説明

めり込み防止構造

【課題】横架材(木材)を貫通させたねじ等の剛性部材を用いることで、横架材の、繊維直交方向の剛性及び強度に頼ることなく、前記繊維直交方向に高い剛性で荷重伝達ができるめり込み防止構造を提供する。
【解決手段】荷重を受ける部位であって横架材11(土台)の長手方向(繊維方向)に直交する繊維直交方向Zにねじ棒部材12を埋め込み、繊維直交方向Zにおいて前記荷重をねじ棒部材12が受け、前記荷重によるめり込みを防止する。ねじ棒部材12は、横架材11を貫通して埋め込まれ、繊維直交方向Zの荷重を、ねじ棒部材12を通して布基礎13に伝達する。ねじ棒部材12の上端は、横架材11の表面に沿って設けられためり込み防止板14Aに接触している。ねじ棒部材12及びめり込み防止板14Aの配置部位には、横架材11に直交する繊維直交方向Zに延びる柱15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めり込み防止構造に関する。より詳細には、木造建築物などにおける横架材(土台、梁など)と鉛直材(柱など)とのめり込み防止する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土台などの横架材と柱などの鉛直材とを設置する際、低コストで且つ、使用部材の断面積を変更した場合や、ほぞ加工や接合金物を使用した場合においても対応可能な、木材が直交して突き合わされる突き合わせ部のめり込みを有効に防止し得る木材のめり込み防止構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、木材が直交して突き合わされる突き合わせ部において、突き合わされる一方の木材から押圧される木材のめり込みを防止するためのめり込み防止構造であって、突き合わされる一方の木材の突き合わせ面にビスを螺着し、突き合わされる他方の木材の突き合わせ面に前記ビスと対向するようにほぼ一直線上に同種のビスを螺着し、前記突き合わせ面のビス頭部の端面を、螺着される木材の突合せ面と略同一面上に位置させてなるもので、ビス(木ねじ)を横架材を貫通させずに部分的に打ち込むので、木ねじの刃の部分を用いて力を伝達するものである。このようにすれば、木材にかかる荷重を対向し合うビス同士で受止め、螺着された木材の中央に荷重を分散することが可能になり木材のめり込みを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−156014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1に記載の技術は、最終的には、荷重を、横架材(木材)の繊維が延びる方向(繊維方向)に直交する方向(繊維直交方向)に伝えるものであり、横架材の繊維直交方向の性能の影響を直接受ける構造である。
【0006】
つまり、通常、横架材(木材)の繊維直交方向の剛性及び強度は、繊維方向に比べて極めて小さく、また長期間にわたって作用する荷重に対して、クリープ変形を起こすおそれがある。
【0007】
そこで、発明者らは、横架材と鉛直材との連結部分において、横架材を貫通させたねじ等の剛性部材を通して荷重を伝達させれば、前記繊維直交方向の荷重を、前記横架材に伝達することなく、基礎などの他部に直接伝達できることに着想し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
本発明は、横架材を貫通させたねじ等の剛性部材を用いることで、横架材(木材)の、繊維直交方向の剛性及び強度に頼ることなく、前記繊維直交方向に高い剛性で荷重伝達ができるめり込み防止構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、横架材の荷重を受ける部位であって、前記横架材の繊維方向に直交する繊維直交方向に剛性部材を埋め込み、前記繊維直交方向において前記荷重を前記剛性部材に伝達する構成とした、めり込み防止構造であって、前記剛性部材は、前記横架材を貫通して設けられ、前記繊維直交方向の荷重を受けて前記横架材の下側の他部に伝達させるものであり、前記繊維直交方向に延びる第1の軸状部材を有することを特徴とする。ここで、「繊維方向」とは、横架材(木材)の繊維が延びている方向をいう。「剛性部材」は、前記繊維直交方向の荷重に耐えうる剛性を備えるものであればよい。
【0010】
