説明

めっき装置

【課題】半導体ウェハ等の被めっき体(基板)にめっきを行う場合に、高電流密度の条件であっても平坦な先端形状のバンプを形成したり、良好な面内均一性を有する金属膜を形成したりすることができるようにする。
【解決手段】めっき装置は、めっき槽10内のめっき液Qに浸漬させて配置されるアノード26と、被めっき体Wを保持しアノードと対向する位置に配置するホルダ24と、被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドル32と、所定のピッチで垂直方向に延びる複数のスリット部を有する調整板固定用スリット板96と、電場の拡がりを制限するための開口を有する調整板34とを備え、調整板は、その側端部を調整板固定用スリット板の任意のスリット部に挿入することによって該調整板の位置が調整可能にめっき槽に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の被めっき体(基板)の表面にめっきを行うめっき装置に関し、特に半導体ウェハの表面に設けられた微細な配線用溝やホール、レジスト開口部にめっき膜を形成したり、半導体ウェハの表面にパッケージの電極等と電気的に接続するバンプ(突起状電極)を形成したりするのに好適なめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、TAB(Tape Automated Bonding)やフリップチップにおいては、配線が形成された半導体チップの表面の所定箇所(電極)に金、銅、はんだ、或いはニッケル、更にこれらを多層に積層した突起状接続電極(バンプ)を形成し、このバンプを介してパッケージの電極やTAB電極と電気的に接続することが広く行われている。このバンプ形成方法としては、電気めっき法、蒸着法、印刷法、ボールバンプ法といった種々の手法があるが、半導体チップのI/O数の増加、ピッチの微細化に伴い、微細化可能で性能が比較的安定している電気めっき法が多く用いられている。
【0003】
電気めっき法によれば、高純度の金属膜(めっき膜)が容易に得られ、しかも金属膜の成膜速度が比較的速いばかりではなく、金属膜の厚みの制御も比較的容易に行うことができる。また、半導体ウェハ上への金属膜形成において、高密度実装、高性能化、及び高い歩留まりを追求するため、膜厚の面内均一性も厳しく要求されている。電気めっきによれば、めっき液の金属イオン供給速度分布や電位分布を均一にすることにより、膜厚の面内均一性に優れた金属膜を得ることができると期待されている。
【0004】
いわゆるディップ方式を採用しためっき装置として、内部にめっき液を保有するめっき槽を有し、めっき槽の内部に、基板ホルダに周縁部を水密的にシールして保持した基板(被めっき体)とアノードホルダに保持したアノードとを互いに対向させて垂直に配置し、アノードと基板との間に位置するように中央に中央孔が形成された誘電体からなる調整板(レギュレーションプレート)を配置し、更に調整板と基板との間にめっき液を攪拌するパドルが配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のめっき装置によれば、めっき槽内にめっき液を収容して、アノード、基板及び調整板をめっき液中に浸漬させ、同時に、導線を介してアノードをめっき電源の陽極に、基板をめっき電源の陰極にそれぞれ接続し、アノードと基板との間に所定のめっき電圧を印加することにより、基板の表面に金属が析出して金属膜(めっき膜)が形成される。そして、めっき時に、調整板と基板との間に配置されたパドルによりめっき液を攪拌することにより、十分な量のイオンを基板に均一に供給して、より均一な膜厚の金属膜を形成するようにしている。
【0006】
特許文献1に記載の発明では、アノードと該アノードとの対向する位置に配置される基板との間に、円筒体の内部にめっき液流路を有する調整板を配置し、この調整板でめっき槽内の電位分布を調節することで、基板の表面に形成される金属膜の膜厚分布を調節するようにしている。
【0007】
また、めっき槽内のめっき液中に浸漬させて配置される調整板と被めっき物(被めっき体)の距離を極力短くして、被めっき物の全面に亘る電位分布をより均一にすることで、より均一な膜厚の金属膜を形成するようにしためっき装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
近年、より高い装置の生産性を実現するため、所定の膜厚のめっき膜を成膜するのに要するめっき時間を、従来の2/3程度に短くすることが特に強く要求されている。あるめっき面積に対して、より短時間で所定の膜厚のめっきを行うためには、高い電流を流して高いめっき速度でめっきを行うこと、すなわち高電流密度でめっきを行うことが必要である。しかし、従来の一般的なめっき装置およびその運転方法で高電流密度の条件でめっきを行うと、めっき膜厚の面内均一性が悪化する傾向がある。めっき膜厚の面内均一性は、従来にも増して高いレベルであることが要求されている。このため、特許文献2に記載されているように、調整板と被めっき物の距離を短くすることは、高電流密度のめっき条件でめっきを行う時により重要となる。
【0009】
高電流密度の条件でめっきを行う問題点として、発明者は、従来の一般的なめっき装置およびその運転方法で高電流密度の条件でめっきを行うと、めっきによって形成されるバンプは、先端形状が平坦でなく凸形の形状になる傾向にあることを見出した。現在開発が進められているWL−CSP(Wafer Level-Chip Size Package)では、めっきでバンプを形成した後、バンプを樹脂で被覆するようにしているが、バンプの先端が凸型の形状であると、バンプ全体を被覆するために余分に樹脂を盛らなければならず、コストアップにつながる。更に、樹脂を盛る際に表面を平滑にするため、スキージと呼ばれるへらで樹脂表面をならすようにしているが、部分的に凸型になり高くなったバンプがあると、へら(スキージ)で樹脂表面をならす際にバンプが倒されてしまうという問題もある。またバンプを樹脂で被覆した後、メカニカルポリシングにより樹脂とバンプを所定の厚さまで削るようにしていたが、この時も、余分に盛った分だけ多くの樹脂を削らなければならず、コストアップにつながる。
【0010】
めっき液を攪拌する一対の攪拌棒を、一方を5cm/secから20cm/secで、他方を25cm/secから70cm/secで駆動させて、スルーホールを有するプリント配線板をめっきするめっき装置およびめっき方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、このような速度で一対の攪拌棒をそれぞれ動かしながらめっきを行っても、平坦な先端形状のバンプを形成することはできない。
【特許文献1】JP WO2004/009879号パンフレット
【特許文献2】特開2001−329400号公報
【特許文献3】特開2006−41172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、半導体ウェハ等の被めっき体(基板)にめっきを行う場合に、高電流密度の条件であっても平坦な先端形状のバンプを形成したり、良好な面内均一性を有する金属膜を形成したりすることができるめっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、被めっき体を保持し前記アノードと対向する位置に配置するホルダと、前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき体との間に配置され、該被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドルと、前記アノードと前記パドルとの間の位置において前記めっき槽の側板に固定され、所定のピッチで垂直方向に延びる複数のスリット部を有する調整板固定用スリット板と、電場の拡がりを制限するための開口を有する調整板とを備え、前記調整板は、その側端部を前記調整板固定用スリット板の任意のスリット部に挿入することによって該調整板の位置が調整可能に前記めっき槽に取付けられることを特徴とするめっき装置である。