説明

もち米粉及びこれを使用した食品

【課題】もち米粉の欠点として指摘されている弾力のなさや保形性の悪さを改良した滑らかで弾力的な食感の製品が製造できるもち米粉及びこれを使用した食品を提供すること。
【解決手段】平均粒径30μm以上70μm以下かつ損傷澱粉6以下のもち米粉である。 また、これを使用した食品である。食品としては、米菓、白玉団子、求肥、大福、羽二重餅など従来からもち米粉を使用して製造されている食品を挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もち米粉及びこれを使用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
もち米粉は、もち米を原料としこれを粉状にしたもので、主に求肥や団子などに使用されている。
もち米粉の特徴として、一定の粒度で粉とした場合に、粘性(伸張性)の点で優れていても、弾力(コシの強さ)が少ない事から、いわゆるダレが生じ保形性が悪い事が指摘されている(例えば特許文献1参照)。
一方、もち米粉ではなく、うるち米を原料とした粉では、米、玄米、精白米、砕米、屑米等の原料米を適量の水と共に湿式製粉し、必要に応じて、常法により脱水、乾燥することによって得られる極微細米粉が知られており、具体的な数値として平均粒度が12ミクロン以下で損傷澱粉含有率が5パーセント以下との記載があり、その効果として米菓においては、異味、異臭を生ずることなく、ソフト感と口溶けの良さを付与し、団子類、餅菓子においては、異味(甘みを含む)、異臭を生ずることなく、出来たてのこし(弾力)を損うことなく柔らかさを持続させ、艶、滑らかさが出せると記載されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−14753号公報
【特許文献2】特開平5−268890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、もち米粉の欠点として指摘されている弾力のなさや保形性の悪さを改良した滑らかで弾力的な食感の製品が製造できるもち米粉及びこれを使用した食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、もち米粉の粒度を特定の範囲とし損傷澱粉を特定値以下にすることにより、滑らかで弾力的な食感を有し老化の遅い製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、平均粒径30μm以上70μm以下かつ損傷澱粉6以下のもち米粉である。
また、これを使用した食品である。
食品としては、米菓、白玉団子、求肥、大福、羽二重餅など従来からもち米粉を使用して製造されている食品を挙げることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のもち米粉を使用することにより滑らかで弾力的な食感を有し老化の遅い食品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するもち米粉とは、もち米を原料としてこれを粉状にしたものをいい、平均粒径は30μm以上70μm以下であり、損傷澱粉は6%以下である。
もち米を粉状にする方法は上記の平均粒径及び損傷澱粉になるように粉砕できれば特に限定はなく、気流式粉砕、衝撃式粉砕方法などが使用できる。
なお、平均粒径及び損傷澱粉は粉砕工程で調整できるほか、粉砕し粉状にしたもち米粉を篩分けして調整することもできる。
平均粒径が70μmを超える粗いもち米粉では、ざらついた食感となり不適となる。
平均粒径が30μm未満では、食感は滑らかで好ましいが保形性が悪くなり不適となる。
損傷澱粉が6を超えると製品の老化が早く不適となる。
【0008】
本発明における平均粒径は、マイクロトラック法(レーザー回析・散乱法)、体積基準分布で測定した粒度分布を基準として求めた。
前記体積基準分布で測定した粒度分布とは粒子体積の全粒子体積に対する割合をいい、前記平均粒径とは、小さな粒子から累積した粒子体積が全粒子体積の半分になった時の粒径をいう。
なお、体積基準分布は、篩分けした場合における質量分布に近似した値となる。
この測定には、従来知られている測定機(例えばレーザー粒度分析機、EEEDS& NORTHRUP社製)などが使用できる。
損傷澱粉の測定方法は、AACC法(AACC法、76−31参照)を用いた。
前記AACC法の原理は、物理的な損傷を受けた生澱粉がα−アミラーゼによって分解され易いことを利用したものであり、一定条件下でα−アミラーゼ処理したときに分離してきたマルトースを定量し、計算により、澱粉損傷度として表したものである。
理論的には0〜100の範囲の数値となる。
市販のキット(例えばMegaZyme製,Starch Damage Assay Kit)で測定可能である。
【0009】
本発明のもち米粉は、従来のもち米粉と同様に使用でき特別な工程は必要ない。
また、目的とする製品により従来のもち米粉を使用した食品に使用されている副資材を必要に応じて使用することができる。
この副資材として、例えば、穀粉(もち米粉を除く)、澱粉、糖類、食塩、油脂、乳化剤、色素、香料などを挙げることができる。
【実施例】
【0010】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1〜5]大福餅の皮
表1に記載した平均粒径及び損傷澱粉を有する米粉100質量部に熱湯85質量部を加え、低速で1分間ミキシングし生地を得た。
この生地を100℃、(0.01〜0.02MPa)で22分間蒸した。
蒸した後、低速30秒間ミキシングし生地をまとめ、掻き落としを行い、さらに低速で3分間ミキシングした。
低速で3分間ミキシング中に、上白糖30質量部を3回に分けて加えよく混ぜた。
これに、水2.5質量部で溶解した老化防止剤(βアミラーゼ)を1000AUN(1AUNは40℃、10分間の反応で1mgのグルコースに相当する還元力を生成に必要な量)添加しさらに1分間ミキシングした。
粗熱を取った後、30gに分割し丸めて大福餅の皮を製造した。
製造した翌日に外観と食感を、2日後に、老化耐性の評価を10名のパネラーにより以下の評価基準で行った。
[外観]
5点 保形性が非常に良い
4点 保形性が良い
3点 普通
2点 保形性が悪い
1点 保形性が非常に悪い
[食感・滑らかさ]
5点 かなり滑らかで非常に良い
4点 滑らかで良い
3点 普通
2点 ざらつきがあり劣る
1点 かなりざらつきがあり非常に劣る
[食感・弾力感と硬さ]
5点 弾力性・硬さともに非常にバランス良く非常に良好
4点 弾力感と硬さのバランスが良く良好
3点 普通
2点 弾力性・硬さのバランスが悪く劣る
1点 弾力性・硬さのバランスが非常に悪く非常に劣る
[老化耐性]
5点 かなり柔らかく非常に良い
4点 柔らかく良い
3点 普通
2点 硬く劣る
1点 かなり硬く非常に劣る
【0011】
得られた評価結果(平均値)を表1に示す。
総合評価は、◎、○、△、×の順で悪い評価となる。
【表1】

