W1と接するめっき液Qを攪拌しなければならない。しかしながら抵抗体Rを使用した場合、上述のように抵抗体Rと基板Wの間隔が6mm未満程度と狭くなるので、上記従来の図15に示すディップ式めっき装置300のように調整板320と基板W間のめっき液Qを攪拌するためのパドルの設置が困難となる。そこで本実施形態においては、基板Wと抵抗体Rの間の隙間S1内にその外周側からめっき液Qを噴射して隙間S1内のめっき液Qを流通させる複数のめっき液噴射口183を有するめっき液流通機構180を設置したのである。これによって抵抗体Rと基板W間に満遍なくランダムな流れのめっき液Qを流通させることが可能となり、狭い隙間S1のめっき液Qであってもこれを確実に攪拌することができるようになり、めっき膜厚の均一性及びめっき表面の均一性を図ることができる。
【0045】
なお例えば直径約300mmの円形で幅6mm未満の狭い隙間にめっき液Qを流す場合、流路抵抗によりめっき液Qの流れ易い場所と流れにくい場所とが生じ易く、そのような場合はめっき液Qがよどみ、満遍に流通させることが困難となる。そこで本実施形態では、基板ホルダ50に保持された基板Wの被めっき面W1の外周から中央に向かう方向にめっき液Qを噴射することにより、抵抗体Rの周囲を回り込むことなく、基板Wと抵抗体R間の狭い隙間S1に確実にめっき液Qを流し込むようにし、基板W全面にわたってよどむことなくめっき液Qを流通させるようにしている。
【0046】
またバンプ表面の形状はめっき液Qの流れの影響を受け易く、めっき液Qの流れが一定方向である場合、バンプ表面の形状が不均一になる恐れがあり、このためめっき液Qにランダムな流れを与える必要がある。そこで上記実施形態では、ランダムな流れを与えるためにめっき液Qを噴射するめっき液噴射口183を所定タイミングで切り替えて変更し、これによってメッキ液Qをランダムに流すこととし、これによってバンプ高さの面内均一性及びバンプ表面の均一性を向上させている。なおめっき液噴射口183から供給しためっき液Qが抵抗体Rの周囲を回り込むことなく、確実に基板Wと抵抗体R間の隙間S1を通過するようにするため、基板ホルダ50と抵抗体ホルダ60から形成される隙間は密閉状態又はそれに近い状態としている。
【0047】
〔抵抗体R以外の電気経路の遮断〕
基板Wの被めっき面W1の電流密度を均一化するためには、抵抗体R以外の電流経路への電流のリークを遮断しなければならない。そのためにはアノード10側(アノード領域A2)のめっき液Qとカソード側(基板領域A1)のめっき液Qとが絶縁されていることが必要である。このためこの実施形態においては、抵抗体ホルダ60によってめっきユニット30を基板領域A1とアノード領域A2に分け、オーバーフローしためっき液Q同士が触れないようにオーバーフロー槽40に仕切り部材220を設置している。また抵抗体Rと抵抗体ホルダ60の隙間からの電流リークを防ぐため、抵抗体Rの外周にシール170を設置している。
【0048】
〔クランパ240による基板ホルダ50の取り付け〕
良好なめっき膜厚の均一性を得るためには、抵抗体Rの中心と基板Wの被めっき面W1の中心の位置が一致していることが必要である。したがって抵抗体ホルダ60に基板ホルダ50を取り付ける際には常に互いの中心がずれないように取り付けることが必要であり、また基板ホルダ50の装脱着が容易であることも必要である。そこで上記実施形態では、抵抗体ホルダ60にクランパ240を取り付け、このクランパ240を用いて基板ホルダ50を抵抗体ホルダ60に確実に固定することにより、簡便に基板ホルダ50の装脱着および抵抗体Rと基板Wの位置合わせを行うこととした。抵抗体Rと基板Wの上下の位置関係は前述のようにストッパ247に基板ホルダ50下端を乗せることによって常に同じ位置に合わせることができ、また左右の位置関係は左右のクランパ240で基板ホルダ50を左右から挟み込むことによって常に同じ位置に合わせることができる。このように上下左右の位置を合わせることにより簡便に抵抗体Rと基板Wの中心を合わせることができる。
【0049】
また、めっき液Qを抵抗体Rと基板W間の隙間S1に確実に流し込み、該隙間S1のめっき液Qを満遍なくランダムに攪拌するためには、抵抗体Rと基板W間の隙間S1が密閉あるいは密閉に近い状態であることが必要であるが、抵抗体ホルダ60に取り付けたクランパ240で基板ホルダ50を押さえることにより、抵抗体ホルダ60と基板ホルダ50を容易に密着させることができるため、抵抗体Rと基板Wの間の隙間S1を容易に密閉あるいは密閉に近い状態とすることができる。
【0050】
なお本発明にかかるめっき装置1−1は、将来の基板大口径化に対応することができる。即ち将来的に、基板Wの直径が400mm等となった場合、基板Wの中心から外周までの距離がさらに長くなることにより、ターミナルイフェクトの影響が更に大きくなり、現在の誘電体からなる調整板では基板外周部の厚膜化を防止することがますます困難になる。従来の調整板の代わりに抵抗体Rを使用することにより基板W上の電流密度は均一化され、バンプの面内均一性も向上する。このように抵抗体Rをディップ方式のバンプめっき装置1−1に適用し、さらに上記実施形態のように各種の工夫を加えることにより、将来の基板大口径化に対応することができる。