このようにすれば、横架材の繊維直交方向の荷重は、前記横架材に負担させることなく、剛性部材を通して、他部に伝達される。例えば図1に示すように、剛性部材を第1の軸状部材12(ねじ棒部材12aとしての木ねじ)のみで構成し、横架材11の繊維方向X(長手方向)に直交する繊維直交方向Zに作用する荷重Fが軸状部材12によって受け止められ、横架材11に負担させることがなくなる。それによって、荷重Fを受ける部位において、荷重Fによる、横架材11の繊維直交方向Zにおけるめり込みが防止される。
【0011】
前記剛性部材を構成する第1の軸状部材(後述する第2の軸状部材も同様)としては、前述した木ねじや、長ねじ、アンカーボルト、タッピンねじ等のねじ棒部材のほか、軸線方向において前記剛性を有するものであれば、ねじを有しないものであってもよい。そして、前記剛性部材としては、例えば図2に示すように、ねじ棒部材12a(アンカーボルト)とナット12bの組み合わせも含む。ナット12bは,座堀りされた部位に埋め込まれている。さらに、めり込み防止板12cが組み合わされる場合もある(例えば図3〜図6参照)。ねじ棒部材12a単体あるいは、ナット12bやめり込み防止板12cとの組み合わせで、剛性部材全体として、横架材11を貫通する長さを有する。
【0012】
請求項2に記載のように、前記剛性部材は、前記横架材に表面に沿って設けられ前記繊維直交方向の荷重を受けるめり込み防止板を有し、前記第1の軸状部材は、前記めり込み防止板に対応して設けられていることが望ましい。
【0013】
このようにすれば、めり込み防止板を介在させることで、横架材直交方向の荷重の作用位置がねじ棒部材の直上でなくても、前記荷重をねじ棒部材を経由して、他部材に伝達することができる。つまり、例えば図3〜図6に示すように、鉛直方向の荷重がめり込み防止板上のいずれかの位置に作用していれば、前記荷重はめり込み防止板12cを介してねじ棒部材12a(第1の軸状部材)に伝達され、前記荷重を最終的に伝達する相手である布基礎13に伝達される。よって、ねじ棒部材12aだけで荷重を受ける場合に比べて、めり込み防止板12cを用いることでねじ棒部材12aが荷重伝達できる荷重の作用範囲を大幅に拡大することができる。
【0014】
また、ねじ棒部材12aを設けることによって、例えば図7(a)〜(c)に示すように、めり込み防止板12cのめり込みが防止されるが、ねじ棒部材12aを設けないと、例えば図7(d)に示すように、めり込み防止板12cは横架材11の繊維直交方向の抵抗力のみによって支持される。木材である横架材11の場合、繊維直交方向の剛性は小さいために、めり込み防止板12cが繊維直交方向Zにめり込むことになる。
【0015】
請求項3に記載のように、前記めり込み防止板は、前記横架材の表面と面一となるように前記横架材内に埋め込まれていることが望ましい。
【0016】
このようにすれば、横架材からの突出部分がなくなり、設計の自由度が高くなる。
【0017】
請求項4に記載のように、前記第1の軸状部材は、ねじ棒部材で、前記めり込み防止板は、貫通穴を有し、その貫通穴に対応してナット部材が固定されたものであり、前記ねじ棒部材が、前記ナット部材にねじ込まれるとともに前記めり込み防止板を貫通して延びていることが望ましい。
【0018】
このようにすれば、ねじ棒部材が、前記ナット部材にねじ込まれるとともに前記めり込み防止板を貫通して延びているので、ねじ棒部材とめり込み防止板が一体化され、取付けが安定する。つまり、例えば図3及び図4に示すように、ねじ棒部材12aがめり込み防止板を貫通せず、めり込み防止板12cをその上あるいはナット12bの上に載せるだけでは、めり込み防止板12cの支持が不安定となる。よって、例えば図5及び図6に示すように、ねじ棒部材12aがめり込み防止板12cを貫通して一体化されていることが望ましい。
【0019】
ここで、めり込み防止板12cとナット部材12bとは、溶接、接着などの固定手段を用いて一体化されるが、めり込み防止板にねじ穴を設けることで、ナット部材を省略することも可能である。
【0020】
この場合には、請求項5に記載のように、前記第1の軸状部材は、ねじ棒部材で、前記めり込み防止板は、ねじ穴を有し、前記ねじ棒部材が、前記ねじ穴にねじ込まれるとともに前記めり込み防止板を貫通して延びているようにすればよい。
【0021】
また、請求項6に記載のように、前記めり込み防止板が設けられている部位には、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材が設けられ、前記鉛直材のほぞあるいはだぼが、前記めり込み防止板の貫通穴を通じて前記横架材のほぞ穴あるいはだぼ穴に嵌め込まれている構造とすることができる。ここで、「ほぞあるいはだぼ」は、木製のほか、鋼製、樹脂製とすることも可能である。