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記めっき槽と前記調整板との間からの電場の漏洩を防止するために、前記調整板のアノード側下端部に電場遮蔽部材を設けたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記調整板と前記調整板固定用スリット板との間からの電場の漏洩を防止するために、前記調整板のアノード側に電場遮蔽部材を設けたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記調整板は、前記被めっき体の外形に沿った内径を有する筒状部と、前記筒状部のアノード側端部の外周に接続されたフランジ部を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記調整板は、開口を有するフランジ部と、金属イオンを通して添加剤を通さない陽イオン交換体、または機能膜から構成された隔壁と、前記隔壁が前記フランジ部の開口の全体を覆うように、前記隔壁を前記フランジ部のアノード側表面に固定する固定板とを有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記調整板は、開口を有するフランジ部と、前記フランジ部の開口の直径よりも小さい直径の開口を有する補助調整板と、前記補助調整板を取り付けるための補助調整板取付け部とを備えており、前記補助調整板は、前記フランジ部の開口および前記補助調整板の開口の中心軸が互いに一致するように、前記補助調整板取付け部によって前記フランジ部のアノード側表面に配置されることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、被めっき体を保持し前記アノードと対向する位置に配置するホルダと、前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき体との間に配置され、該被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドルと、前記パドルと前記アノードとの間に配置され、電場の拡がりを制限するための開口を有する調整板と、前記めっき槽内の前記調整板の外周端部と対向する位置に配置され、内方に開放したチャンネル状の凹部を有し、該凹部内に前記調整板の外周端部が差し込まれることで前記調整板の移動を案内する案内部と、前記調整板を前記被めっき体と平行に上下方向または左右方向に移動させる調整板移動機構とを備え、前記調整板移動機構は、前記調整板を支持する調整板支持部と、前記調整板支持部に支持された前記調整板を押付けることで、前記調整板と前記被めっき体との距離を一定に保ちながら、前記調整板を上下方向または左右方向に移動させる押付け部材とを備えたことを特徴とするめっき装置である。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記めっき槽と前記案内部との間からの電場の漏洩を防止するために、前記案内部のアノード側に電場遮蔽部材を設けたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記調整板は、前記被めっき体の外形に沿った内径を有する筒状部と、前記筒状部のアノード側端部の外周に接続されたフランジ部を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記調整板は、開口を有するフランジ部と、金属イオンを通して添加剤を通さない陽イオン交換体、または機能膜から構成された隔壁と、前記隔壁が前記フランジ部の開口の全体を覆うように、前記隔壁を前記フランジ部のアノード側表面に固定する固定板とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記調整板は、開口を有するフランジ部と、前記フランジ部の開口の直径よりも小さい直径の開口を有する補助調整板と、前記補助調整板を取り付けるための補助調整板取付け部とを備えており、前記補助調整板は、前記フランジ部の開口および前記補助調整板の開口の中心軸が互いに一致するように、前記補助調整板取付け部によって前記フランジ部のアノード側表面に配置されることを特徴とする。
【0018】
本発明の参考例は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、被めっき体を保持し前記アノードと対向する位置に配置するホルダと、前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき体との間に配置され、該被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドルと、前記パドルを駆動するパドル駆動部を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記パドルの移動速度の絶対値の平均が70〜100cm/secとなるように前記パドル駆動部を制御することを特徴とする。
【0019】
このように、アノードと被めっき体との間に配置されたパドルを、絶対値の平均が70〜100cm/secとなるような速度(高速)で動かしてめっき液を攪拌することにより、例えばバンプを形成する際に、バンプを形成するために予め形成されたレジストホール内に十分かつ均一なイオンを供給して、高電流密度のめっき条件でも平坦な先端形状のバンプを形成することができる。
【0020】
本発明の参考例は、前記パドルは、格子部を有する板状部材であることを特徴とする。
本発明の参考例は、前記板状部材は、3〜5mmの一定の厚みを有することを特徴とする。
【0021】
本発明の参考例は、前記パドルと前記被めっき体の距離は、5〜11mmであることを特徴とする。
【0022】
本発明の参考例は、誘電体からなり、前記アノードと前記パドルとの間に配置される調整板を更に有し、前記調整板は、前記被めっき体の外形に沿った内径を有する筒状部と、該筒状部の前記アノード側端部の外周に接続されて前記アノードと前記被めっき体との間に形成される電場を遮断するフランジ部を有することを特徴とする。
【0023】
このように、アノードとパドルとの間に調整板を配置して、被めっき体の全面に亘る電位分布をより均一にすることで、高電流密度のめっき条件でも、被めっき体に形成される金属膜(めっき膜)の面内均一性を高めることができる。
【0024】
本発明の参考例は、前記筒状部の被めっき体側の端部と前記被めっき体の距離は、8〜25mmであることを特徴とする。
筒状部の被めっき体側の端部と被めっき体の距離は、12〜18mmであることが好ましい。
【0025】
本発明の参考例は、前記ホルダは外方に突出するホルダアームを、前記めっき槽は前記ホルダアームに接触して前記ホルダを吊下げ支持するホルダ支持部をそれぞれ有し、前記ホルダアームと前記ホルダ支持部との接触部には、該ホルダアームをホルダ支持部に固定する固定手段が設けられていることを特徴とする。
【0026】
これにより、めっき槽でホルダを吊下げ支持した時、たとえパドルを高速で移動させた時のめっき液の流動でホルダが後ろ向きの圧力を受けたとしても、ホルダが揺れたり傾いたりすることを防止することができる。
【0027】
本発明の参考例は、前記固定手段は、前記ホルダアームと前記ホルダ支持部の少なくとも一方に設けられた磁石からなることを特徴とする。
これにより、磁力によって保持力を高めることができる。
【0028】
本発明の参考例は、前記ホルダアームと前記ホルダ支持部との接触部の少なくとも一部に、前記めっき槽で前記ホルダを吊下げ支持した時に互いに接触して閉じる接点を有し、該接点が閉じることで被めっき体に給電することを特徴とする。
このように、ホルダアームとホルダ支持部との接触部の少なくとも双方の一部に接点を設けることで、めっき槽でホルダを吊下げ支持した時、ホルダアーム側の接点とホルダ支持部側の接点を確実に接触させることができる。
【0029】
本発明の参考例は、めっき槽内のめっき液中にアノードと被めっき体とを互いに対向させて設置し、前記アノードと前記被めっき体との間に電圧を印加しながら、前記アノードと前記被めっき体との間に配置したパドルを、絶対値の平均が70〜100cm/secとなる移動速度で前記被めっき体と平行に往復移動させることを特徴とする。
【0030】
本発明の参考例は、前記パドルは、格子部を有する板状部材であることを特徴とする。
本発明の参考例は、前記板状部材は、3〜5mmの一定の厚みを有することを特徴とする。
【0031】
本発明の参考例は、前記パドルと前記被めっき体の距離は、5〜11mmであることを特徴とする。
【0032】
本発明の参考例は、前記被めっき体の外形に沿った内径を有する筒状部と、該筒状部の前記アノード側端部の外周に接続されて前記アノードと前記被めっき体との間に形成される電場を遮断するフランジ部を有し、誘電体からなる調整板を、前記アノードと前記パドルとの間に配置したことを特徴とする。
【0033】
本発明の参考例は、前記筒状部の被めっき体側の端部と前記被めっき体の距離は、8〜25mmであることを特徴とする。
筒状部の被めっき体側の端部と被めっき体の距離は、12〜18mmであることが好ましい。
【0034】
本発明の参考例は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、被めっき体を保持し前記アノードと対向する位置に配置するホルダと、前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき体との間に配置され、該被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドルと、前記パドルを駆動するパドル駆動部を制御する制御部を有し、前記めっき槽は、内部に多数のめっき液通孔を有する分離板によって、上方の被めっき体処理室と下方のめっき液分散室に分離され、前記めっき液分散室には、めっき液の分散流れを確保しつつ電場を遮断する遮蔽板が配置されていることを特徴とする。
【0035】
このように、分離板によって、めっき槽を上方の被めっき体処理室と下方のめっき液分散室とに分離し、めっき液分散室に遮蔽板を設けて、電場がめっき液分散室内を迂回してアノードから被めっき体に向けて形成されるのを抑制することで、被めっき体の下部に形成される電場がめっき膜の面内均一性に影響が与えることを防ぐことができる。この被めっき体の下部に形成される電場のめっき膜の面内均一性への影響は、従来の低電流密度のめっき条件では問題にならなかったが、従来よりも高電流密度の条件においては、めっき膜のめっき槽底に近い部分の膜厚が急激に厚くなるために問題となる。