【実施例1】
【0051】
前記図1に示すめっき装置1−1において、抵抗体Rにセラミック製多孔質体(気孔径10〜20μm、気孔率30%)を使用し、めっき液Qは硫酸銅、硫酸、塩素および添加剤を用いて調整した。使用した基板Wは、直径が200mm、Cuシード層の厚さが600nm、レジストパターンの孔の直径、深さがそれぞれ150μm、120μmの半導体ウェーハを用いた。図1に示すようにアノード10、抵抗体R、基板W等の各部材をセットした。基板Wと抵抗体R間の距離は5.5mmとした。そして図3で説明したように、基板Wと抵抗体Rの間に2組のめっき液噴射口183A,183Bから交互にめっき液Qを噴射し、めっきユニット30からオーバーフローしためっき液Qをポンプ110およびフィルター130を介して再びめっき液噴射口183A,183Bへと循環させた。またアノード10側のめっき液Qもポンプ120およびフィルター140を介して循環させた。さらに基板W側のめっき液Qの温度を温度調整ユニット70により、またアノード側のめっき液Qの温度を温度調整ユニット80により23℃に保った。この状態で基板表面の孔にめっきされる銅(バンプ)の高さが100μmとなるように電流を供給してめっきを行ったところ、図8(a)に示すように基板面内において高さの均一なバンプが得られた。
【0052】
(比較例1)
図9に比較例にかかるめっき装置500の全体概略構成図を示す。このめっき装置500において、前記めっき装置1−1と相違する点は、抵抗体Rの代りに多孔板230を設置した点のみである。その他の構成はめっき装置1−1と同一である。図10は多孔板230を示す図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は側面図である。同図に示すように多孔板230は円板状で、アノード10と基板Wの間に設置され、複数の円形の通孔231(内径2mm)を円形領域内に均等に分布して構成されている。めっき液Qや基板Wの構成、基板Wと多孔板230間の離間距離も前記実施例1のものと同一である。そして前記実施例1の場合と全く同一の方法によって、基板表面の孔にめっきされる銅(バンプ)の高さが100μmとなるように電流を供給してめっきを行ったところ、図8(b)に示すように基板中央部よりも外周部においてバンプの高さが高くなった。
【実施例2】
【0053】
前記実施例1と同一の構成のめっき装置1−1を用い、めっき液噴射口183からのめっ液Qの噴射状態を各種異ならせた。即ち実施例1と同様に、抵抗体Rとしてセラミック製多孔質体(気孔径10〜20μm、気孔率30%)を使用し、めっき液Qは硫酸銅、硫酸、塩素および添加剤を用いて調整した。使用した基板Wは、直径が200mm、Cuシード層の厚さが600nm、レジストパターンの孔の直径、深さがそれぞれ150μm、120μmの半導体ウェーハを用いた。図1に示すようにアノード10、抵抗体R、基板W等の各部材をセットした。基板Wと抵抗体R間の距離は5.5mmとした。そして図5〜図7及び図11に示すように、基板Wと抵抗体Rの間にめっき液噴射口183からめっき液Qを流速3L/minで噴射し、めっきユニット30からオーバーフローしためっき液Qをポンプ110およびフィルター130を介してめっき液噴射口183へと循環させた。またアノード10側のめっき液Qもポンプ120、およびフィルター140を介して循環させた。さらに基板W側のめっき液Qの温度を温度調整ユニット70により、またアノード10側のめっき液Qの温度を温度調整ユニット80により23℃に保った。
【0054】
そして以下の各噴射・排出方法(1)〜(4)によってメッキ液Qを攪拌し、それぞれの場合の基板表面の孔にめっきされる銅(バンプ)の高さが100μmとなるように電流を供給してめっきを行い、その結果を調べた。
【0055】
〔噴射・排出方法1〕前述した図5(a),(b)に示すめっき液Qの噴射・排出方法を用い、めっき液噴射口183Aからめっき液Qを噴射すると同時にめっき液噴射口Bからめっき液Qを排出し、5秒後にめっき液噴射口183A,183Bを逆に切り替えて噴射と排出を逆転し、めっき液Qの流れを反転させた。これを繰り返してめっき液Qにランダムな流れを与えて攪拌した。
【0056】
〔噴射・排出方法2〕前述した図6(a),(b)に示すめっき液Qの噴射・排出方法を用い、めっき液噴射口183Aからめっき液Qを5秒間噴射した後、めっき液噴射口183Bに切り替えてめっき液Qを5秒間噴射し、めっき液Qの流れを反転させた。これを繰り返してめっき液Qにランダムな流れを与えて攪拌した。
【0057】
〔噴射・排出方法3〕前述した図7に示すめっき液Qの噴射・排出方法を用い、めっき液噴射口183A〜Dを2秒毎に切り替えてめっき液Qの流れを変化させた。これを繰り返してめっき液Qにランダムな流れを与えて攪拌した。
