説明

めっき触媒及び方法

【課題】プリント回路基板のような電子部品の製造として要求される、必要な安定性、活性、及び誘電表面に対する吸着性に優れる、電子部品の製造に用いられる非導電性基板の無電解めっき用触媒を提供する。
【解決手段】0.5から100ppmのゼロ価金属、安定剤化合物及び水を含み、パラジウム、銀、コバルト、ニッケル、金、銅及びルテニウムから選択される組成物とゼロ価金属形成に必要な還元剤の添加を含むめっき用触媒製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して無電解金属めっきの分野に関するものであり、より詳細には電子部品の製造に用いられる非導電性基板の無電解金属めっきに有用な触媒の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板は、回路基板の反対面又は基板の内層との間の導通を形成するために穴開けされ、めっきされたスルーホールを有する積層された非導電性の誘電基板を含む。無電解金属めっきは表面の金属被覆を作成するために公知である。誘電表面の無電解金属めっきは、事前に触媒を析出させることが必要である。通常、無電解めっきに先だって行われる積層された非導電性誘電基板の触媒化又は活性化方法は、基板を酸性塩化溶媒中の水溶性スズ−パラジウムコロイドで処理する方法である。該コロイドは、懸濁液中でコロイドの凝集を防止するための表面安定化基として作用する、SnClのようなスズ(II)イオン錯体の安定化層で囲まれた金属パラジウムのコアを含有する。
【0003】
活性化工程では、パラジウムを主成分とするコロイドはエポキシ又はポリイミドのような絶縁基板上に吸着され、無電解銅析出などの無電解金属析出を活性化する。理論に拘束されたくはないが、触媒粒子はめっき浴中で、還元剤から金属イオンへの電子移動の道筋におけるキャリヤーの役割を果たす。無電解めっきの性能は、めっき浴の組成やリガンドの選択等の多くの要因の影響を受けるが、活性化工程は無電解析出の速度とメカニズムを制御する重要な要因である。
【0004】
コロイダルスズ/パラジウム触媒は無電解金属、特に無電解銅の活性化剤として長年商業的に使用されているが、その空気中での敏感さや高価であるなど多くの欠点がある。電子部品のサイズの縮小化や性能の向上に伴って、電子回路の記録密度は向上し、品質の工業的基準は増加している。信頼性の増大する要求と、特にパラジウムの高価かつ変動する価格により、代替触媒組成物またはより安価な金属を使用した組成物、又は貴金属使用量の減少若しくは不使用が望まれている。コロイダルスズ/パラジウム触媒の安定性もまた、問題である。上述のように、スズ/パラジウムコロイドはスズ(II)イオンの層によって安定化されている。対イオンはパラジウムの凝集を妨げるが、スズ(II)イオンはスズ(IV)に容易に酸化され、したがってコロイドはそのコロイド構造を維持できなくなる。この酸化は温度上昇と撹拌によって促進される。仮にスズ(II)の量がゼロ近くまで減少すると、パラジウム粒子の粒子サイズは成長し、凝集と沈殿が生じ、めっきが停止する。
【0005】
新規かつ優れた無電解めっき触媒を探す継続的な努力がなされてきた。例えば、パラジウムの価格が高いために、非貴金属触媒の開発、特にコロイダル銅触媒の開発が目指されてきた。パラジウムの還元に用いられる塩化スズは高価であり、また酸化されたスズは活性化の別の工程が必要となることから、スズ非含有パラジウム触媒の開発も行われてきた。しかしながら、そのような触媒はスルーホールめっきのために十分な活性若しくは信頼性を示してこなかった。さらに、これらの触媒は十分に安定ではなく、典型的には時間の経過に伴い活性が徐々に減少し、活性の変化はこれらの触媒が商業的使用には信頼性がなく実用的ではないことを示している。
【0006】
スズではないもう片方の、イオン化パラジウムの安定化も研究されている。例えば、米国特許4,248,632号はイオン化パラジウム(Pd2+)のようなイオン化金属触媒の安定剤として、ピリジンリガンド又はイミダゾールリガンドを開示している。イオン化金属は非導電性基板表面に吸着された後にのみ還元される。他の公知の安定剤はポリビニルピロリドン(PVP)及び他のポリマーである。PVPは保護剤かつ安定剤として作用する。パラジウム(II)触媒の基板に対する効果的なアンカーリングメカニズムに役立つ金属リガンドが報告されている。銀/パラジウム及び銅/パラジウムのような、イオン化パラジウムを用いる他の金属コロイドも報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,248,632号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のスズ/パラジウム触媒に代替する触媒が開発されてきたが、これらは依然としてイオン化パラジウムを使用しており、これら代替物はいずれもプリント回路基板のような電子部品の製造に要求される、必要な安定性、活性、及び誘電表面に対する吸着性を提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は0.5から100ppmのゼロ価金属、安定剤化合物及び水を含み、ゼロ価金属がパラジウム、銀、コバルト、ニッケル、金、銅及びルテニウムから選択され、安定剤化合物が下記式を有する組成物を提供する。
【化1】

