説明

めっき装置

【課題】配線基板用パネルに対して均一かつ良好にビアを充填するめっきを施すことがめっき装置を提供すること。
【解決手段】配線基板用パネルPに電解めっき用の電流を供給するための給電用陰極3上を摺動する集電子5として、配線基板用パネルPの前端側に位置する第1の集電子5aと配線基板用パネルPの後端側に位置する第2の集電子5bとを具備し、配線基板用パネルPの前端が陽極板2のペア間に進入するのと同時にそのペアに対応する給電用陰極3上に第1の集電子5aが乗り上げ、配線基板用パネルPの後端が陽極板2のペアの間から脱出するのと同時にそのペアに対応する給電用陰極3上から第2の集電子5bが離脱する位置関係で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板用パネルに電解めっきを施すためのめっき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器に使用される配線基板を製造する場合、大型の配線基板用パネルの中に配線基板となる領域を縦横の配列で多数設けておき、各領域に同時に加工を施すことにより多数の配線基板を同時集約的に製造するようにしている。
【0003】
このような配線基板の製造において、配線基板用パネルに電解めっきを施す場合、長尺のめっき槽内に、垂直に立てた状態で懸架した状態の配線基板用パネルをめっき槽の一端側から他端側にめっき液に浸漬したままで移動させながら連続的に電解めっきを施す方法が採られることがある。
【0004】
このような電解めっきの方法に使用されるめっき装置の従来例は、例えば特開2004−176145号広報に示されている。この特開2004−176145号広報に示されためっき装置によれば、プリント基板のようなワークが複数並べられてめっき槽の中を移送される。めつき槽内にはワークの移送方向に複数のアノードが配列されている。各アノードは、例えばワークの3個分の長さを有し、各アノードの横を例えば前後に3個ずつのダミーワークを従えた4個並んだ製品ワークが移送される。各アノードは、めっき電流を供給するためのめっき用電源にそれぞれ個別に接続されており、4個並んだ製品ワークの前端がアノードにさしかかった時点で定電圧から定電流に切り替えてアノードとワーク間にめっき用電流を流し、4個並んだ製品ワークの後端がアノードから抜けた時点で定電流から定電圧に切り替えるようになっている。
【0005】
しかしながら、この従来のめっき装置によれば、製品ワークは例えば4個が並んだ状態で各アノードの横を移送され、この4個並んだ製品ワークをひとつのグループとして各アノードへの電流供給が制御されている。そのため、個々の製品ワークに対しては、個別の電流供給制御が行なわれずに、例えば製品ワークとして表面に電解めっきで充填されるビアを有する配線基板用パネルをめっきした場合、全ての配線基板用パネルに対して均一かつ良好にビアを充填するめっきを施すことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−176145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、表面に電解めっきで充填されるビアを有する配線基板用パネルをめっきした場合であっても、全ての配線基板用パネルに対して均一かつ良好にビアを充填するめっきを施すことが可能なめっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のめっき装置は、垂直に立てた状態で懸架された配線基板用パネルを該配線基板用パネルの主面に平行な方向に水平に移動させながら浸漬するための長尺のめっき槽と、該めっき槽の長手方向に沿って前記めっき槽内に、前記配線基板用パネルの移動位置を挟んで互いに対向するペアを形成するように2列の並びで配設されており、前記長手方向に沿って隣接するもの同士が所定の間隔をあけて並べられた、前記配線基板用パネルの幅よりも広い幅の複数の陽極板と、前記めっき槽の長手方向に沿って前記めっき槽の外部に前記陽極板に対応する長さおよび隣接間隔で敷設された帯状の複数の給電用陰極と、前記陽極板と該陽極板に対応する前記給電用陰極との間に電解めっき用の電流を個別に供給するための複数の整流器と、前記配線基板用パネルに電気的に接続されており、該配線基板用パネルの移動に同期して前記給電用陰極上