【0058】
〔噴射・排出方法4〕図11に示す噴射・排出方法を用い、めっき中にめっき液噴射口183Aのみからめっき液Qを噴射し続け、めっき液Qの流れを一方向とした。なお、噴射されためっき液Qは排出口210から排出させた。
【0059】
以上の噴射・排出方法1〜4によってめっきされた基板表面の孔の銅(バンプ)の状態は、噴射・排出方法1,2,3では図12(a)に示すようにバンプ表面の形状が均一であったが、噴射・排出方法4では図12(b)に示すようにめっき液の流れの影響を受けて不均一であった。
【0060】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、めっき液噴射口183を抵抗体ホルダ60の開口部61の周囲に配置したが、例えば図13に示すめっき装置1−2のように、基板Wの外周部に沿って配置してもよい。なお図14はめっき装置1−2の基板ホルダ50を抵抗体R側から見た概略図である。図13に示すめっき装置1−2において、前記図1に示すめっき装置1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記めっき装置1−1と同じである。即ちこのめっき装置1−2においては、基板ホルダ50の基板Wを保持した面側の基板Wの周囲の位置にめっき液噴射口183(183A,183B)が位置するように複数本のめっき液噴射管181を取り付けている。この実施形態の場合もめっき液噴射管181とめっき液噴射口183と切替機構190とによってめっき液流通機構180が構成されている。なおこの実施形態のように基板ホルダ50側にめっき液流通機構180を配置する場合も、前記図5〜図7に示すような各種噴射・排出方法が適用できる。
【0061】
まためっき液噴射口183から噴射されるめっき液Qの噴射状態には種々の噴射状態が考えられるが、例えば図15(a)に示すように、めっき液噴射口183から噴射されるめっき液Qが、基板Wの被めっき面W1の中央に向かって直線状に流れるように構成しても良いし、図15(b)に示すように、基板Wの被めっき面W1の中央に向かって扇状に広がって流れるように構成しても良い。めっき液Qの流れの相違は、めっき液噴射口183の周囲に形成される凹溝185の形状等によって実現できる。また上記実施形態ではクランパ240を抵抗体ホルダ60に取り付けたが、その代りに基板ホルダ50側に取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】めっき装置1−1の全体概略構成図である。
【図2】めっき装置1−1のアノード10とめっきユニット30とオーバーフロー槽40と基板ホルダ50と抵抗体ホルダ60とをその上方から見た概略平面図である。
【図3】抵抗体R及び抵抗体ホルダ60を基板W側から見た概略図である。
【図4】クランパ240の概略正面図である。
【図5】めっき液Qの噴射・排出方法を示す図であり、図5(a)と図5(b)は抵抗体ホルダ60を示す概略図、図5(c)は各めっき液噴射口183A,183Bの噴射タイミングを示す図である。
【図6】めっき液Qの噴射・排出方法を示す図であり、図6(a)と図6(b)は抵抗体ホルダ60を示す概略図、図6(c)は各めっき液噴射口183A,183Bの噴射タイミングを示す図である。
【図7】めっき液Qの噴射・排出方法を示す図であり、図7(a)は抵抗体ホルダ60を示す概略図、図7(b)は各めっき液噴射口183A,183Bの噴射タイミングを示す図である。
【図8】基板W上のバンプの高さ分布を示す図である。
【図9】めっき装置500の全体概略構成図である。
【図10】多孔板230を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は側面図である。
【図11】めっき液Qの噴射・排出方法を示す図である。
【図12】バンプ断面を示す図である。
【図13】めっき装置1−2の全体概略構成図である。
【図14】めっき装置1−2の基板ホルダ50の概略図である。
【図15】めっき液噴射口183から噴射されるめっき液の噴射状態を示す図である。
【図16】電気めっき装置300を示す概略構成図である。
【図17】代表的な電解めっきの等価回路を示す図である。
【図18】高抵抗構造体を挿入した電解めっきの等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1−1 めっき装置
Q めっき液
W 基板
W1 被めっき面
R 抵抗体
A1 基板領域
A2 アノード領域
S1 隙間
5 めっき槽
10 アノード
20 電源
30 めっきユニット
40 オーバーフロー槽
50 基板ホルダ
60 抵抗体ホルダ
61 開口部
70 温度調整ユニット
80 温度調整ユニット
170 シール
180 めっき液流通機構
181 めっき液噴射管
183(183A,183B,183C,183D) めっき液噴射口
190 切替機構