式中、Rは水素又は(C−C)アルキルを示し、各Rは独立して水素、(C−C)アルキル及びZから選択され、Zは(C―C)アルケニル−Z又は(CRを示し、各R及びRは独立して水素、ヒドロキシル、(C―C)アルキル、ヒドロキシ(C―C)アルキル、C(O)−(C−C)アルキル、(C−C)アルキル−C(O)−(C−C)アルキル、CO及びNRから選択され、Rは水素、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシ(C−C)アルキルであり、R及びRは独立して水素、(C−C)アルキル及び(CRから選択され、ZはC(S)SH,COH又はC(O)NRであり、ZはC(O)R又はCOであり、aは0−6であり、少なくとも一つのRはZである。
【0010】
本発明はさらに、安定剤化合物、水及び水可溶性金属塩を混合し、続いてゼロ価金属を形成するために充分な量の還元剤を添加することを含む、上記組成物を作成する方法を提供する。
【0011】
本発明によって、さらに、(a)複数のスルーホールを有する基板を提供し、(b)上記組成物をスルーホール表面に適用し、続いて(c)無電解金属めっきによってスルーホール表面に金属を析出させることを含む方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書を通して、文脈から明らかな指示がない限り、下記省略形は次の意味で用いられる。ca.=約;℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;L=リットル;mL=ミリリットル;ppm=パーツ・パー・ミリオン(百万あたりの部);μm=ミクロン=マイクロメーター;nm=ナノメートル;mm=ミリメートル;DI=脱イオンされた;Tg=ガラス転移温度;R.T.=室温;及びrpm=毎分あたりの回転数。特段の記載がない限り、すべての量は重量パーセント(wt%)であり、すべての比率はモル比である。すべての数値範囲は境界値を含み、数値範囲が合計して100%になるように制約されることが明らかな場合を除き、すべての順番で組み合わせることができる。
【0013】
用語「スルーホール」はブラインドビアを含む。本明細書を通して、用語「めっき」は文脈が明らかに他を示さない限り、無電解金属めっきに関する。「析出」及び「めっき」は本明細書を通して交換可能に用いられる。用語「アルキル」は直鎖、分岐鎖及び環状アルキルを含む。同様に、用語「アルケニル」は直鎖、分岐及び環状アルケニルを含む。「ハライド」はフルオライド、クロライド、ブロマイド及びアイオダイドを含む。用語「プリント回路基板」及び「プリント配線基板」は本明細書を通して交換可能に用いられる。
【0014】
本組成物はゼロ価金属、安定剤化合物及び水を含有する。好ましくは、ゼロ価金属及び安定剤化合物は安定したナノ粒子として組成物中に存在する。より好ましくは、本組成物はゼロ価金属及び安定剤組成物を含有する安定したナノ粒子を含む溶液である。
【0015】
本組成物に用いられる水は、水道水又は脱イオン水などのいかなる種類のものであってもよい。ふさわしいゼロ価金属は無電解金属めっきの触媒として有用なものであり、パラジウム、銀、コバルト、ニッケル、金、銅及びルテニウムなどであるがこれらに限定されない。好ましくは、ゼロ価金属はパラジウム、銀、コバルト、ニッケル、銅及びルテニウムから選択され、より好ましくはパラジウム、銀、銅、コバルト及びニッケルから選択される。パラジウム及び銀が最も好ましい。パラジウムと銀の混合物、又はパラジウムと銅の混合物など、ゼロ価金属の混合物も用いることができる。ゼロ価金属は組成物中に、組成物重量をベースとして0.5から100ppmの量で存在する。好ましくは、ゼロ価金属は1から100ppm、より好ましくは1から75ppm、さらにより好ましくは5から75ppm、さらにより好ましくは5から50ppm、最も好ましくは5から35ppmで組成物中に存在する。
【0016】
ゼロ価金属に適した安定剤化合物は下記式の化合物から選択される。
【化2】

式中、Rは水素又は(C−C)アルキルを示し、各Rは独立して水素、(C−C)アルキル及びZから選択され、Zは(C―C)アルケニル−Z又は(CRを示し、各R及びRは独立して水素、ヒドロキシル、(C―C)アルキル、ヒドロキシ(C―C)アルキル、C(O)−(C−C)アルキル、(C−C)アルキル−C(O)−(C−C)アルキル、CO及びNRから選択され、Rは水素、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシ(C−C)アルキルであり、R及びRは独立して水素、(C−C)アルキル及び(CRから選択され、ZはC(S)SH,COH又はC(O)NRであり、ZはC(O)R又はCOであり、aは0−6であり、少なくとも一つのRはZである。好ましくは、Rは水素又は(C−C)アルキルである。好ましくは、各Rは独立して水素、(C−C)アルキル及びZから選択され、より好ましくは水素及びZから選択される。Zは好ましくは(C―C)アルケニル−Z又は(CRである。ZはCOH又はC(O)NRが好ましい。好ましくは、R及びRは独立して水素、(C―C)アルキル、CO及びNRから選択される。Rは好ましくは水素又は(C−C)アルキルであり、より好ましくは水素又はCHであり、さらにより好ましくは水素である。R及びRは独立して水素、(C−C)アルキル及び(CRから選択されることが好ましく、より好ましくは水素、CH及び(CRから選択され、さらにより好ましくは水素である。Zは好ましくはCOであり、より好ましくはCOHである。aは0−4であることが好ましく、より好ましくは1−4であり、さらにより好ましくは1−3である。安定剤化合物はシグマ−アルドリッチ(セントルイス、ミズーリ州)などから通常商業的に入手可能であり、又は公知技術によって作成することもできる。これらの化合物は、そのまま用いることもできるし、さらに精製して用いることもできる。
