説明

めんをゆでる方法と、それを利用するゆでためんを包装する方法と、それらを利用する包装されためん

【課題】めんを工業的に大量生産でゆでる従来のめんゆで機は、過大なエネルギー、水資源を消費し、清潔に維持管理できる方法を提供する。
【解決手段】めんNをゆでる方法は、加圧加熱殺菌用の容器41に湯を注入し、容器41の中の湯42にめんNを浸漬させ、容器41を閉じていわゆるレトルト装置といった加圧加熱装置51へ入れ、めんNを加圧加熱装置51で加熱された100℃以上となった湯42でゆでる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小麦粉を材料とするめん、たとえば、うどん、中華そば、パスタなどを工場でゆで、市場に流通させ、または、長期間保存するために有用なめんをゆでる方法と、ゆでためんを包装する方法と、包装されたゆでためんに関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉を材料とするうどん、中華そば、パスタなどのめんは、でんぷんと、水を加え捏ねて形成されるグルテンとを主成分とし、ゆでると、でんぷんが糊化し、同時に、グルテンも固化して食することができ、通常100℃以下の湯でゆで上げられる(以下ゆで湯という)。ゆで上がっためんの食感と旨みとは、ゆで上がるまでのでんぷんの糊化と、グルテンの固化と、めんの含水率とに深くかかわっている。すなわち、でんぷんは、60℃程度から糊化を開始し、85℃程度で完全膨張し、糊化が進み旨みを増す。一方、グルテンは、熱凝固性を有するため加熱とともに弾力性を増し、100℃以上の高温においてより強靭に固化するとともに旨みを増す。また、ゆで上がっためんは、水分を吸収しすぎると風味を損ねるため、余分な水分を取り除くことも重要である。上手にゆで上がっためんは、表面の早く固化したグルテンが内部から糊化したでんぷんをゆで湯に溶出することを妨げるため、結果的に、表面が固く滑らかでお互いに絡まらないという状態になる。めんのゆで上がりの品質は、伸展性として表現されるが、伸展性は、ゆで上がっためんの両端を引っ張り、切れずに伸びる程度をいい、長く伸びれば伸びるほどめんの食感が良いとされる。この伸展性は、グルテンの加熱による固化具合とめんの含水率とによって定まる。このように、ゆで上がっためんの食感と旨みとは、グルテンの固化具合とでんぷんの糊化具合とに関係するため、ゆで湯の温度と時間とに深く影響を受ける。ちなみに、低い温度でゆで上げためんは、めんの表面が粗く、お互いにからみあいやすくなり、また、内部のでんぷんが溶出しており、食感も旨みも劣化する。
【0003】
製めん所で製めんされためんを一般家庭でゆでるには、大量の水、熱エネルギーと専用の調理器具とを要するため困難である。そのため、湯通しさえすれば家庭で簡単に食することができる一玉ずつ包装されたゆでためんが市場に数多く出回っている。このようなゆでためんは、製めん所で製めん、めんゆで、包装の各工程が機械化され、工業的に大量生産されている。多くの包装されたゆでためんは、常温または冷蔵で保存すると、微生物が増殖して腐敗するため冷凍保存を必要とし長期間の保存ができないが、特殊な製法と包装によって常温で長期間の保存可能なものもある(たとえば http://seimensho.jp/news/1104yudeudon/ 参照)。
【0004】
しかし、前記大量生産によって包装されたどちらのゆでためんも、自動化されためんゆで機10で機械的にゆでられている(たとえば http://www.plustech.co.jp/product/food/a_cip.html 参照)。多くのめんゆで機10は、バケット11、11…をそれぞれの左右方向の各両端部11c、11cをエンドレスのチェーン16、16に固定することによってめんゆで機10の前後方向に等ピッチで取り付けられている(図1、図2)。また、バケット11は、各部屋11bが一玉のめんNに対応する複数個の部屋11b、11b…が左右方向に仕切られて設けられており、上部に開閉自在な金網製のふた11aが取り付けられている(図1)。なお、図1は、1列のバケット11がエンドレスのチェーン16、16に固定されているところを示している。
【0005】
