説明

めっき面を有する複合成形体とその製造方法

【課題】 多色射出成形等により得られた複合成形体の樹脂部分がめっきされており、めっきに起因する損傷がない複合成形体とその製造方法の提供。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマーからなる成形体を有する、多色射出成形等により得られた複合成形体であって、前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の露出面が、クロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきされているものである、めっき面を有する複合成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき面を有する複合成形体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、熱可塑性エラストマーを弾性体として利用した、樹脂と熱可塑性エラストマーからなる複合成形体が使用されているが、従来のめっき法では、熱可塑性エラストマー部分に損傷を与えることなく、樹脂部分にめっきすることは困難である。特許文献1、2では、めっき浴の条件を厳密に管理する方法が開示されているが、前記問題の解決には十分ではない。
【特許文献1】特許第3710408号公報
【特許文献2】特許第3722724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマーからなる成形体を有する複合成形体の樹脂部分がめっきされており、めっきに起因する損傷がない複合成形体とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
(1)熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマーからなる成形体を有する複合成形体であって、前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の露出面が、クロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきされているものである、めっき面を有する複合成形体。(2)前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂及びこれらの1又は2以上の混合物から選ばれるものである、請求項1記載のめっき面を有する複合成形体。
(3)前記熱可塑性エラストマーが、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー及びこれらの1又は2以上の混合物から選ばれるものである、請求項1又は2記載のめっき面を有する複合成形体。
(4)請求項1〜3のいずれか1項記載のめっき面を有する複合成形体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と、熱可塑性エラストマーを含む成形体を有する複合成形体を多色射出成形又はインサート射出成形により得る工程、
前記複合成形体に対して、クロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法により、前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の露出面にめっきする工程、
を有している、めっき面を有する複合成形体の製造方法。
(5)請求項1〜3のいずれか1項記載のめっき面を有する複合成形体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマー成形体を得る工程、
前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマー成形体を固着して一次複合成形体を製造する工程、
次に、前記一次複合成形体に対して、クロム酸浴を使用しないめっき法でめっきして、めっきされた複合成形体を得る工程、
を有している、めっき面を有する複合成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明の複合成形体は、外観の美しいめっき面(熱可塑性樹脂組成物の成形体部分)と弾性のある熱可塑性エラストマーの成形体部分を有しており、前記めっき面が、クロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきされているため、前記熱可塑性エラストマーの成形体部分には弾性や外観を損なうような損傷がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のめっき面を有する複合成形体は、以下に説明する2つの製造方法のいずれかにより、製造することができる。
【0007】
<第1の製造方法>
まず、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性エラストマーを含むものを用い、多色射出成形又はインサート射出成形により、前記組成物からなる成形体と前記エラストマーからなる成形体を有するめっき前の複合成形体(以下「一次複合成形体」と称する)を得る。
【0008】
多色射出成形は周知の成形法であり、2本以上のシリンダーを有する多色成形機を用い、金型を反転させる方式や金型を拡大するコアーバック方式を適用して成形する方法である。また2以上の射出成形機を用いるインサート射出成形法も公知の方法を適用できる。本発明においては特別な成形条件はないが、得られた一次複合成形体が、必ず熱可塑性樹脂組成物からなる露出面(即ち、めっき対象面)を有するようにする。
【0009】