【0017】
特に好適な安定剤化合物は、ヒスチジン(4(2−アミノ−2−カルボキシル)イミダゾール);ウロカジン酸(4−イミダゾールアクリル酸);4,5−イミダゾールジカルボン酸;4−イミダゾール酢酸;4−イミダゾールカルボン酸;1−メチル−2−イミダゾールカルボン酸;4,5−イミダゾールジカルボン酸ジアミド;1H−イミダゾール−4−カルボキシアミド;及び4−イミダゾールアクリルアミドを含むがこれらに限定されない。好ましい安定剤は、ヒスチジン;ウロカジン酸;4,5−イミダゾールジカルボン酸;4−イミダゾール酢酸;4−イミダゾールカルボン酸;及び1−メチル−2−イミダゾールカルボン酸を含む。
【0018】
本組成物はゼロ価金属及び安定剤化合物をモル比で1:1から1:20含有する。好ましくは、ゼロ価金属と安定剤化合物のモル比は1:5から1:20であり、さらに好ましくは1:10から1:20である。
【0019】
場合によっては、本組成物は界面活性剤、緩衝剤、pH調整剤、有機溶剤のような溶解補助剤などの無電解めっき触媒組成物に通常使用される1種以上の様々な添加剤を含有することができる。pH調整剤と緩衝剤のように、様々な添加剤の混合物も用いることができる。アニオン性、ノニオン性、カチオン性及び両性界面活性剤を含むいかなる好適な界面活性剤をも用いることができる。これらの界面活性剤は組成物重量をベースとして0から25ppmの量で存在することができる。存在する際は、界面活性剤の量は0.5から25ppmが好ましく、より好ましくは1から10ppmである。使用することのできる緩衝剤は、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、酢酸などのカルボン酸及びこれらの塩、アミン及びその塩、アミノ酸及びその塩、ホウ酸などの無機酸及びその塩と、重炭酸ナトリウムなどの無機塩基を含有するが、これらに限定されない。pHを調整するために含まれ得る化合物は、ナトリウム及びカリウムの水酸化物などのアルカリ金属水酸化物、鉱酸などの酸が含まれるが、これらに限定されない。使われる際には、任意の緩衝剤及びpH調節剤はpHを望ましい範囲に調節するために十分な量で用いられる。
【0020】
典型的には、本組成物はpHが6−14である。好ましくは、本組成物はpHが7より大きく14までのアルカリ性であり、より好ましくはpHが7.5から14であり、さらにより好ましくは7.5から10であり、さらにより好ましくは8−10である。
【0021】
本組成物は電子部品の製造における無電解金属析出の触媒として有用なナノ粒子の安定な水溶液である。「安定な」は20℃で3ヵ月保存した際に肉眼で観察される沈殿の生成がないことを意味する。本組成物は好ましくは6ヵ月後、より好ましくは1年間20℃で保存しても沈殿を生成しない。これらのナノ粒子は種々の粒子径を有することができる。もし粒子径が大きくなりすぎたら、沈殿が生じるため組成物は安定ではないであろう。好適な平均粒子径は1nmから1μmであり、好ましくは1nmから500nmであり、より好ましくは1nmから100nmである。粒子径は光散乱又は走査電子顕微鏡のような公知の方法によって測定できる。
【0022】
本組成物は安定剤化合物、水、水可溶性金属塩及び還元剤を組み合わせることによって作成することができる。好ましくは、安定剤化合物、水、及び水可溶性金属塩を組み合わせ、その後還元剤が加えられる。還元剤の量は望まれるゼロ価金属を形成するのに十分な量であればいかなる量を用いることができる。安定剤化合物、水及び水可溶性金属塩はどのような順序で加えてもよい。典型的には、水可溶性塩は特定量の水に溶解される。この塩溶液は続いて安定剤水溶液に加えられる。混合物は続いて典型的には室温(約20℃)にて撹拌され、必要に応じてpHが調整される。典型的には、撹拌棒による撹拌が200mLまでなどの少量の場合に用いられる。ホモジナイザーが大容量に用いられる。典型的な撹拌速度は3000から25000rpmである。フィッシャーサイエンスのパワーゲム(商標)(POWER GENTM)700ホモジナイザーが使用され得る機械の例である。次に、還元剤が混合物中に添加され、撹拌が継続される。ゼロ価金属としてパラジウムが用いられる場合は、還元後の触媒溶液は典型的には茶色から黒色である。還元に続いて、安定剤及びゼロ価金属を含む安定したナノ粒子が形成されると考えられる。
【0023】
