説明

めっき装置

【課題】膜厚の基板面内均一性に優れためっき膜を形成できるめっき装置を提供する。
【解決手段】側壁30と側壁に囲まれた開口部31とを有するカップ20と、ウエハ90を、カップ20の開口部に対向させると共に、カップと離間して保持する電極ピン70およびウエは押さえ88と、ウエハ90の外周部に接触する電極ピン70と、カップ20内のめっき液60に接触して配置されるアノード電極52と、カップ20にめっき液を供給し、めっき液をウエハに接触させた後、カップとウエハとの間の隙間82からオーバーフローさせるポンプと、カップの側壁に設けられたスリット32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置に関し、特に、半導体ウエハにめっきを行うめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハに均一にめっきを形成するために、種々のめっき装置が提案されている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
図7は、従来のめっき装置2を説明するための概略縦断面図であり、図8は、図7のX8−X8線横断面図であるが、ウエハ押さえ88は省略している。
【0004】
カップ20の上部の外側の周辺部には、リング80が配設され、リング80上に電極ピン70が120度間隔で配置されている。電極ピン70の先端には、ウエハ搭載部72が設けられている。ウエハ90の外周端部は、ウエハ搭載部72上に搭載される。ウエハ90の表面92(めっき面)は紙面下側(カップ20側)を向いて搭載される。ウエハ90は、その裏面94からウエハ押さえ88によって紙面下側に向かって押圧され、ウエハ押さえ88と電極ピン70のウエハ搭載部72によって固定される。ウエハ90の表面92とカップ20の上端24との間には、隙間82が設けられている。
【0005】
カップ20の底部周辺部26上にはアノード板50が設けられ、アノード板50はアノード電極52によって固定されている。
【0006】
Cu2+イオンを含んだめっき液60は、カップ20の底部28の中央に設けられた供給口22からカップ20内に供給され、カップ20の上側に配置されたウエハ90の中央に向かって噴流され、その後、ウエハ90の外周部に向かい、カップ20の上端24とウエハ90の隙間82からオーバーフローする。
【0007】
アノード板と、電極ピン70との間に電圧をかけ、電流を流すことで、ウエハ90に電流が流れ、ウエハ90の表面92にめっきが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−306793号公報
【特許文献2】特開平8−74088号公報
【特許文献3】特開2000−195823号公報
【特許文献4】特開2000−328291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この装置では、電極ピン70を介して、ウエハ90の外周部から電流を流す為、ウエハ中心部と比較してウエハ外周部の方が電流密度が高くなる。その為、ウエハ外周部のめっき生成速度が速くなり、図9に示すように、ウエハ外周部96の方がウエハ中心部95と比較して膜厚が厚くなる傾向にあり、電極ピン70の近傍97は、膜厚がさらに厚くなる傾向にあり、膜厚の面内均一性が悪くなる。
【0010】
本発明の主な目的は、膜厚の面内均一性に優れためっき膜を形成できるめっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
めっき液がその内部に供給されるめっき用容器であって、側壁と前記側壁に囲まれた開口部とを有する前記めっき容器と、
被めっき基板を、前記めっき用容器の前記開口部に対向させると共に、前記めっき用容器と離間して保持する保持手段と、
前記被めっき基板の外周部に接触するカソード電極と、
前記めっき容器内の前記めっき液に接触して配置されるアノード電極と、
前記めっき容器に前記めっき液を供給し、前記めっき液を前記被めっき基板に接触させた後、前記めっき用容器と前記被めっき基板との間の隙間からオーバーフローさせるめっき液供給手段と、
前記めっき容器の前記側壁に設けられた貫通孔と、を備えるめっき装置が提供される。
【0012】
好ましくは、前記貫通孔は、前記カソード電極と対向して設けられている。
【0013】
また、好ましくは、前記貫通孔は、前記カソード電極と対向する箇所および対向しない箇所の両方の箇所に設けられている。
【0014】
好ましくは、前記めっき装置は、前記貫通孔の開口量を変える開口量可変手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、膜厚の面内均一性に優れためっき膜を形成できるめっき装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1〜第4の実施の形態のめっき装置を説明するための概略縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1、第2の実施の形態のめっき装置を説明するための概略上面図であるが、ウエハ押さえ88は省略している。
【図3】図3は、ウエハへのめっき方法を説明するための概略縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態のめっき装置を説明するための、図2のX4−X4矢視図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態のめっき装置の他の例を説明するための、図2のX4−X4矢視図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態のめっき装置を説明するための概略上面図であるが、ウエハ押さえ88は省略している。
【図7】図7は、従来のめっき装置を説明するための概略縦断面図である。
【図8】図8は、従来のめっき装置を説明するための概略上面図であるが、ウエハ押さえ88は省略している。