次に、一次複合成形体の熱可塑性樹脂組成物からなる露出面に対して、クロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきする。このめっき法は、特開2003−82138号公報、特開2003−166067号公報、特開2004−2996号公報、特開2006−152041号公報、特開2006−219757号公報等の実施例等に記載の熱可塑性樹脂組成物として多価アルコールを含有するものを用いためっき法、特開2007−100174号公報に記載の過マンガン酸によるエッチング法を利用しためっき法、特開2007−231362号公報に記載のUV酸化法を利用しためっき法、特開2005−68496号公報に記載の光触媒を用いた樹脂めっき法、特開2008−50541号公報に記載のトリアジンチオールを用いためっき法、特開2007−84929号公報に記載の超臨界二酸化炭素を用いためっき法等を適用することができる。
【0010】
<第2の製造方法>
まず、公知の樹脂成形法を適用して、用途に応じた所望形状の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマー成形体を得る。
【0011】
次に、前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマー成形体を固着して一次複合成形体を製造する。
【0012】
次に、前記一次複合成形体に対して、クロム酸浴を使用しないめっき法でめっきして、めっきされた複合成形体を得る。
【0013】
クロム酸浴を使用するめっき法を適用した場合、熱可塑性エラストマーがクロム酸浴によって酸化され、劣化して機械物性が低下する、変色するなど種々の問題を引き起こす。しかし、本発明の製造方法では、クロム酸浴を使用しないめっき法を適用するため、機械物性の低下や変色といった問題はない。
【0014】
クロム酸浴を使用しないめっき法でめっきする。このめっき法は、特開2003−82138号公報、特開2003−166067号公報、特開2004−2996号公報、特開2006−152041号公報等の実施例等に記載のめっき法を適用することができる。
【0015】
次に、めっきされた熱可塑性樹脂組成物の成形体と熱可塑性エラストマー成形体を固着して、めっき面を有する複合成形体を得る。
【0016】
熱可塑性樹脂組成物の成形体と熱可塑性エラストマー成形体の固着方法は特に制限されず、各種溶着法、接着剤を用いた接着法等を適用することができる。
【0017】
溶着法は、熱可塑性樹脂を加熱して圧力を加え、分子レベルで接合する方法であり、インパルス溶着、熱板溶着、非接触熱板溶着、超音波溶着、高周波溶着、振動溶着、半導体レーザー溶着、赤外線溶着等を挙げることができる。
【0018】
<熱可塑性樹脂組成物>
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、必要に応じてめっきの密着強度を高めるための各種成分、樹脂用添加剤を含有するものである。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂(ABS樹脂、AS樹脂等)、オレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリフェニレンスルホン樹脂(PPS)、ポリスルホン樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂及びこれらのアロイから選ばれるものが好ましい。これらの中でも、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂及びこれらのアロイから選ばれるものが好ましく、ポリアミド系樹脂を含んでいることが好ましい。
【0020】
また熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と共に、特開2006−152041号公報に記載の相溶化剤を含有することができる。
【0021】
熱可塑性樹脂組成物は、めっきの密着強度を高める成分として、多価アルコールを含有することができる。多価アルコールとしては、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン等から選ばれるものが好ましい。これらの中でも、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂と多価アルコールの含有割合は、熱可塑性樹脂100質量部(相溶化剤を配合したときは、相溶化剤を除いた量)に対して、多価アルコールは0.01〜50質量部が好ましく、0.01〜30質量部がより好ましく、0.01〜15質量部が更に好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂組成物は、めっきの密着強度を高める他の成分として、特開2003−82138号公報、特開2003−166067号公報、特開2004−2996号公報、特開2006−152041号公報に記載の界面活性剤、リン化合物を含有することができる。
【0024】
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の課題を解決できる範囲にて、フィラー又は補強剤(強化繊維等)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤等)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等の樹脂用添加剤を含有することができる。
【0025】
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、動的架橋系熱可塑性エラストマー等から選ばれるものを挙げることができる。
【0026】
熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの含有割合は、複合成形体の用途によって、適宜決定されるものである。
【0027】
熱可塑性エラストマーには、本発明の課題を解決できる範囲にて、上記した樹脂用添加剤を含有することができる。
【0028】
<複合成形体>
本発明の複合成形体は、めっき面を有する熱可塑性樹脂組成物の成形体部分と、熱可塑性エラストマーの成形体部分を有しているため、外観の美しいめっき面(熱可塑性樹脂組成物の成形体部分)を表側にして、弾性のある熱可塑性エラストマーの成形体部分を裏側にすることで、コンピューター等のキーボードのキー、電話機等のキー、カメラの操作ボタンのような、繰り返し押されるような用途や、携帯電話用カバー、デジタルカメラ用カバーのようなヒンジ効果が必要な用途に好適となる。また、ボタン、ヒモ飾り(ループエンド)ドローコード用ストッパー等の服飾パーツ、各種製品の把手等の用途に適用することで、装飾性を付与することができるほか、握ったときの柔らかな手触り感や滑り止めや衝撃吸収等の効果も得ることができる。