【0022】
このようにすれば、ほぞ接ぎあるいはだぼ接ぎの部分にも、めり込み防止構造を適用することができる。
【0023】
請求項7に記載のように、前記鉛直材と並んで前記鉛直材と平行に延びる長ねじ部材が配設され、前記長ねじ部材の端部が前記めり込み防止板に固定されている構造とすることも可能である。
【0024】
このようにすれば、めり込み防止板を、横架材内部を貫通する長ねじ部材で支持することができる。
【0025】
請求項8に記載のように、前記横架材と鉛直材との連結部分において、筋交い端部金物を介して筋交い材の端部が連結され、前記筋交い端部金物とともに前記長ねじ部材が前記めり込み防止板に連結されている構造とすることもできる。
【0026】
このようにすれば、長ねじ部材にて支持される筋交い端部金物に、筋交い材の端部を支持させることができる。
【0027】
請求項9に記載のように、前記横架材と鉛直材との連結部分において、前記長ねじ部材に設けられている側とは前記鉛直材に対して反対側で、前記めり込み防止板に対応して前記横架材に前記第1の軸状部材が設けられている構造とすることも可能である。
【0028】
このようにすれば、めり込み防止板を長ねじ部材にて支持させる一方、筋交い材からの荷重を、筋交い端部金物及びめり込み防止板を介して第1の軸状部材にて受けさせることができる。
【0029】
請求項10に記載のように、前記第1の軸状部材が設けられている部位には、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材が設けられ、前記鉛直材に、前記第1の軸状部材に対応して、第2の軸状部材が前記鉛直材の長手方向に埋め込まれ、第1の軸状部材と第2の軸状部材との端部が接触している構造とすることも可能である。ここで、「第1の軸状部材と第2の軸状部材との端部が接触している」とは、第1の軸状部材と第2の軸状部材との端部が荷重の受け渡しができるように接触している、ことを意味する。
【0030】
このようにすれば、第2の軸状部材からの荷重を第1の軸状部材が直接的に受けることができる。
【0031】
請求項11に記載のように、前記第1の軸状部材が設けられている部位には、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材が設けられ、前記鉛直材に、前記第1の軸状部材に対応して、第2の軸状部材が埋め込まれ、前記第1の軸状部材と第2の軸状部材との端部の間にめり込み防止板が位置している構造とすることも可能である。
【0032】
このようにすれば、鉛直材に作用する荷重が、第2の軸状部材からめり込み防止板を介して第1の軸状部材に直接に伝達される。
【0033】
請求項12に記載のように、前記第1の軸状部材は、前記横架材を貫通し、その貫通して突出する部分が、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材に埋め込まれ、前記横架材に接触する別の横架材に設けられた第1の軸状部材の端部と接触している構造とすることも可能である。
【0034】
このようにすれば、横架材を経ることなく、第1の軸状部材の間で荷重の伝達が行われる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、上記のように、剛性部材を用いることで、横架材(木材)の繊維直交方向の荷重を、横架材自体の、繊維直交方向の剛性及び強度に全てを頼ることなく、他部に伝達させるようにしているので、横架材を介した状態においても、横架材の繊維直交方向に高い剛性で荷重伝達ができ、長期のクリープ変形を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)(b)はそれぞれ本発明に係るめり込み防止構造によってめり込みを防止する原理を説明する平面図及び側面図である。
【図2】(a)(b)はそれぞれ本発明に係るめり込み防止構造によってめり込みを防止する原理を説明する平面図及び側面図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれめり込み防止板を用いる場合についての、めり込みを防止する原理を説明する平面図及び側面図である。