【0012】
実施例1〜実施例4は、外観、食感、老化に優れた米菓となった。
比較例1、比較例2は外観が悪く、弾力性・硬さのバランスが悪かった。
比較例2、比較例3、比較例5は硬くなりやすく、老化耐性が悪かった。
比較例4、比較例5は、ざらつきが有り食感が悪かった。
【0013】
[実施例5]求肥
実施例1で使用した米粉100質量部に水110質量部を加え、低速で1分間ミキシングし生地を得た。
この生地を100℃、(0.01〜0.02MPa)で22分間蒸した後、水50質量部を加えながら弱火にかけて練った。
掻き落としを行い、低速で10分間ミキシング中に上白糖200質量部を4回に分けて加えよく混ぜた。
上白糖を練り混ぜ後、70℃位で加熱しながら練り、求肥を得た。
得られた求肥を実施例1と同様にして以下の評価基準で評価したところ、外観4.8点、食感・滑らかさ4.8点、食感・弾力感と硬さ4.6点、老化耐性4.5点となり、すぐれた品質の求肥を得ることができた。
[外観]
5点 かなりつやがあり非常に良い
4点 つやが有り良い
3点 普通
2点 くすみが有り劣る
1点 かなりくすみが有り非常に劣る
[食感・滑らかさ]
5点 かなり滑らかで非常に良い
4点 滑らかで良い
3点 普通
2点 ざらつきがあり劣る
1点 かなりざらつきがあり非常に劣る
[食感・弾力感と硬さ]
5点 弾力性・硬さともに非常にバランス良く非常に良好
4点 弾力感と硬さのバランスが良く良好
3点 普通
2点 弾力性・硬さのバランスが悪く劣る
1点 弾力性・硬さのバランスが非常に悪く非常に劣る
[老化耐性]
5点 かなり柔らかく非常に良い
4点 柔らかく良い
3点 普通
2点 硬く劣る
1点 かなり硬く非常に劣る
【0014】
[実施例6]白玉団子
実施例1で使用した米粉100質量部に水90質量部を少しずつ加えながら練り生地を得た。
この生地を直径2cmくらいに丸め、沸騰したお湯で2〜3分茹でて浮き上がらせ、さらに1分間茹でた。
これを、すくい出し、氷水で締めて白玉団子を得た。
得られた白玉団子を実施例1と同様にして以下の評価基準で評価したところ、外観4.8点、食感・滑らかさ4.6点、食感・弾力感と硬さ4.7点、老化耐性4.6点となり、優れた品質の白玉団子を得ることができた。
[外観]
5点 かなりつやがあり非常に良い
4点 つやが有り良い
3点 普通
2点 くすみが有り劣る
1点 くすみがかなり有り非常に劣る
[食感・滑らかさ]
5点 かなり滑らかで非常に良い
4点 滑らかで良い
3点 普通
2点 ざらつきがあり劣る
1点 かなりざらつきがあり非常に劣る
[食感・弾力感と硬さ]
5点 弾力性・硬さともに非常にバランス良く非常に良好
4点 弾力感と硬さのバランスが良く良好
3点 普通
2点 弾力性・硬さのバランスが悪く劣る
1点 弾力性・硬さのバランスが非常に悪く非常に劣る
[老化耐性]
5点 かなり柔らかく非常に良い
4点 柔らかく良い
3点 普通
2点 硬く劣る
1点 かなり硬く非常に劣る


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径30μm以上70μm以下かつ損傷澱粉6以下のもち米粉。
【請求項2】
請求項1に記載のもち米粉を使用した食品。


【公開番号】特開2013−34411(P2013−34411A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171645(P2011−171645)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】