充分に水可溶性である種々の金属塩が用いられる。好適な金属塩は、ハロゲン化金属塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属酸化物、金属酢酸塩、金属グルコン酸塩、金属フルオロホウ酸塩、金属アルキル硫酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩、金属チオ硫酸塩、金属チオシアン酸塩、及び金属シアン酸塩が含まれる。典型的な金属塩は、塩化パラジウム、塩化パラジウムナトリウム(palladium sodium chloride)、塩化パラジウムカリウム(palladium potassium chloride)、塩化パラジウムアンモニウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウム酸化物、硝酸銀、酸化銀、酢酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、酢酸ニッケル、フルオロホウ酸ニッケル、塩化金、シアン化金ナトリウム、硫酸金、チオ硫酸金、チオシアン酸金、硫酸銅、グルコン酸銅、酢酸銅、硝酸銅、塩化ルテニウム、ルテニウムポルフィリン及びルテニウム酸化物が含まれるが、これらに限定されない。金属塩の使用量は金属塩粒子の水への溶解性に応じて変化する。例えば、パラジウム塩は5mg/Lから10g/Lの量で、好ましくは100mg/Lから5g/Lの量で用いられる。
【0024】
種々の還元剤が本組成物を形成するために用いられる。好適な還元剤は水酸化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン、イソプロピルアミンボラン及びモルフォリンボランのようなアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、次亜リン酸、及びこのアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウム塩、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウムのような次亜リン酸、ヒドラジン無水物、蟻酸及びアスコルビン酸のようなカルボン酸、及びブドウ糖、ガラクトース、麦芽糖、乳糖、木糖及び果糖のような還元糖が含まれるが、これらに限定されない。還元剤の使用量は組成物の金属塩の量に依存する。典型的には、還元剤は5mg/Lから500mg/L、好ましくは20mg/Lから200mg/Lの量で用いられる。
【0025】
触媒組成物はPdのようなゼロ価金属を含有するため、これらの組成物を用いるプロセスは無電解金属めっきに先立ち還元工程を必要としない。加えて、本組成物は基板に対する金属の高い密着性を可能にする。本組成物はスズを含有せず、このためスズ(II)イオンの容易なスズ(IV)への酸化、及び触媒の分解に関する問題を避けることができる。イオン化パラジウム粒子の粒子サイズが成長し凝集し沈殿する問題は、格段に減少し好ましくは完全に避けうる。本組成物はスズを含有せず、高価な塩化スズが必要とされないため触媒組成物の価格は低下する。さらに、基板の金属化準備において、スズを用いる場合に必要とされる活性化工程を行う必要がなく、そのため非導電性基板の金属化の準備での従来の工程を除くことができる。
【0026】
本発明の組成物は、ガラス、セラミックス、磁器、樹脂、紙、布地、及びこれらの複合体等の無機及び有機材料を含む基板の無電解金属めっきの触媒として用いることができる。基板はプリント回路基板のような金属被覆及び被覆されていない材料を含む。これらプリント回路基板は熱硬化樹脂、熱可塑樹脂及びこれらの複合体の金属被覆及び被覆されていない基板を含み、さらにグラスファイバーなどの繊維及び前記のまざった複合体を含む。基板の金属化工程における温度及び時間は、当該技術分野で周知である。
【0027】
熱可塑樹脂は、アセタール樹脂、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクルリル酸エチル、アクリル酸ブチル及び前述の化合物を含む共重合体のようなアクリル樹脂、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート及びセルスニトレートのようなセルロース樹脂、ポリエーテル、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレンのようなスチレン混合物や共重合物、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン及び、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン及びビニルホルマールのようなビニルポリマー及び共重合物及びを含むがこれらに限定されない。
【0028】
熱硬化樹脂はアリルフタレート、フラン、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド及びフェノール−フルフラール共重合、ブタジエンアクリロニトリル共重合又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合の単独又は化合物、ポリアクリル酸エステル、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、アリル樹脂、グリセリルフタレート及びポリエステルを含むがこれらに限定されない。
【0029】
本組成物は低Tg及び高Tg樹脂の双方を触媒化するのに用いられる。低Tg樹脂は160℃未満のTgを有し、高Tg樹脂は160℃以上のTgを有する。典型的には、高Tg樹脂は160℃から280℃までのTg、または例えば170℃から240℃の範囲のTgを有する。高Tg樹脂はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びPTFEブレンドを含むがこれらに限定されない。模範的なブレンドはPTFEとポリフェニレンオキシド及びシアナートエステルとの混合物を含む。高Tg樹脂を含むポリマー樹脂の他の種類は、二官能性若しくは多官能性エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂、ビマレイミド/トリアジン及びエポキシ樹脂(BTエポキシ)、エポキシ/ポリフェニレンオキシド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスルホネート(PS)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂及びこれらの複合材を含む。