各バケット11は、エンドレスのチェーン16、16の周回走行とともに、めんN、N…を製めん機20からシュート21を介してふた11aを開けた部屋11b、11b…に収容し(A)、沸騰した熱水HWで満たされている熱水水槽12にふた11aを閉めて下降し浸漬してゆで(B)、上昇して熱水水槽12から取り上げられて水道水FW、FW…のスプレーイング13、13…を受けて冷却し(C)、再度下降して冷却水CWで満たされている冷却水水槽14に浸漬して冷却し(D)、冷却水水槽14から取り上げられて走行中に余分な水分を水切りし(E)、最後に、ふた11aを開けてシュート15を介して落下させて包装機30に送る(F)(図2)。なお、熱水水槽12は、常時水道水FWとスチームSとが補給されて沸騰しており、冷却水水槽14は、常時水道水FWが補給されて所定の水温となっている。これらの補給した水道水とほぼ同量の水は、熱水水槽12と冷却水水槽14とからあふれかえることにより、また、スプレーイング13から直接に床Fに落ちることにより、めんゆで機10の設置場所に使い捨てされている。めんN、N…をゆでることは、めんN、N…を加熱するとともにめんN、N…に水分を含有させることによって、めんN、N…の主成分であるでんぷんの糊化とグルテンの固化とを促進させ、直後の冷却は、めんN、N…に付着した微生物の増殖を抑える。なお、包装機30は、めんゆで機10から落下しためんN、N…を直ちに樹脂フィルムで包装P、P…する。
【0006】
長期間保存可能に包装されためんN、N…は、包装後にいわゆるレトルト装置と呼ばれる加圧加熱装置で加圧加熱することによって殺菌される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−61823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる従来技術によるときは、めんゆで機10は、スチームSと水道水FWとの補給を常時必要とする熱水水槽12と、水道水FWの補給を常時必要とする冷却水水槽14とを内部に組み込んでおり、熱水水槽12、冷却水水槽14の水面をめんゆで機10の設置場所に開放しているという構造となっている(図2)。かかる構造は、めんN、N…をゆでる以外に、大量の熱エネルギーをめんゆで機10の設置場所に放出するため、設置場所の冷房装置といった空気調整設備を含めた運転に必要な熱エネルギーや電気エネルギーを過大に消費するとともに、めんN、N…をゆでて冷却するために水資源を過大に使い捨てしなければならないという運転コスト上の問題がある。
【0009】
また、同時に、かかる構造は、熱エネルギーの放出と水資源の使い捨てによって設置場所の環境を食品加工に適さない高温多湿にし、また、熱水水槽12、冷却水水槽14の下部を周回走行するバケット11、11…と床Fとの狭い空隙を清掃が困難な不潔な環境にしており、さらに、バケット11、11…や熱水水槽12、冷却水水槽14に落下した空中の微生物がめんN、N…に付着する可能性を防止できないという衛生上の問題も包含している。
【0010】
また、めんゆで機10は、運転を経過するとともに、熱水水槽12の熱水HWや、冷却水水槽14の冷却水CWに溶出したでんぷんがめんN、N…を汚すため運転を停止して定期的に清掃した後、運転を再開しなければならないという操作上の問題がある。ここで、めんゆで機10の清掃は、環境の汚染を避けるために熱水HWと冷却水CWとからでんぷんを除去して排水し、続いて、熱水水槽12、冷却水水槽14、バケット11、11…の表面に固着したでんぷんも除去しなければならない。このとき、でんぷんの除去は、アルカリ剤などの化学薬品を必要とし、でんぷんを除去すると同時に、使用した化学薬品を化学処理して廃棄処理しなければならないという環境汚染を避ける対応も必要としている。したがって、めんゆで機10の清掃は、過大な労力、費用、時間を必要とするという維持管理コスト上の問題も存在している。ただし、でんぷんは、栄養価が高く上手に回収して加工すれば家畜の飼料となり得るものである。
【0011】
一方、めんN、N…をゆでる温度と時間とは、めんゆで機10の機械的な仕様によって制限を受けるために、でんぷんの糊化とグルテンの固化とを十分に調整できないという問題や、性状の異なるめんN、N…についてめんをゆでる温度と時間とを十分に調整することができないという問題や、あるいは、めんN、N…に付着した微生物を完全に殺菌できないため制菌剤等をめんN、N…に添加しなければならないというゆでためん自体の品質上の問題もある。
【0012】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、容器に一玉のめんと湯とを入れて閉じ、容器ごと加圧加熱して100℃以上となった湯でめんをゆで、湯を取り除いた容器をそのままめんの包装として使用することによって、めんを省エネルギーで清潔にゆでるように改善し、同時に、環境汚染のないめんをゆでる方法と、かかる方法によって省資源で清潔にゆでためんを包装する方法と、前記めんをゆでる方法でゆでためんを前記方法の包装により包装することによって食感と旨みとを向上させるとともに長期間保存可能なめんを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するためのこの出願に係る第1発明(請求項1に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、加圧加熱殺菌用の容器に湯を注入し、容器の中の湯にめんを浸漬させ、容器を閉じて加圧加熱装置へ入れ、めんを100℃以上となった湯でゆでることをその要旨とする。