【0036】
本発明の参考例は、誘電体からなり、前記アノードと前記パドルとの間に配置される調整板を更に有し、前記調整板は、前記被めっき体の外形に沿った内径を有する筒状部と、該筒状部の前記アノード側端部の外周に接続されて前記アノードと前記被めっき体との間に形成される電場を遮断するフランジ部を有し、該フランジ部下端には、前記分離板に接する電場遮蔽部材が取付けられていることを特徴とする。
【0037】
このように、調整板を設けることにより、アノードと被めっき体との間に形成される電場を制御するとともに、フランジ部と分離板との間に電場遮蔽部材を設けることにより、フランジ部と分離板の隙間から電場が漏れることを防ぐことができる。
【0038】
本発明の参考例は、前記めっき液分離室は、前記遮蔽板によってアノード側液分散室とカソード側液分散室に分離され、前記アノード側液分散室及び前記カソード側液分散室にはめっき液供給路からめっき液が供給されることを特徴とする。
【0039】
このように、めっき液分散室を遮蔽板によってアノード側液分散室とカソード側液分散室に完全に分離することで、アノードから発生する電位線が、めっき液分散室内のめっき液を通してカソードとなる被めっき体に到達することを確実に防ぐことができる。
【0040】
本発明の参考例は、前記パドルは、カップリングを介して前記パドル駆動部から延びるシャフトに連結されていることを特徴とする。
これにより、カップリングを介して、パドル駆動軸から延びるシャフトからパドルを容易に切り離して、パドルの交換作業をより迅速かつ容易に行うことができる。
【0041】
本発明の参考例は、めっき液を保持するめっき槽と、前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、被めっき体を保持し前記アノードと対向する位置に配置するホルダと、前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき体との間に配置され、該被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドルと、前記パドルを駆動するパドル駆動部を制御する制御部と、誘電体からなり、前記アノードと前記パドルとの間に配置される調整板と、前記調整板を被めっき体に対して垂直または水平方向に移動させる調整板移動機構を有することを特徴とする。
【0042】
これにより、調整板移動機構を介して、調整板の被めっき体に対する垂直または水平方向の位置を微調整することで、被めっき体の表面に形成されるめっき膜の膜厚の面内均一性を向上させることができる。特に、調整板は、被めっき体に近接した位置に配置されるため、調整板の被めっき体に対する垂直または水平方向の位置を微調整することが、被めっき体の表面に形成されるめっき膜の膜厚の面内均一性を向上させる上で重要となる。
【0043】
本発明の参考例は、前記調整板移動機構は、前記調整板に押付けて該調整板を移動させる押付け部材を有することを特徴とする。
押付け部材は、例えば押付けボルトからなり、押付け部材の押付け量、例えば押付け部材として所定のピッチを有する押付けボルトを使用した場合にあっては、押付けボルトの回転数を管理することで、調整板の移動量を容易に調節することができる。
【0044】
本発明の参考例は、前記めっき槽の内周面には、前記調整板を移動させる際の案内となる案内部が備えられていることを特徴とする。
これにより、調整板と被めっき体との距離を一定にした状態で、案内部を案内として調整板を被めっき体と平行に移動させることができる。しかも、凹部を有し該凹部内に調整板の外周端部を差し込むことができる案内部を使用することで、調整板の外周から電場が漏れることを防止することができる。
【0045】
本発明の参考例は、前記調整板には、電場調整用の補助調整板を取付ける補助調整板取付け部が備えられていることを特徴とする。
これにより、調整板の設置位置を変えたり、交換したりすることなく、調整板と補助調整板を組合せることで、被めっき体の種類に合わせて、最適な電場を形成することができる。
【0046】
本発明の参考例は、前記ホルダ、前記調整板及び前記アノードを保持するアノードホルダを位置決めして保持する位置決め保持部を有することを特徴とする。
これにより、基板ホルダ、調整板及びアノードホルダを位置決めして保持した位置決め保持部材をめっき槽に設置することで、めっき槽の垂直方向における基板ホルダ、調整板及びアノードホルダの中心位置を容易に一致させることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明のめっき装置によれば、半導体ウェハ等の被めっき体(基板)にめっきを行う場合に、高電流密度の条件であっても、平坦な先端形状のバンプを形成したり、良好な面内均一性を有する金属膜を形成したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態のめっき装置を示す縦断正面図である。
【図2】図1に示すめっき装置のパドルを示す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】それぞれ異なるパドルの変形例を示す図3相当図である。
【図5】図1に示すめっき装置のパドル駆動機構をめっき槽と共に示す概略図である。
【図6】パドルのストロークエンドにおけるパドルの関係を示す平面図である。
【図7】図1に示すめっき装置の調整板を示す斜視図である。
【図8】調整板の他の例を示す側面図である。
【図9】図1に示すめっき装置の基板ホルダとめっき槽のホルダ支持部との関係を示す図である。
【図10】図1に示すめっき装置のホルダアームの周辺を拡大して示す斜視図である。
【図11】ホルダアームとホルダ支持部が接触した状態を示す断面図である。
【図12】図11の右側面図である。
【図13】アーム支持部の他の例を示す斜視図である。
【図14】図1に示すめっき装置の分離板を示す平面図である。
【図15】分離板の他の例を示す平面図である。
【図16】図1に示すめっき装置における分離板のめっき槽側板への設置状態を示す断面図である。
【図17】図1に示すめっき装置における分離板、遮蔽板及びめっき槽の底部の関係を示す斜視図である。
【図18】分離板、遮蔽板及びめっき槽の底部の他の関係を示す斜視図である。
【図19】図1に示すめっき装置における調整板のフランジ部と分離板との関係を示す断面図である。
【図20】調整板を基板との距離が調整可能なように取付けるようにして例の要部を示すめっき槽の上方から見た図である。
【図21】バンプ形成における銅めっき処理工程を示すフローチャートである。
【図22】電流密度を8ASD、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を20cm/secとしてめっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプの形状を示す図である。
【図23】電流密度を8ASD、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を83cm/secとしてめっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプの形状を示す図である。
【図24】パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を40cm/secに設定し、厚さ2mmのパドルを使用しためっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプの顕微鏡写真である。
【図25】パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を40cm/secに設定し、厚さ4mmのパドルを使用しためっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプの顕微鏡写真である。
【図26】パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を67cm/secに設定し、厚さ4mmのパドルを使用しためっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプの顕微鏡写真である。
【図27】パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を83cm/secに設定し、厚さ4mmのパドルを使用しためっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプの顕微鏡写真である。
【図28】パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を83cm/secに設定し、厚さ3mmのパドルを使用しためっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプの顕微鏡写真である。
【図29】分離板の下に遮蔽板を設置しないめっき槽を使用しためっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプ高さの分布を示す図である。
【図30】分離板の下に遮蔽板を設置しためっき槽を使用しためっきを行ってバンプを形成した場合におけるバンプ高さの分布を示す図である。