210 めっき液排出部(めっき液排出口)
220 仕切り部材(仕切り板)
240 クランパ
247 ストッパ
250 めっき液循環系
260 めっき液循環系
270 温度制御手段
280 温度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を保持し、このめっき液中に基板と抵抗体とアノードとをこの順番で収納し前記基板とアノード間に通電することで基板の被めっき面にめっきを施すめっきユニットと、このめっきユニットを内部に収納するオーバーフロー槽とを有するめっき槽と、
前記基板を保持して基板の被めっき面を前記めっき液に接触させる基板ホルダと、
前記めっきユニット内に保持されるめっき液をアノード側と基板側に遮断するように設置され、前記抵抗体を保持する開口部を有する抵抗体ホルダと、
前記アノードと前記基板の間の電気経路のうち前記抵抗体を経由しない電気経路を遮断するシールと、
前記基板と前記抵抗体との間の隙間にめっき液を噴射してこの隙間にめっき液を流通させる複数のめっき液噴射口を有するめっき液流通機構と、
前記めっきユニット内の抵抗体及び抵抗体ホルダで区画されたアノード領域及び基板領域内にそれぞれめっき液を循環させるめっき液循環系と、を具備し、
さらに前記オーバーフロー槽に、前記アノード領域からオーバーフローするめっき液と、基板領域からオーバーフローするめっき液とを遮断する仕切り部材を設けたことを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記めっき液流通機構は、前記めっき液噴射口による前記基板と前記抵抗体の間の隙間へのめっき液の噴射と、前記隙間に満たされためっき液の排出により、この隙間にめっき液を流通させる構成であることを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記複数のめっき液噴射口は、前記抵抗体ホルダの開口部の周囲または前記基板の外周部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記めっき液噴射口は、このめっき液噴射口から噴射されるめっき液が、前記基板ホルダに保持された基板の被めっき面の中央に向かって直線状又は扇状に広がって流れるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の内の何れかに記載のめっき装置。
【請求項5】
前記めっき液流通機構は、前記複数のめっき液噴射口を切り替えてこれら複数のめっき液噴射口の全部又は一部からめっき液を噴射させる切替機構を有することを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記基板ホルダは、クランパにより、抵抗体ホルダに密着して取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5の内の何れかに記載のめっき装置。
【請求項7】
基板ホルダに保持した基板の被めっき面をめっきユニット内のめっき液に接触させて配置すると共に、
前記基板の被めっき面に対向させてアノードを前記めっきユニット内のめっき液に浸漬して配置し、
開口部を有しこの開口部に抵抗体を保持した抵抗体ホルダを、前記基板と前記アノードとの間に、前記めっきユニット内のめっき液を遮断するように配置し、
さらに前記基板と前記抵抗体との間の隙間にめっき液を噴射して流通させる複数のめっき液噴射口を配置し、
前記めっき液噴射口から基板の被めっき面の中央へ向けてめっき液を噴射すると同時に前記隙間に満たされためっき液を隙間の外部に排出しながら、前記アノードと前記基板との間にめっき電流を通電して基板の被めっき面にめっきを行うことを特徴とするめっき方法。
【請求項8】
前記複数のめっき液噴射口を、前記抵抗体ホルダの開口部の周囲、または前記基板の外周部に沿って配置することを特徴とする請求項7に記載のめっき方法。
【請求項9】
前記めっき液噴射口から噴射されるめっき液を、前記基板ホルダに保持された基板の被めっき面の中央に向かって直線状又は扇状に流すことを特徴とする請求項7又は8に記載のめっき方法。
【請求項10】
めっき液を噴射する前記複数のめっき液噴射口を切り替えることによって、これら複数のめっき液噴射口の全部又は一部からめっき液を噴射させることを特徴とする請求項7乃至9の内の何れかに記載のめっき方法。
【請求項11】
前記基板ホルダを、クランパにより、前記抵抗体ホルダに一体に密着して取り付けることを特徴とする請求項7乃至10の内の何れかに記載のめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−121062(P2008−121062A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305598(P2006−305598)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】