【0014】
なお、めんをゆでる温度と時間とが殺菌条件にまで達してもよい。
第2発明(請求項3に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、第1発明の方法でゆでためんを収容する容器を開いて湯を抜き、容器を再度密封することをその要旨とする。
【0015】
なお、容器から湯を抜いた後に、不活性ガスを容器に注入してもよい。
【0016】
ここで、容器の加圧加熱後から再度の密封までを無菌環境下で行うことができる。
【0017】
また、収容する容器の中でめんと湯とを分離し、めんと湯との境界を密封してもよい。
【0018】
第3発明(請求項7に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、めんが第1発明の方法でゆでられ、第2発明の方法で包装されることをその要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
かかる第1発明の構成によるときは、めんは、湯とともに容器ごとに閉じ込められて加圧加熱装置に入れられると、大気圧以上に加圧されている環境下で100℃以上となったいわゆる加圧熱水、または、スチームなどの熱媒体が容器の外部に接触することによって、容器を介して加熱され容器内部の100℃以上の湯によってゆでられ、次に、冷却水などの冷却媒体が容器の外部に接触することによって100℃以下になった湯によって冷却される。したがって、加圧加熱装置で使用する熱媒体と冷却媒体とは、めんに直接接触しないため、でんぷんが溶出せず回収して再使用することができる。このような水資源の再使用は、水資源の消費量を削減するだけでなく、設置場所の空気調整設備の負担を含む過大な熱エネルギーや電気エネルギーの消費量をも削減するとともに、めんをゆでる環境を化学薬品がなくても清潔に維持することができる。結果的に、加圧加熱装置は、長時間の連続運転でめんをゆでることができ、また、めんを100℃以上の温度に加熱することができるため、殺菌効果が高く、より長期間の保存を可能とする。
【0020】
めんは、全てを100℃以上の所定の温度で所定の時間に保持するという殺菌条件に達するようにゆでれば、めんの表面や内部を殺菌することができるため、めん由来の微生物を最小限にすることによって、さらに長期間の保存が可能となる。
【0021】
かかる第2発明の構成によるときは、めんをゆでた後に、容器を開いて湯を抜くことによって、めんは、余分な水分を吸収せずに一玉ごとに専用に包装され、包装資材の無駄を省くとともに、そのまま市場で流通させることができる。また、容器から抜いたでんぷんが溶出している湯は、回収して冷却することによって、分離し易くなっているでんぷんを家畜の飼料などに加工して再利用することができる。
【0022】
容器から湯を抜いた後で、不活性ガスを容器の中に注入すれば、容器の中のめんは、酸素との接触による劣化を最小にすることができ、より長期間の保存が可能となる。
【0023】
加圧加熱装置から無菌環境下に容器を取り出し、開け、湯を抜き、場合によって不活性ガスを注入し、再度密封すると、外部からの微生物の再汚染がなく、無菌包装として常温下でさらに長期間の保存が可能となる。なお、密封した容器は、真空内で漏れの有無を確認するというピンホール検査機によって事前に包装の品質を検査することができる。
【0024】
めんは、収容する容器の中でめんと湯とを分離し、めんと湯との境界を密封するようにすれば、より簡易な包装が可能となり、このとき、めんを殺菌条件に達するようにゆでれば、より簡易な無菌包装となる。
【0025】