【0030】
一例として、本組成物はスルーホール壁面上へのゼロ価金属の析出に用いられる。これらの組成物はプリント回路基板製造における水平又は垂直プロセスのいずれにも用いることができる。
【0031】
スルーホールは通常、プリント回路基板へのドリリング、パンチング、又は当該技術分野で知られている他の方法によって形成される。スルーホール形成後、基板は場合によっては水でリンスされ、従来の有機溶媒が基板の清浄化及びグリース除去に用いられ、続いてスルーホール壁面のデスミアが行われる。デスミアは当該技術分野で周知であり、スルーホールの典型的なデスミアは膨潤溶媒の接触で始まる。
【0032】
膨潤溶媒は当該技術分野で周知であり、従来の膨潤溶媒がスルーホールのデスミアに用いられる。このような膨潤溶媒は、典型的にはグリコールエーテル及びこれらの関連する酢酸エーテルが含まれるがこれらに限定されない。グリコールエーテル及びこれらの関連する酢酸エーテルの量は従来の量が用いられる。商業的に用いられうる膨潤溶媒は、サーキュポジット(商標)(CIRCUPOSITTM)コンディショナー3302、サーキュポジット(商標)(CIRCUPOSITTM)ホールプレップ3303及びサーキュポジット(商標)(CIRCUPOSITTM)ホールプレップ4120であり、いずれもマサチューセッツ州マルボロのダウ電子材料(Dow electronic Materials)から入手することができる。
【0033】
場合によっては、スルーホールは次に水でリンスされる。典型的には次に酸化剤がスルーホールに適用される。好適な酸化剤は、硫酸、クロム酸、アルカリ過マンガン酸塩又はプラズマエッチングによる酸化を含むが、これらに限定されない。典型的にはアルカリ過マンガン酸塩が酸化剤として用いられる。商業的に可能な酸化剤は、サーキュポジット(商標)(CIRCUPOSITTM)プロモーター4130でありダウ電子材料から入手することができる。
【0034】
場合によっては、スルーホールは再び水でリンスされる。酸化剤によって残された、スルーホール中の酸性残渣又は塩基性残渣を中性化するために典型的には中和剤が適用される。従来の中和剤が用いられ得る。典型的には、中和剤は1以上のアミン類を含有するアルカリ水溶液、又は3重量%の過酸化物及び3重量%の硫酸溶液である。場合によっては、スルーホールは水でリンスされプリント回路基板は乾燥される。
【0035】
中和工程の後、基板(スルーホールを有するプリント回路基板など)は典型的にはアルカリコンディショナーを基板に適用することによってコンディショニングされる。このようなアルカリコンディショナーは1以上の四級アミン及びポリアミン及び1以上の界面活性剤を含有する水溶性アルカリ性界面活性剤溶液を含むが、これらに限定されない。用いられる界面活性剤は従来からのカチオン性界面活性剤や、アニオン性、ノニオン性及び両性などの他の界面活性剤であり、界面活性剤の混合物も同様に用いられる。加えて、pH調整剤又は緩衝剤もコンディショナー中に含有することができる。典型的には、カチオン性界面活性剤はノニオン性界面活性剤と組み合わせられる。界面活性剤はコンディショナー中に、0.05から5重量%、好ましくは0.25から1重量%で存在する。好適な商業的に入手可能なアルカリコンディショナーは、ダウ電子材料から入手することのできる、サーキュポジット(商標)(CIRCUPOSITTM)コンディショナー231、813及び860を含むが、これらに限定されない。場合によっては、スルーホールはコンディショニングの後に水でリンスされる。
【0036】
カチオン界面活性剤は、テトラアルキルアンモニウムハライド、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、ヒドロキシエチルアルキルイミダゾリン、アルキルベンザルコニウムハライド、アルキルアミン酢酸塩、アルキルアミンオレイン酸塩及びアルキルアミノエチルグリシンを含むが、これらに限定されない。
【0037】
ノニオン性界面活性剤は、アルコールアルコキシラートのような脂肪族アルコールを含むがこれらに限定されない。これらの脂肪族アルコールは分子内にポリオキシエチレン又はポリオシシプロピレン鎖を有する化合物、言い換えれば、(−O−CH−CH−)の繰り返し基から構成される鎖、又は(−O−CH−CH−CH)の繰り返し基から構成される鎖、又はその組み合わせによって形成された、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はこれらの組み合わせを有する。典型的には、これらのアルコールアルコキシラートは、線状又は分岐の7から15の炭素からなる炭素鎖を有するアルコールエトキシラートであり、4から20モルのエトキシラート、典型的には5から40モルのエトキシラート、さらに典型的には5から15モルのエトキシラレートである。これらのアルコールアルコキシラートの多くは商業的に入手可能である。商業的に入手可能なアルコールアルコキシラートは、ネオドール(NEODOL)91−6、ネオドール91−8、ネオドール91−9(直鎖アルコールエトキシラートのモル当り平均して6から9モルのエチレンオキシドを有するC−C11アルコール)のような直鎖第一アルコールエトキシラート、及びネオドール1−73B(直鎖第一アルコールエトキシラートのモル当り平均して7モルのエチレンオキシドの混合物を有するC11アルコール)である。これらはすべてシェルケミカルから商業的に入手可能である。