【図4】(a)(b)はそれぞれめり込み防止板を用いる場合についての、めり込みを防止する原理を説明する平面図及び側面図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれめり込み防止板を用いる場合についての、めり込みを防止する原理を説明する平面図及び側面図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれめり込み防止板を用いる場合についての、めり込みを防止する原理を説明する平面図及び側面図である。
【図7】(a)(b)(c)(d)はそれぞれめり込み防止板を用いる場合についての、めり込みを防止する原理を説明する平面図及び側面図である。
【図8】本発明に係るめり込み防止構造の第1の実施の形態を示し、(a)は側面図、(b)は図8(a)のA−A線矢視図、(c)は図8(a)のB−B線断面図である。
【図9】図8に示す構造の変形動作を示し、(a)は概略全体図、(b)は上側部分の拡大図、(c)は図9(b)のA−A線矢視図図である。
【図10】本発明に係るめり込み防止構造の第2の実施の形態を示し、(a)は側面図、(b)は図10(a)のA−A線矢視図、(c)は図10(a)のB−B線断面図である。
【図11】第2の実施の形態について、別の実施の形態を示し、(a)は側面図、(b)は図11(a)のA−A線矢視図、(c)は図12(a)のB−B線断面図である。
【図12】第2の実施の形態について、さらに別の実施の形態を示す説明図である。
【図13】本発明に係るめり込み防止構造の第3の実施の形態を示し、(a)は側面図、(b)は図13(a)のA−A線矢視図、(c)は図13(a)のB−B線断面図である。
【図14】第3の実施の形態について、別の実施の形態を示す説明図である。
【図15】本発明に係るめり込み防止構造の第4の実施の形態を示し、(a)は側面図、(b)は図15(a)のA−A線矢視図、(c)は図15(a)のB−B線断面図である。
【図16】第4の実施の形態について、別の実施の形態を示し、(a)は側面図、(b)は図16(a)のA−A線矢視図、(c)は図16(a)のB−B線断面図である。
【図17】第4の実施の形態について、さらに別の実施の形態を示し、(a)は側面図、(b)は図17(a)のA−A線矢視図、(c)は図17(a)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
(第1の実施の形態)
図8(a)(b)(c)に示すように、土台11(横架材)及び梁16(横架材)に柱15(鉛直材)の上下端が連結され、その上下端部において、本発明に係るめり込み防止構造を用いている。なお、図8(a)〜(c)において、柱15(鉛直材)の左側の上下端にいわゆる「非貫通型」のめり込み防止構造(図3及び図4参照)を用い、柱15の右側の上下端にいわゆる「貫通型」のめり込み防止構造(図5及び図6参照)を用いている。
【0038】
即ち、図8(a)〜(c)に示すように、柱15(鉛直材)の左側では、柱15からの荷重を受ける部位(柱15が設けられる部位)において、梁16aあるいは土台11の繊維方向に直交する繊維直交方向Zに、繊維直交方向Zに延びるねじ棒部材12(第1の軸状部材)がねじ込まれることで埋め込まれ、繊維直交方向Zにおいて前記荷重をねじ棒部材12がめり込み防止板14B,14A(例えば、鋼板)を介して受け、前記荷重による、梁16あるいは土台11へのめり込みが防止されるようになっている。なお、梁16aあるいは土台11の幅は、めり込み防止板14B,14Aの幅を超える大きさとなっている。
【0039】
この柱15の下端部及び上端部に形成されるほぞ15a,15b(あるいはだぼ)が、めり込み防止板14A,14Bの貫通穴14Aa,14Baを通じて土台11あるいは梁16のほぞ穴11a,16a(あるいはだぼ穴)に嵌め込まれることで組み付けられている。このほぞ穴11a,16aとほぞ15a,15bとの嵌合部分に対して一方の側に、ねじ棒部材12、めり込み防止板14B,14A,長ねじ部材17を有する剛性部材が配置されている。
【0040】
柱15(鉛直材)の右側では、柱15と平行に延びる長ねじ部材17が配設され、この長ねじ部材17の上下側部分は梁16及び土台11を貫通して延び、下側部分は布基礎13内にまで延びている。つまり、長ねじ部材17は、梁16を貫通する上側ねじ17Aと、土台11を貫通する下側ねじ17Bと、それらをコネクタ17D(あるいはターンバックル)を介して結合する中間ねじ17Cとにより構成され、長ねじ部材17の長さを調整できるようになっている。なお、前記上側ねじや下側ねじは、中間ねじでコネクタを介して結合することなく、ホールダウン金物などを用いて、分離した構造とすることも可能である。