かかる第3発明の構成によるときは、100℃以上の湯で急速にゆでためんは、表面のグルテンがより強靭に固化し内部から糊化したでんぷんの溶出を防止することができるため、より良い旨みと食感とを有する。また、小麦粉の産地を変えたり、でんぷんとグルテンとの配合比率を変化させたり、あるいは、加える水分量や捏ね方を変えることによって製めんされた性状の異なるタイプのめんは、めんの性状に応じためんをゆでる温度と時間とを調整することができるため、さらにより良い食感と旨みとを楽しむことができる。また、100℃以上の湯による微生物の殺菌は、100℃以下の湯による殺菌に必要な時間より格段に短時間で同等の効果を得ることができるため、100℃以下の湯による殺菌によって発生しがちな煮過ぎを避けることができ、結果として、ゆで上がっためんの風味を損ねることを防ぐことができる。このようにして、殺菌条件に達するようにゆで上げ、無菌環境下で包装しためんは、防腐剤を添加しなくても常温で長期間の保存が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】要部斜視図
【図2】全体構成図
【図3】要部説明図
【図4】要部斜視説明図
【図5】要部斜視説明図
【図6】要部模式説明図
【図7】要部斜視説明図
【図8】要部斜視説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0028】
めんNをゆでる方法は、加圧加熱殺菌用の容器41に湯を注入し、容器41の中の湯42にめんNを浸漬させ、容器41を閉じて加圧加熱装置51へ入れ、めんNを100℃以上となった湯42でゆでる(図3)。ここでいう加圧加熱装置51とは、食品の調理や殺菌に用いられる装置で、食品を大気圧より高い環境下に置き加圧と加熱によって発生する100℃以上の加圧熱水やスチームによって加熱する装置をいい、圧力なべが家庭用として、レトルト装置が工業的な大量生産用として一般的に知られている。容器41の材質は、加圧加熱殺菌が可能な耐熱性、気密性を有するヒートシール可能な樹脂や樹脂フィルムを使用し、いわゆるレトルト包装資材として知られている。また、紫外線による変質を避けるために金属膜を蒸着したフィルムを使用することは、長期間の保存に有効である。容器41の形状とサイズとは、めんNの全てが十分に浸漬するような形状と容量とを有している。ここでは、加圧加熱殺菌用の容器41は、十分な厚みを設けた袋で縦方向の上下2方を水平方向にシールすることによって閉じることができる樹脂フィルム製のいわゆるガゼット袋として以下説明を行う(図4(A))。すなわち、容器41は、縦方向の両側のフィルムを折りたたみ厚みが設けられた面41a、41aが左右に形成されており、下部が折りたたまれシールされているシール部41bによって底部41cを形成し、上方が開放している口41dを有している。そこで、たとえば、めんNは、シールされて形成されている底部41cを下にして固定した容器41の内部にシュート61を介して投入され、湯42を充填パイプ62を介して容器41内部へ投入すれば、容器41内部で湯42に浸漬する(図4(A)、(B))。ただし、湯42を先に投入してもよい。次に、容器41上部の口41dは、水平方向にヒートシールすれば上部のシール部41eを形成して閉じることができる。なお、湯42は、高い温度が好ましく、めんN表面のグルテンの固化を促進して内部からでんぷんが溶出することを防止する。
【0029】
加圧加熱装置51は、湯42にめんNを浸漬させ閉じた容器41を圧力制御装置52によって大気圧以上に加圧可能な加圧加熱装置51に入れると、熱媒体発生装置53から供給される100℃以上の加圧熱水やスチームの熱媒体53aを容器41に外側から接触させることによって、容器41に注入されている湯42を100℃以上の所定温度に加圧加熱し、容器41に収納しためんNを湯42でゆでることができる(図3)。ただし、一般的な加圧加熱装置51は、バッチ式の装置と連続式の装置があり、どちらも容器41を熱媒体53aに浸漬させたり、熱媒体53aをスプレーイングしたり、熱媒体53aを飽和させたりして熱媒体53aに接触させる。
【0030】
加圧加熱装置51は、めんN、N…をゆでる温度と時間とが殺菌条件にまで達するように加圧加熱することによって、めんN、N…を殺菌することができる。一般的に、加圧加熱装置51での食品の殺菌は、対象となる食品の内外部を含む全ての部分を所定の温度以上に到達させ所定の時間以上保持させるという殺菌条件を満たせば、食品をいわゆる湿熱殺菌することができるとされ、具体的には、120℃以上に到達させ4分以上保持させることが食品の商業的殺菌を達成する基本的な最低条件として決められており、基準のF値=4(分)として示されている。また、商業的殺菌を達成する殺菌効果は、温度を変動させると時間も変動し、温度を上げればより短い時間で足りる。
【0031】