を摺動することにより前記配線基板用パネルを前記給電用陰極に電気的に接続する集電子と、を備えためっき装置であって、前記集電子は、前記配線基板用パネルの前端側に位置する第1の集電子と前記配線基板用パネルの後端側に位置する第2の集電子とを有し、前記配線基板用パネルの前端が前記陽極板のペア間に進入するのと同時に該ペアに対応する前記給電用陰極上に前記第1の集電子が乗り上げ、前記配線基板用パネルの後端が前記陽極板のペアの間から脱出するのと同時に該ペアに対応する前記給電用陰極上から前記第2の集電子が離脱する位置関係で配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のめっき装置によれば、配線基板用パネルに電解めっき用の電流を供給するための給電用陰極上を摺動する集電子として、配線基板用パネルの前端側に位置する第1の集電子と前記配線基板用パネルの後端側に位置する第2の集電子とを具備し、配線基板用パネルの前端が前記陽極板のペア間に進入するのと同時に該ペアに対応する給電用陰極上に第1の集電子が乗り上げ、配線基板用パネルの後端が陽極板のペアの間から脱出するのと同時にそのペアに対応する給電用陰極上から前記第2の集電子が離脱する位置関係で配置されていることから、個々の配線基板用パネルに対して個別の電流供給を安定して行なうことが可能となり、その結果、表面に電解めっきで充填されるビアを有する配線基板用パネルをめっきする場合であっても、全ての配線基板用パネルに対して均一かつ良好にビアを充填するめっきを施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のめっき装置の実施形態の一例を示す部分的な模式上面図である。
【図2】図2は、図1に示すめっき装置により配線基板用パネルにめっきをかける方法を説明するための部分的な模式上面図である。
【図3】図3は、本発明のめっき装置の実施形態の他の例を示す部分的な模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のめっき装置における実施形態の一例を図1を基に説明する。図1に示すように、本例のめっき装置10は、めっき槽1と、陽極板2と、給電用陰極3と、整流器4と、集電子5とを備えている。
【0012】
めっき槽1は、例えば塩化ビニル樹脂から成る長さが10〜50m、幅が20〜50
cm、深さが70〜120cm程度の長尺の略直方体であり、その内部には例えば電解銅めっき液等のめっき液が保持されている。そして、図示しない搬送キャリアにより垂直に立てた状態で懸架された配線基板用パネルPがめっき液に浸漬された状態でめっき槽1の一端側から他端側に向けて配線基板用パネルPの主面に平行な方向に水平に移動される。なお、配線基板用パネルPの大きさは、例えば幅が30〜80cm、高さが30〜80cm、厚みが0.1〜3mm程度である。
【0013】
めっき槽1の内部には、配線基板用パネルPの移動位置を挟んで互いに対向するペアを形成するようにして複数の陽極板2がめっき槽1の長手方向に沿って2列の並びで配設されている。陽極板2は、その幅および高さが配線基板用パネルPよりも大きく、例えば幅が0.5〜3m、高さが40〜100cm、厚みが0.2〜0.5cmの平板であり、チタン板に酸化イリジウム等をコーティングしたものを隔膜でめっき液と隔離して成る。
【0014】
めっき槽1の外部には、帯状の給電用陰極3がめっき槽1の長手方向に沿って隣接するようにして敷設されている。給電用陰極3は、例えば銅から成る幅が5〜20mm、長さが0.5〜3m、厚みが0.5〜1cmの平板であり、陽極板2に対応する長さおよび隣接間隔で複数個が配設されている。隣接する給電用陰極3同士の間隔は、1〜10cm程度である。
【0015】
各陽極板2とそれに対応する給電用陰極3との間には、これらの間に電解めっき用の電流を個別に供給するための複数の整流器4が接続されている。この整流器4は、後述する集電子5が給電用陰極3上に接触することにより配線基板用パネルPと陽極板2との間に電解めっき用の電流を流す。
【0016】
給電用陰極3の上面には、配線基板用パネルPに電気的に接続された集電子5が摺動される。集電子5は、配線基板用パネルPの前端側に対応する第1の集電子5aと後端側に対応する第2の集電子5bとを備えている。これらの集電子5a,5bは、配線基板用パネルPの移動に同期して給電用陰極3の上面を摺動するようになっている。そして、これらの集電子5aまたは5bが接している給電用陰極3と対応する陽極板2と、この集電子5aおよび5bが電気的に接続された配線基板用パネルPとの間に整流器4により電解めっき用の電流が供給される。