【実施例】
【0029】
実施例1、2(第1の製造方法)及び比較例1
表1に示す熱可塑性樹脂組成物をV型タンブラーで混合後、二軸押出機(日本製鋼製、TEX30 シリンダー温度230℃)にて溶融混錬し、ペレットを得た。この熱可塑性樹脂組成物ペレットと所要量の熱可塑性エラストマー(東レ・デユポン(株)製のハイトレル−5557)を用い、二色射出成形機(日製樹脂工業(株)のDC−120−9A)により、射出成形して、図1に示す、熱可塑性樹脂組成物の成形体11と熱可塑性エラストマーの成形体12からなる携帯電話カバー(一次複合成形体)10を得た。
【0030】
次に、携帯電話カバー(一次複合成形体)10に対して、下記のクロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきした。なお、比較例は、特許文献1の実施例(表1のNo.5)と同じクロム酸浴を使用するめっき法でめっきした。
【0031】
(1)脱脂工程
携帯電話カバー(一次複合成形体)10を、エースクリンA−220(奥野製薬工業株式会社製)50g/L水溶液(液温40℃)に20分浸漬した。
【0032】
(2)酸による接触処理工程
携帯電話カバー(一次複合成形体)10を、35質量%塩酸230ml/Lと、CRPナイロンエッチャント(奥野製薬工業株式会社製)20ml/L水溶液との混合水溶液(液温35℃)中に10分間浸漬した。
【0033】
(3)触媒付与工程1
携帯電話カバー(一次複合成形体)10を、35質量%塩酸30ml/Lと、CRPナイロンキャタリスト(奥野製薬工業株式会社製)100ml/L水溶液と、CRPナイロンキャタリスト添加剤(奥野製薬工業株式会社製)200ml/L水溶液の混合水溶液(液温35℃)中に6分間浸漬した。
【0034】
(4)触媒付与工程2
携帯電話カバー(一次複合成形体)10を、CRPナロンアクチベーター50ml/L水溶液(液温35℃)中に1分間浸漬した。
【0035】
(5)導体化工程
携帯電話カバー(一次複合成形体)10を、CRPナイロンセレクターA(奥野製薬工業株式会社製)150ml/L、CRPナイロンセレクターB奥野製薬工業株式会社製)200ml/L水溶液の混合水溶液(液温45℃)中に3分間浸漬した。
【0036】
(6)銅の電気めっき工程
携帯電話カバー(一次複合成形体)10を、下記組成のめっき液(液温25℃)に浸漬して、20分間電気めっきを行った。
【0037】
(めっき浴の組成)
硫酸銅(CuSO4・5H2O)200g/L
硫酸(98%)50g/L
塩素イオン(Cl-)5ml/L
トップルチナ2000MU(奥野製薬工業株式会社製)5ml/L。
【0038】
実施例3、4(第1の製造方法)及び比較例2
実施例1で得た熱可塑性樹脂組成物ペレットを用い、射出成形機(日製樹脂工業(株)のPS−60E9A)により、図2に示す成形体21の部分を得た。次に、この成形体21を金型に入れ、射出成形機(日製樹脂工業(株)のTH60R9VES)を用いて所要量の熱可塑性エラストマー(東レ・デユポン(株)製のハイトレル−5557)をインサート射出成形することにより、熱可塑性樹脂組成物の成形体21と熱可塑性エラストマーの成形体22からなるループエンド(一次複合成形体)20を得た。
【0039】
次に、ループエンド(一次複合成形体)20に対して、下記のクロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきした。なお、比較例は、特許文献1の実施例(表1のNo.5)と同じクロム酸浴を使用するめっき法でめっきした。
【0040】
(1)脱脂工程
ループエンド(一次複合成形体)20を、エースクリンA−220(奥野製薬工業株式会社製)50g/L水溶液(液温40℃)に5分浸漬した。
【0041】
(2)エッチング工程(酸による接触処理工程)
ループエンド(一次複合成形体)20を、35質量%塩酸230ml/Lと、CRPナイロンエッチャント(奥野製薬工業株式会社製)20ml/L水溶液との混合水溶液(液温35℃)中に10分間浸漬した。
【0042】
(3)触媒付与工程1
ループエンド(一次複合成形体)20を、35質量%塩酸30ml/Lと、CRPナイロンキャタリスト(奥野製薬工業株式会社製)100ml/L水溶液と、CRPナイロンキャタリスト添加剤(奥野製薬工業株式会社製)200ml/L水溶液の混合水溶液(液温35℃)中に6分間浸漬した。
【0043】
(4)触媒付与工程2
ループエンド(一次複合成形体)20を、CRPナロンアクチベーター50ml/L水溶液(液温35℃)中に1分間浸漬した。
【0044】
(5)導体化工程
ループエンド(一次複合成形体)20を、CRPナイロンセレクターA(奥野製薬工業株式会社製)150ml/L、CRPナイロンセレクターB奥野製薬工業株式会社製)200ml/L水溶液の混合水溶液(液温45℃)中に9分間浸漬した。
【0045】
(6)銅の電気めっき工程
ループエンド(一次複合成形体)20に対して、通電性を補うために、球形に近い形に成形されたABS成形体の表面にメッキされた充填物(ダミー)を容量比で50%以上混合した状態で、めっき用バレルに入れ、下記組成のめっき浴(液温5025℃)に浸漬して、120分間電気めっきを行った。
【0046】
(めっき液組成)
ピロリン酸銅(Cu227・3H2O) 60〜80g/L
ピロリン酸カリウム(K427) 350〜400g/L
KAPY−3((株)金属加工研究所製) 10ml/L
pH 8.8〜9.2
【0047】
【表1】

【0048】
ポリアミド: ポリアミド6、宇部興産株式会社製、UBEナイロン6 1013B
ABS樹脂:スチレン45質量%、アクリロニトリル15質量%、ゴム量40質量%
AS樹脂:スチレン75質量%、アクリロニトリル25質量%