【0038】
アニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルコキシナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸エステル、高アルコールリン酸モノエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸(フォスフェート)及びスルホコハク酸アルキル塩を含むがこれらに限定されない。
【0039】
両性界面活性剤は、2−アルキル−N−カルボキシメチル又はエチル−N−ヒドロキシエチル又はメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル又はエチル−N−カルボキシメチルオキシエチルイミダゾリウムベタイン、ジメチルアルキルベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸またはその塩及び脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインを含むがこれらに限定されない。
【0040】
本組成物は、基板の表面、特にプリント回路基板のスルーホールの表面にゼロ価金属を含有する組成物を析出させるために用いることができる点で有利である。回路基板上へのゼロ価金属の析出は、続く還元工程を除くことができる。これは非導電性基板へのメタライゼーション作成における従来の工程を除くことができる。
【0041】
コンディショニング工程に続き、スルーホールのマイクロエッチが行われる。従来のマイクロエッチング組成物が使用されうる。マイクロエッチングは、後の無電解及び電気めっき析出金属の密着性を高めるために、露出した銅(例えば内層)上にマイクロ粗化銅表面を提供する。マイクロエッチは、60g/Lから120g/Lの過硫酸ナトリウム、またはオキシモノ過硫酸ナトリウムもしくはカリウム、並びに硫酸(2%)混合物、又は硫酸/過酸化水素混合物を含むがこれに限定されない。商業的に入手可能なマイクロエッチ組成物の例はサーキュポジット(商標)(CIRCUPOSITTM)マイクロエッチ3330でダウ電子材料から入手可能である。場合によっては、スルーホールは水でリンスされる。
【0042】
場合によっては、マイクロエッチされたスルーホールにプレディップが続いて適用される。プレディップの例として、2%から5%の塩酸又は25g/Lから75g/L塩化ナトリウムの酸性溶液が含まれる。場合によっては、スルーホールは冷水でリンスされる。
【0043】
無電解金属析出のための触媒の機能を果たすために、本発明の組成物が続いてスルーホールに適用される。水性組成物は室温(約20℃)から50℃の温度で、典型的には室温から40℃でスルーホールに適用される。触媒の適用後、スルーホールは場合によっては水でリンスされてもよい。
【0044】
スルーホールの壁面は続いて無電解金属めっき浴を用いて銅等の金属で無電解的にめっきされる。浸漬浴も含めた従来の無電解浴が使用され得る。これらの浴は当該技術分野で周知である。典型的には、スルーホールの壁面に析出する所望の金属の金属イオンを含有する無電解または浸漬金属めっき浴中にプリント配線基板が置かれる。スルーホールの壁面上に析出され得る金属としては、銅、ニッケル、金、銀及び銅/ニッケル合金が挙げられるがこれらに限定されない。浸漬金又は銀を用いた金又は銀仕上げの層が、スルーホール壁面の銅、銅/ニッケル又はニッケル析出物の上に析出してもよい。好ましくは、銅、金又は銀がスルーホール壁面上に析出し、さらに好ましくは銅がスルーホール壁面上に析出する。
【0045】
スルーホール壁面上に金属が析出した後、スルーホールは場合によっては水でリンスされる。場合によっては、スルーホール壁面上の析出金属にさび止め組成物が適用される。従来のさび止め組成物用いられ得る。さび止め組成物の例は、ダウ電子材料から商業的に入手可能なアンチターニッシュ(商標)(ANTITARNISHTM)7130である。スルーホールは場合によっては温水リンスによってリンスされ、続いて基板は乾燥させられ得る。
【0046】
スルーホールが無電解又は浸漬金属浴によって金属めっきされた後、基板はさらなる工程に進み得る。さらなる工程は、フォトイメージング及び電気金属めっきのような基板上へのさらなる金属析出による従来の工程が挙げられ、電気金属めっきの例としては、銅、銅合金、スズ及びスズ合金が挙げられる。従来の電気めっき浴が用いられ得る。これらの浴は当該技術分野で周知である。
【0047】
本組成物は安定なゼロ価金属ナノ粒子の水溶液を形成し、この水溶液は非導電性基板、特に電子部品の製造に用いられる基板への無電解金属析出を触媒するために用いられ得る。加えて、本組成物は金属と基板との良好な密着性を可能にする。本組成物はスズを含有せず、スズ(II)イオンが容易にスズ(IV)に酸化され、触媒が分解することに関連する問題を回避し得る。ゼロ価金属粒子のサイズが成長し凝集し沈殿する問題も格段に減少し、好ましくは消失する。スズが本組成物から除かれているため、高価な塩化スズが必要でなくなるために触媒の価格は低下する。基板の金属化の準備において、スズを用いた場合に必要となる、活性化工程も避けられる。