【図9】図9は、ウエハへのめっき膜の膜厚分布の傾向を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1、2を参照すれば、本発明の第1の実施の形態のめっき装置1は、ベース10と、ベース10上に設けられたカップ20と、カップ20の上部の外側の周辺部に配設されたリング80と、リング80上に設けられた電極ピン70と、ウエハ押さえ88とを備えている。
【0019】
ベース10はめっき液60を供給する供給口12をその中央に備えている。カップ20はベース10上に設けられている。カップ20は、側壁30と、底部28とを備えている。カップ20の上部には、側壁30に囲まれた開口部31が形成されている。側壁30と底部28により、めっき槽21を形成している。底部28の中央にはめっき液60をめっき槽21に供給する供給口22が形成されている。ベース10の供給口12とカップ20の供給口22は連通して設けられている。
【0020】
カップ20の上部の外側の周辺部に配設されたリング80上に電極ピン70が等間隔で配置されている。電極ピン70は、カソード電極として作用する。電極ピン70は、6インチウエハ用で3個,8インチウエハ用では6個設けられ、それぞれ120度間隔、60度間隔で配置される。ここでは、電極ピン70を3個配置する場合を例にとって説明する。電極ピン70の先端には、ウエハ搭載部72が設けられている。ウエハ90の外周端部は、ウエハ搭載部72上に搭載される。ウエハ90の外周端部は、ウエハ搭載部72と接触している。ウエハ90の表面92(めっき面)は紙面下側(カップ20側)を向いて、カップ20の開口部31と対向して搭載される。ウエハ90は、その裏面94からウエハ押さえ88によって紙面下側に向かって押圧され、ウエハ押さえ88と電極ピン70のウエハ搭載部72によって固定される。ウエハ90の表面92とカップ20の上端24との間には、隙間82が設けられている。
【0021】
カップ20の側壁30の上端24近傍にはスリット32が側壁30を貫通して設けられている。スリット32は6個設けられ、60度間隔で等間隔に配置されている。そのうち3個は電極ピン70の真下に電極ピン70と対向して配置されている。
【0022】
カップ20の底部周辺部26上にはアノード板50が設けられ、アノード板50はアノード電極52によって固定されている。アノード板50およびアノード電極52は、めっき液60に接触している。アノード電極52および電極ピン70がめっき用電源(図示せず)に接続されている。
【0023】
カップ20の外側にはめっき液槽(図示せず)が設けられている。ベース10の供給口12にめっき液を供給するポンプ(図示せず)が設けられている。
【0024】
Cu2+イオンを含んだめっき液60は、ポンプ(図示せず)によって、ベース10の供給口12およびカップ20の供給口22からカップ20内のめっき槽21に供給され、カップ20の上側に配置されたウエハ90の中央に向かって噴流されウエハ90の表面(めっき面)92に接触し、その後、ウエハ90の外周部に向かい、カップ20の上端24とウエハ90の隙間82からオーバーフローし、カップ20の上端24とリング80との間の隙間83を通って、カップ20の外側に設けられためっき液槽(図示せず)に流出する。めっき液60は、また、カップ20の側壁30に設けられたスリット32を介して、めっき槽21から、カップ20の外側に設けられためっき液槽(図示せず)に流出する。
【0025】
アノード板50と、電極ピン70との間に電圧をかけ、電流を流すことで、ウエハ90に電流が流れ、ウエハ90の表面92にめっきが施される。
【0026】
図3を参照して、ウエハ90の表面92にめっきを施す方法をより詳細に説明する。ウエハ90の表面(めっき面)92の全面にシート層110を形成し、シート層110上にレジスト112を選択的に形成し、開口部114を設ける。なお、レジスト112に代えてドライフィルムを使用してもよい。シート層110が電極ピン70に接続された状態で、アノード板50と、電極ピン70との間に電圧をかけ、電流を流すことで、ウエハ90の表面92に形成されたシート層110に電流が流れ、ウエハ90の表面のイオン反応
Cu2++2e→Cu
により、図3(B)に示すように、レジスト112の開口部114にCuめっき膜120が形成される。
【0027】
この装置1では、電極ピン70を介して、ウエハ90の外周部から電流を流す為、ウエハ中心部と比較してウエハ外周部の方が電流密度が高くなる。しかしながら、本実施の形態では、カップ20の側壁30にスリット32を設けているので、めっき液60は、カップ20の側壁30に設けられたスリット32を介して、めっき槽21から流出する。その結果、カップ20の上端24とウエハ90の隙間82からオーバーフローするめっき液60の流量が減少し、ウエハ外周部に接触するめっき液60の量が減少する。そうすると、ウエハ外周部において、めっき成長反応に必要なCu2+イオンの供給量が減少し、上記イオン反応が抑制される。その結果、ウエハ外周部のめっき成長反応が抑制されて、めっき膜厚がウエハ外周部で厚くなることが抑制され、膜厚のウエハ面内均一性に優れためっき膜が形成される。
【0028】
本実施の形態では、カップ20の側壁30の上端24近傍にはスリット32が側壁30を貫通して設けられている。スリット32は6個設けられ、60度間隔で等間隔に配置されている。そのうち3個は電極ピン70の真下に、電極ピン70と対向して配置されている。残りの3個の電極ピン70は、電極ピン70の中間に、電極ピン70と対向しないでそれぞれ配置されている。
【0029】
図9を参照して説明したように、ウエハ外周部96の方がウエハ中心部95と比較して膜厚が厚くなり、電極ピン70の近傍97は、膜厚がさらに厚くなる傾向があるので、電極ピン70の真下に配置されているスリット32の開口面積を電極ピン70の中間に配置されているスリット32の開口面積よりも大きくした方が、全てのスリットの開口面積を等しくした場合に比べて、膜厚のウエハ面内均一性により優れためっき膜が形成される。
【0030】