【図31】パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を20cm/secに設定し、厚さ5mmの平板で、中央部に1つの開口を有する調整板を用い、基板との距離を35mmとしてバンプを形成した場合におけるバンプ高さの面内均一性を示すグラフである。
【図32】パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を83cm/secに設定し、図7に示す調整板を用い、基板との距離を15mmとしてバンプを形成した場合におけるバンプ高さの面内均一性を示すグラフである。
【図33】図31及び図32におけるX軸及びY軸の関係を示す図である。
【図34】本発明の他の実施形態のめっき装置を示す縦断正面図である。
【図35】パドルの他の駆動機構をめっき槽と共に示す平面図である。
【図36】図35の縦断正面図である。
【図37】調整板移動機構を備えた他の調整板と他のめっき槽を示す縦断側面図である。
【図38】図37のB−B線断面図である。
【図39】他の調整板移動機構を備えた調整板とめっき槽の要部を示す図である。
【図40】更に他の調整板を示す正面図である。
【図41】図40の平面図である。
【図42】本発明の更に他の実施形態のめっき装置の要部を示す縦断正面図である。
【図43】図42に示すめっき装置に使用されているアノードホルダと位置決め保持部を示す正面図である。
【図44】更に他の調整板を示す正面図である。
【図45】図44のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の例では、被めっき体としての基板の表面に銅めっきを行うようにした例を示す。下記の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して、重複した説明を省略する。
【0050】
図1は、本発明の実施形態のめっき装置を示す縦断正面図である。図1に示すように、めっき装置は、内部にめっき液Qを保持するめっき槽10を有し、めっき槽10の上方外周には、めっき槽10の縁から溢れ出ためっき液Qを受け止めるオーバーフロー槽12が備えられている。オーバーフロー槽12の底部には、ポンプ14を備えためっき液供給路16の一端が接続され、めっき液供給路16の他端は、めっき槽10の底部に設けられためっき液供給口18に接続されている。これにより、オーバーフロー槽12内に溜まっためっき液Qは、ポンプ14の駆動に伴ってめっき槽10内に還流される。めっき液供給路16には、ポンプ14の下流側に位置して、めっき液Qの温度を調節する恒温ユニット20と、めっき液内の異物をフィルタリングして除去するフィルタ22が介装されている。
【0051】
めっき装置には、基板(被めっき体)Wを着脱自在に保持して、基板Wを鉛直状態でめっき槽10内のめっき液Qに浸漬させる基板ホルダ24が備えられている。めっき槽10内の基板ホルダ24で保持してめっき液Q中に浸漬させた基板Wに対向する位置には、アノード26がアノードホルダ28に保持されてめっき液Q中に浸漬されて配置されている。アノード26として、この例では、含リン銅が使用されている。基板Wとアノード26は、めっき電源30を介して電気的に接続され、基板Wとアノード26との間に電流を流すことにより基板Wの表面にめっき膜(銅膜)が形成される。
【0052】
基板ホルダ24で保持してめっき液Q中に浸漬させて配置した基板Wとアノード26との間には、基板Wの表面と平行に往復運動してめっき液Qを攪拌するパドル32が配置されている。このように、めっき液Qをパドル32で攪拌することで、十分な銅イオンを基板Wの表面に均一に供給することができる。パドル32と基板Wとの距離は、好ましくは5〜11mmである。更に、パドル32とアノード26との間には、基板Wの全面に亘る電位分布をより均一にするための誘電体からなる調整板(レギュレーションプレート)34が配置されている。
【0053】
パドル32は、図2及び図3に示すように、板厚tが3〜5mmの一定の厚みを有する矩形板状部材で構成され、内部に複数の長穴32aを平行に設けることで、鉛直方向に延びる複数の格子部32bを有するように構成されている。パドル32の材質は、例えばチタンにテフロン(登録商標)コートを施したものである。パドル32の垂直方向の長さL及び長孔32aの長さ方向の寸法Lは、基板Wの垂直方向の寸法よりも十分に大きくなるように設定されている。また、パドル32の横方向の長さHは、パドル32の往復運動の振幅(ストロークSt)と合わせた長さが基板Wの横方向の寸法よりも十分に大きくなるように設定されている。
【0054】
長穴32aの幅及び数は、長穴32aと長孔32aの間の格子部32bが効率良くめっき液を攪拌し、長穴32aをめっき液が効率良く通り抜けるように、格子部32bが必要な剛性を有する範囲で格子部32bが可能な限り細くなるように決めることが好ましい。また、パドル32の往復運動の両端付近でパドル32の移動速度が遅くなる、あるいは瞬間的な停止をする際に、基板W上に電場の影(電場の影響が及ばない、もしくは電場の影響が少ない箇所)を形成する影響を少なくするためにも、パドル32の格子部32bを細くすることは重要である。
【0055】
この例では、図3に示すように、各格子部32bの横断面が長方形になるように長穴32aを垂直に開けている。図4(a)に示すように、格子部32bの横断面の四隅に面取りを施してもよく、また図4(b)に示すように、格子部32bの横断面が平行四辺形になるように格子部32bに角度を付けても良い。
【0056】
パドル32の厚さ(板厚)tは、基板Wに調整板34を近づけることができるように、3〜5mmとすることが好ましく、この例では4mmに設定されている。パドル32の厚さ(板厚)tを1または2mmにすると、十分な強度を有しないことが確かめられている。また、パドル32の厚さを均一にすることで、めっき液の液はねやめっき液の大幅な液ゆれを防ぐことができる。
【0057】
図5は、パドル32の駆動機構をめっき槽10と共に示す。パドル32は、パドル32の上端に固着したクランプ36によって、水平方向に延びるシャフト38に固定され、シャフト38は、シャフト保持部40に保持されつつ左右に摺動できるようになっている。シャフト38の端部は、パドル32を左右に直進往復運動させるパドル駆動部42に連結され、パドル駆動部42は、モータ44の回転をクランク機構(図示せず)によりシャフト38の直進往復運動に変換する。この例では、パドル駆動部42のモータ44の回転速度を制御することにより、パドル32の移動速度を制御する制御部46が備えられている。なお、パドル駆動部の機構は、クランク機構だけでなく、ボールねじによりサーボモータの回転をシャフトの直進往復運動に変換するようにしたものや、リニアモータによってシャフトを直進往復運動させるようにしたものでも良い。
【0058】
この例では、図6に示すように、パドル32がストロークSt移動した左右のストロークエンドにおいて、パドル32の格子部32bの位置が互いに重ならないようにしている。これにより、パドル32が基板W上に電場の影を形成する影響を少なくできる。
【0059】
ここで、この例にあっては、パドル32を、絶対値の平均が70〜100cm/secとなるよう、従来よりも高速で往復運動させるようにしている。これは、発明者らが、電流密度を従来の5ASD(A/dm)に比べて高い8ASDにした場合に、パドルによる攪拌を従来よりも高速度で行うことにより、平坦な先端形状のバンプを形成することができることを実験により確かめた事実に基づく。つまり、平坦な先端形状のバンプを形成できるパドル攪拌移動速度の絶対値の平均は、70〜100cm/secである。この例においては、モータ44の回転運動をクランク機構によりパドル32の直進往復運動に変換しており、モータ44が1回転すると、パドル32は10cmの振幅(ストロークSt)で1往復する。この例では、モータ44を250rpmで回転させた場合に最も良好なバンプを形成できたため、パドル32の最適な攪拌移動速度の絶対値の平均は83cm/secである。
【0060】
図1に示す調整板34の外形図を図7に示す。調整板34は、筒状部50と矩形状のフランジ部52からなり、材質として、誘電体である塩化ビニールを用いている。調整板34は、筒状部50の先端が基板側、フランジ部52がアノード側になるように、めっき槽10内に設置される。筒状部50は、電場の拡がりを十分制限できるような開口の大きさ、及び軸心に沿った長さを有している。この例において、筒状部50の軸心に沿った長さは20mmである。フランジ部52は、アノード26と基板Wとの間に形成される電場を遮蔽するように、めっき槽10内に設置される。図1において、調整板34の筒状部50と基板Wとの距離は、8〜25mmであることが好ましく、12〜18mmであることが更に好ましい。
【0061】
なお、この例では、図7に示すように、調整板34として、筒状部50の端部にフランジ部52を取付けたものを使用しているが、図8に示すように、アノード側にも筒状部50を延伸させて、筒状部50の一部50aがアノード側に突出するようにしてもよい。
【0062】
図1に示すように、基板Wは、基板ホルダ24によって保持される。基板ホルダ24は、例えば銅スパッタ膜などの下地導通膜付きの基板Wに該基板Wの周辺部から給電を与えるように構成されている。基板ホルダ24の導通接点は、多接点構造であり、接触幅の合計が、接点をとることが可能な基板上の周長に対して60%以上になるようにしている。また、接点は、各々の接点間が等距離に配列され等分配されている。