相溶化剤−1:スチレン−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体(スチレン47質量%、Nフェニルマレイミド51質量%、無水マレイン酸2質量%、重量平均分子量14万5千)。
【0049】
実施例1、2と比較例1の携帯電話カバー10は、いずれも樹脂組成物成形体11の部分には美しいめっきがなされていたが、エラストマー成形体12を目視で対比観察したところ、実施例1、2の携帯電話カバー10のエラストマー成形体12には損傷は認められなかったが、比較例1の携帯電話カバー10のエラストマー成形体12には損傷(ひび割れや孔の発生、表面の溶解)が認められた。また、実施例1、2の携帯電話カバー10は、柔らかな好ましい手触り感であった。
【0050】
実施例3、4と比較例2のループエンド20は、いずれも樹脂組成物成形体21の部分には美しいめっきがなされていたが、エラストマー成形体22を目視で対比観察したところ、実施例3、4のループエンド20のエラストマー成形体22には損傷は認められなかったが、比較例2のループエンド20のエラストマー成形体22には損傷(ひび割れや孔の発生、表面の溶解)が認められた。
【0051】
実施例5(第2の製造方法)及び比較例3
実施例1で得た熱可塑性樹脂組成物ペレットを用い、射出成形機(日製樹脂工業(株)のPS−60E9A)により、図1に示す成形体11を得た。
【0052】
次に、射出成形機(日製樹脂工業(株)のTH60R9VES)を用いて熱可塑性エラストマー(東レ・デユポン(株)製のハイトレル−5557)を射出成形することにより、図1に示す成形体12を得た。
【0053】
次に、成形体11と成形体12を図1に示す状態になるように固着して、一次複合成形体を得た。成形体11と成形体12の固着は、接着剤としてスーパーX No.8008(セメダイン株式会社製)を用いた接着により行った。
【0054】
次に、一次複合成形体に対して、実施例1、2と同じクロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきした。なお、比較例3は、一次複合成形体に対して、特許文献1の実施例(表1のNo.5)と同じクロム酸浴を使用するめっき法でめっきした。
【0055】
実施例5の複合成形体では、成形体11の露出面は、非常に美しいめっき面であり、成形体12の表面(非めっき面)も肉眼上では荒れは認められなかった。一方、比較例3の複合成形体では、成形体11の露出面のめっきは美しいものであったが、成形体12の表面(非めっき面)は肉眼上で容易に分かるほどの荒れが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1、2、5比較例1、3で製造した携帯電話カバーの一面図と反対面図(背面図と正面図、又は右側面図と左側面図)である。
【図2】実施例3、4、比較例2で製造したループエンドの側面図と平面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 携帯電話カバー
11 組成物成形体
12 エラストマー成形体
20 ループエンド
21 組成物成形体
22 エラストマー成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマーからなる成形体を有する複合成形体であって、前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の露出面が、クロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法でめっきされているものである、めっき面を有する複合成形体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂及びこれらの1又は2以上の混合物から選ばれるものである、請求項1記載のめっき面を有する複合成形体。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーが、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー及びこれらの1又は2以上の混合物から選ばれるものである、請求項1又は2記載のめっき面を有する複合成形体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のめっき面を有する複合成形体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と、熱可塑性エラストマーを含む成形体を有する複合成形体を多色射出成形又はインサート射出成形により得る工程、
前記複合成形体に対して、クロム酸浴によるエッチングを使用しないめっき法により、前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の露出面にめっきする工程、
を有している、めっき面を有する複合成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のめっき面を有する複合成形体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマー成形体を得る工程、
前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形体と熱可塑性エラストマー成形体を固着して一次複合成形体を製造する工程、
次に、前記一次複合成形体に対して、クロム酸浴を使用しないめっき法でめっきして、めっきされた複合成形体を得る工程、
を有している、めっき面を有する複合成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−293121(P2009−293121A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258211(P2008−258211)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(591115279)株式会社アイリス (16)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】