説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】高効率のめっき装置及びめっき方法を提供する。
【解決手段】めっき装置1は、めっき液12を貯留するめっき槽11と、めっき槽11内に配置されている陽極21と、めっき槽11内に配置されており、被めっき物51が戴置され、めっき液12を通過させる穴が形成された面状部分22aを有する陰極22を備えている。そして、面状部分22aの被めっき物51が戴置される面と反対側からめっき液12を吸引して、被めっき物51を陰極22に接触させる接触機構30と、面状部分22aの被めっき物51が戴置される面と反対側からめっき液12を噴出して、被めっき物51を陰極22から分離させる分離機構40と、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びめっき方法に関する。特に、メディアを使用しない電解めっき装置及び電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどのチップ型電子部品の電極部分を形成する際に、電解めっきが用いられる。電解めっきとは、被めっき物と陰極とを接触させ、陽極から溶解しためっき金属を被めっき物の表面に析出させる表面処理技術である。通常、被めっき物との接触面積を増やすため、スチールボール等のメディアをチップ型電子部品と同時にめっき槽内に入れてめっきすることが行われている。
【0003】
ところで、製造工程の簡素化やコストダウンを目的として、メディアをなくして被めっき物のみで処理する電解めっき方法が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、図3のように、めっき槽110内に被めっき物116が接触する陰極124と、陽極125とが設けられているめっき装置が開示されている。そして、被めっき物116は、めっき室110内で液体噴出孔から噴出するめっき液115により流動状態となってめっき処理される。また、流動状態と流動を停止した静止状態とを繰り返す場合には、被めっき物116が陰極124上に静止した状態の時に通電して、めっき処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−30496号公報
【発明の概要】
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のめっき装置では、被めっき物と陰極との接触状態がめっき液の噴流の状態に左右されるため、めっきに時間がかかる可能性があった。また、陰極との接触面積も限られ、効率が不十分であった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、高効率のめっき装置及びめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るめっき装置は、めっき液を貯留するめっき槽と、前記めっき槽内に配置されている陽極と、前記めっき槽内に配置されており、被めっき物が戴置され、前記めっき液を通過させる穴が形成された面状部分を有する陰極と、前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を吸引して、前記被めっき物を前記陰極に接触させる接触機構と、前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を噴出して、前記被めっき物を前記陰極から分離させる分離機構と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明のめっき装置は、被めっき物を陰極に接触させる接触機構と、被めっき物を陰極から分離させる分離機構と、を備えている。そのため、多数の被めっき物を効率的に陰極に接触させることができる。また、接触機構の配置により、被めっき物と陰極の接触面積を大きくすることが可能となる。そのため、効率的なめっき膜形成が可能となる。
【0011】
また、本発明では、前記接触機構は、前記面状部分の前記被めっき物が戴置された面側から前記めっき液を噴出する機構をさらに備えることが好ましい。
【0012】
かかる場合には、被めっき物をさらに効果的に陰極に接触させることができるためである。
【0013】
また、本発明では、前記面状部分は金網からなることが好ましい。
【0014】
かかる場合には、陰極を安価に形成することができるためである。
【0015】
また、本発明では、前記陰極は前記めっき槽内を区画する仕切り部分を有することが好ましい。
【0016】
かかる場合には、被めっき物の陰極からの落下を防止することが出来るためである。
【0017】
また、本発明は、めっき液を貯留するめっき槽と、前記めっき槽内に配置されている陽極と、前記めっき槽内に配置されており、被めっき物が戴置され、前記めっき液を通過させる穴が形成された面状部分を有する陰極と、を備えるめっき装置内で、前記陽極から溶解しためっき金属を前記被めっき物に析出させるめっき方法であって、前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を吸引して、前記被めっき物を前記陰極に接触させる工程と、
前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を噴出して、前記被めっき物を前記陰極から分離させる工程と、を備える、めっき方法にも向けられる。
【0018】
かかるめっき方法により、効率的なめっき膜形成が可能となるためである。
【0019】
また、本発明では、前記接触させる工程と、前記分離させる工程を交互に行うことが好ましい。
【0020】
かかる場合には、陰極との接触部分を毎回変えることができるため、効率的なめっき膜形成が可能なためである。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明のめっき装置は、被めっき物を陰極に接触させる接触機構と、被めっき物を陰極から分離させる分離機構と、を備えている。また、本発明のめっき方法は被めっき物を陰極に接触させる工程と、被めっき物を陰極から分離させる工程と、を備えている。そのため、効率的なめっき膜形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るめっき装置の図である。
【図2】本発明に係るめっき装置の図である。
【図3】従来のめっき装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1は本発明に係るめっき装置の断面図である。そして、被めっき物51を陰極22に接触させる工程を示している。図1は、めっき装置と共に、めっき槽11に貯留されためっき液12と、被めっき物51とを図示している。
【0025】
本発明のめっき装置は、めっき槽11と、陽極21と、陰極22と、接触機構30と、分離機構40と、を備えている。
【0026】
めっき槽11は、めっき液12を貯留するためのものである。また、陽極21は、めっき槽11内に配置されており、めっき液12中に浸漬されている。一方、陰極22は、めっき槽11内に配置されており、めっき液12中に浸漬されている。そして、陰極22は下部にある台61に固定されている。陰極22と陽極21との間を通電させた際には、めっき液中に陽極21の金属が溶解する。そして、被めっき物51は陰極22に接触して、陽極21から溶解しためっき金属が、被めっき物51の表面に析出される。