【0063】
この例においては、パドル32を、例えば絶対値の平均が70〜100cm/secとなるように、高速で移動させるため、めっき液の流動により、基板ホルダ24が後ろ向きの圧力を受け、基板ホルダ24が揺れたり、基板ホルダ24が本来の角度よりも傾いた状態になるという問題が新たに生じる。基板ホルダ24が揺れたり傾いたりすると、電位の分布が均一でなくなり、めっき膜の均一性に影響が出てしまう。
【0064】
基板ホルダ24は、図9に示すように、めっき槽10内に設置される際に、図示しないトランスポータにより、ホルダ把持部60を把持されて上方から吊るされ、めっき槽10に固定されたホルダ支持部62に、外方に突出するホルダアーム64が引っ掛けられて吊下げ保持される。
【0065】
図10は、ホルダアーム64の周辺拡大図、図11は、ホルダアーム64とホルダ支持部62が接触した状態を示す断面図、図12は、図11の右側面図である。図10乃至図12に示すように、ホルダアーム64のホルダ支持部62に対向する面には、アーム側接点66が設けられており、このアーム側接点66は、図示しない電気配線によって、基板Wに給電するカソード接点と電気的につながっている。またホルダ支持部62のホルダアーム64と対向する面には、支持部側接点68が設けられており、この支持部側接点68は、図示しない外部電源と電気的につながっている。そして、基板ホルダ24をめっき槽10に吊下げ支持した時に、アーム側接点66と支持部側接点68が接触して接点が閉じることにより、外部電源とカソード接点が電気的に導通され、カソード接点にカソード電圧を印加することができる。通常、アーム側接点66と支持部側接点68は、左右のホルダアーム64と左右のホルダ支持部62のどちらか一方に設置される。
【0066】
ホルダアーム64のホルダ支持部62に対向する面には、固定手段としてアーム側磁石70が設けられ、ホルダ支持部62のホルダアーム64と対向する面にも、固定手段としての支持部側磁石72が設けられている。磁石70,72としては、例えばネオジム磁石が用いられる。これにより、基板ホルダ24をめっき槽10に吊下げ支持した時に、アーム側磁石70と支持部側磁石72が互いに接触して引き合うことにより、ホルダ支持部62とホルダアーム64を介して、基板ホルダ24がより強固にめっき槽10に固定され、めっき液の流動により基板ホルダ24が揺れたり傾いたりすることを防ぐことができる。通常アーム側磁石70と支持部側磁石72はホルダアーム64とホルダ支持部62の左右両方に設置される。
【0067】
なお、基板ホルダ24のめっき槽10に対する位置は、トランスポータの搬送によって決められるが、図13に示すように、ホルダ支持部62にチャンネル状で角部にテーパを有する開口部62aを設け、この開口部62aで基板ホルダ24のホルダアーム64をガイドするようにしても良い。このように、ホルダ支持部62に開口部(ガイド)62aを設けて基板ホルダ32のめっき槽10に対する位置決めしても、基板ホルダ24の位置決めや搬送のために、若干の寸法的“遊び”が必要である。その“遊び”の範囲内で、基板ホルダ24が揺れたり傾いたりすると、アーム側接点66と支持部側接点68の接触が離れたり断続的になる危険性があるが、接点66,68の近傍で、磁石70,72により、基板ホルダ24をめっき槽10に強固に支持することにより、アーム側接点66と支持部側接点68の接触を確実にすることができる。また接点66,68間の擦れによる接点66,68の磨耗も抑制することができ、接点66,68の耐久性が向上する。
【0068】
アーム側磁石70と支持部側磁石72は、片方が磁石ではなく磁性体材料であっても良い。また、磁石の表面を磁性材料でカバーして接触による損傷を防ぐようにしてもよい。更に、磁石の周囲を、磁石の表面が露出するように磁性材料で囲み、磁性材料の一部が磁石の表面よりも突出するようにして、磁力を強めるようにしても良い。
【0069】
図1に示すように、めっき槽10の底部には、分離板80と遮蔽板82が設置されている。めっき槽10の底に設けられためっき液供給口18から供給されためっき液Qが、基板Wの全面に均一な流れとなるように、めっき槽10の底には、めっき液が分散するように空間が設けられ、この空間に、内部に多数のめっき液通孔を有する分離板80が水平に配置され、これによって、めっき槽10の内部は、上方の基板処理室84と下方のめっき液分散室86に区画されている。
【0070】
図14に分離板80の平面図を示す。分離板80はめっき槽10の内側の形状とほぼ同じ形状で、全面に複数の小孔からなるめっき液通孔80aが設けられている。分離板80でめっき槽10を基板処理室84とめっき液分散室86に分け、分離板80にめっき液が流通する複数のめっき液通孔80aを設けることによって、めっき液Qが基板Wに向かって均一な流れを形成するようにしている。分離板80に設けた複数のめっき液通孔80aは、径が大きいと、電場がアノード26からめっき液分散室86を通って基板W側に漏れ、基板Wに形成するめっき膜の均一性に影響を与えるため、この例では、めっき液通孔80aの径をΦ2.5mmとしている。
【0071】
この例では、分離板80の全面にめっき液通孔80aを設けているが、分離板80の全面にめっき液通孔80aを設ける必要はなく、例えば図15に示すように、調整板34の配置位置Aを境に、基板側のみにめっき液通孔80aを分布させて設け、アノード26の配置位置Bを境に、反基板側(アノードの後方)のみにめっき液通孔80aを設けても良い。図15に示す分離板80を採用することにより、電場がアノード26からめっき液分散室86を通って基板W側に漏れるのをより効果的に防ぐとともに、アノード26の後方にもめっき液通孔80aを設けることで、特にめっき液Qをめっき槽10から排出した場合の液抜きを確実に行うことができる。
【0072】
分離板80は、図16に示すように、めっき槽10の側板10aに設けた分離板支持部90の上に重ねるように水平に設置されるが、分離板80と分離板支持部90の間にパッキン92を設けることで、分離板80を分離板支持部90に密着させて設置することができる。
【0073】
分離板80を設けても、電場がアノード26からめっき液分散室86を通って基板W側に漏れ、基板W上に形成されるめっき膜の均一性に影響を与えることがある。そのため、この例では、分離板80の下面に鉛直方向下方に延出する遮蔽板82を取付けている。このように、遮蔽板82を設けることで、電場がアノード26からめっき液分散室86を通って基板W側に漏れるのをより効果的に防ぐとともに、めっき液Qがめっき槽10内のめっき液分散室86で分散して、めっき槽10内の基板処理室84への均一な流れが確保できるようになっている。すなわち、図17に示すように、遮蔽板82は、めっき液供給口18の直上方に位置して、めっき槽10の底との間に隙間Sが生じるように、分離板80の下面に取付けられる。電場の漏れを防ぐため、この隙間Sは、極力小さいことが好ましい。
【0074】
なお、図18に示すように、遮蔽板82をめっき槽10の底に接触させ、遮蔽板82に半円状の開口部82aを設けて、めっき液の流路を確保するようにしてもよい。この例にあっても、電場の漏れを防ぐため、開口部82aは、極力小さいことが好ましい。遮蔽板82は、分離板80のめっき液通孔80aが存在しない下面、例えば分離板80の調整板34のフランジ部52の直下に対応する下面に配置される。
なお、この例では、遮蔽板82をめっき液供給口18の直上に設置しているが、必ずしもめっき液供給口18の直上にある必要はなく、また遮蔽板82が複数枚あっても良い。
【0075】
図1に示すめっき装置において、めっき槽10内の基板W、アノード26、調整板34、パドル32の位置関係は、基板Wに形成されるめっき膜の均一性に影響を与える。この例では、基板Wの中心、アノード26の中心、及び調整板34の筒状部50の軸心がほぼ一直線に並ぶように基板W、アノード26及び調整板34が配置されている。アノード26と基板Wの極間距離は、この例では90mmであるが、アノード26は、極間距離60〜95mmの範囲で設置できる。調整板34の筒状部50の基板W側先端と基板Wとの距離は、この例では15mmであり、筒状部50の長さが20mmであるため、調整板34のフランジ部52と基板Wとの間の距離は35mmである。
【0076】
調整板34のフランジ部52のアノード側下端には、分離板80とフランジ部52の隙間から電場が漏れるのを防ぐため、図19に示すように、例えばゴムシートからなり、下端が分離板80と弾性的に接触する電場遮蔽部材94が設置されている。これにより、分離板80とフランジ部52の隙間から電場が漏れるのを防ぐことができる。なお、フランジ部52の下端面を分離板80の上面に密着させることで、フランジ部52自身が電場遮蔽部材を兼ねるようにしてもよい。
【0077】
調整板34を基板Wとの距離が調整可能なように取付けるようにしてもよい。つまり、図20に示すように、めっき槽10の側板10aに、所定のピッチで垂直方向に延びる複数のスリット部96aを有する調整板固定用スリット板96を設けて、調整板34のフランジ部52の側端部を調整板固定用スリット板96の任意のスリット部96aに挿入するようにしてもよい。この場合、調整板固定用スリット板96を、長穴96bと固定用ねじ98によって、めっき槽側板10aに取付けるようにすることで、めっき装置で処理する基板の種類に応じて、調整板34の基板Wとの距離を最適な位置に微調整することができる。