【実施例】
【0048】
例1
36mLの脱イオン水を含むビーカーに、室温(約20℃)において155mgのヒスチジン(4−(2−アミノ−2−カルボキシエチル)イミダゾール)が安定化溶液を作成するために加えられた。すべてのヒスチジンが溶解するまで、0.1N塩酸が滴下された。この溶液に、撹拌下で、2mLの脱イオン水に溶解された29.4mgのNaPdCl(Pd+2)が加えられた。添加に続き、混合物は室温で10分撹拌され、pHが5.4に調整された。続いて、前記溶液に非常に強い撹拌下で2mLの脱イオン水に溶解した30mgのNaBHが加えられた。溶液は素早く黒色に変化し、Pd+2からPdへの還元が示唆された。
【0049】
加速安定性試験:安定性のさらなる試験のために、上記の触媒溶液は50℃の水浴に少なくとも12時間置かれ、その後に触媒組成物は沈殿又は濁りが観察されなかった。
【0050】
実際の触媒溶液は25ppm濃度に触媒を脱イオン水で希釈し、HCl/NaOHでpHを9.2に調整し、緩衝液として3g/Lの重炭酸ナトリウムを添加することによって調製された。触媒溶液のpHはフィッシャーサイエンスのアキュメット(商標)(AccumetTM)AB15pHメーターを用いて測定された。
【0051】
例2
38mLの脱イオン水を含むビーカーに、310mgのヒスチジンが加えられた。この混合物は60℃に温められ、ヒスチジンは完全に溶解された。室温(約20℃)まで冷やした後、1mLの1×10mol/LのAgNO溶液が加えられた。続いて溶液は10分撹拌され、0.1NのNaOHを用いてpHが12に調整された。撹拌しながら、0.05mLのホルムアルデヒド溶液(37%)が加えられ、溶液は60℃の水浴に置かれた。溶液はゆっくりと明るいオレンジ色に変化し、色は反応時間とともに強くなった。約30分後、溶液の色は暗いオレンジになった。反応は60℃で1時間続けられた。得られたヒスチジン/銀ナノ粒子触媒組成物は例1の加速安定性試験に供され、沈殿又は濁りは観察されなかった。
【0052】
例3
NaPdCl(138mg)が100mLの脱イオン水に溶解された。この溶液に、80mgのCuSO・5HOが加えられた。この溶液は青みがかった茶色に変化した。次に、73mgのヒスチジンが加えられ、溶液は黄色がかった色に変化した。得られた溶液のpHは5.5に0.1NのNaOHで調整された。次に、71mgのNaBHが5mLの脱イオン水に溶解された。一部(0.5mL)のNaBH溶液がパラジウム/銅溶液に強撹拌下に加えられた。NaBHを添加した直後に黒色への変化が観察された。得られた触媒溶液は250ppmに希釈され室温で30分撹拌された。触媒溶液はそれから例1の加速安定性試験に供され、沈殿又は濁りは観察されなかった。
【0053】
例4
36mLの脱イオン水を有するビーカーに24.5mgのウロカニック酸(4−イミダゾールアクリル酸)が添加された。混合物は60℃まで温められ、ウロカニック酸は完全に溶解された。室温まで冷やした後、2mLの脱イオン水に溶解された13.2mgのNaPdClが撹拌下に加えられた。白色で濁った混合物は、室温(約20℃)で30分撹拌された。次に、2mLの脱イオン水に溶解された20mgのNaBHが上記の混合物に強撹拌下に添加された。NaBHを添加した直後に黒色への色の変化が観察された。得られた触媒溶液は室温で30分撹拌された。触媒溶液はそれから例1の加速安定性試験に供され、沈殿又は濁りは観察されなかった。
【0054】
例5
次の安定なナノ粒子組成物が例1−4の手順に従って作成された。次の表の中で、「DMAB」はジメチルアミンボランを示す。
【表1】

【0055】
例6−比較例
次の化合物が安定剤として用いられた以外は例1の全般的な手順が繰り返された。イミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、ヒスタミンジヒドロクロライド及びエチル4−メチル−5−イミダゾールカルボキシレート。これらの化合物を用いて作成されたいずれの触媒組成物も、沈殿形成若しくは濁りのいずれかが生じて例1の加速安定性試験をパスしなかった。
【0056】
例7
種々のプリント回路基板(ネルコ−6エポキシ/ガラス、NP−175エポキシ/ガラス、370T,FR−406,TU−752エポキシ/ガラス、SY−1141,及びSY−1000−2エポキシ/ガラス)が次の一般的な手順に従って無電解銅めっき浴を用いてめっきされた。
【0057】
複数のスルーホールが各基板にドリルで穴開けされた。スルーホールの平均的な直径は1mmであった。各基板のスルーホールは続いてデスミアされ、無電解銅めっきの準備がされ、次の垂直プロセスで無電解銅めっきされた。
1. 各基板は240リットルの膨潤溶媒で7分間80℃で処理された。膨潤溶媒は10%のジエチレングリコールモノブチルエーテル及び35g/Lの水酸化ナトリウムを含有する水溶液である。
2. 基板は続いて冷たい水道水で4分間室温でリンスされる。
3. 各基板のスルーホールは続いてpH12の50−60g/Lの水性過マンガンアルカリのアルカリ性酸化剤550リットルで10分間80℃で処理される。
4. 基板は冷たい水道水で4分間室温でリンスされる。