【0041】
また、長ねじ部材17の、めり込み防止板14A,14Bを貫通する部分は、座金及びナットからなる締結具18によってめり込み防止板14A,14Bを挟む形で固定されている。また、梁16を貫通する上側ねじ17Aの突出部分にも、座金及びナットからなる締結具18が適用されている。
【0042】
このように、ねじ棒部材12及びめり込み防止板14B,14Aを有する剛性部材は、梁16あるいは土台11を貫通して設けられ、柱15からの繊維直交方向Zの荷重を、ねじ棒部材12及びめり込み防止板14B,14Aを通して、つまり、梁16あるいは土台11をバイパスして、梁16あるいは土台11の下側の他部(例えば、布基礎13)に伝達させるようになっている。土台11あるいは梁16の表面に沿って設けられためり込み防止板14A,14Bに、ねじ棒部材12の端部が接触している。このめり込み防止板14A,14Bは、土台11あるいは梁16の表面と面一となるように土台11あるいは梁16内に埋め込まれている。
【0043】
このように、上側のめり込み防止板14B(梁16)と、下側のめり込み防止板14A(土台11)とを、柱15と長ねじ部材17で連結するだけでは、柱15(鉛直材)の上下間に、水平方向の荷重F1が作用すると、柱15は回転しようとして、柱15の上下に設けられる梁16や土台11に柱15を押し込む力が発生する。例えば上側部分において考えると、図9(a)(b)(c)に示すように、柱15と梁16との接点を中心に、接点の左右に設けられた長ねじ部材17はめり込み防止板14Bに対して時計回り方向の回転モーメントを生じる。これに対し、左側に設けられたねじ棒部材12の反力は、反時計回り方向の回転モーメントを生じるので、結果としてめり込み防止板14Bの回転が抑制されることになる。
【0044】
そこで、次の第2の実施の形態のように、筋交い材を設けることが望ましい。
(第2の実施の形態)
この実施形態は、柱15の左側の上下端に「非貫通型」のめり込み防止構造を用い、柱15の右側の上下端に「貫通型」のめり込み防止構造を用い、柱15の右側に筋交い材22B,22Aを設けた場合である。
【0045】
図10及び図11に示すように、長ねじ部材17の上側部分(上側ねじ17A)及び下側部分(下側ねじ17B)には、梁16あるいは土台11と柱15との上下の連結部分において、筋交い端部金物21B,21Aを介して筋交い材22B,22Aの端部がめり込み防止板14B,14Aに連結されている。
【0046】
つまり、前記連結部分において、めり込み防止板14B,14Aに筋交い端部金物21B,21Aが固定され、その筋交い端部金物21B,21Aに、筋交い材22B,22Aの端部が連結されている。
【0047】
筋交い端部金物21Aは、土台11に取り付けられる水平部21Aaと、柱15に取り付けられる鉛直部21Abと、それら水平部21Aa及び鉛直部21Abに直交する方向に延び筋交い材22Aの端部が取り付けられる金物本体部21Acとを有する.この端部金物21Aは、座金及びナットからなる締結具18によって長ねじ部材17にも固定されている。なお、上側の筋交い端部金物21Bも同一の構造で、水平部21Ba、鉛直部21Bb及び金物本体部21Bcを有する。
【0048】
これにより、例えば、梁16あるいは土台11(横架材)に右方向の力が作用した場合、筋交い材22B,22Aから筋交い端部金物21B,21Aに作用する力は、めり込み防止板14B,14Aを介して長ねじ部材17に伝達されるため、めり込み板14B,14Aと長ねじ部材17とが協働して筋交い端部金物21B,21Aが梁16あるいは土台11にめり込むことを防止することになる。
【0049】
また、図12に示すように、土台11あるいは梁16と柱15との上下の連結部分において、長ねじ部材17に設けられている側とは反対側で、筋交い端部金物21A,21Bを介して筋交い材22A,22Bの端部がめり込み防止板14A,14Bに連結されるようにすることも可能である。
【0050】
この場合、筋交い端部金物21A,21Bが設けられている部分に対応して、土台11あるいは梁16にそれらを貫通する第1のねじ棒部材12が設けられている。
【0051】