【0078】
また、フランジ部52の調整板固定用スリット板96近傍に、ゴムシールからなる電場遮蔽部材100を設けることが好ましく、これによって、電場がフランジ部52の外周の隙間を通ってアノード26から基板Wに向けて形成されるのを防ぐことができる。なお、この電場遮蔽部材100は、調整板固定用スリット板96のアノード側のみに設けるようにしてもよい。
【0079】
本発明のめっき装置において、基板上に形成するバンプの代表的な寸法は、バンプ径が150μmであり、目標めっき膜厚は、110μmである。このようなバンプを形成するため、めっき液として、硫酸銅濃度が150g/L以上のめっき液を使用することが望ましい。めっき液としては、例えば、下記の示すような組成のベース液に、有機添加剤のポリマー成分(抑制剤)、キャリアー成分(促進剤)、レベラー成分(抑制剤)を含有するものが挙げられる。
【0080】
ベース液の組成
硫酸銅五水塩(CuSO・5HO):200g/L
硫酸(HSO) :100g/L
塩素(Cl) :60mg/L
【0081】
従来の一般的なバンプ形成のためのめっきにおける電流密度は3〜5ASDであるが、本発明の実施形態のめっきにおける電流密度は、例えば8ASDである。ただし本発明の実施形態におけるめっき装置及びめっき方法は、14ASDまで適用可能である。以下の例における電流密度の条件は、断らない限り8ASDである。
【0082】
次に、バンプ形成における銅めっき処理工程を図21に示す。先ず、基板を純水に浸漬させて、例えば10分間の前水洗を行い、次に基板を5容積%(vol.%)の硫酸に浸漬させて、例えば1分間の前処理を行う。基板を純水で洗浄する水洗を、例えば30秒に亘って2回行う。そして、例えば、基板をめっき液に浸漬させた後、1分間は無通電状態を保持し、その後通電して、基板に対する銅めっき処理を行う。次に、基板を純水で水洗し、しかる後、例えば窒素ブローにより基板を乾燥させる。めっき処理工程後は、専用のレジスト剥離液でレジストを剥離し、しかる後、水洗、乾燥処理を行う。
【0083】
図22及び図23は、パドルによるめっき液の攪拌の速度を変えた場合にめっきで形成されるバンプの形状の差を示す。電流密度は8ASDである。図22は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均が従来の一般的な速度である20cm/secでめっきを行った場合、図23は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を約83cm/secとしてめっきを行った場合を示している。図22に示すように、高電流密度が8ASDと高い場合に、従来の一般的な低いパドル攪拌移動速度で形成されたバンプにあっては、その先端の凸部の高さhは30umであるが、図23に示すように、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を約83cm/secとするような高速のパドル攪拌移動速度で形成されたバンプにあっては、その先端の凸部の高さhが15umに抑えられていることが判る。
【0084】
図24乃至図28は、基本的に、図1に示すめっき装置を使用し、パドル及びパドル攪拌移動速度を変えた条件で、基板(ウェハ)の表面にバンプを形成した時におけるバンプの顕微鏡写真を示す。図24は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を40cm/secに設定し、厚さ2mmのパドルを使用してめっきを行った場合であり、基板全面に形成されたバンプに欠陥が認められる。図25は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を40cm/secに設定し、厚さ4mmのパドルを使用してめっきを行った場合で、基板全面のバンプに欠陥があり、バンプの形状がいびつになっている。この図24及び図25から、パドル厚さを厚くしただけでは不十分であることが分かる。
【0085】
図26は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を67cm/secに設定し、厚さ4mmのパドルを使用してめっきを行った場合で、基板全面に形成されたバンプに欠陥が認められる。図27は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を83cm/secに設定し、厚さ4mmのパドルを使用してめっきを行った場合で、基板全面に欠陥のない良好なバンプが形成されていることが判る。これは、パドル攪拌移動速度が低い場合、高電流密度においては、銅イオンの供給が追いつかず、バンプの欠陥となり、パドル攪拌移動速度が速いと、銅イオンが十分に供給され、欠陥のないバンプを形成できると考えられる。なお、同じく高電流密度の条件で、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を83cm/secに設定し、厚み3mmのパドルを使用してめっきを行った場合、図28に示すように、基板全面においてバンプに欠陥は認められないが、パドルの厚みが4mmの場合に比べてバンプの角が丸くなっていることが分かる。
【0086】
図29及び図30は、めっき槽の分離板の下に遮蔽板を設置しないめっき槽を使用してめっきを行った場合(図29)と、めっき槽の分離板の下に遮蔽板を設置しためっき槽を使用してめっきを行った場合(図30)における、基板上に形成されるバンプ高さの分布示す。凡例の数値の単位は(μm)である。図29に示すように、遮蔽板がない場合は、基板のめっき槽底方向の基板エッジ近傍においてめっき膜厚が中心部に比べて厚くなっているが、図30に示すように、遮蔽板を入れることにより、めっき槽底方向の基板エッジ近傍においてめっき膜厚が中心部と同程度に抑えられていることが判る。
【0087】
図31及び図32は、パドル攪拌移動速度と、調整板の形状および調整板と基板の距離の双方を変えた場合に、基板上に形成されたバンプの高さの面内均一性を示すグラフである。図31及び図32において、図33に示すように、平面上で互いに直交する軸をX軸、Y軸としている。図31は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を20cm/secに設定し、筒状部のない、厚さ5mmの平板で、中央部に1つの開口を有する調整板を用い、基板との距離を35mmとしてめっきを行った場合であり、バンプ(めっき膜)の高さは、W型の傾向になっていることが判る。図32は、パドル攪拌移動速度の絶対値の平均を83cm/secに設定し、図7に示す調整板を使用し、基板と筒状部の先端との距離を15mmとしてめっきを行った場合である。この場合、バンプ(めっき膜)の高さは、図31に比べ平坦になっており、面内の均一性が改善されていることが分かる。
【0088】
図34は、本発明の他の実施形態のめっき装置を示す。この例のめっき装置は、遮蔽板82として、分離板80の下面から下方に垂直に延びて下端面がめっき槽10の底壁に達するものが使用され、これによって、分離板80の下方に形成されるめっき液分離室86は、遮蔽板82によって、アノード側液分散室110とカソード側液分散室112に完全に分離されている。この遮蔽板82の下端面は、例えば溶接等によって、めっき槽10の底壁に固着されている。
【0089】
めっき液供給路16には、恒温ユニット20とフィルタ22との間に位置して、元バルブ114及び流量計116が設置されている。めっき液供給路16は、フィルタ22の下流側で2つの分岐経路16a,16bに分岐し、この各分岐経路16a,16bは、アノード側液分離室110及びカソード側液分離室112にそれぞれ接続されている。各分岐経路16a,16bには、バルブ118a,118bがそれぞれ設置されている。
【0090】
このように、めっき液分離室86を遮蔽板82によってアノード側液分散室110とカソード側液分散室112に完全に分離することで、アノード26から発生した電位線がめっき液分離室86内のめっき液を通してカソード(基板)側へ漏れることを確実に防止し、しかもめっき液供給路16を通して、アノード側液分散室110とカソード側液分散室112にめっき液を個別に供給することができる。
【0091】
図35及び図36は、パドル32の他の駆動機構をめっき槽10と共に示す。この例において、パドル32は、その上端部において、パドル押え120に取付けられている。パドル駆動部42から延びるシャフト38は、シャフト支持部40でそれぞれ支持される左右の端部シャフト38a,38bと、この端部シャフト38a,38bの間に位置する中間シャフト38cの3つの分割され、この中間シャフト38cがパドル押え120の内部を挿通して両端で外部に露出している。そして、中間シャフト38cの一端と端部シャフト38a、及び中間シャフト38cの他端と端部シャフト38bは、カップリング122a,122bでそれぞれ接続されている。この例では、カップリング122a、122bとして、ねじ式カップリングを使用しているが、例えばいわゆるクイックカップリング等、任意のカップリングを使用しても良い。
【0092】