加圧加熱装置51は、めんN、N…をゆで終えると、容器41を大気圧下へ戻すために、容器41を冷却媒体発生装置54から供給される冷却媒体54aに接触させて湯42を沸騰しない100℃以下に冷却する。なお、図3は、加圧加熱装置51に入れた容器41がスプレーイングパイプ55から噴射した熱媒体53aに浸漬して加熱され、または、冷却媒体54aに浸漬して冷却されている様子と、圧力制御装置52が加圧加熱装置51の内部の圧力をバルブ操作とともに制御している様子とを加圧加熱装置51の一例として模式的に示している。また、図中のスプレーイングパイプ55は、バルブを介して熱媒体発生装置53と冷却媒体発生装置54とに接続されており、バルブ操作によって熱媒体53aによる加熱と冷却媒体54aによる冷却とを切り替えられることを模式的に示している。
【0032】
加圧加熱装置51から大気圧下に戻したゆでためんNを収容する容器41は、容器41を開いて湯42を抜き、容器41を再度密封して包装することができる(図5)。たとえば、容器41は、上部のシール部41eと下部のシール部41bとを左右方向となるように90度回転してシール部41b、41eを引っ張り固定すると、上下の水平な面41a、41aを比較的に平らにすることができる。また、めんNは、事前に容器41の左右方向の片方側に寄せておくものとする。そこで、先端の外周71aに刃を形成した昇降自在なノズル71は、容器41の上部の面41aにめんNと左右方向の反対側に降下し、容器41内部の下部の面41aの手前の所定の位置で停止すれば、上部の面41aに孔41fを形成する。ここで、一例として、ノズル71の上流部には、一方がピストン形のポンプ81と他方が不活性ガスGの供給源82とを接続した三方弁83を取り付けており、一方に切り替えればポンプ81に通じる位置となり、他方に切り替えれば不活性ガスGの供給源82に通じる位置となり、中立位置ではノズル71を閉じるようになっている(図6)。そこで、ポンプ81は、三方弁83をノズル71が降下している間に保持している中立位置から、閉じているノズル71が降下して所定の位置に停止後にポンプ81に通じる位置に切り替えてポンプに付属するバルブ81aとバルブ81bとの操作によって、湯42をノズル71を介して容器41内部から吸い込み、外部に設けられている回収タンク84に吐出することができる。また、不活性ガスGの供給源82は、湯42を吸い込み後、三方弁83をポンプ81に通じる位置から不活性ガスGの供給源82に通じる位置に切り替えれば、不活性ガスGをノズル71を介して容器41に注入することができ、たとえば窒素ガスといった不活性ガスGを容器41内部に注入し、残存している酸素を追い出して不活性ガスGに置換することができる。ノズル71は、不活性ガスGの注入を終了後、三方弁83を中立位置に切り替え閉じて上昇して停止する。ただし、三方弁83の代わりに、ポンプ81と不活性ガスGの供給源82とにそれぞれバルブを設けて切り替えてもよく、また、ノズル71と別の部品で不活性ガスGを容器41内部に注入してもよい。
【0033】
不活性ガスGを注入した容器41は、昇降自在なガイド91、91がノズル71の降下によって形成されている孔41fより左右方向の中央側を容器41の上下方向に両側から出し引きすることによって上下の面41a、41aの端部を折りたたむと同時に、前後動自在なシールバー92a、92aが容器41の両側から出し引きして容器41の側部を垂直方向にヒートシールすれば再度密封されたガゼット容器41となる(図7(A))。孔41fを含む外端部41gは、前後動自在なカッター93a、93aが容器41の両側から出し引きして切り離される(図7(B))。
【0034】
容器41の加圧加熱後から再度の密封までを無菌環境下で行えば、ゆでると同時に殺菌しためんNを無菌的に包装することができる。この場合、加圧加熱装置51は、一般環境に接する入口と無菌環境に接する出口とを個別に有し、めんN、N…を収容した容器41、41…を入口から入れ、めんをゆでる温度と時間とが殺菌条件にまで達するように加圧加熱し、次に、無菌水によって冷却し、出口から無菌環境下に取り出す。そうすると、殺菌されている容器41、41…、湯42、42…、めんN、N…は、容器41、41…から湯42、42…を抜き、容器41、41…に不活性ガスを注入し、容器41、41…を再度密封をしても容器41、41…、めんN、N…と出口に接している無菌環境とを微生物的に汚染することがない。したがって、容器41、41…は、めんN、N…を無菌的に収容して包装することができるとともに、出口に接している無菌環境を保持することができる。なお、無菌環境を形成する技術は、近年の医薬品製造や一部の食品製造において、無菌包装の普及とともに発達してきており、環境や装置に対する自動洗浄技術、過酸化水素蒸気やスチームを使用する環境や装置に対する除染技術、HEPAフィルターと送風ファンとを組み合わせて陽圧を保持しつつ清浄な空間を形成するという無菌環境を保持する技術、無菌環境の検証技術などから構成されるとともに、微生物的な汚染源である人間を介在させないという自動化技術が支援する。