前述したような長ねじ部材を設けることは必ずしも必要なく、図13に示すように、長ねじ部材を省略することも可能である。この場合には、土台11あるいは梁16(横架材)と柱15(鉛直材)との連結部分において、筋交い端部金物21A,21Bを介して筋交い材22A,22Bの端部がめり込み防止板14A,14Bに連結され、筋交い端部金物21A,21Bに対応して土台11あるいは梁16に第1のねじ棒部材12が設けられているのはもちろんである。なお、長ねじ部材17が設けられている側にも,第1のねじ棒部材12が設けられている。
【0052】
また、前述したようなめり込み防止板を設けることも必ずしも必要なく、次の第3の実施の形態のように構成することも可能である。
(第3の実施の形態)
図14(a)(b)(c)に示すように、土台11を貫通して第1のねじ棒部材12が設けられている部位に、柱15の下端部が連結して設けられ、この柱15の下端部に、第1のねじ棒部材12に対応して、第2のねじ棒部材12Aが埋め込まれ、第1のねじ棒部材12の上端部(頭部12aa)と第2のねじ棒部材12Aの下端部(頭部12Aa)が接触し、荷重の受け渡しを行うようになっている。ここで、第1及び第2のねじ棒部材12,12Aは同じ形状で、第1のねじ棒部材12の頭部12aaと第2のねじ棒部材12Aの頭部12Aaとが、荷重の受け渡しが可能なるように互いに接触している。
【0053】
また、梁16を貫通してねじ棒部材12が設けられている部位に、柱15の上端部が連結して設けられ、この柱15の上端部にも、下端部と同様に、ねじ棒部材12に対応して,第2のねじ棒部材12Aが埋め込まれ、第1のねじ棒部材12の下端部12bbと第2のねじ棒部材12Aの頭部12Aaとが互いに接触し、荷重の受け渡しを行うようになっている。
【0054】
これにより、柱15の荷重を下方向に伝達させる場合、土台11や梁16に繊維直交方向Zの力が長期に作用し、この荷重によって土台11や梁16が繊維直交方向Zにめり込み変形しようとしても、ねじ棒部材12,12A同士の間で荷重伝達を行うことによって前記めり込み変形が防止される。
【0055】
また、図15(a)(b)(c)に示すように、ねじ棒部材12,12Aの間にめり込み防止板14A,14Bを設けることも可能である。このようにすれば、前記荷重によって土台11や梁16が繊維直交方向Zにめり込み変形することを、ねじ棒部材12,12Aとめり込み防止板14A,14Bとの間で荷重伝達を行うことによって防止することができる。
【0056】
前述した実施の形態では、柱、梁、桁、筋交いなど、木製の軸組で家の骨組をつくる木造軸組工法に適用したものについて説明しているが、本発明はそれに限定されるものではなく、階ごとに独立した床パネル(上枠、下枠)・壁パネル(縦枠)を積み上げ、パネルの空洞に断熱材を充填し、床下から室内、室内から小屋裏はパネルで仕切られる軸組壁工法にも適用することもできる。
【0057】
例えば図16(a)(b)(c)(d)に示すように、ねじ棒部材12Bは、横架材である上下枠31B,31Aを貫通し、その貫通部分が、上下枠に直交する方向に延びる鉛直材である縦枠32内に埋め込まれるように構成し、土台11上に下枠31Aが設けられることで、土台11を貫通するねじ棒部材12の頭部12aa(上端部)に、下枠31Aを貫通するねじ棒部材12Bの頭部12Ba(下端部)に接触し、荷重の受け渡しを行うようにすることができる。
【0058】
また、上枠31Bの上に下枠31Aが設けられることで、同様に、上枠31Bを貫通するねじ棒部材12Bの頭部12Ba(上端部)に、下枠31Aを貫通するねじ棒部材12Bの頭部12Ba(下端部)が接触し、荷重の受け渡しを行うようになっている。なお、上下枠31B,31Aを貫通するねじ棒部材12Bと、土台11を貫通するねじ棒部材12とは同軸状に配置されている。
【0059】
また、図17(a)(b)(c)(d)に示すようにめり込み防止板14A,14Bを用いることで、前述した場合と同様に、前記荷重によって土台11や梁16が繊維直交方向Zにめり込み変形することを、ねじ棒部材12,12Aとめり込み防止板14A,14Bとの間で荷重伝達を行うことによって防止することができる。
【符号の説明】
【0060】
11 土台(横架材)
12,12a,12A,12B ねじ棒部材
12aa,12Aa,12Ba 頭部
12b ナット
12bb 下端部
12c,14A,14B めり込み防止板
13 布基礎
15 柱(鉛直材)
16 梁(横架材)
17 長ねじ部材
17A 上側ねじ
17B 下側ねじ
17C 中間ねじ
21A,21B 筋交い端部金物