これにより、例えばパドル32を交換する必要が生じた時に、シャフト保持部40をめっき装置から取外すことなく、カップリング122a,122bを介して、パドル32、パドル押え120及び中間シャフト38cを一式でめっき装置から取外ことができ、これによって、パドル32の交換を容易かつ迅速に行うことができる。しかも、パドル32をめっき装置に再度取付ける時にも、所定の位置に再現性よく取付けることができる。更に、調整板34をめっき装置から取外す際も、パドル32を一旦めっき装置から取外すことで、この調整板34の取外し及び再度取付け操作を容易に行うことができる。
【0093】
図37は、調整板移動機構を備えた他の調整板と他のめっき槽を示す。この例のめっき槽10は、内槽130と該内槽130の周囲を包囲する外槽132とを有している。調整板134は、筒状部136を有する矩形平板状の本体部138の上部に該本体部138より幅広の把持部140を一体に連接して構成されている。この例では、把持部140を介して、調整板移動機構142で調整板134の基板Wと平行な左右(水平)方向の位置決めを行う。
【0094】
調整板移動機構142は、めっき槽10の上端開口部に跨って設置される調整板支持部144と、この調整板支持部144の外周端部に立設した一対のブラケット146と、この各ブラケット146に設けた雌ねじに螺合して水平方向に移動する左右押付けボルト148と、各ブラケット146に設けたばか穴を貫通して水平に延びる左右固定ボルト150を有している。左右押付けボルト148及び左右固定ボルト150は、調整板支持部144に調整板134の把持部140を載置して調整板134を所定位置に設置した時に、把持部140の外周端面に対向する位置に配置される。そして、把持部140の外周端面の左右固定ボルト150と対向する位置には該左右固定ボルト150と螺合する雌ねじが形成され、左右押付けボルト148は、把持部140の外周端面に当接し該左右押付けボルト148の締付けに伴って調整板134を内方に押付けるようになっている。
【0095】
これにより、調整板支持部142に調整板134の把持部140を載置して調整板134を所定位置に設置した後、左右押付けボルト148を用いて、調整板134の基板Wと平行な左右方向の調整を行い、左右固定ボルト150で調整板134を固定することができる。左右押付けボルト148及び左右固定ボルト150を用いて調整板134を位置決めする位置は、把持部140でなくてもよく、調整板134の他の部分でも良い。なお、所定のピッチを有する左右押付けボルト148の回転数を管理することで、調整板134の左右(水平)方向の移動量を容易に調整することができる。左右固定ボルト150は、左右押付けボルト148が把持部140の外周端面に当接せずに調整板134を押付けていない状態で、使えば引きボルトとして作用する。
【0096】
調整板134を基板Wと平行な左右方向に移動させるため、調整板134の本体部138の外周端面とめっき槽10の内槽130の内周面との間に隙間が設けられている。この例では、内槽130の調整板134の本体部138の外周端面と対向する位置に、内方に開放したチャンネル状の凹部152aを有する案内部152を設け、この案内部152の凹部152a内に調整板134の本体部138の外周端部を差し込むようにしている。これにより、調整板134と基板Wとの距離を一定にした状態で、案内部152を案内として、調整板134を基板Wと平行に左右(水平)方向に移動させることができる。しかも、案内部152の凹部152a内に調整板134の本体部138の外周端部を差し込むことで、調整板134の外周から電場が漏れるのを防ぐことができる。
【0097】
案内部152の凹部152aの底部と調整板134の本体部138の外周端面との間には、図38に示すように、移動隙間tが設けられている。この移動隙間tは、例えば1〜5mmで、好ましくは1〜2mmである。施工の都合上、案内部152と内槽130の内周面との間には、一般に隙間tが存在する。この例では、この隙間tから電位線が漏れることを防ぐ為、シール押え154及び固定ボルト156を用いて、例えばゴムシールからなる電場遮蔽部材158を該電場遮蔽部材158の自由端を内槽130の内周面に圧接させて案内部152に固定している。この例では、電場遮蔽部材158を案内部152のアノード側に設置しているが、案内部152のカソード(基板)側に設置しても良く、また案内部152の両側に設置しても良い。
【0098】
なお、上記の例では、調整板移動機構142によって、調整板134を基板Wと並行に左右方向に移動させるようにしているが、調整板134を基板Wと並行に左右及び上下(鉛直)方向に移動させるようにしてよい。図39は、調整板134を基板Wと並行に左右及び上下方向に移動させるようにした調整板移動機構160を示す。この調整板移動機構160の図37に示す調整板移動機構142と異なる点は、調整板の把持部140の外方への突出部に上下に貫通しヘリサート加工を施した雌ねじを設け、この雌ねじに上下押付けボルト162を螺合させて、この上下押付けボルト162の下端面を調整板支持部144の上端面に当接させ、更に把持部140の外方への突出端部にめっき槽10の幅方向に延びる長穴を設け、この長穴内に上下固定用ボルト164を挿通させ、この上下固定ボルト164の下部を調整板支持部144に設けた雌ねじに螺合させた点にある。この例では、左右固定ボルトを省略している。
【0099】
この例によれば、上下押付けボルト162を締付ける方向に回転させると、上下押付けボルト162の先端が調整板支持部144の上端面に当接し該上端面を押す反力で調整板134が上方に移動する。逆に、上下押付けボルト162を緩める方向に回すと調整板134は下方に移動する。調整板134の基板Wに対する上下及び左右方向が決まったら、上下固定ボルト164の下部を調整板支持部144に設けた雌ねじに螺合させて調整板134を固定する。
【0100】
なお、押付けボルト148,162の代りに、エアシリンダやサーボモータ等を使用しても良い。また、図37に示す調整板移動機構142と図39に示す調整板移動機構160を組合わせて、調整板134の上下及び左右方向の位置を調整できる構造にしても良い。その場合、ブラケット146に左右固定ボルト150が通る上下方向に延びる長穴を設けることで、調整板134の位置が上下方向にずれても左右固定ボルト150で調整板134を固定することができる。図39に示す調整板移動機構160において、左右押えボルト148を省略して、調整板134の基板Wに対する上下(鉛直)方向の位置決めのみを行うようにしてもよい。
【0101】
このように、調整板移動機構142を介して、調整板134の基板Wに対する水平方向の位置を微調整したり、調整板移動機構160を介して、調整板134の基板Wに対する水平及び垂直方向の位置を微調整したりすることで、基板Wの表面に形成されるめっき膜の膜厚の面内均一性を向上させることができる。特に、調整板134は、基板Wに近接した位置に配置されるため、調整板134の基板Wに対する垂直または水平方向の位置を微調整することが、基板Wの表面に形成されるめっき膜の膜厚の面内均一性を向上させる上で重要となる。
【0102】
図40及び図41は、調整板の更に他の例を示すもので、これは、図37に示す調整板134に以下の構成を付加している。つまり、調整板134の本体部136のアノード側表面には、補助調整板170を取付けるための補助調整板取付け部が設けられている。この補助調整板取付け部は、補助調整板170の周囲の側部及び下端隅部に対応する位置に固定された、断面鉤状の各一対の側部フック172aと底部フック172bから構成されている。これにより、調整板134の側部フック172a及び底部フック172bからなる補助調整板取付け部に助調整板170を差し込むことで、補助調整板170を調整板134に対する所定の位置に設置できるようになっている。
【0103】
この例では、調整板134として、8インチウェハ用開口部134aを有する調整板(8インチウェハ用調整板)を使用し、補助調整板170として、6インチウェハ用開口部170aを有する調整板(6インチウェハ用調整板)を使用している。これにより、基板Wを8インチウェハから6インチウェハに変更した時、調整板自体を交換することなく、補助調整板(6インチウェハ用調整板)170を調整板(8インチウェハ用調整板)134に設置するだけで対処できる。補助調整板170の上部には、把持用の開口部170bが設けられている。
【0104】
調整板134と補助調整板170の水平方向重なり寸法t,t及び鉛直方向下部重なる寸法tは、一般には5mm以上で、10mm以上であることが好ましい。これにより、調整板134に補助調整板170を設置した時に、アノード26から発生した電位線が補助調整板170の開口部170aを通ることなく、補助調整板170の外側から調整板134と補助調整板170との間の隙間を通って、調整板134の開口部134aから抜けてしまうことを防止することができる。
【0105】
なお、上記の例では8インチ用調整板と6インチウェハ用調整板を組合せる例を示したが、任意の2つの調整板(第1の調整板と第2の調整板)を組合せることができる構造とすることにより、通常は第1の調整板のみを使用してめっきを行い、基板(被めっき体)の種類に応じて電場分布を微調整する必要が生じた際に、第1の調整板に第2の調整板を組合せて使用するといった運転ができるようになる。
【0106】