5. 基板のスル−ホールは続いて3重量%の過酸化水素水及び3重量%の硫酸を含有する水性中和剤180リットルで50℃で5分処理される。
6. 基板は冷たい水道水で4分間室温でリンスされる。
7. 基板は続いてカチオン性界面活性剤及びpHを11付近に維持する緩衝系を含有する、コンディショナー(商標)(CONDITIONERTM)860アルカリコンディショナーで処理される。このアルカリコンディショナーはダウ電子材料から商業的に入手することができる。コンディショナーが必要かどうかは特有の安定なゼロ価金属ナノ粒子触媒が使用されるかどうかに依存する。
8. 工程7でコンディショニングされた基板は続いて冷たい水道水で4分間室温でリンスされる。
9. 各基板のスルーホールは続いて20g/Lの過硫酸アンモニウムの水性アルカリ溶液100リットルで2分間室温でマイクロエッチされる。
10. 基板は続いて冷たい水道水で4分間室温でリンスされる。
11. 5%濃度塩酸のプレディップが続いてスルーホールに1分間室温で適用される。
12. 基板は続いて冷たい水道水で1分間室温でリンスされる。
13. スルーホールを有するいくつかの基板が、2リットルの本発明の組成物に5分間40℃で無電解めっきの用意をされる。ゼロ価金属ナノ粒子の濃度は25ppmである。触媒のpHは通常9.6であった。他の基板は2リットルのパラジウム粒子濃度が25ppmの従来のスズ/パラジウム触媒で5分間40℃で対照として用意される。従来の触媒は次の組成を有する:1gの塩化パラジウム;300mLの濃HCl;1.5gのナトリウムスズ塩;40gの塩化スズ及び1リットルになるまでの水。
14. 基板は続いて冷たい水道水で2.5分室温でリンスされる。
15. 基板のスルーホール壁面は続いて無電解銅めっきで15分間36℃でめっきされる。無電解銅めっき浴は次の組成を有する。
【表2】

16. 無電解銅めっき析出の後、基板は冷たい水道水で4分間室温でリンスされる。
【0058】
各基板は銅めっきされたスルーホールの壁面が見えるように横に切断される。複数の1mm厚さの横方向切断片が横切断された各スルーホール壁面からとられ、スルーホール壁面の被覆がヨーロッパバックライトスケールを用いて評価される。各基板からの切断片(1mm)は50倍の倍率のオリンパスGX光学顕微鏡の下に置かれた。銅析出の品質は顕微鏡の下で観察される光の量によって決定された。バックライト結果は、本発明の触媒組成物は従来のイオン性スズ/パラジウム(Sn/Pd)触媒と同等であることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5から100ppmのゼロ価金属、安定剤化合物及び水を含有する組成物であって、ゼロ価金属はパラジウム、銀、コバルト、ニッケル、金、銅及びルテニウムから選択され、安定剤化合物は次の式を有する組成物。
【化1】

(式中、Rは水素又は(C−C)アルキルを示し、各Rは独立して水素、(C−C)アルキル及びZから選択され、Zは(C―C)アルケニル−Z又は(CRを示し、各R及びRは独立して水素、ヒドロキシル、(C―C)アルキル、ヒドロキシ(C―C)アルキル、C(O)−(C−C)アルキル、(C−C)アルキル−C(O)−(C−C)アルキル、CO及びNRから選択され、Rは水素、(C−C)アルキル、ヒドロキシ(C−C)アルキル又は(C−C)アルコキシ(C−C)アルキルであり、R及びRは独立して水素、(C−C)アルキル及び(CRから選択され、ZはC(S)SH,COH又はC(O)NRであり、ZはC(O)R又はCOであり、aは0−6であり、少なくとも一つのRはZである。)
【請求項2】
pHが6−14である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
pHが7.5から14である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が20℃で3カ月保管しても沈殿を生成しないことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ゼロ価金属及び安定剤化合物がモル比で1:1から1:20であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
がCOHである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(a)複数のスルーホールを有する基板を提供し、(b)請求項1の組成物をスルーホール表面に適用し、続いて(c)スルーホール表面に金属の無電解析出を行う、ことを含む方法。
【請求項8】
工程(c)の無電解析出金属の上に第二の金属を電気的に析出する工程をさらに有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)の前にスルーホールの表面を酸化剤と接触させる工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を準備する方法であって、安定剤化合物、水及び水可溶性金属塩を混合し、続いてゼロ価金属を形成するのに充分な量の還元剤を添加する、方法。

【公開番号】特開2012−130910(P2012−130910A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−271873(P2011−271873)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】