(第2の実施の形態)
図4を参照すれば、本発明の第2の実施の形態のめっき装置1の一例では、スリット32の前面に水平方向移動可能な扉34を設けた点が第1の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。扉34は全スリット32の前面にそれぞれ設けている。扉34を水平方向に移動させることによって、スリット32の開口量を可変とし、スリット32を介してめっき槽21からカップ20の外側に流出するめっき液60の流量を可変としている。このように、スリット32に扉34を設けることで、スリット32を介してめっき槽21からカップ20の外側に流出するめっき液60の流量の厳密な制御が可能となる。
【0031】
図5を参照して、本実施の形態の他の例を説明する。図4では、扉34を水平方向に移動可能に設けたが、本例では、扉34を垂直方向に移動可能に設けている。本例においても、扉34は全スリット32の前面にそれぞれ設けている。扉34を垂直方向に移動させることによって、スリット32の開口量を可変とし、スリット32を介してめっき槽21からカップ20の外側に流出するめっき液60の流量を可変としている。本例においても、スリット32に扉34を設けることで、スリット32を介してめっき槽21からカップ20の外側に流出するめっき液60の流量の厳密な制御が可能となる。
【0032】
(第3の実施の形態)
図6を参照すれば、本発明の第3の実施の形態のめっき装置1では、スリット32を120度間隔で等間隔に配置し、スリット32全てを電極ピン70の真下に、電極ピン70と対向してそれぞれ配置し、電極ピン70の中間には配置していない点が第1の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0033】
本実施の形態においても、めっき液60は、スリット32を介してめっき槽21から流出する。その結果、カップ20の上端24とウエハ90の隙間82からオーバーフローするめっき液60の流量が減少し、ウエハ外周部に接触するめっき液60の量が減少する。そうすると、めっき膜厚がウエハ外周部で厚くなることが抑制され、膜厚のウエハ面内均一性に優れためっき膜が形成される。
【0034】
上述した第1および第2の実施の形態では、電極ピン70の真下だけでなく電極ピン70の中間にもスリット32を設けているので、ウエハ中心部とウエハ外周部のめっき膜厚の差がある程度大きい場合に特に有効であるのに対して、電極ピン70の真下のみにスリット32を設けている本実施の形態および次に説明する第4の実施の形態は、ウエハ中心部とウエハ外周部のめっき膜厚の差があまり大きくない場合に特に有効である。膜厚のウエハ面内均一性に優れためっき膜を形成できると共に、第1の実施の形態に比べて、めっき膜の成長速度を大きくできる。
【0035】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態のめっき装置1は、スリット32を120度間隔で等間隔に配置し、スリット32全てを電極ピン70の真下に、電極ピン70に対向してそれぞれ配置し、電極ピン70の中間には配置せず、スリット32の前面に水平方向移動可能な扉34(図4参照)または垂直方向移動可能な扉34(図5参照)を設けた点が第1の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。扉34は全スリット32の前面にそれぞれ設けている。扉34を設けることによって、スリット32の開口量を可変とし、第3の実施の形態よりも、スリット32を介してめっき槽21からカップ20の外側に流出するめっき液60の流量の厳密な制御を可能としている。
【0036】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0037】
1、2 めっき装置
10 ベース
12 供給口
20 カップ
21 めっき槽
22 供給口
24 上端
26 底部周辺部
28 底部
30 側壁
32 スリット
34 扉
50 アノード板
52 アノード電極
60 めっき液
70 電極ピン
72 ウエハ搭載部
80 リング
82 隙間
88 ウエハ押さえ
90 ウエハ
92 表面(めっき面)
94 裏面
95 中心部
96 外周部
97 近傍
110 シート層
112 レジストまたはドライフィルム
114 開口
120 Cuめっき膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液がその内部に供給されるめっき用容器であって、側壁と前記側壁に囲まれた開口部とを有する前記めっき容器と、
被めっき基板を、前記めっき用容器の前記開口部に対向させると共に、前記めっき用容器と離間して保持する保持手段と、
前記被めっき基板の外周部に接触するカソード電極と、
前記めっき容器内の前記めっき液に接触して配置されるアノード電極と、
前記めっき容器に前記めっき液を供給し、前記めっき液を前記被めっき基板に接触させた後、前記めっき用容器と前記被めっき基板との間の隙間からオーバーフローさせるめっき液供給手段と、
前記めっき容器の前記側壁に設けられた貫通孔と、を備えるめっき装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記カソード電極と対向して設けられている請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記カソード電極と対向する箇所および対向しない箇所の両方の箇所に設けられている請求項1記載のめっき装置。
【請求項4】
前記貫通孔の開口量を変える開口量可変手段をさらに備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−7201(P2012−7201A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142853(P2010−142853)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】