図42及び図43は、本発明の更に他の実施形態のめっき装置の要部を示す。この例の図1に示すめっき装置と異なる点は、図43に示す、上部に幅広の把持部180を有するアノードホルダ28を、前述の図37等に示す、幅広の把持部140を有する調整板134をそれぞれ使用し、めっき槽10の上端開口部に跨って設置される単一の位置決め保持部182上に、把持部180を介してアノードホルダ28を、把持部140を介して調整板134を、ホルダアーム64(図9参照)を介して基板ホルダ24を、それぞれ設置するようにしている。つまり、アノードホルダ28の把持部180、調整板134の把持部140及び基板ホルダ24のホルダアーム64は、同一部材である位置決め保持部182上に載置されて設置される。これにより、アノードホルダ28で保持されるアノード26、調整板134の筒状部136及び基板ホルダ24で保持される基板Wの各中心軸を確実に一致させることができる。
【0107】
この例では、アノードホルダ28の把持部180、調整板134の把持部140及び基板ホルダ24のホルダアーム64が同一部材である位置決め保持部182上に載置されるようにしているが、アノードホルダ28、調整板134、基板ホルダ24の他の部分が位置決め保持部182上にそれぞれ載置されるようにしてもよい。要するに、同一部材である位置決め保持部182を基準として、アノードホルダ28、調整板134及び基板ホルダ24の垂直方向の位置決めがなされるようになっていれば良い。
【0108】
図44及び図45に調整板の更に他の例を示す。この例は、図7等に示す調整板134に以下の構成を付加している。つまり。調整板134のアノード側の本体部138の表面には、固定板184及び固定ボルト186を介して、隔壁188が中央の開口部134a全体を覆うように固定されている。この隔膜188は、金属イオンを通して添加剤を通さない陽イオン交換体、または機能膜(中性ろ過膜)から構成されている、このように、調整板134の開口部134aを隔壁188で覆うことで、アノード26の表面でめっき液に含まれる添加剤が分解され消耗するのを抑えることができる。
【0109】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0110】
10 めっき槽
12 オーバーフロー槽
18 めっき液供給口
20 恒温ユニット
22 フィルタ
24 基板ホルダ
26 アノード
28 アノードホルダ
32 パドル
32a 長穴
32b 格子部
34 調整板
42 パドル駆動部
44 モータ
46 制御部
50 筒状部
52 フランジ部
60 ホルダ把持部
62 ホルダ支持部
64 ホルダアーム
66 アーム側接点
68 支持部側接点
70 アーム側磁石
72 支持部側磁石
80 分離板
80a めっき液通孔
82 遮蔽板
84 基板処理室
86 めっき液分散室
90 分離板支持部
94 電場遮蔽部材(ゴムシート)
96 調整板固定用スリット板
100 電場遮蔽部材(ゴムシート)
110 アノード側液分離室
112 カソード側液分離室
120 パドル押え
122a,122b カップリング
134 調整板
136 筒状部
138 本体部
140 把持部
142 調整板移動機構
144 調整板支持部
146 ブラケット
148 左右押付けボルト
150 左右固定ボルト
152 案内部
158 電場遮蔽部材(ゴムシート)
160 調整板移動機構
162 上下押付けボルト
164 上下固定ボルト
170 補助調整板
172a 側部フック(補助調整板取付け部)
172b 底部フック(補助調整板取付け部)
180 把持部
182 位置決め保持部
188 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を保持するめっき槽と、
前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、
被めっき体を保持し前記アノードと対向する位置に配置するホルダと、
前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき体との間に配置され、該被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドルと、
前記アノードと前記パドルとの間の位置において前記めっき槽の側板に固定され、所定のピッチで垂直方向に延びる複数のスリット部を有する調整板固定用スリット板と、
電場の拡がりを制限するための開口を有する調整板とを備え、
前記調整板は、その側端部を前記調整板固定用スリット板の任意のスリット部に挿入することによって該調整板の位置が調整可能に前記めっき槽に取付けられることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記めっき槽と前記調整板との間からの電場の漏洩を防止するために、前記調整板のアノード側下端部に電場遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記調整板と前記調整板固定用スリット板との間からの電場の漏洩を防止するために、前記調整板のアノード側に電場遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記調整板は、
前記被めっき体の外形に沿った内径を有する筒状部と、
前記筒状部のアノード側端部の外周に接続されたフランジ部を有することを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記調整板は、
開口を有するフランジ部と、
金属イオンを通して添加剤を通さない陽イオン交換体、または機能膜から構成された隔壁と、
前記隔壁が前記フランジ部の開口の全体を覆うように、前記隔壁を前記フランジ部のアノード側表面に固定する固定板とを有することを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記調整板は、
開口を有するフランジ部と、
前記フランジ部の開口の直径よりも小さい直径の開口を有する補助調整板と、
前記補助調整板を取り付けるための補助調整板取付け部とを備えており、
前記補助調整板は、前記フランジ部の開口および前記補助調整板の開口の中心軸が互いに一致するように、前記補助調整板取付け部によって前記フランジ部のアノード側表面に配置されることを特徴とする請求項1に記載のめっき装置。
【請求項7】
めっき液を保持するめっき槽と、
前記めっき槽内のめっき液に浸漬させて配置されるアノードと、
被めっき体を保持し前記アノードと対向する位置に配置するホルダと、
前記アノードと前記ホルダで保持した被めっき体との間に配置され、該被めっき体と平行に往復移動してめっき液を攪拌するパドルと、
前記パドルと前記アノードとの間に配置され、電場の拡がりを制限するための開口を有する調整板と、
前記めっき槽内の前記調整板の外周端部と対向する位置に配置され、内方に開放したチャンネル状の凹部を有し、該凹部内に前記調整板の外周端部が差し込まれることで前記調整板の移動を案内する案内部と、
前記調整板を前記被めっき体と平行に上下方向または左右方向に移動させる調整板移動機構とを備え、
前記調整板移動機構は、
前記調整板を支持する調整板支持部と、
前記調整板支持部に支持された前記調整板を押付けることで、前記調整板と前記被めっき体との距離を一定に保ちながら、前記調整板を上下方向または左右方向に移動させる押付け部材とを備えたことを特徴とするめっき装置。
【請求項8】
前記めっき槽と前記案内部との間からの電場の漏洩を防止するために、前記案内部のアノード側に電場遮蔽部材を設けたことを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記調整板は、
前記被めっき体の外形に沿った内径を有する筒状部と、
前記筒状部のアノード側端部の外周に接続されたフランジ部を有することを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。
【請求項10】
前記調整板は、
開口を有するフランジ部と、
金属イオンを通して添加剤を通さない陽イオン交換体、または機能膜から構成された隔壁と、
前記隔壁が前記フランジ部の開口の全体を覆うように、前記隔壁を前記フランジ部のアノード側表面に固定する固定板とを有することを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。
【請求項11】
前記調整板は、
開口を有するフランジ部と、
前記フランジ部の開口の直径よりも小さい直径の開口を有する補助調整板と、
前記補助調整板を取り付けるための補助調整板取付け部とを備えており、
前記補助調整板は、前記フランジ部の開口および前記補助調整板の開口の中心軸が互いに一致するように、前記補助調整板取付け部によって前記フランジ部のアノード側表面に配置されることを特徴とする請求項7に記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2013−64202(P2013−64202A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4855(P2013−4855)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2008−292174(P2008−292174)の分割
【原出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)