22A,22B 筋交い材
31A 上枠(横架材)
31B 下枠(横架材)
32 縦枠(鉛直材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横架材の荷重を受ける部位であって、前記横架材の繊維方向に直交する繊維直交方向に剛性部材を埋め込み、前記繊維直交方向において前記荷重を前記剛性部材に伝達する構成とした、めり込み防止構造であって、
前記剛性部材は、前記横架材を貫通して設けられ、前記繊維直交方向の荷重を受けて前記横架材の下側の他部に伝達させるものであり、前記繊維直交方向に延びる第1の軸状部材を有することを特徴とするめり込み防止構造。
【請求項2】
前記剛性部材は、前記横架材に表面に沿って設けられ前記繊維直交方向の荷重を受けるめり込み防止板を有し、前記第1の軸状部材は、前記めり込み防止板に対応して設けられている請求項1記載のめり込み防止構造。
【請求項3】
前記めり込み防止板は、前記横架材の表面と面一となるように前記横架材内に埋め込まれている請求項2記載のめり込み防止構造。
【請求項4】
前記第1の軸状部材は、ねじ棒部材で、
前記めり込み防止板は、貫通穴を有し、その貫通穴に対応してナット部材が固定されたものであり、
前記ねじ棒部材が、前記ナット部材にねじ込まれるとともに前記めり込み防止板を貫通して延びている請求項2または3記載のめり込み防止構造。
【請求項5】
前記第1の軸状部材は、ねじ棒部材で、
前記めり込み防止板は、ねじ穴を有し、
前記ねじ棒部材が、前記ねじ穴にねじ込まれるとともに前記めり込み防止板を貫通して延びている請求項2または3記載のめり込み防止構造。
【請求項6】
前記めり込み防止板が設けられている部位には、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材が設けられ、前記鉛直材のほぞあるいはだぼが、前記めり込み防止板の貫通穴を通じて前記横架材のほぞ穴あるいはだぼ穴に嵌め込まれている請求項2〜5のいずれか1つに記載のめり込み防止構造。
【請求項7】
前記鉛直材と並んで前記鉛直材と平行に延びる長ねじ部材が配設され、前記長ねじ部材の端部が前記めり込み防止板に固定されている請求項6記載のめり込み防止構造。
【請求項8】
前記横架材と鉛直材との連結部分において、筋交い端部金物を介して筋交い材の端部が連結され、前記筋交い端部金物とともに前記長ねじ部材が前記めり込み防止板に連結されている請求項7記載のめり込み防止構造。
【請求項9】
前記横架材と鉛直材との連結部分において、前記長ねじ部材に設けられている側とは前記鉛直材に対して反対側で、前記めり込み防止板に対応して前記横架材に前記第1の軸状部材が設けられている請求項7記載のめり込み防止構造。
【請求項10】
前記第1の軸状部材が設けられている部位には、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材が設けられ、
前記鉛直材に、前記第1の軸状部材に対応して、第2の軸状部材が前記鉛直材の長手方向に埋め込まれ、第1の軸状部材と第2の軸状部材との端部が接触している請求項1記載のめり込み防止構造。
【請求項11】
前記第1の軸状部材が設けられている部位には、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材が設けられ、
前記鉛直材に、前記第1の軸状部材に対応して、第2の軸状部材が埋め込まれ、前記第1の軸状部材と第2の軸状部材との端部の間にめり込み防止板が位置している請求項1記載のめり込み防止構造。
【請求項12】
前記第1の軸状部材は、前記横架材を貫通し、その貫通して突出する部分が、前記横架材に直交する方向に延びる鉛直材に埋め込まれ、
前記横架材に接触する別の横架材に設けられた第1の軸状部材の端部と接触している請求項1記載のめり込み防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−177224(P2012−177224A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39255(P2011−39255)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(501267357)独立行政法人建築研究所 (28)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】