【0035】
また、加圧加熱装置51から大気圧下に出たゆでためんNを収容する容器41は、容器41の中でめんNと湯42とを分離し、めんNと湯42との境界を密封して包装することができる(図8)。ここでは、容器41は、めんNと湯42とを収容し、外周の4方をシールする4方シール包装として以下説明を行う。ホルダ94、94は、容器41が固定されて内部に収容されているめんNを容器41の上部となるようにして両側から破壊しない程度にはさむように押すと、めんNを浸漬していた湯とめんN内部に含有していた水分とが重力によって容器41の下部へ落ちてたまる(図8(A))。つぎに、容器41は、前後動自在なシールバー92b、92bがめんNの下部で両側から出し引きすることによって、めんNと湯との境界にある面が水平方向にシールされる(図8(B))。そこで、容器41は、前後動自在なカッター93b、93bが同様に出し引きすることによって、湯42を収容している容器41の下部が切り離されるとともに、めんNを収容し包装する(図8(C))。
【0036】
[他の実施の形態]
加圧加熱殺菌用包装容器でゆでためんNは、かかる容器から取り出して別の容器に入れ替えて包装することができる。
【0037】
湯を抜く方法は、ノズル71を介して吸い込みポンプ81で吸い上げる代わりに、容器41の底に孔を開けて湯42を落下させたり、開いた容器41を真空下に置いて湯42を蒸発させることができる。
【0038】
加圧加熱殺菌用容器は、容器41で示した樹脂フィルムの袋に代えて開口を有する深絞りのトレイのような樹脂成型品と開口をふさぐ樹脂フィルムのふたを使用することができる。ふたは、湯42を抜く場合に取り外して、再度新しいふたを取り付けることができる。
【0039】
加圧加熱殺菌用容器は、容器41にノズル71で孔41fを開ける代わりにあらかじめ着脱自在なキャップを取り付けることが可能な開口を設けることができる。この場合、容器は、キャップを外して湯42を抜き、再度キャップを取り付けて密封することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、従来過大なエネルギーや水資源を消費し、設置場所の環境を清潔に保持管理することが困難であっためんゆで機に対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
容器 41
湯 42
加圧加熱装置 51
めん N
不活性ガス G


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧加熱殺菌用の容器に湯を注入し、前記容器の中の前記湯にめんを浸漬させ、前記容器を閉じて加圧加熱装置へ入れ、めんを100℃以上となった前記湯でゆでることを特徴とするめんをゆでる方法。
【請求項2】
めんをゆでる温度と時間とが殺菌条件にまで達することを特徴とする請求項1記載のめんをゆでる方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか記載の方法でゆでためんを収容する前記容器を開いて前記湯を抜き、前記容器を再度密封することを特徴とするめんを包装する方法。
【請求項4】
前記容器から前記湯を抜いた後に、不活性ガスを前記容器に注入することを特徴とする請求項3記載のゆでためんを包装する方法。
【請求項5】
前記容器の加圧加熱後から再度の密封までを無菌環境下で行うことを特徴とする請求項3または請求項4記載のゆでためんを包装する方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2のいずれか記載の方法でゆでためんを収容する前記容器の中でめんと前記湯とを分離し、めんと前記湯との境界を密封することを特徴とするめんを包装する方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2のいずれか記載の方法でゆでられ、請求項3ないし請求項6のいずれか記載の方法で包装されることを特徴とするゆでためん。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−106524(P2013−106524A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251561(P2011−251561)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(511279933)株式会社中石食品工業 (1)
【出願人】(511279601)
【Fターム(参考)】