【0017】
ところで、本発明のめっき装置10においては、配線基板用パネルPの前端が陽極板2のペア間に進入するのと同時にそのペアに対応する給電用陰極3上に第1の集電子5aが乗り上げ、配線基板用パネルPの後端が陽極板2のペアの間から脱出するのと同時にそのペアに対応する給電用陰極3上から第2の集電子5bが離脱する位置関係で配置されている。このような配置にすることにより、配線基板用パネルPが陽極板2の或るペアの間に位置する間、その陽極板2のペアとの間に常に電解めっきのための電流が流れることになる。したがって、個々の配線基板用パネルPに対して個別の電流供給を安定して行なうことが可能となり、その結果、表面に電解めっきで充填されるビアを有する配線基板用パネルPをめっきした場合であっても、全ての配線基板用パネルPに対して均一かつ良好にビアを充填するめっきを施すことが可能となる。
【0018】
なお、本例のめっき装置10により、配線基板用パネルPに電解めっきを行なう場合、図2に示すように、先行する配線基板用パネルPと後続の配線基板用パネルPとの間に、陽極板2の一つ分を超える間隔を設けて電解めっきするようにすると、各配線基板用パネルPに整流器4から電解めっき用の電流を独立して供給することができる。
【0019】
また、図3に示すめっき装置20のように、一つの陽極板2のペアに対して複数の給電用陰極3を設けるとともにそれらの陽極板2と給電用陰極3との間に個別に整流器4を設け、先行する配線基板用パネルPと後続の配線基板用パネルPとで異なる給電用電極3に接続することによって、先行する配線基板用パネルPと後続の配線基板用パネルPとの間に陽極板2の一つ分を超える間隔を設けずに電解めっきするようにしても、各配線基板用パネルPに整流器4から電解めっき用の電流を独立して供給することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 めっき槽
2 陽極板
3 給電用陰極
4 整流器
5 集電子
5a 第1の集電子
5b 第2の集電子
P 配線基板用パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に立てた状態で懸架された配線基板用パネルを該配線基板用パネルの主面に平行な方向に水平に移動させながら浸漬するための長尺のめっき槽と、該めっき槽の長手方向に沿って前記めっき槽内に、前記配線基板用パネルの移動位置を挟んで互いに対向するペアを形成するように2列の並びで配設されており、前記長手方向に沿って隣接するもの同士が所定の間隔をあけて並べられた、前記配線基板用パネルの幅よりも広い幅の複数の陽極板と、前記めっき槽の長手方向に沿って前記めっき槽の外部に前記陽極板に対応する長さおよび隣接間隔で敷設された帯状の複数の給電用陰極と、前記陽極板と該陽極板に対応する前記給電用陰極との間に電解めっき用の電流を個別に供給するための複数の整流器と、前記配線基板用パネルに電気的に接続されており、該配線基板用パネルの移動に同期して前記給電用陰極上を摺動することにより前記配線基板用パネルを前記給電用陰極に電気的に接続する集電子と、を備えためっき装置であって、前記集電子は、前記配線基板用パネルの前端側に位置する第1の集電子と前記配線基板用パネルの後端側に位置する第2の集電子とを有し、前記配線基板用パネルの前端が前記陽極板のペア間に進入するのと同時に該ペアに対応する前記給電用陰極上に前記第1の集電子が乗り上げ、前記配線基板用パネルの後端が前記陽極板のペアの間から脱出するのと同時に該ペアに対応する前記給電用陰極上から前記第2の集電子が離脱する位置関係で配置されていることを特徴とするめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91821(P2013−91821A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233434(P2011−233434)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)