【0027】
陰極22は、面状部分22aと仕切り部分22bとを有している。面状部分22aは、被めっき物51が戴置され、めっき液12を通過させる穴が形成されている。めっき液12が通過する場所が偏らないように、面状部分22aはメッシュ状になっているものが好ましい。また、面状部分22aは、通電させる必要があるため、安価に形成できる金網などが好ましい。
【0028】
また、仕切り部分22bは、めっき槽11内を被めっき物の収容部分とそれ以外とに区画する。そのため、被めっき物51の落下を防ぐことができる。陰極22は、面状部分22aと区切り部分22bとを一体成形することができる。また、陰極の形状は、筒状や、角柱状等、種々の形状が可能である。
【0029】
接触機構30は、吸引経路31と、ポンプ32と、フィルタ33と、噴出経路34とを備えている。フィルタ33は、めっき液12の濾過のために用いられる。吸引経路31は台61に固定されている。被めっき物51を陰極22に接触させる工程では、ポンプ32を稼働させる。そして、吸引経路31と噴出経路33とにめっき液を矢印のように循環させる。その結果、めっき槽11内には白抜き矢印のような流れが形成される。
【0030】
吸引経路31は、陰極22の面状部分22aの被めっき物51が戴置される面と反対側からめっき液12を吸引して、被めっき物51を陰極22に接触させる。また、噴出経路34は、吸引経路31から吸い上げためっき液12を、めっき槽11の上部からめっき槽内に戻している。噴出経路34は、陰極22の面状部分22aの被めっき物51が戴置される面側から、被めっき物51にめっき液12を噴出する。この機構により、被めっき物51をさらに効果的に陰極22に接触させることができる。
【0031】
図2は、被めっき物51を陰極22から分離させる工程を示している。
【0032】
分離機構40は、吸引機構41と、ポンプ42と、フィルタ43と、噴出機構44とを備えている。フィルタ43は、めっき液12の濾過のために用いられる。噴出経路44は台61に固定されている。被めっき物51を陰極22から分離させる工程では、ポンプ42を稼働させる。そして、吸引機構41と噴出機構44とにめっき液12を矢印のように循環させる。その結果、めっき槽11内には白抜き矢印のような流れが形成される。噴出経路44は、陰極22の面状部分22aの被めっき物51が戴置される面と反対側からめっき液12を噴出して、被めっき物51を陰極22から分離させる。
【0033】
図1と図2の工程を繰り返すことにより、メディアがない場合でも、被めっき物51が陰極に接触する機会が増える。したがって、めっき皮膜が被めっき物51に効率よく形成される。
【0034】
また、吸引経路31や噴出経路34の位置を適宜調整することで、被めっき物51の接触する陰極の面積をより広くすることが可能である。したがって、より高効率のめっきが可能である。
【0035】
[実施例]
100メッシュのステンレス製金網をポリプロピレン製パイプ(外径32mmφ/内径25mmφ)に成型取り付けし陰極を形成した。また、吸引機構31、41、噴出機構32、42に耐熱性硬質塩化ビニル管(呼び径25)を使用して、図1のようなめっき装置を作製した。そして、外形寸法1.0×0.5×0.5mmの積層セラミックコンデンサ50000個に、電解ニッケルめっきを行った。印加電圧は5.5V、めっき時間は10分とした。めっき中に被めっき物を陰極に接触させる工程は1サイクル25秒で、分離させる工程は1サイクル5秒とした。
【0036】
膜厚測定を蛍光X線膜厚計(SFT−9400、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)で行った。測定は100個行った。平均値は2.34μm、最小値は2.07μmで、標準偏差(σ)は0.12μmであった。また、外観については、1000個、外観専用冶具に並べて30倍拡大鏡を用いて確認したところ、外観の異常は認められなかった。また、くっつき不良も発生しなかった。したがって、本発明により、良好な膜質のめっき膜が形成できることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0037】
1 バレルめっき装置
11 めっき槽
12 めっき液
21 陽極
22 陰極
22a 面状部分
22b 仕切り部分
30 接触機構
31 吸引経路
32 ポンプ
33 フィルタ
34 噴出経路
40 分離機構
41 吸引経路
42 ポンプ
43 フィルタ
44 噴出経路
51 被めっき物
61 台
110 めっき槽
115 めっき液
116 被めっき物
124 陰極
125 陽極
126 電源ユニット
127 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を貯留するめっき槽と、
前記めっき槽内に配置されている陽極と、
前記めっき槽内に配置されており、被めっき物が戴置され、前記めっき液を通過させる穴が形成された面状部分を有する陰極と、
前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を吸引して、前記被めっき物を前記陰極に接触させる接触機構と、
前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を噴出して、前記被めっき物を前記陰極から分離させる分離機構と、
を備える、めっき装置。
【請求項2】
前記接触機構は、前記面状部分の前記被めっき物が戴置された面側から前記めっき液を噴出する機構をさらに備える、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記面状部分は金網からなる、請求項1または2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記陰極は前記めっき槽内を区画する仕切り部分を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項5】
めっき液を貯留するめっき槽と、前記めっき槽内に配置されている陽極と、前記めっき槽内に配置されており、被めっき物が戴置され、前記めっき液を通過させる穴が形成された面状部分を有する陰極と、を備えるめっき装置内で、前記陽極から溶解しためっき金属を前記被めっき物に析出させるめっき方法であって、
前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を吸引して、前記被めっき物を前記陰極に接触させる工程と、
前記面状部分の前記被めっき物が戴置される面と反対側から前記めっき液を噴出して、前記被めっき物を前記陰極から分離させる工程と、
を備える、めっき方法。
【請求項6】
前記接触させる工程と、前記分離させる工程を交互に行う、請求項5に記載のめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−52241(P2011−52241A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199852(P2009−199852)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)